【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の爪被覆層の形成方法は、
アーチ状曲面を有する合成樹脂製の板状基材の下面に光硬化型又は化学反応硬化型の爪被覆剤を塗布する工程と、
板状基材を爪にあわせて上から被せることで板状基材の裏側のアーチ状曲面を仕上がり面とする被覆工程と、
板状基材を爪に被せた状態で爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成する工程と、板状基材を人手で剥離する工程からなる。
【0015】
また、本発明の爪被覆層の形成方法は、
光硬化型又は化学反応硬化型の爪被覆剤を爪上に塗布する工程と、
アーチ状曲面を有する合成樹脂製の板状基材を爪にあわせて上から被せることで板状基材の裏側の曲面を仕上がり面とする被覆工程と、
板状基材を爪に被せた状態で爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成する工程と、板状基材を人手で剥離する工程からなる。
【0016】
また、本発明の爪被覆層の形成方法は、
アーチ状曲面を有し、装着される爪側の端部において、相対する端部へ向けて半円状の凹みを有する合成樹脂製の補助チップを爪の下に装着する工程と、
補助チップを爪に装着した状態で、爪被覆剤を爪及び補助チップ上に塗布する工程と、
爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成する工程とからなる工程と、
爪被覆剤の硬化後に補助チップを人手で剥離する工程を含むことからなる。
【0017】
また、爪被覆層を形成する被覆工程が、
アーチ状曲面を有し、装着される爪側の端部において、相対する先端へ向けて半円状の凹みを有する合成樹脂製の補助チップを爪の下に装着し、板状基材と補助チップにより爪及び爪被覆剤を上下から挟むことにより爪被覆層を被覆する構成からなり、
爪被覆剤の硬化後に補助チップを人手で剥離する工程を含むことが好適である。
【0018】
また、爪被覆剤の塗布工程が、板状基材の端部及び側部を除いた位置又は爪のネイルプレート位置に、爪被覆剤を溜まりとして置くことからなることが好適である。
【0019】
また、被覆工程において、爪のキューティクル位置と接しない位置に板状素材の端部を接し、爪の先端へ向けて徐々に爪被覆剤を押し出しながら板状素材を被せることが好適である。
【0020】
また、予め爪装飾材を爪被覆剤に含ませるか、合成樹脂製の板状基材の下面にデザイン素材を施す工程をさらに備え、爪被覆層の形成と同時にデザインを形成することが好適である。
【0021】
さらに、本発明は上記の形成方法に使用可能な合成樹脂部材であって、
アーチ状曲面を有し爪を被覆可能な形状を備え、爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成した後に、爪被覆剤から剥離を可能にするための剥離素材を含んでいる板状基材からなる。また、上記の形成方法に使用可能な合成樹脂部材であって、アーチ状曲面を有し、指の先端と爪の間に装着可能な形状を備え、爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成した後に爪被覆剤から剥離を可能にするための剥離素材を含み、端部において、相対する端部へ向けて半円状の凹みを有していることを特徴とする補助チップ。
【0022】
本発明に係る被覆層の形成方法は、爪被覆剤である光重合タイプのジェル剤または化学重合タイプのアクリル剤と、形成したい被覆層の型となる合成樹脂製の板状基材(チップ)から構成されている。なお、本発明において、光硬化型又は化学反応硬化型の爪被覆剤とは、光重合タイプのジェル剤や、例えばリキッドとパウダー混合による化学重合タイプなど、粘着性や流動性を有し、塗布後硬化されるものを広く含む概念である。
【0023】
一般的にネイルチップと呼ばれるものは通常爪に装着してから上面(表面)に爪被覆剤を塗布するために用いられるが、本発明の板状基材は下面(裏側)を使用し、裏側の曲面を被覆層の仕上がり面となる型にすることで、平滑な被覆層を形成する。
【0024】
合成樹脂製の板状基材の裏側に爪被覆剤である光重合タイプのジェル剤または化学重合タイプのアクリル剤を塗布し、該板状基材を爪にあわせて上から被せることで被覆層を形成する。または、爪上に爪被覆剤である光重合タイプのジェル剤または化学重合タイプのアクリル剤を塗布し、合成樹脂製の板状基材を爪にあわせて上から被せることで被覆層を形成する。
【0025】
すなわち、一般的にネイルチップと呼ばれるものは、爪に接着して人工爪として使用される目的を本質的に有しており、爪被覆剤や爪本体との接着性が高く作られている。このため、ネイルチップとジェル(爪被覆剤)は両者とも人工爪として同じ用途に使用するが、それぞれ全く別の素材として把握されている。しかしながら、本発明者は、このような従来のネイルチップ・爪被覆剤に基づく発想を脱却し、爪被覆剤の硬化後にも人手で爪被覆剤を剥がせる、剥離性のある合成樹脂素材があり、この素材を使用した板状基材を爪被覆剤と併用して使用することで、爪被覆層の形成を行うことに到達したものである。
【0026】
したがって、本発明に使用される板状基材は、爪被覆剤の硬化後にも手でひねりを加えることなどにより爪被覆剤を剥がせる素材で構成される。この素材は、爪被覆剤との相性などにより素材選択の幅が変わるため、一種に限定されるものではなく、本発明の目的を達成する限り様々な材料を使用できる。経験的には、現在一般的に用いられているABS樹脂系のものではなく、ポリエチレン、PET等の剥離性能のある成分を含有するものが好適である。また、ジェルの被覆状況を把握するために、無色透明・無色半透明であることが好適である。また、形状としては爪に沿ったアーチ曲面を有したフォームを備えている。
【0027】
工程としては、まず板状基材の下面又は爪の表面に光硬化型又は化学反応硬化型の爪被覆剤を塗布する。そして、板状基材を爪にあわせて上から被せる。そして、板状基材を爪に被せた状態で爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成する。
【0028】
このとき、板状基材の裏側のアーチ状曲面がそのまま仕上がり面となる。したがって、労力は非常に削減されているにもかかわらず、表面の完全な平滑さと、アーチ状の曲面を同時に得ることが可能となる。しかも、研磨工程を介さない。この結果、粉塵は発生しないか、もし他の工程で必要であったとしても最小限で済むために、身体的負担は軽減されている。さらには、ジェルを使用した場合、酸素により硬化阻害が生じることがないので、未硬化のジェルがアレルギー源となることがなく、労力も軽減される。また、爪の先端に爪被覆剤を被せて爪被覆層を形成することも容易となる。なお、本発明は装飾目的だけでなく、巻き爪への対処など治療目的にも広く使用できる。
【0029】
さらに、元の爪よりも長さを延長し、人工爪を形成する場合は、合成樹脂製の板状基材を上から被せる前に、補助チップを爪の下に装着し、予め土台を形成するか、爪被覆剤を板状基材と補助チップで挟むことにより、人工爪と爪被覆層を同時に形成することも可能となる。
【0030】
補助チップは、アーチ状曲面を有し、指の先端と爪の間に装着可能であるように、端部において、相対する端部へ向けて半円状の凹みを有していることで、爪下面と指の間に装着させることが容易となる。長さ出しの目的から、距離目盛りを備えていることが好適である。この補助チップの素材も、板状基材と同様の素材であり硬化後に剥離できるものである。この構成により、従来のように、紙フォームを指に合わせて曲面を調整する必要がなく、特段の事情や必要性がなければピンチ作業が不要になる。
【0031】
工程としては、補助チップを爪の下に装着し、補助チップを爪に装着した状態で、爪被覆剤を爪及び補助チップ上に塗布し、爪被覆剤を硬化させ爪被覆層を形成し、爪被覆剤の硬化後に補助チップを人手で剥離する。この硬化した爪被覆剤を土台として、前述の工程を行うことで、延長した人工爪を得ることが可能である。しかも、表面の完全な平滑さと、アーチ状の曲面を同時に得ること、研磨工程を介さないために、身体的負担も軽減されるという効果はそのまま享受することができる。
【0032】
または、板状基材と補助チップにより爪及び爪被覆剤を上下から挟むことにより爪被覆層を被覆し、爪被覆剤の硬化後に補助チップを人手で剥離しても同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、爪被覆剤の塗布工程においては、爪被覆剤が肌荒れなどの原因になりうることから、肌に直接触れさせることを避ける目的と、適切なハイポイントを作成する目的のために、板状基材の端部及び側部を除いた位置又は爪のネイルプレート位置に、爪被覆剤を溜まりとして置くことが望ましい。特に、若干爪の根本寄りであることが好ましい。
また、爪のキューティクル位置と接しない位置に板状素材の端部を接し、爪の先端へ向けて徐々に爪被覆剤を押し出すように板状素材を被せながら全体に行き渡らせることで、平滑な表面と適切な厚みを有して十分な強度のある高品質な爪被覆層を得ることが可能である。
【0034】
また、予め爪装飾材を爪被覆剤に含ませるか、合成樹脂製の板状基材の下面にデザイン素材を施すことで、爪被覆層の形成と同時にデザインを形成することが可能となる。
【0035】
このように、本発明は爪に被覆層を形成する方法であり、光重合タイプであれば紫外線・可視光線による硬化、化学重合タイプであれば化学重合により起こる硬化をさせる工程を含む。合成樹脂製の板状基材は爪被覆剤が硬化した後、手で剥離させて除去する。自爪、またはチップによりエクステンションされた爪へ本発明を使用する場合は、合成樹脂製の板状基材に塗布した被覆層を硬化させる前に爪へ装着する。