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  • 特開2016221435-水処理装置及び水処理方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221435(P2016-221435A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/48 20060101AFI20161205BHJP
   B01F 11/02 20060101ALI20161205BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20161205BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20161205BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20161205BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C02F1/48 B
   B01F11/02
   B01F5/06
   B01F3/04 A
   G21F9/06
   H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-108504(P2015-108504)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】515145098
【氏名又は名称】株式会社フロンテイア
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川崎 光秀
【テーマコード(参考)】
2G084
4D061
4G035
4G036
【Fターム(参考)】
2G084AA19
2G084BB11
2G084BB37
2G084CC23
2G084CC35
2G084DD11
4D061DA08
4D061DB19
4D061DC08
4D061EA15
4D061EB01
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB16
4D061EB20
4D061ED15
4D061FA07
4D061FA20
4G035AB28
4G035AC26
4G035AE13
4G036AB22
(57)【要約】
【課題】放射性物質、有機物質等の汚染物を含む処理水を処理し、水の浄化を行う水処理装置及び水処理方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、ナノバブルを生成して処理対象水にナノバブルを包含させるナノバブル発生槽と、先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる処理槽とを備えてなる水処理装置に於いて、ナノバブル発生槽に於いてナノバブルを生成して処理水にナノバブルを包含させる工程と、処理槽に於いて先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる工程とを備える構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ナノバブルを生成して処理対象水にナノバブルを包含させるナノバブル発生槽と、
先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる処理槽とを備えてなり、
処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、
該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、
水処理装置。
【請求項2】
該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、
該ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設けてなることを特徴とする、
請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
該混合槽に於いて注入混合される気体は、
マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、
請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
該ナノバブル発生槽は、
SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成されることを特徴とする、
請求項1乃至3のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理装置。
【請求項5】
該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、
そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、
請求項1乃至4のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理装置。
【請求項6】
該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、
そのバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、
請求項5に記載の水処理装置。
【請求項7】
該混合槽は、
気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、
請求項2又は3に記載の水処理装置。
【請求項8】
該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、
そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、
請求項6又は7に記載の水処理装置。
【請求項9】
該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、
そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、
請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、
さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、
請求項1乃至9のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理装置。
【請求項11】
該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、
請求項1乃至10のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理装置。
【請求項12】
該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、
請求項1乃至11のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理装置。
【請求項13】
少なくとも、ナノバブル発生槽に於いてナノバブルを生成して処理水にナノバブルを包含させる工程と、
処理槽に於いて先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる工程とを備えてなり、
処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、
該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、
水処理方法。
【請求項14】
該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、
該ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設け、気体を包含した処理液を該処理槽に供給しててなることを特徴とする、
請求項13記載の水処理方法。
【請求項15】
該混合槽に於いて注入混合される気体は、
マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、
請求項14記載の水処理方法。
【請求項16】
該ナノバブル発生槽は、
SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成され、ナノバブルを生成し処理水に包含せしむることを特徴とする、
請求項13乃至15のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理方法。
【請求項17】
該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、
そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、
請求項13乃至16のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理方法。
【請求項18】
該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、
そのバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、
請求項17に記載の水処理方法。
【請求項19】
該混合槽は、
気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、
請求項14又は15に記載の水処理方法。
【請求項20】
該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、
そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、
請求項18又は19に記載の水処理方法。
【請求項21】
該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、
そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、
請求項20に記載の水処理方法。
【請求項22】
該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、
さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、
請求項13乃至21のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理方法。
【請求項23】
該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、
請求項13乃至22のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理方法。
【請求項24】
該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、
請求項13乃至23のうちのいずれか一の請求項に記載の水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性物質、有機物質等の汚染物を含む処理水を処理し、水の浄化を行う水処理装置及び水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や有機物等の不純物を含む水の処理技術は、上下水道水の処理、工場排水の処理等において広く利用されている。
【0003】
かかる水処理技術としては、オゾン処理や電気凝集法、促進酸化法等が公知であり、また、促進酸化法によっても分解・除去できない有機化合物を分解・除去することを目的として、処理対象とする水にプラズマ放電を行う水処理技術も提案されている。
【0004】
従来の水処理方法のうち、オゾン処理は上下水等の処理に広く使用されている処理方法であり、処理対象水にオゾンを添加することで、オゾンの強い酸化作用を利用して殺菌、脱臭、脱色等を行うものである。 しかし、オゾンと反応を起こさない物質も多数存在するため、これらの物質を不純物として含む汚染物質の処理には適さない。
【0005】
電気凝集法は、処理槽の中に配置された電極間に汚染水を流すことで、汚染水中の不純物を凝集、沈殿させて除去する方法である。この方法では、電極のうち少なくとも陽極を鉄又はアルミによって製造し、電極間に電圧を印加した際にイオン化して汚染水中に電極を溶出させることで、溶出した電極を凝集剤として利用する。アルミ又は鉄の水酸化物は、汚染水に溶解した不純物と反応して不溶解性の化合物を生成し、このようにして生成された化合物が凝集して沈殿することで、取り除きやすい状態となる。この電気凝集法によって、水に含まれる重金属イオン、石油製品、ポリマー、脂肪類、オイル類などの乳化・分散した不純物を取り除くことができる。
【0006】
促進酸化法は、オゾン、紫外線、過酸化水素という複数の酸化剤を2種以上併用することにより、これらの酸化剤と水との反応によって強力な酸化作用を持つOHラジカルを生成することで、汚染物質である有機物を酸化分解反応によって除去する。この方法では、ダイオキシン類や環境ホルモン、農薬等の毒性の高い有機物の分解除去にも非常に高い効果を発揮し、しかも、汚染水の殺菌、脱色、脱臭、COD低減などの効果を同時に享受できる。
【0007】
なお、塩素、オゾン、OHラジカルなどの強酸化剤を用いても分解することができず、また、前述した促進酸化法により、オゾン、過酸化水素、紫外線照射を組み合わせてOHラジカルを生成しても全く分解しない、難分解性有機物である有機フッ素化合物を分解することを目的として、難分解性有機物を含む液体中にガスをバブリングする気液2相流装置において、バブリングした気体内に放電プラズマを発生する高電圧電源を備えた気液2相流プラズマ処理装置も提案されており(特許文献1参照)、この装置によれば、この放電プラズマによって、有機フッ素化合物のような難分解性有機物についても直接分解可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011ー56451号公報
【特許文献2】特開2014ー200755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術中、促進酸化法は、オゾンや過酸化水素、紫外線照射を複合的に適用することで生成したOHラジカルを利用して不純物の分解や除去を行うものであることから、これらの酸化剤を単独で利用する場合に比較して効率的にOHラジカルを生成することが可能で、その結果、高い処理効率を得ることができるものとなっている。
【0010】
しかし、この方法では、高価なオゾン発生器を必要とするだけでなく、汚染水に過酸化水素を添加したり、UVランプを設けて紫外線の照射を行う必要があり、装置構成が大掛かりとなるため、多大な初期投資が必要となる。
【0011】
しかも、汚染水の処理能力はオゾンや過酸化水素の生成効率や、UVランプの発光効率に大きく依存するために、高い処理能力を維持しようとすれば消費電力が増大するため、ランニングコストも多大なものとなる。
【0012】
これに対し、前掲の特許文献1として紹介した水処理方法では、酸素を泡の状態で導入して気液二相流体とした汚染水を電極間を通過させることで、気泡中にプラズマを生成し、このプラズマによって気泡中に発生した活性物質によって直接的に不純物の分解を行うことで、従来の水処理方法では分解できなかった難分解性の有機物についても分解できるものとなっている。
【0013】
しかし、特許文献1に記載の水処理装置では、陰極と陽極間に誘電体を介在させて放電を行っていることから、この絶縁体の存在により電荷が電極に流れ込むことがないために放電はアークとはならず、温度上昇を伴わず、強力な閃光や轟音が発生しない「誘電体バリア放電」乃至は「無声放電」と呼ばれる放電を行うものとしているため、依然として処理能力には改善の余地がある。
【0014】
即ち、プラズマ放電時の閃光は紫外線を含み、紫外線は汚染水中の微生物や藻類を死滅させる作用があるだけでなく、酸素に乖離反応を起こさせてオゾンの生成と、OHラジカルの生成にも寄与するものである。また、閃光と共に生じる轟音による衝撃波や発熱は、微生物や藻類の死滅や有機物の分解等にも寄与するものであることから、閃光、音、温度上昇が生じる放電形式とすることができれば処理能力の一層の向上が期待できる。
【0015】
そこで本発明は、上記従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、プラズマ放電を利用して行う水処理を、より経済的且つ効率的に行うことができ、しかも、有機物の分解による除去のみならず、重金属や放射性物質等の有機物以外の不純物についても同時に、高い除去率で除去することができる水処理方法、及び前記水処理方法の実施に使用する水処理装置を提供することを目的とする。
【0016】
特に本発明は、先の大震災により被災した原子力発電所から放出された放射性物質により汚染された汚染水、除染土壌、汚染焼却灰などの処理、減量に資することのできる、安定したプラズマ処理を可能とする水処理装置及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、少なくとも、ナノバブルを生成して処理対象水にナノバブルを包含させるナノバブル発生槽と、先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる処理槽とを備えてなり、処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、水処理装置である。
【0018】
また本発明は、該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設けてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0019】
また本発明は、該混合槽に於いて注入混合される気体は、マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0020】
また本発明は、該ナノバブル発生槽は、SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理装置である。
【0021】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。さらに本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、水処理装置である。
【0022】
また本発明は、該混合槽は、気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理装置である。
【0023】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。
【0024】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。
【0025】
また本発明は、該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0026】
また本発明は、該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、水処理装置である。
【0027】
また本発明は、該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、水処理装置である。
【0028】
また本発明は、少なくとも、ナノバブル発生槽に於いてナノバブルを生成して処理水にナノバブルを包含させる工程と、処理槽に於いて先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる工程とを備えてなり、処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、水処理方法である。
【0029】
また本発明は、該汚染物質及びナノバブルを含む水を電極間に高電圧を印加しプラズマを生じさせて汚染物質を含む水を処理する第四の工程と、該プラズマ処理により不溶化された放射性物質が高濃度で含まれる固形物を分離回収する第五の工程との間に、処理水の温度を低下させる冷却機構を備えてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0030】
また本発明は、該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、該ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設け、気体を包含した処理液を該処理槽に供給しててなることを特徴とする、水処理方法である。
【0031】
また本発明は、該混合槽に於いて注入混合される気体は、マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0032】
また本発明は、該ナノバブル発生槽は、SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成され、ナノバブルを生成し処理水に包含せしむることを特徴とする、水処理方法である。
【0033】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0034】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0035】
また本発明は、該混合槽は、気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理方法である。
【0036】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0037】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0038】
また本発明は、該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0039】
また本発明は、該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、水処理方法である。
【0040】
また本発明は、該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、水処理方法である。
【発明の効果】
【0041】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消するためになされたものであり、プラズマ放電を利用して行う水処理を、より経済的且つ効率的に行うことができ、しかも、有機物の分解による除去のみならず、重金属や放射性物質等の有機物以外の不純物についても同時に、高い除去率で除去することができる水処理方法、及び前記水処理方法の実施に使用する水処理装置を提供することが出来る。
【0042】
特に本発明は、先の大震災により被災した原子力発電所から放出された放射性物質により汚染された汚染水、除染土壌、汚染焼却灰などの処理、減量に資することのできる水処理装置及び水処理方法を提供することが出来、経済的な効果は非常に大きいものであるとともに、震災復興を推進して社会にも貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は本発明にかかる水処理装置を組み込んだ水処理システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、プラズマ放電を利用して行う水処理を、より経済的且つ効率的に行うことができ、しかも、有機物の分解による除去のみならず、重金属や放射性物質等の有機物以外の不純物についても同時に、高い除去率で除去することができる水処理方法、及び前記水処理方法の実施に使用する水処理装置を提供することが出来る。
【0045】
特に本発明は、先の大震災により被災した原子力発電所から放出された放射性物質により汚染された汚染水、除染土壌、汚染焼却灰などの処理、減量に資することのできる水処理装置及び水処理方法を提供することが出来る。
【0046】
本発明は、少なくとも、ナノバブルを生成して処理対象水にナノバブルを包含させるナノバブル発生槽と、先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる処理槽とを備えてなり、処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、水処理装置である。
【0047】
また本発明は、該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設けてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0048】
また本発明は、該混合槽に於いて注入混合される気体は、マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0049】
また本発明は、該ナノバブル発生槽は、SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理装置である。
【0050】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。さらに本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、水処理装置である。
【0051】
また本発明は、該混合槽は、気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理装置である。
【0052】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。さらに本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、水処理装置である。
【0053】
また本発明は、該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、水処理装置である。
【0054】
また本発明は、該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、水処理装置である。
【0055】
また本発明は、該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、水処理装置である。
【0056】
また本発明は、少なくとも、ナノバブル発生槽に於いてナノバブルを生成して処理水にナノバブルを包含させる工程と、処理槽に於いて先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる工程とを備えてなり、処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理することを特徴とする、水処理方法である。
【0057】
また本発明は、該汚染物質及びナノバブルを含む水を電極間に高電圧を印加しプラズマを生じさせて汚染物質を含む水を処理する第四の工程と、該プラズマ処理により不溶化された放射性物質が高濃度で含まれる固形物を分離回収する第五の工程との間に、処理水の温度を低下させる冷却機構を備えてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0058】
また本発明は、該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、該ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設け、気体を包含した処理液を該処理槽に供給しててなることを特徴とする、水処理方法である。
【0059】
また本発明は、該混合槽に於いて注入混合される気体は、マイクロバブルとして処理水に包含されてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0060】
また本発明は、該ナノバブル発生槽は、SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成され、ナノバブルを生成し処理水に包含せしむることを特徴とする、水処理方法である。
【0061】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が1μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0062】
また本発明は、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径が100nm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0063】
また本発明は、該混合槽は、気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成されることを特徴とする、水処理方法である。
【0064】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が50μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0065】
また本発明は、該混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルは、そのバブルの平均直径が30μm以下であることを特徴とする、水処理方法である。
【0066】
また本発明は、該ナノバブル発生槽、該混合槽及び該処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽は、さらに超音波印加装置を備えてなることを特徴とする、水処理方法である。
【0067】
また本発明は、該処理水の該処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とすることを特徴とする、水処理方法である。
【0068】
また本発明は、該処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整することを特徴とする、水処理方法である。
【実施例】
【0069】
図1は、本発明にかかる水処理装置を組み込んだ水処理システムを示す概念図である。なお、本発明にかかる水処理装置はかかるシステムを構成し、本発明にかかる水処理方法はかかる水処理装置を用いる処理方法である。
【0070】
ここで、本実施例においては放射性物質を含む汚染土壌や焼却灰から汚染物質を抽出し、濃縮固化して個体廃棄物を得るとともに水の浄化を行う水処理システムを構成した。図中、1は放射性物質を含む汚染土壌及び/又は焼却灰と処理水を混合して汚染物質を溶出させ抽出する第一の槽である。この第一の槽には、高濃度の放射性物質を含む汚染土、焼却灰などの固形廃棄物と水が投入される。ここで、用いられる水は主に本システムにおいて最終的に放射性物質を抽出した後のリサイクル水が用いられるが、適宜通常の水を添加する。
【0071】
1において、放射性物質を含む汚染土壌及び/又は焼却灰と処理水は超音波を印加しながらオーバーフローするように攪拌され、放射性物質を効率良く水に溶出させて残土や残灰に残留する放射性物質を極小化する。特に除去すべき放射性物質であるセシウムはアルカリ金属であるから、溶解度が高く、高効率で水に移行させることができる。
【0072】
2は、汚染物質を抽出した放射性物質を含む水と固形物を分離する第二の槽である。第一の槽にて放射性物質を含む汚染土壌及び/又は焼却灰から処理水に放射性物質は溶出、移行しているから、固形分を分離除去するとその固形分には放射性物質は環境基準以下しか残留しておらず、そのまま埋め立て等の方法で廃棄することができる。
【0073】
3は、放射性物質を含む水にナノバブルを注入する第三の槽である。ナノバブルは、平均直径がナノメートルレベルの微小な泡であり、液中に分散して安定に存在することができる。このため、その後にプラズマ処理する槽に移送してもバブルが含有保持され、安定したプラズマを比較的低電圧で生起することに資する。ここで、ナノバブルとして注入する気体は、プラズマの生成と安定のためには多種の気体を好適に用いることができるが、放射性物質の不溶化を促進するためには酸素、二酸化炭素、オゾン等がさらに好適に用いられる。本発明は、この第三の槽及びその後の処理に関するものである。
【0074】
4は、放射性物質及びナノバブルを含む水を電極間に高電圧を印加しプラズマを生じさせて放射性物質を含む水を処理する第四の槽である。かかる槽にて液をプラズマ処理することにより、放射性物質が不溶化され、これを分離除去することが可能となった。
【0075】
5は、プラズマ処理により不溶化された放射性物質が高濃度で含まれる固形物を分離回収する第五の槽である。本実施例では、第五の槽は二段階となっており、先に沈殿物を沈殿させて除去する分離槽と、遠心分離によって固形物を除去する遠心分離槽を備えたが、第五の槽の構成はこれに限定されるものではなく、沈殿分離槽或いは遠心分離槽だけでも良いし、その他の方法による固液分離方法も適宜用いられる。また、遠心分離槽の後にさらにメンブレン等の濾過フィルターを備えることも有効である。
【0076】
分離された高濃度の放射性物質個体はキャニスター等に収納して保管するが、当初の汚染土壌や焼却灰からは非常に体積が縮小しており、保管効率が高くなって、除染、復興の推進に与って効果がある。
【0077】
また、放射性物質を固液分離除去した後の水は、環境に放出可能な程度に放射性物質が除かれているが、安全のため本システムの第一の槽にフィードバックして用いることが望ましい。
【0078】
本実施例においては、少なくとも、ナノバブルを生成して処理対象水にナノバブルを包含させるナノバブル発生槽と、先端部間が所定の間隔を介して配置された複数の電極を配設し処理水を貯留又は通過させる処理槽とを備えてなり、処理槽内に該各電極の少なくとも先端部が浸漬するように該処理水を導入し、該電極間に高電圧を印加してプラズマアーク放電を生じさせて処理水を処理するようにした。ナノバブルは、平均直径がナノメートルレベルの微小な泡であり、液中に分散して安定に存在することができる。このため、その後にプラズマ処理する槽に移送してもバブルが含有保持され、安定したプラズマを比較的低電圧で生起することに資する。
【0079】
また、該ナノバブル発生槽と該処理槽の間に、ナノバブルを包含した処理水にさらに気体を注入混合する混合槽を設けることも有効である。本実施例においては、該混合槽に於いて注入混合される気体は、マイクロバブルとして処理水に包含されるようにしたが、これ以外の方法によって気体注入を行っても有効である。
【0080】
また、本実施例においては、該ナノバブル発生槽は、SPG膜を通して気体を液中に圧入することによりナノバブル化する機構により構成した。かかる構成により、簡便な構成により有効なナノバブルを注入することが可能になる。
【0081】
また、本実施例においては、該ナノバブル発生槽に於いて処理水中に包含せしめられるナノバブルは、そのバブルの平均直径を1μm以下とした。さらに、ナノバブルの平均直径を100nm以下にすることにより、プラズマの安定した生起に有効である。
【0082】
また、本実施例においては、混合槽は、気液剪断法により注入気体をマイクロバブル化する機構により構成したが、これ以外の方法によってマイクロバブル化を行っても有効である。
【0083】
また、本実施例においては、混合槽に於いて処理水中に包含せしめられるマイクロバブルの平均直径を50μm以下とした。これにより、プラズマの安定した生起に有効であった。また、バブルの平均直径を30μm以下にするとさらに有効である。
【0084】
また、本実施例においては、処理槽にさらに超音波印加装置を備えた。これにより、プラズマの安定した生起に有効であった。この超音波印加装置はナノバブル発生槽、混合槽及び処理槽のいずれか、或いはそのうちの複数の槽に備えることで効果を発揮する。
【0085】
また、本実施例においては、処理水の処理槽中における流動速度を10乃至50m/秒の範囲とした。これにより、プラズマの安定した生起に有効であった。
【0086】
また、本実施例においては、処理水のガス含有率が容積比で30乃至90%となるように該ナノバブル発生槽及び該混合槽に於いて注入する気体量を調整した。これにより、プラズマの安定した生起に有効であった。
【0087】
これらの方法により、本発明は、簡便な方法によって先の大震災により被災した原子力発電所から放出された放射性物質により汚染された汚染水、除染土壌、汚染焼却灰などの処理、減量に資することのできる水処理装置及び水処理方法を提供することが出来、経済的な効果は非常に大きいものであるとともに、震災復興を推進して社会にも貢献するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、先の大震災により被災した原子力発電所から放出された放射性物質により汚染された汚染水、除染土壌、汚染焼却灰などの処理、減量に資することのできる水処理装置及び水処理方法を提供することが出来、経済的な効果は非常に大きいものであるとともに、震災復興を推進して社会にも貢献するものである。
【符号の説明】
【0089】
1 放射性物質を含む汚染土壌及び/又は焼却灰と処理水を混合して汚染物質を溶出させ抽出する第一の槽
2 汚染物質を抽出した放射性物質を含む水と固形物を分離する第二の槽
3 放射性物質を含む水にナノバブルを注入する第三の槽
4 放射性物質及びナノバブルを含む水を電極間に高電圧を印加しプラズマを生じさせて放射性物質を含む水を処理する第四の槽
5 プラズマ処理により不溶化された放射性物質が高濃度で含まれる固形物を分離回収する第五の槽
図1