【解決手段】散布面に所定量の液体を散布する液体散布装置1において、散布面に向けて液体を噴霧する噴霧ノズルを有する噴霧器10であって、噴霧ノズルを保持するノズル保持部材と、噴霧ノズルから噴霧される液体の周囲を覆って設置され、散布面における噴霧ノズルから噴霧された液体の散布領域の外枠を規定して散布領域を固定する散布領域固定カバー27と、噴霧ノズルに液体を供給する液体供給ライン15,50と、液体供給ライン15,50上に設置された流量計31を有し、噴霧ノズルの噴霧量を管理する噴霧量管理装置30と、を備える。
前記噴霧器は、噴霧時に先端が前記散布面に接触することで、前記散布面から前記噴霧ノズルの噴霧先端までの噴霧高さを規定する噴霧高さ調整部材をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の液体散布装置。
前記噴霧高さ調整部材は、前記ノズル保持部材に対して噴霧方向に移動可能に構成されており、前記噴霧高さが可変であることを特徴とする請求項2記載の液体散布装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、橋梁、橋脚等のコンクリート面に対して、耐久性を向上させるための薬液(コンクリート改質材)を散布する液体散布装置について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る液体散布装置の構成を概略的に示す模式図である。
図2及び
図3は、本実施形態に係る噴霧器の斜視図であり、
図2は、カバー無しの構成を示し、
図3は、カバーありの構成を示している。
【0014】
液体散布装置1は、コンクリート面に対して位置が固定された状態で薬液を噴霧する噴霧器10と、散布される薬液の量を管理する噴霧量管理装置30と、噴霧器10に薬液を供給する薬液供給装置40と、噴霧器10と噴霧量管理装置30と薬液供給装置40とを接続するホース50とを備えている。
【0015】
噴霧器10は、コンクリート面における散布領域を固定した状態で、薬液をコンクリート面に対して噴霧するための部材である。噴霧器10は、薬液を噴霧する噴霧ノズル11と、噴霧ノズル11に薬液を供給する液体供給ラインである液体供給部材15と、噴霧ノズル11等を保持するための筐体20とを備えている。
【0016】
噴霧ノズル11は、スプレーパターン(噴霧形状)が略正方形の充角錐ノズルであり、16個の噴霧ノズル11が設置されている。本実施形態では、充角錐ノズルとして、噴霧圧力0.5MPaで、噴霧角70°、噴霧量120ml/minのノズルを用いている。
【0017】
液体供給部材15は、各噴霧ノズル11に接続されたノズルホース16と、後述するホース50に接続され、各ノズルホース16に薬液を分岐するためのマニホールド17とを備えている。
【0018】
筐体20は、噴霧ノズル11等を保持するフレーム21と、噴霧ノズル11から噴霧された液体の周囲を覆うカバー27とを備えており、全体として略直方体形状である。
【0019】
フレーム21は、噴霧ノズル11が固定されるノズル保持部材22と、ノズル保持部材22を保持する平行棒23と、噴霧高さ調整部材24と、補強棒25とを備えている。ノズル保持部材22、平行棒23、噴霧高さ調整部材24及び補強棒25は、アルミ製の棒状部材である。このように、フレーム21を軽量のアルミ製とすることで、作業者の噴霧器10の移動作業や固定作業の負担を軽減することができる。
【0020】
ノズル保持部材22は、互いに平行に4本設置されており、各ノズル保持部材22には、4個の噴霧ノズル11が等間隔に設置されている。4個の噴霧ノズル11の噴霧方向は同じであり、ノズル保持部材22の延在方向に鉛直な方向である。また、全てのノズル保持部材22において、4個の噴霧ノズル11の固定位置及び固定姿勢は同じである。
【0021】
平行に設置された4本のノズル保持部材22は、平行に設置された2本の平行棒23の間に平行棒23に対して直交するように設置されており、ノズル保持部材22の両端は、それぞれ平行棒23に連結固定されている。
【0022】
噴霧高さ調整部材24は、噴霧方向に延在するように4本設置されており、各噴霧高さ調整部材24の一端は、2本の平行棒23の両端部分(2本の平行棒23によって形成される長方形の四隅部分)に固定されている。
【0023】
噴霧高さ調整部材24は、散布時のコンクリート面から噴霧ノズル11の噴霧先端までの距離(噴霧高さ)を規定するための部材である。使用時には、4本の噴霧高さ調整部材24の噴霧方向先端がコンクリート面に当接することで、4本のノズル保持部材22が散布面に対して平行に全て同じ距離の位置に固定される。すなわち、散布面から全ての噴霧ノズル11までの噴霧高さが同じ高さに固定される。
【0024】
補強棒25は、先端から所定距離離れた位置で、4本の噴霧高さ調整部材24を連結する部材であり、4本の噴霧高さ調整部材24が互いに傾いたりせずに、平行な位置関係を維持できるように補強している。
【0025】
補強棒25は、平行棒23と平行に、すなわち、噴霧高さ調整部材24と直交するように4本設置されており、各補強棒25が隣接する噴霧高さ調整部材24同士を連結している。4本の補強棒25は、長方形を構成している。
【0026】
ここで、噴霧高さ調整部材24は、長ねじ(寸切ボルト)であり、平行棒23及び補強棒25の噴霧高さ調整部材24との連結部分には、雌ねじが形成されている。よって、噴霧高さ調整部材24と、平行棒23及び補強棒25とはねじ送りによって相対的に移動可能であり、噴霧高さ調整部材24を平行棒23及び補強棒25に対して移動させることで、噴霧高さ調整部材24の噴霧側先端から噴霧ノズル11の先端までの距離である噴霧高さを適宜調整することができる。
【0027】
カバー27は、方形状の5面から構成されたビニール製箱型カバーであり、全体として直方体形状である。カバー27は、略直方体形状のフレーム21の周囲を覆っている。具体的には、カバー27は、フレーム21の噴霧方向に対する4つの側面と、噴霧方向と反対側の後面を覆っており、噴霧方向の前面(散布側前面)はカバー27によって覆われずに開口されている。
【0028】
カバー27の散布側開口縁は、噴霧高さ調整部材24の先端と略同じ位置まで延びて設置されており、散布時にフレーム21の散布側先端である噴霧高さ調整部材24の先端がコンクリート面に当接すると、カバー27の散布側開口縁もコンクリート面に接触する。よって、上述した噴霧高さは、カバー27の散布側先端である散布側開口縁から噴霧ノズル11先端までの距離でもある。
【0029】
これにより、カバー27の開口がコンクリート面によって覆われ、カバー27内は密閉された空間となるため、散布時に噴霧ノズル11から噴霧された薬液は、カバー27内をコンクリート面に向かって進み、大部分がコンクリート面の表面に散布され、少量がカバー27の内面に付着するが、カバー27外に薬液が漏れることはない。
【0030】
よって、噴霧器10をコンクリート面に押し当てて噴霧器10を固定した状態では、噴霧器10を移動させない限り、コンクリート面での散布領域は、カバー27によって外枠が固定されたままである。この固定散布領域の形状は、カバー27の散布側開口縁の形状と同じである。散布時には、コンクリート面に対して順次噴霧器10を移動させることで、噴霧器10による固定散布領域を順次移動させ、面全体に薬液を散布する。
【0031】
図3に示すように、カバー27には、ノズルホース16を通すための穴28が形成されており、カバー27をフレーム21に被せる際には、ノズルホース16を穴28に通すだけで、カバー27を設置することができる。
【0032】
ここで、噴霧ノズル11の配置と、散布面での固定散布領域との関係について説明する。
図4は、本実施形態に係る固定散布領域と噴霧ノズルの配置位置との関係を示す図である。
【0033】
図4において、最外周の正方形の枠が散布面における固定散布領域を示し、その中に含まれる16個の小正方形の枠が各噴霧ノズル11の個別の散布領域を示している。小正方形の中心に位置する小円は、噴霧ノズル11の配置位置を散布面に投影したものである。
【0034】
充角錐ノズルである噴霧ノズル11から噴霧される薬液は、ノズル先端から所定の噴霧角度で正方形に広がっていくため、各噴霧ノズル11の個別散布領域は、噴霧ノズル11からの距離(噴霧高さ)に比例して大きくなる。
【0035】
よって、噴霧ノズル11が所定の間隔で設置されている場合、噴霧高さが小さいと、個別散布領域が狭くなり、隣接する噴霧ノズル11の個別散布領域が離れてしまって、散布面において薬液が散布されない散布漏れ領域が生じてしまう。これを防ぐためには、散布面での固定散布領域内の全ての領域が、何れかの噴霧ノズル11の個別散布領域によってカバーされるように構成する必要がある。
【0036】
一方、噴霧高さが高いと、個別散布領域が大きくなり、隣接する噴霧ノズル11の個別散布領域が重畳する。重畳領域では、必要以上に薬液が散布されることになるため、効率的に薬液散布を行うためには、個別散布領域の重畳領域はできるだけ狭いほうが良い。
【0037】
したがって、噴霧ノズル11の設置にあたっては、噴霧ノズル11の噴霧角度や噴霧圧力等を考慮しながら、散布面での固定散布領域内に散布漏れが無く(散布面での固定散布領域内の全ての領域が、噴霧ノズル11の個別散布領域によってカバーされる)、且つ、個別散布領域の重畳領域が小さくなるように、噴霧ノズル11の噴霧高さや、噴霧方向に垂直な面での配置位置等の設置場所を設定する必要がある。
【0038】
具体的には、本実施形態では、個別散布領域が正方形の充角錐ノズルを使用しているため、
図4に示すように、隣接する個別散布領域の境界がちょうど重なるように、16個の噴霧ノズル11を所定の間隔及び所定の噴霧高さで設置している。これにより、個別散布領域同士の重畳領域を最小に抑えつつ、散布漏れの無い正方形状の固定散布領域を実現しており、薬液の無駄な散布を抑え、効率の良い薬液散布を行うことができる。
【0039】
続いて、
図5を参照しながら、本実施形態の変形例に係る噴霧ノズル11の配置について説明する。
図5は、本実施形態の変形例に係る固定散布領域と噴霧ノズルの配置位置との関係を示す図である。
【0040】
図5においても、
図4と同様に、最外周の正方形の枠が散布面における固定散布領域を示し、その中に含まれる8個の小円形の枠が各噴霧ノズル11の個別の散布領域を示している。小正方形の中心に位置する小円は、噴霧ノズル11の配置位置を散布面に投影したものである。
【0041】
本変形例では、噴霧ノズル11として、充円錐ノズルを使用しており、噴霧ノズル11から噴霧される薬液は、ノズル先端から所定の噴霧角度で円形に広がっていく。よって、固定散布領域内に散布漏れが無く、且つ、個別散布領域の重畳領域が小さくなるように、噴霧ノズル11の配置位置及び噴霧高さを設定すると、
図5に示すような構成となった。
【0042】
なお、本変形例では、ノズル保持部材22を2本設置し、噴霧ノズル11の個数は8個である。充円錐ノズルとして、噴霧圧力0.5MPaで、噴霧角70°、噴霧量120ml/minのノズルを用いている。
【0043】
本変形例においては、各噴霧ノズル11の個別散布領域が一部重畳しており、薬液散布の効率は上記実施形態と比べて若干低下するが、充角錐ノズルと比べて広く流通している充円錐ノズルを使用することで、低コストで噴霧器10を製造することができる。
【0044】
また、本変形例では、噴霧ノズル11の個数が8個と少なく、固定散布領域の面積が上記実施形態の半分程度となっているため、一回あたりの噴霧器10を固定しての散布面積は小さくなるが、噴霧器10が小型となるために取り回しも良く、狭い場所での薬液散布に適している。
【0045】
なお、本変形例では、各噴霧ノズル11の個別散布領域の一部が固定散布領域の外側に飛び出しており、カバー27の内面に付着する薬液の分だけ薬液のロス率が上がるが、従来の手動で噴霧ノズルを上下左右に動かしながら散布する場合と比較すると、格段にロス率を下げることができる。
【0046】
噴霧量管理装置30は、ホース50を流れる薬液量を計測する流量計31、流量計31の計測値を記録するデーターロガー等を有する記録装置35と、噴霧器10への薬液の供給量(噴霧量)等を算出して管理する制御装置36と、電源となる小型発電機38とを備えている。制御装置36は、噴霧器10からの薬液の噴霧量から所定のロス率分の薬液量を減じて、コンクリート面への薬液散布量を算出している。
【0047】
薬液供給装置40は、散布薬液を収容しておく液体タンクと41と、薬液をホース50へと圧送するためのポンプ42とを備えている。液体供給ラインとなるホース50は、薬液供給装置40と噴霧量管理装置30、噴霧量管理装置30と噴霧器10とを接続しており、噴霧器10の手前に設置された開閉バルブ51を備えている。
【0048】
噴霧器10、噴霧量管理装置30、薬液供給装置40及びホース50は、可搬可能であり、散布現場に持ち込んで組み立てることで、所望の場所での散布を実現できる。
【0049】
以上、液体散布装置1の構成について説明したが、続いて、液体散布装置1を使用した薬液散布方法について説明する。
図6は、本実施形態に係る液体散布方法を概略的に示す模式図である。本実施形態では、散布対象であるコンクリート面を固定散布領域と同じ大きさの領域毎に区分けし、各区分の位置に噴霧器10を移動して固定させたうえで、順次薬液の散布を行う。
【0050】
図6に示すように、本実施形態に係る液体散布方法は、5人の作業員により行われる。2人は、噴霧器10を散布対象のコンクリート面の各区分に順次押し当てて散布位置を固定する役割を担い、1人は、液体供給ライン上の開閉バルブ51を開閉して噴霧器10からの薬液の噴霧をON/OFFする役割を担う。
【0051】
また、1人は、噴霧量管理装置30に付いて、薬液の散布量を管理する役割を担い、残りの1人は、薬液供給装置40に付いて、薬液がきちんと供給されるように管理を行う。
【0052】
散布にあたっては、噴霧器10のコンクリート面の所定区分に対する固定が済むと、バルブ担当者が開閉バルブ51を開いて、当該区分への薬液散布を開始する。噴霧量管理装置30の噴霧量管理担当者が、噴霧量が所定の設定量に達したことを確認すると、無線等を用いてバルブ担当者に連絡する。
【0053】
連絡を受けたバルブ担当者が開閉バルブ51を閉じると、当該区分への散布が完了し、噴霧器担当者が次の区分へと噴霧器を移動させ、同様に噴霧作業を繰り返す。
【0054】
以上、本発明の実施形態によれば、噴霧器10によりコンクリート面への薬液散布領域を固定散布領域として固定しつつ、噴霧量管理装置30により当該固定散布領域への噴霧量を管理しながら、順次コンクリート面への薬液散布を行うことができるので、散布面における散布漏れ領域の発生を抑えることができると共に、単位面積あたりの散布量の管理を容易に行うことができる。
【0055】
このように、薬液の散布量を所定の区分け毎に管理できれば、散布作業完了後に、散布量のデータを解析して、作業報告書、品質管理資料等の作成を容易に行うことも可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、カバー27により噴霧される薬液の周囲(フレーム21周囲)を覆っているので、風の吹いている屋外の作業であっても、噴霧薬液が風によって流されることなく確実に散布面へと到達し、安定した散布作業が可能となる。また、噴霧薬液が作業者にかかることもないため、作業者の健康を守ることもできる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、液体噴霧装置を構成する各部材の形状やサイズ、素材等は適宜変更可能である。また、固定散布領域の形状や噴霧ノズルの構造や設置場所、個数等も適宜変更可能である。
【0058】
また、上記実施形態では、噴霧器を構成するフレームの個数を1個としたが、ジョイント部を有する複数のフレームを用意しておき、合体や分割可能な噴霧器としても良い。これにより、固定散布領域の大きさや形状を適宜変更することができ、散布面の形状に合わせることで、散布作業の効率性を向上させることができる。
【0059】
また、上記実施形態では、コンクリート構造物に対してコンクリート改質材を散布する場合を例に挙げて説明したが、散布対象物はコンクリート構造物に限定されるものではなく、散布液体もコンクリート改質材に限定されるものではない。例えば、塗料を壁面に散布する場合にも本発明を適用することができる。