特開2016-221546(P2016-221546A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-221546Au系はんだボール及びそれにより封止又は接合されたセラミック製電子部品並びに該Au系はんだボールの接合信頼性の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221546(P2016-221546A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】Au系はんだボール及びそれにより封止又は接合されたセラミック製電子部品並びに該Au系はんだボールの接合信頼性の評価方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20161205BHJP
   C22C 5/02 20060101ALI20161205BHJP
   C22C 30/04 20060101ALI20161205BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B23K35/30 310A
   C22C5/02
   C22C30/04
   H01L23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-110842(P2015-110842)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100083910
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 正緒
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 栄治
(57)【要約】
【課題】 従来に比べてAu含有量を減らした場合であっても接合信頼性の高いAu系はんだ合金を提供する。
【解決手段】 セラミック製電子部品の封止用又は接合用として使用される、21.1〜43.0質量%のSn、0.1〜15質量%のAg、及び残部が不可避不純物とAuからなるAu−Sn−Ag合金、9.5〜15質量%のGe、2〜10質量%のSn、及び残部が不可避不純物とAuからなるAu−Ge−Sn合金、又は5〜18質量%のAg、7〜20質量%のGe、及び残部が不可避不純物とAuからなるAu−Ag−Ge合金で形成されるAu系はんだボールであって、該はんだボールを一方向から押し潰してクラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm以上であって、且つ該クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40以上である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック製電子部品の封止用又は接合用として使用されるAu系はんだボールであって、該はんだボールを一方向から押し潰してクラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm以上であって、且つ該クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40以上であることを特徴とするAu系はんだボール。
【請求項2】
Snを21.1質量%以上43.0質量%以下含有し、Agを0.1質量%以上15質量%以下含有し、残部が不可避的に含まれる不純物を除いてAuからなることを特徴とする、請求項1に記載のAu系はんだボール。
【請求項3】
Geを9.5質量%以上15質量%以下含有し、Snを2質量%以上10質量%以下含有し、残部が不可避的に含まれる不純物を除いてAuからなることを特徴とする、請求項1に記載のAu系はんだボール。
【請求項4】
Agを5質量%以上18質量%以下含有し、Geを7質量%以上20質量%以下含有し、残部が不可避的に含まれる不純物を除いてAuからなることを特徴とする、請求項1に記載のAu系はんだボール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のAu系はんだボールを用いて封止することを特徴とするセラミック製電子部品。
【請求項6】
Au系はんだボールを一方向から押し潰してクラックが生じた時の応力が2.0×10N/mm以上であって、且つ該クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40以上であるか否かを測定することにより、セラミック製電子部品の封止用又は接合用として使用するAu系はんだボールの接合信頼性を評価することを特徴とするAu系はんだボールの評価方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子などの気密性を要するセラミック製電子部品の封止や接合に用いられるAu系はんだボール、及び該はんだボールを用いて封止又は接合されたセラミック製電子部品、並びに該Au系はんだボールの接合信頼性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信機器やOA機器などの電子機器には、水晶振動子、水晶発振器、SAWフィルターなどの電子部品が使用されている。これらの電子部品は、その構造上高信頼性と高気密性が求められており、例えば、電子部品の接合及び封止後に該電子部品内部又は接合や封止に用いたはんだ材料内部に酸素や水分が入り込まない様に、接合時や封止時の十分な接合信頼性(以下、はんだ付け性とも称する)が求められている。このような十分なはんだ付け性を得るため、電子部品の接合や封止に用いるはんだボールの材質には、はんだボール表面に形成される酸化被膜を極力薄くして濡れ性を向上させるべく高価なAu系合金が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、Au−Ge合金はんだボールにおいて、表面層のGe含有率を減らすことで表面酸化によるはんだ付け性の低下を抑える技術が開示されている。また、特許文献2には、溶融はんだが均一に濡れ広がるように、流れ性及び濡れ性に優れたはんだ付け用のAu−Ge合金球が開示されている。また、Au−Ge合金は比較的融点が高いため、封止時にパッケージ内部の素子が熱的ダメージを受ける場合がある。そこで、例えば特許文献3には、はんだ材料にAu−Ge合金よりも融点の低いAu−Ge−In合金を用いる技術が開示されている。なお、Auはんだ合金の信頼性を評価するため、Au系はんだ合金で接合されたデバイスに対して加熱と冷却を繰り返すことにより膨張と収縮のストレスを交互に与えるヒートサイクル試験や、該デバイスを高温又は低温環境下にさらして膨張又は収縮のストレスを与える長期保管試験などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−030093号公報
【特許文献2】特開2010−214396号公報
【特許文献3】国際公開第2010/010833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、Au系はんだ合金は従来から水晶振動子、水晶発振器、SAWフィルター、ジャイロセンサーなどの高い信頼性や気密性が求められる電子部品の封止用若しくは接合用として用いられてきたが、近年の携帯電話等の電子端末機器の普及に伴い、上記した比較的高価な情報通信機器などに搭載される電子部品から一般的な民生品用の電子部品への適用が広がっている。そのため、電子部品に使用するはんだ合金には高価なAuの含有量を減らすなどのコストダウンが強く求められている。
【0006】
しかしながら、単純にAuの含有量を減らしただけでは、例えば気密封止用のはんだ合金の場合は、固化した時にパッケージ材料との熱膨張差による応力がはんだ合金に加わり、マイクロクラックが生じて気密性が失われることが有った。この様な熱膨張差は特にパッケージ材料がセラミックスの場合に顕著に発生する。そこで、クラックの発生しにくい材料の開発などが行われており、その際のはんだ材料の機械的特性の評価には、例えばJISZ3198−2(2003)に示されている様な引張試験が用いられている。
【0007】
しかしながら、近年の電子部品の小型化や高性能化に伴い、封止や接合に使用される材料のサイズもますます小さくなっており、上記した引張試験で用いる比較的大きなサイズの試験片では、実際に上記電子部品に使用するサイズのはんだの特性を正しく示さないことがあった。また、実際に使用するはんだ合金に合わせて試験片を小さくした場合は、試験片を加工する際の残留応力が試験結果に大きく影響し、この場合も実際に使用するはんだ合金のクラックの生じやすさなどの特性を正しく示さないことがあった。
【0008】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、従来のAu系はんだ合金に比べてAu含有量を減らしたAu系はんだ合金にクラックが発生しやすいか否かを簡易且つ再現性よく評価できるAu系はんだ合金の評価方法、及びかかる評価方法に基づいて識別された接合信頼性の高いAu系はんだ合金、並びに該Au系はんだ合金で接合又は封止された電子部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明が提供するAu系はんだボールは、セラミック製電子部品の封止用又は接合用として使用されるAu系はんだボールであって、該はんだボールを一方向から押し潰してクラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm以上であって、且つ該クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40以上であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来のAu系はんだ合金に比べてAu含有量が少なく、且つマイクロクラックが生じにくいAu系はんだ合金を提供することができる。このAu系はんだ合金を水晶振動子、水晶発振器、SAWフィルター、ジャイロセンサーなどに代表される電子部品の封止や接合に使用することにより、気密封止性や接合性に優れた信頼性の高い電子部品を低コストで提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】はんだボールの変位量の評価試験法を模式的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のAu系はんだボールについて詳しく説明する。本発明者は、Au系はんだ合金を用いて封止又は接合された電子部品において、該電子部品の信頼性に影響を及ぼすAu系はんだ合金のマイクロクラックの発生状況について多数の電子部品を調査したところ、マイクロクラックは電子部品との接合界面近くにおいて接合界面に沿って発生していることを見出した。これは、溶融したはんだ合金で封止した後、該はんだ合金が固化により収縮する際に、収縮によるひずみがはんだ合金の破壊強度を超えることにより生じたためと考えられる。
【0013】
本発明者は、かかる考察の下、鋭意研究を重ねた結果、Au系はんだ合金の収縮による引張応力により生ずるひずみは、ボール状のはんだ合金を一方向から圧縮した際に生じるひずみと非常に強い正の相関があることを見出した。具体的には、互に組成の異なる複数のAu系はんだボールを用意し、それらの各々を平坦な床面に置いてその真上から該床面に平行な押圧面を有する押圧部材で徐々に押圧していった時、各はんだボールはいずれも床面に沿って円板状に拡がるように潰れていき、ある程度潰れた時に該円板の外縁部に周方向に沿ってクラックが発生することが分かった。
【0014】
そして、上記の試験で用いたAu系はんだボールと同様のAu系はんだボールを用いて各々はんだ接合した時の接合部を調べてところ、クラックの生成のしやすさは上記はんだボールを潰した時にクラックが発生して破壊するまでの応力及びひずみをパラメータにすることで簡易に推定できることが分かった。すなわち、はんだボールを一方向から押し潰してクラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm以上であって、且つ該クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40以上であれば、一般的なはんだ接合や封止の際に生ずる熱収縮に耐えることができ、よってAuを従来よりも減らした場合であっても、予めサンプリングしたAu系はんだ合金に対して上記の基準で識別することで、マイクロクラックが発生しにくいAu系はんだボールを提供することができる。
【0015】
このように、パラメータ化できる理由としては、例えば円柱状のはんだ合金をその中心軸方向に押圧して高さを1/aに潰した時、はんだ合金自体の体積は変わらないので、該中心軸に垂直な断面の面積はa倍に拡がり、該断面の直径は潰す前の√a倍になる。はんだボールを一方向から押圧して潰した時も同様であると考えることができ、更に前述したようにはんだボールを円板状に潰した時は該円板の外縁部からクラックが生じるため、はんだボールを一方向から潰した時のクラックのできやすさは√aに比例して影響を受けると考えることができる。
【0016】
そして、直径Dのはんだボールを一方向から押圧して潰した時のはんだ合金の押圧方向の変位量をdDとすると上記したaはa=D/(D−dD)と表すことができ、更にdD/Dはひずみεと考えることができるので、a=1/(1−ε)と表すことができる。上記の点を考慮すると、はんだボールを一方向から押し潰した時のクラックのできやすさは、ひずみεの平方根を用いてパラメータ化できると考え、種々のAu系はんだボールを用いて実験を行ったところ、上記したようにクラックが生じるまでの最大応力及びひずみの平方根に基づいて評価することにより、はんだ接合や封止の際の熱収縮に十分に耐え得るAu系はんだ合金を識別し得ることが分かった。これにより、Auの含有量を削減した場合であっても、上記パラメータを用いて予め試験を行っておくことでクラックが生じにくい接合信頼性の高いAu系はんだボールを提供することが可能になる。
【0017】
ここで、クラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm未満のはんだボールの場合、はんだ接合や封止に用いた時、熱収縮以外の物理的な衝撃等の外的要因により容易に破損してしまうおそれがあるため好ましくない。また、クラックが生じるまでのひずみの平方根が0.40未満のはんだボールの場合、はんだ接合や封止の際に熱収縮によりたちどころに破損するか、内在するひずみのため、加熱と冷却が交互に繰り返されたり一定温度環境下であっても長期間に亘って熱応力がかかったりすると破損するおそれがあり、信頼性を損なう可能性が高いので好ましくない。
【0018】
上記したクラックのできやすさのパラメータ化は、種々の組成を有するAu系はんだボールを用いて行った実験結果に基づくものであり、基本的にはAu系はんだボールにのみ適用可能である。以下、上記したクラックのできやすさの評価方法を適用できるAu−Sn−Ag合金、Au−Ge−Sn合金、及びAu−Ag−Ge合金について具体的に説明する。
【0019】
<Au−Sn−Ag合金>
上記した評価方法を適用できる第1のAu系はんだ合金はAu−Sn−Ag合金である。このAu−Sn−Ag合金において、Snの含有量は21.1質量%以上43.0質量%以下である。この量が21.1質量%未満では、結晶粒が大きくなりすぎて上記したひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。一方、この量が43.0質量%より多くなると濡れ性が悪化し、電子部品とはんだとの界面にクラックが発生する場合があるため好ましくない。
【0020】
このAu−Sn−Ag合金において、Agの含有量は0.1質量%以上15質量%以下である。この量が0.1質量%未満では、結晶粒が大きくなりすぎて上記したひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。また、この量が15質量%より多くなっても結晶粒が大きくなりすぎ、ひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。
【0021】
<Au−Ge−Sn合金>
上記した評価方法を適用できる第2のAu系はんだ合金はAu−Ge−Sn合金である。このAu−Ge−Sn合金において、Geの含有量は9.5質量%以上15質量%以下である。この量が9.5質量%未満では、液相線温度と固相線温度の差が開きすぎてしまい溶け別れ現象を起こすなどしてしまうため好ましくない。一方、この量が15質量%より多くなる場合も、液相線温度と固相線温度の差が開きすぎてしまい溶け別れ現象を起こすなどしてしまうため好ましくない。
【0022】
このAu−Ge−Sn合金において、Snの含有量は2質量%以上10質量%以下である。この量が2質量%未満であると、結晶粒が大きくなりすぎて、上記したひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。一方、この量が10質量%より多くなると濡れ性が悪化し、電子部品とはんだとの界面にクラックが発生する場合があるため好ましくない。
【0023】
<Au−Ag−Ge合金>
上記した評価方法を適用できる第3のAu系はんだ合金はAu−Ag−Ge合金である。このAu−Ag−Ge合金において、Agの含有量は5質量%以上18質量%以下である。この量が5質量%未満では、結晶粒が大きくなりすぎて、上記したひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。また、この量が18質量%より多くなっても、結晶粒が大きくなりすぎて、上記したひずみεの要件を満たすことができないため好ましくない。
【0024】
このAu−Ag−Ge合金において、Geの含有量は7質量%以上20質量%以下である。この量が7質量%未満では、液相線温度と固相線温度の差が開きすぎてしまい溶け別れ現象を起こすなどしてしまうため好ましくない。また、この量が20質量%より多くなる場合も、液相線温度と固相線温度の差が開きすぎてしまい溶け別れ現象を起こすなどしてしまうため好ましくない。
【実施例】
【0025】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。まず、原料としてそれぞれ純度99.9質量%以上のAu、Sn、AgおよびGeを準備した。大きな薄片やバルク状の原料については、溶解後の合金においてサンプリング場所による組成のバラツキがなく均一になるように留意しながら切断、粉砕等を行い、3mm以下の大きさに細かくした。次に、これら原料からそれぞれ所定量を秤量して高周波溶解炉用グラファイトるつぼに入れた。
【0026】
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後、高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型には直径24mmの円柱形状のものを使用した。このようにして、試料1のはんだ合金のインゴットを作製した。
【0027】
更に様々な組成のインゴットを作成すべく、上記グラファイトるつぼに秤量して入れる際の原料の混合比率を様々に変えた以外は上記試料1と同様にして試料2〜28のはんだ合金のインゴットを作製した。なお、試料26は従来から使用されているAu−12.5重量%Ge合金である。このようにして得た試料1〜28のはんだ合金の各々に対して、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S−8100)を用いて組成分析を行った。その分析結果を下記表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
[実施例1]
<ボール状はんだ合金の製造>
上記した試料1〜28のはんだ合金のインゴットの内、試料1〜26のはんだ合金のインゴットの各々を液中アトマイズ装置のノズルに投入し、このノズルを330℃に加熱した油の入った石英管の上部(高周波溶解コイルの中)にセットした。そして、該ノズル内のインゴットを高周波により500℃まで加熱して5分保持した後、不活性ガスによりノズルに圧力を加えてアトマイズを行い、ボール状のはんだ合金を作製した。なお、このアトマイズ法で形成されるボールの直径が0.25mmとなる様に、予めノズル先端の孔径を調整しておいた。
【0030】
得られた各試料のはんだボールをエタノールで3回洗浄し、その後真空乾燥機を用いて40℃の真空中で3時間の乾燥を行った。得られた各試料のはんだボールをオリンパス社製の測定顕微鏡STM−5にて測定し、外径が0.25mmのはんだボールを選定した。
【0031】
<ボール変形能評価試験>
次に株式会社島津製作所製の微小強度評価試験機MST−1を用いて各試料のはんだボールを圧子で荷重を加えて円板状に潰していき、クラックが生じるまでの最大応力及び変位量を測定した。具体的には、図1に示すように、シリコンウェハー1上に各試料のはんだボール2を載置し、試験機の圧子3の中心部にはんだボール2が当接するよう位置を微調整した後、はんだボール2に大きな荷重が掛からない程度に圧子3を接触させた。そして、1mm/minの押圧速度で黒矢印のように一方向からはんだボール2を圧子3で押圧して円板状に押し潰しながら、該円板の外縁部にクラックCが生じるまで最大荷重及び変位量dDを測定した。
【0032】
<接合信頼性評価試験>
はんだ接合の信頼性を評価するために、NiめっきしたCu基板上に各試料のはんだボールをはんだ付けした接合体を作製してヒートサイクル試験を行った。具体的には、Niめっき(膜厚:3.0μm)されたCu基板(板厚:0.3mm)を25秒加熱した後、該Cu基板上に各試料のはんだボールを載せて25秒加熱した。この25秒の加熱が完了した後、はんだ接合されたCu基板を窒素雰囲気中で冷却し、十分に冷却してから大気中に取り出した。
【0033】
このようにして得た接合体に対して、−40℃の冷却と150℃の加熱とを1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所製 S−4800)により接合面の観察を行った。接合面にはがれやはんだにクラックが入っていた場合を「不合格」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「合格」とした。この接合体のヒートサイクル試験結果を、押し潰す前のはんだボールの中心を通る断面積で上記の最大荷重を除した最大応力、及び押し潰す前のはんだボールのボール径Dで変位量dDを除したひずみε及びその平方根と共に下記表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
上記表2に示す通り、クラックが生じるまでの最大応力が2.0×10N/mm以上であって、且つひずみεの平方根が0.40以上である試料1〜3、8〜10、及び17〜19のはんだボールは、いずれも接合信頼性において問題が生じなかった。これに対して上記の最大応力の要件及びひずみεの平方根の要件の内の少なくとも一方が満たされていない試料4〜7、11〜16、及び20〜25のはんだボールは、いずれも接合信頼性において問題が生じた。なお、従来のAu系はんだ合金である試料26は良好な結果が得られ、高い信頼性を有することが確認できたが、Auの含有量が多いため材料コストがかかった。
【0036】
[実施例2]
試料27〜28のはんだ合金のインゴットを用い、アトマイズ法で形成するボールの直径がそれぞれ0.20mm及び0.30mmとなる様にノズル先端の孔径を調整した以外は上記の実施例1と同様にしてはんだボールを作製してそれらの特性を評価した。その結果を下記表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
上記表3に示す通り、はんだボールのボール径を変えても、上記した最大応力の要件及びひずみεの平方根の要件を両方とも満たす限り接合信頼性において問題が生じなかった。
【符号の説明】
【0039】
1 シリコンウエハー
2 はんだボール
3 圧子


図1