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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221586(P2016-221586A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】球体研磨装置及び球体研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 11/06 20060101AFI20161205BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20161205BHJP
【FI】
   B24B11/06
   B24B41/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-107240(P2015-107240)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】三井 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】若園 賀生
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 徹
(72)【発明者】
【氏名】新美 匡俊
【テーマコード(参考)】
3C034
3C049
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB75
3C034DD20
3C049AA04
3C049AB04
3C049CA02
3C049CB01
(57)【要約】
【課題】切粉の排出性を良好とすることにより球体の真球度を向上することができる球体研磨装置を提供する。
【解決手段】球体研磨装置(1)は、環状に形成される第一研磨溝(23a)を有する第一研磨盤(23)と、第一研磨盤(23)に対して相対的に回転可能に設けられ、第一研磨盤(23)に対向する面に環状に形成される第二研磨溝(33a)を有する第二研磨盤(33)と、環状に形成され、第一研磨盤(23)と第二研磨盤(33)との対向領域に配置される保持器(17)とを備える。保持器(17)は、第一研磨溝(23)と第二研磨溝(33)との間に配置される複数の球体(2)を保持し、且つ、外周面又は内周面に開口する複数のポケット(17a1)を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に中心軸線回りに環状に形成される第一研磨溝を有する第一研磨盤と、
前記第一研磨盤の中心軸線と同軸上の中心軸線回りに前記第一研磨盤に対して相対的に回転可能に設けられ、前記第一研磨盤の前記一方の面に対向する面に、前記中心軸線回りに環状に形成される第二研磨溝を有する第二研磨盤と、
環状に形成され、前記第一研磨盤と前記第二研磨盤との対向領域に配置される保持器であり、前記第一研磨溝と前記第二研磨溝との間に配置される複数の球体を保持し且つ外周面又は内周面に開口する複数のポケットを備える前記保持器と、
を備える、球体研磨装置。
【請求項2】
前記複数のポケットの外周面又は内周面の開口幅は、前記球体の直径より小さく形成される、請求項1に記載の球体研磨装置。
【請求項3】
前記第一研磨盤は、前記第二研磨盤の下方に対向して配置され、
前記保持器は、
前記複数のポケットを備え且つ前記第一研磨盤における前記第二研磨盤に対向する側の面に載置される本体部と、
前記本体部から軸線方向に延在し前記第一研磨盤に対する径方向移動を規制されるつば部と、
を備える、請求項1又は2に記載の球体研磨装置。
【請求項4】
前記つば部は、前記保持器の外周側又は内周側のうち前記ポケットの開口とは反対側に形成される、請求項3に記載の球体研磨装置。
【請求項5】
前記球体研磨装置は、前記第一研磨盤の中心から径方向外方へ流体を流通させる流体供給システムを備え、
前記複数のポケットは、前記保持器の外周面に開口する、請求項1−3の何れか一項に記載の球体研磨装置。
【請求項6】
請求項1−5の何れか一項に記載の球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、
前記第一研磨溝と前記第二研磨溝との間であって前記複数のポケットに前記複数の球体を配置し、前記第一研磨盤と前記第二研磨盤とを相対的に回転させて前記第一研磨溝及び前記第二研磨溝により前記複数の球体を研磨する、球体研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体研磨装置及び球体研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テーパ上の外周研磨面を有し同軸回転する第一、第二研磨盤と、第一、第二研磨盤の外周面に対して径方向に対向する内周研磨面を有する第三研磨盤とを備える球体研磨装置が記載されている。この球体研磨装置は、周方向に隣り合う球体相互の接触を防止するために保持器を備える(特許文献1の図3(a)(b)参照)。
【0003】
特許文献2には、第一回転盤と、第一回転盤とは異なる回転中心となる第二回転盤と、第一回転盤に同軸上に保持され複数の球体を保持する保持器とを備える球体研磨装置が記載されている(特許文献2の図1,2参照)。保持器は、球体を周方向全周に亘って囲むポケットを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−271168号公報
【特許文献2】特開2013−248678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の球体研磨装置では、球体が移動する環状経路に対して、内周側には第一、第二研磨盤が位置し、外周側には第三研磨盤が位置する。そのため、切粉の排出性が良好ではない。一方、特許文献2に記載の球体研磨装置では、対向する第一回転盤と第二回転盤とにより球体が挟まれるため、切粉は、回転盤の径方向に排出可能となる。しかし、保持器が球体の周方向全周に亘って囲むため、やはり切粉の排出性が良好ではない。
【0006】
仮に切粉が研磨領域に堆積してしまうと、堆積した切粉が球体の真球度に影響を及ぼすおそれがある。そこで、切粉の排出性を良好にすることが望まれる。
【0007】
本発明は、切粉の排出性を良好とすることにより球体の真球度を向上することができる球体研磨装置及び球体研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1.球体研磨装置)
球体研磨装置は、一方の面に中心軸線回りに環状に形成される第一研磨溝を有する第一研磨盤と、前記第一研磨盤の中心軸線と同軸上の中心軸線回りに前記第一研磨盤に対して相対的に回転可能に設けられ、前記第一研磨盤の前記一方の面に対向する面に、前記中心軸線回りに環状に形成される第二研磨溝を有する第二研磨盤と、環状に形成され、前記第一研磨盤と前記第二研磨盤との対向領域に配置される保持器であり、前記第一研磨溝と前記第二研磨溝との間に配置される複数の球体を保持し且つ外周面又は内周面に開口する複数のポケットを備える前記保持器とを備える。
【0009】
(2.球体研磨方法)
また、球体研磨方法は、上述した球体研磨装置を用いる球体研磨方法であって、前記第一研磨溝と前記第二研磨溝との間であって前記複数のポケットに前記複数の球体を配置し、前記第一研磨盤と前記第二研磨盤とを相対的に回転させて前記第一研磨溝及び前記第二研磨溝により前記複数の球体を研磨する。
【0010】
(3.球体研磨装置及び方法による効果)
上述した球体研磨装置及び球体研磨方法によれば、球体は、第一研磨盤の第一研磨溝と第二研磨盤の第二研磨溝とにより研磨される。そして、球体は、第一研磨盤と第二研磨盤との対向領域において、環状の保持器によって保持される。従って、球体同士が接触することを回避できる。また、保持器は、外周面又は内周面に開口するポケットを備える。そのため、研磨により発生する切粉は、保持器のポケットの開口から排出され、その後第一研磨盤及び第二研磨盤の径方向外方又は径方向内方に排出される。従って、切粉の排出性が良好となり、結果として球体の真球度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の球体研磨装置の構成を示す図である。
図2図1の球体研磨装置を構成する保持器の拡大軸線方向断面図である。図3のII-II断面図である。
図3図2の保持器のIII方向から見た図である。
図4】第一研磨盤、第二研磨盤、保持器及び球体を含む部分の拡大図である。
図5】制御装置のブロック構成図である。
図6】第一研磨盤と第二研磨盤の回転速度を示す図である。
図7】第一研磨盤と第二研磨盤の回転速度を図6に示す態様とした実施例と、第一研磨盤を固定し第二研磨盤を一定回転とした場合の比較例について、球体の真球度比を示す。
図8】他の実施形態における球体研磨装置の一部分を示す図であって、第一研磨盤、第二研磨盤、保持器、及び、撮像装置を含む部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.球体研磨装置1の構成)
本実施形態の球体研磨装置1について図1を参照して説明する。球体研磨装置1は、基台11、コラム12、第一移動体13、第二移動体14、上下駆動機構15、保持器17、流体供給システム18及び制御装置16(図2に示す)を備える。基台11は、床面に設置され、中央に上下方向への貫通孔11aを備える。コラム12は、基台11の上面に固定される。コラム12の側面には、上下方向に延びるガイドレール12a,12bが設けられる。
【0013】
第一移動体13は、基台11の上面及び貫通孔11aに配置される。第一移動体13は、第一本体部21、第一研磨盤支持体22、第一研磨盤23、第一静圧軸受24及び第一モータ25を備える。
【0014】
第一本体部21は、中央孔21aを有する円盤状に形成される。第一本体部21は、中央孔21aが基台11の貫通孔11aと同軸上に位置するように、基台11の上面に固定される。中央孔21aの中心軸線は、L1であり、鉛直軸方向に一致する。
【0015】
第一研磨盤支持体22は、第一本体部21に対して、中心軸線L1の回りに回転可能に設けられる。第一研磨盤支持体22は、第一本体部21の中央孔21aを貫通する軸部22a、第一本体部21の上面及び下面に対向する円盤状のフランジ部22b,22cを備える。
【0016】
第一研磨盤23は、第一研磨盤支持体22の上側のフランジ部22bの上面に一体的に固定される。つまり、第一研磨盤23は、第一本体部21に対して中心軸線L1の回りに回転可能に設けられる。第一研磨盤23は、環状に形成される。さらに、第一研磨盤23は、一方の面(上面)に中心軸線L1の回りに環状に形成される第一研磨溝23aを有する。第一研磨溝23aの断面形状は、円弧凹状に形成される。第一研磨溝23aは、研磨対象である球体2を研磨する。
【0017】
第一静圧軸受24は、第一本体部21に保持され、第一研磨盤23に一体的に固定される第一研磨盤支持体22を、第一本体部21に対してラジアル方向及びスラスト方向に支持する。詳細には、第一静圧軸受24は、第一本体部21の中央孔21aに保持され、軸部22aの外周面に対して流体圧により支持するラジアル軸受24aを備える。さらに、第一静圧軸受24は、第一本体部21の上面及び下面に保持され、フランジ部22b,22cに対して流体圧により支持するスラスト軸受24b,24cを備える。
【0018】
本実施形態においては、第一静圧軸受24に供給される流体は、共通の流体供給源から供給され、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cに分岐される。第一静圧軸受24は、さらにオリフィス絞り24d(図2に示す)を備える。オリフィス絞り24dは、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれに設けられる。ここで、第一静圧軸受24を構成するオリフィス絞り24dの位置は可変であるため、流体圧は可変とされる。第一モータ25は、第一本体部21又は基台11に支持され、第一研磨盤支持体22を回転駆動する。
【0019】
第二移動体14は、コラム12に対して上下方向に移動可能に配置される。第二移動体14は、第二本体部31、第二研磨盤支持体32、第二研磨盤33、第二静圧軸受34及び第二モータ35を備える。
【0020】
第二本体部31は、円筒状に形成され、下円盤部及び上円盤部には中央孔31a,31bを有する。第二本体部31の中央孔31a,31bの中心軸線は、L2であり、第一本体部21の中央孔21aの中心軸線L1に一致する。第二本体部31の円筒部は、コラム12の側面のガイドレール12a,12bに摺動可能に設けられる。つまり、第二本体部31は、コラム12に対して上下方向に移動可能である。
【0021】
第二研磨盤支持体32は、第二本体部31に対して、中心軸線L2の回りに回転可能に設けられる。第二研磨盤支持体32は、第二本体部31の下円盤部の中央孔31aを貫通する軸部32a、第二本体部31の下円盤部の下面及び上面に対向する円盤状のフランジ部32b,32cを備える。
【0022】
第二研磨盤33は、第二研磨盤支持体32の下側のフランジ部32bの下面に一体的に固定される。つまり、第二研磨盤33は、第二本体部31に対して中心軸線L2の回りに回転可能に設けられる。第二研磨盤33は、環状に形成される。さらに、第二研磨盤33は、一方の面(下面)に中心軸線L2の回りに環状に形成される第二研磨溝33aを有する。第二研磨溝33aの断面形状は、円弧凹状に形成される。第二研磨溝33aは、研磨対象である球体2を研磨する。
【0023】
第二研磨盤33の第二研磨溝33a側の面は、第一研磨盤23の第一研磨溝23a側の面に対向する。第二研磨溝33aの環状径は、第一研磨溝23aの環状径と同径に形成される。さらに、第二研磨溝33aの断面円弧径は、第一研磨溝23aの断面円弧径と同径に形成される。
【0024】
第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部に保持され、第二研磨盤33に一体的に固定される第二研磨盤支持体32を、第二本体部31に対してラジアル方向及びスラスト方向に支持する。詳細には、第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部の中央孔31aに保持され、軸部32aの外周面に対して流体圧により支持するラジアル軸受34aを備える。さらに、第二静圧軸受34は、第二本体部31の下円盤部の上面及び下面に保持され、フランジ部32b,32cに対して流体圧により支持するスラスト軸受34b,34cを備える。
【0025】
本実施形態においては、第二静圧軸受34に供給される流体は、共通の流体供給源から供給され、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cに分岐される。第二静圧軸受34は、さらにオリフィス絞り34d(図2に示す)を備える。オリフィス絞り34dは、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cのそれぞれに設けられる。ここで、第二静圧軸受34を構成するオリフィス絞り34dの位置は可変であるため、流体圧は可変とされる。また、第二静圧軸受34に流体を供給する流体供給源は、第一静圧軸受24に流体を供給する流体供給源と共通して設けられる。第二モータ35は、第二本体部31に支持され、第二研磨盤支持体32を回転駆動する。
【0026】
上下駆動機構15は、コラム12に対して第二本体部31を上下移動させる。上下駆動機構15は、コラム12の上端に固定されるモータ41と、モータ41の出力軸に連結されるボールねじ42と、ボールねじ42に螺合する第二本体部31の上円盤部の中央孔31bに固定されるボールねじナット43とを備える。
【0027】
保持器17は、環状に形成され、第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域に配置され、研磨対象である複数の球体2を保持する。本実施形態においては、保持器17は、第一研磨盤23の上に載置される。なお、保持器17の詳細は後述する。
【0028】
流体供給システム18は、第二研磨盤33の中心から第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域に流体を供給し、径方向外方へ流体を流通させて、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の径方向外方から排出された流体を回収する。流体供給システム18は、流体供給装置18a、供給流路18b,18c,18d、回収流路18eを備える。
【0029】
流体供給装置18aは、基台11の側方に配置され、流体を供給すると共に、回収される流体を濾過して循環する。また、流体供給装置18aは、供給する流体の温度を制御しており、研磨対象である球体2に対する熱影響を小さくする。
【0030】
供給流路18bは、基台11に形成され、流体供給装置18aの吐出口に接続されると共に、貫通孔11a側に吐出口を有する。供給流路18cは、第一モータ25に形成され、基台11に形成される供給流路18bに連通されると共に、第一モータ25の中心に吐出口を有する。供給流路18dは、第一研磨盤支持体22の中心に形成され、第一モータ25に形成される供給流路18cの吐出口に連通され、第一研磨盤支持体22の中心に吐出口を有する。回収流路18eは、基台11に形成され、第一本体部21の外周側に回収口を有し、流体供給装置18aに接続される。
【0031】
(2.保持器17の詳細構成)
保持器17の詳細構成について、図2図4を参照して説明する。保持器17は、環状に形成され、第一研磨溝23aと第二研磨溝33aとの間に配置される複数の球体2を保持(収容)する。本実施形態においては、保持器17は、第一研磨盤23の上に載置される。保持器17は、本体部17aと、つば部17bとを備える。
【0032】
本体部17aは、環状で、且つ、円盤状に形成される。本体部17aの内径は、第一研磨溝23aの内径より小さく、本体部17aの外径は、第一研磨溝23aの外径より大きい。さらに、本体部17aの厚み(軸線方向幅)は、球体2の外径より小さい。本体部17aは、第一研磨盤23における第二研磨盤33に対向する側の面に載置される。本実施形態においては、本体部17aは、第一研磨盤23の上面に載置される。
【0033】
本体部17aは、周方向に複数のポケット17a1を備える。複数のポケット17a1は、軸線方向に貫通している。複数のポケット17a1は、保持器17の本体部17aの面上において球体2を全周に亘って囲んでおらず、径方向に開口する。本実施形態においては、複数のポケット17a1は、保持器17の本体部17aの外周面に開口する。ただし、複数のポケット17a1は、保持器17の本体部17aの内周側に開口するようにしてもよい。
【0034】
特に、本実施形態においては、流体供給システム18において、流体が吐出される供給流路18dの吐出口が第一研磨盤支持体22の中心に形成されるため、流体は、第一研磨盤23の中心から径方向外方へ流通する。この場合には、ポケット17a1は、保持器17の本体部17aの外周面に開口させるとよい。一方、流体供給システム18において、流体が第一研磨盤23の外周面側からから中心に向かって流通する場合には、ポケット17a1は、保持器17の本体部17aの内周面に開口させるとよい。これらの理由については後述する。
【0035】
また、ポケット17a1の開口幅(ポケット17a1の開口部の周方向長さに相当)は、球体2の直径より小さく形成される。そのため、球体2がポケット17a1に配置された状態において、球体2がポケット17a1の開口部から抜け出すことが規制される。つまり、保持器17の本体部17aは、球体2の径方向移動及び周方向移動を規制する。
【0036】
つば部17bは、本体部17aから軸線方向に延在し、第一研磨盤23に対する径方向移動を規制する。本実施形態においては、つば部17bは、本体部17aの内周縁から軸線方向に延在する。すなわち、つば部17bは、ポケット17a1の開口とは反対側に形成される。つば部17bは、周方向に断続して複数形成されるが、周方向全周に亘って形成してもよい。つば部17bの外径は、第一研磨盤23の内径と同程度に形成される。
【0037】
ここで、保持器17は、第一研磨盤23に対して相対的に回転可能に配置されるようにしてもよいし、回転不能に配置されるようにしてもよい。保持器17が第一研磨盤23に対して相対的に回転可能とする場合には、保持器17と第一研磨盤23との接触部位に、すべり軸受や転がり軸受を配置してもよい。
【0038】
(3.制御装置16の構成)
制御装置16は、図5に示すように、モータ制御部51と、流体圧調整部52とを備える。モータ制御部51は、各モータ25,35,41を制御する。つまり、モータ制御部51が第一モータ25を回転駆動することにより、第一研磨盤23が回転する。また、モータ制御部51が第二モータ35を回転駆動することにより、第二研磨盤33が回転する。また、モータ制御部51がモータ41を回転駆動することにより、第二移動体14が上下動する。
【0039】
流体圧調整部52は、各オリフィス絞り24d,34dの絞り量を調整する。流体圧調整部52が第一オリフィス絞り24dの位置を移動させることにより、第一静圧軸受24の剛性が変化する。また、流体圧調整部52が第二オリフィス絞り34dの位置を移動させることにより、第二静圧軸受34の剛性が変化する。
【0040】
本実施形態においては、第一オリフィス絞り24dは、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cの流体圧全てを同時に調整する。つまり、第一オリフィス絞り24dが調整されることで、ラジアル軸受24aによる剛性、及び、スラスト軸受24b,24cによる剛性が調整される。同時に、第一静圧軸受24によるモーメント剛性が調整される。
【0041】
また、第二オリフィス絞り34dは、ラジアル軸受34a、スラスト軸受34b,34cの流体圧全てを同時に調整する。つまり、第二オリフィス絞り34dが調整されることで、ラジアル軸受34aによる剛性、及び、スラスト軸受34b,34cによる剛性が調整される。同時に、第二静圧軸受34によるモーメント剛性が調整される。
【0042】
なお、第一オリフィス絞り24dをラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれに設けることで、ラジアル軸受24a、スラスト軸受24b,24cのそれぞれの流体圧を独立して調整することも可能である。また、第二オリフィス絞り34dについても同様である。
【0043】
また、上記実施形態においては、第一,第二オリフィス絞り24d,34dの位置を可変とすることにより、第一,第二静圧軸受24,34の流体圧を可変とした。この他に、流体圧調整部52は、第一,第二静圧軸受24,34への流体供給源による供給される流体圧を調整することもできる。
【0044】
(4.球体研磨装置1を用いる球体2の研磨方法)
球体2の研磨方法について、図1図6を参照して説明する。制御装置16の流体圧調整部52(図5に示す)は、第一,第二静圧軸受24,34の流体圧が球体2の研磨を行うときに使用する流体圧となるように、オリフィス絞り24d,34dを設定しておく。
【0045】
そして、制御装置16のモータ制御部51は、モータ41を駆動して、第二移動体14を上方へ移動させておく。この状態で、図4に示すように、作業者は、保持器17を第一研磨盤23の上面に載置する。つまり、保持器17のつば部17bが第一研磨盤23の内周側に入り込む状態となるように、且つ、保持器17の本体部17aが第一研磨盤23の上面に接触する状態となるようにする。
【0046】
研磨素材である複数の球体2を、保持器17のそれぞれのポケット17a1に配置し、且つ、第一研磨盤23の第一研磨溝23aに配置する。続いて、制御装置16のモータ制御部51は、モータ41を駆動して、第二移動体14を下方へ移動させて、図4に示すように、第二研磨盤33の第二研磨溝33aが球体2に接触する状態とする。
【0047】
続いて、流体供給装置18aが流体を供給する。つまり、流体が、第一研磨盤23の中心に位置する供給流路18dの吐出口から吐出され、第一研磨盤23と第二研磨盤33の対向領域を径方向外方へ流通し、第一研磨盤及び第二研磨盤33の径方向外方へ排出される。排出された流体は、回収流路18eから流体供給装置18aに回収される。
【0048】
続いて、制御装置16は、第一研磨盤23の回転速度N1を図6に示すように一定値とするように第一モータ25を駆動し、且つ、第二研磨盤33の回転速度N2を図6に示すように一定値とするように第二モータ35を駆動する。図6において、回転速度が正の場合を一方方向の回転とした場合に、回転速度が負の場合を他方方向の回転とする。第一研磨盤23の回転速度N1及び第二研磨盤33の回転速度N2は、式(1)の関係を有する。つまり、第一研磨盤23の回転方向と第二研磨盤33の回転方向とは、逆方向となる。
【0049】
【数1】
【0050】
さらに、第一研磨盤23の回転速度N1及び第二研磨盤33の回転速度N2は、一定値に制御される。そして、本実施形態においては、第一研磨盤23の回転速度N1の絶対値|N1|と第二研磨盤33の回転速度N2の絶対値|N2|は、式(2)示すように、同一である。
【0051】
【数2】
【0052】
このようにして、球体2は、第一,第二研磨盤23,33によって研磨される。この状態を設定した時間を経過したところで、制御装置16のモータ制御部51は、第一モータ25及び第二モータ35を停止して、モータ41を駆動して第二移動体14を上方へ移動させる。
【0053】
(5.球体研磨装置1の基本構成による効果)
上述したように、球体研磨装置1は、中心軸線L1の回りに回転可能に設けられ、一方の面に中心軸線L1の回りに環状に形成される第一研磨溝23aを有する第一研磨盤23と、第一研磨盤23の中心軸線L1と同軸上の中心軸線L2の回りに回転可能に設けられ、第一研磨盤23の一方の面に対向する面に、中心軸線L2の回りに環状に形成される第二研磨溝33aを有する第二研磨盤33とを備える。このように、対向する第一,第二研磨盤23,33を回転可能にすることで、第一,第二研磨溝23a,33aに複数の球体2を配置して、複数の球体2の研磨を同時に加工となる。
【0054】
さらに、第一、第二研磨盤23,33を回転可能にすることで、研削の自由度が高くなる。例えば、第一,第二研磨盤23,33は、後述するように流体圧を高くすることで第一,第二研磨盤23,33の中心軸線L1,L2を高精度に位置決め可能となる。特に、第一,第二研磨盤23,33が静圧軸受により支持されることで、転がり軸受を用いる場合に比べて、初期摩耗及び経年摩耗を生じないことにより高精度に位置決めし続けることができる。また、第一,第二研磨盤23,33は、後述するように流体圧を低くすることで第一,第二研磨盤23,33の中心軸線L1,L2のずれを許容できる。その結果、高精度に球体2を研磨できる。
【0055】
(6.モータ制御部51による制御動作による効果)
制御装置16のモータ制御部51が、第一研磨盤23及び第二研磨盤33を図6に示すように制御した場合の実施例と、第一研磨盤23を固定し第二研磨盤33のみを回転させた場合の比較例とについて、球体2の真球度を計測した。ある真球度を1とした場合における球体2の真球度比を図7に示す。図7には、実施例及び比較例において、複数の球体2の真球度の範囲が示される。つまり、図7の縦方向の長さは、複数の球体2の真球度のばらつきを意味する。
【0056】
図7より、実施例における球体2の真球度の最小値は、比較例と同程度であるが、実施例における球体2の真球度の最大値は、比較例より小さい。つまり、実施例における球体2の真球度のばらつきは、比較例に比べて小さくなる。このように、制御装置16のモータ制御部51が、第一研磨盤23の回転方向と第二研磨盤33の回転方向とを逆方向とすることで、球体2の移動速度は、第一研磨盤23を固定する場合に比べて小さくなる。つまり、球体2に作用する遠心力は、格段に小さくなる。その結果、球体2の真球度が向上すると考えられる。
【0057】
また、制御装置16は、実施例に示すように、第一研磨盤23の回転速度N1の絶対値|N1|と第二研磨盤33の回転速度N2の絶対値|N2|とを同一にして、球体2を研磨する。この場合、球体2は、同じ位置にて自転する。つまり、球体2は、公転することなく自転のみする。そのため、球体2に作用する遠心力がゼロになる。その結果、球体2の真球度が確実に向上する。
【0058】
(7.保持器による効果)
球体2は、第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域において、環状の保持器17によって保持される。従って、球体2同士が接触することを回避できる。また、保持器17は、外周面又は内周面に開口するポケット17a1を備える。そのため、研磨により発生する切粉は、保持器17のポケット17a1の開口から外部へ排出され、その後第一研磨盤23及び第二研磨盤33の径方向外方又は径方向内方に排出される。従って、切粉の排出性が良好となり、切粉が第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域に堆積することを防止できる。その結果、球体2の真球度が向上する。
【0059】
また、複数のポケット17a1の外周面又は内周面の開口幅は、球体2の直径より小さく形成される。そのため、球体2がポケット17a1に配置された状態において、球体2がポケット17a1の開口部から抜け出すことが規制される。つまり、保持器17の本体部17aは、球体2の径方向移動及び周方向移動を規制する。
【0060】
また、第一研磨盤23は、第二研磨盤33の下方に対向して配置され、保持器17は、複数のポケット17a1を備え且つ第一研磨盤23における第二研磨盤33に対向する側の面に載置される本体部17aと、本体部17aから軸線方向に延在し第一研磨盤23に対する径方向移動を規制されるつば部17bとを備える。
【0061】
つば部17bによって、保持器17が第一研磨盤23に対して径方向に移動することが規制される。従って、保持器17が、球体2に対して、第一研磨盤23の径方向への力を付与することを抑制できる。その結果、研磨に不要な球体2への力を抑制することにより、球体2の真球度が向上する。
【0062】
また、つば部17bは、保持器17の外周側又は内周側のうちポケット17a1の開口とは反対側に形成される。つまり、つば部17bは、切粉の排出に対して邪魔しない位置に設けられる。従って、切粉の排出性を良好としつつ、つば部17bによる機能を発揮することができる。
【0063】
(8.流体による作用)
流体供給システム18によって、流体が、保持器17の内周側から径方向外方へ流通する。従って、流体を流通させることが、切粉と共に、第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域から外部へ排出する機能を有する。
【0064】
ここで、保持器17のポケット17a1は、保持器17の外周面に開口する。つまり、保持器17において、ポケット17a1の開口部は、保持器17が保持する球体2の位置より、保持器17の径方向外方に位置する。つまり、ポケット17a1の開口部が球体2の位置に対して位置する方向が、流体の流通方向に一致する。従って、流体が、ポケット17a1の内部からポケット17a1の開口に至る方向へ流通しやすくなり、切粉の排出性がさらに良好となる。
【0065】
(9.他の実施形態)
本発明の他の実施形態について、図8を参照して説明する。図8に示すように、球体研磨装置1は、上記の他に、撮像装置19を備える。撮像装置19は、基台11の側方に設置され、第一研磨盤23と第二研磨盤33との対向領域における径方向外方から、対向領域を撮像する。詳細には、撮像装置19は、対向領域に位置する球体2の回転状態を撮像する。
【0066】
ここで、第一研磨盤23と第二研磨盤33とは逆方向に回転し、第一研磨盤23の回転速度N1の絶対値|N1|と第二研磨盤33の回転速度N2の絶対値|N2|とは同一である。そのため、球体2は、公転方向には移動せずに、同じ位置にて自転する。従って、撮像装置19は、常に同一の球体2の動作を撮像し続けることができる。
【0067】
このとき、撮像装置19は、対向領域の径方向外方から、対向領域を撮像する。しかし、対向領域には、保持器17が配置されている。保持器17のポケット17a1は、保持器17の外周面に開口する。従って、撮像装置19は、ポケット17a1の開口から、ポケット17a1の内部に保持されている球体2を撮像可能となる。撮像装置19が球体2の動作を撮像することによって、第一研磨盤23及び第二研磨盤33の回転速度を変更する等を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1:球体研磨装置、 2:球体、 11:基台、 12:コラム、 16:制御装置、 17:保持器、 17a:本体部、 17a1:ポケット、 17b:つば部、 18:流体供給システム、 19:撮像装置、 23:第一研磨盤、 23a:第一研磨溝、 24:第一静圧軸受、 33:第二研磨盤、 33a:第二研磨溝、 34:第二静圧軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8