【解決手段】 ワークを把持するワーク把持手段と、ワーク把持手段を支持する支持部に対してワーク把持手段の位置を調整する位置調整手段と、を備え、ワーク把持手段は、ワークを把持するための一対のフィンガーと、一対のフィンガー同士を接近又は離間させる一対のスライド部材と、一対のスライド部材を作動させる駆動手段と有し、位置調整手段は、電気を流すことで粘性が変化する電気粘性流体を用いた可動部によってワーク把持手段を一対のフィンガーの移動方向に移動自在となるようにした。
前記位置調整手段は、前記可動部と、前記可動部を支持する枠体と、前記枠体に装着されて前記可動部の移動をガイドする棒状部材と、前記棒状部材の両端部側に設けられて前記可動部を付勢する一対の付勢部材とを有し、
前記電気粘性流体に電気を流して前記可動部が前記棒状部材に沿って移動するときに、前記一対の付勢部材が伸縮することを特徴とする請求項1に記載のワーク把持装置。
前記駆動手段は、ロータリソレノイドが有する一対の駆動ピンを前記一対のスライド部材が有する一対の係合孔に作用させ、前記ロータリソレノイドの回転駆動を前記一対のスライド部材が接近又は離間する直線駆動となるように前記一対のスライド部材に伝達し、前記一対のスライド部材を通じて前記一対のフィンガーを動作させることを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク把持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の把持装置では、例えば、把持対象となるワークの中心との位置がずれた場合、片側のピンだけがワークに接触してしまうと、把持できないおそれがある。
【0006】
本発明は、比較的簡単な構成で、ワークに対する位置調整が可能なワーク把持装置及びロボットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のワーク把持装置は、ワークを把持するワーク把持手段と、前記ワーク把持手段を支持する支持部に対して前記ワーク把持手段の位置を調整する位置調整手段と、を備え、前記ワーク把持手段は、ワークを把持するための一対のフィンガーと、前記一対のフィンガー同士を接近又は離間させる一対のスライド部材と、前記一対のスライド部材を作動させる駆動手段と有し、前記位置調整手段は、電気を流すことで粘性が変化する電気粘性流体を用いた可動部によって前記ワーク把持手段を前記一対のフィンガーの移動方向に移動自在となることを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、電気粘性流体(ER流体)を用いた可動部によってワーク把持手段のワークに対する位置調整が容易に行える。
【0008】
また、上記本発明では、前記位置調整手段は、前記可動部と、前記可動部を支持する枠体と、前記枠体に装着されて前記可動部の移動をガイドする棒状部材と、前記棒状部材の両端部側に設けられて前記可動部を付勢する一対の付勢部材とを有し、前記電気粘性流体に電気を流して前記可動部が前記棒状部材に沿って移動するときに、前記一対の付勢部材が伸縮することを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、一対の付勢部材と可動部の連動によって、簡単な構成でワーク把持装置の位置調整が可能となる。
【0009】
また、上記本発明では、前記駆動手段は、ロータリソレノイドが有する一対の駆動ピンを前記一対のスライド部材が有する一対の係合孔に作用させ、前記ロータリソレノイドの回転駆動を前記一対のスライド部材が接近又は離間する直線駆動となるように前記一対のスライド部材に伝達し、前記一対のスライド部材を通じて前記一対のフィンガーを動作させることを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、ロータリソレノイドを用いたフィンガー駆動によって、低コスト化に有利なワーク把持装置を実現できる。
【0010】
また、上記本発明では、前記ロータリソレノイドが有する回動軸にはレバー部材が回動可能に設けられ、前記ロータリソレノイドが有する前記レバー部材には前記一対の駆動ピンが立設され、前記レバー部材が有する前記一対の駆動ピンと前記一対のスライド部材が有する前記一対の係合孔とが係合状態で前記ロータリソレノイドを回動させることにより、前記ロータリソレノイドに回動可能に立設された一対の係合ピンが前記レバー部材の端部に作用して前記レバー部材が前記回動軸の軸回りに回動し、前記レバー部材の回動に伴って、前記一対のスライド部材が直線方向に作動することを特徴としてもよい。
かかる本発明の態様によれば、レバー部材を動力伝達部材することにより、例えば、ギア接続等の構成をとらなくても、ロータリソレノイドの動力をスライド部材の移動に変換できるため、低コスト化に有利なワーク把持装置を実現できる。
【0011】
本発明のワーク把持装置は、フレームと、少なくとも一対を互いに対面させて配置した、ワークを把持する複数のフィンガーと、前記フレームに摺動可能に配設され、前記フィンガーを前記ワークへの接近、及び前記ワークからの離間が可能に支持する一対のスライド部材と、前記フィンガーを前記ワークから離間する方向に移動させる駆動手段と、前記フィンガーのスライド方向と平行方向に位置を調整する位置調整手段と、を備え、前記位置調整手段は、ER流体を用いた可動部を有することを特徴とする。
かかる本発明の態様によれば、電気粘性流体(ER流体)を用いた可動部によってワーク把持手段のワークに対する位置調整が容易に行える。
【0012】
なお、本発明は、上述したワーク把持装置を備えた産業用のロボットにも広く適用できる。
かかる本発明の態様によれば、ロボットのワーク把持装置としてワークに対する位置精度に優れたロボットを実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、比較的簡単な構成で、ワークに対する位置調整が可能なワーク把持装置及びロボットを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態について
図1乃至
図5を用いてワーク把持装置の構成および動作について説明する。なお、
図1はワーク把持装置をフィンガー9,10が往復動作する方向に対して直角方向から見た図であり、
図2は分解斜視図である。
図3は主要部分の略斜視図であり、
図4、
図5はフィンガーの閉状態と開状態の簡略図である。
【0016】
まず、装置の構成を説明する。図示するように、1はロータリソレノイド(回転駆動手段)であり、断面コの字状のフレーム8に固定されている。このロータリソレノイド1の出力軸1aには、アマチャー2が一体で回転するように取り付けられている。
【0017】
また、このアマチャー2には係合ピン4が固定されている。さらに、ロータリソレノイド1の出力軸1aにはレバー部材6が有する嵌合部がグリップリング11eを用いて嵌合され、ロータリソレノイド1の駆動に併せて係合ピン4がレバー部材6の端部に作用して、レバー部材6が回動可能に取り付けられている。
【0018】
一方、レバー部材6には、一対の係合部6a,6bがロータリソレノイド1の出力軸1aが嵌合される嵌合部6cを挟んでレバー部材6の両側にそれぞれ設けられている。そして、この一対の係合部6a,6bには、コロ13a,13bを介して1本のボルト16a,16bがそれぞれスライドワッシャー15a,15bを介して挿通され、各ボルト16a,16bは、ステー12a,12bを介在させて一対のスライド部材5a,5bの一対の係合孔に固定されている。
【0019】
つまり、本実施形態のワーク把持装置では、ロータリソレノイド1を駆動すると、係合ピン4がレバー部材6の端部に物理的に作用し、レバー部材6が上記ロータリソレノイド1の出力軸(回転軸)1aの軸回りに回動する。このとき、レバー部材6に挿通された各ボルト16a,16bが一対の駆動ピンとなるため、一対のスライド部材5a,5bを直線的に移動させる。このようにロータリソレノイド1にレバー部材6を設け、一対のスライド部材5a,5bとの間で一対の駆動ピンとなるボルト16a,16bが実質的にレバー部材6に立設していることから、例えば、ギア等の接続構造がなく、比較的簡単な構造で、ロータリソレノイド1の回転駆動を一対のスライド部材5a,5bの直線駆動に変換することができ、低コスト化に有利である。
【0020】
なお、レバー部材6と出力軸1aは同位相で回るため互いに固定されていても動作に支障はないが、位相合わせと固定を確実にするために、必要な組立工数を省く目的で、嵌合させている。
【0021】
また、レバー部材には、上述したように長穴6a,6bが設けられており、スライド部材5a,5bにそれぞれ回転可能に取り付けられている筒状のコロ13a,13bと係合している。なお、このようなコロ13a,13bではなく、スライド部材5a,5bに固定された軸であってもかまわない。いずれにしても、上述したロータリソレノイド1とスライド部材5a,5bとの間に上述したコロ13a,13bのような中間部材を介在させることにより、部材間の係合を良好なものとでき、摩擦等も低減できる。
【0022】
ここで、ロータリソレノイド1が有する係合ピン4は、レバー6の外周面6dと接触している。一方、スライド部材5a,5bは、フレーム1に各グリップリング11a,11b,11c,11dを用いて固定されているガイドバー7a,7b(ガイドバーの中心線7)にそれぞれスライド可能に支持されている。また、レバー部材6のフック部には、ばね3の一端が接続されており、ばね3の他端はフレーム8の突起部に接続されている。
【0023】
そして、伸縮部材の一例であるばね3は、ロータリソレノイド1が励磁されてレバー部材6が回転すると伸びた状態となり、励磁を切ると縮んだ状態となって、レバー部材6をもとの位置に復帰させるように作用する。このため、ばね3は、ロータリソレノイド1と共に、レバー部材6(スライド部材5a,5b)の駆動手段の一部となる。
【0024】
また、スライド部材5a,5bの端部には、ステー12a,12bがそれぞれ固定されており、ステー12aにはワークWを把持するフィンガー9がビス17c,17dによって固定され、ステー12bにはフィンガー10がビス17e,17fによって固定されている。すなわち、スライド部材5a,5bは、ステー12a,12bを含めて、フィンガー9,10を開閉する部材となる。そして、各フィンガー9,10は、スライド部材5a,5bに対して着脱自在となることから、他のフィンガーとの交換も容易である。
【0025】
なお、上述したロータリソレノイド1を保持するフレーム8の上端部には、取付部材50が設けられ、ワーク把持装置をロボット本体(不図示)と連結する構造を有する。
【0026】
以下、
図4及び
図5を参照して、本実施形態のワーク把持装置の動作について詳細に説明する。
図4はフィンガー9,10が最も近づいた状態(接近状態)、すなわち閉状態を示している。
図5は、フィンガー9,10を最も離れた状態(離間状態)、すなわち開状態を示している。
【0027】
例えば、ロータリソレノイド1が励磁していない場合、ばね3の縮む力によってレバー部材6を反時計方向に付勢している。したがって、レバー部材6と係合しているスライド部材5a,5bと一体に固定されたフィンガー9,10も互いに近づくように付勢される。すなわち、ばね3によって把持力を発生している。
【0028】
ここで、上述したばね3によって把持力を発生させている状態から、ロータリソレノイド1を励磁するとアマチャーが時計方向(矢印の方向)に回転し、係合ピン4がレバー部材6の端部(外周面6d)を押し、一体に回転する。このとき、ばね3のばね力に抗して、レバー部材6はその長穴6a,6bによって、それぞれコロ13a,13bを介してスライド部材5a,5bを離間する方向にスライドさせる。
【0029】
これにより、
図5に示すように、フィンガー9,10が開いた状態となる。一方、ロータリソレノイド1の励磁をやめると、ばね3の戻し力によってレバー部材6は反時計方向に回転して閉状態に戻る。なお、ばね3はフレーム8とスライド部材5a,5bとを結ぶように取り付けてもよい。
【0030】
ここで、上述したワーク把持装置の他の構造例について、
図6乃至
図8を用いて詳細に説明する。なお、
図6は主要部分の略斜視図であり、
図4、
図5はフィンガーの閉状態と開状態の簡略図である。
【0031】
図示するように、他のワーク把持装置においては、ロータリソレノイド1が有するアマチャー2に一対の駆動ピン4a,4bが立設され、これら一対の駆動ピン4a,4bがスライド部材5a,5b側に設けられた長孔5c,5dに係合する構造を有する。
【0032】
より詳細には、
図6においてアマチャー2には駆動ピン4aと4bが固定され、スライド部材5a,5bにはそれぞれ長穴(一対の係合孔)5c,5dが設けられ、駆動ピン4aは長孔5cと係合し、駆動ピン4bは長孔5dと係合している。また、スライド部材5aにはばね3の一端がかけられており、他端はフレーム(不図示)にかけられている。
【0033】
そして、
図7に示すように、ロータリソレノイド1を励磁しない状態では、ばね力によってフィンガー9、10が閉じられている。一方、
図8に示すように、ロータリソレノイド1を励磁すると出力軸と一体のアマチャーが駆動ピン4a,4bとともに時計方向に回転する。これに伴いスライド部材5a,5bはお互いに離れる方向に移動する。
【0034】
このような構造によれば、ロータリソレノイド1が有する一対の駆動ピン4a,4bが直接的に一対のスライド部材5a,5bに係合するため、接続構造が非常にシンプルであり、従来のようなギア接続が不要となるため、低コスト化に有利である。
【0035】
なお、上述した構造では、ロータリソレノイド1を回転駆動する構造について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、ロータリソレノイド以外の回転駆動手段、例えば、DCモータ、ステッピングモータであってもよい。
【0036】
ここで、
図9乃至
図12を参照して、上述したワーク把持装置が有する取付部材(コンプライアンス機構)50の構造について詳細に説明する。
【0037】
図示するように、本実施形態のコンプライアンス機構50は、上述したワーク把持装置の上端部に装着されて、図示しないロボット本体側におけるワーク把持装置の支持部に対して取付ける取付部材を兼ねた構造となる。
【0038】
例えば、本実施形態では、このコンプライアンス機構50は、ワーク把持装置(フレーム8)に取り付け可能な取付枠51と、取付枠51に挿通されるシャフト52及び制御バー(棒状部材)53と、制御バー53が挿通される可動部54と、可動部54の上端部に固定されて図示しない支持部(ロボット)に取付けるための取付部55と、可動部54の移動をガイドするガイド部56とを有する。
【0039】
より詳細には、可動部54は、制御バー53の軸方向に沿って可動し、取付枠51及び可動部54の間に復帰ばね(一対の付勢部材)57を介在させ、可動部54の移動を復帰ばね57によって補助している。この可動部54は、シリンダ54aと、このシリンダ54a内部に充填されたER流体54bとを有する。このER流体54bは、図示しない電極を通じて電気を流すことで粘性が変化する電気粘性流体である。なお、シリンダ54a内のER流体54bは、制御バー53の連通孔に対してシール部材54cを介して封止されている。また、シリンダ54の一端部は、エンドキャップ54dによって塞がれている。
【0040】
そして、コンプライアンス機構50は、このようなER流体54bが充填されたシリンダ54a内を貫通するように挿通され、制御バー53の一部がフランジ部を有することにより、ER流体54bの抵抗を受ける構造となる。すなわち、可動部54は、通電によってER流体54bの粘性が高まると、制御バー53の軸方向への移動を制限する(移動制限状態)。一方、可動部54は、通電を切れば、制御バー53の軸方向への移動が可能となる(移動解除状態)。このようなコンプライアンス機構50での移動制限とその解除を通電制御によって切り替えることにより、ワークWに対するワーク把持装置の位置を実質的に調整することが可能となる。
【0041】
ここで、
図12(a)には、ロボット制御側からの位置指令によって、ワーク把持装置が移動した位置とワークWの位置が一致した状態を表している。
図12の一点鎖線PはワークWの中心を、二点鎖線Fはフィンガー同士間距離の中央位置を示している。
図12(b)は、ワーク把持装置がワークWからずれた位置で把持を開始した状態を表している。
【0042】
つまり、
図12(b)に示すように、ワークWからワーク把持装置がずれた位置となると、一点鎖線Pと二点鎖線Fが一致していない。この状態で把持を開始すると、まず、片側のフィンガーがワークWと接触する。この時点ではロボットがエンドエフェクター(ワーク把持装置)をワークWに向かって移動する動作は実質的に完了しているが、
図12(b)の状態では、ワークWは把持できていない。
【0043】
このとき、本実施形態では、上記コンプライアンス機構50を有するため、可動部54の移動制限を解除しておくと、
図12(b)の状態から
図12(c)の状態に移行する。これは、一対のフィンガーが、ばね3によって引き寄せられる方向に応力が付加されているためである。すなわち、ワーク把持装置が矢印の方向に、ばね3の圧縮力を受けて可動部54を通じた移動が可能となって、
図12(c)の状態に移行する。なお、この状態では、コンプライアンス機構50が有する一方の復帰ばね20aは伸び、復帰ばね20bは縮む。すなわち、この状態(
図12(c))の状態では、一点鎖線Pと二点鎖線Fは一致することとなり、ワークWの把持が可能となる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、ワークWとワーク把持装置との位置決めが十分でない場合でも、コンプライアンス機構50の許容範囲(可動範囲)内であればロータリソレノイド1への通電を切るだけで一対のフィンガーでワークWの把持が可能となる。
【0045】
ところで、
図12(c)の状態でワークWを治具30から引き抜こうとすると、ばね力によってワークWは治具30の内壁に押し付けられているため、摩擦による抵抗が発生する。ここでER流体54bに電圧を印加して、粘性抵抗を高めるとシリンダ54aと制御バー53との相対移動が制限され、可動部54が固定される。
【0046】
つまり、ワークWと治具30との摩擦力が低減され、引き抜きが可能となる。電圧を印加するタイミングは、把持動作が完了した後でかつ、引き上げ動作を開始する前あればよく、ロボット制御のシーケンスに合わせて適宜設定可能である。
【0047】
なお、ワーク把持の完了とはフィンガー9,10がばね力によってワークWを把持し、かつシリンダ54aと制御バー53との相対移動、すなわち、可動部54の移動動作がなされた後に停止した時点とする。次に電圧印加を停止すると、ER流体54bの粘性抵抗が下がり流動性が戻るため、復帰ばね20a,20bはばねの復元力によって可動部54を互いにバランスする位置、すなわち、中央部分へ復帰させる。
【0048】
また、復帰させるタイミングは、ワークWを治具30から完全に引き抜いた後であればよい。この復帰作用がワーク把持装置の把持位置の基準出し動作を可能としている。以上により、ワーク把持装置とワークWの位置が厳密に一致しなくても、ワークWの引き抜きが可能となる。したがってロボットの位置決め制御の精度を緩和できる。