【解決手段】上記課題を解決するために、鋸1は、貫通孔31が形成された鋸刃3と、鋸刃3を挿入する挿入孔2Aが形成された把持部2と、鋸刃3が前記挿入孔2Aに挿入された状態で、鋸刃3を把持部2に取り付ける取付け部4と、を備え、把持部2は、鋸刃3に重なった状態になるように取付け部4が前記挿入孔2A内に挿入可能に形成されており、挿入孔2Aの内面に開口する取付け用孔2221を有し、取付け部4は、取付け部本体4Aと、この取付け部本体4Aから鋸刃方向に突出する嵌合部42とが形成され、鋸刃3と取付け部4が挿入孔2Aに挿入された状態において、嵌合部42が、貫通孔31に挿通され、この貫通孔31からの突出部位422で取付け用孔2221に嵌合される。
前記嵌合部は、前記取付け部本体から斜め下方向に延びる可撓性を有する突出片と、この突出片の下端に設けられた前記突出部位とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の手動利器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の鋸では、のこ身(鋸刃)をのこ身保持部(把持部)に取り付けする際に、第1、第2の係止溝に対して、固定支点部及び係止環を嵌め入れて、ハンドルの回転操作をしなければならなかった。このため、鋸刃をのこ身保持部に対して取り付けするための手間がかかり、容易ではなかった。そして、上述した従来の鋸ではトルクハンドルの軸支機構を設けなければならず、のこ身保持部に対するのこ身の取り付け構造が複雑であった。更に、ハンドルが起立姿勢のときには、第1、第2の係止溝に対する固定支点部及び係止環の嵌合が解除可能であり、ハンドルが平伏姿勢のときには、第1、第2の係止溝に対する固定支点部及び係止環の嵌合が解除不可能であるように構成されるため、鋸刃に形成される第1、第2の係止溝の形状も精巧さが要求された。これによっても、のこ身保持部に対するのこ身の取り付け構造は複雑なものになっていた。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記の問題を解決するために、鋸刃等の機能部の把持部に対する取り付けが容易に出来るとともに、機能部の把持部に対する取付け構造が簡易な手動利器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る手動利器は、貫通孔(31)が形成された機能部(3)と、前記機能部(3)を挿入する挿入孔(2A)が形成された把持部(2)と、前記機能部(3)が前記挿入孔(2A)に挿入された状態で、前記機能部(3)を前記把持部(2)に取り付ける取付け部(4)と、を備え、前記把持部(2)は、前記機能部(3)に重なった状態になるように前記取付け部(4)が前記挿入孔(2A)内に挿入可能に形成されており、前記挿入孔(2A)の内面に開口する取付け用孔(2221)を有し、前記取付け部(4)は、取付け部本体(4A)と、この取付け部本体(4A)から前記機能部方向に突出度合が可変になるように突出する嵌合部(42)とを有し、前記機能部(3)と前記取付け部(4)が前記挿入孔(2A)に挿入された状態において、前記嵌合部(42)が、前記貫通孔(31)に挿通され、この貫通孔(31)からの突出部位(422)で前記取付け用孔(2221)に嵌合される、ことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、取付け部(4)が把持部(2)の挿入孔(2A)に挿入されると、取付け部(4)の嵌合部(42)が挿入孔(2A)の内面に押圧されて、この嵌合部(42)の突出度合いが、取付け部(4)の挿入孔(2A)への挿入を妨げない程度になる。そして、機能部(3)と取付け部(4)が把持部(2)の挿入孔(2A)に挿入された状態において、機能部(3)の貫通孔(31)と把持部(2)の取付け用孔(2221)と取付け部(4)の嵌合部(42)とが重なった状態になると、取付け部(4)の嵌合部(42)は、挿入孔(2A)の内面に押圧されなくなるため、嵌合部(42)の突出度合いは、挿入孔(2A)の内面に押圧されていたときより大きくなる。この状態では、取付け部(4)の嵌合部(42)が機能部(3)の貫通孔(31)に挿通され、かつ、取付け部(4)における貫通孔(31)からの突出部位(422)が把持部(2)の挿入孔(2A)に形成された取付け用孔(2221)に嵌り、取付け部(4)によって機能部(3)が把持部(2)に取り付けられる。これによって、把持部(2)の挿入孔(2A)内に機能部(3)と取付け部(4)とを挿入するだけで、機能部(3)が把持部(2)に取り付けられ、機能部(3)の把持部(2)に対する取り付けを容易に行うことができる。また、取付け部(4)の嵌合部(42)を、機能部(3)の貫通孔(31)と把持部(2)の取付け用孔(2221)とに嵌合させるだけの簡易な構成で、機能部(3)を把持部(2)に取り付けることができるため、機能部(3)の把持部(2)に対する取付け構造が簡易になる。
【0008】
(2)上記把持部(2)は、前記嵌合部(42)を前記取付け用孔(2221)から押し出して、前記嵌合部(42)と前記取付け用孔(2221)との前記嵌合を解除するための嵌合解除機構(220)を有してもよい。
【0009】
上記構成によれば、嵌合解除機構(220)によって、嵌合部(42)を取付け用孔(2221)から押し出して、嵌合部(42)と取付け用孔(2221)との嵌合を解除することで、機能部(3)の把持部(2)に対する取り外しを行うことができる。このため、嵌合部(42)を取付け用孔(4221)の反対側に押し出す直線的な操作によって、機能部(3)の把持部(2)に対する取り外しを行うことができるよう嵌合解除機構(220)を構成することができる。これによって、この取り外しに要求される操作が容易になる。
【0010】
(3)上記嵌合部は、前記取付け部本体(4A)から斜め下方向に延びる可撓性を有する突出片(421)と、この突出片(421)の下端に設けられた前記突出部位(422)とを有してもよい。
【0011】
上記構成によれば、取付け部(4)の挿入孔(2A)への挿入によって、挿入孔(2A)の内面で突出部位(422)を押圧させて、突出片(421)を撓ませて、突出部位(422)が取付け用孔(2221)の位置に到達するまで取付け部(4)を挿入孔(2A)に挿入させ、突出部位(422)が取付け用孔(2221)の位置に到達したときに、突出片(421)の撓みが解除されて突出部位(422)が取付け用孔(2221)に嵌め入れられる。同様に、突出片(421)を撓ませて突出部位(422)を取付け用孔(2221)から外し、挿入孔(2A)から取り付け部(4)を取り外すことができる。これによって、簡易な構成で、突出部位(422)を取付け用孔(2221)に着脱可能にすることができる。更に、突出片(421)が斜め下方に延びているため、挿入孔(2A)の挿入方向が下端になるように形成することで、取付け部(4)を挿入孔(2A)から抜き易くし、挿入方向の反対方向が下端になるように突出片(421)を形成することで、取付け部(4)を挿入孔(2A)に入れ易くすることができる。
【0012】
(4)上記取付け用孔(2221)は、有底孔であり、上記嵌合解除機構(220)は、前記把持部(2)における前記有底孔の底部に形成された貫通孔であってもよい。
【0013】
上記構成によれば、貫通孔に対して有底孔と反対側から有底孔側に向かって、針やピン等の押し出し部材を貫通孔に挿入することで、嵌合部(42)を取付け用孔(2221)から押し出して、嵌合部(42)と取付け用孔(2221)との嵌合を解除することができる。これによって、嵌合解除機構を、貫通孔を形成するだけの簡易な構造にすることができる。
【0014】
(5)上記機能部の鞘(5)を更に備え、上記取付け部本体(4A)は、ユーザに押圧可能に形成された操作部(43)を備え、この操作部(43)における前記機能部(3)に面する部位に、機能部(3)と反対方向に操作部(43)を付勢する付勢手段(434)を有するとともに、前記操作部(43)の前記機能部(3)に面する部位の反対面側に、前記鞘(5)との係合部位(432)が形成されてもよい。そして、前記操作部(43)がユーザに押圧されていない状態で、前記係合部位(432)と前記鞘(5)とが係合され、前記操作部(43)がユーザに押圧されている状態で、前記係合部位(432)と前記鞘(5)との係合が解除されてもよい。
【0015】
上記構成によれば、取付け部(4)の操作部(43)がユーザに押圧されていない状態で、係合部位(432)と前記鞘(5)とが係合される。この様に、取付け部(4)を機能部(3)を、把持部(2)に取り付ける構成としてだけでなく、鞘(5)を把持部(2)に固定する構成としても利用することで、別に鞘(5)を把持部(2)に固定する構成を設ける必要がなくなり、鋸の構造がより簡易なものとなる。更に、操作部(43)がユーザに押圧されている状態で、前記係合部位(432)と前記鞘(5)との係合が解除されるため、鞘(5)の把持部(2)に対する固定の解除が容易になる。
【0016】
(6)上記機能部は鋸刃であってもよく、手動利器は鋸であってもよい。
【0017】
鋸は前後方向に動かされて、金属や木材等の固い対象物を切る刃物であるが、上記鋸刃の把持部への取り付け構造によれば、固い対象物を切る前後方向の動作によっても、鋸刃が把持部から抜け落ち難いように、鋸刃を把持部に対して強固に固定することができる。なお、本発明の手動利器には、鋸、包丁、ナイフ、剃刀、彫刻刀等の刃(機能部)を有する手動器具が広く含まれるとともに、ねじ部(機能部)を有するねじ回し等の手動工具や、スプーン、フォーク等の刃を有さない手動器具も含む。本発明の手動利器は、把持部に対して、機能部が取り付け可能なものであれば、如何なるものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、機能部の把持部に対する取り付けが容易に出来るとともに、機能部の把持部に対する取付け構造が簡易な鋸を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施形態(本実施形態)について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明に係る手動利器を替刃式鋸に適用した形態である。
【0021】
(替刃式鋸の構成)
以下に、
図1から
図6を参照して、本実施形態に係る替刃式鋸の構成について説明する。
図1は、(a)は本実施形態に係る鋸の平面図であり、(b)は本実施形態に係る鋸の底面図である。
図2(a)は、鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の平面図であり、
図2(b)は、鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の底面図である。
図3(a)は、鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の正面図であり、
図3(b)は、鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の背面図である。
図4(a)は鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の左側面図であり、
図4(b)は鞘を外した状態の本実施形態に係る鋸の右側面図である。
図5(a)は
図2(b)の鋸のA−A矢視断面図であり、
図5(b)は
図2(b)の鋸において上側鞘部と上側把持部とを外した状態の図である。
図6本実施形態に係る鋸の分解図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る鋸1は、ユーザが手等で把持するための把持部2と、この把持部2に対して着脱自在に取り付けられる鋸刃3と、鋸刃3を把持部2に着脱自在に取り付ける取付け部4と、鋸刃3の鞘5とを備える。なお、本実施形態では、鋸1は、替刃式鋸であり、鋸刃3が刃こぼれしたとき等に、他の鋸刃3に取り換えることが可能になっているが、替刃式鋸でなくてもよい。以下に、把持部2、鋸刃3、取付け部4、及び鞘5の各部の構成について詳細に説明する。
【0023】
(鋸の構成:鋸刃3)
まず、鋸刃3の構成について説明する。鋸刃3は、金属製の平板状の部材であり、その一縁に複数の鋸歯が連続的に形成されている。
図6で示すように、鋸刃3には、上下方向に貫通孔31が形成されるとともに、その根元側の縁に切欠き32が形成されている。
【0024】
(鋸の構成:把持部2)
把持部2は、
図5(a)で示すように、鋸刃3の根元を一端側(左端側)から挿入させて、この根元を収容する長尺状のケースであり、上側把持部21と下側把持部22とが上下方向から組み合わされて形成されている。上側把持部21は、上側把持部本体212が滑り止めカバー211に覆われて形成されている。なお、上側把持部本体212は、例えばABS樹脂等の樹脂製であり、滑り止めカバー211はエラストマー等のゴム製である。上側把持部本体212の内側には、補強のための横リブ及び縦リブが複数形成されている。また、上側把持部21は、鋸刃3の挿入側の一端に上面視で半円状の切欠き21Aが形成されている。なお、この切欠き21Aは、上側把持部本体212における切欠き212Aと滑り止めカバー211における切り欠き211Aとから形成されている。
【0025】
上側把持部本体212の内側における切欠き21Aの右側には、鋸刃3と取付け部4とが挿入可能な挿入空間2110が形成されている。なお、上側把持部本体212の内側において挿入空間2110と他の空間とは、リブによって仕切られている。鋸刃3が把持部2に取り付けられた状態では、鋸刃3が取付け部4の下に重なるように、すなわち、上側把持部21と鋸刃3との間に取付け部4が配置されるように、鋸刃3と取付け部4とが挿入空間2110に挿入される。これによって、取付け部4の左端部を切欠き21Aで係止させて、取付け部4の把持部2への挿入度合が規制できるようになっている。また、上側把持部21(上側把持部本体212)の短手方向の縁において、複数個の係止部が形成されており、この複数個の係止部によって、上側把持部21は下側把持部22と係止される。
【0026】
下側把持部22は、下側把持部本体222が滑り止めカバー221に覆われて形成されている。なお、例えば、下側把持部本体222は、例えばABS樹脂等の樹脂製であり、滑滑り止めカバー221は、エラストマー等のゴム製である。下側把持部本体222の内側には、補強のための横リブ及び縦リブが複数形成されている。また、下側把持部本体222の内側には、一端側(左端側)に挿入空間2222が形成されており、上側把持部21と下側把持部22とを組み合わせたときに、この挿入空間2222と上側把持部本体212の挿入空間2110とが合わさって、把持部2の左側に開口する挿入孔2Aが形成され、この開口から鋸刃3の根元と取付け部4とが挿入されるようになっている。なお、挿入空間2222の右縁の方が、挿入空間2110の右縁よりも右方に形成されており、挿入空間2222の右縁部分の下側の位置であって、下側把持部本体222の内側に、
図5(b)で示すように、鋸刃係止用突起2223が形成されている。鋸刃係止用突起2223が鋸刃3の根元に形成された切欠き32内に嵌ることで鋸刃3の根元を係止する。これによって、鋸刃3の根元が鋸刃係止用突起2223より右側に挿入されることが防止される。
【0027】
下側把持部本体222には、挿入孔2A(挿入空間2222)の内面に開口する平面視で四角形状の取付け用孔2221が形成されている。この取付け用孔2221には、後述する取付け部4の嵌合部42が鋸刃3の貫通孔31に挿通した状態で嵌め入れられ、これによって、鋸刃3が把持部2に固定される。
【0028】
取付け用孔2221は有底孔であり、下側把持部22(下側把持部本体222と滑り止めカバー221)におけるこの有底孔の底部には、上下方向の貫通孔220が嵌合解除機構として形成されている。貫通孔220は、下側把持部本体222に形成された貫通孔2201と滑り止めカバー221に形成された貫通孔2201Aとからなる。貫通孔2201は、その内面が下に向かう程内側に傾斜するように形成され、内側の開口面積より外側の開口面積が狭くなっている。また、貫通孔2201Aの外側の開口面積は、貫通孔2201の外側の開口面積よりも広くなっている。貫通孔2201内に外側から内側に向かって、針やピン等の押し出し部材を挿入することで、嵌合部42を取付け用孔2221から押し出して、嵌合部42と取付け用孔2221との嵌合が解除され、貫通孔220は、嵌合部42と取付け用孔2221との嵌合を解除するための嵌合解除機構として機能する。
【0029】
上記構成によれば、嵌合部42を取付け用孔4221の反対側に押し出す直線的な操作によって、鋸刃3の把持部2に対する取り外しを行うことができる。これによって、この取り外しに要求される操作が容易になる。また、貫通孔220を形成するだけの簡易な構造で嵌合解除機構を形成することができる。
【0030】
下側把持部22(下側把持部本体222)の短手方向の縁において、複数個の係止部が形成されており、この複数個の係止部が上側把持部21の係止部と係止することによって、下側把持部22は上側把持部21と係止されて組み合わされることで、把持部2が構成される。
【0031】
把持部2の右端には、上下方向に貫通する孔が形成されており、この孔等に紐等を通すことができるようになっている。
【0032】
(鋸の構成:取付け部4)
取付け部4は、樹脂製の部材であり、
図6で示すように、取付け部本体4Aと、この取付け部本体4Aから鋸刃3方向に突出度合が可変になるように突出する嵌合部42とを有する。
図6で示すように、取付け部本体4Aは、ユーザに押圧可能に形成された操作部43と、操作部43から右方向に延びて、中央に貫通孔41Aが形成された板状の支持部41とを備える。
【0033】
(鋸の構成:取付け部4:嵌合部42)
嵌合部42は、支持部41における貫通孔41Aの右縁(取付け部本体4A)に延設されてこの右縁から斜め左下方向に延びる可撓性を有する板状の突出片421と、この突出片421の下端に設けられた突出部位422とを有する。突出部位422は、突出片421の下端から下方に延設されて形成された底面が四角形状の部位であり、この底面部の縦横寸法が鋸刃3の貫通孔31及び把持部2の取付け用孔2221の縦横寸法に合致するように形成されている。これによって、取付け部4の挿入孔2Aへの挿入によって、挿入孔2Aの内面で突出部位422を押圧させて、突出片421を撓ませて、突出部位422が取付け用孔2221の位置に到達するまで取付け部4を挿入孔2Aに挿入させ、突出部位422が取付け用孔2221の位置に到達したときに、突出片421の撓みが解除されて突出部位422が貫通孔31及び取り付け用孔2221に嵌め入れられる。同様に、突出片421を撓ませて突出部位422を取付け用孔2221から外し、挿入孔2Aから取付け部4を取り外すことができる。これによって、簡易な構成で、突出部位422を取付け用孔2221に着脱可能にすることができる。
【0034】
また、突出片421は、その根元が断面視でU字状に屈曲されている。これによって、突出片421を撓ませて突出部位422を取付け用孔2221から外し易くなり、鋸刃3の取り外しが容易になる。また、突出片421の平坦部位と水平面との間の角度(左側の角度)は、10度以上25度未満(本実施形態では、16度)になっており、これによって、鋸1が固い対象物を切る動作(前後方向の動作)をしても、鋸刃3が把持部2から抜けにくく、かつ、鋸刃3の把持部2からの取り外しも円滑に行うことができる。
【0035】
(鋸の構成:取付け部4:取付け部本体4A)
取付け部本体4Aの支持部41は、その右下部において下方に延設された支持台411が形成されている。支持台411は、嵌合部42の突出部位422が貫通孔31及び把持部2の取付け用孔2221に嵌った状態で、鋸刃3の上面に当接するようになっている。
【0036】
操作部43は、周縁が下方に突出するように形成された円板の上面中央に、円柱431が形成された形状を有する。この円柱431の右側部分の面が、把持部2における上側把持部21に形成された切欠き21Aの切欠き面に当接することで、この当接位置より右方への取付け部4の挿入孔2Aへの挿入が規制される。
【0037】
そして、操作部43は、その円板の下面中央から延設されて、下方に突出する円筒433が形成されており、この円筒433内に例えばバネ等の付勢手段434が嵌め入れられる。この付勢手段434は、その上端が操作部43の円板の下面に当接され、下端が鋸刃3の上面に当接される。これによって、操作部43は、鋸刃3に面する部位に、鋸刃3と反対方向に操作部43を付勢する付勢手段434を有することとなる。操作部43における円柱431の左方に(操作部43の前記鋸刃3に面する部位の反対面側に)、上方に突出する突起432が形成されており、突起432が鞘5の縁と係合可能になっている。操作部43の円柱431の上面がユーザの指等で押圧されると、操作部43が下方向に移動して、突起432と鞘5の縁との係合が解除され、この指等の押圧が解除されると、操作部43が付勢手段434の付勢力によって上方向に移動して、突起432と鞘5の縁とが係合される。この様に、取付け部4を、鋸刃3を把持部2に取り付ける構成としてだけでなく、鞘5を把持部2に固定する構成としても利用することで、別に鞘5を把持部2に固定する構成を設ける必要がなくなり、鋸1の構造がより簡易なものとなる。
【0038】
なお、操作部43の下縁の上下方向における位置は、支持部41の支持台411の下縁上下方向における位置と同じかそれ以上であることが好ましい。これによって、操作部43の押圧操作が好適に行うことができる。
【0039】
(鋸の構成:鞘5)
図1、
図5(a)及び
図6で示すように、鞘5は、右端に開口する孔が形成されており、この孔に鋸刃3の把持部2からの突出部分を挿入させることで鋸刃3の突出部分を覆う。鞘5は、上側鞘部51と下側鞘部52とを上下方向から組み合わせて固定されてなる。上側鞘部51と下側鞘部52は例えば樹脂製であり、上側鞘部51と下側鞘部52との内側には、複数の補強リブが形成されている。上側鞘部51の右端部分には、平面視で半円状の切欠き5Aが形成されており、この切欠き5Aの縁には、係止用突起517が形成されている。操作部43の円柱431がユーザの指等で鋸刃3方向に押圧された状態で、鞘5が鋸刃3に取り付けられると、鞘5の切欠き5Aの縁面に、取付け部4の円柱431の左側部分の面が当接する。この当接状態で、円柱431の押圧を解除すると、係止用突起517と取付け部4における突起432とが係合することで、鞘5が把持部2に固定されるようになっている。
【0040】
(鋸の組み立て方法)
以下に、
図5及び
図6を用いて、鋸1の組み立て方法を説明する。上側鞘部51と下側鞘部52とを組み合わせて固定して、鞘5を形成する。そして、上側把持部本体212と下側把持部本体222とをその短手方向の縁で係合させて組み合わせる。更に、上側把持部本体212の表面(上面)に滑り止めカバー211を取り付け、下側把持部本体222の表面(下面)に滑り止めカバー221を取り付けて、把持部2を形成する。そして、後述する、鋸刃3の把持部2への取り付け方法によって、鋸刃3を把持部2へ取り付ける。その後に、取付け部4の円柱431の上面を指等で押圧しながら、鞘5を鋸刃3に取り付け、取付けが終わったら、円柱431の押圧を解除して、鞘5を取付け部4によって把持部2に固定する。
【0041】
(鋸刃の把持部への取り付け方法)
以下に、
図7を用いて、鋸刃3の把持部2に対する取り付け方法を説明する。
図7は、鋸刃3の把持部2に対する取り付け方法を示す図である。
図7(a)で示すように、鋸刃3の根元を挿入孔2Aに挿入する。次に、
図7(b)で示すように、取付け部4の嵌合部42における突出部位422を刃物3の貫通孔31に内に上方から嵌め入れる。そして、取付け部4と鋸刃3とを重ねた状態で、挿入孔2Aに更に挿入する。このときには、挿入孔2Aの内面に押圧されて突出片421が撓み、支持部41の貫通孔41A内に突出部位422が嵌り込む。これによって、嵌合部42の突出度合いが、取付け部4の挿入孔2Aへの挿入を妨げない程度になり、取付け部4の支持部41と嵌合部42とが挿入孔2Aに挿入できるようになっている。
【0042】
そして、
図7(c)で示すように、挿入空間2222の右縁まで挿入されて、鋸刃3の根元に形成された切欠き32内に、鋸刃係止用突起2223が嵌るまで、鋸刃3の根元は挿入される。この状態では、鋸刃3の貫通孔31と取付け部4の嵌合部42(突出部位422)が、把持部2の取付け用孔2221に重なった状態になり、これによって、取付け部4の突出部位422は、挿入孔2Aの内面に押圧されなくなる。このため、嵌合部42の突出度合いは、挿入孔2Aの内面に押圧されていたときより、大きくなる。この状態では、取付け部4の嵌合部42(突出部位422)が鋸刃3の貫通孔31に挿通され、かつ、取付け部4における貫通孔31からの突出部位422が把持部2の挿入孔2Aに形成された取付け用孔2221に嵌って、取付け部4によって鋸刃3が把持部2に取り付けられる。この様に、把持部2の挿入孔2A内に鋸刃3と取付け部4とを挿入するだけで、鋸刃3が把持部2に取り付けられ、鋸刃3の把持部2に対する取り付けを容易に行うことができる。また、取付け部4の嵌合部42(突出部位422)を、鋸刃3の貫通孔31と把持部2の取付け用孔2221とに嵌合させるだけの簡易な構成で、鋸刃3を把持部2に取り付けることができるため、鋸刃3の把持部2に対する取付け構造が簡易になる。
【0043】
(鋸刃の把持部からの取り外し方法)
以下に、
図8を用いて、鋸刃3の把持部2に対する取り外し方法を説明する。
図8は、鋸刃の把持部からの取り外し方法を示す図である。
図8(a)で示すように、貫通孔220内に外側から内側に向かって、針等の押し出し部材を挿入する。これによって、嵌合部42(突出部位422)を取付け用孔2221から押し出して、嵌合部42(突出部位422)と取付け用孔2221との嵌合が解除される。この解除状態で、
図8(b)で示すように、取付け部4と鋸刃3とを挿入孔2Aから引き出していき、
図8(c)で示すように、取付け部4と鋸刃3を挿入孔2Aから完全に引き出して、鋸刃3を把持部2から取り外す。なお、把持部2に対して、新しい鋸刃3を取り付ける場合には、
図7を用いて上述した方法が用いられる。
【0044】
上述した本実施形態の構成によれば、取付け部4が把持部2の挿入孔2Aに挿入されると、取付け部4の嵌合部42が挿入孔2Aの内面に押圧されて、この嵌合部42の突出度合いが、取付け部4の挿入孔2Aへの挿入を妨げない程度になる。そして、鋸刃3と取付け部4が把持部2の挿入孔2Aに挿入された状態において、鋸刃3の貫通孔31と把持部2の取付け用孔2221と取付け部4の嵌合部42とが重なった状態になると、取付け部4の嵌合部42は、挿入孔2Aの内面に押圧されなくなる。このため、嵌合部42の突出度合いは、挿入孔2Aの内面に押圧されていたときより、突出度合が大きくなる。この状態では、取付け部4の嵌合部42が鋸刃3の貫通孔31に挿通され、かつ、取付け部4における貫通孔31からの突出部位422が把持部2の挿入孔2Aに形成された取付け用孔2221に嵌ることで、取付け部4によって鋸刃3が把持部2に取り付けられる。これによって、把持部2の挿入孔2A内に鋸刃3と取付け部4とを挿入するだけで、鋸刃3が把持部2に取り付けられ、鋸刃3の把持部2に対する取り付けを容易に行うことができる。また、取付け部4の嵌合部42を、鋸刃3の貫通孔31と把持部2の取付け用孔2221とに嵌合させるだけの簡易な構成で、鋸刃3を把持部2に取り付けることができるため、鋸刃3の把持部2に対する取付け構造が簡易になる。
【0045】
(変形例)
(1)本実施形態では、貫通孔220が、嵌合部42(突出部位422)と取付け用孔2221との嵌合を解除するための嵌合解除機構があるが、嵌合解除機構は貫通孔220でなくてもよい。嵌合解除機構は、取付け部4の嵌合部42(突出部位422)を把持部2の取付け用孔2221から押し出して、嵌合部42(突出部位422)と取付け用孔2221との嵌合を解除することが出来れば如何なる機構を採用してもよい。例えば、把持部2における取付け用孔2221の下方に、操作ボタンを配置し、この操作ボタンの押圧によって操作ボタンの根元を取付け用孔2221内に突出させて、嵌合部42(突出部位422)を把持部2の取付け用孔2221から押し出してもよい。
【0046】
(2)本実施形態では、突出片421は、取付け部本体4Aから斜め左下方向に延びるように形成されているが、
図9で示すように、嵌合部42´において、下端に突出部位422´を有する突出片421´が取付け部本体4Aから斜め右下方向に延びるように形成されてもよい。突出片421は、取付け部本体4Aから斜め下方向に延びるように形成されていれば、どのように形成されていてもよい。
【0047】
(3)本実施形態では、突出片421を撓ませることで、嵌合部42(突出部位422)の鋸刃3方向への突出度合を可変としているが、突出片421を用いずに嵌合部(突出部位422)の鋸刃3方向への突出度合を可変としてもよい。例えば、取付け部本体4Aの下方にバネ等の一端が取り付けられ、このバネ等の他端が突出部位422に取り付けられることで、嵌合部(突出部位422)の突出度合を可変としてもよい。
【0048】
(4)また、
図10及び
図11で示すように、嵌合部42´´において、突出部位422´´の底面における左端に、下方に延びる爪423が形成されていてもよい。この爪423は、突出部位422´´の底面の左縁において、前後方向に亘って形成されており、この前後方向の中央に切欠きを有する。この様に、突出部位422´の底面左縁に爪423が形成されていることで、爪423が取付け用孔2221の左上縁に引っ掛かり、ユーザの意思に反して(ユーザが把持部2から鋸刃3を取り外す操作をしていないにもかかわらず)、突出部位422´´が取り付け用孔2221´から外れることが防止される。
爪423は、左右方向に沿って垂直に切断する断面が、三角形であり、三角形の一つの頂点が下端となっている。なお、この三角形のうち、左側の辺よりも右側の辺の方の傾斜度合いが大きくなっている。
図11で示すように、左側の辺と水平面(三角形の下端に接する水平面)との間の左側の角度は50度以上70度未満となっており(本実施形態では60度)、右側の辺と水平面(三角形の下端に接する水平面)との間の右側の角度は30度以上50度未満となっている(本実施形態では45度)。この様な角度に形成されることで、鋸刃3の把持部2への着脱時には、爪423が引っ掛かることなく、突出部422´を取り付け用孔2221´に嵌め入れ、取り外しすることができ、また、挿入孔2A内に挿入、取り外しすることができる。
なお、把持部3の取り付け用孔2221´内には、補強のために、平面視において十字状のリブ2221´´が形成されているが、上述したように、爪423に切り欠きが形成されているため、爪423がリブ2221´´に当たることなく、突出部位422´を取り付け用孔2221´に嵌め入れることができる。
【0049】
(5)また、
図10で示すように、突出片421´´の根元がU字状に形成されておらず、平坦であってもよい。本実施形態では、突出片421の根元がU字状に形成されていることで、突出片421を撓ませて突出部位422を取り付け用孔2221から抜けやすくして、鋸刃3の取り外しを容易にすることができるという利点があるが、
図10で示す変形例では、突出片421´´の根元がU字状に形成されていないことで、ユーザが鋸刃3を取り外す操作をしていないにもかかわらず、突出片421´´が撓んで突出部位422´´が取り付け用孔2221´から抜けてしまうことが防止されるという利点がある。鋸1は、金属、木材等の硬質な対象物を前後方向の動作で切る手動利器であるため、鋸刃3を挿入孔2から引き出す強い力がかかる。このため、鋸1においては、切断する対象物によっては、本変形例のように、突出片421の根元がU字状に形成せず、平坦にすることが好ましい場合がある。
【0050】
(6)本実施形態では、本発明に係る手動利器を鋸1に適用しているが、本発明は鋸1に限定されず、他の手動利器に適用してもよい。機能部を把持部に取り付ける構成を備える手動利器であれば、如何なる手動利器であっても本発明を適用することができる。手動利器とは、例えば、鋸、包丁、ナイフ、剃刀、彫刻刀等の刃(機能部)を有する手動器具が広く含まれるとともに、ねじ部(機能部)を有するねじ回し等の手動工具や、スプーン、フォーク等の刃を有さない手動器具も含む。