特開2016-221628(P2016-221628A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221628(P2016-221628A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ドリル
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   B23B51/00 Z
   B23B51/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-110650(P2015-110650)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】成毛 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川出 保彦
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037BB17
3C037DD00
3C037DD01
(57)【要約】
【課題】延び気味の切屑が生成されるような場合でも、切屑が加工穴の内周面に当たって仕上げ面粗さや加工品位が損なわれるのを防ぐ。
【解決手段】軸線O回りに回転されるドリル本体1の先端部外周に切屑排出溝5が形成され、この切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面5aの先端に切刃6が設けられるとともに、切屑排出溝5のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面5bの先端外周部には、軸線O回りの外径が切刃6の外径よりも小さく、かつ先端縁が軸線O方向において切刃6よりも後端側に位置して切刃6のすくい面に対向するようにドリル回転方向Tの反対側に延びる切屑制御壁9が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線回りに回転されるドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端に切刃が設けられるとともに、上記切屑排出溝のドリル回転方向とは反対側を向く壁面の先端外周部には、上記軸線回りの外径が上記切刃の外径よりも小さく、かつ先端縁が上記軸線方向において上記切刃よりも後端側に位置して該切刃のすくい面に対向するようにドリル回転方向の反対側に延びる切屑制御壁が設けられていることを特徴とするドリル。
【請求項2】
上記切屑制御壁は、上記ドリル本体に着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のドリル。
【請求項3】
上記切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端部にはインサート取付座が形成されていて、このインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートに上記切刃が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドリル。
【請求項4】
上記軸線方向先端側から見て、2つの上記切刃が該軸線に対して軸線側と外周側に位置しているとともに、上記切屑制御壁のドリル回転方向とは反対側の端部と上記軸線とを結ぶ直線が上記切刃または該切刃の延長線に対してなす交差角が30°〜90°の範囲内とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のドリル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線回りに回転されるドリル本体の先端外周部に切屑排出溝が形成されるとともに、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端に切刃が設けられたドリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなドリルとして、例えば特許文献1には、ドリル本体に着脱可能に取り付けられる切削インサートに切刃が形成された刃先交換式ドリルにおいて、ドリル本体の剛性を低下させることなく切屑排出性を向上させることを目的に、中心刃の装着される切屑排出溝の先端部のドリル回転方向とは反対側を向くヒール形成面を、ドリル回転方向を向くチップ座形成面と略直交して外周側に位置するヒール近接面と、その軸心側にあって凹みを形成する湾曲面との組み合わせにより構成したものが提案されている。
【0003】
特許文献1によれば、このような刃先交換式ドリルでは、ヒール形成面の湾曲面によって中心刃から流出する切屑が押し潰されないだけのポケット空間を確保して円錐螺旋状に規則的にカールした切屑をスムースに加工穴の外に排出できるとともに、ヒール形成面の外周側に位置するヒール近接面によって切削インサートの背面におけるドリル本体部分が従来と同程度に確保できるので、切削力に抗して切削インサートを支持してドリル剛性を低下させることがないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−090715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなドリルでは、上述のように円錐螺旋状に規則的にカールする切屑が生成される場合には切屑排出性を確保することができても、例えば一般構造用圧延鋼材のうちでもSS400材のように柔らかくて切屑が延び気味となる被削材に穴明け加工を施す場合には、湾曲面によって押し潰されなかった切屑がそのまま加工穴の内周面に接触して擦れてしまい、この内周面を傷つけて仕上げ面粗さや加工品位を損なうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のように延び気味の切屑が生成されるような場合でも、切屑が加工穴の内周面に当たって仕上げ面粗さや加工品位が損なわれるのを防ぐことが可能なドリルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線回りに回転されるドリル本体の先端部外周に切屑排出溝が形成され、この切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端に切刃が設けられるとともに、上記切屑排出溝のドリル回転方向とは反対側を向く壁面の先端外周部には、上記軸線回りの外径が上記切刃の外径よりも小さく、かつ先端縁が上記軸線方向において上記切刃よりも後端側に位置して該切刃のすくい面に対向するようにドリル回転方向の反対側に延びる切屑制御壁が設けられていることを特徴とする。
【0008】
このようなドリルによれば、切屑排出溝のドリル回転方向とは反対側を向く壁面の先端外周部に、切刃のすくい面に対向するようにドリル回転方向の反対側に延びる切屑制御壁が設けられているので、延び気味の切屑が生成される場合でも、この切屑は切刃のすくい面から外周側に延びた後に、加工穴の内周面に接触することなく、上記切屑制御壁の内壁面に当たって強制的にカールさせられるように制御され、分断されて排出される。
【0009】
このため、切屑の接触による加工穴の内周面の仕上げ面粗さや加工品位を確実に防ぐことができる。しかも、この切屑制御壁は上記軸線回りの外径が上記切刃の外径よりも小さく、かつ先端縁が上記軸線方向において切刃よりも後端側に位置しているので、切屑制御壁が加工穴と干渉することはなく、穴加工に支障を来すこともない。
【0010】
ここで、上記切屑制御壁は、ドリル本体に一体に形成されていてもよいが、ドリル本体に着脱可能に取り付けられる構成とすることにより、切屑の接触によって切屑制御壁が摩耗したり損傷したりした場合でも交換して穴明け加工を行うことができる。また、被削材の材質や加工条件により適した材質の切屑制御壁に交換して穴明け加工を行うことも可能となる。
【0011】
また、特にこのように切屑制御壁がドリル本体に着脱可能に取り付けられる場合には、切屑排出溝のドリル回転方向を向く壁面の先端部にインサート取付座が形成されていて、このインサート取付座に着脱可能に取り付けられる切削インサートに上記切刃が形成された、刃先交換式ドリルに本発明を適用することにより、切屑制御壁が取り付けられていない状態において上記インサート取付座を容易に形成することが可能となる。ただし、切刃がドリル本体に直接形成されたソリッドドリルや、切刃が形成されたインサートをドリル本体にロウ付け等によって接合したドリルに本発明を適用することも勿論可能である。
【0012】
なお、上記軸線方向先端側から見て、2つの上記切刃が該軸線に対して軸線側と外周側に位置している2枚刃のドリルの場合には、上記切屑制御壁のドリル回転方向とは反対側の端部と上記軸線とを結ぶ直線が上記切刃または該切刃の延長線に対してなす交差角は30°〜90°の範囲内とされているのが望ましい。この範囲よりも交差角が大きいと、切屑制御壁によって切屑と加工穴内周面との接触を十分に防ぐことができなくなるおそれがある一方、この範囲よりも交差角が小さいと切屑排出溝の先端部において切屑詰まりを生じるおそれがある。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、切屑制御壁によって切屑を加工穴の内周面に接触させることなくカールするように制御することができ、加工穴の仕上げ面粗さや加工品位の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す側面図である。
図2図1に示す実施形態の先端部の拡大図である。
図3図1に示す実施形態の先端部を図1の反対側から見た拡大側面図である。
図4図1に示す実施形態の先端部の拡大斜視図である。
図5図2におけるZZ断面を部分破断した図1に示す実施形態の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1ないし図5は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態においてドリル本体1は、鋼材等の金属材料によって図1に示すように軸線Oを中心とした多段の概略円柱状に一体形成され、その後端側(図1ないし図4において右側)の部分は外形円柱状のシャンク部2とされるとともに、このシャンク部2の先端側(図1ないし図4において左側)には鍔部3が形成され、この鍔部3のさらに先端側はシャンク部2よりも小径の外形円柱状の切刃部4が形成されている。
【0016】
シャンク部2の外周面には軸線Oに平行な平面状の切欠部2aが形成されているとともに、シャンク部2と鍔部3との間にはシャンク部2よりも僅かに外径の小さなくびれ部2bが形成されている。また、鍔部3には、シャンク部2側から先端側に向けて順に、シャンク部2よりも外径の大きな軸線Oを中心とする円板部3aと、この円板部3aから先端側に向かうに従い外径が漸次縮径するやはり軸線Oを中心とした円錐台部3bとが形成されており、この円錐台部3bの先端の外径は切刃部4の外径と等しくされている。
【0017】
さらに、ドリル本体1の先端部である切刃部4の外周には、ドリル本体1の先端面4aから後端側に向けて延びる切屑排出溝5が形成されていて、この切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面5aの先端には切刃6が設けられるとともに、切屑排出溝5の後端部は鍔部3に達してその上記円錐台部3bにおいて外周側に切れ上がっている。このようなドリルは、シャンク部2が工作機械の主軸に把持されてドリル本体1が軸線O回りにドリル回転方向Tに回転されつつ該軸線O方向先端側に送り出され、上記切刃6によって被削材に穴加工を施す。
【0018】
本実施形態では、切刃部4の外周に2条の切屑排出溝5が軸線Oに関して互いに反対側に形成されており、これらの切屑排出溝5はドリル本体1の後端側に向かうに従い軸線O回りにドリル回転方向Tとは反対側に向かうように捩れている。また、これらの切屑排出溝5は、切刃部4の上記先端面4aから僅かに後端側に離れた位置から後端側では、軸線Oに直交する断面において溝内面が内周側に凹む凹曲線状をなすとともに、軸線Oに対して偏った位置に形成されている。
【0019】
一方、これらの切屑排出溝5は、切刃部4の先端部では、軸線Oに直交する断面において図5に示すようにドリル回転方向Tを向く上記壁面5aとドリル回転方向Tの反対側を向く壁面5bとが鈍角に交差する直線状をなすV字状に形成されるとともに、軸線Oに関して非対称に形成されている。そして、それぞれの切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く上記壁面5aの先端部にはインサート取付座7が形成されており、上記切刃6はこのインサート取付座7に着脱可能に取り付けられる切削インサート8に形成されている。すなわち、本実施形態のドリルは、2枚刃の刃先交換式ドリルである。
【0020】
これらのインサート取付座7に取り付けられる切削インサート8は、ドリル本体1よりも硬度の高い超硬合金等の硬質材料により、本実施形態では正方形板状形成されている。このような切削インサート8は、その一つの正方形面がすくい面としてドリル回転方向Tに向けられるとともに、このすくい面とされる一つの正方形面の4つの辺稜部に形成された直線状の上記切刃6の一つを上記先端面4aから突出させて、クランプネジによりインサート取付座7に着脱可能に取り付けられる。
【0021】
なお、本実施形態の切削インサート8は、上記すくい面の4つの辺稜部に形成された切刃6に連なる側面(逃げ面)が、反対側の他の一つの正方形面に向かうに従い後退するように形成されたポジティブタイプの切削インサートとされている。また、インサート取付座7はこの他の一つの正方形面が着座する着座面と、この着座面から屹立して切削インサート8の上記側面が当接する壁面とを備えている。
【0022】
さらに、2条の切屑排出溝5のうち、図3と、図5において左上に示す一方の切屑排出溝5は、先端部の上記壁面5aが切刃部4の外周面から内周側に向けて軸線Oを越えて延びるように形成されている。この一方の切屑排出溝5のインサート取付座7に取り付けられる切削インサート8は、上記すくい面に対向する方向から見て図3に示すように、そのドリル本体1の先端内周部に突出して内周刃とされる切刃6が軸線Oと交差するように配置される。なお、ドリル本体1には、この一方の切屑排出溝5のインサート取付座7に隣接するようにして先端面4aに開口するクーラント穴1aが形成されている。
【0023】
これに対して、図2と、図5において右下に示す他方の切屑排出溝5は、その上記壁面5aが内周側に向けて軸線Oに至る手前でドリル回転方向Tとは反対側を向く上記壁面5bに交差するように形成されている。従って、この他方の切屑排出溝5は一方の切屑排出溝5よりも溝幅が小さい。さらに、この他方の切屑排出溝5のインサート取付座7に取り付けられる切削インサート8は、ドリル本体1の先端外周部に突出して外周刃とされる切刃6が、軸線O回りの回転軌跡において一方の切屑排出溝5の切削インサート8の内周刃とされる上記切刃6とオーバーラップするとともに、該切刃6の外周端が切刃部4の外周面から突出するように配置される。
【0024】
そして、これらの切屑排出溝5のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面5bの先端外周部には、それぞれの壁面5aの先端部に取り付けられた切削インサート8の上記内外周刃とされる切刃6のすくい面に対向するようにドリル回転方向Tの反対側に延びる切屑制御壁9が設けられている。これらの切屑制御壁9は、軸線O回りの外径が切刃6の外径、すなわち上記他方の切屑排出溝5のインサート取付座7に取り付けられた切削インサート8の外周刃とされる上記切刃6の外周端が軸線O回りになす円の直径よりも小さく、かつその先端縁が軸線O方向において2つの切削インサートの8の上記内外周刃とされる切刃6よりも後端側に位置するように配置されている。
【0025】
本実施形態における切屑制御壁9は、ドリル本体1と同様の鋼材や切削インサート8と同様の超硬合金など、ドリル本体1の材質の硬度以上の硬度を有する金属材料により、軸線Oに直交する断面が円弧形をなす長方形板状に形成されていて、ドリル本体1に着脱可能に取り付けられている。この切屑制御壁9には、その断面がなす上記円弧が湾曲する方向のうち一方の側(図5において反時計回り方向側)に、この円弧の法線方向に該切屑制御壁9を貫通する取付穴9aが、切屑制御壁9がなす上記長方形のこの一方の側の端辺に沿って複数(本実施形態では2つ)形成されている。また、切屑制御壁9の断面がなす上記円弧が湾曲する方向のうち他方の側(図5において時計回り方向側)の端辺部では、この他方の側に向けてドリル本体1の外周側に向かうように傾斜していて切屑制御壁9の板厚が薄くなっている。
【0026】
さらに、ドリル本体1の切刃部4先端側の外周面には、先端面4aと切屑排出溝5のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面5bに開口してドリル回転方向T側に延びる軸線Oを中心とした断面円弧状の取付凹部4bが形成されており、この取付凹部4bの外周側を向く底面には軸線Oに直交する方向に延びるネジ孔4cが本実施形態では軸線O方向に並んで取付穴9aと同じ2つ形成されていて、切屑制御壁9は、上記取付穴9aに挿通された取付ネジ10がこれらのネジ孔4cにねじ込まれることによってドリル本体1先端外周部に上述のように着脱可能に取り付けられる。こうしてドリル本体1に取り付けられた状態で、切屑制御壁9の外周面は切刃部4の外周面と連続した軸線Oを中心とする円筒面上に配置される。
【0027】
なお、こうしてドリル本体1に取り付けられた状態で、切屑制御壁9のドリル回転方向Tとは反対側の端辺部(上記他方の側の端辺部)は切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面5aとの間には間隔があけられている。ここで、軸線O方向先端側から見て図5に示すように、この切屑制御壁9のドリル回転方向Tとは反対側の端辺部と軸線Oとを結ぶ直線Lが上述のように直線状をなす切刃6に対してなす交差角θは、本実施形態では30°〜90°の範囲内とされている。ただし、本実施形態では上述のように2つの切屑排出溝5の溝幅が異なっているので、一方の切屑排出溝5の先端部に設けられて内周刃とされる切刃6と切屑制御壁9の上記直線Lとの交差角θは、他方の切屑排出溝5の先端部に設けられて外周刃とされる切刃6と切屑制御壁9の上記直線Lとの交差角θよりも大きい。
【0028】
このように構成されたドリルにおいて、切刃6により生成された切屑Cは、図5に示すように切刃6から切削インサート8のすくい面に沿って流出しつつ外周側に流れ出すが、このすくい面の外周側には該すくい面に対向するようにドリル回転方向Tの反対側に延びる切屑制御壁9が設けられている。このため、例えばSS400材のように柔らかくて切屑Cが延び気味となる被削材に穴明け加工を施す場合でも、生成された切屑Cは加工穴の内周面には接触せずにこの切屑制御壁9に当たり、強制的にカールさせられて分断されるように制御され、すくい面よりも後端側の切屑排出溝5に排出されることになる。
【0029】
従って、このように切屑Cが加工穴の内周面に接触するのを防ぐことができるため、加工穴の仕上げ面粗さや加工品位の向上を図ることができる。また、この切屑制御壁9は、軸線O回りの外径が切刃6の外径(本実施形態では、他方の切屑排出溝5のインサート取付座7に取り付けられた切削インサート8の外周刃とされる上記切刃6の外周端が軸線O回りになす円の直径)よりも小さく、かつ先端縁が軸線O方向において切刃6よりも後端側に位置しているので、切屑制御壁9が加工穴と干渉することもなく、穴加工に支障を来すようなこともない。
【0030】
さらに、本実施形態では、切屑制御壁9がドリル本体1に着脱可能に取り付けられており、切屑Cとの接触によって切屑制御壁9が摩耗したり損傷したりした場合には、この切屑制御壁9を取り外して新しいものと交換することにより、同様に仕上げ面粗さや加工品位の高い穴明け加工を行うことができる。また、被削材の材質や加工条件に応じて、上述したように切屑制御壁9の材質を例えば鋼材や超硬合金等から選択することもでき、効率的かつ経済的に高品位の穴明け加工を行うことが可能となる。
【0031】
また、こうして切屑制御壁9を着脱可能とすることにより、特に本実施形態のように切刃6がドリル本体1のインサート取付座7に着脱可能に取り付けられた切削インサート8に形成された刃先交換式ドリルの場合には、このインサート取付座7をドリル本体1に形成するときや、インサート取付座7に取り付けられた切削インサート8を交換するとき、あるいはインサート取付座7で切削インサート8を回転させて取り付け直してすくい面の辺稜部の他の切刃6を使用するときには、切屑制御壁9を取り外すことにより、インサート取付座7を形成する工具や切削インサート8を着脱するレンチ等との干渉を防ぐことができる。
【0032】
ただし、本実施形態では、このように切屑制御壁9がドリル本体1に着脱可能とされるとともに、切刃6もドリル本体1に着脱可能とされた切削インサート8に形成されているが、切刃6がドリル本体1に直接形成されたソリッドドリルに本発明を適用したり、ドリル本体1にロウ付け等によって接合されるインサートに形成されたロウ付けドリルに本発明を適用したりしてもよい。また、同様に、切屑制御壁9もドリル本体1に直接形成されていたり、ドリル本体1にロウ付け等によって接合されていたりしてもよい。
【0033】
なお、本実施形態のように軸線O方向先端側から見て直線状の2つの切刃6が軸線Oに関して互いに反対側に位置している2枚刃のドリルの場合や、これら2つの切刃6が軸線Oに対して内周側(軸線O側)と外周側に位置している場合には、切屑制御壁9のドリル回転方向Tとは反対側の端部(他方の側の端辺部)と軸線Oとを結ぶ直線Lが切刃6または切刃6の延長線に対してなす交差角θは上述のように30°〜90°の範囲内とされているのが望ましい。この範囲よりも交差角θが大きいと、切屑制御壁9によって覆われる範囲が小さくなって切屑Cと加工穴内周面との接触を十分に防ぐことができなくなるおそれがある一方、この範囲よりも交差角θが小さいと切屑排出性が損なわれて切屑排出溝5の先端部において切屑Cが詰まりを生じるおそれがある。
【符号の説明】
【0034】
1 ドリル本体
4 切刃部
5 切屑排出溝
5a 切屑排出溝5のドリル回転方向Tを向く壁面
5b 切屑排出溝5のドリル回転方向Tとは反対側を向く壁面
6 切刃
7 インサート取付座
8 切削インサート
9 切屑制御壁
O ドリル本体1の軸線
T ドリル回転方向T
L 切屑制御壁9のドリル回転方向Tとは反対側の端部と軸線Oとを結ぶ直線
C 切屑
θ 軸線O方向先端側から見たときの直線Lが切刃6または切刃6の延長線に対してなす交差角
図1
図2
図3
図4
図5