(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221634(P2016-221634A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】位置ずれ・脱落防止部品
(51)【国際特許分類】
B23B 45/14 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
B23B45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-111085(P2015-111085)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】715004863
【氏名又は名称】野村 博史
(72)【発明者】
【氏名】野村 博史
【テーマコード(参考)】
3C036
【Fターム(参考)】
3C036EE23
(57)【要約】
【課題】
ドリルスタンドとドリルチャックとを締結した簡素な構成の装置で切削・穿孔・裁断・ 打刻・圧着等の加工作業を行う時に、より安価に装置損傷の危険性を防いで安全性を高 め、ドリルチャックの上方向の位置ずれ・脱落を防止し作業効率の向上を図る。
【解決手段】
ドリルチャックとドリルスタンドとの間に取り付けられるドリルチャックの位置ずれ・ 脱落防止部品であって、ドリルチャックを締結する為のボルトを挿通する締結ボルト挿 通孔と、ドリルチャックが締結された本発明の部品をドリルスタンド本体の嵌合・締結 部と係合するために前記嵌合・締結部と同径を有する被嵌合・締結部と、位置ずれ・脱 落の障害となる位置ずれ・脱落防止部と、を備えた形状を有することを特徴とする位置 ずれ・脱落防止部品である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルチャックとドリルスタンドとの間に取り付けられるドリルチャックの位置ず れ・脱落防止部品であって、ドリルチャックを締結する為のボルトを挿通する締結 ボルト挿通孔と、ドリルチャックが締結された本発明の部品をドリルスタンド本体 の嵌合・締結部と係合するために前記嵌合・締結部と同径を有する被嵌合・締結部 と、位置ずれ・脱落の障害となる位置ずれ・脱落防止部と、を備えた形状を有する ことを特徴とする位置ずれ・脱落防止部品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工用工具を装着したドリルチャックをドリルスタンドに挿嵌・締結し て切削・穿孔・裁断・打刻・圧着等の作業を行う時にドリルチャックの上方向への 位置ずれ及び脱落を防止できる部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6乃至
図10は従来の構成と具体例を説明するための図であり、
図6は従来の具 体例斜視図、
図7は従来の具体例分解斜視図、
図8はドリルスタンドの斜視図、
図9はドリルチャックの斜視図、
図10は
図6のB−B′切断部端面図である。
【0003】
従来の具体例は
図6に示すようにドリルスタンド1とドリルチャック2と加工用工 具3と加工対象物4とで構成される。
図7に分解の詳細を示す。
図8に示すように ドリルスタンド1の本体10には昇降レバー11と嵌合・締結部12と締め付けボ ルト13と加工台14とが備えられている。
図9に示すようにドリルチャック2の 本体20にはチャック部21が備えられている。
図7に示すようにドリルチャック 2はドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12下部より挿嵌され、ドリ ルスタンド1の本体10にある締め付けボルト13を締め付けることによりドリル チャック2が締め付けられ、ドリルスタンド1に固定される。
【0004】
これらは
図6に示すようにドリルチャック2の本体20にあるチャック部21に加 工用工具3を装着し、加工対象物4をドリルスタンド1の本体10にある加工台 14に配置して作業する。ドリルスタンド1の本体10にある昇降レバー11を押 下するとドリルチャック2とこれに装着された加工用工具3が垂直下方向に押下さ れる。すなわちドリルスタンド1の本体10にある昇降レバー11を押下する力が ドリルチャック2を通じて加工用工具3に伝達されることにより加工対象物4に切 削・穿孔・裁断・打刻・圧着等の加工が行われる。
【0005】
またドリルチャックの代わりにバイスを用いた構成と、このバイスをドリルスタン ドに結合する為の部品であって、ドリルスタンドとの接合部とずれ防止部とバイス との接合部を有する革用騒音対策工具が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−188510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のような従来の使用法には次のような解決すべき問題があった。
【0008】
ドリルスタンド1の本体10にある昇降レバー11を押下して加工に要する力、す なわち加工対象物4に作用する力は、垂直下方向にかかると同時に加工対象物4と 当接している加工用工具3及びドリルチャック2に対して反力が垂直上方向にかか る。一方ドリルチャック2を固定しているドリルスタンド1の本体10にある嵌合 ・締結部12の締め付け力は、ドリルスタンド1の本体10にある締め付けボルト 13を強く締め込んでも、ある一定までしか得ることができず、加工に要する力の 反力に嵌合・締結部の締付け力が打ち負けた場合には、
図10に示すとおりドリル チャック2はなんら上方向への障害となる構造を有しないため、ドリルチャック2 が所定の位置から上方向に位置ずれを起こす、あるいは脱落することがある。この ため加工に要する力が上方向へ逃げてしまい、加工対象物4に正確に力を伝達でき ずに所望の加工ができなくなり作業効率が低下する。
【0009】
ドリルチャック2が位置ずれ・脱落することを防止するにはドリルスタンド1の本 体10にある嵌合・締結部12の締め付け力を強くするためにドリルスタンド1の 本体10にある締め付けボルト13をより強く締め付けることが考えられるが、ド リルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12に亀裂が生じる、あるいはドリ ルスタンド1の本体10にある締め付けボルト13とこれに螺合しているナットの ネジ山に損傷が生じるなど装置が損傷する。よってドリルスタンド1の本体10に ある嵌合・締結部12の締結力を強める強固な構造に変更するか、あるいはドリル チャック2に突起などの障害を設けるなど、なんらかの構造を変更する必要があ り、コスト高となる。
【0010】
加工用工具の装着方法としてドリルチャックではなく特許文献1にあるようなバイ スを用いた使用法ではドリルチャックよりもバイスの方が相対的に高価であり、ド リルスタンドとバイスを接続する部品も形状が複雑で制作に時間がかかりコストが 高くなる。また、作業中に加工に要する力の反力が大きくなれば、バイスが用具を 挟んで保持している力が打ち負けて用具が所定の位置からずれる、あるいは脱落を 起こす可能性があり危険である。バイスとの接続に使用される2本のボルトが反力 を受けるためにボルトが変形し、最悪の場合は折損してバイス本体が脱落する危険 性もある。
【0011】
本発明はかかる問題点を解決する為に創案されたものである。すなわち、バイスと バイスを接続する部品とを使用せずに簡素な構成とすることで装置損傷の危険性を 防いで安全性を高め、従来のドリルスタンドとドリルチャックの構造はなんら変え ることなく、従来と同じ嵌合・締結方法で装置の損傷を防止し、かつ、より安価に ドリルチャックの上方向の位置ずれ・脱落を防止し作業効率の向上を図ることにあ る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以上の点を解決するために次のような部品を提供する。
【0013】
ドリルチャックとドリルスタンドとの間に取り付けられるドリルチャックの位置ず れ・脱落防止部品であって、ドリルチャックを締結する為のボルトを挿通する締結 ボルト挿通孔と、ドリルチャックが締結された本発明の部品をドリルスタンド本体 の嵌合・締結部と係合するために前記嵌合・締結部と同径を有する被嵌合・締結部 と、位置ずれ・脱落の障害となる位置ずれ・脱落防止部と、を備えた形状を有する ことを特徴とする位置ずれ・脱落防止部品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の位置ずれ・脱落防止部品はボルト挿通孔を備えているため本発明の位置ず れ・脱落防止部品と市販のドリルチャックとをボルトによって容易に締結すること ができるとともにドリルチャックが破損などの理由により交換が必要となった場合 でもドリルチャックを容易に交換することができる。
【0015】
本発明の位置ずれ・脱落防止部品本体に被嵌合・締結部を設け、この外径をドリル スタンド本体にある嵌合・締結部の内径と同寸法とすることにより、従来と同じ方 法でドリルチャックを間接的にドリルスタンドに係合することができるため、ドリ ルスタンド本体にある嵌合・締結部を強く締め付ける必要性がなく、装置の損傷が 生じない。またドリルチャック及びドリルスタンドの構造を変更する必要がなく従 来と同じ締結方法とすることができるのでコストを抑えることができる。
【0016】
本発明の位置ずれ・脱落防止部品の本体に位置ずれ・脱落防止部を設け、この外径 をドリルスタンド本体にある嵌合・締結部外径以上の寸法とすることにより、位置 ずれ・脱落防止部上面が全周にわたりドリルスタンド本体にある嵌合・締結部の下 面と接するように嵌合・締結するから、これが加工に要する力の反力に対する障害 の役目を果たし、ドリルチャックの上方向への位置ずれ・脱落を防止することがで きるため、加工に要する力が上方向に逃げることなく加工対象物に適切に力を加え ることができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0017】
ドリルスタンドにはドリルチャックを組み合わせ、これに加工用工具を装着した構 成で使用するほうがバイスを用いた場合よりも構成が簡素であり、装置の損傷の危 険性が少なく安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の位置ずれ・脱落防止部品の斜視図である。
【
図4】本発明の位置ずれ・脱落防止部品の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
図1は本発明の具体例斜 視図、
図2は本発明の具体例分解斜視図、
図3は本発明の位置ずれ・脱落防止部品 の斜視図、
図4は本発明の位置ずれ・脱落防止部品の正断面図、
図5は
図1のA− A′切断部端面図である。
【実施例】
【0020】
本実施例は
図1のようにドリルスタンド1とドリルチャック2と加工用工具3と 加工対象物4と本発明の位置ずれ・脱落防止部品5と締結ボルト6で構成される。 分解の詳細は
図2に示す。
【0021】
図1に示すドリルスタンド1は
図8に詳細を示す。ドリルスタンド1の本体10に は、ドリルチャック2に装着された加工用工具3を昇降移動させて加工に必要な力 を手によって加え力を調節するための昇降レバー11と、ドリルチャック2を嵌め て締結される嵌合・締結部12と、これを締め付けるための締め付けボルト13と 、加工対象物4を配置するための加工台14とが備えられている。
【0022】
図1に示すドリルチャック2は
図9に詳細を示す。ドリルチャック2の本体20に は加工用の工具が装着されるチャック部21と、本来シャンクを螺合するためのネ ジ穴が設けられている締結部22とが備えられている。ドリルチャック2は手また は付属工具(チャックキー)で本体20にあるチャック部21を緩締すること により加工用工具を簡単に素早く脱着または交換することができる機能を有する。
【0023】
図1に示す本発明の位置ずれ・脱落防止部品5は
図3に概要を示す。本発明の位置 ずれ・脱落防止部品5は本体50と被嵌合・締結部51と、位置ずれ・脱落防止部 52と、締結ボルト挿通孔53とで形成される。
図4と
図5に示すように被嵌合・ 締結部51は外径がドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12の内径と 同じ外径で形成されるとともに高さがドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締 結部12の高さと等しく形成され、ドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結 部12に嵌合・締結される機能を有する。位置ずれ・脱落防止部52は外径がドリ ルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12の外径以上の寸法で形成され、位 置ずれ・脱落を防止する機能を有する。締結ボルト挿通孔53は締結ボルト4を挿 通するに足りる寸法で形成され、ドリルチャック2と本発明の位置ずれ・脱落防止 部品5とを締結するための締結ボルト6を挿通できる機能を有する。本発明の位置 ずれ・脱落防止部品5は材質は鉄などの金属により形成されている。
【0024】
締結ボルト6は、ドリルチャック2の本体20にある締結部22のネジ穴に合うボ ルト径及び長さで形成され、本発明の位置ずれ・脱落防止部品5とドリルチャック 2を締結するためのボルトである。
【0025】
これらは
図2の分解斜視図のように以下のとおり接続される。
【0026】
本発明の位置ずれ・脱落防止部品5の本体50にある締結ボルト挿通孔53より締 結ボルト6を挿通し、ドリルチャック2の本体20にある締結部22と締結ボルト 6を螺合させ締め付け、本発明の位置ずれ・脱落防止部品5はドリルチャック2に 締結される。
ドリルチャック2が締結された本発明の位置ずれ・脱落防止部品5の本体50にあ る被嵌合・締結部51をドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12に下 方向より嵌め、本発明の位置ずれ・脱落防止部品の本体50にある上方向への位置 ずれ・脱落防止部52の上面全周がドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結 部12の下面に接するまで押し上げ、ドリルスタンド1の本体10にある締め付け ボルト13を締め付け、本発明の位置ずれ・脱落防止部品の本体50にある被嵌合 ・締結部51が締め付けられることによりドリルスタンド1へ締結される。
【0027】
図1に本発明の具体例斜視図を示し、以下のように実施する。
【0028】
ドリルチャック2の本体20にあるチャック部21に加工用工具3を装着し、ドリ ルスタンド1の本体10にある加工台14に加工対象物4を配置する。ドリルチャ ック2に装着される加工用工具は加工内容によってその都度変更可能であり、例え ば穿孔作業を行いたい場合には穿孔ポンチを、目打ち作業を行いたい場合には錐な どに変更する。ドリルスタンドに接続された状態で容易に加工用工具の変更が可能 である。また加工作業中の加工対象物のずれや加工台の損傷を防ぐために、ドリル スタンド1の本体10にある加工台14に木版やコルクシートやゴムシートなどを 敷設し、その上に加工対象物4を配置するとより作業がしやすくなる。
そしてドリルスタンド1の本体10にある昇降レバー11を押下し、加工用工具3 が垂直下方向に押下され、加工対象物4が加工される。ドリルスタンド1の本体1 0にある昇降レバー11を押下する力が加工用工具3に伝達され、加工対象物4に 作用するので加工対象物4に加工が施される状態を確認しながら昇降レバー11を 押下する力を調節することで所望の加工結果を得ることができる。
【0029】
しかし加工に要する力、すなわちドリルスタンド1の本体10にある昇降レバー1 1から本発明の位置ずれ・脱落防止部品5とドリルチャック2を通じて加工用工具 3に伝達され加工対象物4に作用する力は、垂直下方向にかかると同時に加工対象 物4と当接している加工用工具3及びドリルチャック2に対して反力が垂直上方向 にかかる。加工対象物4の硬さあるいは加工の種類などによっては加工するのに相 当大きい力を要する場合がある。すなわち加工対象物4に作用する力が大きい場合 、当然反力も大きくなりドリルスタンド1の本体10にある嵌合・締結部12の締 付け力が反力に打ち負けると本発明の位置ずれ・脱落防止部品5の本体50にある 被嵌合・締結部51が所定の位置より上方向にずれることになるが、ドリルスタン ド1の本体10にある嵌合・締結部12の下面と全周にわたり接している本発明の 位置ずれ・脱落防止部品の本体50にある位置ずれ・脱落防止部52の上面が反力 に対する障害の役目を果たすから、ドリルチャック2は上方向への位置ずれ・脱落 を起こすことはないので加工用工具3も上方向にずれることなく加工対象物4に正 確に力を伝達することができる。
【0030】
本発明の構成は上述したものに限られるものでなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲 で適宜変更することができるのはもちろんである。例えば、本発明の部品の材質に は鉄を採用しているが、脱落防止部が受ける力による変形を鑑み、強度に耐えうる のであれば材質は問わない。そのほか本発明の部品はドリルチャックにボルトで締 結することを前提としているが、ドリルチャックの種類によってはボルトによる締 結ができない場合には溶接するなど、結合の方法はこれに限ったものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 ドリルスタンド
2 ドリルチャック
3 加工用工具
4 加工対象物
5 本発明の位置ずれ・脱着防止部品
6 締結ボルト
10 ドリルスタンド本体
11 昇降レバー
12 嵌合・締結部
13 締め付けボルト
14 加工台
20 ドリルチャック本体
21 チャック部
22 締結部
50 本発明の位置ずれ・脱着防止部品本体
51 被嵌合・締結部
52 位置ずれ・脱落防止部
53 締結ボルト挿通孔