特開2016-221646(P2016-221646A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000004
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000005
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000006
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000007
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000008
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000009
  • 特開2016221646-ロボットおよびロボットシステム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221646(P2016-221646A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ロボットおよびロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-111975(P2015-111975)
(22)【出願日】2015年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116665
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和昭
(74)【代理人】
【識別番号】100164633
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(72)【発明者】
【氏名】下平 泰裕
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS10
3C707ES03
3C707KS21
3C707KS31
3C707KS33
3C707KX06
3C707LU09
3C707LV17
3C707LV18
(57)【要約】
【課題】対象物が支持された後においても支持力を考慮した適切な操作力で対象物を操作
する技術を提供する。
【解決手段】マニピュレーターと、前記マニピュレーターに作用する力を検出する力検出
器と、前記マニピュレーターを駆動するアクチュエーターと、前記マニピュレーターの変
位を検出するエンコーダーと、を備えるロボットにおいて、前記マニピュレーターが第一
対象物を保持して移動させることによって前記第一対象物が第二対象物に接触すると、前
記第二対象物の前記第一対象物に対する支持力に応じて前記マニピュレーターの前記第一
対象物に対する操作力の鉛直方向成分を前記接触前に比べ小さくする、ロボット。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレーターと、
前記マニピュレーターに作用する力を検出する力検出器と、
前記マニピュレーターを駆動するアクチュエーターと、
前記マニピュレーターの変位を検出するエンコーダーと、
を備えるロボットにおいて、
前記マニピュレーターが第一対象物を保持して移動させることによって前記第一対象物
が第二対象物に接触すると、前記第二対象物の前記第一対象物に対する支持力に応じて前
記マニピュレーターの前記第一対象物に対する操作力の鉛直方向成分を前記接触前に比べ
小さくする、
ロボット。
【請求項2】
前記力検出器は、前記第一対象物が前記第二対象物に接触したことを検出する、
請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記力検出器は、非鉛直方向に作用する力に応じて前記第一対象物が前記第二対象物に
接触したことを検出する、
請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記エンコーダーは、前記第一対象物が前記第二対象物に接触したことを検出する、
請求項1に記載のロボット。
【請求項5】
前記エンコーダーは、非鉛直方向の変位に応じて前記第一対象物が前記第二対象物に接
触したことを検出する、
請求項4に記載のロボット。
【請求項6】
マニピュレーターと、
前記マニピュレーターに作用する力を検出する力検出器と、
前記マニピュレーターを駆動するアクチュエーターと、
前記マニピュレーターの変位を検出するエンコーダーと、
を備えるロボットと、
前記マニピュレーターで第一対象物を保持して移動させることによって前記第一対象物
が第二対象物に接触すると、前記第二対象物の前記第一対象物に対する支持力に応じて前
記マニピュレーターの前記第一対象物に対する操作力の鉛直方向成分を前記接触前に比べ
小さくするロボット制御装置と、
を備えるロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットおよびロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの分野において、マニュピレーターに加わる力に応じて動作位置を制御
するインピーダンス制御が用いられるようになっている。ここで動作位置とは、能動イン
ピーダンス制御における目標力とマニュピレーターに実際に作用する力とに基づいて導出
される制御目標としての位置である。マニピュレーターとワークに作用する重力はマニピ
ュレーターとワークの姿勢によって変化する。このような重力の影響下で正確にマニピュ
レーターをインピーダンス制御するため、重力補償の技術が知られている(特許文献1な
ど)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術を例えばワーク同士の嵌合工程に適用する
と、ワーク同士が接触した後に一方のワークが他方のワークを支持する状態になるため、
嵌合前に重力補償された力が嵌合後にもワークに作用することによって、嵌合工程が失敗
するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために創作されたものであって、対象物が支持さ
れた後においても、支持力を考慮した適切な操作力で対象物を操作する技術を提供するこ
とを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのロボットは、マニピュレーターと、前記マニピュレーターに
作用する力を検出する力検出器と、前記マニピュレーターを駆動するアクチュエーターと
、前記マニピュレーターの変位を検出するエンコーダーと、を備えるロボットにおいて、
前記マニピュレーターが第一対象物を保持して移動させることによって前記第一対象物が
第二対象物に接触すると、前記第二対象物の前記第一対象物に対する支持力に応じて前記
マニピュレーターの前記第一対象物に対する操作力の鉛直方向成分を前記接触前に比べ小
さくする。
【0007】
この構成を採用することにより、第一対象物に作用する力に第二対象物の支持力が加わ
る前後において、第二対象物の支持力に応じてマニピュレーターの第一対象物に対する操
作力が小さくなるため、支持力を考慮した適切な操作力で第一対象物を操作することがで
きる。ここで第一対象物と第二対象物との接触により、第二対象物から第一対象物に作用
する支持力は、マニュピレーターが第一対象物を把持して鉛直下方に押し下げない限り、
第一対象物に作用する重力未満である。また第一対象物の重心と第一対象物と第二対象物
との接触点とが鉛直線上に並んでいなければ、第二対象物から第一対象物に作用する支持
力は第一対象物に作用する重力未満である。第二対象物の第一対象物に対する支持力に応
じてマニピュレーターの第一対象物に対する操作力の鉛直方向成分を、第二対象物に作用
する重力未満小さくすることにより、適切に重力補償した操作力で第一対象物を操作する
ことができる。
【0008】
なお請求項に記載された各手段の機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資
源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせによ
り実現される。また、これら各手段の機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェ
ア資源で実現されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ロボットシステムの斜視図である。
図2】ロボットシステムのブロック図である。
図3】エンドエフェクターの側面図である。
図4】ロボットシステムを用いた嵌合作業を示す模式図である。
図5】ロボットシステムを用いた嵌合作業を示す模式図である。
図6】ロボットシステムを用いた研磨作業を示す模式図である。
図7】ロボットシステムを用いたネジ締め作業を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図におい
て対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0011】
(1)ロボットシステムの構成
本発明の第一実施例としてのロボットシステムは、図1に示すように、ロボット1と、
エンドエフェクター2と、制御装置3と、教示端末4(ティーチングペンダント)と、を
備えている。制御装置3は、本発明のロボット制御装置の構成例である。制御装置3は図
示しないケーブルによりロボット1と通信可能に接続される。なお、制御装置3の構成要
素がロボット1に備えられていても良い。制御装置3は、ロボット1に駆動電力を供給す
る電源部31とロボット1を制御するための制御部32とを備える。制御装置3と教示端
末4とはケーブルで、または無線通信可能に接続される。教示端末4は、専用のコンピュ
ーターであってもよいし、ロボット1のためのプログラムがインストールされた汎用のコ
ンピューターであってもよい。例えばロボット1を教示するための専用装置であるティー
チングペンダント5を教示装置4の代わりに用いても良い。さらに、制御装置3と教示端
末4とは、図1に示すように別々の筐体を備えていてもよいし、一体に構成されていても
よい。
【0012】
ロボット1は、アームAに各種のエンドエフェクター2を装着して使用される単腕ロボ
ットである。アームAは6つの関節J1〜J6を備える。関節J1〜J6によって6個の
アーム部材A1〜A6が連結される。関節J2、J3、J5は曲げ関節であり、関節J1
、J4、J6はねじり関節である。関節J6には、ワークに対して把持や加工等を行うた
めの各種のエンドエフェクター2が装着される。先端の関節J6の回転軸上の所定位置を
ツールセンターポイント(TCP)と表す。TCPの位置は各種のエンドエフェクター2
の位置の基準となる。
【0013】
関節J6には力覚センサーFSが備えられている。力覚センサーFSは、6軸の力検出
器である。力覚センサーFSは、固有の座標系であるセンサー座標系において互いに直交
する3個の検出軸と平行な力の大きさと、当該3個の検出軸まわりのトルクの大きさとを
検出する。なお、力覚センサーFSは本発明の力検出器の構成例であるが、関節J6以外
の関節J1〜J5のいずれか1つ以上に力検出器としての力覚センサーを備えても良い。
【0014】
ロボット1が設置された空間を規定する座標系をロボット座標系というとき、ロボット
座標系は、水平面上において互いに直交するX軸とY軸と、鉛直上向きを正方向とするZ
軸とによって規定される3次元の直交座標系である。Z軸における負の方向は概ね重力方
向と一致する。またX軸周りの回転角をRXで表し、Y軸周りの回転角をRYで表し、Z
軸周りの回転角をRZで表す。X,Y,Z方向の位置により3次元空間における任意の位
置を表現でき、RX,RY,RZ方向の回転角により3次元空間における任意の姿勢を表
現できる。以下、位置と表記した場合、姿勢も意味し得ることとする。また、力と表記し
た場合、トルクも意味し得ることとする。制御装置3は、アームAを駆動することによっ
て、ロボット座標系においてTCPの位置を制御する。
【0015】
図2は、ロボットシステムのブロック図である。制御部32はロボット1の制御を行う
ための制御プログラムがインストールされたコンピューターである。制御部32は、プロ
セッサーやRAMやROMを備え、これらのハードウェア資源が制御プログラムと協働す
る。
【0016】
ロボット1は、図1に示した構成のほかに、アクチュエーターとしてのモーターM1〜
M6と、センサーとしてのエンコーダーE1〜E6とを備える。アームAを制御すること
はモーターM1〜M6を制御することを意味する。モーターM1〜M6とエンコーダーE
1〜E6とは、関節J1〜J6のそれぞれに対応して備えられており、エンコーダーE1
〜E6はモーターM1〜M6の回転角度を検出する。制御装置3は、モーターM1〜M6
の回転角度の組み合わせと、ロボット座標系におけるTCPの位置との対応関係U1を記
憶している。また、制御装置3は、ロボット1が行う作業の工程ごとに目標位置Stと目
標力fStとをコマンドとして記憶する。目標位置Stと目標力fStを定めるコマンドはロ
ボット1が行う作業の工程ごとに教示によって設定される。
【0017】
制御装置3は、設定された目標位置と目標力とがTCPにて実現されるようにアームA
を制御する。目標力とは、アームAの動作に応じて力覚センサーFSが検出すべき力であ
る。ここでSの文字は、ロボット座標系を規定する軸の方向(X,Y,Z,RX,RY,
RZ)のなかのいずれか1個の方向を表すこととする。また、Sは、S方向の位置も表す
こととする。例えば、S=Xの場合、ロボット座標系にて設定された目標位置のX方向成
分がSt=Xtと表記され、目標力のX方向成分がfSt=fXtと表記される。
【0018】
制御装置3は、モーターM1〜M6の回転角度Daを取得すると、対応関係U1に基づ
いて、当該回転角度Daをロボット座標系におけるTCPの位置S(X,Y,Z,RX,
RY,RZ)に変換する。制御装置3は、TCPの位置Sと、力覚センサーFSの検出値
とに基づいて、力覚センサーFSに現実に作用している作用力fSをロボット座標系にお
いて特定する。作用力fの作用点は、TCPとは別に原点Oとして定義される。原点O
は、力覚センサーFSが力を検出している点に対応する。制御装置3は、ロボット座標系
におけるTCPの位置Sごとに、力覚センサーFSのセンサー座標系における検出軸の方
向を規定した対応関係U2を記憶している。従って、制御装置3は、ロボット座標系にお
けるTCPの位置Sと対応関係U2とに基づいて、ロボット座標系における作用力fS
特定できる。また、ロボットに作用するトルクは、作用力fSと、ツール接触点(エンド
エフェクター2とワークの接触点)から力覚センサーFSまでの距離とから算出すること
ができ、図示されないfsトルク成分として特定される。
【0019】
制御装置3は、作用力fSに対して重力補償を行う。重力補償とは、作用力fSから重力
に起因する力やトルクの成分を除去することである。重力補償を行った作用力fSは、エ
ンドエフェクター2に作用している重力以外の力と見なすことができる。
【0020】
本実施例のインピーダンス制御は、仮想の機械的インピーダンスをモーターM1〜M6
によって実現する能動インピーダンス制御である。制御装置3は、このようなインピーダ
ンス制御を、ワークの嵌合作業、研磨作業など、エンドエフェクター2が対象物(ワーク
)から力を受ける接触状態の工程で適用する。インピーダンス制御では、目標力を後述す
る運動方程式に代入してモーターM1〜M6の回転角度を導出する。制御装置3がモータ
ーM1〜M6を制御する信号は、PWM(Pulse Width Modulation)変調された信号であ
る。運動方程式に基づいて目標力から回転角度を導出してモーターM1〜M6を制御する
モードを力制御モードというものとする。また制御装置3は、エンドエフェクター2がワ
ークから力を受けない非接触状態の工程では、目標位置から線形演算で導出する回転角度
でモーターM1〜M6を制御する。目標位置から線形演算で導出する回転角度でモーター
M1〜M6を制御するモードを位置制御モードというものとする。また制御装置3は、目
標位置から線形演算で導出する回転角度と目標力を運動方程式に代入して導出する回転角
度とを例えば線型結合によって統合し、統合した回転角度でモーターM1〜M6を制御す
るハイブリッドモードでもロボット1を制御する。制御装置3は、位置制御モードと力制
御モードとハイブリッドモードを力覚センサーFSまたはエンコーダーE1〜R6の検出
値に基づいて自律的に切り替えることもできるし、コマンドに応じて位置制御モードと力
制御モードとハイブリッドモードを切り替えることもできる。以上の構成より制御装置3
は、エンドエフェクター2が目標の位置において目標の姿勢となり、かつ、エンドエフェ
クター2に目標の力とモーメントとが作用するようにアーム10を駆動することができる
【0021】
制御装置3は、目標力fStと作用力fSとをインピーダンス制御の運動方程式に代入す
ることにより、力由来補正量ΔSを特定する。力由来補正量ΔSとは、TCPが機械的イ
ンピーダンスを受けた場合に、目標力fStとの力偏差ΔfS(t)を解消するために、T
CPが移動すべき位置Sの大きさを意味する。下記の(1)式は、インピーダンス制御の
運動方程式である。
【数1】
【0022】
(1)式の左辺は、TCPの位置Sの2階微分値に仮想慣性係数mを乗算した第1項と
、TCPの位置Sの微分値に仮想粘性係数dを乗算した第2項と、TCPの位置Sに仮想
弾性係数kを乗算した第3項とによって構成される。(1)式の右辺は、目標力fStから
現実の力fを減算した力偏差ΔfS(t)によって構成される。(1)式における微分と
は、時間による微分を意味する。ロボット1が行う工程において、目標力fStとして一定
値が設定される場合もあるし、目標力fStとして時間の関数が設定される場合もある。
【0023】
仮想慣性係数mはTCPが仮想的に有する質量を意味し、仮想粘性係数dはTCPが仮
想的に受ける粘性抵抗を意味し、仮想弾性係数kはTCPが仮想的に受ける弾性力のバネ
定数を意味する。各係数m,d,kは方向ごとに異なる値に設定されてもよいし、方向に
拘わらず共通の値に設定されてもよい。
【0024】
そして、制御装置3は、対応関係U1に基づいて、ロボット座標系を規定する各軸の方
向の動作位置を、各モーターM1〜M6の目標の回転角度である目標角度Dtに変換する
。そして、制御装置3は、目標角度DtからモーターM1〜M6の現実の回転角度である
エンコーダーE1〜E6の出力Daを減算することにより、駆動位置偏差De(=Dt−Da
)を算出する。そして、制御装置3は、駆動位置偏差Deに位置制御ゲインKpを乗算した
値と、現実の回転角度Daの時間微分値である駆動速度との差である駆動速度偏差に、速
度制御ゲインKvを乗算した値とを加算することにより、制御量Dcを導出する。なお、位
置制御ゲインKpおよび速度制御ゲインKvは、比例成分だけでなく微分成分や積分成分に
かかる制御ゲインを含んでもよい。制御量Dcは、モーターM1〜M6のそれぞれについ
て特定される。以上説明した構成により、制御装置3は、目標力fStとに基づいてアーム
Aを力制御モードで制御することができる。
【0025】
ハイブリッドモードでは、制御装置3は、目標位置Stに、力由来補正量ΔSを加算す
ることにより動作位置(St+ΔS)を特定する。
【0026】
教示端末4には、制御装置3に目標位置Stと目標力fStとを設定するための教示プロ
グラムがインストールされている。教示端末4は、ディスプレイ43やプロセッサーやR
AMやROMを備え、これらのハードウェア資源が教示プログラムと協働する。これによ
り、図2に示すように、教示端末4は、オペレーターの操作に応じて目標力fStと目標
位置Sを指定するコマンドを生成して制御装置3に出力する。
【0027】
(2)第一実施例
図3に、エンドエフェクター2の具体例としてのグリッパー20を示す。グリッパー2
0は2つ以上のチャック23と駆動部22とを備えている。駆動部22は2つ以上のチャ
ック23を接近および離間させるためのアクチュエーターであって、制御装置3からの制
御信号によって制御される。チャック23の先端は、アームの先端方向を向いている。本
実施例では、グリッパー20とアームAが本発明にかかるマニピュレーターの構成例であ
る。
【0028】
次に図4を参照しながら、グリッパー20を用いて第一対象物W11を第二対象物W2
1の孔Hに挿入する嵌合作業を例にして、ロボット1の操作力の設定方法について詳細に
説明する。孔Hの中心軸は水平であるとする。
【0029】
はじめに制御装置3は、図4Aに示すようにグリッパー20で第一対象物W11の挿入
部分の中心軸を水平に保持した状態で、第二対象物W21の孔Hに位置制御モードで接近
させて停止させる。停止状態において、図示しない関節J6の回転軸は水平とする。この
ような停止状態では、グリッパー20と第一対象物W11の質量に作用する重力gが力覚
センサーFSの原点Oにトルクとして作用しているため、このトルクに応じた検出値を制
御装置3は力覚センサーFSから取得する。
【0030】
次に制御装置3は、重力補償を実施する。具体的には、停止状態で力覚センサーFSの
検出値に基づいて導出する作用力fがゼロになるようにオフセットを設定する。
【0031】
次に制御装置3は、図4Aに示す矢印Dの水平方向に第一対象物W11を並進させ、第
一対象物W11を第二対象物W21に接触させて停止させる。この工程において、制御装
置3は、力制御モードでアームAを制御しても良いし、ハイブリッドモードでアームAを
制御しても良い。第一対象物W11が第二対象物W21に接触すると、第一対象物W11
には第二対象物W21から抗力fwが作用する。制御装置3は、予め決めておく抗力f
を目標力として力制御モード又はハイブリッドモードでアームAを制御する。この工
程の停止条件は作用力f=fwである。すなわちこの場合、力検出器としての力覚セ
ンサーFSが、第一対象物W11が第二対象物W21に接触したことを検出していること
になる。
【0032】
第一対象物W11が第二対象物W21の表面に接触した状態では、抗力に応じた鉛直上
向きの摩擦力fwによって、第一対象物W11とグリッパー20が第二対象物W21に
支持される。第一対象物W11を並進させて第二対象物W21に接触させるまでの工程で
は、目標力のY成分はゼロであるため、接触後も目標力のY成分をゼロに維持してインピ
ーダンス制御を続けると、制御装置3は摩擦力fwを打ち消そうとして、第一対象物W
11を鉛直上向きに並進させようとする。
【0033】
そこで制御装置3は、第一対象物W11が第二対象物W21の表面に接触したことを検
出すると、目標力を以下に説明する支持力由来補正量だけ変化させる。グリッパー20に
よる第一対象物W11の把持状態は既知であり、第一対象物W11の形状も既知であるか
ら、第一対象物W11と第二対象物W21との接触点から力覚センサーFSの原点Oまで
の距離Lも既知である。そしてグリッパー20と第一対象物W11を独立した構造体とみ
なしたときの重心Gの位置も既知である。そこで、第二対象物W21との接触点と力覚セ
ンサーFSの原点Oとを結ぶ線分の重心Gによる内分比l/Lを摩擦力fwが第一対
象物W11とグリッパー20を支持する寄与率とみなす。そして、第一対象物W11を並
進させて第二対象物W21に接触させるまでの工程における水平方向の目標力fwも既
知である。また、第一対象物W11と第二対象物W21の静止摩擦係数も既知である。し
たがって、目標力fwと等しい抗力に応じた摩擦力fwは計算によって求まる。そこ
で本実施形態では支持力由来補正量Δfを次式(2)によって規定して予め制御装置3
に記憶しておく。
Δf=fw×l/L ・・・(2)
【0034】
次に制御装置3は、このように規定された支持力由来補正量を算入した鉛直成分を有す
る目標力を設定した力制御モード又はハイブリッドモードでアームAを制御することによ
り、第二対象物W21の表面に沿って第一対象物W11を並進させて孔Hの位置を探り当
てる。第一対象物W11を第二対象物W21に押し当てながら第二対象物W21の表面に
沿って第一対象物W11を並進させると、第一対象物W11が孔Hに嵌る位置で第二対象
物W21から受ける抗力fwが減少する。この現象を利用して適切な目標力の水平成分
を設定することにより、図4Cに示すように第一対象物W11の先端を侵入孔Hに挿入す
ることができる。この工程で第一対象物W11の先端を孔Hに挿入する深さは、目標力の
水平成分によって設定することが可能である。
【0035】
第一対象物W11の先端が侵入孔Hに挿入された状態になると、孔Hの内壁面から受け
る抗力fwによって第一対象物W11とグリッパー20が支持される。第二対象物W2
1から第一対象物W11に作用する支持力(鉛直上向き)は、第一対象物W11の先端が
侵入孔Hに挿入されることによって増大する。
【0036】
そこで制御装置3は、増大した支持力に応じて支持力由来補正量を変化させる。具体的
に例えば、孔Hの内壁面から受ける抗力fwの作用点と力覚センサーFSの原点Oとを
結ぶ線分の重心Gによる内分比l/Lを、第二対象物W21の支持力が第一対象物W1
1とグリッパー20を支持する寄与率とみなし、第二の支持力由来補正量Δfを上式(
2)によって規定して予め制御装置3に記憶しておく。
【0037】
次に制御装置3は、このように規定された第二の支持力由来補正量を算入した鉛直成分
を有する目標力を設定した力制御モード又はハイブリッドモードでアームAを制御するこ
とにより、予め決めておく深さまで第一対象物W11を孔Hに挿入する。この工程におい
て、仮に第二対象物W21の支持力を考慮しないでアームAをインピーダンス制御すると
、制御装置3は第二対象物W21の支持力(鉛直上向き)を打ち消そうとして、第一対象
物W11を鉛直上向きに並進させようとする。その結果、第一対象物W11が孔Hの上面
に押し当てられて第一対象物W11と第二対象物W21の摩擦力が増大するため、予め決
めておく深さまで第一対象物W11を孔Hに挿入できない。本実施例では、第二の支持力
由来補正量を算入した鉛直成分を有する目標力を設定したインピーダンス制御によって第
一対象物W11を孔Hに挿入するため、予め決めておく深さまで正確に第一対象物W11
を孔Hに挿入することができる。
【0038】
(3)第二実施例
図5は本発明の第二実施例を説明するための模式図である。第二実施例では、水平でも
鉛直でも無い方向Dに第一対象物W11を並進させる工程で第一対象物W11と第二対象
物W21との接触をエンコーダーE1〜E6の検出値に基づいて検出し、接触後に支持力
由来補正量を算入したインピーダンス制御を実行する。以下、詳細に説明する。
【0039】
図5Aに示すように、グリッパー20で第一対象物W11を水平面に対して傾けて保持
した状態で第二対象物W21の孔Hに位置制御モードで接近させて停止させる。停止状態
において、図示しない関節J6の回転軸は水平面に対して予め決めておく角度だけ傾いて
いる。また停止状態において、第一対象物W11の先端から第二対象物W21の表面まで
の距離は既知である。
次に制御装置は、停止状態で作用力fがゼロになるようにオフセットを設定する、す
なわち重力補償を実施する。
【0040】
次に制御装置3は、図5Aに示す矢印Dの方向に第一対象物W11を位置制御モードで
並進させ、図5Bに示すように第一対象物W11を第二対象物W21の孔Hの縁に接触さ
せて停止させる。本工程の開始時において、第一対象物W11の先端からから第二対象物
W21の表面までの実際の距離と、エンコーダーE1〜E6の検出値に基づいて導出する
第一対象物W11の先端から第二対象物W21の表面までの距離との間には誤差が含まれ
る。したがって本工程では、第一対象物W11を第二対象物W21の孔Hの縁に確実に接
触するように、エンコーダーE1〜E6の検出値に基づいて導出する第一対象物W11の
先端から第二対象物W21の表面までの距離に誤差相当分を加算して目標位置を設定する
。本工程の停止条件は目標位置であるから、エンコーダーE1〜E6が、第一対象物W1
1が第二対象物W21に接触したことを検出していることになる。第一対象物W11が第
二対象物W21に接触すると、第一対象物W11とグリッパー20は第二対象物W21の
孔Hの縁から受ける抗力fwによって支持された状態になる。
【0041】
次に制御装置3は、第二対象物W21の孔Hの縁が第一対象物W11とグリッパー20
を支持する鉛直上向きの抗力fwに応じた支持力由来補正量を算入した鉛直成分を有する
目標力を設定する。抗力fwに応じた支持力由来補正量は、孔Hの縁から力覚センサーF
Sの原点Oまでの水平距離Lに対する第一対象物W11の重心Gから力覚センサーFSの
原点Oまでの水平距離lの比を第二対象物W21の支持力が第一対象物W11とグリッ
パー20を支持する寄与率とみなし、上式(2)によって予め算定しておけば良い。
【0042】
次に制御装置3は、支持力由来補正量を算入した鉛直成分を有する目標力を設定した力
制御モード又はハイブリッドモードでアームAを制御することにより、第一対象物W11
を第二対象物W21との接触点を中心に回転させ、図5Cに示すように孔Hの軸方向に第
一対象物W11の姿勢を倣わせる。本工程において仮に第二対象物W21の支持力を考慮
しないでアームAをインピーダンス制御すると、制御装置3は第二対象物W21の支持力
(鉛直上向き)を打ち消そうとして、第一対象物W11を鉛直上向きに並進させようとす
る。
【0043】
次に制御装置3は、第一実施例と同様に力制御モード又はハイブリッドモードでアーム
Aを制御することにより、予め決めておく深さまで第一対象物W11を孔Hに挿入する。
【0044】
(4)第三実施例
図6は本発明の第三実施例を説明するための模式図である。第三実施例では対象物を研
磨するためのサンダー25がエンドエフェクターとして図6Aに示すように装着される。
サンダー25を対象物W22に押し当てた状態では、図6Bに示すように対象物W22と
サンダー25の間に作用する摩擦力fwによってサンダー25が支持される。そこでサ
ンダー25によって対象物W22を研磨する工程では、第一実施例と同様に摩擦力fw
がサンダー25を支持する寄与率を求め、上式(2)によって算定する支持力由来補正量
を算入したY成分を有する目標力を設定した力制御モード又はハイブリッドモードでアー
ムAを制御すればよい。なお本実施例では、アームAが本発明に係るマニピュレーターの
構成例であり、サンダー25が第一対象物の構成例であり、対象物W22が第二対象物の
構成例である。
【0045】
(5)第四実施例
図7は本発明の第四実施例を説明するための模式図である。第四実施例では第一対象物
としてのネジW13を回転させるためのドライバー28がエンドエフェクターとして図7
Aに示すように装着される。ドライバー28には先端から空気を吸入する図示しない吸引
器が内蔵されている。図7Bに示すようにドライバー28の先端にネジW13を吸着した
状態で矢印Dの水平方向に並進させて、図7Cに示すようにネジW13の先端が第二対象
物W23のネジ穴SHの縁に掛かると、ネジW13とドライバー28は第二対象物W23
のネジ穴SHの縁から受ける抗力fwによって支持された状態になる。ここで、第一実
施例や第二実施例と異なり、第一対象物としてのネジW13と第二対象物としてのドライ
バー28との結合力が弱い。したがって本実施例では、第二対象物W23のネジ穴SHの
縁から受ける抗力fwがネジW13とドライバー28の全体を支える支持力として寄与
するという考え方ではなく、第二対象物W23のネジ穴SHの縁から受ける抗力fwがネ
ジW13だけを支える支持力として寄与するという考え方の元に支持力由来補正量を算定
しても良い。また例えば、抗力fwがネジW13を支える支持力としても寄与し、ドラ
イバー28を支える支持力としても寄与するが、ネジW13を支える支持力としての寄与
率よりも、ドライバー28を支える支持力としての寄与率を小さく見積もって支持力由来
補正量を算定しても良い。
【0046】
ネジW13をネジ穴SHにねじ込むと、ネジW13の全重量は第二対象物W23によっ
て支持されることになる。またネジW13の後端がドライバー28を支持する支持力も増
大する。すなわち、ネジW13の回転にともなって第二対象物W23がネジW13とドラ
イバー28を支持する支持力は大きくなる。そこで制御装置3は、ネジW13の先端を第
二対象物W23のネジ穴SHの縁に掛けた後にネジW13を回転させる工程では、回転角
度に応じて支持力由来補正量を増大させる。本実施例では、支持力由来補正量は、ドライ
バー28の回転角度の関数として予め定められる。このように、支持力由来補正量は、位
置、回転角度、力など、ロボット1の制御量の関数として定めても良い。
【0047】
(6)他の実施形態
本発明の技術的範囲は上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱
しない限りにおいて変更を加え得ることは勿論である。例えば、マニピュレーターで第一
対象物を保持して第二対象物に接触するまで移動させる工程において、第一対象物を並進
させる方向はどのような方向でも良い。したがって、第一対象物と第二対象物の接触を検
出するために、重力以外に第一対象物に作用する力を力検出器で検出する方向は、どのよ
うな方向でも良い。また第一対象物と第二対象物の接触を検出するために、第一対象物の
変位を検出する方向も、どのような方向でも良い。
【0048】
また、第二対象物の第一対象物に対する支持力に応じてマニピュレーターの第一対象物
に対する操作力の鉛直方向成分が変化すればよいのであって、インピーダンス制御におけ
る目標力を支持力由来補正量分変化させることに限らず、例えば接触後も目標力を維持し
たままで動的に重力補償を行っても良い。ここで動的に重力補償を行う方法としては、例
えば第二対象物から第一対象物に支持力が作用する工程中または工程開始時に、ロボット
1を停止させ、力覚センサーFSの検出値に基づいて導出する作用力fがゼロになるよ
うにオフセットを設定することで、マニピュレーターの第一対象物に対する操作力の鉛直
方向成分を変化させることができる。また例えば、第二対象物から第一対象物に支持力が
作用する工程中または工程開始時に、予め決められた値または関数に基づいて作用力f
のオフセット値を予め決められた量だけ変更することで、マニピュレーターの第一対象物
に対する操作力の鉛直方向成分を変化させることができる。
【0049】
なお、第一対象物と第二対象物が接触すると直ちに第一対象物の全重量が第二対象物に
よって支持される作業におけるインピーダンス制御は、本発明の技術的範囲に含まれない
。すなわち、本発明は、第一対象物を移動させることによって第一対象物と第二対象物と
の接触点と第一対象物の重心とが鉛直方向に整列していない状態で第一対象物の重量の一
部が第二対象物で支持される前後において、第二対象物の第一対象物に対する支持力に応
じてマニピュレーターの第一対象物に対する操作力の鉛直方向成分を変化させるものであ
る。
【符号の説明】
【0050】
1…ロボット、2…エンドエフェクター、3…制御装置、4…教示端末、10…アーム、
20…グリッパー、22…駆動部、23…チャック、25…サンダー、28…ドライバー
、31…電源部、32…制御部、43…ディスプレイ、A…アーム、A1-A6…アーム
部材、W11…第一対象物、W13…ネジ、W21−W23…第二対象物、E1-E6…
エンコーダー、H…孔、J1-J6…関節、M1-M6…モーター、O…力覚センサーの原
点、SH…ネジ穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7