特開2016-221692(P2016-221692A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000003
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000004
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000005
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000006
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000007
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000008
  • 2016221692-液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221692(P2016-221692A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20161205BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B41J2/14 603
   B41J2/14 201
   B41J2/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-107269(P2015-107269)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 源次
(72)【発明者】
【氏名】安間 弘雅
(72)【発明者】
【氏名】岩野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 千秋
(72)【発明者】
【氏名】工藤 徳治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晋平
(72)【発明者】
【氏名】松井 聞多
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056FA10
2C056HA05
2C056KB25
2C056KB31
2C056KD02
2C057AF76
2C057AG29
2C057AG77
2C057BA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】吐出泡起因の小泡による不吐出が引き起こす画像品位の低下を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供する。
【解決手段】吐出素子基板155aに繋がる流路の一部である液室123cを、第1の梁状部材131cの左側の液室123pと右側の液室123qとの2つに分けている第1の梁状部材の、液体が流れる方向における下流側に、第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した線を挟んで複数の第2の梁状部材132i、132jを設ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出素子基板を備えた液体吐出ヘッドにおいて、
前記吐出素子基板へ液体を導く流路は、
前記流路を複数の流路に分ける第1の梁状部材と、
前記第1の梁状部材の、液体が流れる方向における下流側に、前記第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した線を挟むように設けられた複数の第2の梁状部材と、
を備えていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記流路は、液体が流れる方向に延在した前記第1の梁状部材によって第1の流路と第2の流路との2つの流路に分けられ、前記第1の流路と前記第2の流路とでは、それぞれ液体の流れる速度が異なることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の前記第2の梁状部材は、2つの前記第2の梁状部材であり、一方の前記第2の梁状部材は前記第1の流路からの流れを2つに分け、他方の前記第2の梁状部材は、前記第2の流路からの流れを2つに分けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1の梁状部材によって2つに分けられた流路の下流の流路は、前記第2の梁状部材によって3つの領域に分けられ、
3つの前記領域のうち、2つの前記第2の梁状部材で挟まれた領域が、最も広い領域であることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
2つの前記第2の梁状部材のうちの一方の前記第2の梁状部材から、前記第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した前記線までの距離よりも、他方の前記第2の梁状部材から、前記第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した前記線までの距離の方が長いことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
2つの前記第2の梁状部材のうちの一方の前記第2の梁状部材は、他方の前記第2の梁状部材の液体が流れる方向における下流側に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
複数の前記第2の梁状部材は、3つの前記第2の梁状部材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドでは、吐出に伴って吐出口近傍から吐出泡が生じることがある。吐出に伴って発生した吐出泡は、自らの浮力により流路内を浮上し、流路上方に溜まる。吐出動作によって流路内の液体の流量が増えると、流路内の液体流速が大きくなり、流路上方に溜まった吐出泡起因の小泡が流されて吐出素子基板に向けて下降する。このように加工した小泡が吐出口にまで到達すると、液体を吐出しなくなる不吐出を引き起こすことがある。このような不吐出は、発生場所やタイミングがランダムに分散している場合は、視認しにくいため、官能的な画像品位を低下させることは少ない。
【0003】
比較的長い吐出口列を備えた吐出素子基板に液体を供給する液体吐出ヘッドでは、吐出素子基板の長穴状の液体供給口へと液体を導く、長穴状に広く開口された長穴流路を有するものがある。このような構造は、吐出素子基板の直ぐ上流に急な絞りを伴う流路の構造に比べ、吐出素子基板全体に同時多量かつ均一な液体供給が可能である。
【0004】
特許文献1には、長穴流路の製造過程での変形防止のための補強等を目的として、流路内に梁状部材を設けた液体吐出ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−079246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体吐出ヘッドの構造によっては、長穴流路の長手方向における一方と他方とで、流速が異なることがある。特許文献1のように流路に梁状部材を設け、梁状部材の両側の流路の流速差が大きいと、梁状部材の下流側終端部で、流速の速い流路から流速の遅い流路へと向かう流れが生じる。この時、液体の流れと共に下降してきた小泡も、流速の遅い流路側へと流されることになるが、小泡は梁状部材の下流側終端部を通過する際に、吐出素子基板の吐出口へと向かう流れに吸い込まれることが多い。そのため、梁状部材の直下に対応する吐出口では不吐出が多発し画像品位を低下させることがあった。
【0007】
そこで本発明は、画像品位の低下を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
よって本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出する吐出素子基板を備えた液体吐出ヘッドにおいて、前記吐出素子基板へ液体を導く流路は、前記流路を複数の流路に分ける第1の梁状部材と、前記第1の梁状部材の、液体が流れる方向における下流側に、前記第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した線を挟むように設けられた複数の第2の梁状部材と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像品位の低下を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体吐出装置を示した斜視図である。
図2】液体吐出ヘッドを示す分解斜視図である。
図3図2のIII−IIIによる断面図である。
図4】第1の梁状部材、第2の梁状部材が設けられた流路領域を示した図である。
図5】比較例の流路領域を示した図である。
図6】液体吐出ヘッドに変形例を示した図である。
図7】他の実施形態における液体吐出ヘッドの流路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、図を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態を適用可能な液体吐出装置200を示した斜視図である。液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ102は、主走査方向に沿って延びたガイド103に沿って往復移動可能に支持されている。液体供給チューブが接続されたキャリッジ102は、キャリッジモータ(不図示)により、駆動される。用紙等のプリント媒体は、給紙機構の給紙モータ(不図示)によりギア列を介して駆動される給紙ローラ(不図示)によって給紙され、搬送ローラ104及びピンチローラ(不図示)によりプラテン106上へ送り出される。搬送ローラ104及び排紙ローラ(不図示)によりプラテン106上を搬送されるプリント媒体に対し、液体吐出ヘッドの吐出口から液体が吐出されてプリントが行われる。
【0012】
プリント媒体へのプリントに際しては、キャリッジ102は停止状態から、加速された後にプリント動作の走査範囲を通して一定速度で移動する。このとき、液体吐出ヘッドの吐出口からプリント媒体へ液体を吐出して画像を形成する。1回又は複数回の走査によって1ライン分のプリントが終了した後、キャリッジ102は減速されて停止する。次いで、搬送ローラ104及び排紙ローラの回転によりプリント媒体を所定量だけ紙送りする。
【0013】
図2は、第1の実施形態における液体吐出ヘッド100を示す分解斜視図である。液体吐出ヘッド100は、液体供給ユニット110と、液体供給ユニット110から液体の供給を受けて液体(以下、液体ともいう)をプリント媒体に吐出するための吐出素子ユニット150により構成されている。この液体吐出ヘッド100は、液体吐出装置(不図示)に設けられているキャリッジ102の位置決め手段および電気的接点によってキャリッジ102に固定支持されるとともに、キャリッジ102に対して着脱可能となっている。
【0014】
液体吐出装置200には、液体タンク(不図示)と接続された液体供給チューブが設けられており、その先端には液体コネクタが設けられている。液体吐出ヘッド100が搭載された際、液体コネクタと液体コネクタ挿入口113とが気密接続され、液体タンク内の液体が液体吐出ヘッド100へと供給される。本実施形態では、6種類の液体を搭載可能な液体吐出ヘッドであり、それぞれの液体供給チューブに対応して、液体コネクタ挿入口113aから113fが設けられ、個別に供給路が形成されている。
【0015】
吐出素子ユニット150は、2つの吐出素子基板155a、155b、第1の支持部材151、第2の支持部材152、電気配線テープ153、電気コンタクト基板154を備えている。第1の支持部材151、第2の支持部材152は、本実施形態では焼成したアルミナで形成されているが、筐体111と同様に樹脂モールドで形成してもよい。
【0016】
吐出素子ユニット150の吐出素子基板155には、厚さ0.5〜1mmのSi基板の片面に液体を吐出するために利用されるエネルギを発生するエネルギ発生素子を備えている。本実施形態においてはエネルギ発生素子として複数のヒータを用い、各ヒータに電力を供給する電気配線とが成膜技術により形成されている。そして、このヒータに対応する複数の液体流路と複数の吐出口とがフォトリソグラフィ技術により形成されているとともに、複数の液体流路に液体を供給するために吐出口液室(不図示)が裏面に開口するように形成されている。なお、用いるエネルギ発生素子は、ピエゾ素子であってもよい。
【0017】
第1の支持部材151には吐出素子基板用の開口を有する第2の支持部材152が接着固定されており、この第2の支持部材152を介して、電気配線テープ153が吐出素子基板155(155a、155b)に対して電気的に接続されるように保持されている。この電気配線テープ153は、吐出素子基板155に液体を吐出するための電気信号を印加するためのものである。電気配線テープ153の端部には、液体吐出装置200からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子を有する電気コンタクト基板154が、異方性導電フィルム(不図示)を用いて熱圧着され電気的に接続されている。
【0018】
吐出素子基板155は、液体供給口156を備える第1の支持部材151に接着固定されている。第1の支持部材151には、6つの液体供給口156aから156fが設けられており、筐体111に設けられた第3の液室123aから123fとそれぞれ接続されている。
【0019】
図3は、液体コネクタ挿入口113cから吐出素子ユニット150への液体供給を示す図2のIII−IIIによる断面図である。液体コネクタ挿入口113aを含む液体供給系など他の5個の液体供給系も同様の構造を有する。液体コネクタ挿入口113cから供給された液体は、吐出口への異物の混入を防止するフィルタ114cを通り、第1の液室121c、第2の液室122c、第3の液室123cを経て吐出素子ユニット150へ供給される。筐体111と蓋部材112は樹脂モールド部品を採用している。
【0020】
第1の液室121c、第2の液室122c、第3の液室123c、液体供給口156cはいずれも吐出口配列方向に長穴状に設けられた流路であり、これらは連通して長穴状の連通流路130cを形成する。連通流路130cは、フィルタ114cの直ぐ下流の長穴流路の中心が、吐出素子基板155aの吐出口配列方向にシフトした偏り供給路である。偏り供給路の偏りの量は、液体吐出ヘッド100の大きさ、複数色の液体の供給路のレイアウトにより決められる。また、連通流路130cに隣接する流路(不図示)は、図3の略中心軸B-Bに対して左右反転した構造としている。これにより各々の流路を密集させ液体吐出ヘッドの小型化を実現している。斜面124は、連通流路130cの液体流や小泡の滞留を防ぐ斜面であり、偏り供給路には設けることが好ましい構造である。
【0021】
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド100の第1の梁状部材、第2の梁状部材が設けられた流路領域を示した図である。液室123cと液体供給口156cとには、各々梁状部材が設けられている。液室123cにおいて流路の上流(フィルタ側)から下流(吐出素子側)へ延在する第1の梁状部材131cは、吐出口配列方向の幅が約26mmの液室123cの幅方向における略中央に配置される。その結果、液室123cは、梁状部材131cの左側の液室123pと右側の液室123qとの2つに分けられる。左液室123pはフィルタ114cが設けられている側にあり、偏り側の流路である。また、右液室123qは、フィルタ114cが設けられていない側にあり、反偏り側の流路である。第2の液室122cに対して、図の左斜め上方から流れた液体は、第2の液室122cを経て、第3の液室123cに供給される。液体の流れは縦に延在した梁状部材131により一部が整流され、液体は吐出素子基板155aに達する。
【0022】
1組の第2の梁状部材132i、132jは、約10mmの間隔で、第1の梁状部材131の延長線Lを挟むように、液体供給口156cの支持部材151と筐体111との接合部付近に設けられている。
【0023】
第1の梁状部材131cは、樹脂である液室123cの長穴形状の樹脂成型時の変形を防止する補強部材として、補強に好適な液室123cの中央に配置される。一方、第2の梁状部材132i、132jは、アルミナ焼成時の変形に対する補強部材として設けられている。第2の梁状部材を設けることで、液体供給口156c内の流抵抗を減らす観点から、梁状部材132の数は少ない方が有利である。しかし、梁状部材132が1つの場合には問題が生じる。これについては、後述する比較例で説明する。
【0024】
次に、本実施形態における吐出時の流路内の小泡の挙動を説明する。
吐出に伴い吐出口より発生した吐出泡を起因とする小泡は、浮力により連通流路130cを浮上し、フィルタ114cに張られたメニスカスにより、フィルタ114cより下流の、第1の液室121cの上方に浮かんで蓄積される。一部は、第2の液室122cにも蓄積される。吐出の際の連通流路130cの流量が比較的小さい場合、小泡は第1の液室121c等の上方に残る。しかし高速吐出の際に連通流路130cを流れる液体の流量が増えて、小泡を下流に押す力が小泡の流力を上回ると、小泡140は、流れ141のような経路を経て下流へ向け降下する。下流に運ばれる小泡の数は、流速が大きいほど多い。
【0025】
本実施形態のような偏り供給路を備えた液体供給ユニット110の場合、吐出が吐出口配列方向に帯状のパターンのように、配列された吐出口から液滴の吐出の分布に顕著な偏りがない場合でも、偏り流路では、偏り側の流路の流量は反偏り側の流量より多くなる。よって、流速も偏り側の流路が大きくなる。つまり、第3の液室123cでは、左液室123pの流速が右液室123qの流速より大きくなる。そのため、左液室123pにおいて、右液室123qよりも多くの小泡が降下する。
【0026】
左液室123pを流れた液体は、梁状部材132iによって2つの流れ141a、141bに分けられる。そのうちの一方の流れ141bは、梁状部材131cの下端の直下で右液室123qの流れ141dと合流し、左液室123pにおける流れより流速を落とし、液体供給口156cの梁状部材132iと梁状部材132jとの間の領域158bを流れる。左液室123pにおける他方の液体の流れ141aは、梁状部材132iの左側を通過して、液体供給口156cの端部の広がり157のために流速を落とす。
【0027】
右液室123qを流れた液体は、梁状部材132jによって2つの流れ141c、141dに分けられる。そのうちの一方の流れ141dは、梁状部材131cの下を流れてきた左液室123pの流れ141bと合流し、右液室123qにおける流れより流速を上げて、液体供給口156cの梁状部材132iと梁状部材132jとの間の領域158bを流れる。右液室123qにおける他方の液体の流れ141cは、梁状部材132jの左側を通過して、液体供給口156cの端部の広がり157のために流速を落とす。
【0028】
これらの結果、梁状部材132i、132jにより分けられる液体供給口156cの3つの領域158a、158b、158cにおける隣接する領域の流速差は、左液室123pと右液室123qの流速の差よりも緩和される。隣接する領域での流速差が小さいことから、梁状部材132iと梁状部材132jとの下端部では、各領域間を流れる流れはほとんど生じない。その結果、液体供給口156cの3つの領域に運ばれた小泡140は、梁状部材の下部に集中することなく、分散して各領域の下流の吐出口液室を経て吐出口近傍へ運ばれる。
【0029】
吐出内容に伴う第3の液室123cの左右の液室の流量に応じ、梁状部材131の左右の液室から領域158bに運ばれる小泡の量が変化する。仮に全吐出口から連続して液滴吐出するならば、左液室123pの流量は右液室123qより多い。また左液室123pから領域158bへ流れる流量は、右液室123qから領域158bへ流れる流量よりも多い。そのため、左液室123pから領域158bに運ばれる小泡は、右液室123qから領域158bへ運ばれる小泡より多くなる。
【0030】
このように、液体供給口156cに運ばれた小泡は、1組の梁状部材132で分けられた3つの領域において各々分散して降下し、特定の場所に集中することはない。よって、降下した小泡は吐出口に飛び込む可能性があるが、その場所が吐出口配列方向に分散されるため、視認できる吐出不良になりにくい。
【0031】
図5(a)は、本実施形態の比較例である液体吐出ヘッドの梁状部材が設けられた流路領域を示した図である。比較例の液体吐出ヘッドでは、第3の液室123cに設けられる補強の梁状部材131は、図4の本願発明の液体吐出ヘッドと同じ構造であり、液体供給口156cには、吐出素子基板155aから図4の例と同じ距離に1個の梁状部材132が設けられる。梁状部材132は、1個の梁状部材で長穴状の液体供給口156cの変形を防止するために好適な位置である液体供給口156cの中央、すなわち梁状部材131の直ぐ下流に設けられる。
【0032】
図5(b)は、比較例の液体吐出ヘッドにおける小泡の移動状態を説明するものである。この時、液体流に運ばれる小泡は、流れ141のような経路を経て下流へ向け降下する。梁状部材131の下端と梁状部材132kとの隙間は、梁状部材132の下方の空間より小さいため、左液室123pから領域158eへの液体流は、梁状部材132kの下端を通る経路141bを移動する。
【0033】
本願発明の梁状部材を2つ設けた構成では、小泡が吐出口配列方向に分散したのに対し、本比較例では、梁状部材132kの直下で吐出素子基板155aに沿って一定の流れが生じる。この中のある一定の割合の小泡は、梁状部材132k直下に対応する吐出口への流れに吸い込まれ、この付近の吐出口の突発的な不吐出を引き起こす。突発的な不吐出が一部の領域に集中することで、視認できる吐出不良が生じてしまう。
【0034】
なお、1組の梁状部材132i、132jの形状は異なってもよい。例えば、偏り側の梁状部材132iの上下方向の長さを梁状部材132jより大きくし、流量が比較的多い左液室123pからの液体流の整流を行ってもよい。
【0035】
図6は、本実施形態における液体吐出ヘッドに変形例を示した図である。本実施形態では、偏り供給の構造の連通通路の例を説明したが、偏り供給構造に限定するものではない。例えば図6のような偏り供給ではない長穴状の連通通路でも、吐出する画像によっては、梁状部材131cの左右に流速差が生じる。この場合、梁状部材131cと梁状部材132i、132jの位置関係を図6のようにすることで、本実施形態のように、小泡が吐出口に飛び込む位置を分散することができる。
【0036】
このように、吐出素子基板に繋がる流路を2つに分けている第1の梁状部材の、液体が流れる方向における下流側に、第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した線を挟んで複数の第2の梁状部材を設ける。これによって、画像品位の低下を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を実現することができた。
【0037】
(他の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の他の実施形態を説明する。なお、本実施形態の基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0038】
図7(a)から(c)は、本発明の他の実施形態における液体吐出ヘッドの流路を示した図である。図7(a)は、梁状部材132jと延長線Lとの距離を梁状部材132iと延長線Lの距離より長くし、領域158bを領域158aより広くした例である。これによって、隣接する領域の流速差はより小さくなり、小泡は、3つの領域において各々分散して降下し、特定の場所に集中することはない。
【0039】
また、梁状部材132i、132jの高さ方向の位置が異なっていてもよい。図7(b)は、梁状部材131の下端と梁状部材132jとの上下方向の距離dを、梁状部材131の下端と梁状部材132iとの距離より大きくし、右液室123qから領域158bへの液体の入り口を大きくした例である。
【0040】
また、図7(c)のように、流路の補強に支障がなければ、梁状部材131を液室123の一方へ寄せてもよい。その際は、液体供給口156cには図のように3つの梁状部材132i、132j、132kを設ける。
【0041】
このように、流路を2つに分けている第1の梁状部材の、液体が流れる方向における下流側に、第1の梁状部材を液体が流れる方向に延長した線を挟んで複数の第2の梁状部材を設ける。これによって、隣接する領域の流速差はより小さくなり、小泡は、3つの領域において各々分散して降下し、特定の場所に集中しなくなることで、画像品位の低下を抑制することができる液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置を実現することができた。
【符号の説明】
【0042】
100 液体吐出ヘッド
123p 左液室
123q 右液室
131 梁状部材
132 梁状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7