【解決手段】画像形成装置は、感光体表面に対向し主走査方向に配列されたm個(mは3以上の整数)の発光素子と、各m個の発光素子の発光光量を補正するために光量調整値を導出する光量補正手段324と、感光体表面に静電潜像を形成するために、各m個の発光素子の光量調整値に基づき、対応する発光素子を駆動し発光/非発光を制御する駆動手段226と、各m個の発光素子の中から、主走査方向の端部に存在するn個(nは、mより小さい2以上の整数)の発光素子を選択する選択手段325と、を備え、駆動手段は、n個の発光素子の累積発光時間が所定の代表値に揃うように、対応する発光素子を駆動して強制的に発光させ、所定の代表値は、m−n個の発光素子の累積発光時間の中の最大値を超えない。
印刷ジョブで複数サイズの記録媒体への印刷が指定された場合、前記選択手段は、最も多く使用されたサイズの記録媒体に基づき、n個の発光素子を選択する、請求項1または2に記載画像形成装置。
今回の印刷ジョブで使用された記録媒体のサイズが前回の印刷ジョブで使用された記録媒体のサイズよりも小さい場合、前記所定の代表値は、前記n個の発光素子の累積発光時間の中の最大値である、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
今回の印刷ジョブで使用された記録媒体のサイズが前回の印刷ジョブで使用された記録媒体のサイズよりも大きいか同じ場合、前記所定の代表値は、前記n個の発光素子の累積発光時間の中の最大値以上で、前記m−n個の発光素子の累積発光時間の中の最大値を超えない、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
前記駆動手段は、印刷プロセスの立ち下げ中に、前記n個の発光素子の累積発光時間が所定の代表値に揃うように、対応する発光素子を駆動して強制的に発光させる、請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
前記駆動手段は、前記n個の発光素子の累積発光時間が所定の代表値に揃うように、対応する発光素子を駆動して強制的に発光させる際、発光光量を静電潜像形成時よりも少なくする、請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
前記駆動手段は、前記n個の発光素子の累積発光時間が所定の代表値に揃うように、対応する発光素子を駆動して強制的にかつ間欠的に発光させる、請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、画像形成装置について詳説する。
【0012】
《第一欄:定義》
まず、
図1等において、x軸、y軸およびz軸は、画像形成装置の左右方向、前後方向および上下方向とする。また、y軸は、光ビームBの主走査方向を示す。この観点で、以下、主走査方向には、yという参照符号を付すことがある。
【0013】
《第二欄:画像形成装置の印刷動作》
図1において、画像形成装置1は、例えば、プリンタ、コピー機、ファクシミリまたはこれらの機能を有するMFP(Multifunction Peripheral)である。画像形成装置1は、印刷ジョブに応答して、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の色毎に、感光体ドラム28の表面上に対応色のトナー像を形成し、各トナー像を中間転写ベルト24上に合成し、これによって得られた合成トナー像を記録媒体Sに転写する。以下、印刷ジョブ実行時における画像形成装置1の動作をより詳細に説明する。
【0014】
画像形成装置1において、供給ユニットは、下流のタイミングローラ対に向けて、印刷ジョブで指定されたサイズの記録媒体Sを1枚ずつ、対応する搬送経路R上に送り出す。記録媒体Sは、停止するタイミングローラ対のニップにて一旦停止する。その後、タイミングローラ対は回転し、記録媒体Sは後述の二次転写領域に送り出される。
【0015】
画像形成装置1はプロセスユニット2を備える。プロセスユニット2は、Y,M,C,Kの色毎に、作像手段21、OLED−PH22および転写手段23の組みを含む。また、プロセスユニット2は、中間転写ベルト24、駆動ローラ25、従動ローラ26および二次転写ローラ27をさらに含む。
【0016】
各作像手段21は、大略的には、感光体ドラム28と、その表面の周方向に配置された帯電手段29および現像手段210と、を有する。四個の感光体ドラム28は左右方向に並置される。各色の感光体ドラム28は、y軸方向に延在し、中心軸の周りを時計回り(矢印CWで示す)に回転する。ここで、回転方向CWの逆方向が、光ビームBの副走査方向となる。各帯電手段29は、y軸方向に延在し、対応する感光体ドラム28の周面を一様に帯電させる。
【0017】
各OLED−PH22は、露光手段の典型例であって、
図2に示すように、対応色の帯電手段29を基準として、回転方向CWの直ぐ下流側であって、対応色の感光体ドラム28の周面近傍に配置される。各OLED−PH22は、ホルダ221に固定的に設けられたOLED基板222と、発光素子アレイ223と、レンズアレイ224と、を含む。
【0018】
各発光素子アレイ223は、典型的にはOLED(Organic Light Emitting Device)である複数の発光素子225に加え(
図3を参照)、対応する発光素子225を駆動する駆動回路を含む。各発光素子225は、対応色の感光体ドラム28の表面に対向するように、主走査方向yにライン状にOLED基板222上に配列される。この発光素子225は、後述のASIC32および駆動IC226により発光/非発光が制御される。
【0019】
ここで、OLEDの発光光量は、
図4に示すように、同じ駆動電圧を印加し続けたとしても、累積発光時間に相関して低下する。より具体的には、発光光量は、累積発光時間の少ない初期の方が大きく低下する。
【0020】
また、
図3に示すように、各発光素子アレイ223に含まれる発光素子225の総数をmとする。mは、基本的には3以上の整数でよいが、具体的には、画像形成装置1が印刷可能な最大サイズの記録媒体Sの一辺の長さ(例えばA3サイズの短辺)と、主走査方向yへの単位長さあたりの画素数とにより定められ、例えば数千〜一万数千程度である。
【0021】
画像形成時、発光素子アレイ223において主走査方向yの両端部にある発光素子225は殆ど使用されないことがあるので、両端部の発光素子225の累積発光時間は、両端部の除く中央部のそれと比較して短くなる。ここで、各端部の発光素子225の個数をnとすると、nは、基本的には2以上であってn<mを満たす。また、nは、画像形成に使用される記録媒体Sのサイズに応じて変わる。本画像形成装置1では、記録媒体Sのサイズ毎に、各端部の発光素子数nを記述したテーブルT1が予め準備される(下表1を参照)。このテーブルT1は、印刷ジョブ実行時(
図6,S08)等で使用され、後述のフラッシュメモリ33等に格納される。
【0023】
レンズアレイ224は、マイクロレンズアレイ(MLA: Micro Lens Array)や集光性光伝送体アレイからなり、主走査方向yに配列された複数の屈折率分布型レンズ(Graded Index Lens)を有する。このようなレンズアレイ224は、発光素子アレイ223と感光体ドラム28の表面との間に、各発光素子225の光軸と各屈折率分布型レンズの光軸とが平行になるように配置される。レンズアレイ224は、各発光素子225からの入射光ビームBを、感光体ドラム28の表面に集光する。
【0024】
以上の構成により、各OLED−PH22は、対応色の感光体ドラム28の周面上に、対応色の光ビームBを主走査方向yに走査することが可能となる。また、感光体ドラム28は矢印CWの方向に回転するので、光ビームBは、回転方向CWとは逆方向の副走査方向にも走査される。これによって、各感光体ドラム28の周面には、対応色の静電潜像が形成される。
【0025】
再度
図1を参照する。各現像手段210は、y軸方向に延在し、光ビームBの照射位置の直ぐ下流で、対応色の感光体ドラム28の周面と対向する。各現像手段210は、感光体ドラム28の周面上にトナーを供給する。これによって、感光体ドラム28の周面上で静電潜像は現像され、対応色(単色)のトナー像が形成される。
【0026】
上記現像プロセスの結果、各感光体ドラム28は、対応色のトナー像を周面上に担持する。また、各感光体ドラム28が回転することで、トナー像は回転方向CWの下流へと搬送される。
【0027】
各転写手段23は、y軸方向に延在しており、対応色の現像手段210の下流側で、対応色の感光体ドラム28の周面と、中間転写ベルト24を挟んで対向する。
【0028】
中間転写ベルト24は、無端状のベルトであって、各色の転写手段23および感光体ドラム28の間に介在するように、駆動ローラ25および従動ローラ26の間に矢印αの方向に回転可能に張り渡される。また、中間転写ベルト24は、各転写手段23により各感光体ドラム28に圧接され、一次転写領域を形成する。
【0029】
各転写手段23にはバイアス電圧が印加される。感光体ドラム28により搬送されてくるトナー像は、一次転写領域に到達すると、中間転写ベルト24の外周面に静電的に移動する(一次転写)。各色のトナー像は、中間転写ベルト24の表面の同一エリアに重なり合うよう転写される。このような合成トナー像を、中間転写ベルト24が担持しつつ回転することで二次転写ローラ27に向けて搬送する。
【0030】
二次転写ローラ27は、中間転写ベルト24を挟んで駆動ローラ25と対向配置され、中間転写ベルト24に押圧されて、二次転写領域を形成する。二次転写ローラ27にもバイアス電圧が印加される。二次転写領域において記録媒体Sには、中間転写ベルト24により搬送されてきた合成トナー像が静電的に転写される(二次転写)。
【0031】
トナー像が転写された記録媒体Sは、定着手段において加熱・加圧され、これによって、合成トナー像が記録媒体Sに定着させられる。この記録媒体Sは、排出ローラ対から排出トレイに印刷物として排出される。
【0032】
画像形成装置1は、上記各部を制御するために、制御手段3を備える。制御手段3は、CPUやメインメモリ等からなり、予め準備されたプログラムに従って動作し、画像形成装置1の印刷動作を制御する。
【0033】
《第三欄:制御手段とOLED−PHについて》
また、制御手段3は、印刷ジョブ実行中、OLED−PH22の発光制御(詳細は後述)を行う。そのために、制御手段3は、
図5に示すように、プリンタコントローラ31と、ASIC32と、フラッシュメモリ33と、を含む。
【0034】
プリンタコントローラ31は、大略的には、言語解析およびラスタライズを行う。言語解析において、プリンタコントローラ31は、所定のページ記述言語で作成された印刷ジョブを受け取り、印刷すべき記録媒体S毎(換言すると、印刷ページ毎)に、ページ記述言語を解析する。その後、プリンタコントローラ31は、ディスプレイリストと呼ばれる中間データをメモリ(図示せず)上に生成する
【0035】
また、ラスタライズにおいて、プリンタコントローラ31は、メモリからディスプレイリスト(中間データ)を読み込み,描画処理(色変換)やスクリーン処理を行ってフレーム空間に、例えば1200ppi(pixel per inch)の二値画像を示すラスタデータを色毎に作成する。
【0036】
ASIC32は、特定用途向け集積回路であって、色毎に、機能ブロックとして、データ受信部321と、各種処理部322と、データ通信部323と、を含む。データ受信部321は、色毎に、ラスタデータをプリンタコントローラ31から受け取り、各種処理部322は、色毎に、受け取ったラスタデータに対しメモリ上で各種処理を行う。具体的には、ラスタデータのスキュー補正や、各発光素子225の発光回数を得るためのドットカウントが行われる。その後、データ通信部323は、色毎に各種処理済みのラスタデータを、例えばFFC(Flexible Flat Cable)4を介して、対応色の駆動IC226に伝送する。ここで、ラスタデータの伝送に関しては、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)等で高速伝送されることが望ましい。
【0037】
また、ASIC32は、他にも、色毎の機能ブロックとして、光量補正部324と、発光素子選択部325と、強制発光時間決定部326と、を含む。光量補正部324は、印刷ジョブ実行時、色毎に、m個の発光素子225それぞれについて光量調整値Vを導出する。発光素子選択部325は、色毎に、各端部に存在するn個の発光素子225(即ち、印刷ジョブの実行時に使用頻度が低かった発光素子225)を選択する。なお、発光素子選択部325は、色毎に、各端部に存在するn個の発光素子225(即ち、合計2・n個の発光素子225)を選択するが、通常は、nは各色で同じ値になる。強制発光時間決定部326は、印刷ジョブ実行後、色毎に、選択された2・n個の発光素子225それぞれについて強制発光させる時間(以下、強制発光時間)t0を決定する。具体的には、色毎に、2・n個の発光素子225の累積発光時間t1が所定の代表値t1typ.に揃うように、各発光素子225の強制発光時間t0が定められる。データ通信部323はさらに、各色の光量補正部324および強制発光時間決定部326が導出した光量調整値Vおよび強制発光時間t0を制御データとして、FFC4を介して、対応色の駆動IC226に伝送する。ここで、制御データの伝送方式に関しては、例えばI2C(I‐squared‐C)等のシリアルバスで行われる。なお、各部の処理の詳細については後述する。
【0038】
また、ASIC32は、上記以外にも、ライン同期信号やクロック等、各色の各発光素子225のタイミングを定義する制御データも、FFC4を介して対応色の駆動IC226に伝送する。
【0039】
フラッシュメモリ33は、ASIC32での処理に必要な各種テーブルT1〜T4が格納される。テーブルT1は前述の通りである。テーブルT2〜T4は、色毎に予め準備される点で共通であるが、色毎のテーブルT2,T3は、m個の発光素子225のそれぞれについて累積発光時間t1および劣化度dを保持する(下表2,3を参照)。ここで、累積発光時間t1の初期値は0とする。また、劣化度dの初期値は0で、発光素子225の劣化が進むにつれて大きな値をとるとする。また、色毎のテーブルT4は、前回の印刷ジョブ実行時におけるOLED基板222の代表的な温度t2を保持する(下表4を参照)。なお、表2,3には、Y用のテーブルT2,T3のみが例示される。
【0041】
また、
図5に示すように、各色のOLED基板222には、大略的には、前述の発光素子アレイ223に加え、駆動IC226が実装される。なお、図示の都合上、
図5には、YのOLED基板222の構成のみが描かれている。
【0042】
各色の駆動IC226は、印刷ジョブの実行時、対応色のラスタデータに加え、各種制御データを受け取ると、クロックやライン同期信号に基づきタイミングを合わせつつ、光量調整値Vを対応する発光素子225に印加しつつ、ラスタデータに基づきその発光素子225のオン/オフ(つまり、発光/非発光)を制御する。これにより、各発光素子225の発光光量のバラツキが補正されて、印刷画像における濃度ムラを抑制している。
【0043】
また、各駆動IC226は、少なくとも一つの温度センサ227を有する。各温度センサ227は、予め定められたタイミングで、OLED基板222の温度を検出して、基板温度t2としてFFC4を介してASIC32に送信する。
【0044】
また、各色の駆動IC226は、印刷ジョブの実行後、ライン同期信号等に基づきタイミングを合わせつつ、使用頻度の少なかった2・n個の発光素子225に、光量調整値Vを印加しつつ、受け取った強制発光時間t0の間だけその発光素子225をオンにする。
【0045】
《第四欄:光量補正と強制発光について》
次に、
図6を参照して、本画像形成装置1の動作について、さらに詳細に説明する。
【0046】
図6において、印刷ジョブが画像形成装置1に送られてくると、前述の通り、プリンタコントローラ31は各色のラスタデータを生成し、ASIC32は、各色のラスタデータをライン同期信号等と共に、対応色の駆動IC226に伝送する(S01)。
【0047】
また、光量補正部324は、印刷の実行前に下記の処理を行う(S02)。S02では、まず、各色のテーブルT3から、各発光素子225の劣化度dが読み出され、その後、各発光素子225の発光特性値Cが導出される。発光特性値Cは、発光素子225の経時劣化の補正値であって、基本的には、劣化度dに相関する。また、各色の温度センサ227から基板温度t2が取得される。さらに、各発光素子225で必要な光量L(lx)を取得する。その後、次式(1)に基づき、色毎に、m個の発光素子225それぞれの光量調整値Vが導出される。
V=K2×C×L×t2 …(1)
上式(1)において、光量調整値Vは、基板温度t2と発光特性値Cとに基づき必要な光量Lを補正した値を、係数K2を乗算することで発光素子225への印加電圧値に変換した値である。係数K2は、画像形成装置1の設計開発段階に実験等で適宜適切に定められる。
【0048】
ここで、本画像形成装置1によれば、後述の強制発光により、両端部にある合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1が代表値t1typ.に揃えられる。その結果、2・n個の発光素子225の劣化度dも揃う(後述の式(2)を参照)。よって、S02において、発光素子225の端部において劣化度dが揃っているものについては、光量補正部324は上式(1)により光量調整値Vを導出するのではなく、他の光量調整値Vを流用する。即ち、両端部の合計2・n個の発光素子225の演算回数を一回で済ませる。
【0049】
次に、光量補正部324は、それぞれを対応色の駆動IC226に伝送する(S02)。
【0050】
制御手段3は、準備が整うと印刷を開始する。この時、画像形成装置1の構成各部は前述の通り動作するのであるが、特に、各色の駆動IC226は、印刷動作における露光において、ライン同期信号等に基づきタイミングを合わせつつ、受け取った光量調整値Vのそれぞれを、対応する発光素子225に印加しつつ、ラスタデータに基づき発光素子225の発光を制御する(S03)。S03は、印刷ジョブで指定された全ページの印刷が完了するまで繰り返される(S04)。
【0051】
全ページの印刷が完了すると、ASIC32は、テーブルの更新を行う(S05)。具体的には、下記の通りである。各温度センサ227から、印刷ジョブ終了時の基板温度t2を取得し、対応するテーブルT4の値を更新し、今回の印刷ジョブ実行中に各発光素子225が発光した時間を、対応するテーブルT2の累積発光時間t1に積算する。
【0052】
次に、発光素子選択部325は、今回の印刷ジョブ実行中、最も多く使用された記録媒体Sのサイズを特定する(S06)。次に、発光素子選択部325は、特定したサイズが、画像形成装置1が印刷可能な最大サイズ(例えばA3)か否かを判断する(S07)。Yesであれば、全ての発光素子225の使用頻度が高いため、強制発光を行う必要が無いとみなし、発光素子選択部325は、
図6の処理を終了する。
【0053】
それに対し、S07でNoであれば、強制発光が必要であるとみなして、発光素子選択部325は、S06で特定したサイズに対応する端部の発光素子数nをテーブルT1から読み出して、強制発光時間決定部326に渡す(S08)。
【0054】
強制発光時間決定部326は、前回の印刷ジョブ実行後のS06で特定したサイズ(以下、前回のサイズ)と、今回の印刷ジョブ実行後のS06で特定したサイズ(以下、今回のサイズ)とを比較する(S09)。
【0055】
S09での比較の結果、今回のサイズが大きいか同じであれば(S010でYes)、強制発光時間決定部326は、所定の代表値t1typ.を、
図7Aに示すように、両端部の合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1の最大値以上であって、(m−2・n)個の発光素子225の累積発光時間t1の最大値未満の範囲内に属する第一の値に設定する(S011)。
【0056】
次に、強制発光時間決定部326は、色毎に、合計2・n個の発光素子225のそれぞれについて、所定の代表値t1typ.から累積発光時間t1を減算して、強制発光時間t0を決定する(S012)。
【0057】
S012の次であって、印刷プロセスを立ち下げる最中に、強制発光時間決定部326は各強制発光時間t0を、さらに、光量補正部324が各光量調整値Vを、対応色の駆動IC226に伝送する(S013)。この時、必要に応じて、ライン同期信号等もASIC32から伝送される。各色の駆動IC226は、ライン同期信号等に基づきタイミングを合わせつつ、受け取った光量調整値Vのそれぞれを、対応する発光素子225に印加し、強制発光時間t0の間、発光素子225を強制的に発光させる(S014)。その結果、
図7A下段に実線で示すように、両端部で合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1は、所定の代表値t1typ.に変更される。
【0058】
次に、強制発光時間決定部326は、各色のテーブルT2,T3を更新する(S015)。具体的には、各色のテーブルT2における合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1が、所定の代表値t1typ.に更新される。さらに、各色のテーブルT3におけるm個の発光素子225の劣化度dが、次式(2)に基づき導出され、各色のテーブルT3におけるm個の発光素子225の劣化度dが導出したものに更新される。
d=K1×t1×V×t3 …(2)
上式(2)において、劣化度dは、累積発光時間t1と、光量調整値Vと、印刷ジョブ終了時の基板温度t2に、係数K1を乗算することで得られる。係数K1は、画像形成装置1の設計開発段階に実験等で適宜適切に定められる。
【0059】
また、S09での比較の結果、今回のサイズが大きいか同じでなければ(S010でNo)、強制発光時間決定部326は、所定の代表値t1typ.を、
図7Bに示すように、合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1の最大値である第二の値に設定する(S016)。
S016の後については、ASIC32は、S012〜S015の同様の処理を行う。その結果、
図7B下段に実線で示すように、合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1は、所定の代表値t1typ.に変更される。
【0060】
《第五欄:強制発光の作用・効果》
以上の処理によれば、本画像形成装置1によれば、印刷ジョブ実行後に、印刷ジョブで使用頻度の低かった両端部で合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1を所定の代表値(但し、(m−2・n)個の発光素子225における最大の累積発光時間t1を超えない値)に揃えられる。また、(m−2・n)個の発光素子225に関しては、印刷ジョブ実行後に強制発光させられないため、OLED−PH22の寿命短縮を抑制することができる。
【0061】
また、他の画像形成装置では、各発光素子の光量値は、光量センサの検出値に基づくフィードバック制御されることが多いが、本画像形成装置1の光量補正では、フィードバック制御では無く、前式(1)に基づき光量調整値Vが導出される。また、光量調整値Vは、システム的な制約や管理の困難性から、m個の発光素子225について導出される。このように、本画像形成装置1は、ASIC32等の演算負荷が増大しがちなシステム構成になっている。しかし、本画像形成装置1のように、印刷ジョブ実行中に使用頻度の低かった合計2・n個の発光素子225の累積発光時間t1を揃えることで、次回の印刷ジョブ実行時に、両端部にある合計2・n個の発光素子225について、光量調整値Vの演算は一度で済む。これにより、ASIC32の演算回数、ひいては演算負荷を低減することができる。
【0062】
また、本画像形成装置1によれば、強制発光は印刷プロセスの立ち下げ最中に実施される。換言すると、現像手段210が現像プロセスを実施しない時に強制発光が実施される。これにより、トナーの浪費を抑制することができる。
【0063】
《第六欄:変形例》
上記実施形態の説明では、各駆動IC226は、合計2・n個の発光素子225の強制発光時、静電潜像形成時に使用した光量調整値Vのそれぞれを、対応する発光素子225に印加し、強制発光時間t0の間、発光素子225を強制的に発光させていた(S014)。しかし、これに限らず、各駆動IC226は、合計2・n個の発光素子225の強制発光時、静電潜像形成時に使用した光量調整値Vよりも小さな電圧値を、対応する発光素子225に印加し、強制発光時間t0の間、発光素子225を強制的に発光させても良い。他にも、各駆動IC226は、合計2・n個の発光素子225の強制発光時、光量調整値V等を、対応する発光素子225に間欠的に印加し、強制発光時間t0の間、発光素子225を強制的に発光させても良い。これらにより、合計2・n個の発光素子225の発熱を抑制することができる。
【0064】
《第七欄:付記》
上記実施形態では、発光素子225は、OLEDとして説明したが、これに限らず、レーザダイオードや発光ダイオードでも良い。
また、上記実施形態では、光量調整値Vは、電圧値として説明したが、これに限らず、注入電流値でも良い。
また、上記実施形態では、好ましい構成として、ASIC32は、光量調整値Vを導出するとして説明したが、光量センサの検出値に基づき各発光素子225に光量調整値を導出し、発光光量が目標値になるようの発光光量をフィードバック制御しても良い。
【0065】
また、上記実施形態では、発光素子アレイ223において主走査方向yの各端部に、使用頻度の低いn個の発光素子225が生じる構成例を説明した。換言すると、静電潜像は、前後方向(主走査方向y)に片寄ることなく、感光体ドラム28の周面に形成されていた。しかし、これに限らず、極端な例を挙げると、発光素子アレイ223において主走査方向yの一方の端部に、使用頻度の低いn個の発光素子225が生じるような構成が画像形成装置1に採用されても構わない。換言すると、静電潜像の前端(又は後端)が、感光体ドラム28における画像形成領域の前端(又は後端)に沿うよう静電潜像が形成され、これによって、発光素子アレイ223において主走査方向yの後端側(又は前端側)に、使用頻度の低いn個の発光素子225が生じるような構成である。このような構成例においても、上記実施形態で説明した処理は応用可能である。