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  • 特開2016221877-積層体及びタイヤ 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221877(P2016-221877A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】積層体及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20161205BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20161205BHJP
   B60C 13/04 20060101ALI20161205BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B32B25/08
   B32B27/20 A
   B60C13/04 Z
   B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-111620(P2015-111620)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】西井 雅之
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA21
4F100AH01B
4F100AK21B
4F100AL06B
4F100AN00A
4F100BA02
4F100CA13B
4F100GB31
4F100JK04
4F100JK13
4F100JL06
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】汚染成分に対する優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を備えた積層体を提供する。
【解決手段】ゴム層と、該ゴム層上に形成された着色層とを備える積層体であって、前記着色層は、ポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基を、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%導入した変性ポリビニルアルコール樹脂、顔料及び水を含む水性顔料分散液を用いて形成されることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層と、該ゴム層上に形成された着色層とを備える積層体であって、
前記着色層は、ポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基を、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%導入した変性ポリビニルアルコール樹脂、顔料及び水を含む水性顔料分散液を用いて形成されることを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記水性顔料分散液における顔料の含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記グラフト変性に用いた官能基の導入割合が、主鎖のビニルアルコール単位に対して15〜30mol%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部のグリセリンをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム製品においても、他の成型品と同様、加飾や視認性の向上等を目的として、表面への塗装及び印刷といった着色加工が広く行われている。タイヤにおいても、同様に各種塗料を用いた着色、その他加工が可能であり、例えば、紫外線硬化型インクを用いてタイヤに加飾を施す方法等が知られている。
例えば特許文献1には、デザインの自由度を高めるため、タイヤ表面に色材を含有するインク組成物を直接塗布した加飾タイヤが開示されている。
【0003】
ただし、上述したゴム製品中に、通常含まれるアミン系老化防止剤やワックス(以下、必要に応じて「汚染成分」という。)は、オゾン存在下での亀裂の発生及び進行の抑制に有効であるものの、ゴム成分等のポリマー基質を通って移動しやすく、短期間でゴム物品の表面に移行するため、着色加工部を変色させる等の外観悪化の問題があった。
【0004】
上記着色加工部の変色を抑制するための方法として、ゴム物品の表面上に保護コーティングを形成する技術が知られている。
例えば特許文献1には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びビニルエステルの群より選ばれた少なくとも1種のモノマーに基づくホモポリマー又はコポリマーであり且つガラス転移温度が0℃よりも低いポリマーと、親水性シリカと、アクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー及びビニルモノマーの群より選ばれた少なくとも1種のモノマーに基づくホモポリマー又はコポリマーからなる群より選ばれた成分であって、ホモポリマー又はコポリマーのガラス転移温度が25℃よりも高い水性エマルジョンを含む、水性組成物を保護コーティングとして用いることで、老化防止剤等の移行を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−141967号公報
【特許文献2】特開平8−245852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の水性組成物からなる層をゴム層上に適用した場合、水性組成物からなる層の柔軟性が十分でないという問題や、繰り返しの屈曲によって層の割れや剥がれが生じる(耐屈曲性が劣る)という問題があることから、例えば、タイヤサイドウォールの被覆材としての適用を考えると、さらなる改善が必要であった。
【0007】
以上の課題を鑑み、本発明は、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を備えた積層体及びタイヤを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ゴム層と、該ゴム層上に形成された着色層とを備える積層体について、上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、優れたバリア性を有するポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として特定の炭素数及び構造を有する官能基を導入することによって、得られた変性ポリビニルコール樹脂は、バリア性樹脂とエラストマー成分とをブレンドした場合と同様に優れた柔軟性の効果が得られるとともに、グラフト重合によってポリビニルアルコールと特定の炭素数及び構造を有する官能基との結合が形成されているため、ブレンドした系に比べてミクロドメイン間の界面の強度が高く、耐屈曲性を向上できることを見出した。
【0009】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
本発明の積層体は、ゴム層と、該ゴム層上に形成された着色層とを備える積層体であって、前記着色層は、ポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基を、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%導入した変性ポリビニルアルコール樹脂、顔料及び水を含む水性顔料分散液を用いて形成されることを特徴とする。
上記構成により、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を形成できる。
【0010】
また、本発明の積層体では、前記水性顔料分散液における顔料の含有量が、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましい。加飾や視認性及びバリア性をさらに向上できるためである。
【0011】
さらにまた、本発明の積層体では、前記グラフト変性に用いた官能基の導入割合が、主鎖のビニルアルコール単位に対して15〜30mol%であることが好ましい。より高いレベルで、汚染成分に対するバリア性、柔軟性及び耐屈曲性を実現できるからである。
【0012】
さらに、本発明の積層体では、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部のグリセリンをさらに含むことが好ましい。より優れた柔軟性及び耐屈曲性を実現できるからである。
【0013】
本発明のタイヤは、本発明の積層体を用いたことを特徴とする。上記構成によって、汚染成分に対するバリア性、柔軟性及び耐屈曲性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を備えた積層体及びタイヤの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例において作製したゴム積層体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、その実施形態に基づき説明する。
【0017】
<積層体>
本発明の積層体は、ゴム層と、該ゴム層上に形成された着色層とを備える。
そして、本発明は、前記着色層が、ポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基を、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%導入した変性ポリビニルアルコール樹脂、顔料及び水を含む水性顔料分散液を用いて形成されることを特徴とする。
上記構成により、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を形成できる。
【0018】
(水性顔料分散液)
本発明の積層体を構成する着色層を形成するための水性顔料分散液は、変性ポリビニルコール樹脂、顔料及び水を含む。以下に、本発明の水性顔料分散液の構成成分について説明する。
【0019】
○変性ポリビニルアルコール樹脂
本発明の変性ポリビニルコール樹脂組成物は、ポリビニルアルコールの主鎖に対し、グラフト鎖として、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基を、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%導入した変性ポリビニルアルコール樹脂と、両親媒性化合物とを含むことを特徴とする。
上記構成を備えることで、汚染成分に対する優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性を向上できる。
【0020】
前記変性ポリビニルアルコール樹脂を構成するポリビニルアルコールの主鎖と、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基(以下、必要に応じて、「官能基」又は「本発明の官能基」という。)のグラフト鎖は、それぞれバルク状態で非相溶となるため、得られた変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールと上記官能基を構成する炭素数が3〜20の直鎖、脂環式、分岐又は芳香族化合物とのミクロ相分離構造を形成する。例えば、主鎖である樹脂の体積分率が大きい場合には、樹脂部分が海、官能基を構成する化合物部分が島となった海島構造を形成し、体積分率が逆の場合には、逆の海島構造を形成する。
そして、上述のミクロ相分離構造を形成した場合、両者をブレンドした場合と同様の効果が得られる。すなわち、ポリビニルアルコールによるバリア性の効果が得られるとともに、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族(本発明の官能基部分)の効果によって、接着性や柔軟性の向上が可能となる。
さらに、得られた変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールの主鎖と本発明の官能基からなるグラフト鎖が化学的に結合を形成しているため、ブレンドした系に比べてミクロドメイン間の界面強度が高くなる結果、従来のポリビニルアルコール樹脂とエラストマー材料とのブレンドなどに比べて耐屈曲性を向上することが可能となる。
【0021】
ここで、汚染成分に対する優れたバリア性を維持しつつ、接着性及び耐屈曲性の向上を可能とする観点からは、前記グラフト変性に用いた官能基の導入割合が、主鎖のビニルアルコール単位に対して6〜50mol%である必要があり、6〜30mol%であることが好ましい。前記官能基の導入割合が6mol%未満の場合、前記官能基の量が十分でないため、所望の柔軟性及び耐屈曲性を実現できず、一方、前記官能基の導入割合が50mol%を超えると、前記ポリビニルアルコールの量が十分でないため、所望のバリア性を実現できないためである。
【0022】
ここで、前記ポリビニルアルコールについては、特に限定はなく、ビニルアルコール単位のみからなるホモポリマーであってもよいし、ビニルアルコールとこれに共重合可能なモノマーとからなるコポリマー(以下、「PVAコポリマー」と表記することがある。)であってもよい。これらポリビニルアルコール樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記ポリビニルアルコール樹脂は、その製法によって特に限定されず、例えば、ポリ酢酸ビニルなどのビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるものを用いることができる。ビニルエステル単位を形成するためのビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルなどが挙げられる。これらの中でもPVAを良好な生産性で得ることができる点で酢酸ビニルが好ましい。
【0023】
PVAコポリマーを構成する共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピルなどのメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基などのオキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸などに由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。
これら共重合可能な単量体の単位(以下、「コモノマー単位」と表記することがある。)の含有量は、PVAコポリマーを構成する全単量体単位100モル%の中で、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上がコモノマー単位であることが好ましい。
【0024】
なお、前記ポリビニルアルコールは、完全けん化されたものであってもよいし、部分的にけん化されたもの、すなわち部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。けん化度は、色相、フィッシュアイ低減、該組成物からなる成形品およびフィルムの表面平滑性の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは99モル%以上、特に好ましくは99.5モル%以上である。
【0025】
また、前記ポリビニルアルコールの分子量は、本発明の変性ポリビニルコール樹脂組成物を被膜として用いた場合に、その強度を確保する点や、オゾンガスの侵入を防止する点から、10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好適である。
【0026】
前記変性ポリビニルアルコールに含まれる、炭素数が3〜20の、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である官能基は、グラフト鎖として導入されることで、本発明の変性ポリビニルコール樹脂組成物に、柔軟性、接着性及び耐屈曲性を与えることができる。
また、より優れた柔軟性、接着性及び耐屈曲性を提供できる点からは、前記グラフト変性に用いた官能基の炭素数が、4〜18であることが好ましい。
さらに、前記官能基は、分子量が20〜10000であることが好ましく、50〜220であることがより好ましい。
【0027】
より具体的には、前記官能基は、より高い柔軟性、接着性及び耐屈曲性を実現する点からは、ステアロイル基、カプロイル基、ヘキサイル基、ラウリル基、パルチミル基、イソバレリル基及びシクロヘキサンカルボニル基から選択される官能基であることが好ましい。
【0028】
なお、前記変性ポリビニルアルコール樹脂は、上述した官能基(直鎖、脂環式、分岐又は芳香族を有する官能基)以外の基をさらにグラフトすることも可能である。
例えば、接着性をさらに向上する観点からは、前記ポリビニルアルコールの主鎖に対してアクリル基含有オリゴシラノール基をさらにグラフトし、該アクリル基含有オリゴシラノール基の導入割合が、主鎖のビニルアルコール単位に対して0.5〜10mol%であることが好ましい。
【0029】
本発明の被膜を構成する変性ポリビニルアルコールについて、前記ポリビニルアルコールの主鎖に対し、直鎖、脂環式、分岐又は芳香族である前記官能基をグラフトするための、グラフト反応の方法としては、特に限定はされず、エステル化反応、エポキシ開環反応、酸無水物の反応等、公知の有機化学反応を利用することができる。
【0030】
例えば、前記グラフト反応の方法としては、グラフト化合物にカルボキシル基を有する化合物を選択し、エステル化剤によって主鎖のポリビニルアルコール水酸基とのエステル化反応を行う等の方法が挙げられる。
【0031】
また、前記水性顔料分散液における前記変性ポリビニルアルコール樹脂の含有量は、特に限定はされないが、汚染成分に対するバリア性、柔軟性及び耐屈曲性をより向上させる観点からは、20質量%以上であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。
【0032】
○顔料
前記水性顔料分散液は、上述した変性ポリビニルアルコール樹脂に加えて、顔料を含む。
かかる顔料については特に限定はされない。例えば、樹脂組成物に所望の加飾や視認性を実現することを目的として、着色剤として顔料を用いることができる。着色剤は、色層をゴム層と異なる色にするために配合されたものであり、例えば、ゴム層が黒色である場合は、黒色以外の顔料が着色剤として使用される。
ここで、前記顔料については、有機又は無機の顔料が使用できる。例えば、無機顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。例えば、白色着色剤として、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられ、赤色着色剤として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等が挙げられ、青色着色剤として、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられ、黄色着色剤として、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等が挙げられる。
【0033】
ここで、前記水性顔料分散液における前記顔料の含有量は、所望の加飾性を実現でき、視認性及びバリア性を向上できる点から、前記変性ポリビニルアルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、20〜200質量部であることがより好ましく、20〜100質量部であることが特に好ましい。
【0034】
○水
前記水性顔料分散液は、上述した変性ポリビニルアルコール樹脂及び顔料に加えて、水を含む。
水については、塗料での加工が必要な場合に加えられるものであり、特に限定はされない。
ここで、前記水性顔料分散液における水の含有量は、加工性を低下させない観点からは、50〜99質量%であることが好ましく、60〜90質量%であることがより好ましく、80〜90質量%であることが特に好ましい。
【0035】
○水酸基を有する化合物
本発明の樹脂組成物は、前記変性ポリビニルコール樹脂及び前記シリカに加えて、分子量が10000以下の水酸基を有する化合物を含むことが好ましい。
分子量が10000以下の水酸基を有する化合物を含有させることによって、ポリマー鎖が形成する水素結合ネットワーク中に介在するため、柔軟性を向上でき、本発明の樹脂組成物の伸び率や耐屈曲性のさらなる改善を図ることが可能である。
また、前記水酸基を有する化合物の分子量を10000以下としたのは、分子量がそれ以上の場合には、融点が向上し過ぎるため、結果混合物の柔軟性が低下するおそれがある。
【0036】
ここで、前記水酸基を有する化合物の種類については、分子量が10000以下であれば特に限定はされず、例えば、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサンジオール等を、用途に応じて用いることができる。
その中でも、より優れた柔軟性や耐屈曲性を得られることから、グリセリンを用いることが好ましい。
【0037】
また、前記グリセリン等の水酸基を有する化合物の含有量については、前記変性ポリビニルコール樹脂100質量部に対して、1〜200質量部であることが好ましく、5〜100質量部であることがより好ましい。前記水酸基を有する化合物の含有量が200質量部を超える場合、膜として用いた場合の強度や自立性が低下するおそれがあるからである。
【0038】
○その他成分
本発明の変性ポリビニルアルコール樹脂組成物は、上述した成分以外にも、要求に応じて任意の成分を含むことが可能である。
例えば、充填材成分として、シリカを含むことができる。シリカを含有させることによって、樹脂組成物の補強性が向上すると共に、シリカが透過する汚染成分の障害物として作用するため、バリア性をさらに向上できる。
【0039】
ここで、前記シリカの種類については、特に限定はされない。一般グレードのシリカから、表面処理を施した特殊シリカまで、用途に応じて使用できる。
さらに、前記シリカの形状についても特に限定はされないが、アスペクト比が大きく、針状や繊維状、平板状の形状を有することが好ましい。透過する汚染成分の障害物としての効果が大きく、より優れたバリア性を実現できるためである。
なお、前記シリカの含有量については、前記変性ポリビニルコール樹脂100質量部に対して、5〜70質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。前記シリカの含有量が5質量部未満の場合、前記シリカの量が少なすぎるため、補強性効果や汚染成分に対するバリア性の向上効果を十分に発揮できないおそれがあり、前記シリカの含有量が70質量部を超える場合、シリカの量が多くなりすぎるため、加工性が低下するおそれがあるからである。
【0040】
(着色層)
本発明の積層体を構成する着色層を形成する方法については、上述した水性顔料分散液を用いて形成すること以外は特に限定されない。
上述の水性顔料分散液を用いて形成された着色層は、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性が向上している。
【0041】
前記着色層の形成方法については、特に限定はされない。例えば、加硫済みのゴム層表面上に、上述した水性顔料分散液を、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、タンポ印刷等の方法で塗布し、形成することができる。また、予め前記樹脂組成物を塗布し、硬化させて得たフィルムをゴムの加硫時に挿入するインモールド成型により、前記被覆層をゴム部分の外表面に設けてもよい。
【0042】
(ゴム層)
本発明の積層体を構成するゴム層については、特に限定はされず、公知のゴムを適宜使用することができる。例えば、ゴム層を構成するゴム組成物については、前記着色層との密着性を確保する観点から、主鎖に不飽和炭素結合を有するゴム成分を含んだゴム組成物を用いることが好ましい。
【0043】
また、前記不飽炭素結合を有するゴム成分としては、例えば、天然ゴムや合成ゴムが挙げられる。さらに、合成ゴムについては、合成ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム等のジエン系ゴム、その他にはブチルゴム等が挙げられる。これらゴム成分は、1種単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
また、前記ゴム層を構成するゴム組成物において、前記ゴム成分の15質量%以上が非ジエン系ゴムであることが好ましい。前記ゴム成分の15質量%以上が非ジエン系ゴムである場合には、ゴム層の耐候性が大幅に向上するためである。
【0045】
なお、前記ゴム層を構成するゴム組成物中の任意成分としての老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1.5質量部以下であることが好ましく、1.0質量部未満であることがより好ましい。前記老化防止剤の含有量がゴム成分100質量部に対して1.5質量部を超えると、老化防止剤の表面側への移行が多くなり、前記被膜の形成に好適に用いられる紫外線硬化型塗料の紫外線による硬化が阻害され、前記被膜とゴム層との密着性が低下するおそれがある。一方、前記老化防止剤の含有量がゴム成分100質量部に対して1.0質量部未満の場合には、紫外線硬化型塗料の紫外線による硬化が特に良好となり、被覆層とゴム層との密着性をさらに向上できる。
【0046】
なお、前記ゴム層に含まれる老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(6PPD)、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体(TMDQ)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(AW)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N′−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(メチルヘプチル)−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0047】
また、前記ゴム層を構成するゴム組成物は、上述したゴム成分、老化防止剤の他、必要に応じて、カーボンブラック等の充填剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、プロセスオイル、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等のゴム工業で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
また、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を混練りし、熱入れ、押出等を行うことによって製造できる。
【0048】
<タイヤ>
本発明によるタイヤは、上述した本発明の積層体を用いたことを特徴とする。
それによって、本発明のタイヤは、形成された樹脂フィルムが、汚染成分に対する高いバリア性を有しつつ、優れた柔軟性及び耐屈曲性についても実現できる。
前記ゴム積層体の適用部位としては、例えば、一対のビード部と、一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部と、該ビード部に各々埋設されたビードコア間にトロイド状に延在させたカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置したベルトとを備える空気入りタイヤの、サイドウォール部に適用することができる。
【0049】
また、本発明のタイヤでは、サイドウォール部に本発明のゴム積層体を適用することができる他にも、例えば、タイヤのインナーライナーとして、前記ゴム積層体を適用することも可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
(製造例)
変性ポリビニルアルコールBの製造
VA粒子(クラレ製 ポバール PVA117)1gを、DMSO(ジメチルスルホキシド)30mLに加熱溶解させた後、カプロン酸を0.3g加え、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.01gを加えて、80℃で6時間攪拌した。反応溶液を500mLのメタノールで再沈殿及びろ過を2回繰り返し行い、固形物を回収し、乾燥させることで、ポリビニルアルコールBのサンプルを得た。
なお、変性ポリビニルアルコールBの主鎖のビニルアルコール単位に対する官能基導入率(mol%)は5mol%であった。
【0052】
<サンプル1〜10>
表1に示した配合組成に従って、水性顔料分散液の各のサンプルを作製した。
【表1】
【0053】
*1・・・ポリビニルアルコールAについては、クラレ製 「ポバール PVA117」を用いた。ポリビニルアルコールBについては、上述の製造例で製造したものを用いた。紫外線硬化樹脂については、スリーボンド製 「TB3017D」を用いた。
*2・・・グリセリンについては、関東化学製の「グリセリン」を用いた。
*3・・・顔料については、以下のものを用いた。
酸化チタン:御国色素製 「101コンク」
ピグメントブルー15−3:東京化成工業製 「ピグメントブルー15」
ピグメントレッド254:東京化成工業製 「ピグメントレッド254」
【0054】
<評価>
【0055】
(1)変色防止効果(タイヤサイドウォールに使用した場合の色度の変化)
図1に示すように、老化防止剤を2質量%含有したサイドウォール用ゴムを、厚さが2.0mmとなるように加工し、該加工したゴムの上に、各樹脂組成物のサンプルを膜厚1.0mmのフィルム状に積層し、該フィルムの上に、膜厚0.1mmの白色層(酸化チタン含有樹脂インク)を積層することで、積層体のサンプルを作製した。
作製した積層体のサンプルについて、温度60℃の環境下でサンプルを放置し、1日ごとに室温に戻して3J/cmの紫外光を照射した後に、白色層の色度を測定した。サンプル放置後20日経過した際の色度を測定し、放置開始時からの色度の変化(ΔE)を算出した。得られた色度の変化を表2に示す。なお、色度の変化の数値は小さいほど良好な結果である。
【0056】
(2)破断伸び(柔軟性)
樹脂組成物の各サンプルについて、0.5mm厚の試験片を作製し、JIS 7161に基づいて破断伸び(Eb)を測定した。具体的には、試験片を50mm/minの速度で引っ張った際の破断伸び(%)を測定した。測定結果を表2に示す。なお、破断伸びの数値はサンプルの初期長さに対する伸張長さの割合であり、サンプル9(比較例)の破断伸びを100としたときの指数値で示し、大きいほど良好な結果である。
【0057】
(3)耐屈曲性(屈曲回数)
各実施例及び比較例のサンプル(厚さ0.5mm)を、21cm×30cmにカットしたフィルムを50枚作製し、各カットフィルムを0℃で7日間調湿した後、ASTMF392−74に準拠して、理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを使用し、屈曲回数50回、75回、100回、125回、150回、175回、200回、225回、250回、300回、400回、500回、600回、700回、800回、1000回、1500回屈曲させた後、ピンホールの数を測定した。それぞれの屈曲回数において、測定を5回行い、その平均値をピンホール個数とした。屈曲回数(P)を横軸に、ピンホール数(N)を縦軸にとり、上記測定結果をプロットし、ピンホール数が1個のときの屈曲回数(Np1)を外挿により求め、有効数字2桁とした。ただし、1500回の屈曲でピンホールが観察されないフィルムについては、以降500回おきに屈曲回数を増やし、ピンホールが見られた屈曲回数をNp1とした。
評価については、サンプル9(比較例)の屈曲回数を100としたときの指数値で示し、数値が大きいほど屈曲回数が多く、耐屈曲性が高いことを示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2から、次のことがわかった。
(1)変性ポリビニルアルコール樹脂を用いた実施例のサンプル1〜7から形成した着色層は、UV硬化性樹脂を用いた比較例のサンプル8から形成した着色層に比べて変色が抑えられていることがわかった。その結果、実施例のサンプル1〜7から形成した着色層は、汚染成分に対する良好なバリア性が実現できていることがわかった。
(2)実施例の各サンプルから形成した着色層は、タイヤのサイド保護膜として十分な伸縮性を有することを確認した。一方、可塑剤として作用するグリセリンを含まない比較例のサンプル9や、変性ポリビニルアルコールを用いていない比較例のサンプル10では、材料が脆性的でほとんど伸びず、Ebが低下することがわかった。
(3)実施例の各サンプルから形成した着色層は、タイヤのサイド保護膜として十分な耐屈曲性を有していることがわかった。可塑剤を含まない比較例のサンプル9、変性ポリビニルアルコールを用いていない比較例のサンプル10では、材料が硬いため低屈曲性が特に低下していた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、汚染成分に対して優れたバリア性を有しつつ、柔軟性及び耐屈曲性の向上した着色層を備えた積層体及びタイヤの提供が可能となる。
図1