特開2016-221885(P2016-221885A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-221885繊維強化樹脂構造体及び繊維強化樹脂構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221885(P2016-221885A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂構造体及び繊維強化樹脂構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20161205BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20161205BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20161205BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   B29C43/18
   B32B5/28 A
   B29K101:12
   B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-111735(P2015-111735)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 慧
(72)【発明者】
【氏名】岩沼 忠士
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
【Fターム(参考)】
4F100AD11A
4F100AD11B
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK23A
4F100AK23B
4F100AK41A
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4F100AK45B
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4F100AK46B
4F100AK47A
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4F100AK49B
4F100AK56A
4F100AK56B
4F100AK57A
4F100AK57B
4F100AK74A
4F100AK74B
4F100BA02
4F100BA22
4F100DC13B
4F100DD04
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DH02A
4F100DH02B
4F100EJ20
4F100EJ42
4F100GB32
4F204AA04
4F204AA11
4F204AA13
4F204AA15
4F204AA28
4F204AA29
4F204AD16
4F204AG03
4F204AG28
4F204AR12
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FG09
4F204FN04
4F204FN11
4F204FN15
(57)【要約】
【課題】凸状部の形成に起因する反りが少なく、凸状部の剛性や強度が向上された、繊維強化樹脂構造体、及び繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂構造体は、複数枚積層された繊維強化樹脂シートを冷間プレス加工して成形された繊維強化樹脂構造体であって、強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートを含む内部層と、内部層の強化繊維の配向方向に交差する方向に沿って配向した強化繊維を含む表層と、内部層の強化繊維の配向方向に沿って表層に設けられたスリットから内部層が外部に膨出して形成された凸状部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚積層された繊維強化樹脂シートを冷間プレス加工して成形された繊維強化樹脂構造体であって、
強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートを含む内部層と、
前記内部層の前記強化繊維の配向方向に交差する方向に沿って配向した強化繊維を含む表層と、
前記内部層の前記強化繊維の配向方向に沿って前記表層に設けられたスリットから前記内部層が外部に膨出して形成された凸状部と、
を備える、繊維強化樹脂構造体。
【請求項2】
前記表層の一部が、前記凸状部に沿って立ち上げられている、請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体。
【請求項3】
前記表層の前記繊維強化樹脂シートは前記一方向繊維強化樹脂シートからなり、当該表層の前記一方向繊維強化樹脂シートの前記強化繊維の配向方向が、前記内部層の前記強化繊維の配向方向と交差する、請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂構造体。
【請求項4】
前記表層の前記繊維強化樹脂シートは前記強化繊維が少なくとも2つの方向に沿って配向した前記繊維強化樹脂シートであり、前記少なくとも2つの方向が、前記内部層の前記強化繊維の配向方向と交差する、請求項1又は2に記載の繊維強化樹脂構造体。
【請求項5】
前記凸状部の高さが0.1〜5.0mmの範囲内の値である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂構造体。
【請求項6】
強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、
前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、
加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、
前記繊維強化樹脂積層体の内部層の前記繊維強化樹脂シートは、前記強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートを含み、
前記内部層の前記一方向繊維強化樹脂シート中の前記強化繊維の配向方向に沿う一方、表層の前記繊維強化樹脂シート中の前記強化繊維に交差する方向に沿ってスリットを設けて前記プレス加工することにより、前記内部層の前記一方向繊維強化樹脂シートの前記強化繊維及び前記マトリックス樹脂を、前記スリットを介して前記表層から膨出させて、前記繊維強化樹脂構造体の表面に凸状部を形成する、繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項7】
前記冷間プレス装置の金型のプレス面における、前記スリットに対向する位置に凹部が設けられ、
前記スリットから膨出させる前記一方向繊維強化樹脂シートの前記強化繊維及び前記マトリックス樹脂を前記凹部に進入させて前記凸状部を成形する、請求項6に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項8】
前記スリットの幅が5.0mm以下の値である、請求項6又は7に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項9】
あらかじめ前記スリットを設けた前記繊維強化樹脂シートを表層に配置して前記繊維強化樹脂積層体を形成する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項10】
前記繊維強化樹脂積層体を形成した後、前記表層側から前記スリットを形成し、前記繊維強化樹脂積層体を前記冷間プレス装置に設置する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを用いて繊維強化樹脂構造体を成形する繊維強化樹脂構造体及び繊維強化樹脂構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の構造部品は、従来、鋼材等の金属材料により構成されていた。近年、車体の軽量化のために、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の繊維強化樹脂からなる構成部品が使用されつつある。かかる繊維強化樹脂からなる構成部品は、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層し、当該積層体を、金型を用いてプレス加工することにより成形される。繊維強化樹脂からなる構成部品では、その剛性を向上させるために、リブ等の凸状部が形成される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維強化樹脂からなるリブ付パネルにおいて、リブが取り付けられた表面と反対側のパネル表面に生じ得るヒケが効果的に解消され得るリブ付構造の繊維強化樹脂材の製造方法が開示されている。特許文献1に開示された繊維強化樹脂材は、パネル及びリブはともに熱可塑性樹脂の内部に繊維材が混合された素材からなり、リブを形成する素材の重量平均繊維長の割合はパネルを形成する素材の重量平均繊維長の割合に比して低くなっている。
【0004】
また、特許文献2には、プレス成形におけるプレス圧を適切に抑えつつ、リブ等の立設部分を備えた所望の3次元形状を有する成形体を成形できる繊維強化熱可塑性樹脂成形体の製造方法が開示されている。特許文献2に開示された繊維強化熱可塑性樹脂成形体は、強化樹脂がランダムに配向された第1の強化繊維層を有する第1の繊維強化熱可塑性樹脂層と、その少なくとも片面に積層され第2の強化繊維層を有する第2の繊維強化熱可塑性樹脂層とから構成される。そして、繊維強化熱可塑性樹脂成形体は、立設部分において第2の繊維強化熱可塑性樹脂層が破断されているとともに第1の強化繊維層が面形状形成部分と立設部分の内部との間で連続して延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−148443号公報
【特許文献2】特開2014−172241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の繊維強化樹脂材は、表層の繊維強化樹脂層によりリブが形成されるため、当該リブは、同一方向に配列された繊維のみを含んで形成される。そのため、リブは、ある一方向に沿って剛性や強度が高くなるものの、それ以外の方向については、剛性や強度が低くなるおそれがある。
【0007】
また、特許文献2に記載の繊維強化熱可塑性樹脂成形体では、表層として位置する第2の繊維強化熱可塑性樹脂層の破断部分を介して、内層として位置する第1の繊維強化熱可塑性樹脂層の第1の強化繊維層が面形状形成部分と立設部分との間で連続して延在するようにリブが形成される。したがって、第1の強化繊維層が一方向に配向された連続繊維からなる場合、当該連続繊維を膨出させにくく、局所的なリブを形成することが困難である。また、連続繊維を膨出させてリブを形成した場合、連続繊維が引っ張られて、成形品に反りが生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、凸状部の形成に起因する反りが少なく、凸状部の剛性や強度が向上された、繊維強化樹脂構造体、及び繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数枚積層された繊維強化樹脂シートを冷間プレス加工して成形された繊維強化樹脂構造体であって、強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートを含む内部層と、内部層の強化繊維の配向方向に交差する方向に沿って配向した強化繊維を含む表層と、内部層の強化繊維の配向方向に沿って表層に設けられたスリットから内部層が外部に膨出して形成された凸状部と、を備える、繊維強化樹脂構造体が提供される。
【0010】
表層の一部が、凸状部に沿って立ち上げられてもよい。
【0011】
表層の繊維強化樹脂シートは一方向繊維強化樹脂シートからなり、当該表層の一方向繊維強化樹脂シートの強化繊維の配向方向が、内部層の強化繊維の配向方向と交差してもよい。
【0012】
表層の繊維強化樹脂シートは強化繊維が少なくとも2つの方向に沿って配向した繊維強化樹脂シートであり、少なくとも2つの方向が、内部層の強化繊維の配向方向と交差してもよい。
【0013】
凸状部の高さが0.1〜5.0mmの範囲内の値であってもよい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、加熱した繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、繊維強化樹脂積層体の内部層の繊維強化樹脂シートは、強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートを含み、内部層の一方向繊維強化樹脂シート中の強化繊維の配向方向に沿う一方、表層の繊維強化樹脂シート中の強化繊維に交差する方向に沿ってスリットを設けてプレス加工することにより、内部層の一方向繊維強化樹脂シートの強化繊維及びマトリックス樹脂を、スリットを介して表層から膨出させて、繊維強化樹脂構造体の表面に凸状部を形成する、繊維強化樹脂構造体の製造方法が提供される。
【0015】
冷間プレス装置の金型のプレス面における、スリットに対向する位置に凹部が設けられ、スリットから膨出させる一方向繊維強化樹脂シートの強化繊維及びマトリックス樹脂を凹部に進入させて凸状部を成形してもよい。
【0016】
スリットの幅が5.0mm以下の値であってもよい。
【0017】
あらかじめスリットを設けた繊維強化樹脂シートを表層に配置して繊維強化樹脂積層体を形成してもよい。
【0018】
繊維強化樹脂積層体を形成した後、表層側からスリットを形成し、繊維強化樹脂積層体を冷間プレス装置に設置してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、繊維強化樹脂構造体において、凸状部の形成に起因する反りが少なく、凸状部の剛性や強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】繊維強化樹脂構造体の一例を示す斜視図である。
図2】繊維強化樹脂構造体の凸状部を示す断面図である。
図3】繊維強化樹脂構造体の製造方法を示す説明図である。
図4】冷間プレス工程の開始時の様子を示す説明図である。
図5】冷間プレス工程のプレス中の様子を示す説明図である。
図6】冷間プレス工程の終了時の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0022】
<1.繊維強化樹脂構造体>
図1は、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の一例を示す斜視図である。繊維強化樹脂構造体20は、繊維強化樹脂を用いて成形され、鋼板からなる構造体と比較して軽量でありつつ、高い強度を有している。繊維強化樹脂構造体20の用途は特に限定されないが、繊維強化樹脂構造体20は、例えば、自動車車体用の構造部品として使用される。なお、繊維強化樹脂構造体20は、構成面が折れ曲がった屈曲部Rを有していればよく、図1に例示した形状に限られない。
【0023】
(1−1.繊維強化樹脂シート)
繊維強化樹脂構造体20の成形素材となる繊維強化樹脂シートは、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成される。使用される強化繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等であってもよく、さらにはこれらの強化繊維を組み合わせて使用してもよい。中でも、炭素繊維は、機械特性が高く、強度設計を行いやすいことから、強化繊維が炭素繊維を含むことが好ましい。
【0024】
強化繊維としては、繊維強化樹脂シートの一端から他端まで連続する連続繊維が用いられる。また、繊維強化樹脂シートとしては、強化繊維が一方向に沿って配向した一方向繊維強化樹脂シートや、強化繊維が複数方向に沿って配向した繊維強化樹脂シートが用いられる。ただし、繊維強化樹脂構造体20の内部層を構成する繊維強化樹脂シートは、少なくとも一つの一方向繊維強化樹脂シートを含む。一方、繊維強化樹脂構造体20の表層を構成する繊維強化樹脂シートは、一方向繊維強化樹脂シートであってもよいし、強化繊維が複数方向に沿って配向した繊維強化樹脂シートであってもよい。
【0025】
また、繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂には熱可塑性樹脂が用いられる。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示される。これらの熱可塑性樹脂うちの1種類、あるいは2種類以上の混合物を使用することができる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、混合物でも、また共重合体であってもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。さらに、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
【0026】
この場合、使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミド等の樹脂が挙げられる。中でも可塑性マトリックス樹脂がポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン及びフェノキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
なお、積層される複数の繊維強化樹脂シートは、それぞれ強化繊維の種類や含有率等が異なっていてもよい。また、積層される複数の繊維強化樹脂シートにおいて、マトリックス樹脂が相溶性を有する異なる材料同士であってもよく、あるいは、同一のマトリックス樹脂に対して異なる添加物等が混合されていてもよい。この場合においても、繊維強化樹脂シートの溶融及び硬化を効率的に行えるように、マトリックス樹脂の融点が近似することが好ましい。
【0028】
繊維強化樹脂シートは、例えば、一般的なフィルム含浸法や溶融含浸法等のプロセスにより、強化繊維を連続的に送り出しながらマトリックス樹脂を当該強化繊維に含浸させる方法により製造される。この繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断することにより、成形素材としての繊維強化樹脂シートが得られる。所望のサイズに切断した複数の繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を接着剤等により互いに接合して、所望の幅及び長さの繊維強化樹脂シートを形成してもよい。繊維強化樹脂シートの厚さは、例えば、0.03〜0.50mmの範囲内の値とすることができる。
【0029】
(1−2.凸状部)
本実施形態において、繊維強化樹脂シートを用いて成形される繊維強化樹脂構造体20は、図1に示すように、凸状部22を有している。かかる凸状部22は、例えば、繊維強化樹脂構造体20の剛性を高めるためのリブとして形成される。ただし、繊維強化樹脂構造体20に凸状部22を形成する目的は、これに限られない。例えば、凸状部22が、自動車構造部材における反り防止のためのものであってもよい。
【0030】
図2は、繊維強化樹脂構造体20のうち凸状部22が形成された部分の断面を示す断面図である。かかる図2は、凸状部22の延在方向に対して直交する方向の断面を示している。繊維強化樹脂構造体20は、第1の表層24a及び第2の表層24bと、内部層26とを備える。
【0031】
本実施形態では、第1の表層24a及び第2の表層24bは、それぞれ1枚の一方向繊維強化樹脂シートが溶融及び硬化して形成されたものである。かかる第1の表層24a及び第2の表層24bに含まれる連続繊維F1a,F1bは、凸状部22の延在方向に対して交差する方向に沿って配向している。また、内部層26は、3枚の一方向繊維強化樹脂シートが溶融及び硬化して形成されたものである。かかる内部層26に含まれる連続繊維F2は、凸状部22の延在方向に沿って配向している。
【0032】
凸状部22は、第1の表層24a側の表面に形成されている。凸状部22は、第1の表層24aに設けられたスリットSLから、内部層26が外部に膨出して形成されている。また、凸状部22の根元部分では、第1の表層24aの一部が凸状部22に沿って立ち上げられている。すなわち、凸状部22の根元部分の表面が第1の表層24aにより構成され、凸状部22のそれ以外の多くの部分が内部層26により構成される。
【0033】
したがって、凸状部22には、主として凸状部22の延在方向に沿って配向した連続繊維F2が含まれる。この連続繊維F2の配向方向は、第1の表層24aに設けられるスリットSLの方向に沿っており、繊維強化樹脂構造体20の成形時において、内部層26がスリットSLを介して外部に膨出しやすくなっている。また、膨出する連続繊維F2が、凸状部22の延在方向に沿って配向していることにより、内部層26が膨出した場合であっても凸状部22の延在方向に対して交差する方向に張力が生じにくくなっており、繊維強化樹脂構造体20の反りが抑制されている。
【0034】
また、凸状部22の根元部分の表面には、凸状部22の延在方向に対して交差する方向に沿って配向した連続繊維F1a,F1bが凸状部22の立上り方向に沿って積層される。繊維強化樹脂材料では、繊維の配向方向における剛性や強度が高いことから、凸状部22の根元部分の連続繊維F1a,F1bが凸状部22を補強する状態になり、凸状部22が倒れにくくなっている。
【0035】
かかる凸状部22の高さは、例えば、0.1〜8.0mmの範囲内の値とすることができる。凸状部22の高さが高すぎると、冷間プレス加工によって凸状部22を形成することが困難になる場合がある。また、凸状部22の高さが低すぎると、凸状部22に要求される所望の効果を得ることができない場合がある。したがって、凸状部22の高さが、0.5〜5.0mmの範囲内の値であることがより好ましく、1.0〜3.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0036】
第1の表層24a及び第2の表層24bは、凸状部22の延在方向に直交する方向に配向した連続繊維F1a,F1bを含んでいるが、連続繊維F1,F1bのうちの少なくとも一方の配向方向が凸状部22の延在方向に直交していなくてもよく、少なくとも交差していればよい。また、内部層26の全部が、同一方向に配向した連続繊維F2を含んでいなくてもよい。例えば、内部層26のうち、第1の表層24aに近い層領域に、凸状部22の延在方向に沿って配向した連続繊維F2が含まれ、それ以外の層領域に、異なる方向に配向した連続繊維が含まれていてもよい。
【0037】
以上のように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20は、内部層26の連続繊維F2を、その配向方向に沿って形成されたスリットSLを介して膨出させることにより形成された凸状部22を有することから、反りが抑制されている。また、凸状部22の根元部分の表面が、棒出した連続繊維の配向方向とは異なる方向に配向した第1の表層24aの連続繊維F1aによって補強され、倒れにくくなっている。したがって、凸状部22の剛性や強度が向上している。
【0038】
<2.繊維強化樹脂構造体の製造方法>
本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法について具体的に説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層した繊維強化樹脂積層体を冷間プレス加工することによって繊維強化樹脂構造体を成形する繊維強化樹脂構造体の製造方法である。本実施形態においては、繊維強化樹脂積層体の内部層の繊維強化樹脂シートが一方向繊維強化樹脂シートを含み、内部層の一方向繊維強化樹脂シート中の強化繊維の配向方向に沿う一方、表層の繊維強化樹脂シート中の強化繊維に交差する方向に沿ってスリットを設けてプレス加工が行われる。これにより、内部層の一方向繊維強化樹脂シートの強化繊維及びマトリックス樹脂を、スリットを介して表層から膨出させて、繊維強化樹脂構造体の表面に凸状部が形成される。
【0039】
図3は、成形素材としての繊維強化樹脂シート10a,10b,10c,10d,10eから繊維強化樹脂構造体20が得られるまでの工程を模式的に示した説明図である。かかる製造方法は、積層工程と、加熱工程と、冷間プレス工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0040】
(2−1.積層工程)
積層工程は、複数枚の繊維強化樹脂シート10を積層して繊維強化樹脂積層体12を形成する工程である。本実施形態では、それぞれ連続繊維が一方向に配向した5枚の一方向繊維強化樹脂シート10a,10b,10c,10d,10eが用いられる。このとき、繊維強化樹脂積層体12の最上層及び最下層に位置する一方向繊維強化樹脂シート10a,10eの連続繊維の配向方向D1と、内部に位置する一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの連続繊維の配向方向D2とが交差するように積層する。本実施形態では、一方向繊維強化樹脂シート10a,10eの連続繊維の配向方向D1と、一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの連続繊維の配向方向D2とが直交する。
【0041】
また、本実施形態では、最上層に位置する一方向繊維強化樹脂シート10aにあらかじめスリットSLが設けられている。かかるスリットSLは、内部に位置する一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの連続繊維の配向方向に沿う一方、スリットSLが設けられる一方向繊維強化樹脂シート10aの連続繊維の配向方向に交差して配置されている。かかるスリットSLは、内部の一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの連続繊維の配向方向に沿って形成されていればよく、表層の一方向繊維強化樹脂シート10aの連続繊維の配向方向に直交していなくてもよい。
【0042】
スリットSLの幅は、例えば、5.0mm以下の値とすることができる。ただし、スリットSLの幅が大きすぎると、内部の連続繊維及びマトリックス樹脂を膨出させる際に、スリットSLの周囲の連続繊維を引きずり込むことができない場合がある。したがって、スリットSLの幅が、4.0mm以下の値であることがより好ましく、3.0mm以下の値であることがさらに好ましい。
【0043】
また、図3においては、カッター刃5を用いて一方向繊維強化樹脂シート10aにスリットSLを形成しているが、二枚の一方向繊維強化樹脂シートを所定の隙間を空けて並べて配置することによってスリットSLを形成してもよい。また、スリットSLは、繊維強化樹脂積層体12の形成前に設けられなくてもよく、繊維強化樹脂積層体12を形成した後に、カッター刃等によりスリットSLを設けてもよい。
【0044】
上述のとおり、成形素材としての繊維強化樹脂シート10は、繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断したものであってもよく、所望のサイズに切断した繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を互いに接合して所望の幅にしたものであってもよい。積層する繊維強化樹脂シート10の枚数や平面視の大きさは、製造する繊維強化樹脂構造体20の厚さや大きさに応じて、適宜選択し得る。
【0045】
(2−2.加熱工程)
加熱工程は、繊維強化樹脂積層体12を加熱する工程である。加熱工程では、例えば、繊維強化樹脂積層体12が加熱装置40に投入される。当該繊維強化樹脂積層体12は、上面側及び下面側から、電熱線や遠赤外線ヒータ等の加熱手段41,43によって加熱される。加熱装置40の温度は、マトリックス樹脂の融点以上に設定される。加熱工程では、マトリックス樹脂が分解しないように、繊維強化樹脂積層体12が溶融状態にされる。用いられる加熱装置は、特に限定されない。
【0046】
(2−3.冷間プレス工程)
冷間プレス工程は、溶融状態の繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工し、凸状部22を有する所望の形状の繊維強化樹脂構造体20を成形する工程である。冷間プレス工程では、冷間プレス装置50の第1の金型51及び第2の金型53の温度がマトリックス樹脂の融点未満にされる。かかる冷間プレス工程において、第2の金型53上に溶融状態の繊維強化樹脂積層体12が設置された後に、対向する第1の金型51及び第2の金型53が互いに近接させられて繊維強化樹脂積層体12がプレス加工される。これにより、繊維強化樹脂積層体12が硬化して、所望の形状の繊維強化樹脂構造体20が得られる。
【0047】
ここで、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、冷間プレス加工時に、繊維強化樹脂積層体12の表層の一方向繊維強化樹脂シート10aに設けたスリットSLを介して、内部の一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの一部を膨出させる。これにより、繊維強化樹脂構造体20に凸状部22が形成される。
【0048】
図4図6は、冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。図4は、プレス開始時の様子を示し、図5は、プレス中の様子を示し、図6は、プレス終了時の様子を示す。図4図5の上段、及び図6の上段は、それぞれ第1の金型51、第2の金型53及び繊維強化樹脂積層体12の断面図を示す。図5の下段及び図6の下段は、それぞれ図5の上段の図及び図6の上段の図の部分拡大図である。
【0049】
図4に示すように、第1の金型51のプレス面には、冷間プレス装置50に繊維強化樹脂積層体12が設置された状態において、一方向繊維強化樹脂シート10aに設けられたスリットSLに対向する位置に、凹部51aが設けられている。この凹部51aは、スリットSLを介して膨出してくる一方向繊維強化樹脂シート10b,10c,10dの連続繊維及びマトリックス樹脂を受容して、凸状部22を成形するためのものである。凹部51aの形状は、形成する凸状部22の形状に応じて設計される。
【0050】
第1の金型51と第2の金型53とを互いに近接させて繊維強化樹脂積層体12をプレスすると、図5に示すように、一方向繊維強化樹脂シート10aに設けられたスリットSLを介して、一方向繊維強化樹脂シート10bの一部が凹部51a内に膨出する。繊維強化樹脂積層体12は、融点未満の温度にされた第1の金型51及び第2の金型53に接触した部分から速やかに硬化し始めるが、スリットSLの周囲は凹部51aに対向しており、硬化し始めるタイミングが遅れる。そのため、内部の一方向繊維強化樹脂シート10bの一部がスリットSLを介して膨出可能であるとともに、一方向繊維強化樹脂シート10bの膨出に伴って、スリットSLの周囲の一方向繊維強化樹脂シート10aの連続繊維が引きずられて立ち上げられる。
【0051】
このとき、一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維がスリットSLの延在方向に沿って配向していることから、一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維及びマトリックス樹脂がスリットSLを介して流出しやすくなっている。また、連続繊維が流出する際に、内部で連続繊維が引っ張られることがない。一方で、内部の一方向繊維強化樹脂シート10bの膨出に伴って引きずられる表層の連続繊維は、凸状部22の立ち上げ方向に沿って積層される。そのため、凸状部22の根元部分には、凸状部22の延在方向とは異なる方向の繊維が積層される。
【0052】
さらに繊維強化樹脂積層体12のプレスが継続されると、図6に示すように、凹部51a内が一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維及びマトリックス樹脂で充填される。そして、繊維強化樹脂積層体12の内部も次第に冷却されて、繊維強化樹脂構造体20が成形される。
【0053】
繊維強化樹脂構造体20は、繊維の配向方向に沿って剛性や強度等の物性が高くなる性質を有するため、凸状部22の根元部分が一方向繊維強化樹脂シート10aの連続繊維によって補強された状態になる。したがって、凸状部22は、強度が高められて、倒れにくくなる。また、内部の一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維が流出する際に、内部で連続繊維が引っ張られることがないために、繊維強化樹脂構造体20の反りが抑制される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によれば、冷間プレス加工により繊維強化樹脂構造体20を製造するにあたり、内部の一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維及びマトリックス樹脂をスリットSLを介して膨出させて凸状部22が形成される。膨出する連続繊維は、スリットSLの方向に沿って配向していることから、繊維強化樹脂構造体20において、連続繊維が引っ張られることによる反りの発生が抑制される。
【0055】
また、内部の一方向繊維強化樹脂シート10bの連続繊維及びマトリックス樹脂がスリットSLから膨出する際に、スリットSLの周囲の連続繊維が引きずられて、凸状部22の根元部分に積層される。かかる連続繊維は、内部から膨出した連続繊維の配向方向と異なる方向に配向しているため、凸状部22が補強された状態になる。したがって、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によれば、凸状部22の剛性や強度等の物性を向上させることができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0057】
10 繊維強化樹脂シート
10a,10b,10c,10d,10e 一方向繊維強化樹脂シート
12 繊維強化樹脂積層体
16 スリット
18 層厚増加材料
20 繊維強化樹脂構造体
22 凸状部
24a 第1の表層
24b 第2の表層
26 内部層
40 加熱装置
50 冷間プレス装置
51 第1の金型
51a 凹部
53 第2の金型
SL スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6