特開2016-221886(P2016-221886A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221886(P2016-221886A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20161205BHJP
   B29C 43/52 20060101ALI20161205BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20161205BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20161205BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   B29C43/58
   B29C43/52
   B29C43/36
   B29K105:08
   B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-111736(P2015-111736)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】大野 翼
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 慧
(72)【発明者】
【氏名】岩沼 忠士
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AC03
4F202AD16
4F202AD20
4F202AG03
4F202AH17
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA09
4F202CB01
4F202CB22
4F202CK12
4F204AA11
4F204AA24
4F204AA29
4F204AA32
4F204AA34
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG03
4F204AH17
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB22
4F204FE06
4F204FG02
4F204FG09
4F204FH06
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
(57)【要約】
【課題】繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域へのボイドの残留を抑制し、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制可能な、繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】繊維強化樹脂構造体の製造方法は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、製造する繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、
前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、
加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、
製造する繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う、繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項2】
前記冷間プレス装置が、前記繊維強化樹脂積層体を挟んでプレスするための第1の金型及び第2の金型を備え、
前記応力負荷領域に位置する前記第1の金型と前記第2の金型との間隙の幅を、他の領域における前記間隙の幅よりも小さくすることにより、前記応力負荷領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項3】
前記応力負荷領域に相当する領域における前記間隙の幅と、前記他の領域における前記間隙の幅との差が、成形される前記繊維強化樹脂構造体の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値である、請求項2に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金型及び前記第2の金型のうちの少なくとも一方が複数の部分金型に分割され、前記応力負荷領域に相当する領域に位置する前記部分金型に対して付与する荷重を、他の前記部分金型に対して相対的に大きくする、請求項2又は3に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項5】
前記繊維強化樹脂積層体における、前記応力負荷領域に相当する領域の厚さを、他の領域の厚さよりも厚くし、前記プレス加工を行うことにより、前記応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項6】
前記繊維強化樹脂積層体における、前記応力負荷領域に相当する領域に層厚増加材料を配置し、前記プレス加工を行うことにより、前記応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力が相対的に高められる、請求項1又は5に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項7】
前記応力負荷領域に相当する領域に前記層厚増加材料を配置することは、フィルム状又はシート状の樹脂材料あるいは前記繊維強化樹脂シートを積層することである、請求項6に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料は前記マトリックス樹脂の材料と同系の材料である、請求項7に記載の繊維強化樹脂構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを用いて成形される繊維強化樹脂構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の構造部品は、従来、鋼材等の金属材料により構成されていた。近年、車体の軽量化のために、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の繊維強化樹脂からなる構成部品が使用されつつある。かかる繊維強化樹脂からなる構成部品は、例えば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層し、当該積層体を、金型を用いてプレス加工することにより成形される。繊維強化樹脂からなる構成部品(以下、「繊維強化樹脂構造体」ともいう。)の内部にボイドが残留すると、繊維強化樹脂構造体の強度が低下するおそれがあるため、以下の特許文献では、繊維強化樹脂の内部にボイドが残されることを抑制する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法に関する技術として、熱硬化性樹脂を加熱硬化して成形品を製造するにあたり、真空ポンプを用いて熱硬化性樹脂成形素材内から脱気する技術が開示されている。かかる特許文献1では、熱硬化性樹脂成形素材が硬化反応を起こさない程度に設定された金型間にシート状の熱硬化性樹脂成形素材が積層配置され、熱硬化性樹脂成形素材を型閉したまま真空ポンプを作動させることにより金型内のエアーが排気される。
【0004】
また、特許文献2には、真空ポンプ等に接続された真空吸引配管を繊維強化樹脂成形用基材内の密閉空間内に差し込んで内部を減圧した後に周囲を密閉して作成した繊維強化樹脂成形用基材を用いて、繊維強化樹脂を成形する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−142205号公報
【特許文献2】特開2002−248620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が用いられる場合、繊維強化樹脂構造体は冷間プレス加工により成形される。冷間プレス加工では、溶融状態の繊維強化樹脂シートの積層体(以下、単に「繊維強化樹脂積層体」ともいう。)が、融点よりも低い温度の金型によりプレスされる。このように、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化樹脂積層体を冷間プレス加工する場合、熱可塑性樹脂は、金型に接した後、速やかに硬化し始める。そのため、特許文献1に記載されたような、熱硬化性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法による真空引きの手法を、熱可塑性樹脂を用いた繊維強化樹脂の製造方法に適用しても、内部のボイドをすべて除くことは困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術では、1枚又は複数枚積層された繊維強化樹脂シートを熱可塑性樹脂シートで上下両面から覆うことで閉空間を形成し、当該閉空間内を減圧することで、強化繊維にマトリックス樹脂を充分に含浸させた繊維強化樹脂成形用基材が作成される。しかしながら、シート間に挟まれた空気を完全に脱気することは困難であり、当該基材を融点以上に加熱した後、融点未満の温度の金型を用いて冷間プレス成形した際に、成形品にボイドが生じるおそれがある。
【0008】
このボイドが発生あるいは残留する位置は予測困難である場合が多いため、成形される繊維強化樹脂の構造体(以下、単に「繊維強化樹脂構造体」ともいう。)において、想定していた物性が発現されない場合が生じ得る。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域へのボイドの残留を抑制し、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制可能な、繊維強化樹脂構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを複数枚積層して繊維強化樹脂積層体を形成する工程と、前記繊維強化樹脂積層体を加熱する工程と、加熱した前記繊維強化樹脂積層体を、冷間プレス装置を用いてプレス加工し、繊維強化樹脂構造体を成形する工程と、を備え、製造する繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で前記プレス加工を行う、繊維強化樹脂構造体の製造方法が提供される。
【0011】
前記冷間プレス装置が、前記繊維強化樹脂積層体を挟んでプレスするための第1の金型及び第2の金型を備え、前記応力負荷領域に位置する前記第1の金型と前記第2の金型との間隙の幅を、他の領域における前記間隙の幅よりも小さくすることにより、前記応力負荷領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
【0012】
前記応力負荷領域に相当する領域における前記間隙の幅と、前記他の領域における前記間隙の幅との差が、成形される前記繊維強化樹脂構造体の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値であってもよい。
【0013】
前記第1の金型及び前記第2の金型のうちの少なくとも一方が複数の部分金型に分割され、前記応力負荷領域に相当する領域に位置する前記部分金型に対して付与する荷重を、他の前記部分金型に対して相対的に大きくしてもよい。
【0014】
前記繊維強化樹脂積層体における、前記応力負荷領域に相当する領域の厚さを、他の領域の厚さよりも厚くし、前記プレス加工を行うことにより、前記応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
【0015】
前記繊維強化樹脂積層体における、前記応力負荷領域に相当する領域に層厚増加材料を配置し、前記プレス加工を行うことにより、前記応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力が相対的に高められてもよい。
【0016】
前記応力負荷領域に相当する領域に前記層厚増加材料を配置することは、フィルム状又はシート状の樹脂材料あるいは前記繊維強化樹脂シートを積層することであってもよい。
【0017】
前記樹脂材料は前記マトリックス樹脂の材料と同系の材料であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域へのボイドの残留を抑制し、繊維強化樹脂構造体の強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】繊維強化樹脂構造体の一例を示す斜視図である。
図2】繊維強化樹脂構造体の製造方法を示す説明図である。
図3】第1の実施の形態の冷間プレス工程で用いられる金型を示す説明図である。
図4図3中のXX断面を示す図である。
図5】従来の冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。
図6】従来の冷間プレス工程で得られる繊維強化樹脂構造体のボイドを示す説明図である。
図7】第1の実施の形態の冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。
図8】第1の実施の形態の冷間プレス工程で得られる繊維強化樹脂構造体のボイドを示す説明図である。
図9】第2の実施の形態の冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。
図10】第3の実施の形態の冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。
図11】第3の実施の形態の冷間プレス工程で得られる繊維強化樹脂構造体のボイドを示す説明図である。
図12】第4の実施の形態の冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0021】
<<1.第1の実施の形態>>
第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法は、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた繊維強化樹脂シートを積層した繊維強化樹脂積層体を冷間プレス加工することによって繊維強化樹脂構造体を成形する繊維強化樹脂構造体の製造方法である。本実施形態においては、繊維強化樹脂構造体の応力負荷領域に相当する領域に付加される圧力を高めた状態で冷間プレス加工が行われる。以下、繊維強化樹脂構造体の構成例について説明した後に、繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。
【0022】
<1−1.繊維強化樹脂構造体>
図1は、繊維強化樹脂構造体20の一例を示す斜視図である。繊維強化樹脂構造体20は、繊維強化樹脂を用いて成形され、鋼板からなる構造体と比較して軽量でありつつ、高い強度を有している。繊維強化樹脂構造体20の用途は特に限定されないが、繊維強化樹脂構造体20は、例えば、自動車車体用の構造部品として使用される。
【0023】
繊維強化樹脂構造体20の成形素材となる繊維強化樹脂シートは、強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させて形成される。使用される強化繊維は、特に限定されるものではなく、例えば、炭素繊維やガラス繊維、アラミド繊維等であってもよく、さらにはこれらの強化繊維を組み合わせて使用してもよい。中でも、炭素繊維は、機械特性が高く、強度設計を行いやすいことから、強化繊維が炭素繊維を含むことが好ましい。
【0024】
強化繊維は、長さが比較的短い短繊維であってもよいし、長さが比較的長い長繊維であってもよい。また、強化繊維は、繊維強化樹脂シートの一端から他端まで連続する連続繊維であってもよい。さらに、繊維強化樹脂シートは、強化繊維が一方向に向けて配置された一方向繊維強化樹脂シートであってもよいし、強化繊維が複数方向に向けて配置された繊維強化樹脂シートであってもよい。
【0025】
また、繊維強化樹脂シートのマトリックス樹脂には熱可塑性樹脂が用いられる。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂などが例示される。これらの熱可塑性樹脂うちの1種類、あるいは2種類以上の混合物を使用することができる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、混合物でも、また共重合体であってもよい。混合物の場合には相溶化剤を併用してもよい。さらに、難燃剤として臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えてもよい。
【0026】
この場合、使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミド等の樹脂が挙げられる。中でも可塑性マトリックス樹脂がポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン及びフェノキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
なお、積層される複数の繊維強化樹脂シートは、それぞれ強化繊維の種類や含有率等が異なっていてもよい。また、積層される複数の繊維強化樹脂シートにおいて、マトリックス樹脂が相溶性を有する異なる材料同士であってもよく、あるいは、同一のマトリックス樹脂に対して異なる添加物等が混合されていてもよい。この場合においても、繊維強化樹脂シートの溶融及び硬化を効率的に行えるように、マトリックス樹脂の融点が近似することが好ましい。
【0028】
繊維強化樹脂シートは、例えば、一般的なフィルム含浸法や溶融含浸法等のプロセスにより、強化繊維を連続的に送り出しながらマトリックス樹脂を当該強化繊維に含浸させる方法により製造される。この繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断することにより、成形素材としての繊維強化樹脂シートが得られる。所望のサイズに切断した複数の繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を接着剤等により互いに接合して、所望の幅及び長さの繊維強化樹脂シートを形成してもよい。繊維強化樹脂シートの厚さは、例えば、0.03〜0.50mmの範囲内の値とすることができる。
【0029】
本実施形態において、繊維強化樹脂シートを用いて成形される繊維強化樹脂構造体20は、図1に示すように、中央部に応力負荷領域Rを有する。繊維強化樹脂構造体20は、その使用条件により、平面の中央部に応力が負荷される部材となっている。このような繊維強化樹脂構造体20としては、例えば、構造部材において応力が高くなる締結部分を有する構造体等が挙げられる。
【0030】
応力負荷領域Sは、他の領域に比べて、負荷される応力を受けて損傷しやすくなっている。そのため、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制されるように繊維強化樹脂構造体20が成形されるようになっている。なお、繊維強化樹脂構造体20は、応力負荷領域Sを有していればよく、図1に例示した形状に限られない。
【0031】
<1−2.繊維強化樹脂構造体の製造方法>
本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法について具体的に説明する。図2は、成形素材としての繊維強化樹脂シート10から繊維強化樹脂構造体20が得られるまでの工程を模式的に示した説明図である。かかる製造方法は、積層工程と、加熱工程と、冷間プレス工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
【0032】
(1−2−1.積層工程)
積層工程は、複数枚の繊維強化樹脂シート10を積層して繊維強化樹脂積層体12を形成する工程である。本実施形態では、それぞれ連続繊維が一方向に向けて配置された4枚の繊維強化樹脂シート10が用いられる。このとき、4枚のうちの少なくとも1枚の繊維強化樹脂シート10の連続繊維の配置方向を異ならせて繊維強化樹脂シート10を積層することにより、得られる繊維強化樹脂構造体20の強度に異方性を持たせることができる。
【0033】
上述のとおり、成形素材としての繊維強化樹脂シート10は、繊維強化樹脂シートを所望のサイズに切断したものであってもよく、所望のサイズに切断した繊維強化樹脂シートの幅方向の端部を互いに接合して所望の幅にしたものであってもよい。積層する繊維強化樹脂シート10の枚数や平面視の大きさは、製造する繊維強化樹脂構造体20の厚さや大きさに応じて、適宜選択し得る。
【0034】
(1−2−2.加熱工程)
加熱工程は、繊維強化樹脂積層体12を加熱する工程である。加熱工程では、例えば、繊維強化樹脂積層体12が加熱装置40に投入される。当該繊維強化樹脂積層体12は、上面側及び下面側から、電熱線や遠赤外線ヒータ等の加熱手段41,43によって加熱される。加熱装置40の温度は、マトリックス樹脂の融点以上に設定される。加熱工程では、マトリックス樹脂が分解しないように、繊維強化樹脂積層体12が溶融状態にされる。用いられる加熱装置は、特に限定されない。
【0035】
(1−2−3.冷間プレス工程)
冷間プレス工程は、溶融状態の繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工し、所望の形状の繊維強化樹脂構造体20を成形する工程である。冷間プレス工程では、冷間プレス装置50の第1の金型51及び第2の金型53の温度がマトリックス樹脂の融点未満にされる。かかる冷間プレス工程において、第2の金型53上に溶融状態の繊維強化樹脂積層体12が設置された後に、対向する第1の金型51及び第2の金型53が互いに近接させられて繊維強化樹脂積層体12がプレス加工される。これにより、繊維強化樹脂積層体12が硬化して、所望の形状の繊維強化樹脂構造体20が得られる。
【0036】
ここで、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイドの残留を抑制するために、繊維強化樹脂積層体12のうち、応力負荷領域Sに相当する領域に付加される圧力を相対的に高めた状態で冷間プレス加工が行われる。応力負荷領域Sに相当する領域に付加される圧力を相対的に高めることによって、当該領域Sに内包されるボイドを他の領域へと移動させて、応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制される。
【0037】
(1−2−3−1.金型)
まず、本実施形態の冷間プレス工程において用いられる金型の構成について説明する。図3及び図4は、冷間プレス工程で用いられる第1の金型51及び第2の金型53のプレス面の説明図である。図3は、第1の金型51及び第2の金型53を模式的に示す斜視図であり、図4は、図3のXX断面を示した断面図である。第1の金型51及び第2の金型53は、図1に示した平板状の繊維強化樹脂構造体20を冷間プレス成形するためのものである。第1の金型51のプレス面は平坦面である一方、第2の金型51のプレス面は平坦面の中央に凸部53aを有する。
【0038】
本実施形態では、第2の金型53に凸部53aを設けることにより、当該凸部53aの位置における第1の金型51と第2の金型53との間隙の幅が、他の位置における間隙の幅よりも小さくなる。これにより、繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工する際に、凸部53aに対応する位置に付加される圧力が相対的に高められる。これにより、応力負荷領域Sに相当する領域に付加される圧力が相対的に高められ、応力負荷領域Sにボイドが存在していた場合であっても、当該ボイドを他の領域へ移動させることができる。
【0039】
なお、本明細書において、第1の金型51と第2の金型53との「間隙の幅」とは、それぞれの位置における第1の金型51と第2の金型53との最短距離を指す。
【0040】
図3に例示した凸部53aは、頂部が曲面によって構成された円錐形状を有するが、凸部53aの形状は、矩形状や円弧状等の他の形状であってもよい。ただし、得られる繊維強化樹脂構造体20に角部分が形成されると、当該角部分に応力が集中しやすくなることから、凸部53aは、鋭角な箇所を有しない、連続した一つの面で構成されることが好ましい。また、凸部53aの位置は、応力負荷領域Sと完全に重なっている必要はなく、部分的に重なっていてもよい。
【0041】
また、凸部53aの高さは、成形される繊維強化樹脂構造体20の厚さの1/3未満、かつ、0.1mm以上の値であることが好ましい。例えば、繊維強化樹脂構造体20の厚さが1mmの場合の凸部53aの高さの上限は0.3mmであり、繊維強化樹脂構造体20の厚さが3mmの場合の凸部53aの高さの上限は1.0mmである。凸部53aの高さが低い場合には、応力負荷領域Sに相当する領域に付加される圧力を相対的に高めることができずに、ボイドを移動させられないおそれがある。また、凸部53aの高さが高すぎる場合には、得られる繊維強化樹脂構造体20における応力負荷領域Sの厚さが部分的に薄くなって、強度が低下するおそれがある。したがって、凸部53aの高さの上限は、繊維強化樹脂構造体20の厚さの1/4未満であることがより好ましく、1/5未満であることがさらに好ましい。
【0042】
なお、凸部53aは、第2の金型53ではなく、第1の金型51に設けられてもよく、第1の金型51及び第2の金型53の両方に設けられてもよい。凸部53aを第1の金型51及び第2の金型53の両方に設ける場合には、繊維強化樹脂構造体20の厚さが部分的に著しく薄くならないように、それぞれの凸部53aの位置や高さ等が適宜設定される。
【0043】
(1−2−3−2.冷間プレス加工)
次に、上記第1の金型51及び第2の金型53を用いて実施される冷間プレス加工について説明する。以下、繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sにボイドが残留する場合について説明した後、本実施形態による冷間プレス加工について説明する。
【0044】
図5は、凸部が設けられていない第1の金型151及び第2の金型153を用いて冷間プレス加工を実施している様子を示す説明図である。図6は、凸部が設けられていない第1の金型151及び第2の金型153を用いて成形された繊維強化樹脂構造体20の側面図及び上面図である。なお、図5においては、重ね合わせた繊維強化樹脂シート10により繊維強化樹脂積層体12が示されている。
【0045】
第1の金型51及び第2の金型53に凸部が設けられていない場合、繊維強化樹脂積層体12には全体にわたって均等な圧力が付加される。溶融状態の繊維強化樹脂積層体12は、融点よりも低い温度にされた第1の金型51及び第2の金型53に接触した部位から速やかに硬化し始める。したがって、繊維強化樹脂積層体12に内包されたボイドは、内部に閉じ込められてしまい、繊維強化樹脂積層体12の外部に排出されにくくなる。このボイドが発生する位置は予測不可能であり、図6に示すように、応力負荷領域Sに重なるようにボイド14が残留し得ることになる。
【0046】
これに対して、第2の金型53に凸部53aを設けて冷間プレス加工を実施した場合には、応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制される。図7は、第2の金型53に凸部53aを設けた冷間プレス装置50を用いて冷間プレス加工を実施している様子を示す説明図である。図7においても、重ね合わせた繊維強化樹脂シート10により繊維強化樹脂積層体12が示されている。
【0047】
第2の金型53に凸部53aを設けた場合には、第1の金型51と第2の金型53とを互いに近接させたときに、凸部53aが設けられた位置における第1の金型51と第2の金型53との間隙の幅が、他の領域よりも小さくなる。したがって、凸部53aが設けられた位置に付加される圧力が相対的に高くなる。これにより、図8に示すように、凸部53aが設けられた位置に存在するボイド14は、凸部53aが設けられた位置から他の領域に移動する。このように成形される繊維強化樹脂構造体20は、応力負荷領域Sへのボイド14の残留が抑制され、強度の低下が抑制されている。
【0048】
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によれば、冷間プレス加工により繊維強化樹脂構造体20を製造するにあたり、繊維強化樹脂積層体12内のボイド14を応力負荷領域Sから他の領域へ移動させることができる。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイド14の残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
【0049】
また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、真空引きによって繊維強化樹脂積層体12内を脱気する工程がないため、製造効率を向上させることができるとともに、脱気装置等の設備が不要となって製造コストを抑えることができる。ただし、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、真空引きの工程を含んでいてもよい。冷間プレス工程の前に繊維強化樹脂積層体12内を脱気することにより、得られる繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイド14の残留をさらに抑制することができる。
【0050】
<<2.第2の実施の形態>>
次に、第2の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法は、繊維強化樹脂積層体の表面にスリットを形成した状態で冷間プレス工程が実施される点において、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法とは異なる。以下、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法の冷間プレス工程について、第1の実施の形態にかかる冷間プレス工程と異なる点を中心に説明する。
【0051】
図9は、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法における冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。図9の上段の図は、冷間プレス加工中の第1の金型51、第2の金型53A及び繊維強化樹脂積層体12の断面図であり、図9の下段の図は、上段の図の部分拡大図である。本実施形態においても、第2の金型53Aには応力負荷領域Sに相当する領域に凸部53aが設けられている。
【0052】
ここで、本実施形態では、第2の金型53Aの凸部53aの近傍に凹部57が設けられている。図9においては、凸部53aを挟んだ両側に二つの凹部57が示されている。また、繊維強化樹脂積層体12には、第2の金型53Aに接する表面のうちの、第2の金型53Aに設けられた凹部57に対向する位置に、あらかじめスリット16が形成されている。
【0053】
したがって、繊維強化樹脂積層体12を冷間プレス加工した際に、凸部53aが設けられた領域から他の領域に移動するボイド14が、スリット16を介して、第2の金型53Aの凹部57に排出される。繊維強化樹脂積層体12は、第1の金型51及び第2の金型53Aに接触した部分から硬化し始めるが、スリット16の周囲は凹部57に対向しており、硬化し始めるタイミングが周辺の領域よりも遅くなる。そのため、ボイド14が排出されるタイミングでは、スリット16が塞がれにくくなっている。
【0054】
繊維強化樹脂積層体12に形成されるスリット16の幅は、例えば、0.05〜0.7mmの範囲内の値であることが好ましい。スリット16の幅が大きすぎると、硬化前の繊維強化樹脂が漏れ出るおそれがある。一方、スリット16の幅が小さすぎると、ボイド14が排出されないおそれがある。したがって、スリット16の幅は、0.1〜0.6mmの範囲内の値であることがより好ましく、0.1〜0.5mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0055】
また、繊維強化樹脂積層体12に形成されるスリット16の深さは、例えば、1.0〜10.0mmの範囲内の値であることが好ましい。スリット16が深すぎると、溶融状態の繊維強化樹脂積層体12の取り扱いが困難になったり、成形される繊維強化樹脂構造体20の強度が低下したりするおそれがある。一方、スリット16が浅すぎると、繊維強化樹脂積層体12の内部のボイド14が排出されないおそれがある。したがって、スリット16の深さは、1.5〜8.0mmの範囲内の値であることがより好ましく、2.0〜5.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0056】
かかるスリット16は、繊維強化樹脂積層体12の表層に位置する少なくとも1枚の繊維強化樹脂シートにあらかじめ形成されていてもよいし、積層工程で繊維強化樹脂積層体12を形成した後に形成されてもよい。また、第1の金型51に凹部57が設けられ、スリット16が、繊維強化樹脂積層体12における第1の金型51に接する表面側に形成されてもよい。図9に例示したスリット16の断面形状は矩形状であるが、スリット16の断面形状は円弧状等の他の形状であってもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によっても、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、凸部53aが形成された位置から移動するボイド14が、スリット16を介して、繊維強化樹脂積層体12外に排出される。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイド14の残留がさらに抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
【0058】
<<3.第3の実施の形態>>
次に、第3の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法では、金型のプレス面に凸部が設けられる代わりに、金型が複数の部分金型に分割され、応力負荷領域に相当する領域に位置する部分金型に付加される圧力が相対的に高められる。以下、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法の冷間プレス工程について、第1の実施の形態にかかる冷間プレス工程と異なる点を中心に説明する。
【0059】
図10及び図11は、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法における冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。図10は、第1の金型51、第2の金型63及び繊維強化樹脂積層体12を示す斜視図であり、図11は、繊維強化樹脂構造体20の側面図及び上面図である。
【0060】
本実施形態では、第2の金型63が、第1の部分金型63a、第2の部分金型63b及び第3の部分金型63cに分割されている。第1の部分金型63aには、第1の部分金型63aに荷重を付与する第1のエアシリンダ65aが接続されている。第2の部分金型63bには、第2の部分金型63bに荷重を付与する第2のエアシリンダ65bが接続されている。第3の部分金型63cには、第3の部分金型63cに荷重を付与する第3のエアシリンダ65cが接続されている。
【0061】
このうち、第2の部分金型63bの加圧領域が、成形される繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sに相当する領域を含む。冷間プレス加工を実施する際には、第2の部分金型63bに対して、第1の部分金型63a及び第3の部分金型63cに付与される荷重よりも大きい荷重が付与される。これにより、図11に示すように、第2の部分金型63bの加圧領域にボイド14が存在する場合に、当該ボイド14は、第1の部分金型63aの加圧領域又は第3の部分金型63cの加圧領域に移動する。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイド14の残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
【0062】
第2の部分金型63bに付与する荷重と、第1の部分金型63a及び第3の部分金型63cに付与する荷重との差は、生じる面圧の差を目安として設定してもよい、第2の部分金型63bの突出量を目安として設定してもよい。また、本実施形態では第2の金型63を分割しているが、第1の金型51を分割してもよく、第1の金型51及び第2の金型63の両方を分割してもよい。第1の金型51及び第2の金型63の両方を分割する場合には、繊維強化樹脂構造体20の厚さが部分的に著しく薄くならないように、それぞれの分割金型に付与する荷重が適宜設定される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によっても、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、第2の金型63を複数に分割することにより、所定の部分に付加される圧力が相対的に高められる。したがって、繊維強化樹脂構造体20が段差や屈曲面を有する形状である場合に、特定の応力負荷領域Sに対して付加される圧力を相対的に高めることができ、繊維強化樹脂構造体20の強度が高められる。
【0064】
なお、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法においても、第2の実施の形態で説明したように、繊維強化樹脂積層体12の表面にスリット16を形成するとともに、当該スリット16に対向する金型のプレス面に凹部57を設けて、ボイドを排出してもよい。これにより、繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイドの残留がさらに抑制されやすくなる。
【0065】
<<4.第4の実施の形態>>
次に、第4の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法について説明する。本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法では、金型に凸部分を設けるのではなく、応力負荷領域に相当する領域の繊維強化樹脂積層体の厚さを厚くすることによって、当該領域に付加される圧力が相対的に高められる。以下、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体の製造方法の冷間プレス工程について、第1の実施の形態にかかる冷間プレス工程と異なる点を中心に説明する。
【0066】
図12は、本実施形態における冷間プレス工程を実施している様子を示す説明図である。図12では、複数の繊維強化樹脂シート10によって繊維強化樹脂積層体12が示されている。本実施形態において用いられる第1の金型51B及び第2の金型53Bは、凸部分を有しない点を除いて、第1の実施の形態において用いられる第1の金型51及び第2の金型53と同様の構成を有している。一方、第2の金型53Bに設置された繊維強化樹脂積層体12における、応力負荷領域Sに相当する部分の厚さが他の領域に比べて厚くされている。
【0067】
本実施形態では、繊維強化樹脂積層体12の応力負荷領域Sに相当する領域に層厚増加材料18を配置することによって、当該領域の厚さが厚くされている。これにより、当該領域には、他の領域で生じる面圧よりも大きい面圧が生じやすくなり、当該領域にボイドが存在する場合に、ボイドを他の領域に移動させることができる。
【0068】
繊維強化樹脂積層体12における、応力負荷領域Sに相当する領域に層厚増加材料18を配置する方法としては、例えば、図12に示したように、積層工程で形成された繊維強化樹脂積層体12の所定の位置に、フィルム状又はシート状の熱可塑性樹脂や、積層に使用している繊維強化樹脂シートを積層する方法が挙げられる。熱可塑性樹脂は、溶着やホットスタンプ等によって繊維強化樹脂積層体12上に積層、固定されてもよい。
【0069】
このとき積層される熱可塑性樹脂材料は、繊維強化樹脂シート10のマトリックス樹脂の材料と同系の材料であることが好ましい。すなわち、積層される熱可塑性樹脂材料の融点は、マトリックス樹脂の融点と近似していることが好ましく、樹脂として相溶するものであることがより好ましい。マトリックス樹脂と層厚増加材料18の融点が近似していれば、加熱工程や冷間プレス工程が効率的に実施される。
【0070】
また、積層される熱可塑性樹脂の厚さは、例えば、0.1〜1.5mmの範囲内の値であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂の厚さが厚すぎると、冷間プレス時において、層厚が薄い領域への加圧が不十分になるおそれがある。また、当該熱可塑性樹脂の厚さが薄すぎると、応力負荷領域Sに相当する領域における面圧の増加が不十分となって、当該領域に存在するボイドを他の領域に移動させられないおそれがある。したがって、積層される熱可塑性樹脂の厚さは、0.15〜1.3mmの範囲内の値であることがより好ましく、0.2〜1.0mmの範囲内の値であることがさらに好ましい。
【0071】
層厚増加材料18を積層する時期は、加熱工程が終了するまでの間であれば、特に限定されない。積層工程においてあらかじめ層厚増加材料18が積層されてもよいし、加熱工程の前あるいは途中で層厚増加材料18が積層されてもよい。
【0072】
なお、繊維強化樹脂積層体12において、層厚を厚くする領域は、少なくとも応力負荷領域Sに相当する領域に重なっていればよい。かかる領域における繊維強化樹脂積層体12の厚さを厚くすることによって、冷間プレス時に、応力負荷領域Sに相当する領域に付加される圧力が相対的に高められる。これにより、応力負荷領域Sに相当する領域に存在するボイドが他の領域へと押し出される。したがって、得られる繊維強化樹脂構造体20における応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度の低下が抑制される。
【0073】
以上説明したように、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法によっても、第1の実施の形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法では、応力負荷領域Sに相当する部分の繊維強化樹脂積層体12の厚さを厚くすることにより、冷間プレス時に当該部分に付加される圧力が相対的に高められる。したがって、成形される繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制され、繊維強化樹脂構造体20の強度が高められる。
【0074】
さらに、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法は、冷間プレス加工に用いる金型の改良を要しない。したがって、従来の冷間プレス装置を用いて冷間プレス工程を実施することによっても、成形される繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイドの残留が抑制される。
【0075】
なお、本実施形態にかかる繊維強化樹脂構造体20の製造方法においても、第2の実施の形態で説明したように、繊維強化樹脂積層体12の表面にスリット16を形成するとともに、当該スリット16に対向する金型のプレス面に凹部57を設けて、ボイドを排出してもよい。これにより、繊維強化樹脂構造体20の応力負荷領域Sへのボイドの残留がさらに抑制されやすくなる。
【0076】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0077】
10 繊維強化樹脂シート
12 繊維強化樹脂積層体
14 ボイド
16 スリット
18 層厚増加材料
20 繊維強化樹脂構造体
40 加熱装置
50 冷間プレス装置
51,51B 第1の金型
53,53A,53B, 第2の金型
53a 凸部
57 凹部
63 第2の金型
63a 第1の部分金型
63b 第2の部分金型
63c 第3の部分金型
65a 第1のエアシリンダ
65b 第2のエアシリンダ
65c 第3のエアシリンダ
S 応力負荷領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12