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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-221997(P2016-221997A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/04 20060101AFI20161205BHJP
   B60W 40/107 20120101ALI20161205BHJP
   B60W 40/076 20120101ALI20161205BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20161205BHJP
   G01P 21/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B60W50/04
   B60W40/107
   B60W40/076
   F02D29/02 321A
   G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-107353(P2015-107353)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】多田 和彦
【テーマコード(参考)】
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BA63
3D241BB21
3D241CC02
3D241CD12
3D241CD24
3D241DB05Z
3D241DC45Z
3D241DC53B
3D241DC53Z
3G093BA21
3G093DB06
3G093DB09
3G093DB18
(57)【要約】
【課題】加速度センサを利用した車両制御を好適に行うことができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンルーム内の温度と車室内の温度との差が閾値よりも小さい場合には、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報と、変速制御装置用加速度センサ32からの検出情報及びカーナビ用加速度センサ62からの検出情報との平均値とを比較し、その比較結果に応じてアイドリングストップ用の制御処理が実行され、エンジンルーム内の温度と車室内の温度との差が閾値よりも大きい場合には、検出情報の比較処理が制限される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)における加速度を検出する第1加速度センサ(22)からの検出情報に基づいて所定の車両制御処理を実行する車両制御手段(12)を備えた車両制御装置であって、
前記第1加速度センサからの検出情報を、前記第1加速度センサとは別に設けられ前記所定の車両制御とは別の制御処理に使用される第2加速度センサ(62)からの検出情報と比較し、その比較に基づいて前記第1加速度センサの診断を実施する診断手段と、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの温度差が所定値よりも小さいか大きいかを判定し、小さい場合に前記診断を許容し、大きい場合に前記診断を許可しない許可判定手段と
を備えていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記第2加速度センサは、2以上の加速度センサよりなり、
前記診断手段は、前記複数の第2加速度センサからの各検出情報を参照して前記診断を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第1加速度センサからの検出情報に基づいて勾配推定値を算出する勾配推定値算出手段を備え、
前記車両制御手段は、前記勾配推定値に基づいて内燃機関を自動停止するアイドリングストップ制御を行う制御手段であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
車両が停止しているか否かを判定する停止判定手段を備え、
前記診断手段は、前記停止判定手段によって車両が停止していると判定されたことを条件として、前記診断を実施するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサは、環境温度が相違する場所に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサは、車両に搭載された熱源からの距離が相違するようにして配置されていることを特徴とする請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの一方は車室内に配置されており、他方は車室外に配置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記車両の走行状態下での前記第1加速度センサの温度範囲内において、前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの温度差と、前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサからの検出情報の差とに対応する対応情報が記憶されており、
前記診断手段は、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの温度差が基準値よりも大きい場合に、前記対応情報を用いて前記診断を実施するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記第1加速度センサの温度が前記温度範囲内である場合に当該第1加速度センサの温度に応じて前記対応情報を各々記憶し、新たに把握した対応情報に基づいて既に記憶されている対応情報を更新する更新手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサを備えた車両に適用される車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関を自動停止するアイドリングストップ機能を備えた車両においては、車両に取り付けられた加速度センサの検出値と、車輪速センサにより検出される車速の変化量とから勾配推定値を算出し、算出された勾配推定値に応じてアイドリングストップを許可するか否かを判定しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような構成とすることにより、アイドリングストップ機能による燃費等の向上を実現しつつ、勾配のきつい坂道でのアイドリングストップに起因した車両のずり下がりを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−138620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し、加速度センサの経年劣化等によって検出値に誤差が生じると、上述した燃費の向上効果や車両のずり下がりの抑制効果が上手く発揮されなくなると懸念される。このような加速度センサからの検出情報の誤差に係る課題は、アイドリングストップだけではなく他の車両制御についても同様に発生する課題であり、加速度センサを利用した車両制御に係る構成には未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は加速度センサを利用した車両制御を好適に行うことができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段について記載する。
【0008】
本発明は、
車両における加速度を検出する第1加速度センサからの検出情報に基づいて所定の車両制御処理を実行する車両制御手段を備えた車両制御装置であって、
前記第1加速度センサからの検出情報を、前記第1加速度センサとは別に設けられ前記所定の車両制御とは別の制御処理に使用される第2加速度センサからの検出情報と比較し、その比較に基づいて前記第1加速度センサの診断を実施する診断手段と、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの温度差が所定値よりも小さいか大きいかを判定し、小さい場合に前記診断を許容し、大きい場合に前記診断を許可しない許可判定手段と
を備えていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、複数の加速度センサからの検出情報を比較し、その比較結果に応じて例えばアイドリングストップ用の制御処理等の車両制御処理を制限等することが可能となり、当該制御処理に係る信頼性の向上に貢献することができる。このように信頼性の向上を実現することにより、アイドリングストップが車両のずり下がりの要因になったり、アイドリングストップが可能な勾配にてアイドリングストップが行われず燃費向上の機会を逃してしまったりすることを好適に抑制できる。
【0010】
目的別に搭載された既存の加速度センサを併用することにより、構成の複雑化を抑制しつつ上述した信頼性の向上を実現できる。但し、加速度センサについては、温度による影響を受けて出力される検出情報にずれが生じ得る。このため、単に検出情報同士を比較した場合には信頼性の恩恵が上手く享受できなくなると懸念される。一方、設置箇所の温度が同等となる複数の加速度センサを利用しようとすれば、利用可能な加速度センサに制約が生じる。この点、上記構成によれば、加速度センサが設置されている環境毎に温度を把握し、その温度差が所定値よりも小さい(所定の範囲内)であることを条件として比較手段による比較を許容する構成とすることにより、異なる環境下に存在する複数の加速度センサの併用を好適に実現している。このように、設置箇所に係る制約を抑えることにより、アイドリングストップ機能への上記構成の適用を促進できる。以上の理由から、構成の複雑化を抑制しつつ、アイドリングストップによる効果を好適に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態における主要な構成の関係を示すブロック図。
図2】ECUにて実行される診断処理を示すフローチャート。
図3】温度変化の様子を示すタイミングチャート。
図4】(a)アイドリングストップ開始処理を示すフローチャート、(b)勾配条件判定処理を示すフローチャート。
図5】第2の実施の形態における特性学習処理を示すフローチャート。
図6】比較対象の切り替えを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の車両制御装置を具体化した実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、内燃機関を走行駆動源とする車両において、所定の自動停止条件を満たした場合に内燃機関を自動停止させ、所定の自動再始動条件を満たした場合に内燃機関を自動再始動させる構成(所謂アイドリングストップ機能)を例示し、図1のブロック図においては、その概略構成を示している。
【0014】
図1に示すように、車両10には、「内燃機関」としてのエンジン11と「車両制御手段」としてのECU12とが設けられており、ECU12によってエンジン11の駆動制御が行われる。なお、実際にはECU12はエンジンECU、ブレーキECU、トランスミッションECU等により構成されている。車両10において車室外となる領域(詳しくはエンジンルーム)には、運転者によってブレーキ操作が行われた場合に制動力を発生させるブレーキユニット21と、車速やエンジン11の回転速度に応じて変速比を自動的に切り替えるトランスミッションユニット31とが配設されている。
【0015】
ブレーキユニット21には、前後方向における車両の加速度を検出するブレーキ用加速度センサ22が搭載されており、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報に基づいて制動力の調節が行われる。また、トランスミッションユニット31には、ブレーキ用加速度センサ22と同様に前後方向における車両の加速度を検出する変速制御用加速度センサ32が搭載されており、変速制御用加速度センサ32からの検出情報に基づいて変速制御が行われる。
【0016】
車両10のECU12には、アイドリングストップ機能が付与されており、状況に応じてエンジン11が停止/再始動される構成となっている。具体的には、車両10には車速検出に使用される車輪速センサ51が設けられている。車輪速センサ51及びブレーキ用加速度センサ22はECU12に接続されており、車輪速センサ51の検出情報及びブレーキ用加速度センサ22の検出情報がECU12に入力される。ECU12においては、これらの検出情報に基づいて車両10が停止又は走行している路面の勾配を推定し、この推定結果に応じてアイドリングストップの可否を決める構成となっている。これにより、坂道では車両のずり下がりを抑制しつつ、アイドリングストップによる燃費向上等の各種効果を発揮させることが可能となっている。
【0017】
ここで、アイドリングストップの可否がブレーキ用加速度センサ22からの検出情報に依存する構成においては、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報に経年劣化等に起因した誤差が生じた場合に、路面勾配の推定の確からしさが低下すると想定される。これは、アイドリングストップによる燃費向上等の各種効果を発揮する上で妨げになる。本実施の形態においては、既存の構成等を上手く利用することによりそのような不都合の発生を抑える工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、当該工夫に係る構成について説明する。
【0018】
車両10の車室、詳しくはダッシュボードには、カーナビゲーションシステム61が配設されている。カーナビゲーションシステム61には、前後方向における車両の加速度を検出するカーナビ用加速度センサ62が搭載されており、カーナビ用加速度センサ62からの検出情報に基づいて車両の姿勢(路面の傾斜)が把握される。
【0019】
ECU12には、ブレーキ用加速度センサ22だけでなく、変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62が接続されている。ECU12においては、これら加速度センサ32,62からの検出情報とブレーキ用加速度センサ22からの検出情報とを照らし合わせることによりブレーキ用加速度センサ22の誤差の診断等が実行される。
【0020】
但し、加速度センサについてはその構造上、出力する検知情報が温度の影響を受けやすい。具体的には、使用に適した温度からの乖離が大きくなることで感度の変化率が大きくなる。そこで、上記診断等においては、各加速度センサ22,32,62が配設されている箇所での温度情報が参照される構成となっている。具体的には、エンジンルームに設けられ車室外(エンジンルーム内)の温度を測定するエンジンルーム用温度センサ41と、ダッシュボードに設けられ車室内の温度を測定する車室内用温度センサ71とがECU12に接続されており、ECU12ではこれら温度センサ41,71からの検出情報に基づいてエンジンルーム内の温度と車室内の温度とを測定することが可能となっている。
【0021】
なお、ブレーキ用加速度センサ22及び変速制御用加速度センサ32については、熱源たるエンジン11からの距離がある程度担保されており、配設箇所の温度が同等となっている。エンジンルーム用温度センサ41については、両加速度センサ22,23の周辺、詳しくは両加速度センサ22,32の間に配置されており、エンジンルーム用温度センサ41により測定された温度が、それら加速度センサ22,23の配設箇所の温度となるように設定されている。
【0022】
本実施の形態に示すECU12においては、アイドリングストップ用の処理としてのセンサ診断処理とアイドリングストップ開始処理とアイドリングストップ解除処理とが設定されている。以下、図2のフローチャートを参照してセンサ診断処理について説明する。このフローの処理が「診断する」に相当する。
【0023】
センサ診断処理においては先ず、ステップS101にて車両10が停車中であるか否かを判定する。ステップS101にて肯定判定をした場合には、ステップS102に進む。ステップS102の処理では、各温度センサ41,71からの検出情報に基づいて、エンジンルーム内における加速度センサ22,32の設置箇所の温度と、車室内における加速度センサ62の設置箇所の温度とを把握し、両温度の差が所定の範囲内(詳しくは閾値(20℃)以下)であるか否かを判定する。
【0024】
ここで、図3のタイミングチャートを参照して、温度差の変化について説明する。なお、図3においては冬季について例示している。車両10が停車され且つイグニッションがOFFとなっている状態では、車室内の温度と、車室外(エンジンルーム内)の温度とにある程度の差が生じ得る。イグニッションがONとなってエンジン11が始動した後は、エンジン11等から発生する熱によってエンジンルーム内の温度が上昇する。車室内では空調がONになることで温度が上昇するもののその上昇幅についてはエンジンルームにおける温度の上昇幅よりも小さくなる。
【0025】
エンジン11が始動した直後のタイミングでは、車室内外の温度差T1が上記閾値よりも小さくなっている。この状況では、上記ステップS102の処理にて肯定判定がなされる。これに対して、エンジン11の始動からある程度の期間が経過したタイミングでは、エンジン11の温度上昇が冷却装置によって抑えられ、車室内外の温度差の変化が緩和された状況となる。この状況では、車室内外の温度差T2が上記閾値を上回ることにより、上記ステップS102にて否定判定がなされる。
【0026】
なお、他の季節であっても、エンジン11の停止/始動や空調等の利用に応じて車室内外の温度差が変化するものの、イグニッションがONとなった直後については、その温度差が概ね20℃以内になるものと想定される。このような事情に配慮して、上記閾値を20℃とすることにより、イグニッションをONとした直後についてはアイドリングストップの準備処理における温度条件が成立するようになっている。因みに、エンジン11の暖気が終了している状態では温度が80℃程度に維持されるため、車室内との温度差は概ね閾値よりも大きくなり、温度条件の成立が回避される。
【0027】
再び図2を参照して、ステップS102にて肯定判定をした場合には、ステップS103に進む。ステップS103では各種加速度センサ22,32,62からの検出情報を取得する。続くステップS104では取得した検出情報に基づく比較処理を行う。この比較処理においては、変速制御用加速度センサ32からの検出情報とカーナビ用加速度センサ62からの検出情報とが同一又はその差が設定範囲内(微小)であることを条件として、変速制御用加速度センサ32からの検出情報とカーナビ用加速度センサ62からの検出情報との平均値を算出する。そして、この算出された平均値と、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報との比較を行う。
【0028】
ステップS104の処理を実行した後は、ステップS105に進む。ステップS105では、ステップS104における比較結果が許容範囲内となっているか否かを判定する。ステップS105にて肯定判定をした場合には、ステップS106に進む。ステップS106では、検出情報補正用処理を行う。具体的には、変速制御用加速度センサ32の検出情報及びカーナビ用加速度センサ62の検出情報とブレーキ用加速度センサ22の検出情報との差が比較的大きい場合に、その差(例えば変速制御用加速度センサ32の検出情報及びカーナビ用加速度センサ62の検出情報の平均値とブレーキ用加速度センサ22との差)を補正値として設定する。補正値が設定された後は、アイドリングストップの可否の判定に際してブレーキ用加速度センサ22からの検出情報を参照する場合にこの補正値が加味(加算)されることとなる。ステップS106の処理を実行した後は、本センサ診断処理を終了する。
【0029】
なお、変速制御用加速度センサ32の検出情報及びカーナビ用加速度センサ62の検出情報の平均値とブレーキ用加速度センサ22の検出情報との差については、ノイズや個体差等の微小なものが含まれる可能性を否定できない。そこで、詳細には補正値を設定する場合には、有意差の有無の判定が実行され、有意差がある場合にはその有意差分を補正値として設定し、有意差が無い場合には補正値として「0」が設定される。つまり、有意差が存在しない場合には、事実上の補正が回避されることとなる。有意差の判定には、予め設定された判定基準(固定値)を参照する構成としてもよいし、実測データの統計結果に基づいて設定される判定基準(可変値)を参照する構成としてもよい。
【0030】
次に図4(a)のフローチャートを参照してアイドリングストップ開始処理について説明する。
【0031】
アイドリングストップ開始処理においては先ずステップS201にて既にエンジンの自動停止を行っている最中であるか否かを判定する。ステップS201にて否定判定をした場合には、ステップS202に進む。ステップS202では、アイドリングストップ用の各種前提条件が成立しているか否かを判定する。
【0032】
ステップS201にて肯定判定をした場合、及びステップS202にて否定判定をした場合には、そのまま本アイドリングストップ開始処理を終了する。ステップS202にて肯定判定をした場合には、ステップS203にてエンジン停止信号の出力処理を実行した後に本アイドリングストップ開始処理を終了する。エンジン停止信号が出力されることにより、以降のアイドリングストップ解除処理にてエンジン駆動信号が出力されるまでアイドリングストップが継続されることとなる。
【0033】
アイドリングストップ用の各種前提条件としては、車速条件、ブレーキ条件及び勾配条件等が設けられている。以下、勾配条件に係る判定処理(勾配条件判定処理)について図4(b)のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
勾配条件判定処理においては、先ずステップS301にてブレーキ用加速度センサ22から検知情報を取得する。続くステップS302では、ステップS301にて取得した検出情報の補正処理を実行する。具体的には、ステップS106にて設定された補正値を読み出して、検出情報を補正する。ブレーキ用加速度センサ22に経年劣化等が生じている場合には、他の加速度センサ32,62との間に相応の誤差が生じ得る。そこで、本補正処理を行うことにより、この誤差が補完されることとなる。
【0035】
ステップS302の補正処理を実行した後はステップS303に進む。ステップS303の処理(「勾配推定値算出手段」に相当)では、ステップS302にて補正された検出情報と、車輪速センサ51からの検出情報とを参照して、路面勾配の算出処理を実行する。路面勾配の算出の基となるブレーキ用加速度センサ22からの検出情報を上述の如く補正することにより、路面勾配の算出精度の向上が期待できる。
【0036】
ステップS303の処理を実行した後はステップS304に進み、ステップS303における算出結果(「勾配推定値」に相当)に基づいてアイドリングストップ許可の勾配条件が成立したか否かを判定する。具体的には、車両のずり下がりが発生する限界角度に基づいて基準路面勾配が設定されており、この基準路面勾配と算出された推定路面勾配とを比較する。推定路面勾配が基準路面勾配よりも大きい場合には、アイドリングストップ許可条件が不成立となり、そのまま本勾配条件判定処理を終了する。推定路面勾配が基準路面勾配よりも小さい場合には、アイドリングストップ許可条件が成立となり、ステップS305にて勾配条件のアイドリングストップ許可信号を出力して本勾配条件判定処理を終了する。上記ステップS202の処理では、この許可信号の有無に基づいて、勾配条件の成立の可否が判定される。
【0037】
なお、本実施の形態においては、例えばステップS203の処理が「所定の車両制御処理」に相当する。
【0038】
以上詳述した第1の実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0039】
(1)ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報と、他の加速度センサ32,62からの検出情報とに基づいてブレーキ用加速度センサの誤差診断を行い、その診断結果に応じてアイドリングストップ用の処理を一部制限する構成とすることにより、ブレーキ用加速度センサ22の誤差によってアイドリングストップが上手く行われなくなることを抑制することができる。すなわち、アイドリングストップを適正に行うことにより、アイドリングストップが車両10のずり下がりの要因になったり、アイドリングストップが可能な勾配にてアイドリングストップが行われず燃費向上の機会を逃してしまったりすることを抑制できる。
【0040】
(2)ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報に経年劣化等に起因した誤差が生じている場合には、その誤差が他の加速度センサ32,62からの検出情報に基づいて補完される。これにより、路面勾配算出における信頼性(精度)向上を実現している。
【0041】
(3)車両10にて目的別に設けられた既存の加速度センサ22,32,62を併用することにより、上記信頼性の向上を実現する上で構成が複雑になることを抑制している。但し、各加速度センサ22,32,62においては設置された環境が相違しているため、環境による影響(温度差)を受けて検知情報にずれが生じ得る。そこで、加速度センサ22,32,62が設置されている環境毎に温度を測定し、その温度差が所定の範囲内であることを条件として誤差診断や補正値の設定を行う構成とすることにより、異なる環境下に存在する複数の加速度センサ22,32,62の併用を好適に実現している。また、設置箇所に係る制約を抑えることにより、アイドリングストップ機能に対する本実施の形態に示した技術的思想の適用を促進することができる。
【0042】
(4)複数の加速度センサの1つを敢えて他の加速度センサとな異なる環境(車室内)に配設されたカーナビ用加速度センサ62とした。車室外と比べて環境変化の穏やかな位置に存在するセンサを含めることにより、経年劣化の影響を誤差診断及び補正値の設定に反映しやすい構成を実現している。特に、熱源となるエンジン11からの距離は、車室外(エンジンルーム内)に配設されたブレーキ用加速度センサ22及び変速制御用加速度センサ32と、車室内に配設されたカーナビ用加速度センサ62とでは相違しており、エンジン11から遠いカーナビ用加速度センサ62については熱の影響による劣化が抑制されている。このように熱源からの距離の異なる加速度センサを併用することには技術的意義がある。
【0043】
(5)熱源としてのエンジン11からの距離によってエンジン11の熱の影響が相違することとなる。そこで、エンジン11からの距離が同等となるブレーキ用加速度センサ22と、変速制御用加速度センサ32との設置箇所の温度を1のエンジンルーム用温度センサ41によって測定する構成とすることにより、上述した信頼性の向上等の実現に起因して構成が複雑になることを抑制している。
【0044】
<第2の実施の形態>
加速度センサについては、温度に応じて検出情報の感度が変化する構成となっており、実質的に測定誤差の小さい範囲に配慮して使用温度域(本実施の形態においては例えば−10℃〜90℃)が設定されている。エンジン11が始動してからある程度の期間が経過することでエンジンルーム内の温度と車室内の温度との差が大きくなれば、必然的に測定誤差が大きくなる。このような事情に配慮して、上記第1の実施の形態においては、誤差診断や補正値の設定タイミングが事実上エンジン11の始動直後等に制限されている。これに対して、本実施の形態においては、誤差診断や補正値の設定タイミングに係る制限を緩和して、誤差診断等が行われる機会を増やす工夫がなされていることを特徴の1つとしている。以下、本実施の形態における特徴的な構成について、第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0045】
加速度センサについてはその特性上、温度が使用温度域の上限/下限に近付くことで測定誤差の増加率が大きくなる。そこで、ECU12においては加速度センサ22,32,62に係る温度特性を学習する特性学習処理が実行される。以下、図5を参照して、特性学習処理(「学習手段」に相当)について説明する。
【0046】
特性学習処理においては先ず、ステップS401にて学習許容期間中であるか否かを判定する。なお、学習許容期間は、例えば車両10の走行距離が新品時から所定の距離以内である等の経年劣化の影響が無視できる期間となるように設定されている。
【0047】
ステップS401にて肯定判定をした場合には、ステップS402に進む。ステップS402ではエンジンルーム内の温度と車室内の温度との差が閾値(以下、第1閾値:20℃)以下であるか否かを判定する。ステップS401にて否定判定をした場合、又はステップS402にて肯定判定をした場合にはそのまま特性学習処理を終了する。ステップS402にて否定判定をした場合には、ステップS403に進み特性情報更新処理を実行する。具体的には、ECU12には温度特性に関する情報を記憶する記憶領域が設けられており、この記憶領域に記憶された情報が更新されることとなる。
【0048】
具体的には、ブレーキ用加速度センサ22の現時点の温度(エンジンルーム内の温度)にて、ブレーキ用加速度センサ22及びカーナビ用加速度センサ62の検出情報の差と、エンジンルーム用温度センサ41及び車室内用温度センサ71の検出情報の差とを算出し、それらの差に係る情報(学習値)と今回の温度差及びエンジンルーム内の温度との2つのパラメータとの対応関係を記憶する。既に同じ温度条件に対応した情報が記憶されている場合には、本追加情報を考慮して学習値が修正(更新)されることとなる。
【0049】
なお、記憶する情報については、変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62の平均値とブレーキ用加速度センサ22との差に係る情報としてもよい。
【0050】
次に、図6のタイミングチャートを参照し、本実施の形態における誤差診断等の流れについて説明する。
【0051】
車両10が停車され且つイグニッションがOFFとなっている状態では、車室内の温度と、車室外(エンジンルーム内)の温度とにある程度の差が生じ得る。イグニッションがONとなってエンジン11が始動した後は、エンジン11等から発生する熱によってエンジンルーム内の温度が上昇する。室内では空調がONになることで、車室内の温度が上昇するもののその上昇幅についてはエンジンルームにおける温度の上昇幅よりも小さくなる。
【0052】
エンジン11が始動した直後のタイミングでは、車室内外の温度差T1が第1閾値(20℃)よりも小さくなっている。この状況では、各加速度センサ22,32,62の検出情報が直接比較され、アイドリングストップに係る各種制御の流れについては上記第1の実施の形態と同様となる。
【0053】
上記実施の形態においては温度差が第1閾値以下であることがアイドリングストップに係る各種処理に係る実行条件であったのに対して、本実施の形態においては温度差が第2閾値(例えば80℃)以下であることが実行条件となっている。エンジン11の始動後には、エンジン11からの熱によって車室内外の温度差が上昇する。温度差TXが第1閾値(20℃)に達した時点で、比較処理の対象が加速度センサ22からの検出情報に学習値を加味したものと加速度センサ32,62の平均値とに変更されることとなる。また、上記補正値を決定する場合にも、加速度センサ22からの検出情報に学習値を加味したものと加速度センサ32,62の平均値とが参照されることとなる。
【0054】
以上詳述した第2の実施の形態によれば、エンジン11の暖気が終了した後も加速度センサの検出情報を参照した勾配推定の精度を好適に向上させることができる。また、エンジン11が温まっている状況下にて運転終了→運転再開となる場合であっても、アイドリングストップ機能を好適に活用することができる点でも有利である。
【0055】
また、経年劣化の生じていない又は少ない時期に学習を行うことにより、加速度センサ同士の温度特性の違いを加味した比較が可能となる。このような比較を行うことで、比較結果と経年劣化との相関が強くなり、例えば加速度センサの劣化を好適に見抜くことも可能となる。
【0056】
<その他の実施の形態>
(1)上記各実施の形態では、車室内外に設けられた3つの加速度センサ22,32,62からの検出情報に基づいて誤差診断及び補正値の設定を行う構成としたが、複数の加速度センサが配設されている環境については任意であり、必ずしも車室内外に配設された加速度センサを併用する必要はない。
【0057】
車室外に配置された2つの加速度センサ22,32については、エンジンルーム内に配置されているものに代えて、車両の下面等のエンジンルーム以外の箇所に配置されているものを採用することも可能である。
【0058】
車室内に配置された加速度センサ62についても、ダッシュボードではなく、座席下やトランクルームに配置されているものを採用してもよい。
【0059】
(2)上記各実施の形態では、3つの加速度センサを併用する構成としたが、誤差診断及び補正値の設定を行う上で使用される加速度センサの数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0060】
但し3つ以上の加速度センサを使用する場合には、例えば検出情報の多数決によって誤差が生じている加速度センサを特定することが可能であるものの、加速度センサが2つの場合には、何れの加速度センサに誤差が生じているかを特定することが困難になる。このような構成においては、勾配推定結果が大きくなる方を使う構成とすることにより、ずり下がりを好適に抑制できる。なお、対象の特定は困難ではあるが、誤差が生じているか否かを見極めることができる点に鑑みれば、複数の加速度センサを併用することには技術的意義がある。
【0061】
(3)上記各実施の形態では、各加速度センサ22,32,62からの検出情報に差が生じている場合に、変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62からの検出情報に基づいてブレーキ用加速度センサ22の補正値を設定する構成としたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0062】
例えば、変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62からの両検出情報に対してブレーキ用加速度センサ22からの検出値が大きくずれている場合において、ステップS303に示した勾配算出処理にて路面勾配の推定を行う際に、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報に代えて変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62からの検出情報を用いる構成とすることも可能である。
【0063】
(4)上記各実施の形態では、車両10が「停車中」であることをセンサ診断処理(詳しくは誤差診断や補正値の設定)の前提条件としたが、これに限定されるものではない。車両10の挙動として前後方向および左右方向での加速度が生じていないと判断できる状況である場合に、センサ診断処理を許容する構成とすることも可能である。例えば、車両が駆動力及び制動力を伴わず、直進移動している状態(具体的には、シフトポジションがニュートラルであり且つブレーキ操作が行われていない状態且つステアリング操作が行われていない状態)は前後方向および左右方向に加速度が生じていないと判断でき、センサ診断処理を許容する構成とすることも可能である。
【0064】
(5)上記各実施の形態では、ブレーキ用加速度センサ22からの検出情報と、変速制御用加速度センサ32及びカーナビ用加速度センサ62からの検出情報とに誤差が生じている場合に、その誤差を補完するようにして補正値を設定する構成としたが、この補正値に上限を設けてもよい。また、補正値の上限は必ずしも固定式とする必要なく、温度特性マップ等によって状況に応じて変更される構成とすることも可能である。
【0065】
(6)上記各実施の形態では、エンジンルーム内の温度を測定するエンジンルーム用温度センサ41によって、ブレーキ用加速度センサ22の配設箇所の温度と、変速制御用加速度センサ32の配設箇所の温度をまとめて測定する構成としたが、各加速度センサ22,32に対応させて温度センサを個別に設けてもよい。
【0066】
また、加速度センサの設置箇所の温度を直接測定するのではなく、他の車両情報に基づいて温度を推定する構成とすることも可能である。
【0067】
(7)上記各実施の形態では、変速制御用加速度センサ32からの検出情報とカーナビ用加速度センサ62からの検出情報とから算出された平均値を用いてブレーキ用加速度センサ22からの検出情報との誤差の比較を行う構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ブレーキ用加速度センサ22以外の複数の加速度センサからの検出情報のうち最大となるもの又は最小となるものを比較対象とすることも可能である。
【0068】
(7)上記各実施の形態においては、車両10に搭載されている各種ユニットに付属の加速度センサから検出情報を取得する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、ポータブルナビゲーションやスマートフォン等の携帯端末に内蔵された加速度センサから検出情報を取得する構成としてもよい。
【0069】
この場合、車両10における携帯端末の設置位置を及び設置方向のばらつきを抑えるべく、携帯端末置き場を設け、当該携帯端末置き場に所定の向きで携帯端末が配置されていることを条件として、携帯端末に内蔵の加速度センサからの検出情報の利用を許容する構成とするとよい。
【符号の説明】
【0070】
10…車両、12…ECU、22…ブレーキ用加速度センサ、62…カーナビ用加速度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6