【解決手段】固定部材20と、固定部材20に対して閉位置30aと開位置30bとに移動可能とされている蓋30と、蓋30の固定部材20に対する位置を検知するセンサ40と、モータ51を備えておりモータ51を駆動させて蓋30の開閉動を行う駆動機構50と、を有し、蓋30を直接閉位置30aと開位置30bの一方から他方側に手動で動かしたときに、センサ40で蓋30の動きを検知し、駆動機構50のモータ51が作動して蓋30を前記他方の位置まで動かす、車両用電動開閉装置10。
【背景技術】
【0002】
グローブボックスは、自動車の内装部品の一つであり、助手席搭乗者の前方膝付近に設置される収納スペースと、該収納スペースの開口を覆う蓋からなる。グローブボックスが電動式でない場合(手動式の場合)、グローブボックスを開けるときは蓋に取付けられているロック機構を解除することで自重によって蓋が開く。その際に自由落下をさせて蓋を勢いよく開いてしまうと騒音問題による品質低下や内容物、グローブボックス本体の破損につながるので、ダンパを設けて蓋の開く速度を抑制している。閉じる際は、ロック機構によるロックがかかるまで蓋を手で持ち上げる。
【0003】
従来のグローブボックスでは蓋を閉める場合は手でロック機構によるロックがかかる位置まで蓋を持ち上げる必要があり、操作性上で改善の余地があるだけでなく、操作の仕方によってはロックがかからずにまた蓋が開いてしまうという煩わしさが発生するおそれがある。
【0004】
上記問題点を解消し得る技術として、特開平5−294186号公報開示の技術がある。該公報は、蓋を電動で開閉する技術を開示しており、具体的には、開閉スイッチを操作することで、モータを備える駆動機構を作動させて蓋を開閉する技術を開示している。
しかし、該公報開示の技術では、開閉スイッチを要するため、装置の意匠性を向上させる点において改善の余地がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明実施例の車両用電動開閉装置を、図面を参照して、説明する。なお、図において、FRは車両前方を示し、UPは上方を示す。
【0011】
本発明実施例の車両用電動開閉装置(以下、単に開閉装置または装置ともいう)10は、たとえば、車両の助手席前方でインストルメントパネル部位に配置される車両用グローブボックス装置である。ただし、開閉装置10は、車両用グローブボックスの上方に配置される車両用アッパボックス装置であってもよく、車両の運転席と助手席の間に配置される車両用コンソールボックス装置であってもよく、その他の車両用カップホルダ装置や車両用小物入れ装置等の蓋を有する装置であってもよい。以下、本発明実施例と図示例では、開閉装置10が車両用グローブボックス装置である場合を例にとって説明する。
【0012】
開閉装置10は、
図1に示される固定部材20、蓋30を有し、
図3に示されるセンサ40を有し、
図1に示される駆動機構50を有する。
【0013】
固定部材20は、インストルメントパネルに固定される部材である。固定部材20は、
図2に示すように、車両後方(車室側)端に開口21aを有する収容部21を備える。
【0014】
蓋30は、収容部21の開口21aを開閉する。蓋30は、小物類を収納可能な図示略のボックス部を備えていてもよい。蓋30の固定部材20に対する移動は回動である。ただし、蓋30の固定部材20に対する移動は、回動に限定されるものではなく、スライド動(直線動)であってもよい。以下、本発明実施例および図示例では、蓋30の固定部材20に対する移動が回動である場合を示す。蓋30は、固定部材20に対して、回動軸芯Pまわりに、開口21aを閉塞する閉位置30aと該閉位置30aから車室側に移動して開口21aを解放する開位置30bとに、可動に支持されている
【0015】
蓋30は、
図1に示すように、本体部31と、本体部31の左右方向両端部(幅方向両端部)から収容部21の左右外側(装置幅方向外側)で固定部材20側(車両前側)に延びるアーム部32と、を備える。
【0016】
本体部31は、蓋30の、収容部21の開口21aを開閉する部分である。アーム部32は、本体部31に固定されており、本体部31とともに動く。アーム部32は、本体部31に一体に形成されていてもよい。
【0017】
センサ40は、蓋30の固定部材20に対する開閉位置を検知するために設けられる。センサ40は、
図3に示すように、たとえばスライドセンサである。ただし、センサ40は、回転式のボリュームセンサ、エンコーダ等であってもよい。センサ40は、固定部材20に固定して取付けられるセンサベース41と、センサベース41に摺動可能に支持される摺動ピン42と、を備える。摺動ピン42の一部は、蓋30のアーム32に設けられる溝32a内に挿入されており、蓋30が固定部材20に対して移動すると、摺動ピン42も連動してセンサベース41に対して動くようになっている。このため、センサ40で蓋30の固定部材20に対する動きを検知できる。
【0018】
駆動機構50は、
図1に示すように、モータ51を備えており、モータ51を駆動させて蓋30の開閉動を行う機構である。駆動機構50は、
図8、
図9に示すように、モータ51およびギア52がセットになったギアボックス53と、
図4に示すように、制御基板54と、マイコン55と、モータ駆動IC56と、を備える。
【0019】
モータ51は要求される力に応じて、1個のみ設けられていてもよく、2個以上設けられていてもよい。ギア52は、
図9に示すように、モータ51の出力軸51aに取り付けられるウォームギア52aと、ギアボックス53の出力軸53aに取付けられるボックス側ギア52bと、ギアボックス53の出力軸53aに取付けられており蓋30のアーム部32に形成されるアーム側ギア32b(
図3参照)と噛合するギア52cと、クラッチギア52dと、を備える。なお、
図9において、符号52e,52fはスペーサであり、符号52gはワッシャである。
【0020】
モータ51の出力軸51aの延び方向と、ギアボックス53の出力軸53aの延び方向とは互いに直交している。クラッチギア52dは、第1ギア52d1と、第1のギア52d1に対して所定の力以上の力がかかった際に相対回転する第2ギア52d2と、を備える。第1ギア52d1は、ウォームギア52aと噛合する。第2ギア52d2は、ボックス側ギア52bと噛合する。
【0021】
モータ51を駆動させると、モータ出力軸51aが回転してウォームギア52aが回転する。これに伴い、ウォームギア52aとクラッチギア52dの第1ギア52d1が噛合うため、クラッチギア52dが回転し、クラッチギア52dの第2ギア52d2と噛合うボックスギア52bが回転する。ボックス側ギア52bが回転すると、ギアボックス出力軸53aが回転し、ギアボックス出力軸53aに取付けられるギア52cが回転する。よって、ギア52cとアーム側ギア32bが噛合うため、蓋30が固定部材20に対して回動(開閉)する。
【0022】
ウォームギア52aをモータ出力軸51aに設定することで高い減速比を得ることができ、ギアボックス53に設けられるギア52の小型、小規模化を実現している。また、ウォームギア52aの設定によって、モータ出力軸51aの延び方向とギアボックス53の出力軸53aの延び方向とを互いに直交させることができ、蓋30の軸芯Pとモータ出力軸51aの軸芯とを互いに直交させることができる。これによって、ギアボックス53の装置幅方向(車両左右方向)の寸法を小さくすることができる。
【0023】
モータ51の回転によってウォームギア52aは、歯車の出力ベクトルを変更して、クラッチギア52dを介して回転軸が直交したギアボックス出力軸53aのボックス側ギア52bおよびギア52cを回すが、逆にギアボックス出力軸53aからの入力(蓋30からの入力)はウォームギア52aを圧迫するだけでウォームギア52aを回転させることができないので、蓋30を動かすことができず、車両の走行振動等で勝手に蓋30が動くことを防止している(セルフロックしている)。
しかし、このままでは手動で直接蓋30を開閉することができないので、クラッチギア52が設けられている。クラッチギア52dの第1、第2のギア52d1,52d2が互いに相対滑りするのに要する以上の力で手で蓋30を開閉するときには、クラッチが外れて蓋30が動くことができるようになっている。これによって、従来の手動式装置に存在していたロック機構を廃止することができている。
【0024】
制御基板54には、
図4に示すように、モータ51とセンサ40が接続されている。マイコン55と、モータ駆動IC56は、制御基板54に実装されている。マイコン55には、スライドセンサ40からの信号が送られる。マイコン55でモータ駆動ICを制御してモータ51を駆動する。蓋30を動かす(開閉させる)ために、マイコン55を実装した制御基板54にモータ51の正転、逆転、停止動作、センサ40の摺動ピン42位置によって変化する電圧の読み取りと電圧変化の検出をするプログラムが書き込まれる(
図6、
図7参照)。
【0025】
閉位置30aにある蓋30を開く場合、蓋30を手動で開き始めると、
図5の実線の矢印にて示すように、蓋30の動きに連動してセンサ40の摺動ピン42が動き、マイコン55がセンサ40から検出している電圧が上昇する。マイコン55がセンサ40から検出する電圧が上昇すると、
図6に示すステップ101を経てステップ102に移り、マイコン55は、
図7に示す制御を行う。具体的には、センサ電圧上昇のため、ステップ201からステップ202に移りモータ51正転判定する。これにより
図6に示すステップ103でモータ51正転回転させて蓋30を開く。モータ51正転中もマイコン55はセンサ40の電圧を監視しており、
図7に示すステップ203,204でセンサ40から検出される電圧が所定の上限(蓋30が開位置30bにあるときの値、たとえば4.5V)に達してモータ51停止判定するまで、モータ51を正転回転させる。検出される電圧が前記所定の上限を超えたら、ステップ203,204でモータ停止判定する。これにより
図6に示すステップ103でモータ停止させて蓋30のそれ以上の開動を止める。この時、蓋30は完全に開いた状態になる(開位置30bにある)。
【0026】
逆に、開位置30bにある蓋30を閉じる場合、蓋30を手動で閉じ始めると、
図5の点線の矢印にて示すように、蓋30の動きに連動してセンサ40の摺動ピン42が動き、マイコン55がセンサ40から検出している電圧が下降する。マイコン55がセンサ40から検出する電圧が下降すると、
図6に示すステップ101を経てステップ102に移り、マイコン55は、
図7に示す制御を行う。具体的には、センサ電圧下降のため、ステップ201からステップ205を経てステップ206に移りモータ51逆転判定する。これにより
図6に示すステップ103でモータ51逆転回転させて蓋30を閉じる。モータ51逆転中もマイコン55はセンサ40の電圧を監視しており、
図7に示すステップ207,208でセンサ40から検出される電圧が所定の下限(蓋30が閉位置30aにあるときの値、たとえば1V)に達してモータ51停止判定するまで、モータ51を逆転回転させる。検出される電圧が前記所定の下限を下回ったら、ステップ207,208でモータ停止判定する。これにより
図6に示すステップ103でモータ停止させて蓋30のそれ以上の閉動を止める。この時、蓋30は完全に閉じた状態になる(閉位置30aにある)。
【0027】
蓋30の開閉中に異物(人の手や物)が可動部に挟まるおそれがある。そのため、蓋30の開閉中に異物が可動部に挟まったとき、モータ51を停止させて噛み込みを防止し、蓋30を所定量(たとえば5mm)逆方向に回転させることで蓋30に異物が挟まった状態を解消し得る制御をマイコン55で実施している。詳しくは、マイコン55は一定時間ごとにセンサ40の電圧を読み取っており、
図5に示すように、モータ51が正転もしくは逆転している時は読み取った電圧が絶えず増加もしくは減少している。マイコン55は、モータ51が正転もしくは逆転している時にセンサ40の電圧が変動しなくなった時に、異物が挟まったと判断する。異物が挟まったと判断したマイコン55は、モータ51の回転を正転中なら逆転、逆転中なら正転に回転方向を変える。蓋30が所定量(たとえば5mm)分動いたらモータ51の回転を停止する。
また、センサ40もしくはモータ51に何らかの不具合があり、蓋30の開閉中にモータ51が回転し続ける状態で蓋30に異物が挟まっても、クラッチギア52が相対滑りすることで、モータ52の回転を止める力を逃がし、モータ52に過負荷がかかることを防止することができる。
【0028】
つぎに、本発明実施例の作用を説明する。
(A)蓋30を直接閉位置30aと開位置30bの一方の位置から他方の位置側に手動で動かしたときに、センサ40で蓋30の動きを検知し、駆動機構50のモータ51が作動して蓋30を前記他方の位置まで動かすため、従来と異なり開閉のためのスイッチは不要である。よって、従来に比べて部品点数を削減できるだけでなく、装置10の意匠性を向上できる。
【0029】
(B)本発明実施例では、従来の手動式の場合に設けられていたロック機構を廃止できるため、ロック機構のための部品、構造を廃止できる。また、ロック機構のロック・アンロック時の打音発生を抑制できる。
【0030】
(C)本発明実施例では、蓋30の開閉中に異物が可動部に挟まったとき、モータ51を停止させて噛み込みを防止し、蓋30を所定量(たとえば5mm)逆方向に回転させることで蓋30に異物が挟まった状態を解消し得る制御をマイコン55で実施している。そのため、装置10や異物の破損、変形を抑制できる。
【0031】
本発明実施例では、モータ51の制御にマイコン55を使用しているが、マイコン55を使用せずにICの組み合わせ回路でも同様の効果を得ることができる。