特開2016-222129(P2016-222129A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧
<>
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000003
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000004
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000005
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000006
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000007
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000008
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000009
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000010
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000011
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000012
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000013
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000014
  • 特開2016222129-走行制御装置、走行制御方法 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222129(P2016-222129A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】走行制御装置、走行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/182 20120101AFI20161205BHJP
   B60W 50/08 20120101ALI20161205BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20161205BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B60W30/182
   B60W50/08
   G08G1/16 F
   G08G1/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-110991(P2015-110991)
(22)【出願日】2015年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 応尚
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA29
3D241BA49
3D241BA70
3D241CD12
3D241CE04
3D241DD07Z
3D241DD08Z
5H181AA01
5H181BB05
5H181CC04
5H181CC11
5H181LL01
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
【課題】手動走行中の走行の安全性をより一層高めることを可能とする。
【解決手段】車両が手動走行制御状態の場合に、運転者の運転操作に対する集中を阻害する事項として設定された所定の集中阻害事項の発生を検知する。そして、手動走行制御状態の時に集中阻害事項が発生したことを検知すると、車両の制御状態を、手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換える。こうすれば、車両が手動走行制御状態の時に集中阻害事項が発生して、運転者の運転に対する注意力が一時的に低下した場合でも、車両の制御状態が自動走行制御状態に切り換わるので、走行の安全性を確保することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による運転操作に基づいて車両(1)の走行を制御する手動走行制御状態と、前記車両の周囲の状況を検出して、該周囲の状況に基づいて該車両の走行を制御する自動走行制御状態との何れかの制御状態で前記車両の走行を制御する走行制御装置(100、150)であって、
前記運転者による選択に応じて、前記手動走行制御状態または前記自動走行制御状態の何れかの前記制御状態で前記車両の走行を制御する走行制御部(101)と、
前記運転者の運転操作に対する集中を阻害する事項として設定された所定の集中阻害事項の発生を検知する集中阻害事項検知部(103)と、
前記制御状態が前記手動走行制御状態の時に前記集中阻害事項が発生したことを検知すると、該制御状態を該手動走行制御状態から前記自動走行制御状態に切り換える制御状態切換部(102)と
を備える走行制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行制御装置であって、
前記制御状態切換部は、前記制御状態が前記手動走行制御状態の時に前記集中阻害事項が発生したことを検知すると、該集中阻害事項が検知されなくなるまで、前記制御状態を前記自動走行制御状態に保持する切換部である
走行制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の走行制御装置であって、
前記集中阻害事項検知部は、前記運転者への電話の着信を、前記集中阻害事項として検知する検知部である
走行制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の走行制御装置であって、
前記車両には、該車両の車室内に向けて音声を出力するスピーカー(11)と該車室内の音声を集音する集音マイク(12)とが搭載されており、
予め登録された電話機と、前記スピーカーおよび前記集音マイクとの間で音声データを中継する音声データ中継部(105)を備え、
前記制御状態切換部は、前記電話への着信に伴って前記制御状態を前記自動走行制御状態に切り換えた後は、前記音声データ中継部による前記音声データの中継が終了するまで、該自動走行制御状態に保持する切換部である
走行制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の走行制御装置であって、
前記車両には、車載機器(8、9)と、前記運転者が該車載機器を操作するために操作する操作部(10)とが搭載されており、
前記操作部にされた操作を前記車載機器に中継する操作中継部(104)を備え、
前記集中阻害事項検知部は、前記操作部にされる操作を、前記集中阻害事項として検知する検知部である
走行制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の走行制御装置(150)であって、
前記集中阻害事項検知部は、複数種類の前記集中阻害事項についての発生を検知する検知部であり、
前記制御状態が前記手動走行制御状態の時に前記集中阻害事項が発生すると、該集中阻害事項の発生の前後での前記運転操作を検出することによって、前記集中阻害事項の前記運転操作に対する影響程度を、該集中阻害事項毎に評価する影響程度評価部(107)を備え、
前記制御状態切換部は、前記集中阻害事項検知部によって発生が検知された前記集中阻害事項の前記影響程度が、所定の閾値以上の前記集中阻害事項であった場合に、前記制御状態を前記手動走行制御状態から前記自動走行制御状態に切り換える切換部である
走行制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の走行制御装置であって、
地図データの走行経路に対応した基準運転操作を記憶している基準運転操作記憶部(106)を備え、
前記影響程度評価部は、前記運転操作と前記基準運転操作との偏差を、前記集中阻害事項の発生の前後で比較することによって、前記集中阻害事項の前記運転操作への影響程度を評価する評価部である
走行制御装置。
【請求項8】
運転者による運転操作に基づいて車両(1)の走行を制御する手動走行制御状態と、前記車両の周囲の状況を検出して、該周囲の状況に基づいて該車両の走行を制御する自動走行制御状態との何れかの制御状態で、前記車両の走行を制御する走行制御方法であって、
前記制御状態が前記手動走行制御状態であるか否かを判断する工程(S100)と、
前記制御状態が前記手動走行制御状態である場合に、前記運転者の運転操作に対する集中を阻害する事項として設定された所定の集中阻害事項の発生を検知する工程(S101、S110)と、
前記手動走行制御状態での制御中に前記集中阻害事項が発生したことを検知すると、前記制御状態を、前記手動走行制御状態から前記自動走行制御状態に切り換える工程(S103、S112)と
を備える走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動走行制御状態と自動走行制御状態とを切り換えて車両の走行を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる自動走行技術の進歩により、今日では自動車が周囲の状況を把握して自動で運転操作を行う自動走行が可能となりつつある。たとえば、高速道路などのように自動走行に適した走行環境では、前方を走行する車両や、走行中の車線などを自動で認識しながら、予め設定された目的地まで安全に走行することができる。
また、市街路などのように複数の車両が行き交うような走行環境では、単に車両の位置や進行方向を認識するだけでなく、それらの車両が互いを避け合う動きを予測することによって、自動走行による走行の安全性を高めようとする技術も提案されている(特許文献1)。
【0003】
もっとも、混雑した市街路などでは、たとえば路側帯が明確に識別できなかったり、あるいは飛び出しなどに対する予測運転が必要とされたりするなど、高度な状況判断が必要とされるので、自動走行では十分な走行の安全性を確保することは難しい。このため、このような走行環境では、依然として、運転者が手動走行した方が安全に走行することが可能と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−221667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、運転者も常に運転に集中できるわけではなく、何らかの理由で一時的に注意力が低下することがあり、注意力が低下している間は、手動走行によっても走行の安全性が十分に確保されるわけではないという問題があった。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に鑑みてなされたものであり、手動走行中の走行の安全性をより一層高めることを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明の走行制御装置および走行制御方法は、車両が手動走行制御状態の場合に、運転者の運転操作に対する集中を阻害する事項として設定された所定の集中阻害事項の発生を検知する。そして、手動走行制御状態の時に集中阻害事項が発生したことを検知すると、車両の制御状態を、手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換える。
こうすれば、車両が手動走行制御状態の時に集中阻害事項が発生して、運転者の運転に対する注意力が一時的に低下した場合でも、車両の制御状態が自動走行制御状態に切り換わるので、走行の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の走行制御装置100を搭載した車両1を示す説明図である。
図2】本実施例の走行制御装置100の内部構成を示すブロック図である。
図3】本実施例の走行制御装置100が走行制御状態を切り換えるために実行する走行制御状態切換処理の一部を示すフローチャートである。
図4】走行制御状態切換処理の残りの部分を示すフローチャートである。
図5】車両1に搭載された操作部10を例示した説明図である。
図6】一時的に自動走行制御状態に切り換える旨の表示を例示した説明図である。
図7】一時的に切り換えた自動走行制御状態を手動走行制御状態に復帰させる旨の表示を例示した説明図である。
図8】変形例の走行制御装置150の内部構成を示すブロック図である。
図9】変形例の走行制御装置150が集中阻害事項を学習するために実行する集中阻害事項学習処理の一部を示すフローチャートである。
図10】集中阻害事項学習処理の残りの部分を示すフローチャートである。
図11】基準運転操作についての説明図である。
図12】電話の着信を受けて通話した後、切断するまでの間に行った実際の運転操作と基準運転操作とを比較した結果を例示した説明図である。
図13】集中阻害事項を学習する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために実施例について説明する。
A.装置構成 :
図1には、本実施例の走行制御装置100を搭載した車両1の大まかな構成が示されている。図1(a)に示されるように車両1には、走行制御装置100に加えて、ステアリングハンドル2や、ステアリングシャフト3、アクセルペダル4、ブレーキペダル5、車載カメラ7、ナビゲーション装置8などが搭載されている。
【0010】
ステアリングシャフト3には、ステアリングハンドル2の操舵角を検出する操舵角センサー3sや、ステアリングシャフト3を回転駆動するハンドル駆動部3aが搭載されている。また、アクセルペダル4には、アクセルペダル4の踏み込み量を検出するアクセルセンサー4sや、アクセルペダル4を駆動するアクセル駆動部4aが搭載されている。更に、ブレーキペダル5には、ブレーキペダル5の踏み込み量を検出するブレーキセンサー5sや、ブレーキペダル5を駆動するブレーキ駆動部5aが搭載されている。また、車両1には、タイヤあるいは車軸の回転を検出することによって車速を検出する車速センサー6sも搭載されている。
【0011】
操舵角センサー3sや、アクセルセンサー4s、ブレーキセンサー5s、車速センサー6sは走行制御装置100に接続されている。また、走行制御装置100には、車載カメラ7やナビゲーション装置8も接続されている。走行制御装置100は、これら各種センサーからの出力や、車載カメラ7によって撮影された画像や、ナビゲーション装置8などからの情報に基づいて車両1の走行状況を把握する。そして走行制御装置100は、その結果に基づいて、運転者の運転操作を支援したり、あるいはハンドル駆動部3aや、アクセル駆動部4a、ブレーキ駆動部5aを駆動することによって自動走行したりすることも可能となっている。
【0012】
図2には、本実施例の走行制御装置100の大まかな内部構造が示されている。図示されるように走行制御装置100は、走行制御部101と、制御状態切換部102と、集中阻害事項検知部103と、操作中継部104と、無線中継部105とを備えている。尚、これらの「部」は、走行制御装置100が車両1の走行を制御するために備える機能に着目して、走行制御装置100の内部を便宜的に分類した抽象的な概念である。従って、走行制御装置100がこれらの「部」に物理的に区分されることを表すものではない。これらの「部」は、CPUで実行されるコンピュータープログラムとして実現することもできるし、LSIやメモリーを含む電子回路として実現することもできるし、更にはこれらを組合せることによって実現することもできる。
【0013】
走行制御部101は、車両1の走行に関する制御全般を司る機能を有している。上述したように本実施例の走行制御装置100は、車両1を自動走行させることが可能であるが、この機能は主に走行制御部101によって実現されている。また、車両1が手動走行している場合は運転者の運転操作を支援することも可能であるが、この機能も主に走行制御部101によって実現されている。このことに対応して、本実施例の走行制御部101が車両1の走行を制御する制御状態には、手動走行制御状態と自動走行制御状態の2つの制御状態が設けられている。
手動走行制御状態では、走行制御部101は、操舵角センサー3sや、アクセルセンサー4s、ブレーキセンサー5s、車速センサー6s、車載カメラ7、ナビゲーション装置8などから取得した情報を利用して、運転者の運転操作を支援するための各種処理を実行する。
一方、自動走行制御状態では、走行制御部101は、操舵角センサー3sや、アクセルセンサー4s、ブレーキセンサー5s、車速センサー6s、車載カメラ7、ナビゲーション装置8などから取得した情報に基づいて、車両1の周囲の状況や、車両1の状態、更には走行位置などを把握する。そして、その結果に基づいてハンドル駆動部3aや、アクセル駆動部4a、ブレーキ駆動部5aなどを駆動することによって自動走行を実現する。
【0014】
また、走行制御部101は、通常は手動走行制御状態となっているが、運転者によって自動走行制御状態が選択されると、現在の走行位置が自動走行に適しているか否かを判断して、自動走行に適していれば、手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換える。本実施例のナビゲーション装置8には自動走行に適さない領域が予め記憶されており、走行制御部101は、この情報に基づいて、現在の走行位置が自動走行に適した領域か否かを判断することができる。
【0015】
加えて、本実施例の走行制御装置100では、運転者によって自動走行制御状態が選択されておらず、しかも、現在の走行位置が自動走行に適していなかった場合でも、制御状態を、一時的に手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換えることがある。図2中に示された制御状態切換部102および集中阻害事項検知部103は、このことに対応して設けられているものである。
【0016】
先ず、集中阻害事項検知部103は、手動走行制御状態である旨の情報を走行制御部101から受け取ると、運転者の運転に対する集中を妨げるような所定事項(集中阻害事項)が発生したか否かを監視する。集中阻害事項としては、たとえば運転者に対する携帯電話の着信や、ナビゲーション装置8、車両1に搭載されたオーディオ機器9に対する操作など、所定事項が予め設定されている。尚、本実施例では、ナビゲーション装置8やオーディオ機器9が、本発明の「車載機器」に対応する。
集中阻害事項検知部103は、予め登録された携帯電話20と無線を介してデータを送受信する無線中継部105に接続されており、無線中継部105からの情報を取得することによって、携帯電話20への着信などを検知することができる。
【0017】
また、無線中継部105は、携帯電話20から受け取った音声データを、車両1に搭載されたスピーカー11から出力したり、車両1に搭載された集音マイク12が拾った音声データを携帯電話20に出力したりすることもできる。
更に、無線中継部105は、運転者に依って操作される操作部10にも接続されている。このため、集中阻害事項検知部103は、無線中継部105からの信号を受け取ることによって、携帯電話20への着信や、運転者が操作部10を操作することに伴う通話の開始や通話の切断などを検知することができる。
【0018】
また、集中阻害事項検知部103は、運転者によって操作されるボタン類などの操作部10が操作された旨の情報をナビゲーション装置8やオーディオ機器9に中継する操作中継部104にも接続されている。このため集中阻害事項検知部103は、操作中継部104から情報に基づいて、運転者がナビゲーション装置8やオーディオ機器9を操作したことを検知することができる。
そして集中阻害事項検知部103は、走行制御部101が手動走行制御状態で制御している時に、予め設定しておいた集中阻害事項が発生したことを検知すると、その旨を制御状態切換部102に通知する。
【0019】
制御状態切換部102は、集中阻害事項が発生した旨の通知を受けると、車両1に搭載された液晶画面などの表示部13に、制御状態を手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換える旨を表示する。続いて、走行制御部101に対して、制御状態を手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換える旨の信号を出力する。すると、走行制御部101は、制御状態を手動走行制御状態から、一時的に、自動走行制御状態に切り換える。
【0020】
こうすれば、手動走行制御状態での制御中に、運転者の運転操作に対する集中を妨げるような事柄が生じた場合には、一時的に手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換わるので、走行の安全性を確保することができる。もちろん、自動走行に適さない領域を走行中に集中阻害事項が発生する場合も起こり得る。しかし、このような場合でも、一時的に自動走行するのであれば、運転者が運転操作に対する集中を欠いた状態で手動走行するよりも、走行の安全性を確保することが可能となる。
以下では、このようなことを実現するために、本実施例の走行制御装置100の内部で行われている処理について詳しく説明する。
【0021】
B.走行制御状態切換処理 :
図3および図4には、本実施例の走行制御装置100が、手動走行制御中に制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える走行制御状態切換処理のフローチャートが示されている。
図3に示されるように、走行制御状態切換処理を開始すると、先ず始めに、現在の制御状態が手動走行制御状態であるか否かを判断する(S100)。上述したように、走行制御装置100は、手動走行制御状態または自動走行制御状態の何れかで車両1の走行を制御するから、走行制御装置100は現在の制御状態が何れであるかを直ちに判断することができる。
その結果、現在の制御状態が手動走行制御状態ではないと判断した場合は(S100:no)、既に自動走行制御状態となっているので、手動走行制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える為の以下の処理は不要となる。そこで、処理の先頭に戻って、再び、制御状態が手動走行制御状態であるか否かを判断する(S100)。
【0022】
このような判断を繰り返しているうちに、制御状態が手動走行制御状態であると判断されたら(S100:yes)、今度は、操作部10への操作を検知したか否かを判断する(S101)。
図5には、本実施例の車両1に搭載されている操作部10が例示されている。たとえば、ステアリングハンドル2には、着信した電話に応答する際に操作される操作ボタン10aや、通話を終了して接続を切断する際に操作される操作ボタン10bが搭載されている。また、車両1のダッシュボードには、各種の情報を表示する表示部13として液晶画面が搭載されており、液晶画面の左右には、複数の操作ボタン10c、10d、10e、10fや、操作ツマミ10gが搭載されている。
表示部13は、ナビゲーション装置8の表示画面や、オーディオ機器9の操作画面も兼ねている。そして、表示部13がナビゲーション装置8の表示画面として使われている場合は、操作ボタン10c〜10fや操作ツマミ10gには、ナビゲーション装置8を操作するための機能が割り当てられる。また、表示部13がオーディオ機器9の操作画面として使われている場合は、操作ボタン10c〜10fや操作ツマミ10gには、オーディオ機器9を操作するための機能が割り当てられる。
【0023】
図3のS101では、これらの操作ボタン10a〜10fや操作ツマミ10gが操作されたか否かを判断する。その結果、これらの操作ボタン10a〜10fや操作ツマミ10gの何れも操作されていない場合は(S101:no)、予め登録されている携帯電話20への着信を検知したか否かを判断する(S110)。図2を用いて前述したように、走行制御装置100は携帯電話20と無線によってデータを送受信することが可能であり、携帯電話20に着信があれば、そのことを直ちに認識することができる。
【0024】
その結果、携帯電話20への着信も検知されなかった場合は(S110:no)、運転者の運転操作に対する集中を妨げる事項(集中阻害事項)は発生していないものと判断する。すなわち、本実施例では、集中阻害事項として、操作部10への操作や、携帯電話20への着信が予め設定されているので、これらが検知されなければ、集中阻害事項は発生していないと判断することができる。もちろん、集中阻害事項はこれらの事項に限られるものではなく、必要に応じて他の事項を集中阻害事項として設定しておいても構わない。
そして、集中阻害事項が発生していない場合は(S101:no且つS110:no)、運転を終了するか否かを判断し(S109)、運転を終了しない場合は(S109:no)、処理の先頭に戻って、再び、手動走行制御中か否かを判断する(S100)。
【0025】
これに対して、操作部10への操作を検知した場合は(S101)、運転者がナビゲーション装置8あるいはオーディオ機器9を操作しようとしており、運転操作に対する集中が損なわれているものと考えられる。
そこで、制御状態を、手動走行制御状態から自動走行制御状態に一時的に切り換えることとして、そのことを運転者に報知するための表示を表示部13の画面上に出力する(S102)。図6には、表示部13の画面上に、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える旨が表示されている様子が例示されている。
【0026】
その後、制御状態を手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換えた後(S103)、走行制御装置100に内蔵されているタイマーを起動することによって、自動走行時間の計時を開始する(S104)。ここで、自動走行時間とは、集中阻害事項が発生したために、制御状態が自動走行制御状態に切り換わってからの経過時間である。
【0027】
続いて、操作部10への操作が検知されなくなったか否か、すなわち、所定時間(たとえば5秒間)の間に再び操作部10が操作されるか否かを判断する(S105)。その結果、操作部10への操作が検知されなくなった場合は(S105:yes)、運転者の運転操作に対する集中を妨げる集中阻害事項が無くなったものと考えてよい。そこで、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了する旨を、表示部13の画面上に表示した後(S107)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させる(S108)。
図7には、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了する旨の表示が、表示部13の画面上に出力された様子が例示されている。
【0028】
これに対して、所定時間(たとえば5秒間)の間に再び操作部10への操作が検知された場合は(S105:yes)、集中阻害事項が無くなっていないと考えられる。
そこで今度は、自動走行時間が所定の閾値時間(たとえば20秒間)に達したか否かを判断する(S106)。すなわち、本実施例の走行制御装置100は、手動走行中に集中阻害事項が発生すると、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換えることによって走行の安全性を確保する。
このとき、車両1が走行中の道路が自動走行に適さない道路であっても、それまでは運転者によって安全に走行されているので、短時間であれば自動走行によっても安全に走行することができると考えられる。しかし、自動走行に適さない道路である以上、自動走行している時間が長くなると走行の安全性を確保することが困難になると考えられる。
そこで、操作部10への操作が継続していると判断された場合には(S105:no)、自動走行時間が所定の閾値時間に達したか否かを判断するのである(S106)。
【0029】
その結果、自動走行時間が閾値時間に達していない場合は(S106:no)、自動走行制御状態を継続したまま、再び、操作部10への操作が検知されなくなったか否かを判断する(S105)。
これに対して、自動走行時間が閾値時間に達した場合は(S106:yes)、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了させるべく、表示部13の画面上にその旨の表示(図7参照)を出力した後(S107)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させる(S108)。
【0030】
尚、自動走行時間が閾値時間に達した場合は(S106:yes)、制御状態を手動走行制御状態に復帰させる旨の表示を表示部13に表示させることに加えて、その旨の音声をスピーカー11から出力するようにしても良い。
自動走行時間が閾値時間に達した場合は(S106:yes)、運転者が操作部10への操作を続けている場合でも、制御状態が手動走行制御状態に復帰する。従って、その旨を音声によっても報知すれば、制御状態が手動走行制御状態に復帰することを、運転者に確実に認識させることが可能となる。
【0031】
以上では、手動走行制御状態で操作部10への操作が検知された場合に(S101:yes)、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える処理(S102〜S108)について説明した。これに対して、手動走行制御状態で携帯電話20への着信が検知された場合には(S110:yes)、次のようにして、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える。
【0032】
先ず、図6に例示したように、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換える旨の表示を、表示部13の画面上に出力する(図4のS111)。そして、制御状態を手動走行制御状態から自動走行制御状態に切り換えた後(S112)、自動走行時間の計時を開始する(S113)。
【0033】
その後、携帯電話20への着信が終了したか否かを判断する(S114)。着信が終了する事由としては、電話を掛けてきた相手が通話を諦めた場合の他に、着信に対して何らかの応答をした場合が考えられるが、S114では事由は問わずに、着信が終了したか否かを判断する。
その結果、着信が終了していない場合(すなわち、着信が継続している場合)は(S114:no)、自動走行時間が前述した閾値時間に達したか否かを判断する(S115)。その結果、閾値時間に達していない場合は(S115:no)、再び、着信が終了したか否かを判断する(S114)。
【0034】
着信があったときに、通話を開始したり、あるいは電話に出られない旨の応答メッセージを返信したりするなど、運転者が何らかの応答をしなければ、自動走行時間が閾値時間に達するまで、これらの判断を繰り返す(S114、S115)。
そして、自動走行時間が閾値時間に達したら(S115:yes)、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了させるべく、表示部13の画面上にその旨の表示(図7参照)を出力した後(図3のS107)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させる(S108)。
【0035】
一方、自走走行時間が閾値時間に達するよりも前に着信が終了した場合は(図4のS114:yes)、その着信の終了は、運転者が電話に出ることによって通話が開始されたことによるものか否かを判断する(S116)。
その結果、着信の終了が通話の開始によるものでは無かった場合は(S116:no)、電話を掛けてきた相手が通話を諦めたか、あるいは運転者が電話に出られない旨の応答メッセージを送信したなどの理由で、もはは集中阻害事項は無くなったものと考えて良い。そこで、この場合(S116:no)も、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了させる旨の表示(図7参照)を、表示部13の画面に出力した後(図3のS107)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させる(S108)。
【0036】
これに対して、着信の終了が通話の開始によるものであった場合は(S116:yes)、通話時間の計時を開始した後(S117)、通話が終了したか否かを判断する(S118)。通話が終了していない場合は(S118:no)、通話時間が許容時間に達したか否かを判断して(S119)、許容時間に達していなければ(S119:no)、再び、通話が終了したか否かを判断する(S118)。
このように通話が開始された場合には(S116:yes)、通話が終了するか(S118:yes)、通話時間が許容時間に達するまで(S119:yes)、こうした判断を繰り返す(S118、S119)。そして、通話が終了するか(S118:yes)、通話時間が許容時間に達したら(S119:yes)、一時的に切り換えていた自動走行制御状態を終了させる旨の表示(図7参照)を、表示部13の画面に出力した後(図3のS107)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させる(S108)。
【0037】
ここで、通話が終了した場合(S118:yes)に加えて、通話時間が許容時間に達した場合(S119:yes)も、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させるのは、次のような理由による。
すなわち、本実施例の走行制御装置100は、手動走行中に運転者が通話を開始すると、運転者の運転操作に対する注意力が低下する(すなわち集中が阻害される)ことが考えられるので、制御状態を一時的に自動走行制御状態に切り換えることによって走行の安全性を確保することができる。もっとも、車両1が走行中の道路が自動走行に適さない道路であった場合には、自動走行する時間が長くなると走行の安全性を確保することが困難になると考えられる。そこで、通話時間が許容時間に達した場合にも(S119:yes)、制御状態を自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させることとしているのである。
【0038】
尚、ここでは、通話が開始されたら(S116:yes)、必ず通話時間の計時を開始する(S117)ものとして説明した。しかし、車両1の走行位置が自動走行に適した領域にあった場合には、通話時間の計時を開始しないようにしても良い。すなわち、通話の内容によっては、運転者が通話の継続を希望する場合もあると考えられ、車両1の走行位置が自動走行に適した領域にあれば、通話が終了するまで自動倉庫制御状態を継続しても、走行の安全性が損なわれることはないと考えられる。
そこで、通話が開始されたら(S116:yes)、車両1の走行位置が自動走行に適した領域にあるか否かを判断して、自動走行に適した領域に無かった場合には、通話時間の計時を開始する(S117)ものとしてもよい。
【0039】
以上のようにして、制御状態を、自動走行制御状態から手動走行制御状態に復帰させたら(図3のS108)、運転を終了するか否かを判断する(S109)。そして、運転を終了しない場合は(S109:no)、処理の先頭に戻って、再び、手動走行制御中か否かを判断した後(S100)、上述した続く一連の処理(S101〜S119)を繰り返す。こうした処理を繰り返しているうちに、運転を終了すると判断したら(S109:yes)、図3および図4に示した走行制御状態切換処理を終了する。
【0040】
本実施例の走行制御装置100の内部では、以上のような走行制御状態切換処理が行われている。このため、運転者による手動走行中に、運転者の運転操作に対する集中を阻害するような事項が生じた場合でも、一時的に自動走行制御状態に切り換わって、走行の安全性を確保することが可能となる。
【0041】
C.変形例 :
上述した本実施例の走行制御装置100では、運転者の運転操作に対する集中を阻害する事項(集中阻害事項)は、適切な事項が予め設定されているものとして説明した。しかし、集中阻害事項は、運転者によって、あるいは走行環境などによって異なる可能性がある。そこで、こうしたことに対応可能とするために、集中阻害事項を学習することとしても良い。以下では、このような変形例の走行制御装置150について、上述した本実施例との相違点を中心として簡単に説明する。
【0042】
図8には、変形例の走行制御装置100の大まかな内部構成が示されている。変形例の走行制御装置150は、図2を用いて前述した本実施例の走行制御装置100に対して、基準運転操作記憶部106と、影響程度評価部107とが追加されたものとなっている。
【0043】
影響程度評価部107は、操作中継部104や無線中継部105に接続されており、運転者が操作部10を操作した旨や、携帯電話20への着信や、通話の開始や、通話の終了など、集中阻害事項になり得る多数の事項(学習対象事項)を検出することができる。そして、学習対象事項が発生すると、そのことが運転者の運転操作への集中に対して与える影響程度を評価して、その結果を学習する。影響程度を評価する方法の詳細については後述するが、大まかには次のようにして評価する。
【0044】
先ず、ナビゲーション装置8から、車両1が走行している現在位置を取得する。続いて、車両1の現在位置を標準的に走行した場合の運転操作(基準運転操作)を取得する。
基準運転操作記憶部106には、車両1の存在位置に対して基準運転操作が予め記憶されている。従って影響程度評価部107は、ナビゲーション装置8から取得した車両1の現在位置に対応して記憶されている基準運転操作を取得することができる。尚、基準運転操作については、後ほど詳しく説明する。
【0045】
そして、学習対象事項が発生した後に運転者によって実際に行われた運転操作(実運転操作)を、走行制御部101から取得して、基準運転操作と比較する。
その結果、実運転操作と基準運転操作とが乖離し易い場合(すなわち、実運転操作と基準運転操作との偏差が大きくなり易い場合)には、その学習対象事項は、運転者の運転操作に対する集中に影響を与えると考えることができる。これに対して、実運転操作と基準運転操作とが乖離しにくい場合(すなわち、実運転操作と基準運転操作との偏差が大きくなりにくい場合)には、その学習対象事項は、運転者の運転操作に対する集中に影響は与えていないと考えることができる。
【0046】
影響程度評価部107は、学習対象事項が発生する度に以上のような評価を行って、その結果を、学習対象事項毎に蓄積していく。そして、こうした評価を蓄積していった結果、運転者の運転操作に対する集中に影響を与え易いと考えられる学習対象事項については、集中阻害事項として集中阻害事項検知部103に設定する。
こうすれば、運転者や走行環境などの違いに応じて適切な集中阻害事項を設定することができる。その結果、運転者の運転操作に対する集中を妨げる事項が発生しているのに、手動走行から自動走行に切り換わらなかったり、あるいは、運転操作に対する集中を妨げないにも拘わらず、手動走行から自動走行に切り換わったりする事態を回避することができる。
【0047】
図9および図10には、変形例の走行制御装置150が集中阻害事項を学習するために実行する集中阻害事項学習処理のフローチャートが示されている。この処理は、変形例の走行制御装置150が、図3および図4に示した走行制御状態切換処理と並行して実行する処理である。
図示されるように集中阻害事項学習処理では、先ず始めに、学習対象事項が発生したか否かを判断する(S200)。学習対象事項としては、集中阻害事項となり得るできるだけ多くの事項を検出することが望ましい。ここでは、図5に例示した操作ボタン10a〜10fや操作ツマミ10gの何れかへの操作や、携帯電話20への着信などを、学習対象事項として検出する。もちろん、学習対象事項として検出する対象はこれらに限られるものではなく、他の事項を検出しても良い。
【0048】
その結果、学習対象事項が発生していない場合は(S200:no)、学習対象事項が発生するまで、同じ判断(S200)を繰り返す。
そして、学習対象事項が発生したら(S200:yes)、車両1が走行している現在位置、および現在位置での基準運転操作を取得する(S201)。本変形例では、車両1の現在位置は、ナビゲーション装置8から取得する。また、走行制御装置150に内蔵された図示しないメモリー(図8の基準運転操作記憶部106に相当)には、車両1の現在位置に対する基準運転操作が予め記憶されており、この基準運転操作を取得する。
尚、基準運転操作は、走行制御装置150に内蔵されたメモリーではなく、ナビゲーション装置8に記憶しておいてもよい。あるいは、車両1の現在位置は、ナビゲーション装置8から取得するのではなく、走行制御装置150が車両1の現在位置を検出する機能を搭載するようにしても良い。
【0049】
図11には、基準運転操作の概要が示されている。たとえば、図11(a)に例示した位置を車両1が走行しているとする。図示されるように、車両1の前方では道路が右方向にカーブしており、カーブを抜けると短い直線部分があって、その先では道路が左方向にカーブしている。
このことと対応して、図11(a)の現在位置に対しては、図11(b)に例示するような基準運転操作が記憶されている。すなわち、ステアリングハンドル2の操舵角については、暫くの間は操舵角が0度で、その後、右カーブに伴って操舵角が正の値となり、カーブを抜けると再び操舵角が0度となる。そして、その後は、左カーブに伴って操舵角が負の値となった後、再び操舵角が0度となる旨が記憶されている。
【0050】
また、このようなハンドル操作に伴って、アクセル踏込量およびブレーキ踏込量については、カーブに近付くに伴ってアクセル踏込量が減少していき、アクセル踏込量が0になると今度はブレーキ踏込量が増加していく。そして、カーブに入るとブレーキ踏込量が0になるとともに、アクセル踏込量が少しだけ増加し、カーブを抜ける手前になるとアクセル踏込量が更に増加する旨が記憶されている。
尚、本変形例では、基本運転操作として、操舵角や、アクセル踏込量、ブレーキ踏込量の3つの操作量を記憶しているものとして説明するが、これに限らず、他の操作量を基本運転操作として記憶しておいてもよい。
また、図11(b)中に破線で示したように、基本運転操作には、一定幅の許容範囲が設定されている。許容範囲が設定されている理由については後述する。
【0051】
以上のようにして、車両1の走行位置と、対応する基準運転操作とを取得したら(図9のS201)、変形例の走行制御装置150に内蔵されている図示しないタイマーを起動して、評価時間の計時を開始する(S202)。すなわち、学習対象事項が発生してから長い時間が経過した後に、運転者の運転操作が基準運転操作から大きく逸脱したとしても、その逸脱が学習対象事項の発生に起因すると言うことはできない。そこで、運転者の運転操作の評価範囲を、学習対象事項が発生してから所定時間の運転操作とするために、タイマーを起動して評価時間の計時を開始するのである。
そしてタイマーを起動したら(S202)、運転者が実際に行った運転操作(実運転操作)を取得した後(S203)、評価時間が所定時間に達したか否かを判断する(S204)。その結果、評価時間が所定時間に達していない場合は(S204:no)、再び実運転操作を取得した後(S203)、評価時間が所定時間に達したか否かを判断する(S204)。
【0052】
こうした操作を繰り返しているうちに、評価時間が所定時間に達したら(S204:yes)、所定時間が経過するまでの間に、実運転操作が基準運転操作の許容範囲を逸脱したか否かを判断する(S205)。すなわち、実運転操作と基準運転操作とが厳密に一致することは考えにくいので、基準運転操作に許容範囲を設けておき、この許容範囲を実運転操作が逸脱したか否かを判断するのである。
【0053】
図12には、電話の着信を受けて通話した後、切断するまでの間に行った運転者の実運転操作と基準運転操作とを比較した結果が例示されている。図中の太い実線は実運転操作を表しており、太い破線は基準運転操作を表している。また、図中の細い破線は、基準運転操作に対して設定されている許容範囲を表している。
尚、図12では、一例として、操舵角およびブレーキ踏込量についての実運転操作を示したが、アクセル踏込量などの他の実運転操作も取得されている。従って、以下の説明は、それらの実運転操作に対しても同様に当て嵌まる。
【0054】
たとえば、着信があった直後では、操舵角が少しぶれているが許容範囲を超える程ではない。また、ブレーキ踏込量には、明確な影響は見られない。
これに対して、着信した電話に応答する操作を行った場合は、右カーブに対するハンドル操作の操作開始が遅れ、その遅れを取り戻そうとして、その後のハンドル操作が大きくなり、その結果、操舵角が許容範囲から外れている。尚、着信した電話に応答する操作は、ここでは通話開始用のボタンを押す操作であるものとして説明するが、通話できない旨の応答メッセージを返す操作などでも構わない。
また、ブレーキ踏込量についても、着信に応答する操作を行った後は、右カーブの手前で減速するためのブレーキ操作が遅れている。その結果、その遅れを取り戻すために、その後のブレーキ操作が大きくなり、ブレーキ踏込量が許容範囲を外れている。
【0055】
こうして通話が開始された後も、右カーブを抜けてハンドルを戻す操作や、左カーブの手前でのブレーキ操作やハンドル操作が行われている。これらの運転操作が行われている間も通話は継続されているが、操舵角やブレーキ踏込量は基準運転操作の許容範囲内に収まっている。
一方、通話を切断する操作(たとえば通話終了用のボタンを押すなど)を行った場合は、左カーブから抜けるためのハンドル操作が少し遅れ、その影響で、その後のハンドル操作が少し大きくなり、ブレーキも軽く踏まれている。しかし、この場合も、操舵角やブレーキ踏込量は許容範囲内に収まっている。
従って、図12に示した例では、着信は運転者の実運転操作に大きな影響は与えないが、着信に対する応答は実運転操作に大きな影響を与えると考えることができる。また、通話や通話の切断については、実運転操作に大きな影響は与えないと考えることができる。
【0056】
図9のS205では、以上のようにして、実運転操作が基準運転操作の許容範囲を逸脱したか否かを判断する。
尚、以上の説明では、学習対象事項が発生してからの所定時間の実運転操作を記憶しておき、所定時間が経過した後に、実運転操作と基準運転操作とを比較して、実運転操作が許容範囲を逸脱しているか否かを判断するものとして説明した。
しかし、学習対象事項が発生したら、所定時間が経過するまでの間は、実運転操作を取得する度に実運転操作と基準運転操作とを比較して、実運転操作が許容範囲を逸脱しているか否かを判断して、その結果を記憶しておいても良い。そして、所定時間が経過したら、許容範囲を逸脱した旨の判断結果が記憶されているか否かを判断するようにしても良い。
【0057】
以上のようにして、S205の判断を行った結果、実運転操作が基準運転操作の許容範囲を逸脱していた場合は(S205:yes)、その学習対象事項の発生回数および逸脱回数のそれぞれに「1」を加算する(S206)。
これに対して、実運転操作が基準運転操作の許容範囲を逸脱していなかった場合は(S205:no)、学習対象事項の発生回数に「1」を加算する(S207)。
たとえば、図12に示した例では、「着信」、「応答」、「通話」、「切断」の4つの学習対象事項が発生しているが、それぞれの学習対象事項に対して次のような処理が行われる。先ず、「着信」に対しては、実運転操作が許容範囲を逸脱していない。そこで、S205では「no」と判断されて、「着信」という学習対象事項の発生回数に「1」を加算する(S207)。これに対して、「応答」に対しては実運転操作が許容範囲を逸脱している。そこで、S205では「yes」と判断されて、「応答」という学習対象事項の発生回数および逸脱回数のそれぞれに「1」を加算する(S207)。また、「通話」や「切断」に対しては、実運転操作が許容範囲を逸脱していないので、「通話」および「切断」というそれぞれの学習対象事項の発生回数に「1」を加算する(S207)。
【0058】
図13には、以上のようにして、学習対象事項毎に発生回数および逸脱回数を加算した結果が例示されている。図示した例では、携帯電話関係の学習対象事項として、「着信」、「応答」、「通話」、「切断」の4つに、「発信」を加えた5つの学習対象事項が設定されている。ここで「発信」とは、手動走行中に運転者が、いわゆるハンズフリー機能を用いて電話を掛ける操作である。これらの学習対象事項毎に、発生回数および逸脱回数が蓄積されていく。
また、オーディオ機器関係の学習対象事項としては、機能毎に、あるいは機能に対応する操作ボタン10a〜10fや操作ツマミ10g毎に、発生回数および逸脱回数が蓄積されていく。更には、ナビゲーション装置関係についても同様に、機能毎に、あるいは機能に対応する操作ボタン10a〜10fや操作ツマミ10g毎に、発生回数および逸脱回数が蓄積される。
【0059】
以上のようにして、発生した学習対象事項毎に発生回数および逸脱回数を蓄積したら(図9のS206またはS207)、今度は、学習対象事項毎の発生回数が所定の最低回数に達したか否かを判断する(S208)。
たとえば、図13に示した例では、携帯電話に関係する学習対象事項として、「着信」や、「応答」、「通話」、「切断」、「発信」という5つの学習対象事項についての発生回数が蓄積されているが、それぞれの学習対象事項についての発生回数を、所定の最低回数(たとえば、5回)と比較する。オーディオ機器関係やナビゲーション装置関係の学習対象事項についても同様に、それぞれの学習対象事項についての発生回数を、所定の最低回数と比較する。
【0060】
その結果、発生回数が最低回数に達していると判断された(図9のS208:yes)学習対象事項については、その学習対象事項について蓄積された逸脱回数を発生回数で除算することによって、逸脱率を算出する(S209)。
図13に示した例では、携帯電話に関係する学習対象事項の中で「着信」、「応答」、「通話」、「切断」という4つの学習対象事項について、発生回数が最低回数(ここでは5回)を超えているので、それぞれについて逸脱率が算出されている。これに対して、「発信」という学習対象事項については、発生回数が最低回数に達していないので、逸脱率は求められていない。
【0061】
その後、算出した逸脱率が、所定の閾値比率(たとえば30%)以上か否かを判断する(図10のS210)。図13に示した例では、携帯電話に関係する学習対象事項の中で「着信」および「応答」については、逸脱率が閾値比率を超えていると判断される(S210:yes)。これに対して「通話」や「切断」については、逸脱率が閾値比率を超えていないと判断される(S210:no)。また、「発信」についてはまだ逸脱率が算出されていないので、逸脱率は閾値比率を超えていないと判断される(S210:no)。
オーディオ機器関係やナビゲーション装置関係の学習対象事項についても、同様に判断する。
尚、学習対象事項について算出された逸脱率は、その学習対象事項が運転者の運転操作に対する影響の程度を表していると考えることができる。従って、本変形例の逸脱率は、本発明の「影響程度」に対応する。
【0062】
その結果、逸脱率が閾値比率を超えている(S210:yes)と判断された学習対象事項については、その学習対象事項が、集中阻害事項として既に設定されているか否かを判断する(S211)。
そして、集中阻害事項として設定されていない場合は(S211:no)、その学習対象事項を集中阻害事項として設定する(S212)。これに対して、その学習対象事項が既に集中阻害事項として設定されている場合は(S211:yes)、重ねて設定する必要は無いので、その学習対象事項を集中阻害事項として設定する処理(S212)は省略する。
【0063】
一方、逸脱率が閾値比率を超えていない(S210:no)と判断された学習対象事項についても同様に、その学習対象事項が、集中阻害事項として既に設定されているか否かを判断する(S213)。
そして、集中阻害事項として設定されている場合は(S213:yes)、逸脱率が閾値比率を超えていない(S210:no)にも拘わらず集中阻害事項として設定されていることになるので、その学習対象事項を集中阻害事項から削除する(S214)。これに対して、その学習対象事項が集中阻害事項として設定されていない場合は(S213:yes)、重ねて削除する必要は無いので、その学習対象事項を集中阻害事項から削除する処理(S214)は省略する。
【0064】
以上のようにして、逸脱率に応じて学習対象事項を集中阻害事項に設定したり(S212)、あるいは集中阻害事項から削除したり(S214)したら、集中阻害事項学習処理の先頭に戻って、再び、学習対象事項が発生したか否かを判断する(図9のS200)。その結果、学習対象事項が発生していない場合は(S200:no)、同様な判断を繰り返しながら、学習対象事項が発生するまで待機状態となる。そして、学習対象事項が発生したら(S200:yes)、上述した続く一連の処理(S201〜S214)を実行する。
【0065】
運転者の運転操作に対する集中に影響を与えやすい学習対象事項は、運転者によって、あるいは運転環境などによって異なることが考えられる。従って、画一的に集中阻害事項を設定したのでは、運転者の運転操作に対する集中度合いが低下しているにも拘わらず、手動走行から自動走行に切り換わらない事態が生じ得る。あるいは、運転者の運転操作に対する集中度合いが低下していないにも拘わらず、手動走行から自動走行に切り換わる事態が生じ得る。
この点で、上述した変形例の集中阻害事項学習処理で学習してやれば、運転者や運転環境などが異なっていても、運転者の運転操作に対する集中度合いが低下するタイミングで手動走行から自動走行に切り換えることができる。その結果、手動走行制御状態でも、走行の安全性を十分に確保することが可能となる。
【0066】
以上、本実施例および変形例について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、 3a…ハンドル駆動部、 3s…操舵角センサー、
4…アクセルペダル、 4a…アクセル駆動部、 4s…アクセルセンサー、
5…ブレーキペダル、 5a…ブレーキ駆動部、 5s…ブレーキセンサー、
6s…車速センサー、 7…車載カメラ、 8…ナビゲーション装置、
9…オーディオ機器、 10…操作部、 10a〜10g…操作ツマミ、
13…表示部、 20…携帯電話、 100…走行制御装置、
101…走行制御部、 102…制御状態切換部、 103…集中阻害事項検知部、
104…操作中継部、 105…無線中継部、 106…基準運転操作記憶部、
107…影響程度評価部、 150…走行制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13