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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222138(P2016-222138A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20161205BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B62D25/08 D
   B60R19/18 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-111200(P2015-111200)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】亀井 丈広
(72)【発明者】
【氏名】若林 充
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 重昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 悟志
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB08
3D203BB16
3D203BB34
3D203BB35
3D203BB38
3D203BC14
3D203CA23
3D203CA29
3D203CA34
3D203CA40
3D203CA53
3D203CA57
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA22
(57)【要約】
【課題】平面視で両端部が後方傾斜した形状のバンパレインを備えたものにおいて、衝突性能を確保する車両の前部車体構造を提供する。
【解決手段】バンパレイン20は、その両端部が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜しており、クラッシュカン16は、平面視で車幅方向外端18aの前端Bがフロントサイドフレーム5の車幅方向外端の前端Cよりも車幅方向外側に位置すると共に、クラッシュカン16の車幅方向内端17aの前端Dは、当該クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bよりも前方でバンパレイン20に結合されており、クラッシュカン16の車幅方向内端17aに脆弱部31が設けられたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びるバンパレインと、
上記バンパレインを左右一対のクラッシュカンを介して支持する左右一対のフロントサイドフレームと、
上記クラッシュカンを上記フロントサイドフレームに結合するセットプレートと、を備えた車両の前部車体構造であって、
上記バンパレインは、その両端部が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜しており、
上記クラッシュカンは、平面視で車幅方向外端の前端が上記フロントサイドフレームの車幅方向外端の前端よりも車幅方向外側に位置すると共に、
上記クラッシュカンの車幅方向内端の前端は、当該クラッシュカンの車幅方向外端の前端よりも前方で上記バンパレインに結合されており、
上記クラッシュカンの車幅方向内端に脆弱部が設けられたことを特徴とする
車両の前部車体構造。
【請求項2】
上記脆弱部は、上記クラッシュカンの車幅方向外端の前端に相当する位置において、上記クラッシュカンの車幅方向内端に設けられた
請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
上記セットプレートの車幅方向外端は、当該セットプレートの車幅方向内端よりも、車両前後方向の後方に位置しており、
上記クラッシュカンの車幅方向外端の後端部を上記セットプレートに連結する前後方向位置が、
上記クラッシュカンの車幅方向内端の後端部を上記セットプレートに連結する前後方向位置よりも、後方となるように形成された
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車幅方向に延びるバンパレインと、上記バンパレインを左右一対のクラッシュカンを介して支持する左右一対のフロントサイドフレームと、上記クラッシュカンを上記フロントサイドフレームに結合するセットプレートと、を備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の前部車体構造においては、図11の(a)に示すように、バンパレイン本体81とクロージングプレート82とから成るバンパレイン83を設け、このバンパレイン83を車幅方向に延設し、当該バンパレイン83を左右一対のクラッシュカン84(但し、図11の(a)では車両右側のクラッシュカンのみを示す)およびセットプレート85を介してフロントサイドフレーム86に連結している。
【0003】
上述のフロントサイドフレーム86は、フロントサイドフレームインナ87と、フロントサイドフレームアウタ88とを備え、これらの上下の各接合フランジ部を接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を形成したもので、該フロントサイドフレーム86の前端部にはセットプレート89が取付けられており、クラッシュカン84側のセットプレート85は、ボルト、ナット等の取付け部材を用いて、フロントサイドフレーム86側のセットプレート89に対して交換可能に取付けられている。
【0004】
そして、車両の軽衝突時にクラッシュカン84が変形、破損した際には、当該クラッシュカン84を容易に交換できるよう構成している。
また、上述のクラッシュカン84は平面視でその前後方向前側が拡幅形成されており、これにより、フロントサイドフレーム86よりも車幅方向外側から衝突荷重が入力した場合でも、クラッシュカン84の前側拡幅部における車幅方向外側で衝突荷重を受止めて、この荷重をフロントサイドフレームに伝達して、衝突エネルギを吸収すべく構成している。
【0005】
このような車両の前部車体構造において、図11の(a)に示すように、車両デザインの関係上、バンパレイン83の両端部(図11の(a)では右端部のみを示す)が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜するような形状を採用した場合には、新たな課題が発生する。
【0006】
すなわち、車両の衝突時に、図11の(a)に示す状態から図11の(b)に示すように、クラッシュカン84を潰しながらバンパレイン83が後退するが、クラッシュカン84の車幅方向外側が先に底付き変形するので、クラッシュカン84の車幅方向内側を有効に使い切ることができず、また、クラッシュカン84の車幅方向外側が底付いた後に、フロントサイドフレーム86に衝突荷重が伝わって、該フロントサイドフレーム86が変形するという、問題点があった。
【0007】
ところで、特許文献1には、フロントサイドフレームの前端部に、車両前方側が拡幅形成された衝撃吸収構造体(クラッシュカンに相当)を介して、押出成形品から成るバンパレインを取付けた前部車体構造が開示されているが、上述のバンパレインは車幅方向に真っ直ぐに延びており、該バンパレインの両端部は、平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜するものではないため、上述の如き課題は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005―22597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、平面視で両端部が後方傾斜した形状のバンパレインを備えたものにおいて、衝突性能を確保することができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車両の前部車体構造は、車幅方向に延びるバンパレインと、上記バンパレインを左右一対のクラッシュカンを介して支持する左右一対のフロントサイドフレームと、上記クラッシュカンを上記フロントサイドフレームに結合するセットプレートと、を備えた車両の前部車体構造であって、上記バンパレインは、その両端部が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜しており、上記クラッシュカンは、平面視で車幅方向外端の前端が上記フロントサイドフレームの車幅方向外端の前端よりも車幅方向外側に位置すると共に、上記クラッシュカンの車幅方向内端の前端は、当該クラッシュカンの車幅方向外端の前端よりも前方で上記バンパレインに結合されており、上記クラッシュカンの車幅方向内端に脆弱部が設けられたものである。
【0011】
上記構成によれば、クラッシュカンの車幅方向内端に脆弱部を設けたので、平面視で両端が後方傾斜した形状のバンパレインを備えたものにおいて、前突荷重入力時に上記クラッシュカンの車幅方向内端側を先に軸圧縮させ、その後、クラッシュカンの車幅方向内端側と車幅方向外端側とを車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮させることができて、安定した衝突エネルギの吸収が可能となる。
この結果、車両デザインの確保と、衝突性能の確保との両立を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記脆弱部は、上記クラッシュカンの車幅方向外端の前端に相当する位置において、上記クラッシュカンの車幅方向内端に設けられたものである。
【0013】
上記構成によれば、前突荷重入力時に、まずクラッシュカンの脆弱部までの車幅方向内端が先に軸圧縮し、その後、クラッシュカンの車幅方向内端と車幅方向外端とが可及的同等のタイミングで軸圧縮する際、上記位置に脆弱部を設けることで、クラッシュカンの車幅方向内端と車幅方向外端とが車両前後位置においてより一層近いタイミングで軸圧縮し始めるため、さらに安定した衝突エネルギの吸収が可能となる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記セットプレートの車幅方向外端は、当該セットプレートの車幅方向内端よりも、車両前後方向の後方に位置しており、上記クラッシュカンの車幅方向外端の後端部を上記セットプレートに連結する前後方向位置が、上記クラッシュカンの車幅方向内端の後端部を上記セットプレートに連結する前後方向位置よりも、後方となるように形成されたものである。
【0015】
上記構成によれば、上記クラッシュカンの車幅方向外端の前後方向長さを所定量確保することにより、前突荷重入力時にバンパレインが後方傾斜した状態でクラッシュカンが軸圧縮した場合でも、早いタイミングでのクラッシュカンの車幅方向外端の底付きを抑制することができ、クラッシュカンの車幅方向内端の衝突エネルギ吸収機能を充分に使い切ることができ、クラッシュカンで確実にエネルギ吸収することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、平面視で両端が後方傾斜した形状のバンパレインを備えたものにおいて、前突荷重入力時に上記クラッシュカンの車幅方向内端側を先に軸圧縮させ、その後、クラッシュカンの車幅方向内端側と車幅方向外端側とを車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮させることができて、安定した衝突エネルギの吸収が可能になる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の車両の前部車体構造を示す平面図
図2図1の要部拡大図
図3図2のA−A線矢視断面図
図4】(a)は本実施例の衝突前の状態を示す平面図、(b)はクラッシュカンの車幅方向内端側の軸圧縮状態を示す平面図、(c)はクラッシュカンの車幅方向内外両端側の軸圧縮状態を示す平面図。
図5】車両の前部車体構造の他の実施例を示す斜視図
図6図5の要部の側面図
図7図5の要部拡大平面図
図8図5の車両の前部車体構造を、車幅方向内側かつ斜め前方上部から見た状態で示す斜視図
図9図5の車両の前部車体構造を、車幅方向外側かつ斜め前方上部から見た状態で示す斜視図
図10図5の車両の前部車体構造を、車幅方向外側かつ斜め後方上部から見た状態で示す斜視図
図11】(a)は従来の車両の前部車体構造における衝突前の平面図、(b)はその衝突後の平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
平面視で両端が後方傾斜した形状のバンパレインを備えたものにおいて、前突荷重入力時に上記クラッシュカンの車幅方向内端側を先に軸圧縮させ、その後、クラッシュカンの車幅方向内端側と車幅方向外端側とを車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮させることができて、安定した衝突エネルギの吸収が可能になるという目的を、車幅方向に延びるバンパレインと、上記バンパレインを左右一対のクラッシュカンを介して支持する左右一対のフロントサイドフレームと、上記クラッシュカンを上記フロントサイドフレームに結合するセットプレートと、を備えた車両の前部車体構造において、上記バンパレインは、その両端部が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜しており、上記クラッシュカンは、平面視で車幅方向外端の前端が上記フロントサイドフレームの車幅方向外端の前端よりも車幅方向外側に位置すると共に、上記クラッシュカンの車幅方向内端の前端は、当該クラッシュカンの車幅方向外端の前端よりも前方で上記バンパレインに結合されており、上記クラッシュカンの車幅方向内端に脆弱部が設けられるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、図1は当該前部車体構造の平面図、図2図1の要部拡大図、図3図2のA−A線矢視断面図である。
【0020】
図1において、エンジンルーム1と車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル3を設けている。このダッシュロアパネル3は縦壁部3aと、該縦壁部3aの下端から下方かつ後方に傾斜するスラント部3bとを一体または一体的に形成したものであり、該ダッシュロアパネル3の上端折曲げ部3cには、カウルパネル(図示せず)が接合固定される一方で、上述のスラント部3bの後端部にはフロアパネルが接続される。
【0021】
また、図1に示すように、上述のダッシュロアパネル3の車幅方向中央部には車室2内へ突出するトンネル部4が設けられている。このトンネル部4はフロアパネルに形成されるトンネル部と連続するものである。
上述のダッシュロアパネル3から車両前後方向の前方に延びる左右一対のフロントサイドフレーム5,5を設けている。これら左右一対のフロントサイドフレーム5,5はエンジンルーム1の側部に位置すると共に、フロントサイドフレームインナ6とフロントサイドフレームアウタ7とを、その接合フランジ部6a,7a(図2参照)にて接合して、車両の前後方向に延びる閉断面を形成した車体強度部材である。
【0022】
図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側かつ上方には、車両の前後方向に延びるエプロンレインフォースメント8を設けている。このエプロンレインフォースメント8はエプロンレインフォースメントアッパ9とエプロンレインフォースメントロアとを接合固定して、車両の前後方向に延びる閉断面を形成した車体強度部材である。
【0023】
図1に示すように、上述のエプロンレインフォースメント8におけるエプロンレインフォースメントアッパ9には、フロントフェンダパネル11が取付けられている。このフロントフェンダパネル11はエンジンルーム1の側方を覆うパネル部材である。
【0024】
図1に示すように、上述のフロントサイドフレーム5とエプロンレインフォースメント8との間におけるダッシュロアパネル3近傍位置には、その頂部にダンパ支持部12を備えたサスペンションタワー部13(いわゆるサスタワー)が設けられている。
【0025】
図1においては、上述のエプロンレインフォースメント8、エプロンレインフォースメントアッパ9、フロントフェンダパネル11、ダンパ支持部12、サスペンションタワー部13は車両右側のものについてのみ図示しているが、これら各要素8,9,11,12,13を含む車両の前部車体構造は、左右対称または左右略対称に構成されている。
【0026】
図1図2に示すように、上述のフロントサイドフレーム5の前端部には、該フロントサイドフレーム5側のセットプレート14と、クラッシュカン側のセットプレート15とを介して、クラッシュカン16を取付けており、左右一対のクラッシュカン16,16の前端部相互間には、車幅方向に延びるバンパレイン20(詳しくは、バンパレインフォースメント)を取付けている。
【0027】
すなわち、車両の前部車体構造は、車幅方向に延びるバンパレイン20と、該バンパレイン20を左右一対のクラッシュカン16を介して支持する左右一対のフロントサイドフレーム5,5と、クラッシュカン16を上述のフロントサイドフレーム5に結合するセットプレート15とを備えている。
【0028】
図2に示すように、上述のバンパレイン20は、ハット断面形状のバンパレイン本体21と、該バンパレイン本体21の前部に位置するクロージングプレート22とを接合固定して、車幅方向に延びる閉断面23を形成した車体強度部材である。
【0029】
図1図2に示すように、上述のバンパレイン20は車両デザインの関係上、その両端部が、平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜するよう形成されている。
上述のクラッシュカン16は衝突エネルギを吸収する衝突エネルギ吸収部材であって、図3に示すように、この実施例では、該クラッシュカン16はインナ部材17とアウタ部材18とを組合せて、これら両部材17,18内に中空十字断面19を形成している。
また、図2に示すように、フロントサイドフレーム5のフロントサイドフレームアウタ7の前端と、クラッシュカン16のアウタ部材18の後端とが、平面視で車幅方向の略同じ位置に位置して連続するように形成されている。
【0030】
図2に示すように、上述のクラッシュカン16は、平面視で車幅方向外端18aの前端Bが、フロントサイドフレーム5の車幅方向外端の前端Cよりも車幅方向外側に位置している。
【0031】
この実施例では、平面視でクラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bが、フロントサイドフレーム5の車幅方向外端の前端Cよりも車幅方向外側に位置する具体的構造として、図2に示すように、クラッシュカン16を車両前後方向の前側ほど拡幅になるよう形成している。
さらに、図2に示すように、上述のクラッシュカン16の車幅方向内端17aの前端Dは、当該クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bよりも車両前後方向の前方で上述のバンパレイン20に結合されている。
【0032】
ここで、上述のクラッシュカン16の後端はセットプレート15の前面に溶接固定されると共に、クラッシュカン16の前端ではバンパレイン20の背面、すなわち、リヤ側の面に溶接固定されている。また、フロントサイドフレーム5側のセットプレート14とクラッシュカン16側のセットプレート15とは、車両軽衝突時の交換性(いわゆるリペア性)を考慮して複数組のボルト、ナット24(取付け部材)を用いて、着脱可能に締結固定されている。
【0033】
しかも、図2に示すように、上述のクラッシュカン16の車幅方向内端17aには、車幅方向外方に窪む凹部30により脆弱部31が形成されている。
上述の脆弱部31は、車両前後方向の軸圧縮荷重に対する耐力を低くするためのものである。
上述の脆弱部31を設けることで、平面視で両端が後方傾斜した形状のバンパレイン20を備えたものにおいて、前突荷重入力時にクラッシュカン16の車幅方向内端17a側を先に軸圧縮させ、その後、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側と車幅方向外端18a側とを車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮させて、安定した衝突エネルギの吸収を可能とすべく構成している。
【0034】
図2に示すように、上述の脆弱部31は、クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bに相当する車両前後方向の位置において、該クラッシュカン16の車幅方向内端17a、すなわち、インナ部材17の車幅方向内側面に形成されたものである。
【0035】
これにより、前突荷重入力時に、まずクラッシュカン16の脆弱部31までの車幅方向内端17aが先に軸圧縮し、その後、クラッシュカン16の車幅方向内端17aと車幅方向外端18aとが可及的同等のタイミングで軸圧縮する際、上述の位置に脆弱部31を設けることで、クラッシュカン16の車幅方向内端17aと車幅方向外端18aとが車両前後方向の位置においてより一層近いタイミングで軸圧縮し始めて、さらに安定した衝突エネルギの吸収が可能となるよう構成したものである。
【0036】
ところで、図2図3に示すように、インナ部材17とアウタ部材18との2部材から成るクラッシュカン16は、その車幅方向外端つまりアウタ部材18の車幅方向外端18aが車両前後方向の後側ほど車幅方向内側に位置するように延びており、クラッシュカン16の車幅方向外端18aと略平行して後方側ほど車幅方向内側に延びる高剛性部16X,16Yが、クラッシュカン16の車幅方向外端18aと車幅方向内端17aとの間に形成されている。
上述の高剛性部16X,16Yは、図3に示すように、インナ部材17の上辺部17bとアウタ部材18の上辺部18bとを溶接により重合(図2に溶接箇所をX印にて示す)するクラッシュカン16の上面部と、インナ部材17の下辺部17cとアウタ部材18の下辺部18cとを溶接により重合するクラッシュカン16の下面部とにそれぞれ形成されている。
【0037】
つまり、上述の高剛性部16X,16Yは各部材17,18の2枚重合部にて形成されたものである。また、上述の上下の高剛性部16X,16Yはクラッシュカン16の前後方向の長さの全長にわたって、上記車幅方向外端18aと略平行になるよう車両前後方向に延びており、該高剛性部16X,16Yの前端はバンパレイン20に、また後端はセットプレート15の前面に結合されている。
上述のクラッシュカン16の車幅方向外端18aと略平行の上下の高剛性部16X,16Yにより、当該クラッシュカン16を安定して軸圧縮変形させるよう構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0038】
次に、図4を参照して前突荷重入力時の作用について説明する。
図4の(a)は衝突前の状態を示す平面図、図4の(b)はクラッシュカン16の車幅方向内端側の軸圧縮状態を示す平面図、図4の(c)はクラッシュカン16の車幅方向内外両端側の軸圧縮状態を示す平面図である。
【0039】
車両の衝突時にバンパレイン20に前突荷重が入力すると、バンパレイン20は図4の(a)に示す状態から図4の(b)に示すように後退するが、上述のクラッシュカン16にはその車幅方向内端17aに脆弱部31を設け、当該クラッシュカン16の車幅方向内端17aの車両前後方向の耐力を、車幅方向外端18aの車両前後方向の耐力に対して低く設定したので、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側、詳しくは、クラッシュカン16の脆弱部31までの車幅方向内端17a側が先に軸圧縮変形する。
【0040】
その後、図4の(b)に示す状態から図4の(c)に示すように、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側と車幅方向外端18a側とが車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮変形し、これにより、安定した衝突エネルギの吸収を図ることができる。
【0041】
このように、図1図4で示した実施例1の車両の前部車体構造は、車幅方向に延びるバンパレイン20と、上記バンパレイン20を左右一対のクラッシュカン16を介して支持する左右一対のフロントサイドフレーム5と、上記クラッシュカン16を上記フロントサイドフレーム5に結合するセットプレート15と、を備えた車両の前部車体構造であって、上記バンパレイン20は、その両端部が平面視で車幅方向の外側ほど後方に傾斜しており、上記クラッシュカン16は、平面視で車幅方向外端18aの前端Bが上記フロントサイドフレーム5の車幅方向外端の前端Cよりも車幅方向外側に位置すると共に、上記クラッシュカン16の車幅方向内端17aの前端Dは、当該クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bよりも前方で上記バンパレイン20に結合されており、上記クラッシュカン16の車幅方向内端17aに脆弱部31が設けられたものである(図1図2参照)。
【0042】
この構成によれば、クラッシュカン16の車幅方向内端17aに脆弱部31を設けたので、平面視で両端が後方傾斜した形状のバンパレイン20を備えたものにおいて、前突荷重入力時に上記クラッシュカン16の車幅方向内端17a側を先に軸圧縮させ、その後、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側と車幅方向外端18a側とを車両前後方向に可及的同等のタイミングで軸圧縮させることができて、安定した衝突エネルギの吸収が可能となる。
この結果、車両デザインの確保と、衝突性能の確保との両立を図ることができる。
【0043】
この発明の一実施形態においては、上記脆弱部31は、上記クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前端Bに相当する位置において、上記クラッシュカン16の車幅方向内端17aに設けられたものである(図2参照)。
【0044】
この構成によれば、前突荷重入力時に、まずクラッシュカン16の脆弱部31までの車幅方向内端17aが先に軸圧縮し、その後、クラッシュカン16の車幅方向内端17aと車幅方向外端18aとが可及的同等のタイミングで軸圧縮する際、上記位置に脆弱部31を設けることで、クラッシュカン16の車幅方向内端と車幅方向外端とが車両前後位置においてより一層近いタイミングで軸圧縮し始めるため、さらに安定した衝突エネルギの吸収が可能となる。
【実施例2】
【0045】
図5図10は車両の前部車体構造の他の実施例を示し、図5は当該前部車体構造の斜視図、図6図5の要部の側面図、図7図5の要部拡大平面図、図8は車両の前部車体構造を、車幅方向内側かつ斜め前方上部から見た状態で示す斜視図、図9は車両の前部車体構造を、車幅方向外側かつ斜め前方上部から見た状態で示す斜視図、図10は車両の前部車体構造を、車幅方向外側かつ斜め後方上部から見た状態で示す斜視図である。
なお、図5図10において、図1図4で示した先の実施例と同一の部分には同一符号を付している。
【0046】
この実施例2では、特に、図7に示すように、上述のセットプレート15の車幅方向外端15bは、当該セットプレート15の車幅方向内端15aよりも、車両前後方向の後方に位置しており、図6図7に示すように、上述のクラッシュカン16の車幅方向外端18aの後端部Eをセットプレート15に連結する前後方向位置が、クラッシュカン16の車幅方向内端17aの後端部Gをセットプレート15に連結する前後方向位置よりも、後方となるように形成している。
【0047】
つまり、クラッシュカン16の上記前端Bがフロントサイドフレーム5の上記前端Cよりも車幅方向外側に位置すると共に、クラッシュカン16の上記車幅方向外端の後端部Eが、車幅方向内端の後端部Gよりも後方に位置しており、該クラッシュカン16がセットプレート15に溶接固定されたものである。
また、上記各後端部E,Gの位置関係により、クラッシュカン16の車幅方向外端18aの車両前後方向の長さが、その車幅方向内端17aの車両前後方向の長さに対して、長くなるように形成されている。
【0048】
これにより、上述のクラッシュカン16の車幅方向外端18aの前後方向長さを所定量確保することにより、前突荷重入力時にバンパレイン20が後方傾斜した状態でクラッシュカン16が軸圧縮した場合でも、早いタイミングでのクラッシュカン16の車幅方向外端側の底付きを抑制し、クラッシュカン16の車幅方向内端側の衝突エネルギ吸収機能を充分に使い切ることができ、クラッシュカン16で確実にエネルギ吸収するよう構成している。
【0049】
さらに詳しくは、上述のクラッシュカン16側のセットプレート15は、図7に示すように、車両前後方向に延びるセットプレート中間壁15Cと、このセットプレート中間壁15Cの前端から車幅方向内側へ略直角に延びるセットプレート前壁15Aと、セットプレート中間壁15Cの後端から車幅方向外側へ略直角に延びるセットプレート後壁15Bと、を有し、図7に示すように、平面視で、これら各壁15A,15B,15Cをクランク状に一体形成している。
上述のクラッシュカン16側のセットプレート15は、車両軽衝突時の交換性(いわゆるリペア性)を考慮して、実施例1と同様に、フロントサイドフレーム5側のセットプレート14前部に、複数組のボルト、ナット24(取付け部材)を用いて着脱可能に取付けられている。
【0050】
そして、このフロントサイドフレーム5側のセットプレート14は、クラッシュカン16側のセットプレート15と対応するように形成されている。
【0051】
すなわち、フロントサイドフレーム5側のセットプレート14も、図7に示すように、車両前後方向に延びるセットプレート中間壁14Cと、このセットプレート中間壁14Cの前端から車幅方向内側へ略直角に延びるセットプレート前壁14Aと、セットプレート中間壁14Cの後端から車幅方向外側へ略直角に延びるセットプレート後壁14Bと、を有し、図7に示すように、平面視で、これら各壁14A,14B,14Cをクランク状に一体形成している。
【0052】
そして、図7に示すように、クラッシュカン16の車幅方向外端18aの後端部Eが、セットプレート15におけるセットプレート後壁15Bに連結されると共に、クラッシュカン16の車幅方向内端17aの後端部Gが、セットプレート15におけるセットプレート前壁15Aに連結されたものである。
これにより、衝突性能を確保しつつ、フロントサイドフレーム5の生産性を確保すべく構成したものである。
【0053】
すなわち、上述のセットプレート15の形状を平面視でクランク状に形成して、クラッシュカン16の車幅方向外側の前後方向長さを所定量確保することにより、前突荷重入力時に所期のエネルギ吸収量を得るという衝突性能を確保しつつ、フロントサイドフレーム5については、その前部を特別な形状に加工する必要がなく、当該フロントサイドフレーム5の形状は既存構成のままでよく、その生産性を確保すべく構成したものである。
【0054】
図7図10に示すように、クラッシュカン16側のセットプレート15およびフロントサイドフレーム5側のセットプレート14は、ともにその後端から車幅方向外側に延びる上述のセットプレート後壁15B,14Bを備えており、クラッシュカン16側のセットプレート後壁15Bを、フロントサイドフレーム5側のセットプレート後壁14Bを介してフロントサイドフレーム5のフロントサイドフレームアウタ7に連結する連結部材25を設けている。
【0055】
図10に示すように、この連結部材25は、セットプレート後壁14Bの背面に同図にX印で示す複数のスポット溶接部にて接合固定される前側接合片25aと、フロントサイドフレームアウタ7の車幅方向外側の面に図10にX印で示す複数のスポット溶接部にて接合固定される後側接合片25bと、前側接合片25aの車幅方向内側と後側接合片25bの車両前後方向前側とを連結する連結片25cとを、一体形成したもので、図7に示すように、該連結部材25でセットプレート後壁15B,14Bと、フロントサイドフレームアウタ7との間を、斜交い状に連結している。
上述の連結部材25を設けることで、クラッシュカン16の車幅方向外側に入力された衝突荷重を、セットプレート後壁15B,14Bおよび当該連結部材25を介して、フロントサイドフレーム5に円滑に荷重伝達するよう構成している。
【0056】
図9に示すように、フロントサイドフレーム5側のセットプレート14のセットプレート後壁14Bは、クラッシュカン16側のセットプレート15のセットプレート後壁15Bに対して、車幅方向外側への突出量が長く形成されており、この突出量が長い部分を有効利用して、図8に示すように、フェンダ支持部材26を取付けている。
【0057】
すなわち、図5に仮想線で、また図8に実線でそれぞれ示すように、フェンダ支持部材26の車幅方向内端部26aを、ボルト、ナット等の取付け部材27を用いて、セットプレート後壁14Bの前面に連結固定し、フェンダ支持部材26の車幅方向外端部26bを、ボルト、ナット等の取付け部材28を用いて、フロントフェンダパネル11の前部11aに連結固定することで、該フロントフェンダパネル11を上述のフェンダ支持部材26にてセットプレート後壁14Bに支持させている。
【0058】
このように、図5図10で示した車両の前部車体構造においては、上記セットプレート15の車幅方向外端15bは、当該セットプレート15の車幅方向内端15aよりも、車両前後方向の後方に位置しており、上記クラッシュカン16の車幅方向外端18aの後端部Eを上記セットプレート15に連結する前後方向位置が、上記クラッシュカン16の車幅方向内端17aの後端部Gを上記セットプレート15に連結する前後方向位置よりも、後方となるように形成されたものである(図7参照)。
【0059】
この構成によれば、上記クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前後方向長さを所定量確保することにより、前突荷重入力時にバンパレイン20が後方傾斜した状態でクラッシュカン16が軸圧縮した場合でも、早いタイミングでのクラッシュカン16の車幅方向外端18a側の底付きを抑制することができ、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側の衝突エネルギ吸収機能を充分に使い切ることができ、クラッシュカン16で確実にエネルギ吸収することができる。
【0060】
詳しくは、前突荷重入力時において、セットプレート15のセットプレート前壁15Aおよびセットプレート後壁15Bと、これら各壁15A,15Bの前方に位置する範囲のクロージングプレート22とが平面視で略平行になることなく、バンパレイン20が後方傾斜した状態でクラッシュカン16が軸圧縮した場合でも、該クラッシュカン16の車幅方向外端18aの前後方向長さが所定量確保されているので、クラッシュカン16の車幅方向外端18aの早期の底付きを抑制し、クラッシュカン16の車幅方向内端17a側の衝突エネルギ吸収機能を充分に使い切ることができないものである。
【0061】
図5図10で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、図1図4を参照して説明した先の実施例1と同様であるから、図5図10において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、車幅方向に延びるバンパレインと、上記バンパレインを左右一対のクラッシュカンを介して支持する左右一対のフロントサイドフレームと、上記クラッシュカンを上記フロントサイドフレームに結合するセットプレートと、を備えた車両の前部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0063】
5…フロントサイドフレーム
15…セットプレート
16…クラッシュカン
20…バンパレイン
31…脆弱部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11