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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222156(P2016-222156A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/02 20060101AFI20161205BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20161205BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20161205BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20161205BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20161205BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20161205BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20161205BHJP
   B60K 17/02 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B60K6/20 360
   B60K6/48ZHV
   B60K6/547
   B60K6/20 320
   B60W10/00 102
   B60W10/02
   B60W10/06
   B60W10/08
   B60K17/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-111691(P2015-111691)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】八田 素嘉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝
【テーマコード(参考)】
3D039
3D202
3D241
【Fターム(参考)】
3D039AA02
3D039AB01
3D039AB27
3D039AC03
3D039AD02
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB11
3D202BB12
3D202BB37
3D202BB64
3D202BB65
3D202CC37
3D202CC51
3D202CC83
3D202DD05
3D202DD24
3D202DD26
3D202FF06
3D202FF12
3D202FF13
3D241AA09
3D241AB01
3D241AC01
3D241AC07
3D241AC15
3D241AC18
3D241AD10
3D241AD31
3D241AD41
3D241AD51
3D241AE01
3D241AE04
3D241AE14
3D241AE30
(57)【要約】
【課題】モータによってエンジンの始動を補助しながらも、モータに必要とされる最大出力を抑制することが可能な制御装置を提供する。
【解決手段】ハイブリッドECU26は、モータジェネレータMGの回転数を所定回転数まで増加させるモータ回転数引上制御を実行する引上制御実行部265と、モータ回転数引上制御の実行後であって移行タイミング前に、第1クラッチCL1を締結させるとともにモータジェネレータMGの回転数を所定回転数から減少させるモータ回転数降下制御を実行する降下制御実行部266と、を有する。MG回転数決定部264は、モータ回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの出力と、モータ回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力とが略同一になるように所定回転数を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(EG)及びモータ(MG)が発生させる動力を車両(100)の車軸(16)に伝達する駆動システム(10)の制御装置(26)であって、
前記駆動システムは、
前記エンジンが発生させる動力を伝達するエンジン軸(11)と、
前記モータが発生させる動力を伝達する第1軸(MG1)及び第2軸(MG2)と、
前記エンジン軸と前記第1軸との間に設けられ、締結及び開放を行う第1クラッチ(CL)1と、
前記第2軸と前記車軸との間に設けられ、締結及び開放を行う第2クラッチ(CL2)と、
前記モータに電力を供給するバッテリ(21)と、を有し、
前記制御装置は、
前記エンジンにおける燃料の燃焼を停止させた状態で、前記モータで動力を発生させる第1走行モードを実行する第1走行モード実行部(261)と、
前記エンジンにおいて燃料を燃焼させて動力を発生させる第2走行モードを実行する第2走行モード実行部(262)と、
前記モータの回転数を決定するモータ回転数決定部(264)と、
前記第1走行モードから前記第2走行モードへの移行タイミングに先駆けて、前記第1クラッチを開放させた状態で前記モータの回転数を所定回転数まで増加させるモータ回転数引上制御を実行する引上制御実行部(265)と、
前記モータ回転数引上制御の実行後であって前記移行タイミング前に、前記第1クラッチを締結させるとともに前記モータの回転数を前記所定回転数から減少させるモータ回転数降下制御を実行する降下制御実行部(266)と、を有し、
前記モータ回転数決定部は、前記モータ回転数引上制御の実行終了時の前記モータの出力と、前記モータ回転数降下制御の実行開始時の前記モータの出力とが略同一になるように前記所定回転数を決定することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記降下制御実行部は、前記第1クラッチを締結させることによって前記エンジンの回転数を増加させ、前記エンジンにおける燃料の燃焼が開始した後に、前記第1クラッチの締結を緩和又は前記第1クラッチを開放させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記降下制御実行部は、前記モータにおけるトルクが増加したことに基づいて、前記モータの回転数の減少を開始させることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン及びモータが発生させる動力を車両の車軸に伝達する駆動システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境意識の高まりなどから、ガソリン等の化石燃料を用いて動力を発生させる自動車から、電力を用いて動力を発生させる電気自動車への移行が進められている。このような移行の過程における自動車の一形態として、エンジン及びモータを動力源とするハイブリッド車両と称される自動車が普及している。
【0003】
下記特許文献1には、エンジンとモータとの間で締結及び開放を行う第1クラッチ(エンジンクラッチ)と、モータと車軸との間で締結及び開放を行う第2クラッチ(発進クラッチ)と、を有するハイブリッド車両が記載されている。当該車両は、エンジンにおける燃料の燃焼を停止させた状態で、バッテリから電力供給を受けるモータでトルクを発生させて走行することが可能とされている。
【0004】
下記特許文献1記載の車両では、モータで発生させたトルクのみによる走行モードの実行中に、エンジンでトルクを発生させる走行モードに移行する場合に、まず、モータの回転数を所定回転数まで増加させる。その後、当該車両は、第1クラッチを締結させてモータからエンジンにトルクを伝達させることで、エンジンにおける燃料の燃焼を開始させる。すなわち、走行用のトルクを発生させるモータを、エンジンの始動(燃料の燃焼の開始)を補助するスタータモータとして利用することで、スムーズなエンジンの始動を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−255285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両は、エンジンの始動に際しモータに必要とされる出力に関して十分に考慮されたものではなかった。つまり、エンジンの始動の際にモータは大きなトルクを発生させる必要があるが、それに伴って当該モータに必要とされる最大出力(モータのトルクと回転数との積の最大値)も大きくとなると、最大出力が大きなバッテリを用意する必要がある。このため、バッテリの大型化を招いたり、製造コストの増大を招いたりするという課題があった。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータによってエンジンの始動を補助しながらも、モータに必要とされる最大出力を抑制することが可能な制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る制御装置は、エンジン(EG)及びモータ(MG)が発生させる動力を車両(100)の車軸(16)に伝達する駆動システム(10)の制御装置(26)であって、前記駆動システムは、前記エンジンが発生させる動力を伝達するエンジン軸(11)と、前記モータが発生させる動力を伝達する第1軸(MG1)及び第2軸(MG2)と、前記エンジン軸と前記第1軸との間に設けられ、締結及び開放を行う第1クラッチ(CL)1と、前記第2軸と前記車軸との間に設けられ、締結及び開放を行う第2クラッチ(CL2)と、前記モータに電力を供給するバッテリ(21)と、を有する。前記制御装置は、前記エンジンにおける燃料の燃焼を停止させた状態で、前記モータで動力を発生させる第1走行モードを実行する第1走行モード実行部(261)と、前記エンジンにおいて燃料を燃焼させて動力を発生させる第2走行モードを実行する第2走行モード実行部(262)と、前記モータの回転数を決定するモータ回転数決定部(264)と、前記第1走行モードから前記第2走行モードへの移行タイミングに先駆けて、前記第1クラッチを開放させた状態で前記モータの回転数を所定回転数まで増加させるモータ回転数引上制御を実行する引上制御実行部(265)と、前記モータ回転数引上制御の実行後であって前記移行タイミング前に、前記第1クラッチを締結させるとともに前記モータの回転数を前記所定回転数から減少させるモータ回転数降下制御を実行する降下制御実行部(266)と、を有する。前記モータ回転数決定部は、前記モータ回転数引上制御の実行終了時の前記モータの出力と、前記モータ回転数降下制御の実行開始時の前記モータの出力とが略同一になるように前記所定回転数を決定する。
【0009】
モータ回転数引上制御では、所定回転数が大きいほど、モータに必要とされる出力も大きくなる。しかしながら、当該所定回転数が大きくなると、モータ回転数引上制御実行終了時のモータは大きな運動エネルギを有することになるため、その後のモータ回転数降下制御においてモータに必要とされる出力は、当該所定回転数が大きくなるほど小さくなる傾向がある。
【0010】
そこで、本発明では、本発明では、モータ回転数引上制御の実行終了時のモータの出力と、モータ回転数降下制御の実行開始時のモータの出力とが略同一になるように所定回転数を決定する。これにより、モータによってエンジンの始動を補助しながらも、モータに必要とされる最大出力を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、モータによってエンジンの始動を補助しながらも、モータに必要とされる最大出力を抑制することが可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッドECUを搭載したハイブリッド車両を示す模式図である。
図2図1のハイブリッドECUによる制御の例を示すタイムチャートである。
図3】引上回転数の決定方法について説明する説明図である。
図4図1のハイブリッドECUによる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0014】
まず、図1を参照しながら、本発明の実施形態に係るハイブリッドECU(Electronic Control Unit)26を搭載した駆動システム10、及び、駆動システム10を搭載したハイブリッド車両100の概略構成について説明する。
【0015】
駆動システム10は、エンジンEGと、第1クラッチCL1と、モータジェネレータMGと、第2クラッチCL2と、自動変速機13と、デファレンシャル15と、車軸16と、車輪17と、を有している。
【0016】
エンジンEGは、ガソリンを燃料としてトルク(動力)を発生させる内燃機関である。エンジンEGは、エンジンECU27から受信する制御信号に基づいて、スロットルバルブ(不図示)のバルブ開度等が制御される。エンジンEGは、発生させたトルクを伝達するエンジン軸11を有している。
【0017】
第1クラッチCL1は、エンジンEGのエンジン軸11と、モータジェネレータMGの第1軸MG1との間に設けられている。第1クラッチCL1は、比例ソレノイドで作動油の流量及び圧力を連続的に制御できる湿式多板クラッチである。第1クラッチCL1は、トランスミッションECU29から受信する制御信号に基づいてポンプ(不図示)によって作り出される制御油圧により、スリップ締結を含む締結及び開放が制御される。
【0018】
モータジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータである。モータジェネレータMGは、エンジンEG側に延びる第1軸MG1と、自動変速機13側に延びる第2軸MG2と、を有している。第1軸MG1及び第2軸MG2は同期して回転するように設けられている。モータジェネレータMGは、MG−ECU28から受信する制御信号に基づいてインバータ20によって作り出される三相交流を印加することにより制御される。
【0019】
また、モータジェネレータMGは、バッテリ21から電力の供給を受けることで回転駆動し、トルク(動力)を発生させる電動機として機能する。また、モータジェネレータMGは、ロータが第1軸MG1や第2軸MG2から受ける外力によって回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ21を充電させることもできる。
【0020】
バッテリ21とモータジェネレータMGとの間における電力の授受は、インバータ20を介して行われる。インバータ20は、直流電力を交流電力に、又は、交流電力を直流電力に変換する変換器である。インバータ20は、MG−ECU28から受信する制御信号に基づいて動作する。
【0021】
第2クラッチCL2は、モータジェネレータMGの第2軸MG2と自動変速機13の入力軸131との間に設けられている。第2クラッチCL2は、比例ソレノイドで作動油の流量及び圧力を連続的に制御できる湿式多板クラッチである。第2クラッチCL2は、トランスミッションECU29から受信する制御信号に基づいてポンプ(不図示)によって作り出される制御油圧によって、スリップ締結を含む締結及び開放が制御される。
【0022】
自動変速機13は、複数の段階の変速比を、ハイブリッド車両100の速度(以下、単に「車速」ともいう)やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える変速機である。第2クラッチCL2は、専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機13の各変速段にて締結される複数の摩擦締結要素のうち、いくつかの摩擦締結要素を流用している。自動変速機13の出力軸132は、デファレンシャル15、車軸16を介して車輪17に連結されている。尚、無段変速機を備えた場合には、前後進切替機構に備えられたクラッチを第2クラッチCL2として使用すればよく、第2クラッチCL2の構成は特に限定されるものではない。
【0023】
次に、本発明の実施形態に係るハイブリッドECU26について説明する。ハイブリッドECU26は、ハイブリッド車両100全体を総合的に制御するコンピュータである。ハイブリッドECU26は、エンジンEGの運転を制御するエンジンECU27と、インバータ20の動作を制御してモータジェネレータMGの回転駆動を制御するMG−ECU28と、自動変速機13、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の動作を制御するトランスミッションECU29と電気的に接続されている。ハイブリッドECU26は、エンジンECU27、MG−ECU28及びトランスミッションECU29との間で制御信号やデータ信号等を送受信することで、エンジンEG、モータジェネレータMG、自動変速機13、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2を制御する。
【0024】
尚、本願において「電気的に接続」とは、有線によって接続された状態に限定される意味ではなく、無線により互いに通信可能とされた状態をも含みうるものとする。
【0025】
また、ハイブリッドECU26は、アクセルセンサ22と、シフトスイッチ23と、ブレーキスイッチ24と、回転速度センサ25と、エンジン回転速度センサ30と、MG回転速度センサ31と、の各種センサと電気的に接続されている。アクセルセンサ22は、アクセルペダル(不図示)の操作を検出する機器である。シフトスイッチ23は、「P」(パーキング:駐車)、「R」(リバース:後退)、「D」(ドライブ:前進)等、ハイブリッド車両100のシフトレバー(不図示)の位置を検出するセンサである。ブレーキスイッチ24は、ブレーキ(不図示)の操作を検出する機器である。回転速度センサ25は、自動変速機13の出力軸132の回転速度を検出する機器である。エンジン回転速度センサ30は、エンジンEGに取り付けられ、エンジンEGの回転速度を検出する機器である。MG回転速度センサ31は、モータジェネレータMGに取り付けられ、モータジェネレータMGの回転速度を検出する機器である。ハイブリッドECU26は、各種センサやスイッチの出力信号を読み込むことで、ハイブリッド車両100の運転状態を検出する。例えば、ハイブリッドECU26は、回転速度センサ25の出力信号に基づいて、ハイブリッド車両100の車速を検出する。
【0026】
図1は、ハイブリッドECU26の内部を、機能的な制御ブロック図として示している。ハイブリッドECU26は、その一部又は全部が、アナログ回路で構成されるか、デジタルプロセッサとして構成される。いずれにしても、受信した信号に基づいて制御信号を出力する機能を果たすため、ハイブリッドECU26には機能的な制御ブロックが構成される。
【0027】
尚、ハイブリッドECU26を構成するアナログ回路又はデジタルプロセッサに組み込まれるソフトウェアのモジュールは、必ずしも図1に示す制御ブロックに分割されている必要はなく、複数の制御ブロックの働きをするものとして構成されていても構わず、更に細分化されていても構わない。後述する処理を実行できるように構成されていれば、ハイブリッドECU26の内部の実際の構成は当業者が適宜変更できるものである。
【0028】
ハイブリッドECU26は、第1走行モード実行部261と、第2走行モード実行部262と、加速要求判定部263と、MG回転数決定部264と、引上制御実行部265と、降下制御実行部266と、を有している。
【0029】
第1走行モード実行部261は、エンジンEGにおける燃料の燃焼を停止させた状態で、モータジェネレータMGでトルクを発生させる「第1走行モード」を実行する部分である。すなわち、第1走行モード実行部261は、エンジンEGの複数の気筒(不図示)内への燃料の供給を停止させるとともに、モータジェネレータMGに電力を供給してトルクを発生させる。
【0030】
第2走行モード実行部262は、エンジンEGにおいて燃料を燃焼させてトルクを発生させる「第2走行モード」を実行する部分である。すなわち、第2走行モード実行部262は、エンジンEGの気筒内に燃料を供給させるとともに、当該気筒内の燃料と空気とからなる混合気に火花点火して燃料を燃焼させる。これにより、エンジンEGの各気筒内において所謂吸気行程、圧縮行程、燃焼行程及び排気行程が互いに異なる位相で繰り返し行われ、トルクが発生する。
【0031】
加速要求判定部263は、ドライバからハイブリッド車両100に対して加速の要求があったか否かを判定する部分である。具体的には、加速要求判定部263は、アクセルセンサ22から受信する信号に基づいて所定の演算を行うことで、ドライバから加速要求があったか否かを判定する。
【0032】
MG回転数決定部264は、モータジェネレータMGの回転数を決定する部分である。具体的には、MG回転数決定部264は、各種センサから受信する信号に基づいて所定の演算を行うことで、モータジェネレータMGの回転数と、当該回転数に対応するモータジェネレータMGへの供給電力を決定する。
【0033】
引上制御実行部265は、第1走行モードから第2走行モードへの移行タイミングに先駆けて、第1クラッチCL1を開放させた状態でモータジェネレータMGの回転数を増加させる「MG回転数引上制御」を実行する部分である。
【0034】
降下制御実行部266は、モータ回転数引上制御の実行後であって第1走行モードから第2走行モードへの移行タイミング前に、第1クラッチCL1を締結させるとともにモータジェネレータMGの回転数を減少させる「MG回転数降下制御」を実行する部分である。
【0035】
続いて、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係る制御の例について説明する。図2では、本実施形態に係る制御の例が実線で示される一方で、比較例が破線によって示されている。以下では簡便のため、詳細にはハイブリッドECU26の第1走行モード実行部261等の各部分によって行われる処理も、総括してハイブリッドECU26が行うとして説明する。
【0036】
[本実施形態]
まず、本実施形態に係る制御の例について説明する。時刻t1まで、ハイブリッドECU26は、第1走行モードを実行してハイブリッド車両100を走行させている。このとき、モータジェネレータMGは、電力の供給を受けて回転駆動しており、第2クラッチCL2が締結されることで、自動変速機13の出力軸132とともに回転数N1で回転している。一方、第1クラッチCL1の制御油圧はゼロとされていることから、第1クラッチCL1は開放されており、燃料の燃焼が停止しているエンジンEGの回転数もゼロとなる。
【0037】
また、時刻t1まで、モータジェネレータMGは回転駆動することによってトルクT1を発生させている。これにより、時刻t1までのモータジェネレータMGの出力(モータジェネレータMGの回転数とトルクとの積)は、W1となる。
【0038】
時刻t1で、ドライバから加速要求があり(アクセルの踏み込み量が増加し)、その要求トルクが予め定められた閾値を超えていると判定すると、ハイブリッドECU26は、MG回転数引上制御の実行を開始する。具体的には、ハイブリッドECU26は、モータジェネレータMGの回転数を増加させる。モータジェネレータMGの回転数の増加開始に伴い、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT1からT4に増加する。また、モータジェネレータMGの出力もW3に増加し、回転数とともにさらに増加する。
【0039】
また、時刻t1で、ハイブリッドECU26は、第1クラッチCL1の制御油圧をP4に増加させる。これは、後に第1クラッチCL1を締結させるための準備として、制御油圧を増加させ、第1クラッチCL1のシリンダ(不図示)内に制御油を充填させるものである。
【0040】
時刻t3で、ハイブリッドECU26は、第1クラッチCL1の制御油圧をP2に減少させる。すなわち、時刻t3で第1クラッチCL1のシリンダ内への制御油の充填が終了したことで、制御油圧を減少させ、シリンダ内の制御油の挙動が安定するまで待機する。
【0041】
時刻t4で、ハイブリッドECU26は、MG回転数引上制御の実行を終了する。このMG回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの回転数AnfはN3である。すなわち、ハイブリッドECU26は、時刻t1から時刻t4にかけて、MG回転数引上制御によって引上回転数ΔNaだけ回転数を増加させる。
【0042】
時刻t4で、MG回転数引上制御の実行終了に伴い、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT4からT3に減少する。また、MG回転数引上制御の実行終了時である時刻t4におけるモータジェネレータMGの出力AwfupはW5となるが、モータジェネレータMGのトルクの減少に伴い、出力もW5からW3に減少する。時刻t4後、ハイブリッドECU26は、モータジェネレータMGの回転数をN3で維持させる。
【0043】
時刻t5で、ハイブリッドECU26は、MG回転数降下制御の実行を開始する。このMG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの回転数BnfはN3である。
【0044】
また、ハイブリッドECU26は、時刻t3で第1クラッチCL1の制御油圧をP2に減少させてから十分な時間が経過したことで、第1クラッチCL1のシリンダ内の制御油の挙動が安定したと推定し、時刻t5で第1クラッチCL1の制御油圧をP3に増加させる。これにより、第1クラッチCL1がスリップ締結を開始し、モータジェネレータMGの第1軸MG1からエンジンEGのエンジン軸11にトルクが伝達される。したがって、エンジンEGの回転数が徐々に増加する。
【0045】
さらに、第1クラッチCL1のスリップ締結が開始することで、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT5まで増加し、その後はT5で維持される。ハイブリッドECU26は、このモータジェネレータMGにおけるトルクが増加したことに基づいて、モータジェネレータMGの回転数の減少を開始させる。また、このMG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力Bwfdwは、前述したMG回転数引上制御の実行終了時の出力Awfupと同一のW5となるが、その後、回転数の減少に伴って減少する。尚、ここでは、出力Bwfdwは出力Awfupと同一のW5となる例を示しているが、両者は必ずしも完全同一となる必要は無く、略同一であればよい。
【0046】
時刻t6で、ハイブリッドECU26は、第2走行モードの実行を開始してハイブリッド車両100を走行させる。具体的には、エンジンEGの気筒内において火花点火させ、エンジンEGを始動(燃料の燃焼を開始)させる。時刻t6後、エンジンEGの回転数はさらに増加する。また、時刻t6において、モータジェネレータMGの回転数はN2まで低下し、その後はN2で維持される。
【0047】
また、時刻t6で、ハイブリッドECU26は、第1クラッチCL1の制御油圧をP1に減少させ、第1クラッチCL1の締結を緩和させる。これにより、モータジェネレータMGの第1軸MG1からエンジンEGのエンジン軸11へのトルクの伝達が緩和され、エンジンEGは燃料の燃焼により自律的に回転数を増加させる。この他、時刻t6で、第1クラッチCL1の制御油圧をゼロとし、第1クラッチCL1を開放させてもよい。
【0048】
さらに、時刻t6で、エンジンEGが燃料の燃焼を開始してトルクを発生させるため、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT5から減少する。これに伴い、モータジェネレータMGの出力も減少する。
【0049】
時刻t7で、エンジンEGの回転数がモータジェネレータMGの回転数と同一のN2となると、ハイブリッドECU26は、第1クラッチCL1の制御油圧を増加させる。これにより、第1クラッチCL1が締結され、ハイブリッド車両100は、エンジンEG及びモータジェネレータMGの双方が発生させたトルクによって走行する。
【0050】
ここで、図3を参照しながら、引上回転数ΔNaの決定方法について説明する。この引上回転数ΔNaは、前述したハイブリッドECU26のMG回転数決定部264によって決定されるものである。
【0051】
図3には、モータジェネレータMGの特性が示されている。具体的には、MG回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの出力である出力Awfup、及び、MG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力である出力Bwfdwと、回転数N1からのモータジェネレータMGの回転数の増加分である引上回転数ΔNと、の関係が示されている。本特性に関するデータは、ハイブリッドECU26のメモリ(不図示)に格納されている。
【0052】
図3に示されるように、出力Awfupは、引上回転数ΔNとともに増加する傾向を示す。これは、引上回転数ΔNが大きくなるほど、MG回転数引上制御においてモータジェネレータMGを回転駆動させるために必要とされるトルクが大きくなるためである。
【0053】
一方、MG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力である出力Bwfdwは、引上回転数ΔNの増加に伴って、概ね減少する傾向を示す。これは、引上回転数ΔNが大きくなるほど、MG回転数降下制御の実行によってモータジェネレータMGが大きな運動エネルギを有することになり、その後のMG回転数降下制御では、当該運動エネルギを利用することができるためである。換言すると、引上回転数ΔNが大きくなるほど、MG回転数降下制御においてモータジェネレータMGは大きな慣性を利用することができるため、MG回転数降下制御においてモータジェネレータMGに必要とされる出力を小さくすることができる。
【0054】
仮に、ハイブリッドECU26が、引上回転数を図3に示されるΔNbに決定した場合、MG回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの出力である出力AwfupはWAとなる。一方、MG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力である出力BwfdwはWDとなり、WAよりも大きくなる。したがって、この場合、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力はWDとなり、バッテリ21も、最大出力WDに対応可能ものを選択する必要がある。
【0055】
また、仮に、ハイブリッドECU26が、引上回転数を図3に示されるΔNcに決定した場合、MG回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの出力である出力AwfupはWCとなる。一方、MG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力である出力BwfdwはWBとなり、WCよりも小さくなる。したがって、この場合、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力はWCとなり、バッテリ21も、最大出力WCに対応できるものを選択する必要がある。
【0056】
そこで、ハイブリッドECU26は、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力を可能な限り小さくするため、出力Awfupの特性線と、出力Bwfdwの特性線との交点に対応するΔNaを引上回転数に決定する。すなわち、この引上回転数ΔNaが、MG回転数引上制御におけるモータジェネレータMGの回転数の増加分となる。引上回転数をΔNaに決定することにより、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力がWC及びWDよりも小さいW5となるため、バッテリ21に必要とされる最大出力を最も小さくすることができる。
【0057】
[比較例]
次に、比較例について説明する。比較例も、実施形態同様に、時刻t1で、ドライバから加速要求があり、その要求トルクが予め定められた閾値を超えていると判定すると、ハイブリッドECU26が、モータジェネレータMGの回転数を増加させるものである。モータジェネレータMGの回転数の増加開始に伴い、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT1からT4に増加する。また、モータジェネレータMGの出力もW3に増加し、回転数とともにさらに増加する。
【0058】
比較例は、図2に破線で示されるように、モータジェネレータMGの回転数がN2まで増加した時刻t2で、その増加を停止させる。時刻t2で、モータジェネレータMGが発生させるトルクはT2に減少し、これに伴い、出力もW2に減少する。時刻t2後、モータジェネレータMGは回転数N2で回転する。
【0059】
時刻t5で、比較例は、実施形態同様に第1クラッチCL1の制御油圧をP3に増加させる。これにより、第1クラッチCL1がスリップ締結を開始し、モータジェネレータMGの第1軸MG1からエンジンEGのエンジン軸11にトルクが伝達される。したがって、エンジンEGの回転数が徐々に増加する。
【0060】
さらに、時刻t5で、比較例でモータジェネレータMGが発生させるトルクは、実施形態のT5よりも大きいT6となる。すなわち、比較例では、時刻t5においてモータジェネレータMGが有している運動エネルギが実施形態のものと比べて小さいため、時刻t5において新たに大きなトルクを発生させる必要がある。このため、時刻t5における比較例のモータジェネレータMGの出力Bwも、実施形態のW5よりも大きいW6となる。また、時刻t5におけるモータジェネレータMGの回転数Bnは、N2に維持されている。
【0061】
以上のように、本比較例では、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力はW6となり、前述した実施形態のもの(W5)よりも大きくなる。したがって、本比較例では、実施形態と比べて最大出力が大きなバッテリ21を用意する必要があるため、バッテリの大型化を招いたり、製造コストの増大を招いたりするおそれがある。
【0062】
続いて、図4を参照しながら、本実施形態のハイブリッドECU26において実行される処理の流れについて説明する。
【0063】
まず、ハイブリッドECU26は、図4のステップS1で、ドライバの要求トルクが、予め定められた閾値を超えているか否かを判定する。すなわち、ハイブリッドECU26は、ドライバが要求している加速に対応するトルクが、モータジェネレータMGだけでは発生させることができない大きさになっており、エンジンEGの始動が必要か否かを判定する。ドライバの要求トルクが閾値を超えていると判定した場合(S1:Yes)、ハイブリッドECU26は、ステップS2の処理に進む。
【0064】
次に、ハイブリッドECU26は、ステップS2で、モータジェネレータMGの引上回転数ΔNを設定する。前述したように、ハイブリッドECU26は、図3に示されるモータジェネレータMGの特性に基づいて、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力が最も小さくなるように、引上回転数ΔNを設定する。
【0065】
次に、ハイブリッドECU26は、ステップS3で、モータジェネレータMGの回転数の制御を行う。すなわち、ハイブリッドECU26は、モータジェネレータMGの回転数を、MG回転数引上制御の実行開始時のN1に引上回転数ΔNを加えたものとなるように決定し、その後のMG回転数引上制御においてモータジェネレータMGの回転数を増加させる等、モータジェネレータMGの回転数を適宜制御する。
【0066】
次に、ハイブリッドECU26は、ステップS4で、第2クラッチCL2の制御を行う。すなわち、ハイブリッドECU26は、第2クラッチCL2をスリップ締結させる等して、モータジェネレータMGから車軸16へのトルクの伝達を調整することで、ハイブリッド車両100の車速を適宜調整する。
【0067】
次に、ハイブリッドECU26は、ステップS5で、第1クラッチCL1の締結を開始する。これにより、モータジェネレータMGの第1軸MG1からエンジンEGのエンジン軸11にトルクを伝達し、エンジンEGの回転数が徐々に増加させ、エンジンEGの始動の補助を行うことができる。
【0068】
以上のように、本実施形態では、MG回転数引上制御の実行終了時のモータジェネレータMGの出力Awfupと、MG回転数降下制御の実行開始時のモータジェネレータMGの出力Bwfdwとが略同一になるように、それぞれの回転数を決定する。これにより、モータジェネレータMGによってエンジンEGの始動を補助しながらも、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力を抑制することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態では、降下制御実行部266は、第1クラッチCL1を締結させることによってエンジンEGの回転数を増加させ、エンジンEGにおける燃料の燃焼が開始した後に、第1クラッチCL1の締結を緩和又は第1クラッチCL1を開放する。これにより、エンジンEGは、始動初期はモータジェネレータMGから伝達されるトルクによって回転する一方で、始動後期はモータジェネレータMGから伝達されるトルクによらず、燃料の燃焼によって発生するトルクによって回転数を増加させる。このため、モータジェネレータMGに必要とされる最大出力をさらに小さなものにするとともに、バッテリ21に要求される最大出力も小さなものとすることが可能となる。
【0070】
また、本実施形態では、降下制御実行部266は、モータジェネレータMGにおけるトルクが増加したことに基づいて、モータジェネレータMGの回転数の減少を開始させる。モータジェネレータMGの回転数は、第1クラッチCL1が確実に締結されたことに基づいて減少を開始させることが好ましいが、第1クラッチCL1のシリンダ内の制御油圧に基づいて当該締結を検出することは、技術的困難性が高い。これに対し、本実施形態では、モータジェネレータMGにおけるトルクが増加したことに基づいて、第1クラッチCL1が締結されたと推定できるため、これに基づいてモータジェネレータMGの回転数の減少を開始させることで、同様の効果を得ることが可能となる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
10:駆動システム
11:エンジン軸
16:車軸
21:バッテリ
26:ハイブリッドECU(制御装置)
100:ハイブリッド車両(車両)
261:第1走行モード実行部
262:第2走行モード実行部
264:MG回転数決定部(モータ回転数決定部)
265:引上制御実行部
266:降下制御実行部
CL1:第1クラッチ
CL2:第2クラッチ
EG:エンジン
MG:モータジェネレータ(モータ)
MG1:第1軸
MG2:第2軸
図1
図2
図3
図4