特開2016-222184(P2016-222184A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222184(P2016-222184A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20161205BHJP
   F16H 55/28 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B62D3/12 501Z
   F16H55/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-112575(P2015-112575)
(22)【出願日】2015年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】妙中 真
(72)【発明者】
【氏名】吉永 眞悟
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030AB05
3J030BA08
3J030BB07
3J030CA10
(57)【要約】
【課題】長期にラトル音の発生を抑制することができるステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ステアリング装置1のラックシャフト8は、操舵部材の操舵角が操舵中立位置を含む所定の操舵角範囲にある状態でピニオンシャフトのピニオン歯と噛み合う複数の第1ラック歯81が形成された第1領域A1と、第1領域A1を除く領域であってピニオン歯と噛み合う複数の第2ラック歯82が形成された第2領域A2とを含む。第1ラック歯81の歯丈H1は、第2ラック歯82の歯丈H2よりも長くされている。第1ラック歯81の歯面81aが所定量摩耗した状態で第1ラック歯81の歯先部81bがピニオン歯間の歯底部に接触するように、第1ラック歯81の歯丈H1がピニオン歯の歯丈よりも長くされている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材の回転に応じて回転し、外周面にピニオン歯が形成されたピニオンシャフトと、
前記操舵部材の操舵角が操舵中立位置を含む所定の操舵角範囲にある状態で前記ピニオン歯と噛み合う複数の第1ラック歯が形成された第1領域と、前記第1領域を除く領域であって前記ピニオン歯と噛み合う複数の第2ラック歯が形成された第2領域とを含むラックシャフトと、を備え、
前記第1ラック歯の歯丈は、前記第2ラック歯の歯丈よりも長くされており、
前記第1ラック歯の歯面が所定量摩耗した状態で前記第1ラック歯の歯先部が前記ピニオン歯間の歯底部に接触するように、前記第1ラック歯の歯丈が前記ピニオン歯の歯丈よりも長くされている、ステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1ラック歯の歯面の歯形形状は、前記第2ラック歯の歯面の歯形形状と等しい基本歯形形状と、前記基本歯形形状から延設された延設歯形形状とを含む、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のラックバーは、スプリングによってピニオンに押し付けられている。ピニオン歯と噛み合うラック歯の噛合点の高さ(噛合点とラックバーの中心軸線との距離に相当)は、ラックバーの中央で最も高くなっており、ラックバーの中央から両端へ向かって段階的に低くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−344926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のラックバーを用いたステアリング装置では、車両の直進状態でピニオン歯と噛み合うラックバーの中央付近のラック歯は、使用頻度が高いため摩耗しやすい。そのため、長期に使用した後において、車両の直進走行時に、前記中央付近のラック歯とピニオン歯との間でラトル音が発生する虞がある。
この発明は、長期にラトル音の発生を抑制することができるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、操舵部材(2)の回転に応じて回転し、外周面にピニオン歯(7a)が形成されたピニオンシャフト(7)と、前記操舵部材の操舵角(θ)が操舵中立位置(C)を含む所定の操舵角範囲(−θ1≦θ≦+θ1)にある状態で前記ピニオン歯と噛み合う複数の第1ラック歯(81)が形成された第1領域(A1)と、前記第1領域を除く領域であって前記ピニオン歯と噛み合う複数の第2ラック歯(82)が形成された第2領域(A2)とを含むラックシャフト(8)と、を備え、前記第1ラック歯の歯丈(H1)は、前記第2ラック歯の歯丈(H2)よりも長くされており、前記第1ラック歯の歯面が所定量摩耗した状態で前記第1ラック歯の歯先部(81a)が前記ピニオン歯間の歯底部(7b)に接触するように、前記第1ラック歯の歯丈が前記ピニオン歯の歯丈(HP)よりも長くされている、ステアリング装置(1)である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記第1ラック歯の歯面の歯形形状(91)は、前記第2ラック歯の歯面(82a)の歯形形状(92)と等しい基本歯形形状(91a)と、前記基本歯形形状から延設された延設歯形形状(91b)とを含む、ステアリング装置である。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明では、第1ラック歯がピニオン歯と噛み合って使用される頻度は、第2ラック歯がピニオン歯と噛み合って使用される頻度よりも高い。このため、ステアリング装置を長期に使用した場合、第1ラック歯の歯面の摩耗が、第2ラック歯の歯面の摩耗よりも大きくなる。その第1ラック歯の歯面の摩耗が所定量に達すると、第1ラック歯の歯先部が、ピニオン歯間の歯底部に当接する。これにより、第1ラック歯は、歯面と歯先部とで、ピニオンシャフトと接触することになるため、第1ラック歯の歯面の摩耗の進行が抑制される。したがって、長期にわたってラックシャフトとピニオンシャフトとの間でのラトル音の発生を抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、長期に使用する前の段階において、ピニオンシャフトに対するラックシャフトの摺動抵抗は、第1領域と第2領域とで差異がない。このため、長期に使用する前の段階で、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るステアリング装置の概略正面図である。
図2】転舵機構の要部を示した図である。
図3】操舵部材の概略平面図である。
図4】ラックシャフトの概略側面図である。
図5】ピニオン歯と噛み合った第1ラック歯の周辺を示した概略図である。
図6】歯面が摩耗した後の第1ラック歯の周辺を示した概略図である。
図7】操舵角とヨーククリアランスとの関係を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略正面図である。
ステアリング装置1は、一端にステアリングホイール等の操舵部材2が連結されたステアリングシャフト3と、自在継手4を介してステアリングシャフト3に連結されたインターミディエイトシャフト5とを備える。また、ステアリング装置1は、自在継手6を介してインターミディエイトシャフト5に一端が連結され、他端近傍の外周面にピニオン歯7aが形成されたピニオンシャフト7と、ピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aが形成されたラックシャフト8とを備える。ピニオンシャフト7およびラックシャフト8により、ラックアンドピニオン機構からなる転舵機構Aが構成されている。
【0011】
ラックシャフト8は、車両の幅方向(左右方向)に延びる棒状である。ラックシャフト8は、図示しないブッシュ等を介して、筒状のラックハウジング9内でその軸方向Z1に移動可能に支持されている。
軸方向Z1に関するラックシャフト8の両端は、ラックハウジング9の両側へ突出し、各端部にはそれぞれ継手を介してタイロッド10が連結されている。各タイロッド10は、対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪11に連結されている。
【0012】
ピニオンシャフト7は、操舵部材2の回転に応じて回転する。具体的には、ピニオンシャフト7は、ステアリングシャフト3およびインターミディエイトシャフト5を介して操舵部材2の回転が伝達されることによって回転する。ピニオンシャフト7に伝達された回転は、ピニオン歯7aとラック歯8aとの噛み合いによってラックシャフト8の軸方向Z1の移動に変換される。ラックシャフト8が軸方向Z1に移動することによって、転舵輪11が転舵される。
【0013】
転舵機構Aの要部を示した図2を参照して、ピニオンシャフト7は、例えば玉軸受である第1軸受12と、例えば円筒ころ軸受である第2軸受13とによって、ピニオンハウジング14内に回転可能に支持されている。ピニオンハウジング14は、ラックハウジング9と単一の材料で一体に形成されている。
ステアリング装置1は、ラックハウジング9に形成された円孔からなる収容部16内にラックシャフト8側に向かって進退可能に収容され且つラックシャフト8のラック歯8aの背面8bを摺動可能に支持するラックガイド18を備えている。また、ステアリング装置1は、収容部16においてラックシャフト8側とは反対側に設けられた外部開口端19に固定されたヨークプラグ20と、ラックガイド18とヨークプラグ20との間に介在するコイルばね等の付勢部材21とを備えている。
【0014】
ラックハウジング9は、ラックシャフト8を隔ててピニオンシャフト7とは反対側に配置されている。
ラックガイド18は、ラックシャフト8に対向する第1面181と、第1面181の反対側に設けられた第2面182と、円筒面からなる外周183とを有している。ラックガイド18の第1面181には、ラックシャフト8の背面8bの形状に概ね一致する形状の凹面25が形成されている。凹面25に沿うように湾曲状の摺接板26が取り付けられており、摺接板26が、ラックシャフト8の背面8bに摺接する。
【0015】
ラックガイド18の外周183に設けられた複数の環状の収容溝27のそれぞれに、例えばOリング等の環状の弾性部材28が収容され、保持されている。ラックガイド18の外径は、収容部16の内径よりも僅かに小さくされている。ラックガイド18は、弾性部材28が収容部16の内周16aを摺動することで、ラックシャフト8の中心軸線Jに対する直交方向Vに収容部16内を移動するようになっている。
【0016】
ラックガイド18の第2面182には、付勢部材21の一部を収容する例えば円孔からなる収容凹部29が設けられている。第2面182は、直交方向Vにおけるラックシャフト8側のヨークプラグ20の対向面201と直交方向Vに対向している。
ヨークプラグ20の外周203に設けられた1ないし複数の環状の収容溝33に、例えばOリング等の環状の弾性部材からなるシール部材34が収容され、保持されている。
【0017】
付勢部材21は、ヨークプラグ20の対向面201と、ラックガイド18の収容凹部29の底291との間に圧縮された状態で介在し、ラックガイド18を直交方向Vにおけるラックシャフト8側へ弾性的に付勢している。ラックガイド18とヨークプラグ20との間の隙間のことをヨーククリアランスCLという。
図3は、操舵部材2の概略平面図である。図4は、ラックシャフト8の概略側面図である。
【0018】
図4を参照して、ラック歯8aは、第1ラック歯81と第2ラック歯82とによって構成されている。ラックシャフト8は、ラック歯形成領域として、第1領域A1と一対の第2領域A2とを含む。第1領域A1は、軸方向Z1に関して一対の第2領域A2の間に配置されている。
第1領域A1には、図3に示すように、操舵部材2の操舵角θが、操舵中立位置C(θ=0の位置)を含む所定の操舵角範囲(−θ1≦θ≦+θ1)にある状態でピニオン歯7a(図2参照)と噛み合う複数の第1ラック歯81が形成されている。
【0019】
図4に示すように、第2領域A2は、ラック歯形成領域において、第1領域A1を除く領域である。第2領域A2には、ピニオン歯7a(図2参照)と噛み合う複数の第2ラック歯82が形成されている。
第1ラック歯81の歯丈H1は、第2ラック歯82の歯丈H2よりも長い(H1>H2)。第1ラック歯81の歯面81aの歯形形状91は、第2ラック歯82の歯面82aの歯形形状92と等しい基本歯形形状91aと、基本歯形形状91aから歯先部81b側へ延設された延設歯形形状91bとを含む。
【0020】
図5は、ピニオン歯7aと噛み合った第1ラック歯81の周辺を示した概略図である。図5を参照して、第1ラック歯81の歯丈H1は、ピニオン歯7aの歯丈HPよりも長い(H1>HP)。第1ラック歯81の歯先部81bとピニオン歯7a間の歯底部7bとは、直交方向Vに互いに間隔を隔てている。
以下では、長期の使用によるラック歯8aの摩耗について説明する。
【0021】
車両の走行中において、ラックシャフト8は、付勢部材21から与えられる直交方向Vの付勢力F(図2参照)でピニオンシャフト7に押し付けられた状態で、軸方向Z1に摺動する。これにより、ラック歯8aが徐々に摩耗する。
第1ラック歯81がピニオン歯7aと噛み合って使用される頻度は、第2ラック歯82がピニオン歯7aと噛み合って使用される頻度よりも高い。このため、ステアリング装置1を長期に使用した場合、第1ラック歯81の歯面81aの摩耗が、第2ラック歯82の歯面82aの摩耗よりも大きくなる。
【0022】
しかし、第1領域A1の第1ラック歯81の歯丈H1が、第2領域A2に形成された第2ラック歯82の歯丈H2よりも長くされており、第1ラック歯81の歯丈H1が、ピニオン歯7aの歯丈HPよりも長くされている。
そのため、歯面81aが摩耗した後の第1ラック歯81の周辺を示した概略図である図6に示すように、その第1ラック歯81の歯面81aの摩耗が所定量に達すると、第1ラック歯81の歯先部81bが、ピニオン歯7a間の歯底部7bに当接する。これにより、第1ラック歯81は、歯面81aと歯先部81bとで、ピニオンシャフト7と接触することになるため、第1ラック歯81の歯面81aの摩耗の進行が抑制される。そのため、ヨーククリアランスCL(図2参照)の増大を抑制できる。したがって、長期にわたってラックシャフト8に対する付勢部材21の付勢力Fを維持でき、ラックシャフト8とピニオンシャフト7との間でのラトル音の発生を抑制することができる。
【0023】
また、最も摩耗し易い部分(第1ラック歯81の歯面81a)の摩耗が抑制されるので、第2ラック歯82と第1ラック歯81との摩耗量の差が小さくなる。したがって、操舵部材2の操舵角変位に対してヨーククリアランスCL(図2参照)の変動を低減することができる。よって、操舵部材2の操舵角変位に対して、操舵部材2の操舵に必要なトルクの変動が小さくなるので、操舵フィーリングが向上する。
【0024】
また、第1ラック歯81の歯面81aの歯形形状91は、第2ラック歯82の歯面82aの歯形形状92と等しい基本歯形形状91aと、基本歯形形状91aから延設された延設歯形形状91bとを含むので、長期に使用する前の段階において、ピニオンシャフト7に対するラックシャフト8の摺動抵抗は、第1領域A1と第2領域A2とで差異がない。このため、長期に使用する前の段階で、良好な操舵フィーリングを得ることができる。
【0025】
また、ヨーククリアランスCLの変動が低減されるので、付勢部材21として、図2のようなコイルばねに代えて、コイルばねと比較して変位量の小さい皿ばねを用いることも可能となる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
図4の実施形態のラックシャフト8を有するステアリング装置1である。ラックシャフト8において、第1ラック歯81の歯丈H1が第2ラック歯82の歯丈H2よりも0.2mm長くされている(H1−H2=0.2mm)。
(比較例1)
実施例1に対してラックシャフトのみが異なる。比較例1では、ラックシャフトにおいて、すべてのラック歯が均一な形状に形成されている。
(摺動耐久試験)
実施例1および比較例1を用いて、操舵部材からの入力によりラックシャフトを軸方向にフルストロークで3万回往復摺動させる耐久試験を行い、耐久後に、操舵角θを変化させたときのヨーククリアランスCLの量を測定した。その結果、図7に示す結果を得た。
【0027】
図7に示すように、実施例1では、比較例1と比較して、使用頻度が高い所定の操舵角範囲(−θ1≦θ≦+θ1)におけるヨーククリアランスCLが、大幅に抑制されている。これにより、実施例1では、ラックシャフト8の第1ラック歯81の摩耗が抑制されることが推察される。
また、実施例1では、比較例1と比較して、操舵角θの変化に対するヨーククリアランスCLの変動幅が、格段に小さくなっている。これにより、実施例1では、操舵角θの変化に対するラックシャフト8の摺動抵抗の変動幅が小さくなることが推察される。
【符号の説明】
【0028】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、7…ピニオンシャフト、7a…ピニオン歯、7b…歯底部、8…ラックシャフト、81…第1ラック歯、81a…歯面、81b…歯先部、82…第2ラック歯、82a…歯面、91…歯形形状、91a…基本歯形形状、91b…延設歯形形状、92…歯形形状、A1…第1領域、A2…第2領域、C…操舵中立位置、H1…歯丈、H2…歯丈、HP…歯丈、θ…操舵角、−θ1≦θ≦+θ1…所定の操舵角範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7