【解決手段】前方に向けて開口するようにアウタカバー14に形成された空気取入口24と、上方に向けて開口するようにアウタカバー14に形成された空気吹出口26と、アウタカバー14内に画成されて空気取入口24と空気吹出口26とを互いに連通する第1連通路28と、第1連通路28から下方に向けてアウタカバー14内に延設され、アウタカバー14外と連通する第2連通路32とを有する構成とする。第1連通路28内の空気が空気吹出口26から吹き出されることにより、剥離に起因する空力騒音が低減される。また、雨天走行時には、第1連通路28に浸入した雨水が第2連通路32から排出されることにより、空力騒音低減効果の低下が抑制される。
前記第1連通路は、車幅方向において前記第2連通路に向けて下り勾配をなす傾斜底部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用アウタミラー装置。
前記第2連通路の前記カバー外に向けた開口が、前記カバーの車両取付部の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用アウタミラー装置。
前記第1連通路が、前記空気取入口の断面積及び前記空気吹出口の断面積よりも大きな断面積を有する気液分離室を含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用アウタミラー装置。
前記空気取入口及び前記空気吹出口の少なくとも一方に開口を分割するように設けられた仕切り部材を更に有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の車両用アウタミラー装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミラーカバーは、多くの場合、空力抵抗の低減のために、車体前方に向けて凸をなす砲弾形の流線形状をしている。特許文献1に示されている車両用アウタミラー装置においても、砲弾形の流線形状をしたミラーカバーの前部において、空気取入口が前方に向けて開口している。そのため、降雨時や霧発生時等の雨天走行時には、空気取入口には走行風(空気)が取り込まれるだけでなく、雨滴や霧等の水分も一緒に取り込まれ、連通路にこれらの水分(以下、雨水と呼ぶ)が溜まる虞がある。空気取入口に取り込まれた雨水が走行風によって空気吹出口から外部に吹き出され、連通路に溜まらない場合であっても、連通路を流れる空気の抵抗が雨水によって大きくなり、空気吹出口から吹き出される気流が弱くなることで所期の空力騒音低減効果が得られない虞がある。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑み、剥離に起因する空力騒音の低減しつつ、雨天走行時にも雨水浸入に起因する空力騒音低減効果の低下を抑制できる車両用アウタミラー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、ミラー本体(12)と、前向きに凸曲面をなす外壁面をもって前記ミラー本体の車体前方側を覆うカバー(14)とを有する車両用アウタミラー装置(10)であって、前方に向けて開口するように前記カバーに形成された空気取入口(24)と、上方に向けて開口するように前記カバーに形成された空気吹出口(26)と、前記カバー内に画成されて前記空気取入口と前記空気吹出口とを互いに連通する第1連通路(28)と、前記第1連通路から下方に向けて前記カバー内に延設され、前記カバー外と連通する第2連通路(32)とを有する構成とする。
【0008】
この構成によれば、空気取入口から第1連通路に流れ込んだ空気が空気吹出口から吹き出されることにより、剥離に起因する空力騒音が低減される。また、雨滴等が空気取入口等から第1連通路に浸入したとしても、浸入した雨水は第2連通路を通って下方に案内され、外部に排出される。つまり第2連通路がドレーンとして機能する。従って、雨天走行時にも連通路に雨水が溜まることがなく、雨水浸入に起因する空力騒音低減効果の低下が抑制される。
【0009】
また、上記の発明において、前記第1連通路(28)は、前記空気取入口(24)から後方に向けて下り勾配をなす傾斜底部(28C)を有し、前記第2連通路(32)が前記傾斜底部に開口する構成とするとよい。
【0010】
この構成によれば、空気取入口から第1連通路に取り入れられる空気量が少ない低速走行時にも、第1連通路に浸入した雨水が傾斜底部により第2連通路へ案内され、第2連通路から外部に排出される。
【0011】
また、上記の発明において、前記第1連通路(28)は、車幅方向において前記第2連通路(32)に向けて下り勾配をなす傾斜底部(28C)を有する構成とするとよい。
【0012】
この構成によれば、第1連通路に浸入した雨水が傾斜底部により車幅方向に案内され、第2連通路から外部に排出される。そのため、第2連通路の幅を縮小することが可能になる。また、第2連通路の配置自由度が増す。
【0013】
また、上記の発明において、前記第2連通路(32)の前記カバー外に向けた開口が、前記カバーの車両取付部の近傍に設けられた構成とするとよい。
【0014】
この構成によれば、第2連通路から外部に排出される雨水の車両側方への撒き散らしが抑制される。これにより、排出された雨水が車両側方の2輪車や歩行者にふりかかることを防止できる。
【0015】
また、上記の発明において、前記第2連通路の前記カバー外に向く開口(32B)が、前記カバー(14)の底面部(14B)に設けられた構成とするとよい。
【0016】
この構成によれば、第2連通路がカバーの外観に与える影響が小さくなり、第2連通路の開口形状や配置の自由度を向上させることができる。また、カバーの底面部に発生する負圧を利用して第2連通路から雨水を積極的に排出することができる。
【0017】
また、上記の発明において、前記第1連通路(28)が、前記空気取入口(24)の断面積及び前記空気吹出口(28)の断面積よりも大きな断面積を有する気液分離室を含む構成とするとよい。
【0018】
この構成によれば、空気取入口から第1連通路に取り入れられた雨滴等が気液分離室にて効果的に空気と分離され、雨水が空気吹出口へ押し出されることが抑制される。
【0019】
また、上記の発明において、前記空気取入口(24)及び前記空気吹出口(28)の少なくとも一方に開口を分割するように設けられた仕切り部材(42)を更に有する構成とするとよい。
【0020】
この構成によれば、空気取入口や空気吹出口に落ち葉等の異物が侵入することが仕切り部材により抑制される。これにより、異物の侵入によって空力騒音低減効果が減少することが抑制される。
【発明の効果】
【0021】
このように本発明によれば、剥離に起因する空力騒音の低減しつつ、雨天走行時にも雨水浸入に起因する空力騒音低減効果の低下を抑制できる車両用アウタミラー装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る車両用アウタミラー装置について、いくつかの実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0024】
≪第1実施形態≫
まず、
図1〜
図4を参照して第1実施形態に係る車両用アウタミラー装置を説明する。
図1に示されるように、アウタミラー装置10は、自動車のサイドドア2の前側部分に固定されている取付プレート4にアタッチメント6を介して車体の外側方に突出するように取り付けられるアウトサイドミラー装置である。アウタミラー装置10は、平面鏡或いは凸面鏡によるミラー本体(鏡体)12と、ミラー本体12の車体前方側を覆う樹脂成形品によるアウタカバー14とを有する。なお、図示していないが、アウタミラー装置10は、アタッチメント6を介してサイドドア2に取り付けるように構成されてもよい。
【0025】
アウタカバー14は、
図2〜
図4に示されるように、上壁14Aと、下壁14Bと、前壁14Cと、左右(外側及び内側)の側壁14D、14Eとを有し、隣接する壁同士が曲面形状の壁によって滑らかに接続され、車体後方側の全体が開口していて、全体として前向きに凸曲面をなす外壁面によって横長(左右方向に長い)の砲弾形の流線形状をしている。
【0026】
図4に示されるように、アウタカバー14の内側にはインナカバー16が固定されている。インナカバー16は、車体後方側の全体が開口した箱形の樹脂成形品として構成され、開口部16Aを画成するカール形状の後端縁部16Bによってアウタカバー14の後端縁部14Fに面一の外壁面になるように接続されている。
【0027】
インナカバー16内の開口部16Aの近傍にミラー本体12が配置されている。インナカバー16は、車体前方側に、自身の内部空間16Cとアウタカバー14の内部空間14Gとを区切る隔壁16Dを有しており、隔壁16Dの車体後方側、換言すると、内部空間16Cに、ミラー本体12の角度を可変設定する電動式の駆動装置18を内蔵している。
【0028】
インナカバー16は隔壁16Dから車体前方側に延出した拡張壁16Eを有している。隔壁16Dと拡張壁16Eとの間の空間には電気ボックス(機器)20が配置され、拡張壁16Eの車体前方側の内室(内部空間14G)には内蔵用機器22が配置されている。
【0029】
このようにして、アウタカバー14内及びインナカバー16内には、駆動装置18、電気ボックス20、内蔵用機器22が収容されている。駆動装置18、電気ボックス20、内蔵用機器22は、全てインナカバー16に固定されており、これらを取り付けられたインナカバー16がサブアッシーとしてアウタカバー14に装着される構造になっている。
【0030】
図2及び
図3に示されるように、アウタカバー14の車体前側、つまり前壁14Cには空気取入口24が前方に向けて開口している。アウタカバー14の空気取入口24よりも車体後側の上壁14Aには空気吹出口26が上方に向けて開口している。空気取入口24及び空気吹出口26は、車体幅方向、つまり左右方向に延在するスロット状の開口によって構成されている。空気吹出口26は、車両の走行によって上壁14Aの外壁面に沿って流れる空気流Faが上壁14Aの外面から剥離する剥離部(自然剥離部)Xよりも空気流Faにおける上流側(車体前側)に設けられている。剥離部Xは左右方向に線状に延在するため、空気吹出口26は剥離部Xの略全域に亘って剥離部Xに略平行に左右方向に延在するスロット状開口によって構成されている。
【0031】
空気取入口24の車体内側(車室内側)の端部24Aと空気吹出口26の車体内側(車室内側)の端部26Aとの左右方向の位置は略同じであるが、空気取入口24の車体外側の端部24Bは空気吹出口26の車体外側の端部26Bよりも車体内側の位置にある。空気吹出口26は上壁14Aの左右方向の略全域(剥離部Xの略全域)に亘って延在しているのに対して空気取入口24は、空気吹出口26よりもスロット長が短く、空気吹出口26に対して車体内側に偏って形成されている。
【0032】
空気取入口24及び空気吹出口26のスロット幅は、各々全長に亘って一定であり、空気取入口24のスロット幅は空気吹出口26のスロット幅よりも大きく、空気取入口24の開口面積と空気吹出口26の開口面積とは略同一である。
【0033】
図4に示されるように、空気取入口24と空気吹出口26とはアウタカバー14の内側に形成された第1連通路28によって互いに連通している。第1連通路28の前面28Aは、車体後方且つ下方に向けて凹をなすアウタカバー14の上壁14Aの内面により画成されている。つまり、第1連通路28の前面28Aは車体後方且つ下方に向けて凹をなす湾曲形状をしている。第1連通路28の後面28Bは、鉤形に折曲して車体後方且つ下方に向けて凸形状をなす後壁部材30の内面により画成されている。つまり、第1連通路28の後面28B及び底面28Cは車体前方且つ上方に向けて凹をなす屈曲形状をしている。従って、第1連通路28は、空気取入口24や空気吹出口26の開口面積よりも大きな断面積を有するチャンバ(気液分離室)を形成している。
【0034】
後壁部材30は、内部空間14G(機器を収容する内室)の前側上部を画成する隔壁をなすものでもあり、アウタカバー14とは別の樹脂成形品によって構成されてアウタカバー14の内面に接着等によって固定されている。後壁部材30は、上面が空気取入口24の下縁と面一となるようにアウタカバー14に接合され、車体後方へ延びる底壁部30Aと、底壁部30Aの後端において立ち上がり、前面が空気吹出口26の後縁と面一となるようにアウタカバー14に接合される後壁部30Bとを有している。底壁部30Aの上面は、空気取入口24から後方に向けて下り勾配をなす第1連通路28の底面28Cを画成している。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、第1連通路28の車体内側の側面28Dを画成する側壁は、アウタカバー14或いは後壁部材30に一体成形され、空気取入口24の車体内側の端部24Aと空気吹出口26の車体内側の端部26Aとを直線で結ぶように延在した偏平な壁によって構成されている。第1連通路28の車体外側の側面28Eを画成する側壁は、アウタカバー14或いは後壁部材30に一体成形され、空気取入口24の車体外側の端部24Bと空気吹出口26の車体外側の端部26Bとを、曲線を含む折れ線で結ぶように延在した湾曲した壁によって構成されている。
【0036】
図4に示されるように、第1連通路28は内部空間14G側に膨出することになるが、内部空間14Gの下側に配置されている内蔵用機器22の上方にできるデッドスペースに配置されているので、デッドスペースの有効活用のもとに第1連通路28がアウタカバー14の大型化を招くことはない。換言すると、内蔵用機器22を内部空間14Gの下側にオフセット配置することによって内蔵用機器22の上流側にスペースを確保し、このスペースに第1連通路28が配置されることにより、第1連通路28が上面視で内蔵用機器22と重なる部分を含む配置になり、デッドスペースの有効利用のもとにアウタカバー14の小型化が可能になる。
【0037】
図2及び
図4に示されるように、アウタカバー14の内部空間14Gには、第1連通路28の車体内側の端部から下方且つ車体内側に向けて延設され、アウタカバー14の外部と連通する第2連通路32が形成されている。第2連通路32は、第1連通路28に浸入した雨水を外部に排出するためのドレーン(排水路)であり、後壁部材30の底壁部30Aの後部(第1連通路28の底面28C)の車体内側の端部に開口する上端32Aと、アウタカバー14の底面をなす下壁14Bの車体内側の端部近傍、換言すると、車両への取付部をなすアタッチメント6(
図1)の近傍に開口する下端32Bとを有している。つまり、第2連通路32の下方に向けて開口する排水口としての下端32Bは、アウタカバー14の下壁14Bに形成されている。
【0038】
第2連通路32は、パイプ状の通路部材34によって円形断面の直線状に形成されている。通路部材34は、後壁部材30と一体に形成されてもよく、後壁部材30と別体に形成されてもよい。或いは、通路部材34は、可撓性を有するホース状とされて後壁部材30やアウタカバー14に接続されてもよい。第2連通路32は、上記の通りドレーンであるため、第1連通路28に比べて断面積が小さく、第1連通路28のように大きな左右方向寸法を有する必要はない。第2連通路32の下端32Bの左右方向寸法は、例えば、空気吹出口26の左右方向寸法の10分の1以下や、20分の1以下でよい。
【0039】
正面視(
図2)において、左右方向に延在する空気取入口24は、車体内側ほど低くなる向きに傾斜した直線形状とされている。そのため、後壁部材30の底壁部30Aも空気取入口24に沿って車体内側ほど低くなる向きに傾斜している。つまり、底壁部30Aの上面は、車幅方向において車体内側に配置された第2連通路32に向けて下り勾配をなす第1連通路28の底面28Cを画成している。
【0040】
図4に示されるように、自動車が走行すると、アウタミラー装置10は空気の流れ場中に置かれることになり、アウタカバー14の前壁14Cに衝突した空気は、上壁14A、下壁14B、左右の側壁14D、14Eの外壁面に沿って車体後方に向けて流れる。このうち、上壁14Aの外壁面に沿って流れる空気流Faは、剥離部Xに到達するまでは、剥離することなく上壁14Aの外壁面に沿って流れ、剥離部Xに到達した後は、上壁14Aの外壁面に沿って流れることなく、外壁面から剥離した流れになる。これにより、剥離部Xよりも下流側に、空気流Faの剥離前後の主流方向の流速差に起因して2次元渦が発生する。2次元渦は、騒音の発生源になると共に、下流側にて3次元渦に変化して逸散するため、更なる騒音発生源になる。
【0041】
このことに対して、本実施形態のアウタミラー装置10では、アウタカバー14の前壁14Cに衝突した空気の一部が空気取入口24から第1連通路28に入り、第1連通路28を流れて空気吹出口26から空気流Fbとして上壁14Aの上方に向けて吹き出る。空気吹出口26から吹き出した空気による空気流Fbの流速は第1連通路28における流路抵抗によって空気流Faの流速よりも遅く、空気流Fbは、剥離部Xよりも上流側において空気流Faに衝突し、空気流Faに擾乱を与えると共に空気流Faに対して空気抵抗になって空気流Faの流速を低下させる働きをする。この働きは、空気吹出口26が、左右方向に線状に延在する剥離部Xの略全域に亘って延在しているから、剥離部Xの略全域に亘って生じる。
【0042】
空気流Faの流速が低下することにより、剥離前後の主流方向の流速差が小さくなると共に、剥離部X付近における外壁面からの法線方向の離間距離に対する空気流Faの主流方向の平均速度が低下し、平均速度の急激な変化も緩和される。
【0043】
これらのことにより、剥離部X付近の空気流Fa、つまり境界層の厚さが厚くなり、剥離部Xよりも下流側の2次元渦の発生が抑制される。2次元渦の発生が抑制されることにより、3次元渦の発生も抑制される。従って、2次元渦ならびに3次元渦に起因する騒音が低減し、車内の静粛性が向上する。
【0044】
一方、降雨時に自動車が走行すると、本実施形態のアウタミラー装置10では、空気取入口24がアウタカバー14の前壁14Cに前方に向けて開口するように形成されていることから、雨滴等が空気と共に空気取入口24から第1連通路28内に入り込む。第1連通路28に浸入した雨水は、空気取入口24から空気が流入してくるために空気取入口24から抜け難く、空気取入口24よりも高い位置に空気吹出口26が形成されているために空気吹出口26からも抜け難い。雨水は、第1連通路28内に溜まると第1連通路28を流れる空気の抵抗になり、空気吹出口26から吹き出る空気流Fbの流速を低下させる。そのため、空気流Faの2次元渦ならびに3次元渦に起因する騒音低減効果が低下する。
【0045】
このことに対して、本実施形態のアウタミラー装置10では、第1連通路28から下方に向けてアウタカバー14内に延設された第2連通路32がアウタカバー14の外部と連通していることにより、第1連通路28に浸入した雨水が重力等により第2連通路32を介して外部に排出される。
【0046】
特に、後壁部材30の底壁部30Aが、空気取入口24から後方に向けて下り勾配をなす第1連通路28の底面28Cを画成しており、傾斜した底面28Cの最も低い後部に第2連通路32の上端32Aが開口しているため、第1連通路28に浸入した雨水は底面28Cに沿って流れて(案内されて)速やかに第2連通路32に集まる。また、底壁部30Aが、車幅方向において第2連通路32が設けられた車体内側に向けて下り勾配をなすように第1連通路28の底面28Cを画成しているため、雨水が一層速やかに第2連通路32に集まる。
【0047】
また、第1連通路28は、空気取入口24の断面積及び前記空気吹出口26の断面積よりも大きな断面積を有するチャンバを有しており、チャンバが気液分離室として機能する。そのため、霧雨が降っているような時であっても、空気取入口24から浸入した雨滴等はチャンバ内で空気と分離され、傾斜した底面28Cにより案内されて第2連通路32に集まる。
【0048】
車両走行中には第1連通路28内は正圧になっており、第2連通路32が下方に向けて開口しているため、第1連通路28内で第2連通路32の上端32Aに集まった雨水は、第2連通路32内を下方に向けて流れる空気により押し出されるように排水される。従って、第1連通路28内に雨水が溜まることがなく、雨天走行時にも雨水浸入に起因して空力騒音低減効果が低下することが抑制される。
【0049】
そして、第2連通路32の下方に向けて開口する下端32Bがアウタカバー14の車体内側に設けられているため、第2連通路32を通って外部に排出される雨水が車体外方(側方)に飛び散ること、つまり雨水の車両側方への撒き散らしが防止される。これにより、自動車の側方を2輪車が走行している場合や歩行者の近くを自動車が走行する場合に、第2連通路32から排出された雨水が2輪車や歩行者にふりかかることが防止される。
【0050】
また、車両走行中、アウタカバー14の上壁14A及び下壁14Bの表面近傍では、空気流Faが高速の層流を形成することによって負圧が発生する。そして、第2連通路32の下端32Bは、アウタカバー14の底面部をなす下壁14Bのうち当該負圧が発生する部分に開口している。そのため、第2連通路32の下端32Bに作用する負圧により、第1連通路28内で第2連通路32に集まった雨水は第2連通路32に吸引されるように強制的に排水される。従って、第1連通路28内に雨水が溜まることが確実に防止される。また、排水溝としての第2連通路32の下端32Bをなす開口は、アウタカバー14の底面部である下壁14Bに設けられているため、目立つことがなく、アウタカバー14の外観に与える影響が小さい。そのため、第2連通路32の開口の形状や配置の自由度が向上する。
【0051】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る車両用アウタミラー装置を、
図5を参照して説明する。なお、
図5において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0052】
本実施形態では、第1連通路28の前面28Aが、車体後方且つ下方に向けて凸をなす湾曲形状の前壁部材40により画成されている。つまり、第1連通路28の前面28Aは車体後方且つ下方に向けて凸をなす湾曲形状をしている。前壁部材40は、アウタカバー14とは別の樹脂成形品によって構成されてアウタカバー14の内面に接着等によって固定されている。前壁部材40は、後壁部材30と一体に形成されてもよく、後壁部材30とは別体として構成されてもよい。第1連通路28の後面28Bを画成する後壁部材30は、第1実施形態と同様に鉤形に折曲している。
【0053】
これにより、後壁部材30と前壁部材40との間に形成される第1連通路28は、空気取入口24から後方斜め下方に延びる断面積が略一定の上流部分と、上流部分の下流端から断面積が漸増した後に漸減するチャンバと、チャンバの下流端から上方斜め後方に延びる断面積が略一定の下流部分とを有する。
【0054】
空気取入口24から第1連通路28に入った空気の多くは、後面28Bに沿って流れることから、本実施形態でも第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。即ち、第1連通路28に浸入した雨滴等はチャンバで効果的に空気と分離され、第1連通路28内の雨水は傾斜した底面28Cに沿って流れて第2連通路32に集まり、重力、第1連通路28の正圧及びアウタカバー14の下方の負圧等によって雨水が第2連通路32を介して外部に排出される。一方、本実施形態では、第1連通路28の上流部分及び下流部分が断面積を一定に保って直線状に延びることから、第1連通路28を流れる空気の流れに乱れが発生することが抑制され、空気吹出口26から外部に吹き出る空気流Fbの流速を高めることができる。
【0055】
≪第3実施形態≫
次に、本発明による車両用アウタミラー装置の第3実施形態を、
図6、
図7を参照して説明する。なお、
図6、
図7において、
図2、
図4に対応する部分は、
図2、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、後壁部材30の底壁部30A(
図7)により画成される第1連通路28の底面28C(
図6)が、左右方向の中間部分であって前後方向の後端部分に向けて下り勾配となっている。そして、第2連通路32は、第1連通路28の底面28Cの最も低い位置、つまり左右方向の中間部分であって前後方向の後端部分から下方に向けて延設されている。
【0057】
本実施形態では、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。即ち、第1連通路28に浸入した雨滴等はチャンバで効果的に空気と分離され、第1連通路28内の雨水は傾斜した底面28Cに沿って流れて第2連通路32に集まり、重力、第1連通路28の正圧及びアウタカバー14の下方の負圧等によって雨水が第2連通路32を介して外部に排出される。加えて、本実施形態では、第1連通路28の底面28Cの傾斜角度を第1実施形態に比べて大きくすることができる。従って、空気取入口24の左右方向の寸法が大きな場合であっても、第1連通路28に入り込んだ雨水をより速やかに第2連通路32に集めることができる。
【0058】
≪第4実施形態≫
次に、本発明による車両用アウタミラー装置の第4実施形態を、
図8を参照して説明する。なお、
図8において、
図2に対応する部分は、
図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、後壁部材30の底壁部30A(
図4参照)により画成される第1連通路28の底面28C(
図6)が、車体内側の端部であって前後方向の後端部分と、左右方向の中間部分であって前後方向の後端部分との2箇所に向けて下り勾配となっている。そして、第1連通路28の底面28Cのうちで周辺に比べて最も低くなるこれらの2箇所から下方に向けて2本の第2連通路32が延設されている。
【0060】
本実施形態では、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる他、第1連通路28の底面28Cの傾斜角度を第1実施形態や第2実施形態に比べて大きくすることができる。従って、空気取入口24の左右方向の寸法が大きな場合であっても、第1連通路28に入り込んだ雨水をより速やかに第2連通路32に集めることができる。
【0061】
≪第5実施形態≫
次に、本発明による車両用アウタミラー装置の第5実施形態を、
図9を参照して説明する。なお、
図9において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、第1連通路28の前面28Aがアウタカバー14の上壁14Aの内面により画成されているが、アウタカバー14の第1連通路28を画成する部分は、他の部分よりも肉厚にされており、鉤形に折曲して車体後方且つ下方に向けて凸形状をなしている。そして、第1連通路28は、アウタカバー14及び後壁部材30の間に一定断面積を有するように形成されている。
【0063】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の作用、効果が得られる。また、空気取入口24から第1連通路28に流入した空気は、概ね一定の速度で第1連通路28内を乱れることなく流れる。これにより、空気吹出口26から吹き出る空気流Fbの流速を高めることができる。なお、アウタカバー14の第1連通路28を画成する部分及び後壁部材30を、車体後方且つ下方に向けて凸となる湾曲形状にすることで屈曲部を無くし、第1連通路28が滑らかに連続するようにしてもよい。この構成により、空気吹出口26から吹き出る空気流Fbの流速を一層高めることができる。
【0064】
≪第6実施形態≫
本発明による車両用アウタミラー装置の第6実施形態を、
図10を参照して説明する。なお、
図10において、
図2に対応する部分は、
図2に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、アウタカバー14に形成される空気取入口24及び空気吹出口26が、左右方向に分断された複数のスロット状の開口によって構成されている。言い換えれば、空気取入口24及び空気吹出口26に、スロット状の開口を長手方向に分割する複数の仕切り板42が設けられている。仕切り板42が設けられることにより、空気取入口24及び空気吹出口26のそれぞれの最大寸法(左右方向の寸法)は小さくなり、落ち葉等の異物が空気取入口24及び空気吹出口26から第1連通路28内に侵入することが防止される。即ち、仕切り板42が第1連通路28への異物の侵入を防ぐ邪魔板として機能する。これにより、第2連通路32が異物で詰まる虞が低減し、雨水の確実な排水が確保される。
【0066】
本実施形態の仕切り板42は、アウタカバー14に一体に形成されている。そのため、アウタカバー14が射出成形される際に同時に仕切り板42が形成され、仕切り板42の取付作業が不要であり、別部材の仕切り板42も必要ない。他の実施形態として、別部材として形成した仕切り板42を、第1実施形態のように形成したアウタカバー14に対して空気取入口24及び空気吹出口26の少なくとも一方を分割するように取り付けてもよい。
【0067】
≪第7実施形態≫
本発明による車両用アウタミラー装置の第7実施形態を、
図11を参照して説明する。なお、
図11において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、後壁部材30は、上面が空気取入口24の下縁と面一となるように、且つ前面が空気吹出口26の後縁と面一となるようにアウタカバー14に接合され、車体後方且つ下方に向けて凸形状をなす湾曲形状を有している。後壁部材30の内面、即ち第1連通路28の後面28Bは、空気吹出口26から空気吹出口26に向けて、前方に向けて下り勾配となる曲面となる底面28Cを形成している。図示省略しているが、後壁部材30の底面28Cに開口するように第2連通路32が設けられる。
【0069】
後壁部材30の外面、即ち後面には、第1連通路28に侵入し、後壁部材30の内面に付着した埃や塵、落ち葉等の異物を外部に排出するために後壁部材30を振動させる振動機構60が設けられている。振動機構60は、電気モータ62と、電気モータ62の出力軸に一体に取り付けられ、重心が回転軸からオフセットしたアンバランスウェイト64とを備えている。振動機構60は、空気吹出口26から空気が取り込まれない車両停車時等に後壁部材30を振動させ、後壁部材30の前面に沿って滑り落ちる異物を空気吹出口26から外部に排出する。
【0070】
このように、アウタミラー装置10が、第1連通路28を画成する後壁部材30を振動させる振動機構60を有していることにより、流路抵抗の増大によって空力騒音低減効果が低下することが抑制される。
【0071】
≪第8実施形態≫
本発明による車両用アウタミラー装置の第8実施形態を、
図12を参照して説明する。なお、
図12において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。本実施形態においても、第2連通路32は図示省略されている。
【0072】
本実施形態では、第1連通路28に侵入した異物を外部に排出するための振動機構60として、スピーカ66が採用されている。スピーカ66は、後壁部材30に対して後方に離間した位置に配置され、拡張壁16Eにより支持されている。スピーカ66は、低周波音を発生する(低周波振動する)ことで、空気を振動させて後壁部材30を振動させる。スピーカ66は、第1実施形態と同様に空気吹出口26から空気が取り込まれない車両停車時等に低周波音を発生するように制御されてよい。
【0073】
≪第9実施形態≫
本発明による車両用アウタミラー装置の第9実施形態を、
図13を参照して説明する。なお、
図13において、
図4に対応する部分は、
図4に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。本実施形態においても、第2連通路32は図示省略されている。
【0074】
本実施形態では、第1連通路28を画成する後壁部材30が、弾性又は可撓性を有する材料により構成されており、後壁部材30に連結するように設けられたアクチュエータ68が振動機構60を構成している。アクチュエータ68は、後壁部材30を変位させ得るものであれば如何なる種類の動力を動力源にしてもよく、如何なる駆動方式であってもよい。本実施形態では、アクチュエータ68としてリニアソレノイドが採用されている。リニアソレノイドが伸縮動することにより、後壁部材30が前後動(振動)する。或いは、アクチュエータ68は、後壁部材30と略平行な出力軸を有する電動モータと、電動モータの出力軸に一体に形成されたカムと後壁部材30とを連結するリンクとにより構成されてもよい。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態に示された構成は適宜組み合わせることができる。また、上記実施形態では、空気取入口24及び空気吹出口26が直線状且つスロット状の開口として構成されているが、湾曲形状や折れ線形状のスロットとして構成されてもよく、円形や楕円形、多角形等の複数の孔として構成されてもよい。また、アウタカバー14の形状も、竪長(上下方向に長い)の砲弾形の流線形状等、他の形状であってもよい。更に、第1連通路28への異物の侵入を防ぐ仕切り部材は、板状に限られず、ワイヤ等による線状の構成や、メッシュ状の構成であってもよい。また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。