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特開2016-222406エレベータシステムおよびエレベータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222406(P2016-222406A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】エレベータシステムおよびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20161205BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 R
   B66B3/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-110063(P2015-110063)
(22)【出願日】2015年5月29日
(11)【特許番号】特許第6021998号(P6021998)
(45)【特許公報発行日】2016年11月9日
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大石 学
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303CA10
3F303CB46
3F303DC34
3F303EA03
3F303EA09
3F304BA22
3F304BA25
3F304BA26
3F304EB01
3F304EB15
3F304ED06
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】 エレベータの点検作業の際の作業員の安全確保のための支援を行うエレベータシステムおよびエレベータ制御方法を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータシステムは、エレベータ制御装置とエレベータ制御装置に接続されてエレベータ内に設置された複数のカメラ固定器とを備える。カメラ固定器は、カメラ装置が差し込まれたときに、エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するようにカメラ装置を固定するとともに、カメラ装置と通信可能な状態に接続してカメラ装置で撮影された撮像情報を取得してエレベータ制御装置に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
エレベータ制御装置に接続されて前記エレベータ内に設置され、カメラ装置が差し込まれたときに、前記エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するように前記カメラ装置を固定するとともに、前記カメラ装置と通信可能な状態に接続して前記カメラ装置で撮影された撮像情報を取得して前記エレベータ制御装置に送信する複数のカメラ固定器と
を備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータ制御装置は、
前記カメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、前記カメラ固定器のいずれかに前記カメラ装置が接続されると、保持した情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定する動作対象機器判定部と、
前記エレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報を取得する操作情報取得部と、
前記エレベータが点検モードで動作しているときに、前記操作情報取得部で取得された操作情報が、前記動作対象機器判定部で判定された動作対象機器に該当するものであるときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる機器制御部と
を有することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記エレベータ制御装置は、
前記カメラ固定器のいずれかに接続されたカメラ装置で撮影された撮像情報を、前記カメラ固定器を介して取得する撮像情報取得部と、
前記撮像情報取得部で取得された撮像情報を解析して、前記監視対象箇所と作業員との距離および前記エレベータの乗りかごの移動速度を認識する撮像情報解析部と、
前記監視対象箇所ごとに予め設定された、前記監視対象箇所と作業員との距離ごとの機器動作内容を保持し、前記撮像情報解析部で認識された情報に基づいて、所定時間後の前記監視対象箇所と作業員との予測距離を算出し、当該予測距離に対応する機器の動作内容を、保持した情報に基づいて判定する動作内容判定部と
をさらに有し、
前記機器制御部は、前記動作内容判定部で判定された内容で、該当する機器を動作させる
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
建物のエレベータ内に設置されたエレベータ制御装置が、前記エレベータ内に設置された複数のカメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、
前記カメラ固定器のいずれかにカメラ装置が差し込まれたときに、該当するカメラ固定器が、前記エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するように前記カメラ装置を固定するとともに、前記カメラ装置と通信可能な状態に接続して前記カメラ装置で撮影された撮像情報を取得して前記エレベータ制御装置に送信し、
前記カメラ固定器のいずれかに前記カメラ装置が接続されると、前記エレベータ制御装置が、保持した情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定し、
前記エレベータが点検モードで動作しているときに、前記エレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報が取得されると、取得された操作情報が、判定された動作対象機器に該当するものであるときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる
ことを特徴とするエレベータ制御方法。
【請求項5】
前記エレベータ制御装置が、
前記監視対象箇所ごとに予め設定された、前記監視対象箇所と作業員との距離ごとの機器動作内容を保持し、
カメラ固定器のいずれかに接続されたカメラ装置で撮影された撮像情報を取得し、
取得した撮像情報を解析して、前記監視対象箇所と作業員との距離および前記エレベータの乗りかごの移動速度を認識し、
認識された情報に基づいて、所定時間後の前記監視対象箇所と作業員との予測距離を算出し、
当該予測距離に対応する機器の動作内容を、保持した情報に基づいて判定し、
判定された内容で、該当する機器を動作させる
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムおよびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの点検作業の際には、作業員が乗りかごの天井板上に乗って乗りかごを移動させたり、昇降路のピット内に入ったりすることで、エレベータ内の各機器の異常の有無を確認する。一般的にエレベータの昇降路は、乗りかごや釣り合い錘が昇降することにより、壁面、床、天井、シーブ等の機器との間が部分的に非常に狭くなるため、作業の際には、このような箇所に挟まれたり接触したりしないように注意を払う必要がある。そのため、2名以上の作業員が相互に合図復唱を行いながら乗りかごを適宜移動させることで、作業中の安全を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−34076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、合図復唱による確認では、他の作業員との動作タイミングが合わなかった場合、意思疎通が適切に行われなかった場合、または作業中に他の作業員からは死角になっている位置で作業する場合など、作業の安全を確保し難い場合があるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの点検作業の際の作業員の安全確保のための支援を行うエレベータシステムおよびエレベータ制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータシステムは、エレベータ制御装置とエレベータ制御装置に接続されてエレベータ内に設置された複数のカメラ固定器とを備える。カメラ固定器は、カメラ装置が差し込まれたときに、エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するようにカメラ装置を固定するとともに、カメラ装置と通信可能な状態に接続してカメラ装置で撮影された撮像情報を取得してエレベータ制御装置に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態によるエレベータシステムの構成を示す全体図。
図2】第1実施形態によるエレベータシステム内のカメラ固定器およびこれに固定された携帯端末を示す外観図。
図3】第1実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態によるエレベータシステムにおいて、カメラ固定器に携帯端末が固定されたときの動作を示すフローチャート。
図5】第2実施形態によるエレベータシステムに用いるエレベータ制御装置の構成を示すブロック図。
図6】第2実施形態によるエレベータシステムのエレベータ制御装置に予め保持される情報テーブルの一例。
図7】第2実施形態によるエレベータシステムにおいて、カメラ固定器に固定された携帯端末で撮影された撮像情報が取得されたときの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。
【0009】
本実施形態によるエレベータシステム1Aは、エレベータの昇降路2の上部に設定された巻き上げ機3およびそらせシーブ4にメインロープ5が掛け渡され、その両端に乗りかご6と釣り合い錘7とがつるべ式に吊り下げられている。そして、当該エレベータの機械室にはエレベータ制御装置8Aが設置され、このエレベータ制御装置8Aは、昇降路2内に設置された接続ボックス10およびテールコード9を介して乗りかご6に接続されるとともに、信号線11を介して巻上げ機3に接続されている。また、エレベータ内には、カメラ装置を設置するためのカメラ固定器12−1〜12−3が設置されている。本実施形態においては、乗りかご6の天井面上部にカメラ固定器12−1が設置され、乗りかご6の床面下部にカメラ固定器12−2が設置され、これらのカメラ固定器12−1および12−2は、テールコード9に接続されている。また昇降路2の下部のピット内にカメラ固定器12−3が設置され、信号線13を介してエレベータ制御装置8Aに接続されている。また、エレベータ制御装置8Aはネットワーク等を介して、点検作業のための監視制御を行う遠隔監視装置14に接続されている。
【0010】
カメラ固定器12−1〜12−3は、図2に示すように、スマートフォン等のカメラ機能を搭載した携帯端末121が差し込まれたときに、当該エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するように当該携帯端末121を固定し、内蔵する固定スイッチ(図示せず)をON状態に切り替えるとともに、当該携帯端末121と通信可能な状態に接続する。また携帯端末121が取り外されると、当該固定スイッチをOFF状態に切り替える。カメラ固定器12−1〜12−3は、固定スイッチのON/OFF状態が切り替わったことを示す情報を、エレベータ制御装置8Aに送信する。またカメラ固定器12−1〜12−3は、固定している携帯端末121で撮影された撮像情報を取得し、エレベータ制御装置8Aに送信する。
【0011】
エレベータ制御装置8Aは、図3に示すように、スイッチ情報取得部81と、動作対象機器判定部82、操作情報取得部83と、機器制御部84とを有する。
【0012】
スイッチ情報取得部81は、カメラ固定器12−1〜12−3から送信された固定スイッチのON/OFF情報を取得する。動作対象機器判定部82は、カメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、スイッチ情報取得部81で固定スイッチのON情報が取得されたことにより、カメラ固定器のいずれかにカメラ装置が接続されたことを検知すると、保持した動作対象機器の情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定する。操作情報取得部83は、監視制御装置14において監視員により操作された、点検作業に関しエレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報を取得する。機器制御部84は、操作情報取得部83で取得された操作情報に対応する機器が、動作対象機器判定部82で判定された動作対象機器に該当するときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる。
【0013】
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aの動作について説明する。本実施形態においてエレベータシステム1Aのエレベータ制御装置8Aの動作対象機器判定部82には、カメラ固定器12−1に対応する点検作業時の動作対象機器として巻上げ機3の情報が保持され、カメラ固定器12−2および12−3に対応する点検作業時の動作対象機器は保持されていないものとする。
【0014】
このように情報が保持されている状態で、エレベータシステム1Aにおいて点検作業の作業員により点検スイッチが投入されると点検モードに移行し、乗場ボタンやかごボタン(図示せず)等が操作されても呼び応答されない状態に移行する。
【0015】
そして、乗りかご6の天井板上に作業員が乗り込み、昇降路2上部の機器を点検するためにカメラ固定器12−1に携帯端末121を差し込むと、カメラ固定器12−1により携帯端末121が固定されて通信可能な状態に接続されるとともに、固定スイッチがON状態に切り替わる。そして、固定スイッチがON状態に切り替わったことを示すスイッチON情報が、カメラ固定器12−1からテールコード9および接続ボックス10を介してエレベータ制御装置8Aに送信される。
【0016】
カメラ固定器12−1からスイッチON情報が取得されたときのエレベータ制御装置8Aの動作について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0017】
エレベータ制御装置8Aでは、取得したスイッチON情報がスイッチ情報取得部81で取得され、動作対象機器判定部82においてカメラ固定器12−1に携帯端末121が接続されたことが検知される。動作対象機器判定部82ではさらに、保持した動作対象機器の情報に基づいて、当該カメラ固定器12−1に対応する動作対象機器が巻上げ機3であると判定される(S1、S2)。
【0018】
カメラ固定器12−1に対応する動作対象機器が巻上げ機3であると判定された状態で、監視制御装置14等から、点検作業のために乗りかご6の昇降を指示する操作情報が送信されて操作情報取得部83で取得されると(S3の「YES」)、操作情報取得部83で取得された操作情報が、動作対象機器判定部82で判定された動作対象機器に該当するものであるとき(S4の「YES」)には、当該操作情報に基づいて機器制御部84により、該当する機器の動作が制御される(S5)。例えば、操作情報取得部83で操作情報「乗りかご6の上昇移動」が取得されたときには、この操作のために動作する機器「巻上げ機3」が、動作対象機器判定部82で判定された動作対象機器「巻上げ機3」に該当するため、当該操作情報に基づいて巻上げ機3の動作が制御され、乗りかご6が昇降する。
【0019】
ステップS4において、操作情報取得部83で取得された操作情報に対応する機器が、動作対象機器判定部82で判定された動作対象機器に該当しないとき(S4の「NO」)には、取得された操作情報に対応する機器の動作は行われない(S6)。例えば、動作対象機器が保持されていないカメラ固定器12−2または12−3に携帯端末121が固定されたときに、操作情報取得部83で乗りかご6の昇降を指示する操作情報が取得されても、乗りかご6は昇降しない。
【0020】
また、カメラ固定器12−1に携帯端末121が固定されると、当該携帯端末121により、当該カメラ固定器12−1に関して設定された監視対象エリアである乗りかご6の上部から巻上げ機3や建屋天井までのエリアの撮影が開始される。そして、携帯端末121により撮影された撮像情報がエレベータ制御装置8Aに送信される。
【0021】
エレベータ制御装置8Aで取得された撮像情報は遠隔監視装置14に送信され、遠隔監視装置14で撮像情報が表示されることで、監視員により目視で監視対象エリアが監視される。
【0022】
以上の第1実施形態によれば、昇降路内の複数個所に設置されたカメラ固定器のうち、携帯端末が固定された箇所に対し必要に応じて設定された機器(乗りかご等)のみを動作可能とすることで、ピット内などの乗りかごを移動させずに点検作業を行う場所では携帯端末をカメラ固定器に固定させても乗りかごは昇降されず、作業員の安全を確保することができる。
【0023】
また携帯端末で撮影され、エレベータ制御装置で取得された撮像情報を、遠隔監視制御装置14に表示させることにより、エレベータ制御装置による制御のみならず、監視員の目視によっても監視対象箇所を監視することができ、さらに安全性を向上させることができる。
【0024】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータシステム1Bの装置構成は、第1実施形態において説明した図1のエレベータシステム1Aの装置構成と同様であるため、同一機能を有する部分の詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施形態においてエレベータシステム1B内のエレベータ制御装置8Bは、図5に示すように、エレベータ制御装置8Aの機能構成に加え、さらに撮像情報取得部85と、撮像情報解析部86と、動作内容判定部87とを有する。
【0026】
撮像情報取得部85は、カメラ固定器12−1〜12−3のいずれかに接続された携帯端末121から、撮影された撮像情報を取得する。撮像情報解析部86は、撮像情報取得部85で取得された撮像情報を解析して、所定の監視対象箇所と作業員との距離や、乗りかご6の移動速度等を認識する。動作内容判定部87は、撮像情報解析部86で認識された情報に基づいて、所定時間後の監視対象箇所と作業員との予測距離を算出し、当該予測距離に対応する機器の動作内容を判定する。機器制御部84は、動作内容判定部87で判定された内容で、該当する機器を動作させる。
【0027】
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を利用したエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Bの動作について説明する。本実施形態においてまたエレベータ制御装置8Bの動作内容判定部87には、監視対象箇所と作業員との距離ごとに予め設定された、作業員の安全を確保するための機器動作内容を示す情報テーブルが保持されている。動作内容判定部87に保持される情報テーブルの一例を、図6に示す。図6に示す情報テーブルには、監視対象箇所「建屋天井」と作業員との距離が1m以下のときの機器動作内容として「乗りかごの移動速度を5m/minに減速し、警告音を発報する」が保持され、さらに距離が30cm以下のときの機器動作内容として「巻上げ機強制停止」が保持されている。また、監視対象箇所「巻上げ機」と作業員との距離が1m以下のときの機器動作内容として「乗りかごの移動速度を5m/minに減速し、警告音を発報する」が保持され、さらに距離が30cm以下のときの機器動作内容として「巻上げ機強制停止」が保持されている。また、監視対象箇所「エレベータ制御装置の活電部」と作業員との距離が1m以下のときの機器動作内容は設定されておらず、同様に距離が30cm以下のときの機器動作内容としては「警告音発報」が保持されている。また、監視対象箇所「乗りかご下」と作業員との距離が1m以下のときの機器動作内容として「乗りかごの移動速度を10m/minに減速し、警告音を発報する」が保持され、さらに距離が30cm以下のときの機器動作内容として「巻上げ機強制停止」が保持されている。
【0028】
このように情報が保持されている状態で、第1実施形態において説明したように処理が実行され、さらに携帯端末121による撮像情報が取得されたときに実行されるエレベータ制御装置8Bの動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
エレベータ制御装置8Bでは、携帯端末121で撮影された撮像情報の受信が開始されると(S11の「YES」)、当該撮像情報が撮像情報取得部85で取得される。そして、撮像情報解析部86において所定時間間隔で撮像情報が解析されて、所定の監視対象箇所と作業員との距離や、乗りかご6の移動速度等が認識される(S12)。
【0030】
次に、動作内容判定部87により、撮像情報解析部86で認識された情報に基づいて、所定時間後の監視対象箇所と作業員との予測距離が算出され、当該予測距離に対応する機器の動作内容が、保持した情報テーブルの情報に基づいて判定される(S13)。例えば、所定時間間隔で解析された撮像情報により、巻上げ機3と乗りかご6上の作業員との距離および乗りかご6の移動速度が算出され、これに基づいて5秒後の巻上げ機3と乗りかご6上の作業員との予測距離が算出される。そして、算出された予測距離が1m以下になると、図6の情報テーブルに基づいて、「乗りかご6の移動速度を5m/minに減速するとともに昇降路内の警報器(図示せず)または携帯端末121から警報音を発報させる」ことが、対応する動作内容として判定される。またさらに接近して予測距離が30cm以下になると、「エレベータ強制停止」が、対応する動作内容として判定される。
【0031】
次に、動作内容判定部87で判定された内容で機器の動作が制御される(S14)。例えば、乗りかご6の速度減速や警報器等による発報、エレベータを強制停止させる等の制御が行われる。
【0032】
以上の第2実施形態によれば、カメラ固定器に固定されたカメラ装置で撮影された監視対象箇所の撮像情報を解析することで所定時間後の危険事態を予測し、事前にこれを回避するための機器動作を行うことができる。
【0033】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…エレベータシステム、2…昇降路、3…巻上げ機、4…そらせシーブ、5…メインロープ、6…乗りかご、7…釣り合い錘、8…エレベータ制御装置、9…テールコード、10…接続ボックス、11…信号線、12−1,12−2,12−3…カメラ固定器、13…信号線、14…監視制御装置、81…スイッチ情報取得部、82…動作対象機器判定部、83…操作情報取得部、84…機器制御部、85…撮像情報取得部、86…撮像情報解析部、87…動作内容判定部、121…携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2016年6月16日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設置されたエレベータの運転を制御するエレベータ制御装置と、
前記エレベータ制御装置に接続されて前記エレベータ内に設置され、カメラ装置が差し込まれたときに、前記エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するように前記カメラ装置を固定するとともに、前記カメラ装置と通信可能な状態に接続して前記カメラ装置で撮影された撮像情報を取得して前記エレベータ制御装置に送信する複数のカメラ固定器とを備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記カメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、前記カメラ固定器のいずれかに前記カメラ装置が接続されると、保持した情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定する動作対象機器判定部と、
前記エレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報を取得する操作情報取得部と、
前記エレベータが点検モードで動作しているときに、前記操作情報取得部で取得された操作情報が、前記動作対象機器判定部で判定された動作対象機器に該当するものであるときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる機器制御部と
を有することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータ制御装置は、
前記カメラ固定器のいずれかに接続されたカメラ装置で撮影された撮像情報を、前記カメラ固定器を介して取得する撮像情報取得部と、
前記撮像情報取得部で取得された撮像情報を解析して、前記監視対象箇所と作業員との距離および前記エレベータの乗りかごの移動速度を認識する撮像情報解析部と、
前記監視対象箇所ごとに予め設定された、前記監視対象箇所と作業員との距離ごとの機器動作内容を保持し、前記撮像情報解析部で認識された情報に基づいて、所定時間後の前記監視対象箇所と作業員との予測距離を算出し、当該予測距離に対応する機器の動作内容を、保持した情報に基づいて判定する動作内容判定部と
をさらに有し、
前記機器制御部は、前記動作内容判定部で判定された内容で、該当する機器を動作させる
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
建物のエレベータ内に設置されたエレベータ制御装置が、前記エレベータ内に設置された複数のカメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、
前記カメラ固定器のいずれかにカメラ装置が差し込まれたときに、該当するカメラ固定器が、前記エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するように前記カメラ装置を固定するとともに、前記カメラ装置と通信可能な状態に接続して前記カメラ装置で撮影された撮像情報を取得して前記エレベータ制御装置に送信し、
前記カメラ固定器のいずれかに前記カメラ装置が接続されると、前記エレベータ制御装置が、保持した情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定し、
前記エレベータが点検モードで動作しているときに、前記エレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報が取得されると、取得された操作情報が、判定された動作対象機器に該当するものであるときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる
ことを特徴とするエレベータ制御方法。
【請求項4】
前記エレベータ制御装置が、
前記監視対象箇所ごとに予め設定された、前記監視対象箇所と作業員との距離ごとの機器動作内容を保持し、
カメラ固定器のいずれかに接続されたカメラ装置で撮影された撮像情報を取得し、
取得した撮像情報を解析して、前記監視対象箇所と作業員との距離および前記エレベータの乗りかごの移動速度を認識し、
認識された情報に基づいて、所定時間後の前記監視対象箇所と作業員との予測距離を算出し、
当該予測距離に対応する機器の動作内容を、保持した情報に基づいて判定し、
判定された内容で、該当する機器を動作させる
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータシステムは、エレベータ制御装置とエレベータ制御装置に接続されてエレベータ内に設置された複数のカメラ固定器とを備える。カメラ固定器は、カメラ装置が差し込まれたときに、エレベータの点検作業に関する所定の監視対象箇所を撮影するようにカメラ装置を固定するとともに、カメラ装置と通信可能な状態に接続してカメラ装置で撮影された撮像情報を取得してエレベータ制御装置に送信する。エレベータ制御装置は、動作対象機器判定部と操作情報取得部と機器制御部とを有する。動作対象機器判定部は、カメラ固定器ごとに予め設定された、点検作業時の動作対象機器の情報を保持し、カメラ固定器のいずれかにカメラ装置が接続されると、保持した情報に基づいて当該カメラ固定器に対応する動作対象機器を判定する。操作情報取得部は、エレベータ内の所定機器を動作させるための操作情報を取得する。機器制御部は、エレベータが点検モードで動作しているときに、操作情報取得部で取得された操作情報が、動作対象機器判定部で判定された動作対象機器に該当するものであるときには、当該操作情報に基づいて該当する機器を動作させる。