特開2016-222414(P2016-222414A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222414(P2016-222414A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】エレベータの乗場ドア装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/30 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   B66B13/30 R
   B66B13/30 B
   B66B13/30 P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-110545(P2015-110545)
(22)【出願日】2015年5月29日
(11)【特許番号】特許第5937256号(P5937256)
(45)【特許公報発行日】2016年6月22日
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】タン ナンホン
【テーマコード(参考)】
3F307
【Fターム(参考)】
3F307AA02
3F307BA07
3F307CA02
3F307CA03
3F307CD02
3F307CD05
(57)【要約】
【課題】火災時に熱を受けてドアパネルが変形したとしても、相じゃくり構造が外れてしまう事態を確実に防止しできるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態による乗場ドア装置は、エレベータ乗場の出入口に取り付けられた三方枠に、ドアハンガーを介して開閉自在に設けられる乗場ドアを有する乗場ドア装置であって、乗場ドア10の本体を構成するドアパネル14と、ドアパネル14の上端部に取り付けられ、三方枠4の上枠6のドアパネル14側にある側面6aに対して、上枠6の内側において重なり合うように下方に垂下する遮炎部20aを有する遮炎部材20と、遮炎部20とは反対側に立ち上がるように遮炎部材20に設けられる突出部22と、突出部22の直上に位置するようにヘッダーケース12に設けられ、火災時にドアパネル14が膨張したときに、突出部22が係合してドアパネル14の伸びを規制する係合部材24と、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ乗場の出入口に取り付けられた三方枠に、ドアハンガーを介して開閉自在に設けられる乗場ドアを有する乗場ドア装置において、
前記乗場ドアの本体を構成するドアパネルと、
前記ドアパネルの上端部に取り付けられ、前記三方枠の上枠のドアパネル側にある側面に対して、前記上枠の内側において重なり合うように下方に垂下する遮炎部を有する遮炎部材と、
前記遮炎部とは反対側に立ち上がるように前記遮炎部材に設けられる突出部と、
前記突出部の直上に位置するようにヘッダーケースに設けられ、火災時に前記ドアパネルが膨張したときに、前記突出部が係合して前記ドアパネルの伸びを規制する係合部材と、を備えたことを特徴とするエレベータの乗場ドア装置。
【請求項2】
前記遮炎部材は、一側面部が遮炎部となる断面L字形のアングル部材からなり、前記遮炎部の一部を折り返して前記突出部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のエレベータの乗場ドア装置。
【請求項3】
前記係合部材は、前記突出部が係合したときに前記ドアパネルの脱落を防止する方向に前記突出部を拘束する鉤部を有することを特徴とする請求項2に記載のエレベータの乗場ドア装置。
【請求項4】
前記係合部材は、ねじを用いた係合突起部からなり、前記遮炎部には、前記ねじの軸が嵌合可能な切欠き溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの乗場ドア装置。
【請求項5】
前記遮炎部材は、2本のアングル部材に分割され、前記突出部として機能するL字形部材を前記2本のアングル部材に溶接してなることを特徴とする請求項2に記載のエレベータの乗場ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗場ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ乗場には、出入口となる開口部に三方枠が取り付けられており、この三方枠に出入口を開閉する引き戸式の乗場ドアが設けられている。エレベータが設置されている建物では、昇降路やエレベータ乗場は防火区画となる。万一、建物に火災が発生した場合には、火や煙が昇降路に入ると、昇降路が煙突として働いて火勢が強まり、他の階床まで延焼する虞があるからである。
そこで、エレベータ乗場では、所定の遮炎性能、遮煙性能を有する乗場ドアを設置することが法令によって定められている(建築基準法施行令第112条第9項および第14項)。
また、従来の乗場ドアにおいては、防火性能の向上のために、様々な改良が加えられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、火災時の熱による乗場ドアの変形、あるいは変形によるドアと三方枠との間の隙間の拡大や、ドアの外れを防止するために、ハンガーケース及びドアレールの少なくとも一方をドアの熱膨張を吸収するように上方へ摺動可能にした乗場ドア装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−11841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、乗場ドアでは、三方枠の上枠に乗場ドアが接する部分を、いわゆる相じゃくり構造となし、乗場ドアを閉鎖したときに、三方枠の上枠との間の隙間から火が昇降路側に入り込まないようにしている。このような相じゃくり構造は、エレベータの防火規則で定める仕様の一種でもある。
【0006】
しかしながら、乗場ドアの本体部分のドアパネルが、火災時の熱で伸びて変形してしまうことがある。ドアパネルの変形が大きいと、それまで重なり合って隙間を塞いでいた相じゃくり部が外れてしまう虞があった。
【0007】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、火災時に熱を受けてドアパネルが変形したとしても、相じゃくり構造が外れてしまう事態を確実に防止しできるようにしたエレベータの乗場ドア装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の実施形態は、エレベータ乗場の出入口に取り付けられた三方枠に、ドアハンガーを介して開閉自在に設けられる乗場ドアを有する乗場ドア装置において、前記乗場ドアの本体を構成するドアパネルと、前記ドアパネルの上端部に取り付けられ、前記三方枠の上枠のドアパネル側にある側面に対して、前記上枠の内側において重なり合うように下方に垂下する遮炎部を有する遮炎部材と、前記遮炎部とは反対側に立ち上がるように前記遮炎部材に設けられる突出部と、前記突出部の直上に位置するようにヘッダーケースに設けられ、火災時に前記ドアパネルが膨張したときに、前記突出部が係合して前記ドアパネルの伸びを規制する係合部材と、を備えたことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態によるエレベータの乗場ドア装置を昇降路側からみた正面図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】本発明の第1実施形態によるエレベータの乗場ドア装置の要部を示し、遮炎部の突出部と、係合部材の位置関係を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態によるエレベータの乗場ドア装置の火災時の作用を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態によるエレベータの乗場ドア装置に用いられる遮炎部材の変形例を示す斜視図である。
図6】遮炎部材の他の変形例を示す斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態によるエレベータの乗場ドア装置の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明によるエレベータの乗場ドア装置の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態によるエレベータの乗場ドア装置を昇降路側からみた正面図である。図2は、図1のII-II線断面図である。
エレベータ乗場では、乗りかご(図示せず)への出入口が昇降路壁2に形成されている。この出入口の開口縁部に沿って、三方枠4が取り付けられている。この三方枠4は、出入口の左右側縁に沿った一対の縦枠5、5と、これら縦枠5、5の上端部間に水平に架設されている上枠6と、から構成されている。出入口の下縁には、敷居7が取り付けられている。この実施形態の乗場ドア装置は、両開き型式の乗場ドア10を備えている。
【0011】
図2に示されるように、三方枠4の上枠6には、ヘッダーケース12が鉛直な姿勢で取り付けられている。このヘッダーケース12には、ドアレール13が水平に支持されている。乗場ドア10の本体は、ドアパネル14によって構成され、このドアパネル14の上端部には、ドアハンガー15がヘッダーケース12と平行に取り付けられている。
【0012】
このドアハンガー15には、ドアレール13を転動するローラ16が回転自在に取り付けられているので、ドアパネル14は、ローラ16を介してドアハンガー15によって吊持されながら開閉するようになっている。
【0013】
また、ドアパネル14の上端部には、次のような遮炎部を有する遮炎部材20が取り付けられている。この遮炎部材20は、ドアパネル14の全幅に対応する長さを有する断面L字形の長尺なアングル部材からなり、火災発生時に、ドアパネル14と上枠6の間の隙間から火炎が昇降路側に入り込まないようにするための部材である。
【0014】
この遮炎部材20は、ドアパネル14に取り付けられた状態では、一方の側面部である遮炎部20aが鉛直面と平行になっている。三方枠4の上枠6の側面部、この場合、ドアパネル14との間に隙間が形成される側面部6aに対して、遮炎部20aは、上枠6の内側において重なり合う構造になっている。具体的には、上枠6の側面部6aは上方に立ち上がり、遮炎部20aは下方に垂下するというようにして、お互いに相手方に向かって延びるようにして重なり合う部分を有する構造(相じゃくり構造)になっている。この場合、側面部6aと遮炎部20aとは、重なる部分でお互いに接していてもよいし、必ずしも接し合わなくてもよい。
【0015】
図3に示されるように、本実施形態の遮炎部材20では、その中央部分において、遮炎部20aを折り返して水平面部20bからさらに上方に突き出るようにした突出部22が形成されている。
【0016】
他方、ヘッダーケース12には、火災時にドアパネル14が膨張したときに、遮炎部材20の突出部22が係合可能な係合部材24が突出部22の直上にあたる位置に取り付けられている。図3に示す例では、係合部材24には、下方に垂下する鉤部24aを有する断面L字形の金具が用いられている。
【0017】
この実施形態の場合、遮炎部材20の突出部22の先端と、係合部材24の下面との間には、所定の寸法の隙間が設定されており、ドアパネル14の上方への伸びは一定の範囲、すなわち、遮炎部材20の遮炎部20aが上枠6の側面部6aから外れない範囲で許容されるようになっている。
【0018】
本実施形態によるエレベータの乗場ドア装置は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用および効果について説明する。
【0019】
建物のフロアで火災が発生すると、火元から乗場にまで火が燃え広がってくることがある。このとき、乗場ドア10は閉じており出入口を閉鎖している。そして、火が乗場ドア10に近づいてくると、火炎による熱を受けて、ドアパネル14には伸びや反りが生じる。図4(A)に示されるように、この状況下では、ドアパネル14は、昇降路側に張り出すように変形する。
【0020】
一方、エレベータ乗場では、火がドアパネル14を加熱するだけでなく、勢いの増した火は矢印で示されるように、三方枠4の上枠6とドアパネル14の間の隙間から昇降路側に入り込もうとする。本実施形態では、ドアパネル14の上端部には、このような火炎の侵入を防止するための遮炎部20aが設けられており、次のように機能する。
【0021】
すなわち、図4(A)に示されるように、ドアパネル14の変形によって、遮炎部20aの先端が上枠6の側面部6aに上から被るように接するようになる。このような遮炎部20aと側面部6aの内側面との接触によって、側面部6aの外側から回り込んで昇降路側に入り込もうとする火炎の侵入路が遮断される。
【0022】
その後、火勢が益々大きくなり、ドアパネル14の変形、とりわけ伸びが増大することによって、遮炎部20aが上枠の側面部6aから外れ、遮炎機能が働かなくなることが懸念される。
【0023】
しかしながら、本実施形態の図4(B)に示されるように、ドアパネル14がさらに上方に伸びると、遮炎部材20の突出部22が係合部材24の下面に当接する。これによって、ドアパネル14の上方への伸びが規制され、遮炎部20aが上枠の側面部6aから外れるのを阻止することができるので、相じゃくり構造による遮炎機能を維持することができる。
【0024】
ところで、図2において、ドアパネル14の伸びによって、ドアハンガー15のローラ16がドアレール13から外れ、ドアパネル14が昇降路に落ちる可能性がある。
しかしながら、本実施形態では、遮炎部20aの突出部22と係合部材24の鉤部24aとは係合し合うようになる。この鉤部24aは、ドアパネル14の脱落を阻止する方向に突出部22と係合するので、ドアパネル14が昇降路に落ちるのを防止することが可能になる。
【0025】
以上説明した実施形態は、断面L字形のアングル部材からなる遮炎部材20に遮炎部20aと突出部22を設けた形態であるが、図5図6は、遮炎部材の変形例を示す図である。
図5は、遮炎部材を2つの遮炎部材30A、30Bに分割した変形例を示す。
これらの遮炎部材30A、30Bは、突出部22として機能するL字形部材32を介して溶接により接合されることで、遮炎部20aと突出部22を有する1本の遮炎部材が構成されている。
【0026】
なお、図5のように遮炎部材を分割する替わりに、図6に示すように、1本の遮炎部材20に、突出部22として機能するL字形部材32を溶接等により固着させるようにしてもよい。
【0027】
以上のような変形例によれば、突出部22を折り返す曲げ加工が不要になり、部品を組み合わせての溶接だけで済む利点がある。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態によるエレベータの乗場ドア装置について、図7を参照して説明する。なお、図7において、第1実施形態の図3と同一の構成要素には、同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0029】
この第2実施形態は、遮炎部20aの突出部22と係合する部材として、図3に示したL字形の係合部材24の代わりに、ねじ等を利用した係合突起部をヘッダーケース12に取り付けるようにした実施の形態である。
【0030】
図7に示されるように、ヘッダーケース12には、係合突起部としてのねじ34が、その頭34aがヘッダーケース12から突き出るように締着されている。突出部22には上下方向に切欠き溝35が形成され、この切欠き溝35には、ねじ34の軸が嵌合可能である。この切欠き溝35の幅は、ねじ34の頭部34aの直径よりも小さく設定されている。
【0031】
以上のような第2実施形態の作用について説明する。
ドアパネル14が上方に伸びると、突出部22の切欠き溝35にねじ34の軸が入り込んで行き、切欠き溝35の下縁にねじ34の軸が当接する。これによって、ドアパネル14の上方への伸びが規制され、遮炎部材20aが上枠の側面部6aから外れるのを阻止することができるので、相じゃくり構造による遮炎機能を維持することができる。
【0032】
また、遮炎部材20aの突出部22とねじ34の頭部34aとは係合し合うようになり、このねじ34は、ドアパネル14の脱落を阻止する方向に突出部22と係合するので、ドアパネル14が昇降路に落ちるのを防止することができる。
【0033】
以上、本発明に係るエレベータの乗場ドア装置について、好適な実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0034】
2…昇降路壁、4…三方枠、5…縦枠、6…上枠、7…敷居、10…乗場ドア、12…ヘッダーケース、13…ドアレール、14…ドアパネル、15…ドアハンガー、16…ローラ、20…遮炎部材、20a…遮炎部、22…突出部、24…係合部材、24a…鉤部、30A、30B…遮炎部材、34…ねじ、34a…ねじ頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7