【課題】課題は、粒子内でのドープ分布を制御し、高いドープ濃度と特定のサイズの結晶子径を有する球状酸化亜鉛粒子と、その製造方法及びそれを用いた高感度のプラズモンセンサーチップを提供することである。
【解決手段】当該球状酸化亜鉛粒子は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素がドープされ、粒子中の該金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内であり、かつ平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内である。
ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素がドープされ、粒子中の該金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内であり、かつ平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内であることを特徴とする球状酸化亜鉛粒子。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素がドープされ、粒子中の該金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内であり、かつ平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項7までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0027】
本実施形態としては、以下に記載する実施形態に限定されるものではないが、課題解決の効果発現の観点から、前記金属元素の平均ドープ濃度が、11.0〜20.0モル%の範囲内であることが、より高感度のプラズモン共鳴を発現することができる観点で好ましい。
【0028】
また、金属元素が、ガリウム(Ga)であることが、より安定して高感度の球状酸化亜鉛粒子を形成することができる観点から好ましい。
【0029】
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子の製造方法としては、前記金属元素群を含む水溶液と、亜鉛水溶液と、尿素類水溶液とを混合して亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する前駆体粒子形成工程と、前記亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する焼成工程とを有し、前記前駆体粒子形成工程で調製する亜鉛系化合物前駆体粒子は、前記金属元素のドープ濃度が粒子の厚さ方向で均一であり、かつ前記焼成工程の焼成時の昇温速度が20〜50℃/分の範囲内であることを特徴とする。
【0030】
また、球状酸化亜鉛粒子の他の製造方法としては、前記金属元素群より選ばれる金属元素を含む水溶液と、亜鉛水溶液と、尿素類水溶液とを混合して亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する前駆体粒子形成工程と、前記亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する焼成工程とを有し、
前記前駆体粒子形成工程で調製する亜鉛系化合物前駆体粒子は、コア・シェル構造を有し、前記金属元素のドープ濃度が、シェルに対しコアが高い構成であることを特徴とする。更には、焼成工程の焼成時の昇温速度が20℃/分未満であることが好ましい態様である。
【0031】
上記球状酸化亜鉛粒子の製造方法を適用することにより、結晶構造を良好に保ちつつ、高濃度でドーパントを結晶内に取り込むことができ、本実施形態で規定する特性(ドープ量及び結晶子径)の球状酸化亜鉛粒子を、安定して得ることができる。
【0032】
以下、本発明の実施態様について説明する。ただし、以下で説明する実施態様は、本実施形態の一例を示すものであり、これらに限定されることはない。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0033】
《球状酸化亜鉛粒子》
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素がドープされ、粒子中の該金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内であり、かつ平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内である球状酸化亜鉛粒子である。
【0034】
従来、赤外領域に感度を有するプラズモンセンサーとしては、酸化物半導体、例えば、ZnOを用いたZnO−Ga系により形成されている酸化物半導体薄膜が存在しているが、粒子形態のZnOを適用する試みにおいては、数十〜数百nmオーダーサイズの球状粒子を均一に作製する技術がなかったが、本発明者が鋭意検討を進めた結果、上記で規定する構成からなる本実施態様の球状酸化亜鉛粒子により、金属元素を高いドープ濃度で有し、かつ特定サイズの結晶子径領域を形成することにより、球状で、粒径分布が狭く、測定対象物の微小な屈折率変化を安定して高感度でとらえることができるプラズモンセンサーチップを実現することができる。
【0035】
ここでいうドープまたはドーピングとは、粒子の結晶の物性を変化させるため、少量の不純物、すなわち金属元素を添加することをいい、この不純物である金属元素をドーパントともいう。
【0036】
〈ドープする金属元素(ドーパント)〉
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素を、平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内でドープした球状酸化亜鉛粒子であることを特徴とする。金属(例えば、金、銀等)のみを用いたSPRセンサーとは異なり、バンドギャップが大きい半導体である酸化亜鉛に、上記に記載の金属元素をドープすることにより、キャリア数を制御することができ、可視から赤外領域にわたるプラズモン共鳴波長の制御を可能とすることができる。このような制御は、ドープする金属元素の種類及びその含有量などで行うことができる。
【0037】
上記のドープする金属元素としては、更には、Ga及びEuが好ましく、特にGaが好ましい。一方、目的により、適宜数種類の上記金属元素をドープしてもよい。また、プラズモン共鳴の発現を損なわない範囲で、他の金属原子を含んでいてもよい。
【0038】
実施形態の球状酸化亜鉛粒子中の前記金属元素の総ドープ量は、1.0〜20.0モル%の範囲内であり、好ましくは11.0〜20.0モル%という高濃度範囲内である。
【0039】
ここで、球状酸化亜鉛粒子に含有されている金属元素の含有量は、元素分析により求めることができる。例えば、1gを硝酸水溶液10mLと過酸化水素水1.0mLの混合溶液に溶解させ、エスアイアイナノテクノロジー社製のICP発光分光プラズマ装置(ICP−AES)を使用して元素分析を行う。球状酸化亜鉛粒子の各金属元素の含有量から組成比(モル%)として求めることができる。
【0040】
なお、球状酸化亜鉛粒子の組成分布については、球状酸化亜鉛粒子の断面の元素分析を行うことにより求める方法も適用することができる。
【0041】
例えば、球状酸化亜鉛粒子について、日立ハイテクノロジーズ製 集束イオンビーム(FB−2000A)により断面加工を行い、粒子中心付近を通る面を切り出して露出させる。次いで、露出した切断面を、日立ハイテクノロジーズ製 STEM−EDX(HD−2000)を使用して元素分析を行い、球状酸化亜鉛粒子の各金属元素の組成分布を求めることもできる。
【0042】
〈球状酸化亜鉛粒子の結晶子径〉
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子においては、結晶子の平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内であることを特徴の一つとする。
【0043】
ここでいう結晶子とは、多結晶粒子中において完全な単結晶とみなせる微小結晶領域の大きさをいう。
【0044】
図1は、球状酸化亜鉛粒子の結晶子径と粒子径を示す模式図であり、一つの球状酸化亜鉛粒子(P)は、複数の結晶子によって構成されている。
【0045】
球状酸化亜鉛粒子の結晶子径は、XRD(X−ray diffraction)測定により、次に示すシェラー(Scherrer)の式を用いて計算することができる。
【0046】
式(1)
D=Kλ/βcosθ
上記式(1)において、Kはシェラー定数であり、本明細書では0.9として結晶子径を算出する。λは、X線波長である。βは、回折線の半値幅である。θは回折線に関するブラッグ角である。
【0047】
得られた結晶子径は、結晶粒子中で同一方向に成長している結晶の大きさを表している。結晶子径が小さいということは、結晶粒子中において、特定の同一方向に成長している結晶子が小さいということである。本実施形態の球状酸化亜鉛粒子の製造方法においては、詳細は後述するが、粒子の前駆体として特定の構造及び金属元素ドープ条件で調製した後、焼成工程において、特定の昇温条件で昇温させながら焼成処理を施すことにより、所望の平均結晶子径を有する球状酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0048】
ここでいう結晶子の平均結晶子径とは、上記方法により、100個の球状酸化亜鉛粒子について結晶子径を測定し、その算術平均値をもって平均結晶子径とする。
【0049】
〈球状酸化亜鉛粒子の形状〉
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子における球状とは、球状酸化亜鉛粒子を走査型顕微鏡により撮影し、得られた写真(SEM像)に基づいて規定する。具体的には、球状酸化亜鉛粒子について、走査型顕微鏡写真の撮影を行い、球状酸化亜鉛粒子100個を無作為に選択する。選択された各粒子の長径をa、短径をbとしたとき、a/bの値の平均値をアスペクト比として求める。なお、各粒子について外接する長方形(「外接長方形」という。)を描いたとき、外接長方形の短辺及び長辺うち、最短の短辺の長さを短径とし、最長の長辺の長さを長径とする。
【0050】
アスペクト比は、1.00〜1.15の範囲内であれば「球状粒子」であると定義する。アセペクト比としては、好ましくは1.00〜1.05の範囲内である。1.00〜1.15の範囲外である場合は不定形として分類する。アスペクト比が1.00に近づくほど、球形度が高いことを表している。
【0051】
球状酸化亜鉛粒子の平均粒子径は、50〜5000nmの範囲内であることが好ましい。平均粒子径が50nm以上であれば、粒子合成中に凝集などの発生を防止することができる。また5000nm以下であれば、良好なプラズモン共鳴の効率を得ることができる。より好ましくは50〜3000nmの範囲内であり、特に好ましくは80〜2500nmの範囲内である。
【0052】
平均粒子径は、ランダムに選択した100個の球状酸化亜鉛粒子の写真画像の面積に基づき、面積円相当粒子径を求め、この算術平均値をもって平均粒子径とすることができる。
【0053】
また、球状酸化亜鉛粒子の粒子径分布の変動係数は、1.0〜10%の範囲内であることが好ましい。粒子径分布の変動係数が10%以下であれば、効率よくプラズモン共鳴ができ、好ましい。更に好ましくは、1.0〜8.%の範囲内であり、特に好ましくは1.0〜7.0%の範囲内である。
【0054】
粒子径分布の変動係数は、所定の個数の球状酸化亜鉛粒子の走査型顕微鏡写真(SEM像)から求めることができる粒子径分布の変動係数により規定することができる。
【0055】
例えば、球状酸化亜鉛粒子100個のSEM像から粒子径分布の変動係数(「単分散度」ともいう。)を求めることができる。なお、粒子径分布の変動係数は下記の式(2)で求める。
【0056】
式(2)
変動係数(%)=(粒子径分布の標準偏差/平均粒子径)×100
なお、上記平均粒子径、及び粒子分布等の測定は、画像処理測定装置(例えば、ルーゼックス AP;株式会社ニレコ製)を用いて行うことができる。
【0057】
《球状酸化亜鉛粒子の製造方法》
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子は、該金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲内であり、かつ平均結晶子径が、10〜55nmの範囲内であることが特徴である。
【0058】
上記で規定するような粒子内の結晶構造を維持したまま、粒子内で高いドープ濃度を有する球状酸化亜鉛粒子を製造する方法として、下記の製造方法1又は製造方法2を適用する。
【0059】
第1の方法(製造方法1:金属元素均一組成前駆体)は、金属元素及び亜鉛を含む水溶液用い、金属元素のドープ濃度が粒子の厚さ方向で均一である亜鉛系化合物前駆体粒子を形成した後、昇温速度を速めて焼成処理を施すことにより、結晶化と同時に、ドーパントである金属元素を高濃度で結晶内に取り込む方法である。
【0060】
具体的には、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素を含む水溶液と、亜鉛水溶液と、尿素類水溶液とを混合して亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する前駆体粒子形成工程と、前記亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する焼成工程とを有し、前記前駆体粒子形成工程で調製する亜鉛系化合物前駆体粒子は、前記金属元素のドープ濃度が粒子の厚さ方向で均一であり、かつ前記焼成工程の焼成時の昇温速度が20〜50℃/分の範囲内とする球状酸化亜鉛粒子の製造方法である。
【0061】
第2の方法(製造方法2:コア・シェル構造前駆体)は、前駆体粒子にあらかじめドーパント濃度分布を有する構造を形成した後、ゆっくりとした昇温速度により焼成処理を施して結晶化させることにより、金属元素の熱拡散によりドープ濃度分布を均一化させ、結晶内に高濃度でドーパントを取り込むことにより、高感度化した球状酸化亜鉛粒子を得る方法である。
【0062】
具体的には、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素を含む水溶液と、亜鉛水溶液と、尿素類水溶液とを混合して亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する前駆体粒子形成工程と、前記亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する焼成工程とを有し、前記前駆体粒子形成工程で調製する亜鉛系化合物前駆体粒子は、コア・シェル構造を有し、前記金属元素のドープ濃度が、シェルに対しコアが高い構成である球状酸化亜鉛粒子の製造方法である。
【0063】
〔製造方法1:金属元素均一組成前駆体を用いた球状酸化亜鉛粒子の製造方法〕
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子の製造方法1は、亜鉛、例えば、硝酸亜鉛含有水溶液と、金属元素、例えば、金属元素硝酸塩を含有水溶液と、尿素類水溶液とを混合して、均一組成の亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程(前駆体粒子形成工程ともいう。)と、当該亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する工程(焼成工程ともいう。)を有しており、更に詳細な工程としては、以下に説明するように、「原料液調製工程」、「亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程」、「固液分離工程」及び「亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する工程」の四つの工程から構成される。
【0064】
1.原料液調製工程
原料液調製工程は、原料である亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液とを調製する工程である。
【0065】
(尿素類水溶液調製工程)
尿素類水溶液調製工程は、所定の濃度の尿素類水溶液を調製する工程である。
【0066】
尿素類としては、尿素単体の他に、尿素の塩(例えば、硝酸塩、塩酸塩等)、N,N′−ジメチルアセチル尿素、N,N′−ジベンゾイル尿素、ベンゼンスルホニル尿素、p−トルエンスルホニル尿素、トリメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラメチル尿素、トリフェニル尿素、テトラフェニル尿素、N−ベンゾイル尿素、メチルイソ尿素、エチルイソ尿素、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等を挙げることができる。
【0067】
尿素類は沈殿剤として作用し、亜鉛水溶液と金属元素水溶液をとともに水に混ぜて加熱した際に、塩基性炭酸塩として亜鉛系化合物前駆体粒子を生成すると考えられる。上記の尿素類の中では尿素が、徐々に加水分解することで、適度な速度で沈殿が生成し、均一な沈殿物が得られる観点から好ましい。
【0068】
尿素類水溶液は、上記説明した尿素類を含有する水溶液であればよく、上記尿素類と水とを混合して調製すればよい。必要に応じpH調整剤等の添加剤を入れることもできる。
【0069】
尿素類水溶液の濃度に特に制限はないが、0.01〜10.00モル/Lの範囲内であることが望ましい。好ましくは、0.10〜5.00モル/Lの範囲内である。
【0070】
(金属元素水溶液の調製工程)
金属元素水溶液の調製工程は、金属ドーパントとして、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ニオブ(Nb)及びイッテルビウム(Yb)からなる群より選ばれる金属元素を含む水溶液である、金属元素水溶液を調製する工程である。
【0071】
これらの金属元素の水溶液を調製する際には、当該金属元素の塩として、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等を用い、水に溶解して水溶液を調製することができるが、その中でも、硝酸塩を使用することが好ましい。これにより、不純物の少ない球状酸化亜鉛粒子を製造することができる。
【0072】
金属元素水溶液の水溶液中でのイオン濃度は、特に制限はないが、0.00001〜5.00モル/Lの範囲内であることが好ましい。0.0001〜3.00モル/Lの範囲内であることがより好ましい。
【0073】
金属元素水溶液は、上記金属を1種含有していてもよいし、目的に応じ複数種含有していてもよい。
【0074】
(亜鉛水溶液調製工程)
亜鉛水溶液調製工程は、亜鉛元素を含有する水溶液を調製する工程である。亜鉛元素を含有する水溶液を調製するために用いることができる亜鉛の塩として、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩等を用いることができるが、硝酸塩を使用することが好ましい。これにより、不純物の少ない球状酸化亜鉛粒子を製造することができる。
【0075】
亜鉛水溶液の水溶液中でのイオン濃度は、特に制限はないが、0.0001〜10.00モル/Lの範囲内であることが好ましい。0.001〜5.00モル/Lの範囲内であることがより好ましい。
【0076】
2.亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程(前駆体粒子形成工程)
製造方法1において、粒子内での金属元素が均一に存在している亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程(前駆体粒子形成工程)は、上記亜鉛水溶液と上記金属元素水溶液と上記尿素類水溶液とを、撹拌しながら混合して、亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程である。
【0077】
亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程では、最初に亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液を同時に混合して、亜鉛系化合物前駆体粒子を形成してもよいし。亜鉛水溶液と前記金属元素水溶液と前記尿素類水溶液の少なくともいずれかを粒子形成途中で反応液中に添加して、亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する亜鉛系化合物前駆体粒子方法であってもよい。
【0078】
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子の製造方法により、高いプラズモン共鳴強度と共に、単分散性に優れた球状酸化亜鉛粒子が得られるメカニズムは、明確にはなっていないが、亜鉛水溶液中から亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する際、尿素類を存在させることにより、尿素類が徐々に、かつ均一に分解することにより亜鉛の塩基性炭酸塩を均一に生成することができるため、粒径分布の揃った球状酸化亜鉛粒子が生成するものと考えられる。
【0079】
なお、球状酸化亜鉛粒子は塩基性炭酸塩を経て調製されるが、粒子中に塩基性炭酸塩が残っていても良い。
【0080】
したがって、最初の反応液は、亜鉛水溶液と尿素類水溶液を混合したものであることが好ましい。ここで、反応液とは、尿素類水溶液と、亜鉛水溶液又は金属元素水溶液の少なくともいずれかが混合した液をいう。
【0081】
また、反応液の温度は、尿素類が加水分解できる温度であることが好ましい。具体的には反応液の温度は75〜100℃、好ましくは80〜100℃、より好ましくは90〜100℃の範囲内である。
【0082】
亜鉛系化合物前駆体粒子の形成途中の反応液中に水溶液を添加する場合、添加する水溶液は、亜鉛水溶液、金属元素水溶液及び尿素類水溶液のいずれであっても構わない。清掃方法1においては、複数の水溶液を添加してもよいが、金属元素を均一に含有する粒子を形成する観点からは、亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液を同時に混合して、前駆体粒子を形成する方法が好ましい。
【0083】
また、亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液を混合して亜鉛系化合物前駆体粒子の形成途中の反応液に尿素類水溶液を添加することもできる。このように、沈殿剤として作用する尿素類水溶液を添加することにより、粒径分布を維持しつつ単分散に優れた球状亜鉛系化合物前駆体粒子が得ることもできる。
【0084】
添加する速度は、反応液1Lに対して0.00001〜1.00モル/分の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.0001〜0.50モルの範囲内である。
【0085】
添加時間としては30〜240分が好ましい。より好ましくは60〜180分の範囲内である。
【0086】
球状酸化亜鉛粒子中の前記金属元素の総ドープ濃度は、亜鉛系化合物前駆体粒子における亜鉛と金属元素の総モル数に対する金属元素のモル比(モル%)と考えてよいので、添加する亜鉛水溶液と金属元素水溶液の比率を変えることにより、粒子中の該金属元素の平均ドープ濃度を、1.0〜20.0モル%の範囲内に、容易に調節することができる。
【0087】
また、撹拌時間は30分〜10時間の範囲内が好ましく、1〜3時間の範囲内が特に好ましい。なお、加熱温度及び撹拌時間は、目的とする粒子径に合わせて適宜調整することができる。
【0088】
なお、亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程における加熱・撹拌の際には、十分な撹拌効率を得られれば、特に撹拌機の形状等に制約はないが、より高い撹拌効率を得るためには、ローター・ステータータイプの撹拌機を使用することが好ましい。
【0089】
3.固液分離工程
加熱・撹拌した後、生成した沈殿物(球状酸化亜鉛粒子微粒子の前駆体)を溶液と分離する固液分離を行う。固液分離の方法は、一般的な方法でよく、例えば、フィルター等を使用して濾過することにより、球状酸化亜鉛粒子の前駆体を分離することができる。
【0090】
4.焼成する工程(焼成工程)
焼成する工程(焼成工程)は、固液分離工程により得られた球状酸化亜鉛粒子の前駆体を空気中又は酸化性雰囲気中で、200℃以上で焼成する。焼成された球状酸化亜鉛粒子の前駆体は、酸化物となり、金属元素を含有する球状酸化亜鉛粒子となる。好ましくは、焼成温度は300〜600℃の範囲内である。
【0091】
製造方法1においては、球状酸化亜鉛粒子前駆体を、室温(25℃)から上記焼成温度まで到達させる際、昇温速度を、20〜50℃/分の範囲という、後述する第2の方法に比べ速い速度で昇温することを特徴とする。例えば、焼成温度を500℃とした場合には、室温(25℃)から9.5〜24分という短時間で焼成温度まで到達させる。このような速い速度で球状酸化亜鉛粒子前駆体を昇温することにより、粒子内の結晶構造を安定に維持した状態で、結晶内に高濃度で金属元素を存在させることができ、プラズモンセンサーとして高感度を得ることができる。
【0092】
球状酸化亜鉛粒子前駆体を焼成する具体的な焼成装置としては、公知のローラーハースキルン又はロータリーキルンであることが好ましい。これにより、球状酸化亜鉛粒子前駆体に対して均一に熱が加わることとなり好ましい。
【0093】
この焼成工程においては、必要に応じて焼成する前に水又はアルコール等で洗浄、乾燥を行ってから焼成してもよい。
【0094】
焼成工程を経て冷却することにより、球状酸化亜鉛粒子を安定させた後、球状酸化亜鉛粒子を回収することができる。
【0095】
〔製造方法2:コア・シェル構造を有する前駆体を用いた球状酸化亜鉛粒子の製造方法〕
本実施形態の球状酸化亜鉛粒子の製造方法2は、基本的な製造工程は、製造方法1と同様で、「原料液調製工程」、「亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程」、「固液分離工程」及び「亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する工程」の四つの工程から構成されるが、「亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程」、及び「亜鉛系化合物前駆体粒子を焼成する工程」を下記の方法により行うことを特徴とする。
【0096】
(製造方法2における亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程)
製造方法2においては、
図2に示すように、亜鉛系化合物前駆体粒子(P)として、中心部にコア(C)を形成し、その表面をシェル(S)で被覆したコア・シェル構造を有し、亜鉛系化合物前駆体粒子(P)の段階で、金属元素のドープ濃度が、シェル(S)に対し、コア(C)が高い濃度構成であることを特徴とする。
【0097】
〈コアの形成〉
コア(C)の形成方法としては、製造方法1で記載した「2.亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程」と同様の方法で、前記「1.原料液調製工程」と同様の方法で調製した亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液とを用いて、撹拌しながら混合して、亜鉛系化合物前駆体粒子のコア粒子を調製する。具体的な調製方法は、「2.亜鉛系化合物前駆体粒子を形成する工程」に記載した方法と同様である。
【0098】
このとき、コア粒子における金属元素のドープ濃度は、最終的な球状酸化亜鉛粒子の金属元素の平均ドープ濃度が1.0〜20.0モル%の範囲とするため、この濃度条件より高い条件で金属元素を含有している。
【0099】
〈シェルの形成〉
コア粒子を調製した後、コア粒子表面に、コア(C)に対し、金属元素のドープ量が低いシェル(S)を形成する。
【0100】
シェル(S)の形成方法としては、例えば、下記の(1)又は(2)の方法を用いる。
【0101】
(1)コア(S)の形成と同様に、亜鉛水溶液と金属元素水溶液と尿素類水溶液とを用いてシェル(S)を形成する。ただし、コア(C)の形成条件に対し、ドーパント(金属元素)の濃度を低く設定してシェル(S)を形成する。
【0102】
(2)シェル形成水溶液として、亜鉛水溶液と尿素類水溶液のみを用いてシェル(S)を形成する。
【0103】
製造方法2で形成するコア・シェル構造において、コアとシェルの比率としては、特に制限はないが、体積比として、コア(C):シェル(S)=60:40〜95:5の範囲内であることが好ましい。
【0104】
(製造方法2における焼成工程)
製造方法2における焼成工程における条件としては、粒子内部に高濃度で存在しているドーパントを、ゆっくりとした焼成速度で、室温(25℃)から昇温して焼成することにより、粒子のコアからドーパントを熱拡散させながら、粒子内でのドープ濃度を均一化させ、結晶内に安定してドーパントを組み入れることが、高感度を達成する上で重要な条件となる。
【0105】
従って、前記製造方法1の焼成条件とは異なり、昇温速度としては、20℃/分未満であることが好ましく、さらに好ましくは10〜19℃/分の範囲内である。
【0106】
なお、焼成工程における焼成条件としては、固液分離工程により得られた球状酸化亜鉛粒子の前駆体を空気中又は酸化性雰囲気中で、200℃以上で焼成する。焼成された球状酸化亜鉛粒子の前駆体は、酸化物となり、金属元素を含有する球状酸化亜鉛粒子となる。好ましくは、焼成温度は300〜600℃の範囲内である。
【0107】
《プラズモンセンサーチップ》
本実施形態のプラズモンセンサーチップは、上述した球状酸化亜鉛粒子及び基板を有する。球状酸化亜鉛粒子は、プラズモンセンサーにおいて、プラズモン共鳴を生じるチップとして用いられる。
【0108】
図3はプラズモンセンサーチップを用いたプラズモンセンサーの一例である。このプラズモンセンサー1は、基板2とその上に球状酸化亜鉛粒子を含有した層3からなるプラズモンセンサーチップ4を備え、基板2の球状酸化亜鉛粒子を含有した層3とは反対側の面に光学プリズム5を密着させた構造を有している。球状酸化亜鉛粒子を含有した層3の上には被検物9が取付け部8により固定されている。
【0109】
光源6から照射される近赤外光を、偏光板7を介して偏光し、光学プリズム5を通して透明基板2に照射する。入射光は、全反射となる条件の入射角θ
1で入射する。入射光の球状酸化亜鉛粒子の表面側に染み出すエバネセント波によって、ある波長で局在プラズモン共鳴が発現する。これを波長の異なる赤外光で行う。表面プラズモン共鳴が起こると、エバネセント波は表面プラズモンによって吸収されるので、反射強度が著しく減少する。この共鳴周波数から被検物の分子中の官能基を定量することができる。反射角θ
2で反射した反射光の光量は受光部10で測定される。
【0110】
本実施形態のプラズモンセンサーにおいては、単分散性に優れた球形度の高い球状酸化亜鉛粒子を用いることにより、それぞれの粒子間で表面状態の差が小さくなる結果、角度依存性が抑制され、容易かつ正確に表面プラズモン共鳴を起こすことができるものと考えられる。
【0111】
〈基材〉
プラズモンセンサーチップに用いられる基材は、可視光から赤外領域に透明で高屈折率であることが好ましい。基材の屈折率は、1.30〜4の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.40〜3である。例えば、ガラス、樹脂が好ましく用いられる。
【0112】
樹脂基材としては、従来公知の種々の樹脂フィルムを用いることができる。例えば、セルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルム等を挙げることができる。中でも、ポリカーボネート系フィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、及びセルロースエステル系フィルム、アクリルフィルムが好ましい。特にポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム又はアクリルフィルムを用いることが好ましい。また樹脂フィルムは、溶融流延製膜で製造されたフィルムであっても、溶液流延製膜で製造されたフィルムであってもよい。
【0113】
基材の厚さは、例えば、0.001〜10mmの範囲内であることが好ましい。
【0114】
〈球状酸化亜鉛粒子を含有した層の形成〉
球状酸化亜鉛粒子を含有した層を基材状に形成する形成方法は種々な方法をとりうる。例えば、スプレーコーティング、インクジェットコーティング、ディスペンサーコーティング、スリットコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング、ディップコーティングなどを用いることができる。
【0115】
球状酸化亜鉛粒子を含有した層の層厚は、プラズモン共鳴の高効率化の理由から厚さは50nm〜50μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは50nm〜10μmの範囲内である。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
【0117】
実施例1
下記の方法に従って、製造方法1(金属元素が均一組成の前駆体を用いた酸化亜鉛粒子の製造)に従って、酸化亜鉛粒子1〜43を調製した。
【0118】
《酸化亜鉛粒子の調製》
〔酸化亜鉛粒子1の調製〕
1.原料水溶液の調製工程
(1)2.10モル/Lの尿素水溶液を1.00L用意した。
【0119】
(2)0.01モル/Lの硝酸ガリウム水溶液を500mL用意した。
【0120】
(3)0.99モル/Lの硝酸亜鉛水溶液500mLに純水を加え8.5Lとした。
【0121】
2.亜鉛系化合物前駆体粒子の形成工程
(4)上記(3)で調製した硝酸亜鉛水溶液を90℃まで加熱した。
【0122】
(5)上記(4)で加熱した硝酸亜鉛水溶液に、(1)で用意した尿素水溶液と、(2)で用意した硝酸ガリウム水溶液を添加し、1時間加熱・撹拌した。
【0123】
3.固液分離工程
(6)上記(5)で加熱・撹拌した混合液中に析出した粒子の前駆体を、メンブランフィルターで分離した。
【0124】
4.焼成工程
(7)上記(6)で分離した粒子の前駆体を20℃/分の昇温速度で、25℃から500℃まで昇温し、500℃の状態を60分間維持して、焼成処理を施し、次いで冷却して、酸化亜鉛粒子1を得た。
【0125】
〔酸化亜鉛粒子2〜4の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、それぞれ30℃/分、40℃/分、50℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子2〜4を調製した。
【0126】
〔酸化亜鉛粒子5〜8の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.05モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.95モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子5〜8を調製した。
【0127】
〔酸化亜鉛粒子9〜12の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.10モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.90モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子9〜12を調製した。
【0128】
〔酸化亜鉛粒子13〜16の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.12モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.88モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子13〜16を調製した。
【0129】
〔酸化亜鉛粒子17〜20の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.15モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.85モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子17〜20を調製した。
【0130】
〔酸化亜鉛粒子21〜24の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.20モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.80モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子21〜24を調製した。
【0131】
〔酸化亜鉛粒子25〜33の調製〕
上記酸化亜鉛粒子14の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)の調製に用いる金属塩として、硝酸ガリウム(Ga)に代えて、それぞれ硝酸インジウム(In)、硝酸ユーロピウム(Eu)、硝酸セリウム(Ce)、硝酸プラセオジム(Pr)、硝酸サマリウム(Sm)、硝酸ガドリニウム(Gd)、硝酸テルビウム(Tb)、硝酸ニオブ(Nb)、硝酸イッテルビウム(Yb)に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子25〜33を調製した。
【0132】
〔酸化亜鉛粒子34の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更し、更に、前記焼成工程における昇温速度を、10℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子34を調製した。
【0133】
〔酸化亜鉛粒子35の調製〕
上記酸化亜鉛粒子34の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.008モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.992モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子35を調製した。
【0134】
〔酸化亜鉛粒子36の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、10℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子36を調製した。
【0135】
〔酸化亜鉛粒子37の調製〕
上記酸化亜鉛粒子5の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、60℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子37を調製した。
【0136】
〔酸化亜鉛粒子38の調製〕
上記酸化亜鉛粒子13の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、60℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子38を調製した。
【0137】
〔酸化亜鉛粒子39の調製〕
上記酸化亜鉛粒子17の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、60℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子39を調製した。
【0138】
〔酸化亜鉛粒子40の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子40を調製した。
【0139】
〔酸化亜鉛粒子41の調製〕
上記酸化亜鉛粒子4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子41を調製した。
【0140】
〔酸化亜鉛粒子42の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.25モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.75モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子42を調製した。
【0141】
〔酸化亜鉛粒子43の調製〕
上記酸化亜鉛粒子4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.25モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.75モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子43を調製した。
【0142】
《酸化亜鉛粒子の評価》
〔酸化亜鉛粒子の粒子特性値の測定〕
上記調製した各酸化亜鉛粒子について、下記の方法に従って、ドーパント濃度、平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)及びアスペクト比を測定した。
【0143】
(ドーパント濃度の測定)
球状酸化亜鉛粒子に含有されている全体のドーパントの含有率は、球状酸化亜鉛粒子1gを硝酸水溶液10mLと過酸化水素水1.0mLの混合溶液に溶解させ、エスアイアイナノテクノロジー社製のICP発光分光プラズマ装置(ICP−AES)を使用して元素分析を行い、球状酸化亜鉛粒子のドーパントの含有量から組成比(モル%)として算出した。表1には、ドープ濃度(モル%)として記載。
【0144】
(平均粒子径の測定)
上記調製した各酸化亜鉛粒子について走査型顕微鏡写真(SEM像)を撮影し、ランダムに200個の粒子を選択し、それぞれの粒子画像と等しい面積を有する円の直径を測定し、その算術平均値を平均粒子径とした。
【0145】
上記測定の結果、本発明の実施例である全ての球状酸化亜鉛粒子が、300〜350nmの範囲内であった。
【0146】
(粒子径の変動係数(CV値)の測定)
上記調製した各酸化亜鉛粒子について走査型顕微鏡写真(SEM像)を撮影し、ランダムに200個の粒子を選択し、それぞれの粒子画像と等しい面積を有する円の直径と、粒子径の標準偏差を求め、下式に従って、粒子径の変動係数(CV値)を測定した。
【0147】
変動係数(%)=(粒子径分布の標準偏差/平均粒子径)×100
上記方法により測定した本発明の実施例である酸化亜鉛粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、4.2〜7.2の範囲内であった。
【0148】
(アスペクト比の測定)
上記調製した各酸化亜鉛粒子について走査型顕微鏡写真(SEM像)を撮影し、ランダムに200個の粒子を選択し、それぞれの粒子画像における長径aと、短径bを測定し、a/bの値を求め、この平均値をアスペクト比として求めた。
【0149】
上記方法により測定した本発明の実施例である球状酸化亜鉛粒子のアスペクト比は、1.05〜1.10の範囲内であった。
【0150】
〔酸化亜鉛粒子の結晶子径の測定〕
各酸化亜鉛粒子に対し、粉末X線回折装置(リガク社製、MiniFlexII)を用いてX線回折により、結晶子径を測定した。X線源としては、CuKα線を使用した。結晶子径は、X線回折のメインピーク((101)面)にて計算された値を用いた。
【0151】
〔酸化亜鉛粒子のプラズモン評価〕
下記の方法に従って、各酸化亜鉛粒子のプラズモン共鳴強度を評価した。
【0152】
水−エタノール溶液の添加量を適宜変化させ、屈折率がそれぞれ、n=1.33、n=1.34、n=1.35の屈折率の異なるサンプル溶液を用意し、酸化亜鉛粒子を配列させた基板上にそれぞれ滴下した。
【0153】
次いで、FT−IR装置(フーリエ変換赤外線分光光度計、日本分光社製 FTIR−6000)を用いて各サンプル溶液に1400〜1600nmの範囲内で波長を変化させた光を入射し、その反射光のプラズモン共鳴強度を測定した。反射ピーク波長の差が20nm以上あるものを屈折率差が測定できていると判断し、下記の基準に従ってプラズモン共鳴強度の評価を行った。
【0154】
◎:n=1.33、n=1.34、n=1.35のサンプル溶液の差を測定でき、プラズモン共鳴強度が高い
○:n=1.33とn=1.35のサンプル液の差のみ測定でき、プラズモン共鳴強度がやや高い
×:n=1.33、n=1.34、n=1.35のサンプル液の差が測定することができず、プラズモン共鳴強度が低い
以上により得られた結晶子径とプラズモン評価の結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】
表1に記載の結果より明らかなように、ドーパント濃度と結晶子径が、本願発明で規定する条件を満たす酸化亜鉛粒子は、比較例に対し、プラズモン評価におけるプラズモン共鳴強度が高いことがわかる。
【0157】
実施例2
下記の方法に従って、製造方法2(コア・シェル構造を有する前駆体を用いた酸化亜鉛粒子の製造)に従って、酸化亜鉛粒子51〜93を調製した(なお、酸化亜鉛粒子番号の44〜50は欠番とした。)。
【0158】
《酸化亜鉛粒子の調製》
〔酸化亜鉛粒子51の調製〕
1.原料水溶液の調製工程
(1)2.10モル/Lの尿素水溶液を1.00L用意した。
【0159】
(2)0.01モル/Lの硝酸ガリウム水溶液を565mL用意した。
【0160】
(3)0.99モル/Lの硝酸亜鉛水溶液500mLに純水を加え8.5Lとした。
【0161】
2.亜鉛系化合物前駆体粒子の形成工程
(2.1:コア粒子の調製)
(4)上記(3)で調製した硝酸亜鉛水溶液を90℃まで加熱した。
【0162】
(5)上記(4)で加熱した硝酸亜鉛水溶液に、(1)で用意した尿素水溶液と、(2)で用意した硝酸ガリウム水溶液を添加し、1時間加熱・撹拌して、コア粒子を調製した。コア粒子における金属元素(Ga)のドープ濃度は、1.13モル%である。
【0163】
(2.2:シェルの形成)
(6)次いで、(5)で調製したコア粒子を含む溶液に、2.10モル/Lの尿素水溶液と0.99モル/Lの硝酸亜鉛水溶液をそれぞれ1mL/minの添加速度で65分間(総量:65mL)、90℃で加熱撹拌しながら添加して、シェルを形成した。
【0164】
3.固液分離工程
(7)上記(6)で加熱・撹拌した混合液中に析出した粒子の前駆体を、メンブランフィルターで分離した。
【0165】
4.焼成工程
(8)上記(7)で分離した粒子の前駆体を12℃/分の昇温速度で、約40分を要して、25℃から500℃までゆっくりと昇温し、500℃の状態を60分間維持して、焼成処理を施し、次いで冷却して、酸化亜鉛粒子51を得た。
【0166】
〔酸化亜鉛粒子52〜54の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、それぞれ15℃/分、17℃/分、19℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子52〜54を調製した。
【0167】
〔酸化亜鉛粒子55〜58の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51〜54の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.05モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.95モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子55〜58を調製した。
【0168】
〔酸化亜鉛粒子59〜62の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51〜54の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.10モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.90モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子59〜62を調製した。
【0169】
〔酸化亜鉛粒子63〜66の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.12モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.88モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子63〜66を調製した。
【0170】
〔酸化亜鉛粒子67〜70の調製〕
上記酸化亜鉛粒子1〜4の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.15モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.85モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子67〜70を調製した。
【0171】
〔酸化亜鉛粒子71〜74の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51〜54の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.20モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.80モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子71〜74を調製した。
【0172】
〔酸化亜鉛粒子75〜83の調製〕
上記酸化亜鉛粒子64の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)の調製に用いる金属塩として、硝酸ガリウム(Ga)に代えて、それぞれ硝酸インジウム(In)、硝酸ユーロピウム(Eu)、硝酸セリウム(Ce)、硝酸プラセオジム(Pr)、硝酸サマリウム(Sm)、硝酸ガドリニウム(Gd)、硝酸テルビウム(Tb)、硝酸ニオブ(Nb)、硝酸イッテルビウム(Yb)に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子75〜83を調製した。
【0173】
〔酸化亜鉛粒子84の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51の調製において、1.原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更し、更に、前記焼成工程における昇温速度を、8℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子84を調製した。
【0174】
〔酸化亜鉛粒子85の調製〕
上記酸化亜鉛粒子84の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.008モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.992モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子85を調製した。
【0175】
〔酸化亜鉛粒子86の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、8℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子86を調製した。
【0176】
〔酸化亜鉛粒子87の調製〕
上記酸化亜鉛粒子55の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、23℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子87を調製した。
【0177】
〔酸化亜鉛粒子88の調製〕
上記酸化亜鉛粒子63の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、23℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子88を調製した。
【0178】
〔酸化亜鉛粒子89の調製〕
上記酸化亜鉛粒子67の調製において、前記焼成工程における昇温速度を、23℃/分に変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子89を調製した。
【0179】
〔酸化亜鉛粒子90の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子90を調製した。
【0180】
〔酸化亜鉛粒子91の調製〕
上記酸化亜鉛粒子54の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.005モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.995モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子91を調製した。
【0181】
〔酸化亜鉛粒子92の調製〕
上記酸化亜鉛粒子51の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.25モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.75モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子92を調製した。
【0182】
〔酸化亜鉛粒子93の調製〕
上記酸化亜鉛粒子54の調製において、前記原料水溶液の調製工程における(2)硝酸ガリウム水溶液の濃度を0.25モル/Lに変更し、(3)硝酸亜鉛水溶液の濃度を0.75モル/Lに変更した以外は同様にして、酸化亜鉛粒子93を調製した。
【0183】
《酸化亜鉛粒子の評価》
〔酸化亜鉛粒子の粒子特性値の測定〕
上記調製した各酸化亜鉛粒子について、実施例1に記載の方法に従って、ドーパント濃度、平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)及びアスペクト比を測定した結果、本発明の実施例である全ての球状酸化亜鉛粒子が、300〜350nmの範囲内であった。また、本発明の実施例である酸化亜鉛粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、4.2〜7.2の範囲内であった。また、本発明の実施例である球状酸化亜鉛粒子のアスペクト比は、1.05〜1.10の範囲内であった。なお、コア部のドーパント濃度は、コア部形成時点で取り分けた試料を用いて測定した。実施例2においては、シェル部形成の際にはドーパントを添加していないが、シェル部にもドーパントを添加している場合には、X線光電子分光装置(VGサイエンティフィックス社製 ESCALAB−200R)を使用してシェル部のドーパント濃度を測定することができる。
【0184】
〔酸化亜鉛粒子の結晶子径の測定及びプラズモン評価〕
各酸化亜鉛粒子に対し、実施例1に記載の方法と同様にして、酸化亜鉛粒子の結晶子径の測定及びプラズモン評価を行い、得られた結果を、表2に示す。
【0185】
【表2】
【0186】
表2に記載の結果より明らかなように、ドーパント濃度と結晶子径が、本願発明で規定する条件を満たす酸化亜鉛粒子は、比較例に対し、プラズモン評価におけるプラズモン共鳴強度が高いことがわかる。