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  • 特開2016222505-ゼオライトの製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222505(P2016-222505A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   C01B39/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-111578(P2015-111578)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 豊浩
(72)【発明者】
【氏名】島田 悟史
【テーマコード(参考)】
4G073
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA48
4G073BA63
4G073BB48
4G073BD01
4G073BD11
4G073BD21
4G073CZ17
4G073FA03
4G073FA10
4G073FA12
4G073FB13
4G073FB24
4G073FB30
4G073FB36
4G073FC03
4G073FC12
4G073FC18
4G073FC25
4G073FD01
4G073FD02
4G073FD12
4G073FD23
4G073FE06
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA11
4G073GA40
4G073GB02
4G073UA02
4G073UA05
4G073UB60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】Cuのイオン交換効率が高く、Cuを有効に利用することができ、製造コストの低減を可能とする、Cuが担持されたCHA構造ゼオライト製造方法の提供。
【解決手段】Cuを担持し、CHA構造を有するゼオライトを製造する方法であって、CHA構造を有するゼオライトの粉末及びCuの塩の粉末を混合する混合工程と、得られた混合粉末を加熱する加熱工程とを含む、ゼオライトの製造方法。Cu塩粉末を用いた固相でのイオン交換により、ゼオライトに使用されるCuのほぼ全量を担持させることが出来、Cuのイオン交換率が高く、Cuを有効に利用出来、製造コストの低減が可能であり、また、溶液を利用しないため、廃液が発生せず、その処理も不要となるゼオライトの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトを製造する方法であって、
CHA構造を有するゼオライトの粉末およびCuの塩の粉末を混合する混合工程と、
得られた混合粉末を加熱する加熱工程と
を含む、ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記混合粉末の水分量が30質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程における混合粉末の加熱温度が250〜800℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記Cuの塩が、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅および塩化銅からなる群より選ばれる一種以上の塩である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Cuの塩が、硝酸銅であり、前記加熱工程における雰囲気が酸化雰囲気である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトにおけるCu/Al(モル比)が0.2〜0.5である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトのSiO/Al組成比(SAR)が15未満である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトの平均粒子径が0.5μm以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の排ガスを浄化するシステムの1つとして、アンモニアを用いて、NOxを窒素と水に還元するSCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られており、Cuが担持されたCHA構造のゼオライトは、SCR触媒作用を有するゼオライトとして注目されている。
【0003】
このSCRシステムは、排ガスが通過する多数の貫通孔が長手方向に併設されたハニカムユニットをSCR触媒担体として用いており、例えば、特許文献1は、SCR触媒担体として使用した際の耐熱性、耐久性を上げることを目的として、その組成比SiO/Alが15未満であり、かつ、粒子径が1.0〜8.0μmの、Cuが担持されたCHA構造のゼオライトを開示している。
【0004】
一方、Cuが担持されたCHA構造のゼオライトの製造方法として、例えば特許文献2は、アルミナに対するシリカのモル比が10を超えるCHA構造を備えたゼオライトに対し、約0.001〜約0.25モルのCu濃度の酢酸銅及び/又は銅イオンのアンモニア性溶液を用いてイオン交換する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−211066号公報
【特許文献2】特開2013−514167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術には、次のような問題がある。
すなわち、特許文献2に記載の技術では、イオン交換の際に使用される溶液中のCuイオンのうち、その一部しかゼオライトに担持されず、Cuの多くは溶液中に残ってしまうという問題点がある。Cuイオンを含む溶液は、繰り返し使用することができるものの、その都度溶液のCu濃度やpHの調整、不純物の除去等が必要となる。また、イオン交換時の溶液濃度や温度によっては溶液中でCuが析出することがあり、こうなると、ゼオライトへは担持されなくなる。そのため、従来技術ではゼオライトの製造過程において多くのCuを無駄にしてしまっているのが現状である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、Cuのイオン交換効率が高く、Cuを有効に利用することができ、製造コストの低減を可能とする、Cuが担持されたCHA構造のゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明のゼオライトの製造方法は、Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトを製造する方法であって、
CHA構造を有するゼオライトの粉末およびCuの塩の粉末を混合する混合工程と、
得られた混合粉末を加熱する加熱工程と
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明者らはCuのイオン交換効率を高め、かつCuを有効に利用できるCuが担持されたゼオライトの製造方法について鋭意検討を行った結果、Cuイオンを含む溶液でのイオン交換に替えて、Cuの塩の粉末を用いた固相でのイオン交換を採用することにより、ゼオライトに使用されるCuのほぼ全量を担持させることができ、Cuのイオン交換効率が高く、Cuを有効に利用することができ、製造コストの低減が可能となった。また、溶液を利用しないため、廃液が発生せず、その処理も不要となる。
【0010】
本発明のゼオライトの製造方法においては、上記混合粉末の水分量が30質量%以下であることが好ましい。本発明では、上記のように固相でのイオン交換を採用するものであるが、混合粉末中の水分量を極端に規制するものではない。上記混合粉末が空気中の水分を含み、水分量が30質量%以下で存在しても、Cuのイオン交換効率を損ねることはない。
【0011】
本発明のゼオライトの製造方法においては、上記加熱工程における加熱温度が250〜800℃であることが好ましい。250℃以上の加熱温度により、効率よくゼオライトにCuを担持させることができる。また800℃以下の加熱温度により、ゼオライトの結晶構造を破壊することがない。
【0012】
本発明のゼオライトの製造方法においては、使用するCuの塩が、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅および塩化銅からなる群より選ばれる一種以上の塩であることが好ましい。これらのCuの塩は低コストであり、本発明のゼオライトの製造方法のコストを一層低下させることができる。
【0013】
本発明のゼオライトの製造方法においては、使用するCuの塩が、硝酸銅であり、上記加熱工程における雰囲気が酸化雰囲気であることが好ましい。Cuが担持されたゼオライトはSCR触媒として酸化雰囲気で使用されるため、実使用の際に状態変化することを防ぐことができる。また、イオン交換において、真空や還元雰囲気に置換する必要がないため、連続的に加熱工程を行うことができる。
【0014】
本発明のゼオライトの製造方法においては、Cuが担持されたゼオライトにおけるCu/Al(モル比)が0.2〜0.5であることが好ましい。該モル比が0.2以上であることにより、少量のゼオライトで高いNOx浄化性能を得ることができる。また該モル比が0.5以下であることにより、高温でのアンモニア酸化によるNOx浄化性能の低下を防止できる。また、該モル比が0.2〜0.5とゼオライト中のAlに対して高確率でCuを担持するため、上記した固相でのイオン交換による効果をより発揮できる。
【0015】
また本発明のゼオライトの製造方法においては、CHA構造を有するゼオライトにおけるSiO/Al組成比(SAR)が15未満であることが好ましい。その組成比SiO/Alが15未満であることにより、NOxの浄化率をさらに高めることができる。その理由は、SiO/Alが15未満であることにより、アルミナ量が増え、それに比例して触媒として機能するCuの担持量を多くできるからある。また、SARが15未満であると、上記混合粉末におけるゼオライトに対するCuの塩の量が多くなるため、上記した固相でのイオン交換による効果をより発揮できる。
【0016】
また本発明のゼオライトの製造方法においては、Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトの平均粒子径は、0.5μm以下であることが好ましい。ゼオライトはCu担持の前後で粒子径が変化することはなく、Cu担持前の平均粒子径が0.5μm以下と粒子径の小さいゼオライトを用いることで、ゼオライトとCuの塩の粉末が混合しやすく、Cuの塩の粉末の偏りがない混合粉末が得られるため、部分的にCuの担持量が異なることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、Cuのイオン交換効率が高く、Cuを有効に利用することができ、製造コストの低減を可能とする、Cuが担持されたCHA構造のゼオライトの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1で合成したゼオライトのXRDパターンを示すチャートである。
【0019】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0020】
本発明のゼオライトの製造方法は、以下の各工程を含むことを特徴とする。
CHA構造を有するゼオライトの粉末およびCuの塩の粉末を混合する混合工程、および
得られた混合粉末を加熱する加熱工程。
【0021】
なお本発明により製造されるゼオライトは、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association:IZA)において、CHAという構造コードで命名され、分類されており、天然に産出するチャバサイト(chabazite)と同等の結晶構造を有するゼオライトである。
【0022】
まず、本発明のゼオライトの製造方法における混合工程について説明する。
CHA構造を有するゼオライト(以下、CHA型ゼオライトと言う)は、合成しても市販品を利用してもよいが、合成する場合は、まず、Si源、Al源、アルカリ源、水及び構造規定剤からなる原料組成物を準備する。
【0023】
Si源とは、ゼオライトのシリコン成分の原料となる化合物、塩及び組成物をいう。
本発明のゼオライトの製造方法において、Si源としては、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲル等を用いることができ、これらを二種以上併用してもよい。これらの中では、コロイダルシリカが望ましい。
【0024】
本発明のゼオライトの製造方法において、Al源としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノ−シリケートゲル、乾燥水酸化アルミニウムゲル等が挙げられる。これらのなかでは、乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。
【0025】
本発明のゼオライトの製造方法においては、ほぼ製造されるゼオライトのモル比(SiO/Al)と同じモル比のSi源、Al源を用いることが望ましく、原料組成物中のモル比(SiO/Al)を、5〜30とすることが望ましく、10〜15とすることがより望ましい。
【0026】
本発明のゼオライトの製造方法において、アルカリ源としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、アルミン酸塩及び珪酸塩中のアルカリ成分、アルミノシリケートゲル中のアルカリ成分等を用いることができ、これらを二種以上併用してもよい。
【0027】
本発明のゼオライトの製造方法において、水の量は、特に限定されるものではないが、Si源のSi及びAl源のAlの合計モル数に対する水のモル数の比(HOモル数/Si及びAlの合計モル数)が12〜30であることが望ましく、Si源のSi及びAl源のAlの合計モル数に対する水のモル数の比(HOモル数/Si及びAlの合計モル数)が15〜25であることがより望ましい。
【0028】
構造規定剤(以下、SDAとも記載する)とは、ゼオライトの細孔径や結晶構造を規定する有機分子を示す。構造規定剤の種類等によって、得られるゼオライトの構造等を制御することができる。
本発明のゼオライトの製造方法において、構造規定剤としては、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩、硫酸塩及び硝酸塩;及びN,N,N−トリメチルベンジルアンモニウムイオン、N−アルキル−3−キヌクリジノールイオン、またはN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナンをカチオンとする水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩、硫酸塩及び硝酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることができる。これらの中では、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、TMAAOHとも記載する)、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが望ましく、TMAAOHを用いることがより望ましい。
【0029】
本発明のゼオライトの製造方法において、ゼオライトの合成においては、原料組成物に、さらにゼオライトの種結晶を加えてもよい。種結晶を用いることにより、ゼオライトの結晶化速度が速くなり、ゼオライト製造における時間が短縮でき、収率が向上する。
【0030】
ゼオライトの種結晶としては、CHA構造を有するゼオライトを用いることが望ましい。
【0031】
ゼオライトの種結晶の添加量は、少ない方が望ましいが、反応速度や不純物の抑制効果等を考慮すると、原料組成物に含まれるシリカ成分に対して、0.1〜20質量%であることが望ましく、0.5〜15質量%であることがより望ましい。
【0032】
本発明のゼオライトの製造方法において、ゼオライトの合成においては、準備した原料組成物を反応させることにより、ゼオライトを合成する。具体的には、原料組成物を水熱合成することによりゼオライトを合成することが望ましい。
【0033】
水熱合成に用いられる反応容器は、既知の水熱合成に用いられるものであれば特に限定されず、オートクレーブなどの耐熱耐圧容器であればよい。反応容器に原料組成物を投入して密閉して加熱することにより、ゼオライトを結晶化させることができる。
【0034】
本発明のゼオライトの製造方法において、ゼオライトを合成する際、原料混合物は静置した状態でもよいが、攪拌混合した状態であることが望ましい。
【0035】
本発明のゼオライトの製造方法において、ゼオライトを合成する際の加熱温度は、100〜200℃であることが望ましく、120〜180℃であることがより望ましい。加熱温度が100℃未満であると、結晶化速度が遅くなり、収率が低下しやすくなる。一方、加熱温度が200℃を超えると、不純物が発生しやすくなる。
【0036】
ゼオライトを合成における加熱時間は、10〜200時間であることが望ましい。加熱時間が10時間未満であると、未反応の原料が残存し、収率が低下しやすくなる。一方、加熱時間が200時間を超えても、収率や結晶性の向上がほとんど見られない。
【0037】
ゼオライトの合成における圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた原料組成物を上記温度範囲に加熱したときに生じる圧力で充分であるが、必要に応じて、窒素ガスなどの不活性ガスを加えて昇圧してもよい。
【0038】
上記のようにして得られたCHA型ゼオライトは、充分に放冷し、固液分離し、充分量の水で洗浄することが望ましい。
【0039】
上記のようにして得られたCHA型ゼオライトは、細孔内にSDAを含有しているため、必要に応じてこれを除去してもよい。例えば、酸性溶液又はSDA分解成分を含む薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理などにより、SDAを除去することができる。
【0040】
本発明において、CHA型ゼオライトは、平均粒子径を0.5μm以下とすることが好ましい。平均粒子径を0.5μm以下とすることで、ゼオライトとCuの塩の粉末が混合しやすく、Cuの塩の粉末の偏りがない混合粉末が得られるため、部分的にCuの担持量が異なることを防ぐことができる。
なお、所望の粒子径のゼオライトを得る方法として、例えば、上記Si源として、比表面積が150〜500m/gのシリカゾル、Al源として、乾燥水酸化アルミニウムゲルを選択する方法等が挙げられる。
【0041】
ゼオライトの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)を用いて、SEM写真を撮影し、10個の粒子の全対角線の長さを測定し、その平均値から求める。なお、測定条件は、加速電圧:1kV、エミッション:10μA、WD:2.2mm以下とする。一般にCHA型ゼオライトの粒子は立方体であり、SEM写真で二次元に撮像した時には正方形となる。そのため粒子の対角線は2本である。
【0042】
シリカゾルの比表面積は、その固形分を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)にて50万倍で撮像して粒子径を測定し、その粒子径を比表面積に換算することによって求めることができる。TEM画像中の粒子の長径と短径を、スケールを用いて測定し、その平均値を粒子の粒子径とする。20個の粒子について同様に測定し、それらの粒子径の平均値を、全体の粒子径とする。比表面積は以下の計算式にて算出する。なおシリカの密度は2.2g/cmを用いる。比表面積(m/g)=6000/(粒子径(nm)×密度(g/cm))
【0043】
本発明の混合工程は、CHA型ゼオライトの粉末とCuの塩の粉末とを混合する。
Cuの塩としては、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅および塩化銅からなる群より選ばれる一種以上の塩であるのが、製造コスト面から好ましい。
【0044】
混合方法における混合条件としては、例えば乳鉢、フードプロセッサー、ヘンシェル混合機等の公知のミキサーを用い、混合時間として例えば1分〜30分、好ましくは1分〜10分とする。
【0045】
本発明のゼオライトの製造方法において、CHA型ゼオライトの粉末とCuの塩の粉末との混合割合は、下記で説明するようにCuを担持するゼオライトにおけるCu/Al(モル比)が0.2〜0.5となるようにするのが好ましい。
【0046】
このようにして得られたCHA型ゼオライトの粉末とCuの塩の粉末とからなる混合粉末が得られる。なお、混合粉末の水分量は、30質量%以下であることができる。本発明では、下記で説明するように液相ではなく固相でのイオン交換を採用するものであるが、混合粉末中の水分量を極端に規制するものではない。具体的には上記混合粉末の水分量は30質量%以下であることができ、該水分量であってもCuのイオン交換効率を高める効果を損ねることがない。本発明のゼオライトの製造方法において、好ましい混合粉末の水分量は1〜20質量%である。
水分量を1質量%とすることで、混合工程で粉末が静電気に帯電せず、より偏りなく混合することが可能となる。
なお混合粉末の水分量は、加熱乾燥式水分計(A&D社製 MX−50)で設定温度を200℃にして測定できる。
【0047】
次に、加熱工程について説明する。
本発明における加熱工程は、上記のようにして得られたCHA型ゼオライトの粉末とCuの塩の粉末とからなる混合粉末を加熱する工程である。
加熱手段としては、マッフル炉(デンケン・ハイデンタル製 KDF−S100)、雰囲気炉(中外炉工業社製 FQ−5270)、等の加熱炉を使用することができる。
【0048】
加熱温度は、250〜800℃が好ましい。250℃以上の加熱温度により、効率よくゼオライトにCuを担持させることができる。また800℃以下の加熱温度により、ゼオライトの結晶構造を破壊することがない。さらに好ましい加熱温度は、400〜800℃である。
【0049】
加熱雰囲気は、空気中あるいは窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気中であってもよい。
加熱する際の圧力は、大気圧で行うことができる。
加熱時間は、例えば0.5時間〜24時間であり、好ましくは1時間〜12時間である。
このような加熱工程により、Cuイオン交換されたCHA型ゼオライトが得られる。
【0050】
なお、本発明の加熱工程前のCHA型ゼオライトは、NH型ゼオライトまたはH型ゼオライトであるのが好ましい。このようなゼオライトを加熱工程に施すことにより、Cuを担持したCHA型ゼオライトを効率的に製造することができる。
【0051】
NH型ゼオライトの調製方法としては、合成後のゼオライトに対し、アンモニア溶液を用いてイオン交換を行う方法が挙げられる。アンモニア溶液としては、例えばアンモニア水、硫酸アンモニウム水溶液、硝酸アンモニウム水溶液等が挙げられる。アンモニア溶液中のアンモニア濃度は、例えば、1〜10質量%である。
アンモニア溶液を用いたイオン交換方法としては、上記のアンモニア溶液にゼオライトを浸漬することで行うことができる。アンモニア溶液の温度は例えば4〜50℃、大気圧で、浸漬時間は例えば0.1時間〜2時間である。このようにして、NH型ゼオライトが得られる。
【0052】
型ゼオライトの調製方法としては、上記のようにして得られたNH型ゼオライトを加熱する方法が挙げられる。
加熱温度は、例えば350〜650℃である。
加熱時間は、例えば0.5時間〜48時間である。
加熱手段としては、市販されている加熱炉を利用することができる。
【0053】
なおゼオライトの結晶構造の解析は、X線回折(XRD)装置を用いて行うことができる。CHA型ゼオライトは、粉末X線解析法によるX線回折スペクトルで、2θ=20.7°付近、25.1°付近、26.1°付近にそれぞれ、CHA型ゼオライト結晶の(211)面、(104)面及び(220)面に相当するピークが現れる。
【0054】
XRD測定は、X線回折装置(リガク社製 UltimaIV)を用いて行う。なお、測定条件は、次の通りとする。
線源:CuKα(λ=0.154nm)、測定法:FT法、回折角:2θ=5〜48°、ステップ幅:0.02°、積算時間:1秒、発散スリット、散乱スリット:2/3°、発散縦制限スリット:10mm、加速電圧:40kV、加速電流:40mA。
XRD測定前後でサンプル重量が0.1%以上の変化がないようにする。得られたXRDデータは、粉末X線回折パターン総合解析ソフトJADE6.0を用いてピークサーチを行い、さらに各ピークの半値幅と積分強度を算出する。なお、ピークサーチの条件は次の通りとする。
フィルタータイプ:放物線フィルター、Kα2ピークの消去:あり、ピーク位置定義:ピークトップ、閾値σ:3、ピーク強度%カットオフ:0.1、BG決定の範囲:1、BG平均化のポイント数:7。
得られたデータから、ゼオライトの(211)面(2θ=20.7°付近)、(104)面(2θ=25.1°付近)、(220)面(2θ=26.1°付近)の積分強度の和Xを求めることができる。なお、ゼオライトの(211)面、(104)面、(220)面のピークの積分強度を用いるのは、サンプルの吸水の影響が小さいためである。
本発明により製造されたゼオライトは、積分強度の和Xが50000以上であることが好ましい。
【0055】
本発明により製造されたゼオライトは、Cu/Al(モル比)が0.2〜0.5であることが好ましい。
該モル比が0.2以上であることにより、少量のゼオライトで高いNOx浄化性能を得ることができる。また該モル比が0.5以下であることにより、高温でのアンモニア酸化によりNOx浄化性能が低下することを防止できる。Cu/Alモル比は蛍光X線分析装置を用いて測定することができる。
より好ましいCu/Al(モル比)は、0.25〜0.48である。
【0056】
本発明により製造されたゼオライトは、SiO/Al組成比(SAR)が15未満であることが好ましい。上記SiO/Al組成比とは、ゼオライト中のAlに対するSiOのモル比(SAR)を意味している。その組成比SiO/Alが15未満であることにより、ゼオライトの酸点を充分な数とすることができ、その酸点を利用して金属イオンとイオン交換することができ、Cuを多く担持することができるので、NOxの浄化性能に優れている。また、SARが15未満であると、上記混合粉末におけるゼオライトに対するCuの塩の量が多くなるため、上記した固相でのイオン交換による効果をより発揮できる。
より好ましいSiO/Al組成比は、10〜14.9である。
なおゼオライトのモル比(SiO/Al)は、蛍光X線分析(XRF)を用いて測定することができる。
【0057】
本発明により製造されたゼオライトは、平均粒子径が0.5μm以下であることが望ましく、0.1〜0.4μmであることがより望ましい。平均粒子径が0.5μm以下と粒子径の小さいゼオライトを用いると、ゼオライトとCuの塩の粉末が混合しやすく、Cuの塩の粉末の偏りがない混合粉末が得られるため、部分的にCuの担持量が異なることを防ぐことができる。平均粒子径が0.5μm以下のCuが担持されたCHA型ゼオライトを用いてハニカム触媒を製造した場合、吸水変位量が小さくなる。そのため、ハニカム触媒の製造時および触媒としての使用時にクラックが生じにくく、耐熱性、耐久性に優れたハニカム触媒を得ることができる。一方、平均粒子径が0.5μmを超えると、ハニカム触媒とした時の吸水変位量が大きくなり、ハニカム触媒にクラックが生じるおそれがある。
【0058】
ゼオライトの平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)を用いて、SEM写真を撮影し、10個の粒子の全対角線の長さを測定し、その平均値から求める。なお、測定条件は、加速電圧:1kV、エミッション:10μA、WD:2.2mm以下とする。一般にCHA型ゼオライトの粒子は立方体であり、SEM写真で二次元に撮像した時には正方形となる。そのため粒子の対角線は2本である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこの実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
(混合工程)
Si源としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックス)、Al源として乾燥水酸化アルミニウムゲル(富田製薬社製)、アルカリ源として水酸化ナトリウム(トクヤマ社製)と水酸化カリウム(東亜合成社製)、構造規定剤(SDA)としてN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(TMAAOH)25%水溶液(Sachem社製)、種結晶としてSSZ−13、脱イオン水を混合し、原料組成物を準備した。原料組成物のモル比は、SiO:15mol、Al:1mol、NaOH:2.6mol、KOH:0.9mol、TMAAOH:1.1mol、HO:300molの割合とした。また原料組成物中のSiO、Alに5.0質量%の種結晶を加えた。原料組成物を500Lオートクレーブに装填し、加熱温度160℃、加熱時間48時間で水熱合成を行い、ゼオライトを合成した。続いて、ゼオイライト細孔内に残存するTMAAOHを除去するために、空気中で、550℃、4時間の条件で加熱処理を行った。
【0061】
硫酸アンモニウム1molを1Lの水に溶かした後、得られた溶液4gに対して上記で得られたゼオライトゼオライトを1gの割合で添加し、大気圧で1時間撹拌を行い、NH型ゼオライトを得た。
【0062】
上記で得られたNH型ゼオライトを、空気中で、550℃、4時間の条件で加熱処理を行い、H型ゼオライトを得た。
【0063】
続いて、上記で得られたH型ゼオライトに対し、Cu量が4.5質量%となるように、酢酸銅(II)の粉末を混合し、混合粉末を得た。なおこの混合工程では、乳鉢を使用し、混合温度は室温であり、混合時間は0.5時間とした。また混合粉末の水分量は、4.8質量%であった。
【0064】
(加熱工程)
上記の混合工程で得られた混合粉末を、加熱処理に施した。なお、加熱装置、加熱条件は以下の通りである。
加熱装置:中外炉工業社製、装置型番FQ−5270
加熱温度:700℃
加熱雰囲気:N雰囲気
加熱時の圧力:大気圧
加熱時間:5時間
以上のようにして、Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトを製造した。
【0065】
<ゼオライトの結晶構造の解析>
X線回折装置(リガク社製、Ultima IV)を用い、実施例1で得られたゼオライトおよび加熱工程前のゼオライトについて、XRD測定を行い、X線回折スペクトルの(211)面、(104)面及び(220)面の積分強度の和(X)を算出した。
測定条件は、線源:CuKα(λ=0.154nm)、測定法:FT法、回折角:2θ=5〜48°、ステップ幅:0.02°、積算時間:1秒、発散スリット、散乱スリット:2/3°、発散縦制限スリット:10mm、加速電圧:40kV、加速電流:40mAとした。
得られたXRDデータの解析は、粉末X線回折パターン総合解析ソフトJADE6.0を用いて行った。なお、解析条件は、フィルタータイプ:放物線フィルター、Kα2ピークの消去:あり、ピーク位置定義:ピークトップ、閾値σ:3、ピーク強度%カットオフ:0.1、BG決定の範囲:1、BG平均化のポイント数:7とした。
その結果を表1に示す。
【0066】
図1に、実施例1で合成したゼオライトのXRDパターンを示す。
図1より、実施例1で合成したゼオライトは、CHA構造を有するゼオライトであることが確認された。
【0067】
<イオン交換効率の解析>
上記の加熱工程終了後に得られた、Cuが担持されたCHA構造を有するゼオライトに対し、更なる加熱処理を行った。なお、加熱装置、加熱条件は以下の通りである。
加熱装置:デンケン・ハイデンタル社製、装置型番KDF−S10
加熱温度:700℃
加熱雰囲気:空気雰囲気
加熱時の圧力:大気圧
加熱時間:4時間
【0068】
型ゼオライトがCuイオンによりイオン交換されていない場合、上記更なる加熱処理後のゼオライトのX線回折スペクトルを取得すると、2θ=35.4°付近にCuOの(002)面、38°付近に(111)面に相当するピークが現れる。そのCuOの(002)(111)面の積分強度(X)を測定することにより、ゼオライトのCuイオンによるイオン交換効率を解析できる。
XRD測定は、X線回折装置(リガク社製 UltimaIV)を用いて行う。なお、測定条件は、次の通りとする。
線源:CuKα(λ=0.154nm)、測定法:FT法、回折角:2θ=30〜45°、ステップ幅:0.02°、積算時間:5秒、発散スリット、散乱スリット:2/3°、発散縦制限スリット:10mm、加速電圧:40kV、加速電流:40mA。
XRD測定前後でサンプル重量が0.1%以上の変化がないようにする。得られたXRDデータは、粉末X線回折パターン総合解析ソフトJADE6.0を用いてピークサーチを行い、さらに各ピークの半値幅と積分強度を算出する。なお、ピークサーチの条件は次の通りとする。
フィルタータイプ:放物線フィルター、Kα2ピークの消去:あり、ピーク位置定義:ピークトップ、閾値σ:3、ピーク強度%カットオフ:0.1、BG決定の範囲:1、BG平均化のポイント数:7。
その結果を表1に示す。
【0069】
<Cu担持量の測定>
蛍光X線分析装置(XRF、リガク社製 ZSX Primus2)を用いて、実施例1で得られたゼオライトに担持されたCu量を測定した。測定条件は、X線管:Rh、定格最大出力:4kW、検出元素範囲:F〜U、定量法:SQX法、分析領域:10mmφとした。Cu担持量の測定値から、Cu/Alモル比を算出した。
結果を表1に示す。
【0070】
<ゼオライトのモル比(SAR:SiO/Al)の測定>
蛍光X線分析装置(XRF、リガク社製 ZSX Primus2)を用いて、実施例1で得られたゼオライト(初期)のモル比(SAR:SiO/Al)を測定した。測定条件は、X線管:Rh、定格最大出力:4kW、検出元素範囲:F〜U、定量法:SQX法、分析領域:10mmφとした。
結果を表1に示す。
【0071】
<ゼオライトの粒子径の測定>
走査型電子顕微鏡(SEM、日立ハイテク社製、S−4800)を用いて、実施例1で得られたゼオライト(初期)のSEM写真を撮影し、それらの粒子径を測定した。測定条件は、加速電圧:1kV、エミッション:10μA、WD:2.2mm以下とした。測定倍率は、20000倍とした。10個の粒子の2つの対角線から粒子径を測定し、その平均値を求めた。
結果を表1に示す。
【0072】
<実施例2〜5>
表1に示すCuの塩の粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にゼオライトを作製した。但し、実施例2においては、加熱工程における加熱雰囲気を空気とした。
得られたゼオライトについて、実施例1と同様に、ゼオライトの結晶構造の解析、イオン交換効率の解析、Cu担持量の測定、ゼオライトのモル比の測定及びゼオライトの粒子径の測定を行った。
結果を表1に示す。
【0073】
<参考例1>
実施例1で得られたH型ゼオライトに対し0.5質量%の濃度の硫酸銅(II)水溶液を用い、アンモニア水を用いてpHを9に調整して溶液温度50℃、大気圧下、浸漬時間2時間の条件でイオン交換した。さらに溶液の濃度を0.5質量%に、pHを9に、その都度調製した後に、イオン交換を2回繰り返して、Cuイオン交換されたゼオライトを得た。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の結果より、実施例1〜5で得られたゼオライトは、CHA構造を有するゼオライトの粉末およびCuの塩の粉末を混合する混合工程と、得られた混合粉末を加熱する加熱工程とを含む、製造方法により製造されたものであり、CuOの積分強度(X)が700以下、すなわちCuOが含まれておらず、Cuのイオン交換効率が高い結果となった。該結果から、Cuを有効に利用することができ、製造コストの低減が可能となる。
【0076】
また、表1の結果から、実施例1〜5で製造されたCuが担持されたCHA型のゼオライトは、積分強度の和(X)が55000以上であり、ゼオライトの結晶構造が損なわれずに維持されていることが分かった。
図1