【解決手段】屈折率が互いに異なる屈折率層を交互に積層してなる反射層と、前記反射層を挟持する一対の中間膜層と、を有する合わせガラス用中間膜であって、前記中間膜層は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上35℃以下である樹脂を含み、および前記反射層の少なくとも1層の屈折率層は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上70℃以下である樹脂成分を含む、合わせガラス用中間膜。
前記中間膜層と接する前記屈折率層が、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上70℃以下の樹脂成分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一形態によれば、屈折率が互いに異なる屈折率層を交互に積層してなる反射層と、前記反射層を挟持する一対の中間膜層と、を有する合わせガラス用中間膜であって、前記中間膜層は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上35℃以下である樹脂を含み、および前記反射層の少なくとも1層の屈折率層は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上70℃以下である樹脂成分を含む、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0012】
上述したように、本発明に係る合わせガラス用中間膜によれば、中間膜層に含まれる樹脂および反射層に含まれる樹脂成分が上記ガラス転移温度(Tg)を有することで、中間膜層と反射層との密着性を上昇させることができる。このような効果が発現するメカニズムは以下のように推測される。すなわち、中間膜層と反射層との積層は通常室温にて行われるが、本発明において中間膜層に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は室温付近であるため、反射層表面にきれいに密着する。一方、反射層に含まれる樹脂成分のガラス転移温度(Tg)は室温より高いことから、流動することによる表面の乱れが生じず、これが可視光透過率やヘイズの点で好ましい効果をもたらしているものと考えられる。また、合わせガラスの合わせ処理工程においては通常加熱処理が施されるが、この際の加熱温度(例えば140℃)は通常、中間膜層に含まれる樹脂および反射層に含まれる樹脂成分の双方のガラス転移温度(Tg)を超えるため、上記加熱処理によって双方の樹脂が溶融することで、中間膜層と反射層との密着性が向上すると考えられる。なお、本発明は当該メカニズムによっていかようにも限定解釈されないものとする。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」を意味する。
【0014】
≪合わせガラス用中間膜≫
本発明の合わせガラス用中間膜は、屈折率が互いに異なる屈折率層を交互に積層してなる反射層と、前記反射層を挟持する一対の中間膜層と、を有する合わせガラス用中間膜であって、前記中間膜層は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上35℃以下である樹脂を含み、および前記反射層の少なくとも1層の屈折率層は、ガラス転移温度(Tg)が40℃以上70℃以下である樹脂成分を含む。
【0015】
[中間膜層]
本発明に係る合わせガラス用中間膜の中間膜層は、ガラス転移温度(Tg)が25℃〜35℃である樹脂を含む。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはポリビニルアセタールが挙げられる。本発明に係る中間膜層に含まれる樹脂は、透明性、ガラスとの接着性およびガラス転移温度を制御する観点から、ポリビニルブチラール(PVB)であることが好ましい。また、中間膜層は、必要により、可塑剤、および可視光透過率を阻害しない範囲で、赤外線吸収剤を含んでもよく、さらにその他の添加剤を含んでもよい。
【0016】
本発明の中間膜層は、反射層との密着性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃〜35℃である樹脂を含むことが好ましい。前記樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定は、下記実施例に記載の方法で行う。
【0017】
中間膜層の膜厚は、特に限定されるものではないが、合わせガラスとして最小限必要な耐貫通性や経済性等の観点から、100〜1000μmであり、好ましくは100〜750μm、より好ましくは、200〜500μmであり、さらに好ましくは300〜400μmである。
【0018】
以下、ポリビニルアセタール、可塑剤、赤外線吸収剤およびその他の添加剤について説明する。
【0019】
<ポリビニルアセタール>
ポリビニルアセタールとは、ポリビニルアルコールのヒドロキシ基の少なくとも1つをアルデヒドによりアセタール化して得られるポリビニルアセタールであればよく、特に限定されない。
【0020】
上記ポリビニルアルコールは、通常ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られ、ケン化度が80〜99.8mol%のポリビニルアルコールが一般的に用いられる。また、本発明で用いられるポリビニルアセタールの平均分子量や分子量分布は、特に限定されるものではないが、成形性(造膜性)や物性等を考慮すると、原料となるポリビニルアルコールとして平均重合度が200〜3000のポリビニルアルコールを用いることが好ましい。なお、ポリビニルアセタールの平均重合度は、ポリビニルアルコールの平均重合度と一致するため、上記したポリビニルアルコールの好ましい平均重合度は、ポリビニルアセタールの好ましい重合度と一致する。
【0021】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、例えば、JIS K 6826:1994に基づいて測定することができる。
【0022】
ポリビニルアルコールの平均重合度が200以上であれば、得られるポリビニルアセタールの強度が十分となり、このポリビニルアセタールを用いて形成した中間膜層を含む合わせガラス用中間膜により作製した合わせガラスの耐貫通性や衝撃エネルギー吸収性等が十分となる。また、ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度が3000以下であれば、得られるポリビニルアセタール膜の成形性(造膜性)が良好になり、このポリビニルアセタールを含む中間膜層の剛性が適切な範囲となり、貼合時の加工性などが良好になる。
【0023】
上記アセタール化に適用するアルデヒドとしては、炭素数が1〜10のアルデヒドが好ましく、その具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド等が挙げられ、なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド等が好適に用いられ、炭素数が4のn−ブチルアルデヒドが特に好適に用いられる。これらのアルデヒドは、得られるポリビニルアセタールに要求される性能に応じて適宜選定されればよい。また、これらのアルデヒドは、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0024】
本発明で用いられるポリビニルアセタールは、2種類以上のポリビニルアセタールが混合されてなる混合ポリビニルアセタールであってもよいし、アセタール化時に2種類以上のアルデヒドを併用した共ポリビニルアセタールであってもよい。
【0025】
また、本発明で用いられるポリビニルアセタールは、特に限定されるものではないが、アセタール化度が40〜85mol%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは6
0〜75mol%の範囲内である。
【0026】
本発明の中間膜層においては、上述したポリビニルアセタールのなかでも、ポリビニルアルコールをn−ブチルアルデヒドによりブチラール化(アセタール化)して得られるポリビニルブチラールが、特に好適に用いられる。
【0027】
ポリビニルブチラールのガラス転移温度(Tg)は、ポリビニルブチラールの重合度により制御することができる。ガラス転移温度(Tg)の測定方法は、例えば、下記実施例に記載の測定方法で求めることができる。前記重合度が高くなるにつれて、ポリビニルブチラールのガラス転移温度(Tg)は上昇する。上記のように、ポリビニルブチラールの平均重合度は、ポリビニルアルコールの重合度と一致する。例えば、ポリビニルブチラールのガラス転移温度を下記実施例に記載の測定方法で求めると、重合度1500の場合、約25℃であり、重合度2000の場合、約35℃である。したがって、本発明の中間膜層に含まれるポリビニルブチラールの重合度は、1500〜2000であることが好ましい。
【0028】
<可塑剤>
上記ポリビニルアセタール系樹脂層には、可塑剤が添加されてもよい。
【0029】
適用可能な可塑剤としては、ポリビニルアセタール系樹脂を可塑化するために用いられる従来公知の可塑剤で良く、特に限定されるものではないが、例えば、一塩基性有機酸エステル系可塑剤、多塩基性有機酸エステル系可塑剤などの有機酸エステル系可塑剤、有機リン酸系可塑剤、有機亜リン酸系可塑剤などのリン酸系可塑剤等が挙げられる。
【0030】
ポリビニルアセタール系樹脂に対する可塑剤の添加量は、ポリビニルアセタール系樹脂の平均重合度、アセタール化度、残存アセチル基量等によっても異なり、特に限定されるものではないが、ポリビニルアセタール系樹脂100質量部に対し、可塑剤20〜100質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは30〜60質量部の範囲内である。
【0031】
ポリビニルアセタール系樹脂100質量部に対する可塑剤の添加量が20質量部以上であれば、ポリビニルアセタール系樹脂の可塑化が十分となって、成形(造膜)の容易性が向上する。また、ポリビニルアセタール系樹脂100質量部に対する可塑剤の添加量が100質量部以下であれば、可塑剤のブリードアウトが抑制でき、ポリビニルアセタール系樹脂膜の透明性や接着性を維持でき、ガラス基材と貼合した際の合わせガラスの光学歪みの発生を防止することができる。
【0032】
<赤外線吸収剤>
本発明の中間膜層は、赤外線吸収剤を含んでもよい。赤外線吸収剤としては、特に制限されず、例えば赤外線を吸収する微粒子が挙げられる。
【0033】
赤外線を吸収する微粒子としては、具体的には、Ag、Al、Tiなどの金属微粒子、金属窒化物、金属酸化物の微粒子、また、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、セシウムドープ酸化タングステン(CWO)、アルミニウム亜鉛複合酸化物(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)などの導電性透明金属酸化物微粒子があり、これらの中から1種以上を選択して、中間膜層に含有させることができる。断熱性能の向上の観点から、インジウムドープ酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)およびセシウムドープ酸化タングステン(CWO)からなる群から選択された少なくとも一種であることが好ましい。
【0034】
前記赤外線を吸収する微粒子の平均粒径は、5〜150nmが好ましく、10〜120nmがより好ましい。5nm以上とすることにより、樹脂中の分散性や、赤外吸収性を良好に保持し、150nm以下とすることにより、可視光線透過率の低下を抑制することができる。なお、平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡により撮像し、無作為に、例えば50個の粒子を抽出して該粒子径を測定し、これを平均したものである。また、粒子の形状が球形でない場合には、長径を測定して算出したものと定義する。
【0035】
前記赤外線を吸収する微粒子の含有量は、特に制限されるものではないが、断熱性能の観点から、中間膜層の全質量に対し、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0036】
<その他の添加剤>
本発明の中間膜層は、さらにその他の添加剤を含んでもよい。当該その他の添加剤としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限されないが、紫外線吸収剤、退色防止剤、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤、マット剤等が挙げられる。
【0037】
[反射層]
本発明に係る合わせガラス用中間膜の反射層は、屈折率が互いに異なる屈折率層を交互に積層して構成される。前記反射層の少なくとも1層の屈折率層は、ガラス転移温度(Tg)が40℃〜70℃である樹脂成分を含む。樹脂成分とは、従来公知のものを使用することができ、例えば、水溶性バインダー樹脂単独または水溶性バインダー樹脂とラテックスの混合物が挙げられる。特定のTgを有する樹脂成分の割合は、1つの屈折率層の全質量に対し、好ましくは、20〜70質量%であり、より好ましくは30〜65質量%である。屈折率層は、透明基材上の少なくとも一つの面に、屈折率が互いに異なる、第1の水溶性バインダー樹脂および第1の金属酸化物粒子とを含む高屈折率層と、第2の水溶性バインダー樹脂および第2の金属酸化物粒子とを含む低屈折率層と、を少なくとも1層ずつ積層した層であることが好ましい。
【0038】
本発明の反射層は、少なくとも中間膜層と接する屈折率層のガラス転移温度(Tg)が40〜70℃である樹脂成分を含むことが好ましい。中間膜層と接する屈折率層は、高屈折率層および低屈折率層のどちらでもよいが、中間膜層への密着性の観点から、好ましくは低屈折率層である。屈折率層のガラス転移温度(Tg)は、樹脂成分が水溶性バインダー樹脂単独の場合、当該水溶性バインダー樹脂の組成や重合度を調節して制御することができ、樹脂成分が水溶性バインダー樹脂およびラテックスの混合物の場合、樹脂成分の合計に対するラテックスの含有量によって制御することができる。樹脂成分のガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載の測定方法で行う。
【0039】
本発明の反射層は、中間膜層との密着性、ヘイズおよび可視光透過率の観点から、少なくとも中間膜層と接する屈折率層の表面粗さは、算術平均表面粗さ(Ra)が10〜100nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましく、12〜20nmであることがさらに好ましい。前記屈折率層の算術平均表面粗さ(Ra)が10nm以上であると、アンカー効果により、反射層と中間膜層との密着性を上げることができる。前記算術平均表面粗さが100nm以下であると、反射層と中間膜層との界面が乱れることなく、ヘイズおよび可視光透過率の低下が抑制できる。算術平均表面粗さ(Ra)の測定は、下記実施例に記載の測定方法で行う。
【0040】
高屈折率層の1層当たりの厚さは、20〜800nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。また、低屈折率層の1層当たりの厚さは、20〜8
00nmであることが好ましく、50〜350nmであることがより好ましい。
【0041】
ここで、1層あたりの厚さを測定する場合、高屈折率層と低屈折率層とは、これらの間に明確な界面をもっていても、徐々に変化していてもよい。界面が徐々に変化している場合には、それぞれの層が混合し屈折率が連続的に変化する領域中で、最大屈折率−最小屈折率=Δnとした場合、2層間の最小屈折率+Δn/2の地点を層界面とみなす。なお、後述する低屈折率層の層厚においても同様である。
【0042】
本発明の高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層して形成された反射層の金属酸化物濃度プロファイルは、スパッタ法を用いて表面から深さ方向へエッチングを行い、XPS表面分析装置を用いて、最表面を0nmとして、0.5nm/minの速度でスパッタし、原子組成比を測定することで見ることが出来る。また、積層膜を切断して、切断面をXPS表面分析装置で原子組成比を測定することで見ることも可能である。混合領域において、金属酸化物の濃度が不連続に変化している場合には電子顕微鏡(TEM)による断層写真により境界を確認することができる。
【0043】
XPS表面分析装置としては、特に制限されず、いかなる機種も使用することができるが、例えば、VGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いることができる。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定する。
【0044】
本発明の反射層は、生産性の観点から、好ましい高屈折率層および低屈折率層の総層数の範囲としては、6〜100層であり、より好ましくは8〜40層であり、さらに好ましくは、9〜30層である。
【0045】
本発明の反射層においては、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差を大きく設計することが、少ない層数で赤外反射率を高くすることができるという観点から好ましい。本発明では、隣接する高屈折率層と低屈折率層との屈折率差は0.1以上が好ましく、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.35以上であり、よりさらに好ましくは0.4以上である。ただし、最表層や最下層に関しては、上記好適な範囲外の構成であってもよい。
【0046】
また、特定波長領域の反射率は、隣接する2層の屈折率差と積層数で決まり、屈折率の差が大きいほど、少ない層数で同じ反射率を得られる。この屈折率差と必要な層数については、市販の光学設計ソフトを用いて計算することができる。例えば、近赤外反射率90%以上を得るためには、屈折率差が0.1より小さいと、200層以上の積層が必要になり、生産性が低下するだけでなく、積層界面での散乱が大きくなり、透明性が低下し、また故障なく製造することも非常に困難になる。反射率の向上と層数を少なくするという観点からは、屈折率差に上限はないが、実質的には1.4程度が限界である。
【0047】
また、本発明において、高屈折率層または低屈折率層に含まれる第1および第2の水溶性バインダー樹脂は、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、高屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度と、低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールのケン化度とは異なることが好ましい。さらに、高屈折率層に含まれる第1の金属酸化物粒子は、含ケイ素の水和酸化物で表面処理された酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0048】
<透明基材>
本発明に適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限はなく、ガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、可撓性の付与及び生産適性(製造工程適性
)の観点からは、透明樹脂フィルムであることが好ましい。本発明でいう「透明」とは、可視光領域における平均光線透過率が50%以上であることをいい、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
【0049】
本発明に係る透明基材の厚さは、20〜200μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは25〜100μmの範囲内であり、更に好ましくは30〜70μmの範囲内である。透明樹脂フィルムの厚さが20μm以上であれば、取扱い中にシワ等が発生しにくくなり、また厚さが200μm以下であれば、合わせガラス作製時、ガラス基材と貼り合わせる際のガラス曲面への追従性がよくなる。
【0050】
本発明に係る透明基材は、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましいが、未延伸又は少なくとも一方に延伸されたポリエステルフィルムを用いることもできる。強度向上、熱膨張抑制の点から延伸フィルムが好ましい。特に、本発明の赤外線反射フィルムを具備した合わせガラスを、自動車のフロントガラスとして用いられる際に、延伸フィルムがより好ましい。
【0051】
本発明に係る透明基材は、反射層のシワの生成や反射層の割れを防止する観点から、温度150℃において、熱収縮率が0.1〜10.0%の範囲内であることが好ましく、1.5〜5.0%の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明の反射層に適用可能な透明基材としては、透明であれば特に制限されることはないが、種々の樹脂フィルムを用いることが好ましく、例えば、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステルフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、トリアセチルセルロースフィルム等を用いることができ、好ましくはポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムである。
【0053】
透明基材である透明樹脂フィルムは、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の透明樹脂フィルムを製造することができる。また、未延伸の透明樹脂フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、透明樹脂フィルムの流れ(縦軸)方向、又は透明樹脂フィルムの流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸透明樹脂フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、透明樹脂フィルムの原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍が好ましい。
【0054】
また、透明樹脂フィルムは、寸法安定性の点で弛緩処理、オフライン熱処理を行ってもよい。弛緩処理は前記ポリエステルフィルムの延伸製膜工程中の熱固定した後、横延伸のテンター内、又はテンターを出た後の巻き取りまでの工程で行われるのが好ましい。弛緩処理は処理温度が80〜200℃で行われることが好ましく、より好ましくは処理温度が100〜180℃である。また長手方向、幅手方向ともに、弛緩率が0.1〜10%の範囲で行われることが好ましい。弛緩処理された基材は、オフライン熱処理を施すことにより耐熱性が向上する。
【0055】
透明樹脂フィルムは、製膜過程で片面又は両面にインラインで下引層塗布液を塗布することが好ましい。本発明においては、製膜工程中での下引塗布をインライン下引という。本発明に有用な下引層塗布液に使用する樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレンイミンビニリデン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリビニルアルコール
樹脂、変性ポリビニルアルコール樹脂及びゼラチン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。これらの下引層には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記の下引層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法によりコーティングすることができる。上記の下引層の塗布量としては、0.01〜2g/m
2(乾燥状態)程度が好ましい。
【0056】
<高屈折率層>
本発明の好ましい実施形態において、高屈折率層は、第1の水溶性バインダー樹脂および第1の金属酸化物粒子を含むことができる。必要に応じて、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を制御するため、高屈折率層に含まれる樹脂成分としてラテックスを含んでもよく、また、硬化剤、その他のバインダー樹脂、界面活性剤、およびその他の添加剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
【0057】
本発明に係る高屈折率層の屈折率は、好ましくは1.80〜2.50であり、より好ましくは1.90〜2.20である。
【0058】
以下、第1の水溶性バインダー樹脂、ラテックス、その他のバインダー樹脂、第1の金属酸化物粒子、硬化剤、界面活性剤およびその他の添加剤について説明する。
(第1の水溶性バインダー樹脂)
本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂は、該水溶性バインダー樹脂が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性バインダー樹脂の50質量%以内であるものを言う。
【0059】
本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂の重量平均分子量は、1,000以上200,000以下が好ましい。更には、3,000以上40,000以下がより好ましい。
【0060】
本発明における重量平均分子量は、公知の方法によって測定することができ、例えば、静的光散乱、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)、飛行時間型質量分析法(TOF−MASS)などによって測定することができ、本発明では一般的な公知の方法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によって測定している。
【0061】
高屈折率層における第1の水溶性バインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%であることが好ましく、10〜45質量%であることがより好ましい。
【0062】
第1の水溶性バインダー樹脂は、特に制限はないが、ポリビニルアルコールであることが好ましい。また、後述する低屈折率層に存在する第2の水溶性バインダー樹脂も、ポリビニルアルコールであることが好ましい。したがって、以下では、高屈折率層および低屈折率層に含まれるポリビニルアルコールを併せて説明する。
【0063】
ポリビニルアルコール
本発明において、高屈折率層と低屈折率層は、それぞれケン化度の異なる2種以上のポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ここで、区別するために、第1の水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(A)と呼び、第2の水溶性バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールをポリビニルアルコール(B)と呼ぶ。なお、各屈折率層が、ケン化度や重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを含む場合には、各屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコールをそれぞれ高屈折率層におけるポリビニルアルコール(A)、および低屈折率層におけるポリビニルアルコール(B)と称する。
【0064】
本明細書でいう「ケン化度」とは、ポリビニルアルコール中のアセチルオキシ基(原料の酢酸ビニル由来のもの)と水酸基との合計数に対する水酸基の割合のことである。
【0065】
また、ここでいう「屈折率層中で最も含有量の高いポリビニルアルコール」という際には、ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールであるとし、重合度を算出する。ただし、重合度1000以下の低重合度ポリビニルアルコールは、異なるポリビニルアルコールとする(仮にケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコールがあったとしても同一のポリビニルアルコールとはしない)。具体的には、ケン化度が90mol%、ケン化度が91mol%、ケン化度が93mol%のポリビニルアルコールが同一層内にそれぞれ10質量%、40質量%、50質量%含まれる場合には、これら3つのポリビニルアルコールは同一のポリビニルアルコールとし、これら3つの混合物をポリビニルアルコール(A)または(B)とする。また、上記「ケン化度の差が3mol%以内のポリビニルアルコール」とは、いずれかのポリビニルアルコールに着目した場合に3mol%以内であれば足り、例えば、90mol%、91mol%、92mol%、94mol%のポリビニルアルコールを含む場合には、91mol%のポリビニルアルコールに着目した場合に、いずれのポリビニルアルコールのケン化度の差も3mol%以内なので、同一のポリビニルアルコールとなる。
【0066】
同一層内にケン化度が3mol%以上異なるポリビニルアルコールが含まれる場合、異なるポリビニルアルコールの混合物とみなし、それぞれに重合度とケン化度を算出する。例えば、PVA203:5質量%、PVA117:25質量%、PVA217:10質量%、PVA220:10質量%、PVA224:10質量%、PVA235:20質量%、PVA245:20質量%が含まれる場合、最も含有量の多いPVA(ポリビニルアルコール)は、PVA217〜245の混合物であり(PVA217〜245のケン化度の差は3mol%以内なので同一のポリビニルアルコールである)、この混合物がポリビニルアルコール(A)または(B)となる。そうして、PVA217〜245の混合物(ポリビニルアルコール(A)または(B))において、重合度が、(1700×0.1+2000×0.1+2400×0.1+3500×0.2+4500×0.7)/0.7=3200であり、ケン化度は、88mol%となる。
【0067】
ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の絶対値の差は、3mol%以上であることが好ましく、5mol%以上であることがより好ましい。かような範囲であれば、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態が好ましいレベルになるため好ましい。また、ポリビニルアルコール(A)とポリビニルアルコール(B)とのケン化度の差は、離れていれば離れているほど好ましいが、ポリビニルアルコールの水への溶解性の観点から、20mol%以下であることが好ましい。
【0068】
また、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のケン化度は、水への溶解性の観点で、75mol%以上であることが好ましい。さらに、ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方がケン化度90mol%以上であり、他方が90mol%以下であることが、高屈折率層と低屈折率層との層間混合状態を好ましいレベルにするために好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)のうち一方が、ケン化度95mol%以上であり、他方が90mol%以下であることがより好ましい。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限は特に限定されるものではないが、通常100mol%未満であり、99.9mol%以下程度である。
【0069】
また、ケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールの重合度は、1,000以上のものが好ましく用いられ、特に、重合度が1,500〜5,000のものがより好ましく、
2,000〜5,000のものがさらに好ましく用いられる。ポリビニルアルコールの重合度が、1,000以上であると塗布膜のひび割れがなく、5,000以下であると塗布液が安定するからである。なお、本明細書において、「塗布液が安定する」とは、塗布液が経時的に安定することを意味する。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の少なくとも一方の重合度が2,000〜5,000であると、塗膜のひび割れが減少し、特定の波長の反射率が向上するため好ましい。ポリビニルアルコール(A)およびポリビニルアルコール(B)の双方が、2,000〜5,000であると上記効果はより顕著に発揮できるため好ましい。
【0070】
本明細書でいう「重合度」とは、粘度平均重合度を指し、JIS K 6726:1994に準じて測定され、PVAを完全に再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
【0072】
低屈折率層に含まれるポリビニルアルコール(B)は、ケン化度が75mol%以上90mol%以下で、かつ重合度が2,000以上5,000以下であることが好ましい。かようなポリビニルアルコールを低屈折率層に含有させると、界面混合がより抑制され点で好ましい。これは塗膜のひび割れが少なく、かつセット性が向上するためであると考えられる。
【0073】
本発明で用いられるポリビニルアルコール(A)および(B)は、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。ポリビニルアルコール(A)および(B)として用いられる市販品の例としては、例えば、PVA−102、PVA−103、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−203、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−235(以上、株式会社クラレ製)、GH−17(日本合成化学工業株式会社製)、JC−25、JC−33、JF−03、JF−04、JF−05、JP−03、JP−04JP−05、JP−45(以上、日本酢ビ・ポバール株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
本発明に係る第1の水溶性バインダー樹脂は、本発明の効果を損なわない限りでは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、一部が変性された変性ポリビニルアルコールを含んでもよい。かような変性ポリビニルアルコールを含むと、膜の密着性や耐水性、柔軟性が改良される場合がある。かような変性ポリビニルアルコールとしては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、ノニオン変性ポリビニルアルコール、ビニルアルコール系ポリマーが挙げられる。
【0075】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号公報に記載されているような、第一〜三級アミノ基や第四級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0076】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチ
ル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10mol%、好ましくは0.2〜5mol%である。
【0077】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号公報および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0078】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載されている疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体、シラノール基を有するシラノール変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基やカルボニル基、カルボキシ基などの反応性基を有する反応性基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0079】
また、ビニルアルコール系ポリマーとして、エクセバール(登録商標、株式会社クラレ製)やニチゴGポリマー(登録商標、日本合成化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0080】
変性ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することができる。
【0081】
変性ポリビニルアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、各屈折率の全質量(固形分)に対し、好ましくは1〜30質量%である。かような範囲であれば、上記効果がより発揮される。
【0082】
本発明においては、屈折率の異なる層間ではケン化度の異なる2種のポリビニルアルコールがそれぞれ用いられることが好ましい。
【0083】
例えば、高屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましい。また、高屈折率層に高ケン化度のポリビニルアルコール(A)を用い、低屈折率層に低ケン化度のポリビニルアルコール(B)を用いる場合には、高屈折率層中のポリビニルアルコール(A)が層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量%以下がより好ましく、低屈折率層中のポリビニルアルコール(B)が低屈折率層中の全ポリビニルアルコール類の全質量に対し、40質量%以上100質量%以下の範囲で含有されることが好ましく、60質量%以上95質量以下がより好ましい。含有量が40質量%以上であると、層間混合が抑制され、界面の乱れが小さくなるという効果が顕著に現れる。一方、含有量が100質量%以下であれば、塗布液の安定性が向上する。
【0084】
(ラテックス)
本発明において、高屈折率層および低屈折率層は、それぞれ樹脂成分として水溶性バイ
ンダー樹脂に加え、ラテックスを含んでもよい。ラテックスとは、水媒体中に安定して分散される樹脂である。本発明のラテックスとして、例えば、エマルジョン樹脂が挙げられる。樹脂成分の合計に対するラテックスの含有量により、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を制御することができ、また樹脂成分としてラテックスを含むことにより、作製した合わせガラスの耐熱性が良くなる。
【0085】
上記ラテックスの含有量としては、前記水溶性バインダー樹脂とラテックスの合計(100質量%)に対して、好ましくは5質量%以上50質量%未満であり、より好ましくは、5質量%〜20質量%である。
【0086】
エマルジョン樹脂とは、水系媒体中に微細な、例えば、平均粒径が0.01〜2.0μm程度の樹脂粒子がエマルジョン状態で分散されている樹脂で、油溶性のモノマーを、水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合して得られる。用いる分散剤の種類によって、得られるエマルジョン樹脂のポリマー成分に基本的な違いは見られない。エマルジョンの重合時に使用される分散剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジエチルアミン、エチレンジアミン、4級アンモニウム塩のような低分子の分散剤の他に、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエキシエチレンラウリル酸エーテル、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンのような高分子分散剤が挙げられる。水酸基を有する高分子分散剤を用いてエマルジョン重合すると、微細な微粒子の少なくとも表面に水酸基の存在が推定され、他の分散剤を用いて重合したエマルジョン樹脂とはエマルジョンの化学的、物理的性質が異なる。
【0087】
水酸基を含む高分子分散剤とは、重量平均分子量が10000以上の高分子の分散剤で、側鎖または末端に水酸基が置換されたものであり、例えばポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドのようなアクリル系の高分子で2−エチルヘキシルアクリレートが共重合されたもの、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリエーテル、ポリビニルアルコールなどが挙げられ、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0088】
高分子分散剤として使用されるポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、カチオン変性したポリビニルアルコールやカルボキシル基のようなアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、シリル基を有するシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。ポリビニルアルコールは、平均重合度は高い方がインク吸収層を形成する際のクラックの発生を抑制する効果が大きいが、平均重合度が5000以内であると、エマルジョン樹脂の粘度が高くなく、製造時に取り扱いやすい。したがって、平均重合度は300〜5000のものが好ましく、1500〜5000のものがより好ましく、3000〜4500のものが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100mol%のものが好ましく、80〜99.5mol%のものがより好ましい。
【0089】
上記の高分子分散剤で乳化重合される樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニル系化合物、スチレン系化合物といったエチレン系単量体、ブタジエン、イソプレンといったジエン系化合物の単独重合体または共重合体が挙げられ、例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0090】
アクリル系樹脂としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、AE120A(株式会社イーテック製)等が挙げられる。
【0091】
(その他のバインダー樹脂)
本発明において、高屈折率層および低屈折率層は、本発明の効果を損なわない限りにお
いて、前記樹脂成分に加え、その他の水溶性バインダー樹脂を使用することができる。その他の水溶性バインダー樹脂としては、特に制限はないが、環境の問題や塗膜の柔軟性を考慮すると、水溶性高分子(特にゼラチン、増粘多糖類、反応性官能基を有するポリマー)が好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
【0092】
高屈折率層において、前記樹脂成分とともに、併用するその他のバインダー樹脂の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、5〜50質量%で用いることもできる。
【0093】
本発明においては、有機溶媒を用いる必要がなく、環境保全上好ましいことから、バインダー樹脂は水溶性高分子から構成されることが好ましい。すなわち、本発明ではその効果を損なわない限りにおいて、上記ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールに加えて、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール以外の水溶性高分子をバインダー樹脂として用いてもよい。前記水溶性高分子とは、該水溶性高分子が最も溶解する温度で、0.5質量%の濃度に水に溶解させた際、G2グラスフィルタ(最大細孔40〜50μm)で濾過した場合に濾別される不溶物の質量が、加えた該水溶性高分子の50質量%以内であるものを言う。そのような水溶性高分子の中でも特にゼラチン、セルロース類、増粘多糖類、または反応性官能基を有するポリマーが好ましい。これらの水溶性高分子は単独で用いても構わないし、2種類以上を混合して用いても構わない。
【0094】
(第1の金属酸化物粒子)
本発明に係る第1の金属酸化物粒子としては、屈折率が2.0以上、3.0以下である金属酸化物粒子が好ましい。さらに具体的には、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、チタン酸鉛、鉛丹、黄鉛、亜鉛黄、酸化クロム、酸化第二鉄、鉄黒、酸化銅、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化ユーロピウム、酸化ランタン、ジルコン、酸化スズなどが挙げられる。また複数の金属で構成された複合酸化物粒子やコアシェル状に金属構成が変化するコアシェル粒子等を用いる事も出来る。
【0095】
透明でより屈折率の高い高屈折率層を形成するために、本発明に係る高屈折率層には、チタン、ジルコニウム等の高屈折率を有する金属の酸化物微粒子、すなわち、酸化チタン微粒子および/または酸化ジルコニア微粒子を含有させることが好ましい。これらの中でも、高屈折率層を形成するための塗布液の安定性の観点から、酸化チタンがより好ましい。また、酸化チタンの中でも、とくにアナターゼ型よりルチル型(正方晶形)の方が、触媒活性が低いために、高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高くなることからより好ましい。
【0096】
また、酸化チタンは、含ケイ素の水和酸化物で被覆されたコアシェル粒子の形態であってもよい。当該コアシェル粒子は、酸化チタン粒子の表面を、コアとなる酸化チタンに含ケイ素の水和酸化物からなるシェルが被覆してなる構造を有する。この際のコアの部分となる酸化チタン粒子の体積平均粒径は、1nm超30nm未満であることが好ましく、4nm以上30nm未満であることがより好ましい。かようなコアシェル粒子を含有させることで、シェル層の含ケイ素の水和酸化物と水溶性樹脂との相互作用により、高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制されうる。
【0097】
上述の第1の金属酸化物粒子は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0098】
本発明に係る第1の金属酸化物粒子の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対
して、15〜80質量%であると、低屈折率層との屈折率差を付与するという観点で好ましい。さらに、20〜77質量%であることがより好ましく、30〜75質量%であることがさらに好ましい。
【0099】
本発明においては、第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることが好ましく、1〜30nmであることがより好ましく、5〜15nmであるのがさらに好ましい。体積平均粒径が1nm以上30nm以下であれば、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0100】
なお、本発明に係る第1の金属酸化物粒子の体積平均粒径とは、粒子そのものをレーザー回折散乱法、動的光散乱法、あるいは電子顕微鏡を用いて観察する方法や、屈折率層の断面や表面に現れた粒子像を電子顕微鏡で観察する方法により、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、それぞれd1、d2・・・di・・・dkの粒径を持つ粒子がそれぞれn1、n2・・・ni・・・nk個存在する粒子状の金属酸化物の集団において、粒子1個当りの体積をviとした場合に、体積平均粒径mv={Σ(vi・di)}/{Σ(vi)}で表される体積で重み付けされた平均粒径である。
【0101】
さらに、本発明に係る第1の金属酸化物粒子は、単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下であることをいう。この単分散度は、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1〜20%である。
【0103】
(硬化剤)
本発明においては、第1の水溶性バインダー樹脂を硬化させるため、硬化剤を使用することもできる。第1の水溶性バインダー樹脂と共に用いることができる硬化剤としては、当該水溶性バインダー樹脂と硬化反応を起こすものであれば特に制限はない。例えば、第1の水溶性バインダー樹脂として、ポリビニルアルコールを用いる場合では、硬化剤として、ホウ酸およびその塩が好ましい。ホウ酸およびその塩以外にも公知のものが使用でき、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、適宜選択して用いられる。硬化剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0104】
ホウ酸およびその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0105】
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
【0106】
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することができないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0107】
本発明では、ホウ酸およびその塩ならびに/またはホウ砂を用いることが本発明の効果を得るためにはより好ましい。ホウ酸およびその塩ならびに/またはホウ砂を用いた場合には、金属酸化物粒子と水溶性バインダー樹脂であるポリビニルアルコールのOH基と水素結合ネットワークがより形成しやすく、その結果として高屈折率層と低屈折率層との層間混合が抑制され、好ましい近赤外遮断特性が達成されると考えられる。特に、高屈折率層および低屈折率層の多層重層をコーターで塗布後、一旦塗膜の膜面温度を15℃程度に冷やした後、膜面を乾燥させるセット系塗布プロセスを用いた場合には、より好ましく効果を発現することができる。
【0108】
高屈折率層における硬化剤の含有量は、高屈折率層の固形分100質量%に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜6質量%であることがより好ましい。
【0109】
特に、第1の水溶性バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを使用する場合の上記硬化剤の総使用量は、ポリビニルアルコール1g当たり1〜600mgが好ましく、ポリビニルアルコール1g当たり100〜600mgがより好ましい。
【0110】
(界面活性剤)
本発明においては、高屈折率層および低屈折率層の少なくとも1層が、さらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、両性イオン系、カチオン系、アニオン系、ノニオン系のいずれの種類も使用することができる。より好ましくは、ベタイン系両性イオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩系カチオン性界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩系アニオン性界面活性剤、アセチレングリコール系ノニオン性界面活性剤、またはフッ素系カチオン性界面活性剤が好ましい。
【0111】
本発明に係る界面活性剤の添加量としては、高屈折率層用塗布液または低屈折率層用塗布液の全質量を100質量%としたとき、0.005〜0.30質量%の範囲であることが好ましい。
【0112】
(その他の添加剤)
本発明に係る高屈折率層および低屈折率層に適用可能な各種の添加剤を、以下に列挙する。例えば、特開昭57−74193号公報、特開昭57−87988号公報、および特開昭62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、特開昭57−87989号公報、特開昭60−72785号公報、特開昭61−146591号公報、特開平1−95091号公報、および特開平3−13376号公報等に記載されている退色防止剤;特開昭59−42993号公報、特開昭59−52689号公報、特開昭62−280069号公報、特開昭61−242871号公報、および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤;硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤;ジエチレングリコール等の潤滑剤;防腐剤;防黴剤;帯電防止剤;マット剤;熱安定剤;酸化防止剤;難燃剤;結晶核剤;無機粒子;有機粒子;減粘剤;滑剤;赤外線吸収剤;色素;顔料等の公知の各種添加剤などが挙げられる。
【0113】
<低屈折率層>
本発明の好ましい実施形態において、低屈折率層は、樹脂成分として第2の水溶性バインダー樹脂および第2の金属酸化物粒子を必須成分として含むことができる。必要に応じ
て、低屈折率層に含まれる樹脂成分として、高屈折率層と同様に、水溶性バインダー樹脂に加え、ラテックスを含むことができる。また、硬化剤、その他のバインダー樹脂、界面活性剤、およびその他の添加剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。
【0114】
本発明に係る低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.10〜1.60の範囲内であり、より好ましくは1.30〜1.50である。
【0115】
以下、第2の水溶性バインダー樹脂、その他のバインダー樹脂、および第2の金属酸化物粒子について説明する。なお、ラテックス、硬化剤、界面活性剤、およびその他の添加剤については、高屈折率と同様のものが用いられうることからここでは説明を省略する。
【0116】
(第2の水溶性バインダー樹脂)
第2の水溶性バインダー樹脂としては、第1の水溶性バインダー樹脂と同様のものが用いられうる。
【0117】
低屈折率層における第2の水溶性バインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、20〜99.9質量%であることが好ましく、25〜80質量%であることがより好ましい。
【0118】
(その他のバインダー樹脂)
本発明の低屈折率層に含まれうるその他のバインダー樹脂としては、高屈折率層と同様のものが用いられうる。
【0119】
低屈折率層において、前記樹脂成分とともに、併用するその他のバインダー樹脂の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0〜10質量%で用いることもできる。
【0120】
(第2の金属酸化物粒子)
本発明に係る第2の金属酸化物粒子としては、シリカ(二酸化ケイ素)を用いることが好ましく、具体的な例として合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。これらのうち、酸性のコロイダルシリカゾルを用いることがより好ましく、有機溶媒に分散させたコロイダルシリカゾルを用いることがさらに好ましい。また、屈折率をより低減させるためには、第2の金属酸化物粒子として、粒子の内部に空孔を有する中空微粒子を用いることができ、特にシリカ(二酸化ケイ素)の中空微粒子が好ましい。
【0121】
本発明において、第2の金属酸化物粒子(好ましくは二酸化ケイ素)は、その平均粒径が3〜100nmであることが好ましい。一次粒子の状態で分散された二酸化ケイ素の一次粒子の平均粒径(塗布前の分散液状態での粒径)は、3〜50nmであることがより好ましく、3〜40nmであることがさらに好ましく、3〜20nmであることが特に好ましく、4〜10nmであることがもっとも好ましい。また、二次粒子の平均粒径としては、30nm以下であることが、ヘイズが少なく可視光透過性に優れる観点で好ましい。
【0122】
本発明において、第2の金属酸化物微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは屈折率層の断面や表面に現れた粒子を電子顕微鏡で観察し、1,000個の任意の粒子の粒径を測定し、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒子の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
【0123】
本発明で用いられるコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られるものであり、たとえ
ば、特開昭57−14091号公報、特開昭60−219083号公報、特開昭60−219084号公報、特開昭61−20792号公報、特開昭61−188183号公報、特開昭63−17807号公報、特開平4−93284号公報、特開平5−278324号公報、特開平6−92011号公報、特開平6−183134号公報、特開平6−297830号公報、特開平7−81214号公報、特開平7−101142号公報、特開平7−179029号公報、特開平7−137431号公報、および国際公開第94/26530号などに記載されているものである。
【0124】
かようなコロイダルシリカは合成品を用いてもよいし、市販品を用いてもよい。コロイダルシリカは、その表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgまたはBa等で処理された物であってもよい。
【0125】
本発明では第2の金属酸化物粒子として、中空粒子を用いることもできる。中空粒子を用いる場合には、平均粒子空孔径が、3〜70nmであるのが好ましく、5〜50nmがより好ましく、5〜45nmがさらに好ましい。なお、中空粒子の平均粒子空孔径とは、中空粒子の内径の平均値である。本発明において、中空粒子の平均粒子空孔径は、上記範囲であれば、十分に低屈折率層の屈折率が低屈折率化される。平均粒子空孔径は、電子顕微鏡観察で、円形、楕円形または実質的に円形は楕円形として観察できる空孔径を、ランダムに50個以上観察し、各粒子の空孔径を求め、その数平均値を求めることにより得られる。なお、本明細書中、平均粒子空孔径としては、円形、楕円形または実質的に円形もしくは楕円形として観察できる空孔径の外縁を、2本の平行線で挟んだ距離のうち、最小の距離を意味する。
【0126】
本発明に係る第2の金属酸化物粒子は、表面被覆成分により表面コーティングされていてもよい。特に本発明に係る第1の金属酸化物粒子としてコアシェル状ではない金属酸化物粒子を用いる際に、第2の金属酸化物粒子の表面をポリ塩化アルミニウムなどの表面被覆成分によりコーティングすると、第1の金属酸化物粒子と凝集しにくくなる。
【0127】
低屈折率層における第2の金属酸化物粒子の含有量は、低屈折率層の固形分100質量%に対して、0.1〜70質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましく、40〜65質量%であることがさらに好ましい。
【0128】
上記の第2の金属酸化物粒子は、屈折率を調整する等の観点から、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
[合わせガラス]
本発明に係る合わせガラスの好ましい実施形態としては、反射層と、前記反射層を挟持する一対の中間膜層と、を有する合わせガラス用中間膜を、2枚のガラスで挟持されている構成である。すなわち、典型的には、ガラス、合わせガラス用中間膜、ガラスの順に積層される。しかし、本発明の合わせガラスは、この形態に限られず、中間層とガラスとの間に任意の付加的な層が存在してもよい。
【0130】
<ガラス>
本発明に係るガラスは、平板状のガラスであっても、また車のフロントガラスに使用されるような曲面状のガラスであってもよい。
【0131】
本発明に係るガラスは、特に、車の窓ガラスとして用いられる場合において、可視光透過率が70%以上であることが好ましい。なお、可視光透過率は、例えば、分光光度計(日立製作所株式会社製、U−4000型)を用いて、JIS R3106(1998)「板ガラス類の透過率・反射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠して、測定することがで
きる。
【0132】
本発明に係る合わせガラスの日射熱取得率は、75%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましい。この範囲であれば、より効果的に外部からの熱線を遮断することができる。なお、日射熱取得率は、例えば、上記と同様に、分光光度計(日立製作所株式会社製、U−4000型)を用いて、JIS R3106(1998)「板ガラス類の透過率・反射率・日射熱取得率の試験方法」に準拠して求めることができる。
【0133】
本発明に係るガラスとしては、無機ガラス(以下、単にガラスともいう。)および有機ガラス(樹脂グレージング)が挙げられる。無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、および、グリーンガラス等の着色ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラス(樹脂グレージング)としては、ポリカーボネート板およびポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。本発明においては、外部から衝撃が加わって破損した際の安全性の観点からは、無機ガラスであることが好ましい。無機ガラスの種類は、特に限定されないが、通常、ソーダライムシリカガラスが好適に用いられる。この場合、無色透明ガラスであってもよく、有色透明ガラスであってもよい。
【0134】
また、2枚のガラスのうち、入射光に近い室外側のガラスは、無色透明ガラスであることが好ましい。また、入射光側から遠い室内側のガラスは、グリーン系有色透明ガラスまたは濃色透明ガラスであることが好ましい。グリーン系有色透明ガラスは、紫外線吸収性能および赤外線吸収性能を有することが好ましい。これらを用いることにより、室外側でできるだけ日射エネルギーを反射することができ、さらに合わせガラスの日射透過率を小さくすることができるからである。
【0135】
グリーン系有色透明ガラスは特に限定されないが、例えば、鉄を含有するソーダライムシリカガラスが好適に挙げられる。例えば、ソーダライムシリカ系の母ガラスに、Fe
2O
3換算で、全鉄0.3〜1質量%を含有するソーダライムシリカガラスである。さらに、近赤外領域の波長の光の吸収は全鉄のうちの2価の鉄による吸収が支配的であるため、FeO(2価の鉄)の質量が、Fe
2O
3換算で、全鉄の20〜40質量%であることが好ましい。
【0136】
紫外線吸収性能を付与するためには、ソーダライムシリカ系の母ガラスにセリウム等を加える方法が挙げられる。具体的には、実質的に以下の組成のソーダライムシリカガラスを用いるのが好ましい。SiO
2:65〜75質量%、Al
2O
3:0.1〜5質量%、Na
2O+K
2O:10〜18質量%、CaO:5〜15質量%、MgO:1〜6質量%、Fe
2O
3換算した全鉄:0.3〜1質量%、CeO
2換算した全セリウムおよび/またはTiO
2:0.5〜2質量%。
【0137】
また、濃色透明ガラスは、特に限定されないが、例えば、鉄を高濃度で含有するソーダライムシリカガラスが好適に挙げられる。
【0138】
本発明の合わせガラスを車両等の窓に用いるにあたって、室内側ガラス板および室外側ガラス板の厚さは、ともに1.5〜3.0mmであることが好ましい。この場合、室内側ガラス板および室外側ガラス板を等しい厚さにすることも、異なる厚さにすることもできる。合わせガラスを自動車窓に用いるにあたっては、例えば、室内側ガラス板および室外側ガラス板を、ともに2.0mmの厚さにしたり、2.1mmの厚さにしたりすることが挙げられる。また、合わせガラスを自動車窓に用いるにあたっては、例えば、室内側ガラ
ス板の厚さを2mm未満、室外側ガラス板の厚さを2mm強とすることで、合わせガラスの総厚さを小さくし、かつ車外側からの外力に抗することができる。室内側ガラス板および室外側ガラス板は、平板状でも湾曲状でもよい。車両、特に自動車窓は湾曲していることが多いため、室内側ガラス板および室外側ガラス板の形状は湾曲形状であることが多い。この場合、赤外線反射膜は室外側ガラス板の凹面側に設けられる。さらに、必要に応じて3枚以上のガラス板を用いることもできる。
【0139】
[合わせガラス用中間膜の製造方法]
次に、本発明の中間膜の製造方法を、各要素の製造方法に分けて説明する。
【0140】
<中間膜層の製造方法>
本発明に係る中間膜層の製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ポリビニルブチラールと赤外線吸収剤を混合し、押出機により溶融混錬した後、押出金型よりシート状に押し出して、中間膜層シートを作製する方法が挙げられる。
【0141】
<反射層の製造方法>
本発明に係る反射層の形成方法は、特に制限されない。好ましくは、透明基材上に、第1の水溶性バインダー樹脂および第1の金属酸化物粒子を含む高屈折率層用塗布液と、第2の水溶性バインダー樹脂および第2の金属酸化物粒子を含む低屈折率層用塗布液と、を塗布する工程を含む製造方法を実施することができる。
【0142】
塗布方法は、特に制限されず、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、スライド型カーテン塗布法、または米国特許第2,761,419号明細書、米国特許第2,761,791号明細書などに記載のスライドホッパー塗布法、エクストルージョンコート法などが挙げられる。また、複数の層を重層塗布する方式としては、逐次重層塗布でもよいし同時重層塗布でもよい。
【0143】
以下、本発明の好ましい製造方法(塗布方法)であるスライドホッパー塗布法による同時重層塗布について詳細に説明する。
【0144】
(溶媒)
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を調製するための溶媒は、特に制限されないが、水、有機溶媒、またはその混合溶媒が好ましい。
【0145】
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類、ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0146】
環境面、操作の簡便性などから、塗布液の溶媒としては、特に水が好ましい。
【0147】
(塗布液の濃度)
高屈折率層用塗布液中の第1の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、高屈折率層用塗布液中の第1の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0148】
低屈折率層用塗布液中の第2の水溶性バインダー樹脂の濃度は、1〜10質量%であることが好ましい。また、低屈折率層用塗布液中の第2の金属酸化物粒子の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
【0149】
(塗布液の調製方法)
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の調製方法は、特に制限されず、例えば、水溶性バインダー樹脂、金属酸化物粒子、および必要に応じて添加されるその他の添加剤を添加し、攪拌混合する方法が挙げられる。この際、水溶性バインダー樹脂、金属酸化物粒子、および必要に応じて用いられるその他の添加剤の添加順も特に制限されず、攪拌しながら各成分を順次添加し混合してもよいし、攪拌しながら一度に添加し混合してもよい。必要に応じて、さらに溶媒を用いて、適当な粘度に調製される。
【0150】
コアシェル粒子を添加、分散して調製した水系の高屈折率層用塗布液を用いて、高屈折率層を形成してもよい。このとき、コアシェル粒子としては、pHが5.0以上、7.5以下で、かつ粒子のゼータ電位が負であるゾルとして、高屈折率層用塗布液に添加して調製することが好ましい。
【0151】
(塗布液の粘度)
スライドホッパー塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の30〜45℃における粘度は、5〜500mPa・sの範囲が好ましく、10〜450mPa・sの範囲がより好ましい。また、スライド型カーテン塗布法により同時重層塗布を行う際の高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の30〜45℃における粘度は、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、25〜500mPa・sの範囲がより好ましい。
【0152】
また、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の15℃における粘度は、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、3,000〜30,000mPa・sがさらに好ましく、10,000〜30,000mPa・sが特に好ましい。
【0153】
(塗布および乾燥方法)
塗布および乾燥方法は、特に制限されないが、高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液を30℃以上に加温して、基材上に高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を好ましくは1〜15℃に一旦冷却し(セット)、その後10℃以上で乾燥することが好ましい。より好ましい乾燥条件は、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件である。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜の均一性向上の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0154】
高屈折率層用塗布液および低屈折率層用塗布液の塗布厚は、上記で示したような好ましい乾燥時の厚さとなるように塗布すればよい。
【0155】
ここで、前記セットとは、冷風等を塗膜に当てて温度を下げるなどの手段により、塗膜組成物の粘度を高め各層間および各層内の物質の流動性を低下させる工程のことを意味する。冷風を塗布膜に表面から当てて、塗布膜の表面に指を押し付けたときに指に何もつかなくなった状態を、セット完了の状態と定義する。
【0156】
塗布した後、冷風を当ててからセットが完了するまでの時間(セット時間)は、7分以内であることが好ましく、5分以内であることが好ましい。また、下限の時間は特に制限
されないが、45秒以上の時間をとることが好ましい。セット時間が45秒以上であれば、層中の成分が充分に混合される。一方、セット時間が7分以内であれば、高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が不十分となることを防止できる。なお、高屈折率層と低屈折率層との間の中間層の高弾性化が素早く起こるのであれば、セットさせる工程は設けなくてもよい。
【0157】
セット時間の調整は、水溶性バインダー樹脂の濃度や金属酸化物粒子の濃度を調整したり、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、ゲランガム等の各種公知のゲル化剤など、他の成分を添加することにより調整したりすることができる。
【0158】
冷風の温度は、0〜25℃であることが好ましく、5〜10℃であることがより好ましい。また、塗膜が冷風に晒される時間は、塗膜の搬送速度にもよるが、10〜120秒であることが好ましい。
【0159】
[合わせガラスの製造方法]
本発明の合わせガラスの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、本発明の合わせガラスの製造方法は、上述した本発明に係る合わせガラス用中間膜を2枚のガラスで挟持することにより積層体を得る工程と、前記積層体を120〜150℃で加熱する工程とを含むものである。これにより、中間膜層に含まれる樹脂および反射層に含まれる樹脂成分の双方のガラス転移温度(Tg)を超えるため、上記加熱処理によって双方の樹脂が溶融することで、中間膜層と反射層との密着性が向上すると考えられる。具体的には、2枚のガラスの間に、本発明の中間膜を挟持した後、必要に応じてガラスのエッジ部からはみ出た中間層の余剰部分を除去する。その後、積層したガラスを120℃〜150℃で、30〜90分間加熱し、加圧脱気処理をして合わせ処理を行う方法が挙げられる。
【0160】
上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記合わせガラスは、建築用又は車両用の合わせガラスであることが好ましい。上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。
【実施例】
【0161】
本発明を以下の実施例および比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに限定されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行われる。
【0162】
[中間膜1の作製]
<中間膜層シート1の作製>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(東ソー株式会社製 ウルトラセン635)を押出機により溶融し、押出金型よりシート状に押し出して、厚さ380μmの中間膜層シート1を作製した。なお、中間膜層シート1の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を以下の方法により測定したところ、−40℃であった。
【0163】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
(中間膜層)
表1に記載の樹脂を用いて、上記中間膜シート1の作製と同様の方法により樹脂膜を作製し、示差走査熱量計(DSC)(株式会社 日立ハイテクサイエンス社製)にてガラス転移温度を測定した。
【0164】
(反射層)
表1に記載のPVAの水溶液またはPVAとラテックスとの混合液をシャーレに入れ、100℃のオーブンで2時間水分を除去して樹脂膜を作製し、示差走査熱量計(DSC)(株式会社 日立ハイテクサイエンス社製)にてガラス転移温度を測定した。
【0165】
<反射層シート1−1の作製>
(高屈折率層用塗布液1の調製)
15.0質量%の酸化チタンゾル(SRD−W、体積平均粒径:5nm、ルチル型二酸化チタン粒子、堺化学社製)0.5質量部に純水2質量部を加えた後、90℃に加熱した。次いで、ケイ酸水溶液(ケイ酸ソーダ4号(日本化学社製)をSiO
2濃度が0.5質量%となるように純水で希釈したもの)0.5質量部を徐々に添加し、ついでオートクレーブ中、175℃で18時間加熱処理を行い、冷却後、限外濾過膜にて濃縮することにより、固形分濃度が、6質量%のSiO
2を表面に付着させた二酸化チタンゾル(以下、シリカ付着二酸化チタンゾル)(体積平均粒径:9nm)を得た。
【0166】
このようにして得られた20質量%のシリカ付着二酸化チタンゾル113質量部に対して、クエン酸水溶液(1.92質量%)を48質量部加え、8質量%のポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製、PVA−117、重合度1700、ケン化度:97.5〜99mol%)を113質量部加えて撹拌し、最後に界面活性剤の5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル社製)0.4質量部を加えて、高屈折率層用塗布液1を調製した。
【0167】
(低屈折率層用塗布液1−1の調製)
10質量%の酸性コロイダルシリカ水溶液(スノーテックスOXS、一次粒径:5.4nm、日産化学工業株式会社製)31質量部を40℃に加熱し、3質量%のホウ酸水溶液を3質量部加え、さらに6質量%のポリビニルアルコール水溶液(PVA−224、重合度:2400、ケン化度:87mol%、クラレ株式会社製)39質量部と、界面活性剤の5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル社製)1質量部とを40℃でこの順に添加し、低屈折率層用塗布液1−1を調製した。
【0168】
(反射層の形成方法)
22層重層塗布可能なスライドホッパー塗布装置を用いて、高屈折率層用塗布液1および低屈折率層用塗布液1を40℃に保温し、40℃に加温した160mm幅で厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製A4300:両面易接着層)上に、最下層と最上層は低屈折率層とし、それぞれ交互に、乾燥時の膜厚が低屈折率層は各層150nm、高屈折率層は各層130nmになるように、計22層の同時多層塗布を行った。塗布直後、10℃の冷風を吹き付けてセット(増粘)させた。
【0169】
セット(増粘)完了後、60℃の温風を吹き付けて乾燥させて、計22層からなる反射層シート1−1を作製した。なお、反射層シート1−1の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、75℃であった。また、反射層シート1−1の算術平均表面粗さ(Ra)を以下の方法により測定したところ、10nmであった。
【0170】
<算術平均表面粗さ(Ra)の測定>
測定試料を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえた。
【0171】
原子間力顕微鏡で得られた凹凸画像について、凹部及び/又は凸部が連なる方向に対して直角方向に任意に2本の直線を引き、この直線上の部分について、輪郭曲線(断面曲線
)をそれぞれ求めた。
【0172】
次に、これらの直線上についての輪郭曲線(断面曲線)から粗さを求めた。場所を変えて20箇所測定して、その算術平均をRaとした。
【0173】
なお、本発明において用いた測定条件は下記の通りである。
装置:Nanoscope IIIa AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード:タッピングモード
走査速度:0.5Hz
測定視野:125μm
2
Zレンジ:断面曲線から得られたRaの7〜15倍
フラッテンフィルター
モード :フラッテンオート
オーダー:3
バネ定数K:11N/m
共振周波数F:127kHz
<中間膜1の形成方法>
上記作製した中間膜層シート1、反射層シート1−1、中間膜層シート1をこの順に積層して、中間膜1を作製した。
【0174】
[中間膜2の作製]
<反射層シート2の作製>
(ラテックス含有低屈折率層用塗布液1の調製)
10質量%の酸性コロイダルシリカ水溶液(スノーテックスOXS、一次粒径:5.4nm、日産化学工業株式会社製)31質量部を40℃に加熱し、3質量%のホウ酸水溶液3質量部を加え、さらに6質量%のポリビニルアルコール水溶液(PVA−224、重合度:2400、ケン化度:87mol%、クラレ株式会社製)20質量部、6質量%の水分散性アクリル樹脂分散液(AE−120A、粒子径=55nm、株式会社イーテック製)20質量部、および界面活性剤の5質量%水溶液(ソフタゾリンLSB−R、川研ファインケミカル社製)1質量部を40℃でこの順に添加して、ラテックス含有低屈折率層用塗布液1を調製した。
【0175】
(反射層の形成方法)
低屈折率層用塗布液として、低屈折率用塗布液1に代えてラテックス含有低屈折率層用塗布液1を使用した以外は、反射層シート1−1と同様にして、反射層シート2を作製した。なお、反射層シート2の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、20℃であった。また、反射層シート2の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、30nmであった。
【0176】
<中間膜2の形成方法>
上記作製した中間膜層シート1、反射層シート2、中間膜層シート1をこの順に積層して、中間膜2を作製した。
【0177】
[中間膜3の作製]
<中間膜層シート2の作製>
中間膜層の構成樹脂として、EVAに代えて、ポリビニルブチラール(PVB)(平均重合度3000、ブチラール化度70mol%)を使用した以外は、中間膜層シート1と同様にして、中間膜層シート2を作製した。なお、中間膜層シート2の構成樹脂のガラス
転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、40℃であった。
【0178】
<中間膜3の形成方法>
上記作製した中間膜層シート2、反射層シート1−1、中間膜層シート2をこの順に積層して、中間膜3を作製した。
【0179】
[中間膜4の作製]
<中間膜層シート3の作製>
中間膜層の構成樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)(平均重合度1000、ブチラール化度70mol%)を使用した以外は、中間膜層シート2と同様にして、中間膜層シート3を作製した。なお、中間膜層シート3の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、20℃であった。
【0180】
<反射層シート3の作製>
(ラテックス含有低屈折率層用塗布液2の調製)
6質量%のポリビニルアルコール水溶液の配合量を36質量部とし、6質量%の水分散性アクリル樹脂分散液の配合量を4質量部としたこと以外は、ラテックス含有低屈折率層用塗布液1と同様にして、ラテックス含有低屈折率層用塗布液2を調製した。
【0181】
(反射層の形成方法)
ラテックス含有低屈折率層用塗布液として、ラテックス含有低屈折率層用塗布液2を使用した以外は、反射層シート2と同様にして、反射層シート3を作製した。なお、反射層シート3の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、60℃であった。また、反射層シート3の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、9nmであった。
【0182】
<中間膜4の形成方法>
上記作製した中間膜層シート3、反射層シート3、中間膜層シート3をこの順に積層して、中間膜4を作製した。
【0183】
[中間膜5の作製]
<中間膜層シート4の作製>
中間膜層の構成樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)(平均重合度2000、ブチラール化度70mol%)を使用した以外は、中間膜層シート2と同様にして、中間膜層シート4を作製した。なお、中間膜層シート4の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、35℃であった。
【0184】
<中間膜5の形成方法>
上記作製した中間膜層シート4、反射層シート1−1、中間膜層シート4をこの順に積層して、中間膜5を作製した。
【0185】
[中間膜6の作製]
上記作製した中間膜層シート4、反射層シート2、中間膜層シート4をこの順に積層して、中間膜6を作製した。
【0186】
[中間膜7の作製]
上記作製した中間膜層シート4、反射層シート3、中間膜層シート4をこの順に積層して、中間膜7を作製した。
【0187】
[中間膜8の作製]
<中間膜層シート5の作製>
中間膜層の構成樹脂として、ポリビニルブチラール(PVB)(平均重合度1500、ブチラール化度70mol%)を使用した以外は、中間膜層シート2と同様にして、中間膜層シート5を作製した。なお、中間膜層シート5の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、25℃であった。
【0188】
<反射層シート1−2の作製>
(低屈折率層用塗布液1−2の調製)
6質量%のポリビニルアルコール水溶液(PVA−224、重合度:2400、ケン化度:87mol%、クラレ株式会社製)39質量部を、6質量%のポリビニルアルコール水溶液(G型ゴーセノール GH−17、ケン化度:87mol%、日本合成化学工業株式会社製)39質量部としたこと以外は、低屈折率層用塗布液1−1と同様にして、低屈折率層用塗布液1−2を調製した。
【0189】
(反射層の形成方法)
低屈折率層用塗布液1−1に代えて、上記低屈折率層用塗布液1−2を使用した以外は、反射層シート1−1と同様にして、反射層シート1−2を作製した。なお、反射層シート1−2の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、70℃であった。また、反射層シート1−2の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、12nmであった。
【0190】
<中間膜8の形成方法>
上記作製した中間膜層シート5、反射層シート1−2、中間膜層シート5をこの順に積層して、中間膜8を作製した。
【0191】
[中間膜9の作製]
<反射層シート4の作製>
(ラテックス含有低屈折率層用塗布液3の調製)
6質量%のポリビニルアルコール水溶液の配合量を38質量部とし、6質量%水分散性アクリル樹脂分散液の配合量を2質量部としたこと以外は、ラテックス含有低屈折率層用塗布液1と同様にして、ラテックス含有低屈折率層用塗布液3を調製した。
【0192】
(反射層の形成方法)
ラテックス含有低屈折率層用塗布液として、ラテックス含有低屈折率層用塗布液3を使用した以外は、反射層シート2と同様にして、反射層シート4を作製した。なお、反射層シート4の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、70℃であった。また、反射層シート4の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、12nmであった。
【0193】
<中間膜9の形成方法>
上記作製した中間膜層シート5、反射層シート4、中間膜層シート5をこの順に積層して、中間膜9を作製した。
【0194】
[中間膜10の作製]
<反射層シート5の作製>
(ラテックス含有低屈折率層用塗布液4の調製)
6質量%のポリビニルアルコール水溶液の配合量を34質量部とし、6質量%の水分散性アクリル樹脂分散液の配合量を6質量部としたこと以外は、ラテックス含有低屈折率層用塗布液1と同様にして、ラテックス含有低屈折率層用塗布液4を調製した。
【0195】
(反射層の形成方法)
ラテックス含有低屈折率層用塗布液として、ラテックス含有低屈折率層用塗布液4を使用した以外は、反射層シート2と同様にして、反射層シート5を作製した。なお、反射層シート5の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、50℃であった。また、反射層シート5の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、12nmであった。
【0196】
<中間膜10の形成方法>
上記作製した中間膜層シート5、反射層シート5、中間膜層シート5をこの順に積層して、中間膜10を作製した。
【0197】
[中間膜11の作製]
<反射層シート6の作製>
(ラテックス含有低屈折率用層塗布液5の調製)
6質量%のポリビニルアルコール水溶液の配合量を32質量部とし、6質量%の水分散性アクリル樹脂水溶液の配合量を8質量部としたこと以外は、ラテックス含有低屈折率層用塗布液1と同様にして、ラテックス含有低屈折率層用塗布液5を調製した。
【0198】
(反射層の形成方法)
ラテックス含有低屈折率層用塗布液として、ラテックス含有低屈折率層用塗布液5を使用した以外は、反射層シート2と同様にして、反射層シート6を作製した。なお、反射層シート6の構成樹脂成分のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、40℃であった。また、反射層シート6の算術平均表面粗さ(Ra)を上記の方法により測定したところ、20nmであった。
【0199】
<中間膜11の形成方法>
上記作製した中間膜層シート5、反射層シート6、中間膜層シート5をこの順に積層して、中間膜11を作製した。
【0200】
[中間膜12の作製]
<中間膜層シート6の作製>
95質量部のポリビニルブチラール(PVB)(平均重合度1500、ブチラール化度70mol%)に5質量部のATO微粒子(超微粒子アンチモンドープ酸化スズ、住友金属鉱山社製)を押出機により混錬溶融し、押出金型よりシート状に押し出して、厚さ380μmの中間膜層シート6を作製した。なお、中間膜層シート6の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、40℃であった。
【0201】
<中間膜12の形成方法>
上記作製した中間膜層シート6、反射層シート6、中間膜層シート6をこの順に積層して、中間膜12を作製した。
【0202】
[中間膜13の作製]
<中間膜層シート7の作製>
5質量部のATO微粒子に代えて、5質量部のITO微粒子(超微粒子スズドープ酸化インジウム、巴製作所製)を使用したこと以外は、中間膜層シート6と同様にして、中間膜層シート7を作製した。なお、中間膜層シート6の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、40℃であった。
【0203】
<中間膜13の形成方法>
上記作製した中間膜層シート7、反射層シート6、中間膜層シート7をこの順に積層し
て、中間膜13を作製した。
【0204】
[中間膜14の作製]
<中間膜層シート8の作製>
5質量部のATO微粒子に代えて、5質量部のCWO粒子(セシウムドープタングステン酸化物粒子、住友金属鉱山社製)を使用したこと以外は、中間膜層シート7と同様にして、中間膜層シート8を作製した。なお、中間膜層シート8の構成樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記の方法により測定したところ、40℃であった。
【0205】
<中間膜14の形成方法>
上記作製した中間膜層シート8、反射層シート6、中間膜層シート8をこの順に積層して、中間膜14を作製した。
【0206】
上記作製した中間膜1〜14について、表1に示す。
【0207】
【表1】
【0208】
[合わせガラス1の作製]
光線入射側より、厚さ3mmの平面状のクリアガラス(可視光透過率Tv:91%、日
射透過率Te:86%)と、上記作製した中間膜1と、厚さ3mmの平面状のグリーンガラス(可視光透過率Tv:81%、日射透過率Te:63%)とをこの順で積層し、各合わせガラス構成部材のエッジ部からはみ出した各中間膜の余剰部分を除去した後、140℃で60分間加熱し、加圧脱気して合わせ処理を行い、合わせガラス1を作製した。
【0209】
[合わせガラス2〜14の作製]
上記合わせガラス1の作製において、中間膜1に代えて、上記作製した中間膜2〜14のそれぞれを使用した以外は、同様にして、合わせガラス2〜14を作製した。
【0210】
[合わせガラスの評価]
上記作製した合わせガラスについて、下記の特性値の測定および評価性能を行った。結果を下記表2に示す。
【0211】
<密着性の評価>
JIS R 3212:2008に準拠した方法により、合わせガラス1〜14について耐貫通性試験を行った。評価基準は以下の通りとした。
【0212】
◎:5mでも貫通しない
○:4.5mでも貫通しない
○△:4mでも貫通しない
△:4m以下で貫通する
×:2m以下で貫通する。
【0213】
<ヘイズの測定>
上記作製した各合わせガラスについて、ヘイズメータ−(日本電色工業製、SH 7000)を用いて、ヘイズ(%)を測定した。
【0214】
<可視光透過率の測定>
分光光度計(積分球使用、株式会社日立製作所製、U−4000型)を用い、合わせガラスの波長550nmにおける透過率を測定し、これを可視光透過率(%)とした。
【0215】
<日射熱取得率(TTS)の測定>
分光光度計(積分球使用、株式会社日立製作所製、U−4000型)を用い、合わせガラス1〜28の300〜2500nmの領域において、5nmおきに透過率及び反射率を測定した。次に、JIS R 3106:1998に記載の方法に従い、透過率及び反射率の各測定値と日射反射重価係数との演算処理を行って、日射熱取得率(TTS)を求めた。
【0216】
<耐熱性の評価>
JIS R 3212:2008に準拠した方法により、合わせガラス1〜14について耐熱性試験を行った。100℃の沸騰水に2時間浸漬した後、クラックの有無を目視で観察した。評価基準は以下の通りとした。
【0217】
◎:クラックなし
○:ルーペで確認できるものが10%以下
○△:ルーペで確認できるものが50%以下
△:目視で確認できるレベルが10%以下
×:目視で確認できるレベルが10%超。
【0218】
【表2】
【0219】
上記表1の結果から、本発明に係る中間膜を用いて作製された合わせガラス(中間膜7〜14)は、中間膜層の樹脂のガラス転移温度(Tg)が25℃〜35℃、反射層の樹脂成分のガラス転移温度(Tg)が40℃〜70℃であることにより、そのような構成を有していない中間膜を用いて作製された合わせガラス(中間膜1〜6)と比較して、優れた密着性、ヘイズ、可視光透過率、日射熱取得率および耐熱性を有していることがわかる。