特開2016-222575(P2016-222575A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-222575老化防止剤または加硫促進剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222575(P2016-222575A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】老化防止剤または加硫促進剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/06 20060101AFI20161205BHJP
   C07D 277/72 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C07D215/06
   C07D277/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-109475(P2015-109475)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】酒井 智行
(72)【発明者】
【氏名】田邊 祐介
【テーマコード(参考)】
4C031
4C033
【Fターム(参考)】
4C031AA01
4C031AA06
4C033AE09
4C033AE18
(57)【要約】
【課題】植物を原材料にしながら老化防止剤または加硫促進剤を工業的生産性に優れた方法で製造する。
【解決手段】植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る工程、得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程、得られたアニリンからアミン系老化防止剤、ベンゾイミダゾール系老化防止剤、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤またはアルキルフェニルジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を合成する工程を含むことを特徴する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る工程、得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程、得られたアニリンからアミン系老化防止剤またはベンゾイミダゾール系老化防止剤を合成する工程を含むことを特徴とする老化防止剤の製造方法。
【請求項2】
前記インジゴを40〜80℃で加水分解することを特徴する請求項1に記載の老化防止剤の製造方法。
【請求項3】
植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る工程、得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程、得られたアニリンからチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤またはアルキルフェニルジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を合成する工程を含むことを特徴とする加硫促進剤の製造方法。
【請求項4】
前記インジゴを40〜80℃で加水分解することを特徴する請求項3に記載の加硫促進剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を原材料にして老化防止剤または加硫促進剤を得る製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤなどのゴム製品には、老化防止剤や加硫促進剤が使用される。これら老化防止剤および加硫促進剤のなかでアミン系老化防止剤やチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤は、アニリンを原料として合成される。しかしアニリンは、化石資源を原料として生産されるため、大量の熱や二酸化炭素が排出されるので地球環境への影響が懸念される。
【0003】
このため特許文献1は、グルコースを微生物によって安息香酸または安息香酸誘導体に変換し得られた安息香酸または安息香酸誘導体をアニリンまたはアニリン誘導体に変換しこれらから老化防止剤または加硫促進剤を合成することを提案する。また特許文献2は、糖類またはバイオエタノールからフェノールを合成し、得られたフェノールをアニリンに変化し、これらからタイヤ用ゴム薬品を合成することを提案する。しかし、これらの製造方法は、いずれも天然資源からアニリンを得るまでの工程数が多く、収率がそれほど高くないため工業的生産性が低いという課題があった。また原料に用いるトウモロコシなどの生産が食糧や家畜飼料の生産と競合するため、需給の安定性についても懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−17176号公報
【特許文献2】特開2012−153655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、植物を原材料にしながら老化防止剤または加硫促進剤を工業的生産性に優れた方法で製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の老化防止剤の製造方法は、植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る工程、得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程、得られたアニリンからアミン系老化防止剤またはベンゾイミダゾール系老化防止剤を合成する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明の加硫促進剤の製造方法は、植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る工程、得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程、得られたアニリンからチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤またはアルキルフェニルジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を合成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の老化防止剤および加硫促進剤の製造方法は、植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を生成し、この2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを高い収率で容易に得ることができる。またアニリンを得るまでの工程数が少なく、温和な反応条件で合成に要する熱エネルギーも少ないため工業的生産性に優れるため、アニリンの生産コストを大幅に抑制することができる。このアニリンを用いて老化防止剤および加硫促進剤を製造することにより、植物資源を原料にしながら生産コストを大幅に抑制したタイヤ用ゴム薬品を得ることができる。
【0009】
前記インジゴは、50〜60℃で加水分解することが好ましく、副生成物の発生を抑制し収率をより高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の老化防止剤および加硫促進剤の製造方法は、植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を生成し、これを脱炭酸することによりアニリンを合成する工程を有する点が共通する。
【0011】
インジゴは、青藍の染料であり、体系名をΔ’(3H)―ビ[1H−インドール]−3,3’―ジオンという。インジゴは、種々の植物に含有されており、例えば蓼藍(タデ科)、インド藍(マメ科)、琉球藍(キツネノマゴ科)、蝦夷藍(アブラナ科)、山藍(トウダイグサ科)、大青(ウォード、アブラナ科)等(以下、「藍植物」ということがある。)に多く含まれている。これら藍植物から抽出したインジゴを使用することができる。インジゴを抽出する方法は特に制限されるものではなく、藍植物から水溶性のインジカンを抽出して取り出し、このインジカンを加水分解してインドキシルを生成する。この加水分解のときインジカン分解酵素を添加することもできる。得られたインドキシルの2分子が酸化することによりインジゴが得られる。インジゴは、室温で粉末状の形態である。
【0012】
本発明の製造方法において、最初の工程で植物から抽出されたインジゴを加水分解することにより2−アミノ安息香酸を得る。加水分解の条件は、特に限定されるものではないが、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜70℃で加水分解することができる。インジゴはこのような温和な条件で効率的に2−アミノ安息香酸に加水分解することができる。インジゴは水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液中で加水分解することもできる。使用するアルカリ水の性状は、特に限定されるものではないが、pHが好ましくは8〜14、より好ましくはpH10〜14であるとよい。アルカリの種類としては、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を例示することができる。
【0013】
インジゴの加水分解に使用する装置は、特に制限されるものではなく、加水分解に通常用いられる装置を使用することができる。
【0014】
次に、上記工程で得られた2−アミノ安息香酸を脱炭酸することによりアニリンを得る工程を行う。2−アミノ安息香酸を脱炭酸する条件は、特に限定されるものではないが、好ましくは酢酸、硫酸などの酸等の存在下、或いは酸等が存在しない状態で、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃で脱炭酸することができる。また脱炭酸するときの圧力は、好ましくは大気圧〜2.0MPa(ゲージ圧)にするとよい。さらに脱炭酸する時間は、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは0.5〜10時間にすることができる。上述した条件で2−アミノ安息香酸を脱炭酸することにより、アニリンの収率をより高くすることができる。
【0015】
2−アミノ安息香酸の脱炭酸に使用する装置は、特に制限されるものではなく、脱炭酸に通常用いられる装置を使用することができる。
【0016】
本発明の老化防止剤の製造方法は、インジゴを無溶媒で熱分解して得られたアニリンから、アミン系老化防止剤またはベンゾイミダゾール系老化防止剤を合成する工程を含む。アミン系老化防止剤としては、キノリン系、ジアリールアミン系、ジアリール−p−フェニレンジアミン系、ジアルキル−p−フェニレンジアミン系、アルキルアリール−p−フェニレンジアミン系の各種老化防止剤を挙げることができる。これらアミン系老化防止剤は、アニリンを用いて通常の方法で合成することができる。なお老化防止剤を製造するとき使用する、アニリン、N−アルキルアニリン以外の化合物についても植物系資源から得られるものを使用するとよい。
【0017】
キノリン系老化防止剤は、例えば2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物(RD)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン(AW)等を挙げることができる。
【0018】
ジアリールアミン系老化防止剤は、例えばフェニル−α−ナフチルアミン(PA)、オクチル化ジフェニルアミン(AD)、4,4′−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(CD)、p-(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン(TD)等を挙げることができる。
【0019】
ジアリール−p−フェニレンジアミン系老化防止剤は、例えばN,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DP)、ジアリール−p−フェニレンジアミン混合物(TP)、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(White)等を挙げることができる。
【0020】
ジアルキル−p−フェニレンジアミン系老化防止剤は、例えばN,N′−ジ(1,4−ジメチルペンチル)−p−フェニレンジアミンを挙げることができる。
【0021】
アルキルアリール−p−フェニレンジアミン系老化防止剤は、例えばN−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(3PPD)、N−フェニル−N′−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)等を挙げることができる。
【0022】
ベンゾイミダゾール系老化防止剤は、例えば2−メルカプトベンズイミダゾール(MB)、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール(MMB)等を挙げることができる。
【0023】
本発明の加硫促進剤の製造方法は、インジゴを無溶媒で熱分解して得られたアニリンから、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤またはアルキルフェニルジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤を合成する工程を含む。なお加硫促進剤を製造するとき使用する、アニリン、N−アルキルアニリン以外の化合物についても植物系資源から得られるものを使用するとよい。
【0024】
チアゾール系加硫促進剤は、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2,2′−ジベンゾチアゾリルジスルファイド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(ZnMBT)等を挙げることができる。
【0025】
スルフェンアミド系加硫促進剤は、例えばN−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(BBS)、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(OBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)等を挙げることができる。
【0026】
グアニジン系加硫促進剤は、例えばジフェニルグアニジン(DPG)、1,3−ジ−o−トリルグアニジン(DOTG)等を挙げることができる。
【0027】
アルキルフェニルジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤は、例えばN−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnEPDC)、N−メチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0028】
本発明の製造方法により得られた老化防止剤および加硫促進剤は、通常のゴム製品、特に空気入りタイヤやコンベアベルトの配合剤として好適に使用することができる。
【0029】
空気入りタイヤやコンベアベルトを構成するゴム組成物には、ゴム成分、カーボンブラック、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤からなる基本配合に、シリカ、クレー、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機充填剤、シランカップリング剤、プロセスオイル、軟化剤、加硫促進助剤などの通常、用いられる配合剤を適宜配合することができる。
【0030】
ゴム組成物として、加硫系配合剤を除く配合剤およびゴム成分をバンバリーミキサー、オープンロールなどのゴム混練機を用いて混練した後、冷却してから加硫系配合剤を混合することにより未加硫ゴム組成物が調製される。得られた未加硫ゴム組成物を、空気入りタイヤの各部品の形状に合わせて押出し成形し、タイヤ成型機上にてグリーンタイヤを形成する。さらに、このグリーンタイヤを加硫機中で加硫成形することにより空気入りタイヤが製造される。
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
実施例1
<藍からインジゴの抽出>
藍から刈取った葉を水で洗った後、80℃の熱湯で煮だした後、ミキサーにかけてろ過を行った。この液に水酸化ナトリウムを加え、0.1N規定のアルカリ溶液中に調整した。この操作で、葉の中のインジカンからインドキシルに加水分解する。この液を2日間空気にさらすことでゆるやかに酸化が行われる。さらに、ろ過を行い、24時間乾燥することにより、粉末状のインジゴを得た。このインジゴの純度は、91%であった。
【0033】
<インジゴを加水分解する工程>
インジゴ 2.6gを水酸化ナトリウム溶液(pH12)とアセトニトリルの混合液に溶解させ、インジゴ溶液を得た。
【0034】
触媒として塩化パラジウム(17.7mg)とブロマミン‐T-(N‐ブロモ‐4‐メチルベンゼンスルホンアミド/ナトリウム)(8.2g)と共に、インジゴ溶液を投入し、雰囲気を窒素で置換した。
系内の温度を55℃に保ちながら、3時間、攪拌することにより、インジゴを加水分解した。反応が適切かどうかを薄層クロマトグラムで確認しながら実施した。得られた反応液から2−アミノ安息香酸をジクロロメタンを展開溶媒として用いたシリカゲルカラムにて分離した。これにより2−アミノ安息香酸2.5g(収率98%)が合成された。
【0035】
<2−アミノ安息香酸を脱炭酸する工程>
冷却管を備えた加熱装置に、上記で得られた2−アミノ安息香酸 1.0gを投入し、温度 190℃、大気圧力下、窒素条件で、2時間の条件で、脱炭酸したアニリンを回収することにより、アニリン0.95g(収率95%)が合成された。
【0036】
<アニリンから老化防止剤の合成>
上記で得られたアニリンから、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンを合成した。アセトン導入装置、蒸留装置、温度計および攪拌機を備えたフラスコに、アニリン93gと、塩酸3.6gを加え、120℃まで加熱した。120℃に保温しながら、6時間にわたりアセトン174gをフラスコ内に連続的に供給した。留出する未反応のアセトンやアニリンは、随時フラスコ内に戻した。2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物81g(収率約30%)を得た。重合度は2〜3であった。なお、未反応のアニリン、および2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンのモノマーは、減圧蒸留により回収した。140℃で未反応のアニリンが留出し、その後190℃まで昇温することにより、モノマーが留出した。
【0037】
<アニリンから加硫促進剤の合成>
上記で得られたアニリンから、2−メルカプトベンゾチアゾールを合成した。300ml加圧反応器内に、アニリン93g、二硫化炭素76gおよび硫黄16gを投入し、
250℃、 3.0MPaの条件で5時間反応させた。その後150℃まで冷却し、2−メルカプトベンゾチアゾールを調製した。収量は141g(収率84.3%)であった。