特開2016-222756(P2016-222756A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222756(P2016-222756A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】粘性硬化剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20161205BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-107623(P2015-107623)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】緒方 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 信広
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC021
4J002BF041
4J002BF051
4J002BG021
4J002BQ001
4J002CF211
4J002EK016
4J002EK026
4J002EK036
4J002EK046
4J002EK066
4J002EK086
4J002FB076
4J002FB086
(57)【要約】
【課題】ラジカル硬化性樹脂を硬化させるための、少なくとも水を含む粘性硬化剤組成物であって、水を含む液体成分の分離が殆どなく、混合バランスが安定であって長期間の保存が可能であり、しかも、広い範囲の加工温度に対応可能であり、得られる硬化物において高い強度をバラツキなく発揮することができる、前記硬化剤組成物を提供すること。
【解決手段】有機過酸化物、水、及び水に対して0.5〜10.0重量%の親水性合成スメクタイトを含有することを特徴とする、ラジカル硬化性樹脂を硬化させるための粘性硬化剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物、水、及び水に対して0.5〜10.0質量%の親水性合成スメクタイトを含有することを特徴とする、ラジカル硬化性樹脂を硬化させるための粘性硬化剤組成物。
【請求項2】
硬化剤組成物に含有される他の成分と反応しない粉体を更に含有する、請求項1記載の粘性硬化剤組成物。
【請求項3】
B型粘度計を用いて測定した23℃における20rpmの粘度が5Pa・s以上150Pa・s以下である、請求項1又は2記載の粘性硬化剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジカル硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラジカル硬化性樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等を硬化させるための重合開始剤としては、有機過酸化物が用いられている。
これらの有機過酸化物は、使用目的及び使用温度によって区分されて用いられており、低温から常温の温度領域においては、しばしば芳香族アミン類等の硬化促進剤と併用されている。
【0003】
有機過酸化物を硬化剤とするラジカル硬化性樹脂の用途は、耐食ライニング、シートの接着剤、金型成形、樹脂アンカー用の主剤等、多岐に亘っている。樹脂アンカー用の主剤として用いられる樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシアクリレート樹脂が一般的である。樹脂アンカーは、アンカーボルトをコンクリート構造物、岩盤等に埋め込み、設備等を設置する用途に用いられており、硬化可能な粘性液体樹脂及び硬化剤から成る二成分系、又は、これらに骨材及び充填剤を加えた三成分系のものが知られている。供給態様としては、例えば、カプセルタイプ、注入タイプ等が知られている。カプセルタイプは、各成分をガラス、フィルム等に封入したカプセルを、アンカーボルト、鉄筋等に対して、ハンマーにより打ち込み、或いはハンマードリル等により回転・打撃を加えながら埋め込んで用いられる。注入タイプは、ハードケース、フィルム等に封入された主剤と硬化剤とを、ディスペンサーで押し出したうえで、スタティックミキサー等により混合して用いられる。
【0004】
上記カプセルタイプとしては、破砕可能な二重構造の筒状容器を用い、その外容器に硬化可能な主剤、及び骨材を封入し、これらとは隔離された内容器に硬化剤を封入して成る、二重構造の樹脂カプセルアンカーが一般的である(特許文献1)。また、破砕可能な外容器と破砕可能な内容器とから成り、その一方に粘性液体樹脂、他方に該粘性液体樹脂の硬化剤及び骨材を充填してなるボルト固着用カートリッジにおいて、固体顆粒状の硬化剤と骨材とが実質的に均一に混合されていることを特徴とする、前記ボルト固着用カートリッジ(特許文献2);
棒状に成形され、かつ該棒状成形物の全表面に亘って樹脂被覆層を有してなる硬化剤と、
粘性液体樹脂、該粘性液体樹脂に混入される粒状石骨材、有機結合剤、希釈剤、及び過酸化物と、を、不透明な円筒状の管の中に充填し、該不透明な円筒状の管の口元部に透明なプラスチックキャップを密嵌してなる、ボルト固定用固着剤(特許文献3);
硬化性重合体系をマイクロカプセル化により多区分化し、かつこれらのマイクロカプセルを固定された三次元関係にある円筒配列として構成したアンカーボルトシール用カートリッジ(特許文献4);
等が知られている。これらのカプセルは、破砕された時に、カプセルの壁材がフレーク状の破片を形成するように構成され、このフレークを「静的攪拌機」として機能させることにより、重合系の均一を達成させるというものである。
【0005】
このように、樹脂カプセルアンカーにおいては、硬化剤として顆粒状、粉体状、棒状等の、固体状態の硬化剤が用いられることが多い。しかし、製造上の容易性、混合性等の理由から、粘性液体状の硬化剤を使用した方が有利となる場合がある。
また、注入型アンカー、充填剤、接着剤等の用途に用いるラジカル硬化性樹脂の硬化剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物を、例えばジブチルテレフタレートのような有機物から成る分散剤中に分散し、更に炭酸カルシウム等の希釈剤を配合した粘性液体状の硬化剤が一般的に使用されている。
【0006】
一般的に用いられている粘性液体状の硬化剤は、経時的に過酸化物濃度が低下する傾向が強いため、低温で保管する必要がある、長期間の保管ができない等の問題がある。
この問題を解決するために、シリコーンオイル、流動パラフィン、特定の炭化水素化合物等を希釈剤として用いる粘性液体状の硬化剤が提案されている(特許文献5及び6)。しかしながら、これらの粘性液体状の硬化剤は、希釈剤として疎水性の高い化合物を使用しているため、コンクリート表面との接着性が十分でなく、特に、湿潤面への接着、アンカーの水孔施工等において、十分な性能を発揮できない場合がある。また、例えば、硬化剤として過酸化ベンゾイルを用いる場合、安全性のため水を含んだ状態から製造される。しかし、上記特許文献5及び6の硬化剤を製造する場合には、水を置換するための工程が複雑となり、コスト的に不利になる問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するために、水及び1種類以上のグリコール類を希釈剤として用いる粘性硬化剤組成物が提案されている(特許文献7)。しかしながらこの粘性硬化剤組成物は、水を希釈剤として用いているため、水を含む液体成分の分離が生じ易く、使用前に充分に均一混合する手間が発生する。また、特許文献7の技術を、主剤と硬化剤とを各々別容器に充填し混合吐出するカートリッジ方式に適用した場合、主剤との混合バランスが崩れて、得られる硬化物の性能に大きなバラツキが生ずる問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭62−37076号公報
【特許文献2】特公平4−1160号公報
【特許文献3】特公昭63−13000号公報
【特許文献4】特開昭55−32814号公報
【特許文献5】特開2000−291399号公報
【特許文献6】特開2003−313956号公報
【特許文献7】特開2007−191535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ラジカル硬化性樹脂を硬化させるための粘性硬化剤組成物であって、特に水を含む液体成分の分離が殆どなく、混合バランスが安定であって長期間の保存が可能であり、しかも、広い範囲の加工温度に対応可能であり、得られる硬化物において高い強度をバラツキなく発揮することができる、前記硬化剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、有機過酸化物及び水を含む粘性硬化剤組成物に、親水性の合成スメクタイトを特定の割合で用いることによって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の実施態様を開示するものである;
1.有機過酸化物、水、及び水に対して0.5〜10.0重量%の親水性合成スメクタイトを含有することを特徴とする、ラジカル硬化性樹脂を硬化させるための粘性硬化剤組成物。
2.硬化剤組成物に含有される他の成分と反応しない粉体を更に含有する、請求項1記載の粘性硬化剤組成物。
3.B型粘度計を用いて測定した23℃における20rpmの粘度が5Pa・s以上150Pa・s以下である、請求項1又は2記載の粘性硬化剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘性硬化剤組成物は、液体成分における液分離が殆どなく、混合バランスに優れるとともに、施工温度(硬化時の静置温度)にかかわらず、安定したバラツキの少ない高い強度の硬化物を与える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の粘性硬化剤組成物は、上記の通り、有機過酸化物、水、及び親水性の合成スメクタイトを含有する。
本発明の粘性硬化剤組成物を構成する有機過酸化物としては、例えばジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、ヒドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類及びパーオキシカーボネート類等が用いられる。これらの具体例としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等が挙げられる。好ましくは、安定性に優れるベンゾイルパーオキサイドが用いられる。
【0013】
本実施形態の粘性硬化剤組成物は、水を含有する。
水の含有量は、粘性硬化剤組成物の100質量部に対して、好ましくは5〜30質量部であり、より好ましくは10〜25質量部である。
【0014】
本実施形態の粘性硬化剤組成物は、有機過酸化物の希釈剤成分として、水の分離を抑制させるための親水性合成スメクタイトを含有する。
ここで、親水性合成スメクタイトとは工業的に合成した膨潤性層状粘土鉱物を親水化処理したものである。膨潤性層状粘土鉱物は、天然にはベントナイトとして産出されるが、本実施形態においては、親水性合成スメクタイトを使用する。
本実施形態において使用される親水性合成スメクタイトとしては、以下の分子式(1)及び(2)のそれぞれで表される化合物から選択される1種以上を使用することが好ましい。
Na0.33(Mg2.67Li0.33)Si10(OH) (1)
Na0.33(Mg2.67Li0.33)Si10 (2)
これらは、市販品として入手可能であり、例えばコープケミカル(株)のルーセンタイト(商品名)のうちの、SWN(上記分子式(1)に該当)及びSWF(上記分子式(2)に該当)を例示できる。
【0015】
ここで、親水性合成スメクタイトの使用比率は、水に対して、0.5〜10質量%とする必要がある。好ましくは1.0〜5.0質量%の範囲である。親水性合成スメクタイトの比率が0.5質量%を下回る場合には、水を含む液体成分に分離が生じ、混合バランスが悪化して、得られる硬化物の固着強度が低下する原因となる場合がある。一方、この値が10質量%を超える場合には、粘性硬化剤組成物の粘度が過度に上がり、ラジカル硬化性樹脂との混合性が悪くなり、混合不良が生じて、得られる硬化物の固着強度が低下する原因となる場合がある。
親水性合成スメクタイトは、粘性硬化剤組成物を調製する際の生産性を考慮すると、予め水に溶解したうえで調製に供することが好ましい。
【0016】
粘性硬化剤組成物の粘度は、B型粘度計を用いて測定した23℃における20rpmの粘度が5Pa・s以上150Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以上100Pa・s以下がより好ましい。5Pa・sを下回ると、硬化剤成分と液状希釈剤との分離が発生し易くなることにより、硬化剤組成物の濃度ムラに起因する硬化物の物性のバラツキが生じる原因となる場合がある。一方、150Pa・sを超える場合には、硬化剤組成物の粘性が過度に高くなるため、樹脂との混合性が悪くなる。そのため、充分に混合させるためには長い時間を要することになる、混合途中で硬化する、等の問題が生ずる場合がある。
【0017】
本実施形態の粘性硬化剤組成物には、上記に加えて、任意的にその他の成分を添加することができる。本実施形態における粘性硬化剤組成物におけるその他の成分としては、例えば該粘性硬化剤組成物に含有される他の成分と反応しない粉体、界面活性剤等を挙げることができる。
【0018】
上記粘性硬化剤組成物に含有される他の成分と反応しない粉体は、粘性硬化剤組成物の粘度の調節、揺変度の調節、粘性硬化剤組成物製造コストの削減等を目的として添加されるものであり、例えば硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ等の無機化合物の粉体;
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の有機高分子粉体;
等が用いられる。これらのうち、無機化合物の紛体を用いることが好ましい。無機化合物の紛体は、親水性であってもよいし、疎水化されていてもよい。粘性硬化剤組成物の粘度及び揺変度の調節効果を重視すると、上記粉体として親水性の無機化合物の紛体を使用することが最も好ましい。
上記粉体の粒径は、1〜100μmの範囲で適宜に調整することが好ましい。
本実施形態の粘性硬化剤組成物における上記紛体の使用割合は、粘性硬化剤組成物の100質量部に対して、70質量部以下とすることが好ましく、20〜70質量部とすることがより好ましく、30〜60質量部とすることが更に好ましい。
【0019】
本実施形態の粘性硬化剤組成物には、界面活性剤を添加することができる。本実施形態の粘性硬化剤組成物に用いることのできる界面活性剤としては、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;
脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ピリジニウム塩等の陽イオン界面活性剤;
カルボキシベンダイン型、スルホベンダイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤;
エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型等の非イオン界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、親油性及び親水性の両方ともが大きなものが好ましく、特に、表面張力低下能が極めて優れている非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが最も好ましく用いられる。
これら界面活性剤は、粘性硬化剤組成物中に、0.5質量%〜5.0質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0020】
本実施形態の粘性硬化剤組成物を用いて硬化させるラジカル硬化性樹脂は、ラジカル反応で硬化する樹脂であればよい。例えば、エポキシアクリレート樹脂等のビニルエステル樹脂の他、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等が挙げられる。
本実施形態の粘性硬化剤組成物は、一般的なコンクリート母材の施工に適用されることが多いため、ラジカル硬化性樹脂としては耐アルカリ性に優れる樹脂が好ましい。耐アルカリ性の程度としては、JIS K6919の耐アルカリ性試験において、重量変化±10%以下のものが好ましく、特に好ましくはエポキシアクリレート樹脂等のビニルエステル樹脂である。
【0021】
ラジカル硬化性樹脂は、一般に反応性単量体で希釈された状態で提供されている。本実施形態の粘性硬化剤組成物を適用する樹脂として、反応性単量体で希釈された樹脂を用いてもよい。
この反応性単量体とは、分子内に1個以上の重合性二重結合を有する化合物を意味する。該反応性単量体が有する重合性二重結合の数は、好ましくは1〜4個である。
ここで、反応性単量体としては、例えばスチレン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリ レート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジメタクリレート、フタル酸ジアリル、トリメット酸トリアリル等が挙げられる。これらのうち、引火点100℃以上のメタクリレートが好ましい。また、反応性単量体は、その有害性等を考慮して選定することが望まれる。
これら反応性単量体は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
反応性単量体は、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対して、30〜70質量部とすることが好ましく、40〜60質量部にすることが更に好ましい。
【0022】
本実施形態に用いられるラジカル硬化性樹脂は、一般に、硬化性調整のために硬化促進剤及び重合禁止剤等を添加して用いられる。これら以外に、更に、吸水性化合物を含有していてもよい。
ここで用いられる樹脂の硬化促進剤としては、例えば金属石鹸類、金属キレート化合物、第3級芳香族アミン類等が挙げられる。これらの具体例としては、金属石鹸類として、例えばナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、オクテン酸バナジル、ナフテン酸銅、ナフテン酸バリウム等を;
金属キレート化合物として、例えばバナジルアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート等を;
第3級芳香族アミン類として、例えばN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジヒドロキシプロピル−p−トルイジン、N−フェニルジエタノールアミン、 N−p−トリールジエタノールアミン、N,N−ビスヒドロキシブチル−p−トルイジン等を;
それぞれ挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、或いは2種以上併用しても構わない。その添加量は、ラジカル硬化性樹脂の100質量部に対して、0.3〜2質量%とすることが好ましい。
【0023】
本実施形態に用いられるラジカル硬化性樹脂の重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。その具体例として、例えば、 ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン、ナフトキノン、2,6−ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t− ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられ、これらのうちから選択される1種以上を必要量添加することができる。
重合禁止剤の添加量は、ラジカル硬化性樹脂の100質量部に対して、1質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
本実施形態に用いるラジカル硬化性樹脂には、吸水性化合物を添加することができる。ここで、吸水性化合物とは、粘性硬化剤組成物中に存在する水を吸収することのできる化合物を意味する。ここで、水の存在状態としては、遊離した状態(樹脂と完全に相分離した状態)、乳化状態、懸濁状態、溶解状態等、各種の状態のいずれでもよい。吸水性化合物は、これらのうちのいずれか1種以上の状態で存在している水を吸収し、反応して他の化合物に変化させるか、又はイオン的に結合して固定化することのできる化合物を意味する。
【0025】
吸水性化合物の例としては、例えばゼオライト、シリカゲル、塩化カルシウム、生石灰、高炉スラグ、セメント等の無機化合物;
アクリル酸、メタクリル酸重合体ナトリウム塩等の有機化合物(特に高吸水性樹脂)
等が挙げられる。
吸水性化合物としての無機化合物は、自重の10質量%以上の水を吸うことができる。無機化合物としては、平均粒径1μm〜500μmのものを使用するのが好ましい。
吸水性化合物の使用割合は、水100質量部に対して、好ましくは10質量部以下であり、より好ましくは3〜8質量部である。
【0026】
本実施形態の粘性硬化剤組成物は、上記のようなラジカル硬化性樹脂、又は該樹脂とその他の成分との組成物に混合して使用される。
両者の使用割合としては、ラジカル硬化性樹脂100質量部に対する有機過酸化物の使用割合として、1〜15質量部とすることが好ましく、3〜12質量部とすることがより好ましく、5〜10質量部とすることが更に好ましい。
混合後、一定時間静置することにより、ラジカル硬化性樹脂が硬化して硬化物を得ることができる。この静置の際の温度は、−10〜40℃とすることが好ましい。本実施形態の粘性硬化剤組成物は、上記の広い温度範囲において、安定した硬化性能を発揮することができる。
上記静置時間は、10分〜48時間とすることが好ましい。
硬化に必要な静置時間は、硬化温度に依存する。すなわち、硬化温度が低い場合にはより長い静置時間を要し、硬化温度が高い場合にはより短い静置時間で十分な硬度の硬化物を得ることができる。ある硬化温度においてどの程度の静置時間を要するかは、当業者による僅かの予備実験によって、上記の範囲で容易に定めることができる。
【0027】
上記のようにして得られた硬化物は、バラツキの少ない安定した固着強度を得ることができる。特に、硬化温度の高低にかかわらず、所望の固着硬度を実現できることが、本実施態様の最大のメリットである。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0029】
[実施例1]
(1)粘性硬化剤組成物の調製
撹拌機を装着した容器中に、過酸化ベンゾイル36質量%品(11質量%水湿体、53質量%水酸化アルミニウム品)100g、3.5質量%ルーセンタイトSWN(商品名、コープケミカル株式会社製、親水性合成スメクタイト)水分散液97.4g、ジプロピレングリコール22.1g、水酸化アルミニウム87.8g、シリカ381.2g、界面活性剤12.6g、水4.7g、及び四三酸化鉄1.3gを添加後、30分混合して粘性硬化剤を調製した。この粘性硬化剤組成物について、B型粘度計 TV−35(東機産業(株)製)を用いて23℃において測定した20rpmの粘度は35Pa・sであった。
【0030】
(2)主剤の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂にメタクリル酸を付加したエポキシアクリレート樹脂に、反応性単量体としてジエチレングリコールジメタクリレートを混合して、粘度1Pa・S(25℃、E 型粘度計)にした樹脂100gに、硫酸カルシウム58.6g、アエロジル(商品名、日本アエロジル株式会社製、超微粒子シリカ)0.6g、及び炭酸カルシウム97.6gを添加した後、攪拌機で20分混合・撹拌することにより、モルタル状の主剤成分を調製した。
【0031】
(3)評価
(3−1)液分離量の測定
上記で調整した粘性硬化剤をガラス製容器中に60g計量し、遠心分離機(条件:25℃、60min×1,000rpm)にかけて、液分離量を測定した。その結果を表1に示した。
(3−2)固着強度の測定
ミックスパック社製の500cc用カートリッジに、上記で調製した主剤成分及び硬化剤成分を、体積比2:1でそれぞれ区分して充填し、封止して、カートリッジを試作した。
サイズ500×500×1,000mm、圧縮強度21N/mmのコンクリートブロックに、穿孔径18mm及び穿孔長100mmの孔を穿孔し、ブロワー及びナイロンブラシを用いて孔内清掃を行った後、上記カートリッジから主剤及び硬化剤主剤及び硬化剤を孔内に充填し、外径16mmの全ネジボルト(材質SNB7)を挿入して固着させた。
その後、25℃において24時間静置して硬化させた後に、固着強度を測定した。
固着強度は、アンカーボルト引張耐力検査装置 ANSER−5−IV(旭化成ケミカルズ(株)製)を用いて行った。測定は、3個の試料を用いて繰り返し数n=3として行った。更に、これら繰り返し測定における固着強度の最大値から最小値を減じた値を、ばらつきRとして求めた。
評価結果を表1に示した。
【0032】
[実施例2]
主剤成分としては、実施例1と同様の主剤成分を用いた。
粘性硬化剤組成物としては、ルーセンタイトSWN水分散液の濃度を1.0質量%に希釈し、配合量は同量として使用した以外は、実施例1と同様にして粘性硬化剤組成物を調製した。
上記の主剤成分及び粘性硬化剤組成物を用いて、実施例1と同様にして、液分離量の測定、充填、ボルト固着、及び固着強度測定を行った。その結果を表1に示した。
【0033】
[実施例3]
主剤成分としては、実施例1と同様の主剤成分を用いた。
粘性硬化剤組成物としては、ルーセンタイトSWN水分散液の濃度を6.0質量%とし、配合量は同量として使用した以外は、実施例1と同様にして粘性硬化剤組成物を調製した。
上記の主剤成分及び粘性硬化剤組成物を用いて、実施例1と同様にして、液分離量の測定、充填、ボルト固着、及び固着強度測定を行った。その結果を表1に示した。
【0034】
[比較例1]
(1)粘性硬化剤組成物の調製
撹拌機を備えた容器中に、過酸化ベンゾイル36質量%品(11質量%水湿体、53質量%水酸化アルミニウム品)100g、ジプロピレングリコール22.1g、水酸化アルミニウム87.8g、シリカ381.2g、界面活性剤12.6g、水102.1g、及び四三酸化鉄1.3gを添加した後、30分混合することにより、粘性硬化剤を調整した。この粘性硬化剤組成物について、B型粘度計 TV−35(東機産業(株)製)を用いて23℃において測定した20rpmの粘度は、7・5Pa・sであった。
【0035】
(2)主剤の調製
撹拌機を備えた容器中に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂にメタクリル酸を付加したエポキシアクリレート樹脂に、反応性単量体としてジエチレングリコールジメタクリレートを混合し、粘度1Pa・S(25℃、E 型粘度計)にした樹脂100gに、硫酸カルシウム58.6g、アエロジル0.6g、及び炭酸カルシウム97.6gを添加した後、20分混合・撹拌することにより、モルタル状の主剤成分を調製した。
(3)評価
上記の主剤成分及び粘性硬化剤組成物を用いて、実施例1と同様にして、液分離量の測定、充填、ボルト固着、及び固着強度測定を行った。その結果を表1に示した。
【0036】
【表1】