特開2016-222813(P2016-222813A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-222813グリース組成物およびその製造方法、ならびに当該グリース組成物が封入された転がり軸受
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222813(P2016-222813A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】グリース組成物およびその製造方法、ならびに当該グリース組成物が封入された転がり軸受
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20161205BHJP
   C10M 171/00 20060101ALI20161205BHJP
   C10M 133/08 20060101ALI20161205BHJP
   C10M 129/76 20060101ALI20161205BHJP
   C10M 115/08 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20161205BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20161205BHJP
   C10N 20/06 20060101ALN20161205BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20161205BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20161205BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20161205BHJP
【FI】
   C10M169/02
   C10M171/00
   C10M133/08
   C10M129/76
   C10M115/08
   F16C33/66 Z
   F16C19/06
   C10N20:00 Z
   C10N20:06 Z
   C10N30:00 E
   C10N30:00 Z
   C10N40:02
   C10N50:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-110435(P2015-110435)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】新田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】津田 武志
(72)【発明者】
【氏名】中田 竜二
【テーマコード(参考)】
3J701
4H104
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA80
3J701CA33
3J701CA40
3J701EA63
3J701EA70
3J701FA01
3J701FA38
3J701FA60
3J701GA55
3J701GA60
3J701XE01
3J701XE03
3J701XE34
3J701XE42
4H104BB35C
4H104BE05C
4H104BE13B
4H104EA08B
4H104EA30Z
4H104LA15
4H104LA20
4H104PA01
4H104QA18
(57)【要約】
【課題】低騒音と低発塵とを両立でき、トルク安定性を発現できると共に、さらに、軸受の生産性の低下を抑制することができるグリース組成物およびその製造方法、ならびに当該グリース組成物が封入された転がり軸受を提供すること。
【解決手段】少なくとも基油と増ちょう剤とを含有し、200以下の不混和ちょう度、および250以上の混和ちょう度を有するグリース(G)が封入された転がり軸受1を提供する。グリース(G)は、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種からなる添加剤を含有していることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基油と増ちょう剤とを含有し、
200以下の不混和ちょう度、および250以上の混和ちょう度を有する、グリース組成物。
【請求項2】
前記不混和ちょう度と前記混和ちょう度との差が、100以上である、請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種からなる添加剤を含有している、請求項1または2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記添加剤を、0.5質量%〜2質量%含有している、請求項3に記載のグリース組成物。
【請求項5】
前記基油と前記増ちょう剤の混合物をロール処理した後に、前記添加剤を混合して得られる、請求項3または4に記載のグリース組成物。
【請求項6】
前記増ちょう剤の平均粒子径が、10μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のグリース組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のグリース組成物が封入された、転がり軸受。
【請求項8】
基油と増ちょう剤の混合物をロール処理する工程と、
ロール処理された前記混合物に、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種からなる添加剤を混合する工程とを含む、グリース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物およびその製造方法、ならびに当該グリース組成物が封入された転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置、液晶製造装置、電子計算機、プリント基板製造装置等の製品は、異物やホコリ等に敏感なので、クリーンな状態で維持される必要がある。そのため、この種の製品内の潤滑部品に使用される潤滑剤(グリース組成物)には、飛散によって製品を汚染しないようにするため、低発塵性が要求される。
低発塵性グリース組成物として、例えば、特許文献1は、エステル油およびポリ−α−オレフィンからなる基油と、ステアリン酸リチウムおよび12−ヒドロキシステアリン酸リチウムからなる増ちょう剤とを含有するグリース組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−143884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、低発塵性グリースとして、200以下の混和ちょう度を有するものが流通している。
しかしながら、混和ちょう度が200以下であると、せん断を受けても硬さが維持されるため、流動性が悪く、軸受に封入しづらいという不具合もある。
そこで、本発明の目的は、低騒音と低発塵とを両立でき、トルク安定性を発現できると共に、さらに、軸受の生産性の低下を抑制することができるグリース組成物およびその製造方法、ならびに当該グリース組成物が封入された転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための本発明のグリース組成物は、少なくとも基油と増ちょう剤とを含有し、200以下の不混和ちょう度、および250以上の混和ちょう度を有する(請求項1)。
この構成によれば、ロール処理等でせん断を受けたときに軟らかくなり流動性が増すので、例えば、軸受等の潤滑部品に対して容易に封入することができる。そのため、軸受を生産する場合でも、生産性の低下を抑制することができる。
【0006】
一方、不混和ちょう度が200以下であり、静止状態で比較的硬さを維持できるので、飛散による発塵を抑制することもできる。
本発明のグリース組成物では、前記不混和ちょう度と前記混和ちょう度との差が、100以上であってもよい(請求項2)。
この構成によれば、せん断を受けた状態と静止状態との間において、グリース組成物の性状の差を大きくすることができる。
【0007】
本発明のグリース組成物は、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種からなる添加剤を含有していてもよい(請求項3)。
ポリオキシエチレンアルキルアミンは油溶性であるため、基油中に溶解して界面活性剤として作用し易い。その結果、基油と増ちょう剤との相互作用を強め、静止状態のグリース組成物の硬さ(ちょう度)を上げることができる。これにより、低発塵性能を向上することができる。一方、グリセロールモノオレートは非油溶性であるが、基油中に分散して増ちょう剤が形成するネットワークに入りこむことができる。その結果、増ちょう剤の繊維間の相互作用を強め、静止状態のグリース組成物の硬さ(ちょう度)を上げることができる。これにより、低発塵性能を向上することができる。
【0008】
本発明のグリース組成物は、前記添加剤を、0.5質量%〜2質量%含有していてもよい(請求項4)。
この構成によれば、基油および増ちょう剤といったグリース組成物の主成分の配合割合に影響を与えずに、上記した作用効果を発現することができる。
本発明のグリース組成物は、前記基油と前記増ちょう剤の混合物をロール処理した後に、前記添加剤を混合して得られるものであってもよい(請求項5)。
【0009】
この構成によれば、増ちょう剤をロール処理によって基油中に分散させた後に添加剤が混合されるので、当該添加剤をグリース組成物全体に良好に行き渡らせることができる。
本発明のグリース組成物では、前記増ちょう剤の平均粒子径が、10μm以下であってもよい(請求項6)。
この構成によれば、増ちょう剤が基油全体に良好に分散するので、基油と増ちょう剤との相互作用を強めることができる。
【0010】
本発明の転がり軸受(1)には、本発明のグリース組成物(G)が封入されている(請求項7)。
この構成によれば、本発明のグリース組成物が封入されているので、低騒音と低発塵とを両立でき、かつトルク安定性を発現できる転がり軸受を提供することができる。
本発明のグリース組成物の製造方法は、基油と増ちょう剤の混合物をロール処理する工程と、ロール処理された前記混合物に、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種からなる添加剤を混合する工程とを含む(請求項8)。
【0011】
この方法によって、本発明のグリース組成物を製造することができる。また、増ちょう剤をロール処理によって基油中に分散させた後に添加剤が混合されるので、当該添加剤をグリース組成物全体に良好に行き渡らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受を示す断面図である。
図2図2は、軸受回転トルク測定装置の概略図である。
図3図3は、実施例および比較例のちょう度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る転がり軸受1を示す断面図である。
転がり軸受1は、互いの間に環状の領域2を区画する一対の軌道部材としての内輪3および外輪4と、領域2に配置され内輪3および外輪4に対して転動する複数の転動体としてのボール5と、領域2に配置され、各ボール5を保持する保持器6と、領域2に充填されたグリースGと、外輪4に固定されて内輪3と摺接する一対の環状のシール部材7,8とを備えている。
【0014】
各シール部材7,8は、環状の芯金9,9と、この芯金9,9に焼き付けられた環状のゴム体10,10とを有している。各シール部材7,8は、その外周部が外輪4の両端面に形成した溝部11,11に嵌められて固定されており、内周部が内輪3の両端面に形成した溝部12,12に嵌められて固定されている。
グリースGは、両輪3,4間に一対のシール部材7,8で区画された領域2内に略一杯となるように封入されている。
【0015】
次に、グリースGを構成するグリース組成物について詳細に説明する。
本発明のグリース組成物は、基油、増ちょう剤および添加剤を含有している。
基油としては、例えば、合成油、鉱油が使用されるが、好ましくは、合成油が使用される。合成油であれば、不純物が混入していないか、混入していても少ないため、グリース組成物の潤滑性能を向上させることができる。また、分子量や分子構造に応じて、基油の動粘度や流動点を広い範囲で選択することができる。
【0016】
合成油としては、例えば、合成炭化水素油、エステル油、シリコーン油、フッ素油、フェニルエーテル油、ポリグリコール油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、ビフェニル油、ジフェニルアルカン油、ジ(アルキルフェニル)アルカン油、ポリグリコール油、ポリフェニルエーテル油、パーフルオロポリエーテル、フッ素化ポリオレフィン等のフッ素化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、合成炭化水素油が使用される。
【0017】
合成炭化水素油として、さらに具体的には、エチレン、プロピレン、ブテンおよびこれらの誘導体等を原料として製造されたα−オレフィンを、単独または2種以上混合して重合したものが挙げられる。α−オレフィンとしては、好ましくは、炭素数6〜20のものが使用され、さらに好ましくは、1−デセンや1−ドデセンのオリゴマーであるポリ−α−オレフィン(PAO)が使用される。
【0018】
鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、中間基系鉱油等が挙げられる。
基油の物性については、特に制限されないが、例えば、動粘度(JIS K 2283に準拠)は、好ましくは、20mm/s〜50mm/s(40℃)であり、さらに好ましくは、30mm/s〜50mm/s(40℃)である。
【0019】
また、基油の配合量は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、75質量%〜85質量%である。
増ちょう剤としては、好ましくは、ウレア系化合物が使用される。ウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ポリウレア化合物(ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物を除く)等のウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン等のウレタン化合物またはこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、ジウレア化合物が使用され、さらに好ましくは、脂肪族アミンと、ジイソシアネート化合物とを反応させて得られるジウレア化合物が使用される。この組み合わせのジウレア化合物であれば、グリース組成物の耐熱性を向上させることができる。
【0020】
脂肪族アミンとしては、炭素鎖長が10以下であるものが挙げられ、例えば、ヘキシルアミン(炭素鎖長が6)、ヘプチルアミン(炭素鎖長が7)、オクチルアミン(炭素鎖長が8)、ノニルアミン(炭素鎖長が9)、デシルアミン(炭素鎖長が10)等が挙げられる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、飽和および/または不飽和の直鎖状、または分岐鎖の炭化水素基を有するジイソシアネートが挙げられ、具体的には、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート(HDI)等が挙げられる。また、脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、芳香族ジイソシアネートが使用され、さらに好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が使用される。すなわち、増ちょう剤として好ましくは、脂肪族アミン(炭素鎖長が10以下)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)との組み合わせからなる脂肪族ジウレアが使用される。
【0021】
そして、アミンとジイソシアネート化合物は、種々の方法と条件下で反応させることができる。増ちょう剤の均一分散性が高いジウレア化合物が得られることから、基油中で反応させることが好ましい。また、反応は、アミンを溶解した基油中に、ジイソシアネート化合物を溶解した基油を添加して行ってもよいし、ジイソシアネート化合物を溶解した基油中に、アミンを溶解した基油を添加して行ってもよい。これらの反応における温度および時間は、特に制限されず、通常のこの種の反応と同様でよい。反応温度は、アミンおよびジイソシアネートの溶解性、揮発性の点から、60℃〜170℃が好ましい。反応時間は、アミンとジイソシアネートの反応を完結させるという点と製造時間短縮による効率化の点から0.5〜2.0時間が好ましい。
【0022】
増ちょう剤の平均粒子径は、好ましくは、10μm以下、さらに好ましくは、5μm〜8μmである。増ちょう剤の平均粒子径は、例えば、レーザー回折法、動的光散乱法、画像イメージング法、重力沈降法等の公知の測定方法によって測定してもよい。増ちょう剤の平均粒子径が上記の範囲であれば、増ちょう剤が基油全体に良好に分散するので、基油と増ちょう剤との相互作用を強めることができる。
【0023】
また、増ちょう剤の配合量は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、15質量%〜25質量%である。
添加剤としては、必須成分として、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートの少なくとも一種が挙げられ、任意成分として、例えば、極圧剤、油性剤、防錆剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、染料、色相安定剤、増粘剤、構造安定剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0024】
ポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレン牛脂プロピレンジアミン、ポリオキシエチレンステアリルプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンN−シクロヘキシルアミン、ポリオキシエチレンメタキシレンジアミン、ドデシルジオキシエチルアミン、テトラデシルジオキシエチルアミン、オクタデシルジオキシエチルアミン、16−オキシヘプタデシルジオキシエチルアミン、オクタデシルオキシエトキシエチルアミン、17−オクタデセニルジオキシエチルアミン、1−メチルヘプタデシルジオキシエチルアミン等が挙げられる。例えば、市販品としては、ADEKA社製の「アデカキクルーブFM−812」等を使用できる。
【0025】
グリセロールモノオレートは、例えば、市販品として、ADEKA社製の「アデカキクルーブFM−210」等を使用できる。
また、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよび/またはグリセロールモノオレートの配合量(併用する場合は総量)は、グリース組成物全量に対して、好ましくは、0.5質量%〜2質量%である。
【0026】
上記のように、添加剤としてポリオキシエチレンアルキルアミンおよび/またはグリセロールモノオレートを用いる理由は次の通りである。つまり、ポリオキシエチレンアルキルアミンは油溶性であるため、基油中に溶解して界面活性剤として作用し易い。その結果、基油と増ちょう剤との相互作用を強め、静止状態のグリース組成物の硬さ(ちょう度)を上げることができる。これにより、低発塵性能を向上することができる。一方、グリセロールモノオレートは非油溶性であるが、基油中に分散して増ちょう剤が形成するネットワークに入りこむことができる。その結果、増ちょう剤の繊維間の相互作用を強め、静止状態のグリース組成物の硬さ(ちょう度)を上げることができる。これにより、低発塵性能を向上することができる。
【0027】
そして、本発明のグリース組成物を製造するには、例えば、まず基油および増ちょう剤を混合して攪拌する。次に、当該混合物をロールミル等に通すことによってロール処理(ロール掛け)する。ロール処理後、混合物に、必須成分としてのポリオキシエチレンアルキルアミンおよび/またはグリセロールモノオレート、さらに必要に応じてその他の添加剤を加えて、撹拌する。このように、増ちょう剤をロール処理によって基油中に分散させた後に添加剤を混合することで、当該添加剤をグリース組成物全体に良好に行き渡らせることができる。以上の工程を経て、上記のグリース組成物を得ることができる。
【0028】
以上のように得られるグリース組成物(グリースG)は、200以下の不混和ちょう度、および250以上の混和ちょう度を有している。
したがって、図1においてグリースGが、内輪3および外輪4とボール5との間の摺動によってせん断される場合でも、当該粗大粒子に起因する音響特性やトルク安定性の低下を低減することができる。また、混和ちょう度が250以上であることにより、ロール処理等でせん断を受けたときに軟らかくなり流動性が増すので、例えば、転がり軸受1に対して容易に封入することができる。そのため、転がり軸受1を生産する際の生産性の低下を抑制することができる。
【0029】
一方、不混和ちょう度が200以下であり、静止状態で比較的硬さを維持することができる。そのため、例えば、グリースGのうち、内輪3および外輪4とボール5との界面(摺動面13)から離れている外側領域14においては、ボール5の摺動によるせん断の影響が少なく、摺動面13の近傍の内側領域15に比べて硬く維持することができる。その結果、内側領域15が、せん断を受けて軟らかくなり流動性が増しても、当該外側領域14が蓋のような役割を担い、流動性の増したグリースGの飛散を阻止し、発塵を抑制することができる。さらに、グリースGにおいて不混和ちょう度と混和ちょう度との差を100以上としておけば、せん断を受けた状態と静止状態との間において、グリースGの性状の差を大きくすることができる。これにより、せん断を受け易い内側領域15と、静止状態の外側領域14との間の性状の差が顕著となる。したがって、摺動面13には、流動性が高く潤滑性能に優れるグリースGを主に内側領域15から供給しつつ、そのグリースGの飛散を外側領域14で抑制することができる。
【0030】
そして、上記のような効果を、増ちょう剤の量を大幅に変えずに達成することができるので、基油および増ちょう剤といったグリース組成物の主成分の配合割合に影響を与えずに済む。そのため、基油の量を潤滑に適した量に維持できるので、転がり軸受1の接触部(摺動面13)に長期に亘って基油を供給することができる。その結果、グリースGの寿命を長くすることができる。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施形態に制限されることなく、他の実施形態で実施することもできる。
例えば、上記の実施形態では、(複列)玉軸受によって構成された転がり軸受1にグリース(G)が封入された例を説明したが、本発明のグリース組成物からなるグリースが封入される軸受は、転動体として玉以外のものが使用された針軸受、ころ軸受等、他の転がり軸受であってもよい。
【0032】
また、必須成分の添加剤としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンおよびグリセロールモノオレートに限らず、グリース組成物の不混和ちょう度を200以下にし、混和ちょう度を250以上に調整できる添加物であれば、これら以外の添加物を使用してもよい。
また、上記の実施形態では、基油と増ちょう剤を予めロール処理した後に添加剤を混合したが、基油、増ちょう剤および添加剤を先に混合し、その後にロール処理を行ってもよい。
【0033】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって制限されるものではない。
実施例1〜2および比較例1〜2
<グリースの配合>
各実施例および各比較例について表1に示す配合割合で、基油および増ちょう剤を配合してロール処理した後、添加剤を混合・攪拌することによって、試験用グリース組成物を調製した。得られた試験用グリース組成物に対して、次に示す評価を行った。評価結果を表1および図3に示す。表1において、基油の動粘度はJIS K 2283に準拠して測定された値である。また、Mo−DTCはジアルキルジチオカルバミン酸モリブデンを示し、Zn−Stはステアリン酸亜鉛を示している。
<評価>
(I)グリースのちょう度
各試験用グリース組成物の不混和ちょう度および混和ちょう度を、JIS K 2220に準拠して測定した。
(II)グリースの軸受回転トルクの測定
冠型樹脂保持器を有する非接触シール付の深溝玉軸受6202に、試験用グリース組成物を空間容積比35%で封入したものを2個使いで評価した。また、基油は0.11gを玉に滴下して用いた。そして、図2に示す測定装置を用い、アキシアル予圧(軸負荷)を44N負荷し、室温にて1800r/mで内輪を回転させたときにハウジングに作用する接線力をロードセルで測定し、ハウジング外径寸法から回転トルクを算出した。なお、評価時間は1800sec.とした。
【0035】
【表1】
【0036】
表1によれば、実施例1および2によって、比較例1〜3と同等のトルク性能を達成しながら、比較例1および2では達成できない低発塵を達成できることが分かった。
【符号の説明】
【0037】
1…転がり軸受、G…グリース
図1
図2
図3