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特開2016-222913ガラス様表面を有する高分子化合物基板、および前記高分子化合物基板で作られたチップ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222913(P2016-222913A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ガラス様表面を有する高分子化合物基板、および前記高分子化合物基板で作られたチップ
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20161205BHJP
   C08J 7/06 20060101ALI20161205BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C08J7/00 307
   C08J7/06 ZCEZ
   C08J7/00 306
   C08J7/00 304
   C08J7/04 UCER
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-109863(P2016-109863)
(22)【出願日】2016年6月1日
(62)【分割の表示】特願2013-521019(P2013-521019)の分割
【原出願日】2011年8月1日
(31)【優先権主張番号】10007998.7
(32)【優先日】2010年7月30日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595044111
【氏名又は名称】ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】フュールマン ゲルダ
(72)【発明者】
【氏名】ネレス ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】ロゼリ シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】クノール ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】パリス アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン マリア
(72)【発明者】
【氏名】バウアー ゲオルク
【テーマコード(参考)】
4F006
4F073
【Fターム(参考)】
4F006AA12
4F006AA22
4F006AB12
4F006AB19
4F006AB32
4F006AB39
4F006AB67
4F006AB74
4F006AB76
4F006CA09
4F006DA01
4F006EA01
4F006EA03
4F006EA04
4F073AA06
4F073AA28
4F073BA06
4F073BA18
4F073BB01
4F073CA01
4F073CA45
4F073CA49
4F073EA11
4F073EA31
4F073EA41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物工学的な応用のためのチップの効率的な製造方法の提供。同様に、生物工学的な応用のための効率的なアッセイ系の製造方法の提供。
【解決手段】高分子化合物基板の表面に、SiOx前駆体をコーティングし、前記SiOx前駆体をSiOxに変換し、さらに酸素プラズマで後処理する。高分子化合物基板表面に、コーティング材料をコーティングすること、コーティング材料は、高分子化合物であり、および/または高分子化合物基板またはコーティング表面へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または高分子化合物基板またはコーティング表面へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または表面に粗さおよび親水性を導入するための高分子化合物基板またはコーティング表面への反応性イオンエッチング(RIE)により、ガラス様表面の形態を高分子化合物基板の前記表面に付与。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス様表面を有する高分子化合物基板の提供方法であって、
a)固体基板であり、かつ流路、溝、くぼみ、またはホールを基板の表面上に有する高分子化合物基板を提供すること、
および以下の手段のうちの一つから成る、高分子化合物基板の提供方法。
b1)前記高分子化合物基板の表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記高分子化合物基板の表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマで後処理すること、
b3)i)前記高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記高分子化合物基板の表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、高分子化合物であり、および/または
ii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板の前記表面へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、b1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティング
ロールツーロール堆積
スクリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティング
ダイナミックコーティング
または、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる。
【請求項2】
b2)における変換手段は、
アニーリング、
電磁波の照射
水、塩基、酸、水および塩基の組み合わせ、または水および酸の組み合わせの溶液による処理
のうちの一つにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SiO前駆体は、
i)アルコキシまたはアルキルクロロシラン、SiX、Siから構成されるトリシロキサンであって、Xは互いに独立して、ORまたはハロゲンであり、Rはアルキル基であるもの、
ii)ポリシラザン、
iii)溶媒の基質に懸濁したSiOx粒子を含むゾルゲル、
を含むグループから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
b1)〜b3)のステップは、前記SiO、SiO前駆体またはコーティング材料と一緒に、追加材料が前記高分子化合物基板の前記表面にコーティングされ、前記追加材料は、Si、Al、B、TiO、NaO、CaO、KO、SO、MgO、Fe、SiO(xは2より小さい)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
増大した粗さおよび/または固有の多孔性を有する前記コーティング材料は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ならびに置換されたアセチレンポリマーのグループから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
c)後処理を前記基板に行うステップをさらに含み、
前記c)は、
乾燥
水洗
焼き戻し
焼結
溶媒処理
プラズマ処理
反応性イオンエッチング
紫外線オゾン洗浄機による処理
および上記の組み合わせのうちの一つまたは複数である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第1の高分子化合物基板に行われ、前記第1の高分子化合物基板は、少なくとも第1のガラス様表面を持って提供され、前記方法は、接着するステップをさらに含み、
前記接着するステップは、前記第1のガラス様表面を第2の基板と接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の基板は、固体基板であるか、または柔軟な箔である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基板は、合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板、またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物から選択された材料で形成された基板である、
あるいは前記第2の基板が柔軟な箔である場合は、前記第2の基板は、樹脂材料で形成され、前記樹脂材料は、任意に、無機材料が充填される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の基板および前記第2の基板の両方は、流路、溝、くぼみ、またはホールを基板上に有する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb1)〜b3)の少なくとも1つが、前記第1の高分子化合物基板、および少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第2の高分子化合物基板で行われ、任意に、第3および/またはさらなる合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板にて行われ、前記第1および第2の高分子化合物基板、および存在するならば、前記第3およびさらなる高分子化合物基板は、前記接着するステップによって連続して互いに接着される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子化合物基板の一つ、二つ、またはそれ以上は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板上に有する、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
チップの製造方法であって、
A)合成品または自然由来の高分子化合物で形成された、固体基板である少なくとも第1の高分子化合物基板、および第2の基板を提供し、前記第2の基板は、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固体基板であるか、または柔軟な箔であって、少なくとも前記第1の基板は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板の表面上に有すること、
B1)以下のステップb1)〜b3)の1つを前記第1の基板で行い、連続して、以下の接着ステップd)を行うこと、
b1)前記第1の高分子化合物基板の前記表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマ処理すること、
b3)i)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記第1の高分子化合物基板の前記表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、高分子化合物であり、および/または
ii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記第1の前記高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、ステップb1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティング
ロールツーロール蒸着
スクリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティング
ダイナミックコーティング
または、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる、
d)前記第1のガラス様表面を前記第2の基板の表面に接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、
B2)前記第1および前記第2の基板を互いに接触させて用意し、ステップd)によって、前記第1および第2基板の組立品を形成するために互いを接着し、連続して、ステップb1)〜b3)の1つを前記組立品に行うこと、
前記方法は、A)と、B1)またはB2)のいずれかとを含む、チップの製造方法。
【請求項14】
A)のステップは、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固体基板であるか、または柔軟な箔である基板を複数枚、提供することを含み、また、B1)またはB2)のステップは、前記複数枚の基板に行われ、チップは、お互いに積み重ねた複数枚の基板からなる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス様および/またはエッチングガラス様表面を有する高分子化合物基板、および少なくとも一つの上記高分子化合物基板で作成されたチップに関する。同様に、本発明は、ガラス様および/またはエッチングガラス様表面を有する高分子化合物基板、および少なくとも一つの上記高分子化合物基板で作成されたチップを提供する方法に関する。さらに、本発明は、チップ製造のためのガラス様表面を有する高分子化合物基板の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化されたプラットフォームによる分析操作の統合は、「ラボオンチップ」構想として、マンツおよびウィドマーによりすでにここ10年間説明されてきた(D.J.Harrison,A.Manz,Z.Fan,H.Luedi,H.M.Widmer,Anal.Chem.64,1992,1926)。2、3例を挙げるならば、マイクロ流体システム、センサー、アレイ(いわゆるバイオチップ)、チップ上での化学合成を含む上記のマイクロチップシステムは、少ないサンプル量、少エネルギー消費を可能とし、多様な化学反応、早い分離および早い検出時間を可能とした。
【0003】
この構想が現れて以来、この領域は急速に成長し、新しい分析分野および新規な材料の応用に関しての発展はいくつかの総説にまとめられている(D.R.Reyes, D.Iossifidis, P.A.Auroux, A.Manz, Anal.Chem.74,2002,2623; P.A.Auroux, D.Iossifidis, D.R.Reyes, A.Manz, Anal.Chem.74,2002,2637)。
【0004】
これらのマイクロシステムチップ、マイクロ流体チップまたはマイクロチップは、ほとんどにおいて、良好な光学特性(450−700nmの範囲の透過性、低い自家蛍光性)および化学的不活性のためにガラス、シリコン、溶融石英基板材料で用意される。しかしながら、これらの材料に基づいた素子は、エッチングマスクの形成、フォトリソグラフィおよび基板エッチングを含む半導体の微細加工技術を使用して製造されるために、高価である。そのため、代替材料が研究されており、特に、代替材料として例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタラート(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリイミド(PI)などの様々な高分子化合物が、より安い費用、生体分子との親和性、光透過性、複製戦略の数および廃棄可能性のため研究されている(H.Becker, L.E.Locascio Gartner, Talanta,56,2002,267)。
【0005】
微小の流路における流体の流れは、通常、流体の固有の特性、例えば、粘度により決定される。例えば、微小な毛細管を有するマイクロ流体チップだけでなく、高い処理能力のアレイ形式などの微小システムにおいて、古典的な巨視的システムと比べて大きい表面積対体積率、および材料と流体の相互作用が材料のバルクの特性ではなく表面で決定されるという事実により、表面特性および表面効果は重要な役割を果たす。したがって、上記チップの良好な性能のための主たる要件は、明確に定義され均質な流路形状および表面特性である。
【0006】
基板材料を樹脂に変更する際の一つの主要な障害は、新しい基板材料の表面特性の差異および結果として生じる検体との相互作用の差異である。例えば、ほとんどの高分子化合物材料で製造したマイクロ流体素子の一般的な問題は、分離プロセス中において、特に、例えばタンパク質などの分子の検体、または例えば、タンパク質分離ゲルに用いられ、疎水性である高分子化合物表面に向く疎水性側を持つドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤の検体の流路壁への吸収である。これは結果としてサンプルの損失だけでなく、分離能の低下につながる電気浸透流または検体−壁の相互作用の変化をもたらす。他のマイクロチップ分析システム、例えば、酵素反応器または生化学アッセイプラットフォームなどにおいては、試薬とバイオプローブとの効率的な結合が最も重要である。もう一つの問題は、電気泳動の測定結果を妨害する可能性がある強化された電気浸透流層をもたらす、流路表面からの検体の基質成分の分離である。
【0007】
したがって、高分子化合物材料の表面改質および表面処理は、生体検体の壁への非特異的な吸収を制御するために行われる。表面改質の方法は、ダイナミックコーティング(非永続)、共有(化学的)結合性のパーマネントコーティングを含む(J.Liu, M.L.Lee, Electrophoresis,2006,27,3533−3546; D.Belder, M.Ludwig, Electrophoresis,2003,24,3595−3606)。報告されているのは、同様に、プラズマ、電子ビームまたはイオンビームを用いた高分子化合物基板の表面改質である。これらの改質は、永続的であると見なされているが、しかし、いくつかの特性、例えば親水性は時間によって安定していない。
【0008】
ダイナミックコーティングは実施するには便利な改質である。この場合、例えば、流路をすすぐことにより、表面活性なコーティング材料または表面改質剤が表面と接触させられる。このコーティング材料は、表面に物理吸着する。しかしながら、多くの応用において、動的な表面改質の潜在力は、使用の間の表面特性の再変化をもたらす最終的な高分子化合物表面からの脱離のために限られる。さらに、脱離した表面改質剤は、同様に検体と相互作用しうる。
【0009】
そのため、永続的な表面改質が、最も効果的な表面改質の手段と見なされている。理想的には、改質は安定であり、再生の必要はない。しかしながら、改質が特定の化学反応または処理を必要とするため、しばしば生産工程がより労働集約的になってしまう。
【0010】
素子を用意するために高分子化合物材料を使用することができる場合は、アッセイは同様に生物工学的な応用となる。ガラスにおいて発展してきた移動分析の化学は、疎水性である樹脂表面のぬれを確保するために、またはタンパク質または他の生体分子の疎水性の表面への接着を避けるために、しばしば界面活性剤を添加することを要求する。上記物質は、タンパク質または他の生体分子の変性を導きうるため、上記界面活性剤を添加することは、逆にアッセイの性能に影響を与える。界面活性剤または他の表面活性物質の存在により、大きなタンパク質分子は容易にそれらの機能性を失い得る。界面活性剤または疎水性である樹脂表面への曝露により、細胞または細胞片は最も容易に損傷または破壊されることも同様に言及しなくてはならない。上記の例のいずれも、タンパク質または生体分子、大きなタンパク質集合または細胞および細胞片は、自然環境の中とは非常に異なる振る舞いをする可能性がある非自然な環境にさらされていることを表している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、生物工学的な応用のためのシステムを容易に安価で製造することを可能とし、さらに同時にガラス基板の有利な特性を提供する材料が必要とされている。よって、本発明の目的は、多様な応用、特に、生物工学的な応用のためのチップの効率的な製造方法を提供することである。同様に、本発明の目的は、特に生物工学的な応用のための効率的なアッセイ系の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本目的は、ガラス様表面、特にエッチングガラス様表面を有する高分子化合物基板であって、前記ガラス様表面、特に前記エッチングガラス様表面は、ガラス表面、特にエッチングガラス表面を、化学物質含有量、化学組成、化学構造、均質性、粗さ、形態、特に多孔性、親水性、表面エネルギー、吸着親和性、表面機能性、化学的および物理的表面反応性、ゼータ電位および表面電荷のうちの一つ又は複数において模倣した高分子化合物基板により解決される。
【0013】
一実施形態において、前記表面は、粗さおよび親水性を増大させるためにプラズマ処理および/または反応性イオン処理によって改質されたか、および/または、前記表面はシリコン酸化物薄膜であるか、および/または、前記表面は増大した固有の粗さおよび/または固有の多孔性および/または増大した親水性を有する高分子化合物薄膜である。
【0014】
一実施形態においては、前記高分子化合物基板は、合成品または自然由来の高分子化合物であって、好ましくは、射出形成された高分子化合物、より好ましくは、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩、ならびにそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体を含む材料分類の一つであって、より具体的には、アクリロニトリルスチレンブタジエン(ABS)、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマー(COC/COP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、およびそれらの誘導体を含むリストのうちの一つであり、前記高分子化合物は、任意に、例えばカーボンブラック等の無機材料、例えば特に金属酸化物であってSiO、Al、TiO、ZrO、Fe等の酸化物、例えばいくつか例を挙げるとZnS、CdS,CdSeなどの半導体が充填される。上記の充填された高分子化合物の例は、TiOで充填されたシクロオレフィンである。
【0015】
本発明の目的は、同様に、ガラス様表面、特にエッチングガラス様表面を有する高分子化合物基板の提供方法により解決され、前記提供方法は、
a)高分子化合物基板、より好ましくは本発明による高分子化合物基板材料で作られた高分子化合物基板を提供することと、
以下の手段のうちの一つと、から成る。
b1)前記高分子化合物基板の表面に、xは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること。
b2)前記高分子化合物基板の表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換すること。
b3)ガラス様表面の形態、特にエッチングガラス様表面の形態を前記高分子化合物基板の表面に与えることであって、
前記高分子化合物基板の表面に、未コーティングの前記高分子化合物基板の表面と比較して増大した粗さを持つ材料および/または増大した親水性を持つ材料をコーティングすることであって、前記コーティング材料は、好ましくは高分子化合物である、および/または、
前記表面に粗さおよび親水性を導入するために、プラズマ処理、および/または反応性イオンエッチング(RIE)および/または前記高分子化合物基板表面または前記コーティングされた高分子化合物基板への紫外線オゾン洗浄機による処理を行うことであって、より好ましくは、アルゴン、酸素、水、水素、フッ素化メタンガス、例えばCF、CHF、CHまたは前述のガスの混合物もしくは順次使用などを使用すること。
b4)b1)、b2)およびb3)の任意の順序の組み合わせである。
【0016】
一実施形態において、プラズマ処理は、0.1kHz〜100GHzの範囲の周波数で行われる。一実施形態において、エッチングガラス様表面の形態は、同様にプラズマ処理と反応性イオンエッチングの連続的な使用により達成される。一実施形態において、プラズマ処理は、1kHz〜999kHzの範囲の周波数で行われる。他の実施形態において、プラズマ処理は、1MHz〜999MHzの範囲の周波数で行われる。さらに他の実施形態において、プラズマ処理は、1GHz〜100GHzの範囲の周波数で行われる。一実施形態において、プラズマ処理は、単一のまたは複数のステップであるプラズマ処理を含む。本明細書において「Ar/Oプラズマ」とは、一実施形態においてアルゴンを使用したプラズマ処理の後に、続けて酸素を使用したプラズマ処理を行うこと、またはその逆であることを示している。他の実施形態において、上記語句はアルゴンと酸素の混合物を使用した単一のステップによるプラズマ処理を示していてもよい。さらに他の実施形態においては、上記語句は、アルゴンを使用したプラズマ処理の単一のまたは複数のステップの後に、続けて酸素を使用したプラズマ処理の単一のまたは複数のステップを行うこと、またはその逆であることを示している。
【0017】
一実施形態において、プラズマ処理は、Ar/Oプラズマ処理である。
【0018】
一実施形態において、プラズマ処理は、Ar/紫外線オゾン処理である。
【0019】
本明細書において「Ar/紫外線オゾン処理」とは、一実施形態においてアルゴンを使用したプラズマ処理の後に、続けて紫外線オゾン処理を行うこと、またはその逆であることを示している。他の実施形態において、上記語句は、アルゴンを使用したプラズマ処理と紫外線オゾン処理を単一のステップで同時に行うことを示していてもよい。さらに他の実施形態において、上記語句は、アルゴンを使用したプラズマ処理の複数のステップの後に、続けて紫外線オゾン処理の複数のステップを行うこと、またはその逆であることを示している。さらに他の実施形態において、上記語句は、アルゴンを使用したプラズマ処理の単一のまたは複数のステップの後に、続けて紫外線オゾン処理の単一のまたは複数のステップを行うこと、またはその逆であることを示している。
【0020】
一実施形態において、b1)、b2)および/またはb3)は、物理蒸着法により行われ、例えば、
熱蒸着(物理気相蒸着)
電子線(Eガン)蒸着
スパッタ法
化学的蒸着(CVD)
表面上の膜成長、例えば、化学めっき法または電気化学析出
スプレーコーティング
ディップコーティング
気相成長
ロールツーロール蒸着
スクリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティング
ダイナミックコーティング
CVD
または、前述のいくつかの方法の組み合わせである。
【0021】
一実施他形態においては、b2)の変換手段は、
アニーリング、好ましくは熱アニーリング、
電磁波、例えば赤外線または紫外線の照射、好ましくは紫外線の照射
水、塩基、酸、水および塩基の組み合わせ、または水および酸の組み合わせの溶液による処理
のうちの一つにより行われる。
【0022】
一実施形態において、前記SiO前駆体は、
i)アルコキシまたはアルキルクロロシラン、SiX、Siから構成されるトリシロキサンであって、Xは互いに独立して、ORまたはハロゲンであり、Rはアルキル基であり、アルキル基は好ましくはC〜C20のアルキル基、より好ましくはエチル基またはメチル基であるもの、
ii)ポリシラザンであって、例えば、ペルヒドロポリシラザン、nは3〜10000から選択される−[Si(H)−N(H)−]、またはRはアルキル基であり、アルキル基は好ましくはC〜C20のアルキル基であり、nは3〜10000から選択されるポリオルガノシラザン−[Si(R)−N(R)−]
iii)SiOx粒子を含むゾルゲルであって、前記粒子は、好ましくは約1nm〜10μmの直径を有し、より好ましくは10nm〜100nmであり、前記粒子は、溶媒の基質に懸濁され、好ましくは、溶媒はアルコールであり、より好ましくは、溶媒はエタノールであるもの、
を含むグループから選択される。
【0023】
一実施形態において、b1)〜b3)のステップは、前記SiO、SiO前駆体または高分子化合物と一緒に、追加材料が前記高分子化合物基板の前記表面にコーティングされ、前記追加材料は、Si、Al、B、TiO、NaO、CaO、KO、SO、MgO、Fe、SiO(xは2より小さい)である。
【0024】
一実施形態において、増大した粗さおよび/または固有の多孔性を有する前記コーティング材料は、特に前記高分子化合物であって、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、例えば2,2−ビストリフルオロメチル‐4,5‐ジフルオロ1,3‐ジオキサレートフルオロエチレン共重合体(デュポン社のテフロンAF2400)、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ならびに、ポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン](PTMSP)、ポリ[1‐(トリメチルゲルミル)‐1‐プロピン]、ポリ(4−メチル―2−ペンチン)、ポリ[1‐フェニル‐2‐(p‐トリメチルシリルフェニル)アセチレン]およびポリ[2,4,5‐トリス(トリフルオロメチル)‐フェニルアセチレン]のような置換されたアセチレンポリマーのグループから選択される。
【0025】
本明細書において「ナフィオン」とは、フッ素樹脂の共重合体を基にしたスルホ化されたテトラフルオロエチレンを示す。ナフィオンにおいて、末端がスルホ基で修飾されたペルフルオロビニルエーテル類は、テトラフルオロエチレン(テフロン)骨格に組み込まれている。スルホン酸官能基は、数ナノメートルの直径を有する親水性の水路に自己組織化する。
【0026】
一実施形態において、前記提供方法は、
c)後処理を前記基板に行うステップをさらに含み、
前記c)は、
乾燥
水洗
焼き戻し
焼結
溶媒処理
プラズマ処理
反応性イオンエッチング
紫外線オゾン洗浄機による処理
および上記の組み合わせのうちの一つまたは複数からなる。
【0027】
本明細書において「紫外線オゾン洗浄機による処理」または「紫外線オゾン処理」とは、一般的に180nm〜260nmの範囲の短波長の紫外線照射を含む処理を示しており、通常、同様に、上記範囲内の数種類の二つ以上の異なる波長が使用される。上記照射は、基板の汚染物質と反応する酸素原子およびオゾンのその場での(in−situ)生成を導く。したがって、紫外線オゾン洗浄機処理は、表面の洗浄効果をもたらす。
【0028】
本発明に係る方法は、同様に、コーティングのステップが行われる前に基板に対して行われる、一つまたは複数の「前処理」ステップを含んでもよい。上記前処理は、プラズマ処理、熱処理、薬品の曝露、および化学官能基を与えることによる基板表面の活性化などであってもよい。上記前処理ステップは、その後に行われる後続の工程を容易にし、基板の品質を改善することができる。
【0029】
一実施形態において、前記提供方法は、少なくとも上記で定義したような第1の高分子化合物基板に行われ、前記第1の高分子化合物基板は、その結果、少なくとも第1のガラス様表面、特に第1のエッチングガラス様表面を持って提供される。ここで、前記提供方法は、さらに接着するステップを含み、
第2の基板と接触した前記第1のガラス様表面、特に第1のエッチングガラス様表面とし、好ましくは0.2N/mm〜5N/mmの範囲、より好ましくは0.5N/mm〜1N/mmの範囲の圧力で、10秒〜600秒の範囲、より好ましくは30秒〜120秒の範囲の時間、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲、より好ましくは60℃〜120℃の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する。
【0030】
一実施形態において、前記第1の高分子化合物基板は、固体基板であって、前記第2の基板は、固体基板であるか、または柔軟な箔である。
【0031】
一実施形態において、前記第2の基板は、上記で定義された材料で形成された高分子化合物基板、またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物から選択された材料で形成された基板であって、前記第2の基板が柔軟な箔である場合は、前記第2の基板は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩およびそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体を含む材料で形成され、より具体的には、アクリロニトリルスチレンブタジエン(ABS)、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマー(COC/COP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、およびそれらの誘導体を含むリストのうちの一つで形成され、上記の高分子化合物は、任意に、例えばカーボンブラック等の無機材料、例えば特に金属酸化物であってSiO、Al、TiO、ZrO、Fe等の酸化物、例えばZnS、CdS,CdSe等の半導体が充填される。
【0032】
一実施形態において、前記第1の基板および前記第2の基板の一つまたは両方は、流路、溝、くぼみ、またはホールを基板上に有し、好ましくは、前述の流路等は第1および第2のガラス様表面間の接触面に導管を形成し、より好ましくは、前記導管は、前記第1または第2の基板の一端から他端に延びて、または基板の一方にある一ホールから前記基板の一方にある他ホールに延びており、したがって、前記導管を通って液体の流れが形成される。
【0033】
一実施形態において、本発明に係る方法は、前記第1の高分子化合物基板、および少なくとも本発明に係る材料で形成された第2の高分子化合物基板で行われ、任意に、第3および/またはさらなる本発明に係る材料で形成された高分子化合物基板にて行われ、前記第1および第2の高分子化合物基板、およびこの場合、前記第3およびさらなる高分子化合物基板は、上記で定義した接着するステップによって後に互いに接着される。
【0034】
一実施形態において、前記呼分子化合物基板の一つ、二つ、またはそれ以上は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板上に有し、好ましくは、前述の流路等は前記基板の接触面に導管を形成し、より好ましくは、前記導管は、前記基板の一端から他端に延びて、または基板の一方にある一ホールから前記基板の一方にある他ホールに延びており、したがって、前記導管を通って液体の流れが形成される。
【0035】
本発明の目的は、同様に、チップ、好ましくは、マイクロ流体チップの製造方法により解決され、
a)少なくとも上記で定義された材料で形成された第1の高分子化合物基板、および第2の基板を提供し、前記第2の基板は、固体基板または箔であって、上記で定義された高分子化合物材料で形成されるか、またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物から選択された材料で形成されるか、または前記第2の基板が柔軟な箔である場合は、前記第2の基板は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩およびそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体を含む材料で形成され、より具体的には、アクリロニトリルスチレンブタジエン(ABS)、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマー(COC/COP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)を含むリストのうちの一つで形成され、前記第1および第2の基板の少なくとも一つは、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板上に有すること、
b1)本発明に係る製造方法を少なくとも前記第1の基板、好ましくは前記第1および第2の基板で行い、連続して、その上で上記にて定義された接着するステップを行うこと、
b2)前記第1および前記第2の基板を互いに接触させて用意し、上記で定義された接着するステップによって、前記第1および第2基板の組立品を形成するために互いを接着し、連続して、本発明に従ってガラス様表面をもつ高分子化合物基板の提供方法を前記組立品、特に前記組立品中に形成された導管に行うこと、
前記製造方法は、a)と、b1)またはb2)のいずれかとを行うことを含む。
【0036】
一実施形態において、a)のステップは、本発明に係る基板を複数枚、提供することを含み、また、b1)またはb2)のステップは、前記複数枚の基板に行われ、したがって、チップは、お互いに積み重ねた複数枚の基板からなる。
【0037】
本発明の目的は、同様に、本発明に係るガラス様表面を有する高分子化合物基板を提供する方法により生産された高分子化合物基板によって解決される。
【0038】
本発明の目的は、同様に、二つの基板からなるチップ、特にマイクロ流体チップにより解決され、少なくとも一つの基板は、好ましくは少なくとも二つの基板は、本発明に係る上記で定義された高分子化合物基板であって、前記チップは、前記チップを通る少なくとも一つの導管を有し、前記導管は好ましくは最小寸法が <500μmの範囲、より好ましくは <200μmである。
【0039】
一実施形態において、本発明に係るチップは、上記で定義された本発明に係る一つの高分子化合物基板で形成されるか、または、
a)本発明に係る上記で定義されたもう一つの上記高分子化合物基板、
またはb)上記で定義された柔軟な箔であるもう一つの基板、
またはc)ガラス、石英、シリコン窒化物およびシリコン酸化物から選択された材料で形成されたもう一つの基板、
またはd)複数枚の基板であって、前記複数枚の基板は、a)、b)、またはc)で定義された種類の複数枚の基板、またはa)〜c)で定義された種類の基板の組み合わせである複数枚の基板
で形成される。
【0040】
一実施形態において、前記少なくとも一つの導管は、検体の分析、および/または検出、および/または分離、および/または輸送に適した基質で満たされ、検体は、好ましくは生体細胞、または生体高分子、および/またはそれら個別のモノ/オリゴマーであり、例えば核酸、ヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、炭水化物、多糖、オリゴ糖、単糖、脂質、脂肪、および脂肪酸である。
【0041】
一実施形態において、前記基質は、気相、液体、液体またはゲル中の固体粒子の分散状態であり、前記ゲルは、好ましくはポリアクリルアミドゲル、またはアガロースゲル、またはでんぷんゲル、またはスクロースゲルである。
【0042】
本発明の目的は、同様に、本発明に係る製造方法により製造されたチップ、特にマイクロ流体チップにより解決される。
【0043】
本発明の目的は、同様に、チップ、特にマイクロ流体チップの本発明に係る製造方法によるキットにより解決され、前記キットは少なくとも第1の基板および第2の基板からなり、前記第1および第2の基板の少なくとも一方は、流路、くぼみ、溝、ホールを基板上に有し、前記キットは、さらに前記基板上で本発明に係る製造方法を行う一つまたは複数の試薬を含む。
【0044】
一実施形態において、前記第1および第2の基板は、合成された、または自然由来の高分子化合物から選択された材料で形成され、好ましくは、射出形成された高分子化合物であり、より好ましくは、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩、ならびにそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体を含む材料分類の一つであって、より具体的には、アクリロニトリルスチレンブタジエン(ABS)、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマー(COC/COP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、およびそれらの誘導体を含むリストのうちの一つであり、前記高分子化合物は、任意に、例えばカーボンブラック等の無機材料、例えばSiO、Al、TiO、ZrO、Fe等の酸化物であって特に金属酸化物、例えばZnS、CdS,CdSeなどの半導体が充填される。
【0045】
本発明の目的は、同様に、検体の分析、および/または検出、および/または分離、および/または輸送のためのキットにより解決され、検体は、好ましくは、生体高分子およびそれら個別のモノ/オリゴマーであり、前記キットは、本発明に係るチップを含み、および任意で、検体の分析、および/または検出、および/または分離、および/または輸送に必要な、例えばバッファーなどの一つまたは複数の試薬を含む。
【0046】
本発明の目的は、同様に、高分子化合物基板、または検体の分析、検出、分離、および/または輸送を行う方法における本発明に係るチップ、特にマイクロ流体チップの用途により解決され、好ましくは、生体細胞、または生体高分子、および/またはそれら個別のモノ/オリゴマーに対する方法であり、特に、電気泳動法、シークエンス法、検体の検出アッセイ法、またはフローサイトメトリー法である。
【0047】
本明細書において、「アッセイ」とは、生命体または有機体の検体における薬剤、生化学物質、分子、または物質の活性または存在を試験する、または測定する方法を示している。定量的アッセイは、同様に、検体内の物質の量を測定することができる。定性的アッセイは、同様に、生命体、薬剤、生化学物質、分子、または物質の存在を検出することができる。生化学的アッセイおよび免疫学的アッセイは、特化した生化学アッセイの多くの種類のうちのひとつである。他のアッセイは、例えば、酵素活性、抗体検出、幹細胞活性、遺伝子発現、遺伝子型判定、DNA/RNA分析、および競合タンパク質結合などのプロセス測定を行い、すべてのこれら分析は「アッセイ」という語句に包含されることを意味する。
【0048】
本発明の目的は、同様に、検体、好ましくは生体高分子および/またはそれら個別のモノ/オリゴマーの分析、検出、分離および/または輸送を行う方法により解決され、前述の方法は、
本発明に係るチップまたは高分子化合物基板と、および分析、分離、輸送される検体を含む試料とを、任意の順序で用意することであって、前記チップは、上記で定義した基質を含み、前記高分子化合物基板は上記で定義した基質を含み、
前記試料を前記基質に添加すること、
前記基質に電圧をかけることであって、前記電圧は、前記基質を通した泳動、拡散、および検体の流動を起こすために十分であり、
検体に照射、除去、脱着、イオン化すること、さらに任意に
検体を分析すること
を含む。
【0049】
本発明の目的は、同様に、検体の分析および/または分離および/または輸送のためのチップ、特にマイクロ流体チップの製造のための本発明に係る基板の用途により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下の図が参照される。
図1図1は、Zeonor 1060R上に蒸着された厚さの異なるSiO層(a)、Zeonor 1060R(b)および参照としてのガラスの透過率曲線を示す。透明度は、層の厚さに対して強く依存しない(5nm〜100nm)。
図2図2は、Zeonor 1060R上に異なる方法で被覆されたSiO層の耐久性試験の結果を示す。接触角は、Eガン蒸着の場合において、低い値でより安定している。
図3図3は、適切な流路をその中に持つ基板の例示画像を、SiOでコーティングする前後の流路の大きさと共に示す。
図4図4は、例えば、酸素、水、またはその他で先行してプラズマ処理し、液状のSiO前駆体でシランおよびシロキサンを作用させた機構を示す。
図5図5は、液状のSiO前駆体の例示を示し、a)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、b)オクタクロロトリシロキサン(OTCS)、c)ヒドロキシメチルトリエトキシシラン(TTBS−OH)である。
図6図6は、本発明に係るTEOSでコーティングした高分子化合物基板のAFM画像(形状)であり、表面粗さは、< 0.5nmであり、均質なコーティングが示されている。
図7図7は、基板表面をTEOSでシラン処理したことによるSiOの存在が確認されるXPSの結果を示す。
図8図8は、ウェル基板b、および流路基板cとの接着機構を示し、両基板は、本発明に係るコーティングaがされ、ガラス様および/またはエッチングガラス様表面からなる。結果が、接着したチップdである。
図9図9は、本発明に係る処理がされ、ガラス様、特にエッチングガラス様表面を提供する二つの基板により形成された接着した導管の断面の光学顕微鏡画像を示す。光学顕微鏡画像において観察される構造の変形がなく、したがって、流路/導管の大きさはコーティングおよび接着により変化していない。
図10図10は、本発明に係る処理がされた表面からなる二つの基板の接着により形成された導管の光学顕微鏡画像を示す。流路は、暗色の液体で満たされている。液体の漏れは一切見つけられない。
図11図11は、液状の前駆体であるパーヒドロポリシラザンの構造を示す。
図12図12は、NHOH蒸気で処理した後、パーヒドロポリシラザンでコーティングした基板のAFM画像を示し、均質なコーティングを示している。
図13図13は、NHOH蒸気で処理し、パーヒドロポリシラザンでコーティングした導管の光学顕微鏡画像を示す。コーティングは、マイクロメートル規模の導管の大きさを変化させていない。
図14図14は、ポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン](PTMSP)でコーティングしたCOC基板のFTIR吸収スペクトルを示し、COCのバックグラウンド吸収は差し引かれている。コーティングの存在は、PTMSPの化学基の吸収の特有な存在によって確認される。
図15図15は、試料に接触させた通常の導体であるAFMプローブに1秒の電圧パルスを加えることによって帯電させたPTMSP薄膜(a)、ガラス(b)、COC(c)、ポリシラザンでコーティングされたCOC(d)におけるケルビンプローブフォース顕微鏡による走査を示す。(a)および(b)における強い帯電(白領域)は、水イオンが薄膜の体積を貫通することができることを示し、ガラス薄膜(b)において観察される帯電と類似している。未コーティングのCOC薄膜(c)は強く帯電していない。
図16図16は、未処理のPMMA基板(a)、およびAr/Oプラズマ処理後(b)のAFMの形状画像を示す。表面粗さは、プラズマ処理により著しく増大している(4nmから25nm RMSへ)。(b)における水の後退接触角は、前進接触角(50°)よりもさらに低く(< 10°)、大きな粗さを示している。
図17図17は、本発明に係るPMMAチップ(a)によって得られたDNA7500検体の電気泳動による分離、および比較のため従来のガラスチップ(b)を使用した電気泳動による分離の結果を示す。
図18図18は、本発明に係るSiOゾルゲルをウェットコーティングしたCOCチップ(a)によって得られた牛血清アルブミン検体の電気泳動による分離、および比較のため従来のガラスチップ(b)を使用した電気泳動による分離を示す。
図19図19は、Ar/Oプラズマで処理した導管の光学顕微鏡画像を示す。該処理は、良好な接着を可能にする。
図20図20は、Arプラズマ/紫外線オゾン洗浄機で処理した導管の光学顕微鏡画像を示す。該処理は、良好な接着を可能にする。
図21図21は、Arプラズマ/紫外線オゾン洗浄機で処理した二つの基板によって形成された導管を接着したCOPの断面の光学顕微鏡画像(a)を示し、光学顕微鏡画像において観察される構造の変形がなく、したがって、流路/導管の大きさは処理および接着により変化していない。図21(b)は、Arプラズマ/紫外線オゾン洗浄機で処理したCOPチップによって得られたDNA7500検体の電気泳動による分離を示す。
図22図22は、Arプラズマ/紫外線オゾン洗浄機による処理を行ったPMMA(a)およびCOP(b)のAFMの形状画像を示す。表面粗さは、プラズマ処理により、(a)16nm RMS粗さに、(b)7nm RMS粗さに著しく増大している。
図23図23は、COPアッセイ基板のSEM画像を示す。
図24図24は、本発明に係る処理がされたアッセイ基板の異なる領域にて、処理後異なる日に繰り返し測定した接触角を示し、特に、Ar/Oプラズマ処理をしたTiO充填COP基板は114日後に65°より小さい接触角を示す。未処理のTiO充填COP基板は、110〜120°の接触角を有する。
図25図25は、(a)処理後のCOPスライド上でY方向に5mmオフセットし、X方向に沿って80mm測定した表面形状測定装置により読み取った3本のラインを示す。高さのうねりはすべて1mm範囲において1μmより小さく、図25(b)は、本発明に係る処理がされたアッセイ基板の異なる領域にて、処理後異なる日に繰り返し測定した接触角を示し、特に、SiO薄膜でコーティングされたCOP基板は115日後に30°より小さい接触角を示す。
図26図26は、樹脂基板に形成されたウェル(a)、および20nm SiOを蒸着後の同じ樹脂基板(b)のAFM走査形状を示す。ウェルの形態および粗さはSiO蒸着により影響されていない。
図27図27は、Ar/Oプラズマ処理後のCOC基板の1x1μmにおけるAFM走査形状を示し、粗さは、むき出しの基板の0.8nm RMSから処理後は6nm RMSに増加している。
図28図28は、(a)未処理、および(b)Ar/Oプラズマ処理のCOCフローサイトメトリーチップのXPSスペクトルを示す。結果から、処理により高分子化合物基板の化学組成が変化していないことが確認できる。
図29図29は、(a)10 x 10μm、および(b)1μm領域におけるTEOSコーティング前のCOC基板のAFM走査形状を示す。
図30図30は、(a)未処理、および(b)TEOSコート処理のCOCフローサイトメトリーチップのXPSスペクトルを示す。結果から、TEOSでコーティングされたチップの基板表面におけるSiOの存在が確認できる。
図31図31は、本発明に係る処理を行ったCOCフローサイトメトリーチップで測定した時間に対する接触角を示し、特に、(a)Ar/Oプラズマ処理されたチップ、および(b)TEOSでコーティングされたCOC基板である。(a)において、接触角は45°より小さい値を60日間保っており、(b)において、接触角は40°より小さい値を65日間保っている。
図32図32は、むき出しの高分子化合物表面と異なるガラス表面および高分子化合物基板のガラス様表面におけるpHの関数としてのゼータ電位の比較を示す。ゼータ電位が負となる境のpHである等電点は、ガラス様表面のpH3より小さく変化していることがわかる。
図33図33は、エッチングガラス表面およびSiOゾルゲルで被覆した表面に対して、同様にSDSの効果が異なる表面であるPMMAおよびCOP表面におけるpHの関数としてのゼータ電位の比較を示す。SDSは、むき出しのPMMAおよびCOC表面において、ゼータ電位に強く影響を与えるが、一方で影響は、SiOゾルゲルで被覆した基板においてより弱くなり、エッチングガラス表面において観察された振る舞いに類似している。
図34図34は、ナフィオンの化学的構造を示す。
図35図35は、COP、ナフィオン層で被覆したCOP、およびSiOの400nm層で被覆したSiウェハにおけるpHの関数としてのゼータ電位の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書において、「エッチングガラス様」とは、エッチングガラスの表面を模倣した表面と言及され、前述の特徴の一つにおいて、必ずしも先立ってエッチングされない。エッチングガラスの工程は、この分野の当業者にはよく知られており、エッチングガラスは、処理をしていない例えば非エッチングガラスと比較して、増大した上述の他の特性および表面粗さによって特徴付けるとされた上記工程のガラス製品の結果物として知られている。本明細書において、「薄膜」とは、0.1nm〜1μmの範囲、より好ましくは1nmから100nmの薄さを持つ層または膜を示している。
【0052】
本明細書において、「ガラス様」とはガラス表面を模倣した表面と言及され、前述の特徴の一つにおいて、ガラス表面ではない。一実施形態において、上記ガラス様表面は高分子化合物で形成される。
【0053】
本明細書において、「SiO」または「シリコン酸化物」とは、シリコン酸化物の任意の形態の意味で言及され、シリコン酸化物のすべての結晶構造の形態、多結晶の形態、および/またはアモルファスの形態に限定されず、多様な酸素の存在量を含み、同様に不完全なSiO前駆体の変換形態も含んでいてもよく、SiO前駆体は有機基を含んでいてもよい。「SiO」とは同様に、SiOおよびSiOを含み、そのことに限定されない、一実施形態において、多様な「x」は、1〜2の範囲であって、同様に整数ではない値も同様に含む。
【0054】
本明細書において、多孔性、粗さ、または他の量とともに用いられる「増大した」とは、前述の量が未処理の基板と比較して大きくなったことの意味で言及される。
【0055】
一実施形態において、前記SiO前駆体は、ステップb2)においてコーティングされる際は、ゾルゲル形態であるか、または溶媒に溶解されている。
【0056】
一実施形態において、本発明に係る方法は、第1の高分子化合物基板および第2の高分子化合物基板、または高分子化合物基板の複数枚によって行われ、前記第1の基板および第2の基板は、したがってそれぞれ第1および第2のガラス様またはエッチングガラス様表面を持って提供され、前記方法は、さらに、好ましくは0.2N/mm〜5N/mmの範囲、より好ましくは0.5N/mm〜1N/mmの範囲の圧力で、10秒〜600秒の範囲、より好ましくは30秒〜120秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫することによって、および前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲、より好ましくは60℃〜120℃の温度に曝露することによって、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫を行う前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することによって、互いに接触した前記第1および第2のガラス様またはエッチングガラス様表面をもたらす、というステップを含む。上記で言及した第1および第2のガラス様またはエッチングガラス様表面は、同様に高分子化合物基板の複数枚の一部であってもよく、それによって得られたガラス様またはエッチングガラス様表面がさらに存在することに留意すべきである。これらは、同様に、連続して、お互いに接触してもたらされてもよい。これは、例えば、結果として多重積層チップをもたらす。本発明は、同様に、本発明に係る方法が第1の高分子化合物基板および第2の高分子化合物薄層状の箔上で行われる構造を包含する。これらは、同様に、連続して互いに接触してもたらされ、それによって互いに接着されてもよい。これは、例えば、薄層状型のチップをもたらすことができる。本発明は、同様に、本発明に係る方法が高分子化合物基板、および表面であって例えば、石英基板またはガラス基板などの表面に連続して接着されて得られた表面上で行われる構造を包含する。このように、混成構造すなわち、高分子化合物基板に接着したガラス基板の製造方法も同様に可能である。
【0057】
前記第1および第2の基板の一つは上記で定義された高分子化合物基板であり、一実施形態において、他の基板は同様に高分子化合物基板であることに留意すべきである。他の実施形態において、他の基板は高分子化合物箔であって、さらに他の実施形態において、他の基板は、例としてガラス基板または石英基板である。
【0058】
本明細書において、「キット」とは、上記で定義されたようなチップの使用または製造をすることを可能にする部品の組立品の意味で言及される。最も単純な形態において、このキットは、ガラス様表面、特に、本発明に係るエッチングガラス様表面を持つ高分子化合物基板を提供する方法を行うための、または検体の分析、検出、分離、および/または輸送を行うための一つまたは複数の試薬を含む。一実施形態において、同様に、キットは、少なくとも一つの上記で定義された高分子化合物基板をさらに含んでもよい。一実施形態において、前記キットは、前記少なくとも一つの高分子化合物基板に加えて、さらなる上記で定義された前記高分子化合物基板、または高分子化合物箔、またはガラス基板を含む。
【0059】
本発明の目的は、同様に、チップ、特にマイクロ流体チップを製造するための上記で定義された基板の用途によって解決される。
【0060】
本明細書において、「チップ」とは、試料、特に液体試料の収容および/または輸送を可能にする少なくとも一つの基板からなる素子の意味で言及される。上記試料の収容または輸送は、例えば、上記基板がウェル、および/または流路、および/または溝、および/またはくぼみを含むことにより成し遂げられてもよく、または、導管を含んでいてもよい。一実施形態において、チップは、少なくとも一つのウェルを含む。上記ウェルは、例えば、液体試料を収容してもよく、または、例えば、粒子、特に、例えば抗原であるリガンドを覆うことができるミクロ粒子等の固体試料を収容してもよい。本明細書において、「マイクロ流体チップ」とは、一般的に、前述の意味のチップとして言及されるが、しかしながら、ウェル、流、溝、くぼみ、または導管などの少なくともいくつかの大きさは、マイクロメートルの範囲である。
【0061】
一実施形態において、基板の文脈にて「ガラス様」とは、上記基板、特に上記基板の表面は一つまたは複数のガラスの特性を模倣している状況を示しており、ガラスの特性とは、特に、化学物質含有量(Si、O)および組成、均質性、粗さ(< 3nm RMS)、多孔性、親水性(清浄なガラスにおける水の接触角 < 50°)、表面エネルギーおよび吸着親和性、表面機能性、化学的および物理的表面反応性、および表面電荷(pH > 2、好ましくはpH > 3において、ゼータ電位 < 0V)、イオン交換容量、基板内の水の流路の構造に起因した液中のプロトン伝導、好ましくは > 100m−1、より好ましくは > 500m−1である高い内表面、高い気体透過性であって、このことに限定されず、必ずしもそれ自体エッチングされていない。
【0062】
基板の文脈にて「エッチングガラス様」とは、上記基板、特に上記基板の表面は一つまたは複数のエッチングガラスの特性を模倣している状況を示しており、エッチングガラスの特性とは、特に、化学物質含有量(Si、O)および組成、均質性、粗さ(> 3nm RMS)、多孔性、親水性(清浄なガラスにおける水の接触角 < 50°)、表面エネルギーおよび吸着親和性、表面機能性、化学的および物理的表面反応性、および表面電荷(pH > 2、好ましくはpH > 3において、ゼータ電位 < 0V)、イオン交換容量、基板内の水の流路の構造に起因した液中のプロトン伝導、好ましくは > 100m−1であって、より好ましくは > 500m−1である高い内表面、高い気体透過性であって、このことに限定されず、必ずしもそれ自体エッチングされていない。
【0063】
本明細書において、「生体高分子」とは、一般的に、生命体および有機体内に存在している高分子を示しており、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖、脂質、および脂肪である。それらそれぞれのモノ/オリゴマーは、それらそれぞれのモノ/オリゴマーの形態において、対応してヌクレオチド、ペプチド、アミノ酸、糖類、および脂肪酸である。同様に、本明細書において「生体高分子」という語句によって巨大分子集合体も包含され、例えば、ウィルス、細胞小器官、リボソーム、ミトコンドリア、染色体、および他の同等な構造体などである。本発明に係る基板およびチップは、前述のいずれかの分析、検出、分離、および/または輸送において用途が見出される。
【0064】
本発明者は、驚くことに、高分子化合物基板の有益な性質と、ガラス表面、特にエッチングガラス表面の有益な特性とを、上記高分子化合物基板にガラス様表面、特にエッチングガラス様表面をあたえることにより、結合させることが可能であることを見出した。好ましくは、高分子化合物基板は、炭素高分子ベースの基板である。一実施形態において、基板はポリジメチルシロキサンではない。
【0065】
好ましい実施形態において、本発明に係る高分子化合物基板は、負のゼータ電位を持ち、すなわち、pH > 2において、より好ましくは、pH > 3において < 0Vである。pHに依存してゼータ電位を測定した場合、本発明に係る高分子化合物基板の測定された値は、ガラスまたはエッチングガラスで測定されたそれぞれの電位と同等である。いくつかの実施形態において、本発明に係る基板のゼータ電位は、ガラス表面よりもさらにマイナスである。
【0066】
さらに、SDSと接触した際に、例えば、それぞれのゼータ電位によって測定すると本発明に係る高分子化合物基板は、ガラスと同じ振る舞いを示す。一実施形態において、本発明に係る高分子化合物基板のゼータ電位は、実質的にSDSの存在によって影響されない。これは、ゼータ電位がSDSの存在によって、大幅に変わる可能性があるところの本発明に係らない高分子化合物基板と対照的である。好ましくは、本発明に係る基板は、pH3以上において、ゼータ電位は < 0であり、SDSの存在は、SDSの非存在に対してゼータ電位の負の値をたかだか2倍に変更するに過ぎない。
【0067】
一実施形態において、高分子化合物基板の表面は、電気的に加熱された熱蒸着の手段によって、または電子銃によって、またはスパッタによってSiOでコーティングされている。他の実施形態において、SiO前駆体、例えばTEOS、OTCS、TTBS−OH、またはペルヒドロポリシラザンが高分子化合物基板の表面にコーティングされており、連続して適当な後処理、例えば、アニーリング、エネルギーの電磁放射であって例えば紫外線、または水、塩基、酸、またはそれらの組み合わせによる処理によってSiOに変換される。そうすることにより、高分子化合物基板は、例えば、ガラスまたはエッチングガラスの表面を模倣した化学組成などの特性を持った表面が与えられる。上記基板は、他の基板または薄層状の箔、例えば、同じ方法で処理された上記基板との接着にかなう。上記基板は、ガラスまたはエッチングガラスの表面を模倣した特性を持った表面が与えられるが、同様に本発明に係る処理がされていない他の基板との接着にもかなう。
【0068】
本明細書において、「固有の多孔性を有する高分子化合物またはコーティング材料」とは、本質において多孔質であり、高い内表面を持つ高分子化合物またはコーティング材料の意味で言及される。好ましくは、孔の大きさが0.5nm〜50nmの範囲であり、好ましくは1nm〜10nmの範囲であって、内表面は、100m−1より大きい。高分子化合物基板が上記固有の多孔性を持つ高分子化合物の表面を持って提供される場合、形態、特にガラスまたはエッチングガラス表面の多孔性を模倣している。本明細書において、「増大した粗さを有する高分子化合物またはコーティング材料」とは、本質において、薄膜として蒸着した後で比較的高いRMS表面粗さを持つ高分子化合物またはコーティング材料の意味で言及される。好ましくは、RMS表面粗さは、標準のAFMチップを用いたAFMで測定して、0.1nm〜1nmの範囲であり、好ましくは、1nm〜100nmの範囲である。この文脈において「増大した粗さ」とは、基板の未処理または未コーティングである表面と比較して増大した粗さの意味で言及される。
【0069】
ガラス様またはエッチングガラス様表面を提供する多様な実施形態は、同様に、その結果、ガラスまたはエッチングガラスの化学組成も形態および粗さも両方、模倣されるという意味において組み合わされてもよい。
【0070】
本発明に係る基板は、例として、それらそれぞれの接触角によって測定されるように
長期間の安定性を有する。例えば、一実施形態において、本発明に係る処理がされた基板表面の接触角は50°以下を60日間以上の期間において保つ。このことにより、本発明に係る基板は工業的工程および繰り返しの使用における用途にかなう。
【0071】
発明者は、同様に、二つの基板を前述の本発明に係る方法で処理した後、一緒に接着させてもよく、したがって、接触面を持つ二つの基板の組立品を形成してもよいことを見出した。これら基板の少なくとも一つが、流路、溝、またはくぼみを包含し、および他の基板または箔と接触される場合、上記流路、溝、またはくぼみは、二つの基板の組立品において導管を形成することができる。基板の一つにおける流路の適切な延長を選択することにより、例えば、基板の一端から他端へ延長した流路を持つことにより、組立品を通った液体の流れを可能とする適切な導管を形成することができる。この方法により流体チップ、特にマイクロ流体チップを生産することができる。本明細書において「マイクロ流体チップ」または「マイクロチップ」とは、その中を通って延長された一つまたは複数の導管を持つチップであって、導管は、液体、ゲル、または高分子染料基質の流れを可能とする意味で言及される。好ましくは、上記導管は、好ましくは10μm〜200μmの範囲の幅であり、1μm〜100μmの範囲の深さを有する。加えて、同様に、より大きな構造体、例えば、液体の貯水容器などがチップ上/中にあってもよい。本明細書において、「導管」とは、二つの基板の間の接触面において、液体が流れることができる空洞構造の意味で言及される。導管は、基板の少なくとも一つにある流路、くぼみ、または溝によって形成される。したがって、「流路」、「溝」、「くぼみ」は単独の基板の表面において空洞構造と言及される。上記表面が連続して他の基板または箔と接触しており、それによって事実上被覆されている場合、導管が形成される。時として、流路、くぼみ、溝をその中に持つ基板は、本明細書において、流路板として言及される。上記流路板に覆われた基板は、同様に時として被覆板またはウェル板として言及される(検体の入口として、それが表面にホールを備えており、端ではない場合)。本発明の実施形態において、チップまたはマイクロ流体チップは、したがって、例えば一緒に接着された、または薄層を重ねた二つの基板によって形成され、接触面では、導管が一つまたは複数の、少なくとも基板の一つにある流路により形成される。上記一緒の基板は、同様に、時として「基板組立品」として言及される。基板の上記組立品において、二つの基板は互いに、それぞれのガラス様またはエッチングガラス様表面で結合されている。
【0072】
マイクロチップのための製造ステップの順序は、第1に、一つまたは両方の基板および/または箔の表面処理、続いて接着、またはその逆、または二つの組み合わせ、すなわち、接着の前にいくつかの部分の処理をし、他方を後で行うこと、のいずれでもよい。
【0073】
高分子化合物基板材料は、多様な製造者より商業的に入手可能である。適切な材料は例えば、
Trogamid CX7323(登録商標)、PMMG CMG302(登録商標)、Delpet 70NH、Zeonor 1060R(登録商標)、Zeonex(登録商標) 480、PC black Makrolon(登録商標) 2405、Arton(登録商標) D4540、Zeonor(登録商標) 1060R + 2% black、PP Dow H734−52(登録商標)、TPX(登録商標)、PC(登録商標)、PP(登録商標)、Topas(登録商標) 8007X11、PC−Teijin(登録商標)、PC−MEP(登録商標)、PC−Dow(登録商標)。
である。
【0074】
本発明に係り、高分子化合物基板のガラス様またはエッチングガラス様特性は適切なコーティング、または表面改質によって成し遂げられる。これにより、上記高分子化合物基板で作成されたマイクロチップの製造および用途をガラスマイクロチップに対するそれぞれの応用において、さらに試験手順を変える必要なしに、例えば、直接代用品として、使用することを可能となる。さらに、接触面および生体分子と高分子化合物基板の接触面との相互作用を制御することにより、コーティング特性を微調整することが可能になる。
【0075】
本発明に係るコーティングおよび表面改質は、時間経過によって永続的および安定的であり、労働集約的ではないので生産工程において、容易に統合することができる。一実施形態において、コーティング層の厚さは変えることが可能である。コーティング層の厚さは均質であり、0.1nm〜500nmの範囲であり、好ましくは5nm〜200nmである。前述した範囲の厚さを有する上記表面層の製造は、液体またはゲルの流れのためのそれぞれの導管はマイクロメートルの範囲であるため、マイクロ流体の応用においてきわめて重要である。その結果、表面改質層は、流路の高さよりさらに薄くなくてはならない。
【0076】
本発明に係る方法は、廃棄可能な基板およびチップの容易な生産を可能とする。加えて、本発明に係り生産される基板およびチップは、既存のガラスチップのための試験手順、および大量生産のための方法と相性が良い。
【0077】
さらに、説明される以下の例が参照されるが、本発明を限定することはない。
【0078】
[実施例]
以下の例において、通常、一覧として挙げたステップの順序は、実施例において行ったステップの順序である。
【0079】
(実施例1)
蒸着によりSiO薄膜をコーティングしたCOC基板(図1〜3)
基板:COP(Zeonor 1060R)
コーティング:熱蒸着による20nm SiO
光透過性は85%以上であった(図1参照)
水の接触角(12時間後)は、5°であり、約40°で安定した(図2参照)
基板の流路の大きさは、流路がSiOによって完全に埋まる、または塞がることがないようなコーティング手順を用いたことで、ほとんど変化しなかった(図3参照)。
【0080】
(実施例2)
TEOS薄膜をコーティングしたPMMA基板(図4〜10)
SiO前駆体によるコーティングの一般的な機構を図4に示し、いくつかの液状前駆体の構造式を図5に示した。
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(Diakon CMG 302)
コーティング材料:TEOS
形状:0.5nm粗さ(図6参照)
組成:XPSは、基板表面において明確なSiのピークを示す(図7)。
70℃にて接着。接着の機構を図8に示した。接着は、流路の変形および流路を満たした際の流体の漏れをなくすことを可能とする(図9および図10)。
【0081】
(実施例3)
PHPS薄膜をコーティングしたPMMA基板(図11〜13)
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(Diakon CMG 302)
コーティング材料:ペルヒドロポリシラザン(PHPS)(図11参照)
後処理:NHOH蒸気
水の接触角:15°
形状:1.7nm粗さ(図12参照)、流路の大きさは変化せず(図13参照)、また流路は埋まらず、また塞がらなかった。
70℃にて接着。接着は成功した。
【0082】
(実施例4)
PTMSP薄膜をコーティングしたPMMA基板(図14および15)
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(Delpet 70NH)
コーティング材料:ポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン](PTMSP)PTMSPのトルエン溶液
コーティング手段:スプレー
特性評価:接触角:前進角は107°、後退角は79°、二つの角度の差は表面の粗さおよび多孔性を示している。FTIR:PTMSPの信号が明確に確認される(図14参照)。表面形状測定装置:導管の大きさは変化なく、また増大した粗さはAFMで観察された(図16)。帯電:PTMSP薄膜は、(帯電を誘導するバイアスをかけた探針によって)ちょうどガラスのように水イオンを伴って帯電する(図15および16参照)。70℃にて接着。接着は成功した。
【0083】
(実施例5)
Ar/Oプラズマで処理したPMMA基板(図16および17)
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(Delpet 70NH)
処理方法:Ar/Oプラズマ
接触角:前進角は50°、後退角は < 10°。AFM:25nm RMS粗さ(図16参照)。
70℃にて接着。接着は成功した。粗さおよび親水性は、ガラスの粗さおよび親水性を模倣して増大させることに成功した。
電気泳動のよる分離:DNAの分離に成功した(図17a参照、17bは比較であるガラスチップによる分離)。本発明に係るチップは、ガラスチップで成功した分離と同じように、最大7500ダルトンのDNA分子を含むDNAの電気泳動による分離を提供する。電気泳動による分離で使用したゲルは、120mM トリストリシン(PH7、7〜8)中のポリアクリルアミドを主成分とした。溶解させる界面活性剤は、SDSおよびLDSであり、チップで染色させる場合、蛍光色素もまた溶解させる。
【0084】
(実施例6)
COPチップへのSiOゾルゲルのウェットコーティング(図18
材料:COP流路基板およびウェル基板(Zeonor 1060R)
処理:基板は、接着前にクロロホルム蒸気にてわずか数分間曝露される。
70℃にて接着。接着は成功した。
ウェットコーティング:SiOゾルゲル
電気泳動による分離:たんぱく質分離は良好であった(図18a参照、図18bは比較であるガラスチップによる分離)。本発明に係るチップは、ガラスチップで成功した分離と同じように、異なる濃度(例えば、500μg/ml、1000μg/ml、2000μg/ml)の牛血清アルブミン(タンパク質)の電気泳動による分離を提供する。分子量マーカーは6つのタンパク質(29kDa、45kDa、66kDa、97kDa、116kDa、200kDa)を含む。電気泳動による分離で使用したゲルは、120mM トリストリシン(PH7、7〜8)中のポリアクリルアミドを主成分とした。溶解させる界面活性剤は、SDSおよびLDSであり、チップで染色させる場合、蛍光色素もまた溶解させる。
【0085】
(実施例7)
Ar/Oプラズマで処理したCOP基板
基板:COP流路基板およびウェル基板(Zeonor 1060R)
処理:Ar/Oプラズマ
85℃、定圧にて接着し、接着は成功した。得られたチップは、接着の間隙および流路の変形はなかった(図19)。
【0086】
(実施例8a)
Arプラズマ/紫外線オゾンで処理したCOP基板
基板:COP流路基板およびウェル基板(Zeonor 1060R)
処理:Arプラズマ/紫外線オゾン洗浄機
85℃、定圧にて接着し、接着は成功した(図20)。
接着力:20秒間300Nをかけた。サンプルは分離しなかった。
【0087】
(実施例8b)
Arプラズマ/紫外線オゾンで処理したPMMA基板
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(PMMA Delpet 70NH)
処理:Arプラズマ/紫外線オゾン
85℃、定圧で接着し、接着は成功した。図21(a)は、Arプラズマ/紫外線オゾンで処理された二つの基板によって形成された導管にて接着したCOPの断面の光学顕微鏡画像を示す。光学顕微鏡画像で見られる構造の変形は存在せず、流路/導管の大きさは処理および接着で変化しない。図21(b)は、Arプラズマ/紫外線オゾンで処理したCOPチップで取得したDNA7500検体の電気泳動による分離を示す。
【0088】
(実施例9)
SiOゾルゲルで処理したCOP基板
基板:COP流路基板およびウェル基板(Zeonor 1060R)
コーティング:
コーティング材料:SiOゾルゲル
コーティング手段:スプレー
後処理:Oプラズマ
85℃にて接着し、接着は成功した。得られたチップは、接着の間隙および流路の変形はなかった。
【0089】
(実施例10)
SiOゾルゲルで処理したPMMA基板
基板:PMMA流路基板およびウェル基板(PMMA Delpet 70NH)
コーティング:
コーティング材料:SiOゾルゲル
コーティング手段:スプレー
後処理:Oプラズマ
85℃にて接着し、接着は成功した。得られたチップは、接着の間隙および流路の変形はなかった。
【0090】
(実施例11)
アッセイ用途、例えばゲノム解析等に対する本発明に係る基板の適用
ガラス基板において発展してきた移動分析の化学は、疎水性である樹脂表面のぬれを確保するために、またはタンパク質または他の生体分子の疎水性の表面への接着を避けるために、しばしば界面活性剤を添加することを要求する。上記物質は、タンパク質または他の生体分子の変性を導きうるため、上記界面活性剤を添加することは、逆にアッセイの性能に影響を与える。界面活性剤または他の表面活性物質の存在により、大きなタンパク質分子は容易にそれらの機能性を失い得る。ガラス様の特性を持つ表面を提供することは、樹脂消耗品への上記分析の容易な移転を保証する。界面活性剤または疎水性である樹脂表面への曝露により、細胞または細胞片は最も容易に損傷または破壊されることも同様に言及しなくてはならない。上記の例のいずれも、タンパク質または生体分子、大きなタンパク質集合または細胞および細胞片は、自然環境の中とは非常に異なる振る舞いをする可能性がある非自然な環境にさらされていることを示している。緩衝液において適正なpHおよびイオン濃度を用いた本発明に係るガラス様コーティングは上記悪影響を最小化することができる。
【0091】
本発明に係る基板は、ゲノム解析アッセイにおいて、同様に適用して使用することができる。伝統的には、上記ゲノム解析は、所定の直径および深さの5000万ウェルを持つシリコンチップで行われ、それぞれのウェルはDNAで修飾されたポリスチレンビーズで満たされる。結果として、上記構造が本発明に係る基板を用いて製造された場合、同じ要件が本発明に係る基板においても適用される。ウェルは、互いに所定の間隔で配置されなくてはならず(図23)、基板は、所定の平滑性、親水性、低費用でなくてはならない。通常、一例において、基板の平滑性は1mmにおいて1μmであり、接触角は20〜50°の間である。
【0092】
以下の処理が行われる。
【0093】
Ar/Oプラズマで処理したCOP
基板:TiO充填剤を用いた、または用いていないCOP(Zeonor 1060R)
処理:Ar/Oプラズマ
【0094】
図24は、本発明に係る処理を行ったアッセイ基板の異なった領域で、処理後の異なった日に繰り返し測定を行った接触角を示す。特に、Ar/Oプラズマで処理したTiO充填COP基板は、114日後においても65°より小さい接触角を示す。未処理のTiO充填COP基板は、110〜120°の接触角であった。
【0095】
SiOで処理したCOP
基板:TiO充填剤を用いた、または用いていないCOP(Zeonor 1060R)
コーティング:熱蒸着およびスパッタによる20nm SiO
【0096】
表面形状測定装置による測定結果を図25に示し、測定結果により高さの差異がむしろ小さく、おおよそ300nmの範囲内であることを明らかになった。同時に、接触角は多様な場所で、相当な期間、例えば最大115日、少なくとも安定したままである。
【0097】
図26は、樹脂基板に形成されたウェル(a)、および20nm SiOを蒸着後の同じ樹脂基板(b)のAFM走査形状を示している。ウェルの形態および粗さはSiO蒸着により影響されていない。
【0098】
(実施例12)
フローサイトメトリーに対する本発明に係る基板の適用
本発明に係る基板は、同様に、フローサイトメトリー用途に使用することができる。この点において、以下の要件を満たす必要がある。細胞接着があってはいけない、20〜50°の間の接触角である親水性を有していなければならない、圧力耐久性を有していなければならない。さらにチップに装填する間に空気泡が形成される可能性があってはならない。
【0099】
Ar/Oプラズマで処理された基板
基板:COC半流路基板(Topas 8007 X10)
処理:Ar/Oプラズマ
75℃、定圧にて接着は成功した。
【0100】
図27は、本発明に係る該実施例に係る処理が行われた表面のAFM画像を示す。粗さは、Ar/O処理後に、0.8RMS〜6RMSに増大し、同じ表面形態が得られる異なる高分子化合物材料にも同じ処理が適用できることを示している。
【0101】
図28は、(a)未処理、および(b)Ar/Oプラズマ処理のCOCフローサイトメトリーチップ試料のXPSのスペクトルを示し、処理が高分子化合物基板の化学組成を変化させていないことが確認できる。
【0102】
TEOSで処理した基板
基板:COC半流路基板(Topas 8007 X10)
コーティング材料:TEOS
コーティング手段:ディップ
後処理:Oプラズマ
76℃、定圧にて接着は成功した。
【0103】
図29は、本発明に係る処理の前後の基板表面を示し、図30は、対応するXPS測定を示す。XPSから処理された試料の表面におけるSiOの存在が確認されるが、一方、表面形態は変化していない(1μmにて同じRMS)ことを理解することができる。
【0104】
本発明に係る処理の長時間安定性は、同様に、図30aおよびbから理解することができるように測定され、図30aおよびbは、基本的にCOC基板(Topas 8007 X10)の接触角が長期の期間において50°より小さく保たれることを示し、さらに本発明に係る処理の長時間安定性は、本発明に係る方法が商業的目的で使用することができ、同様に多用途の応用にかなう基板を生産することを証明している。
【0105】
(実施例13)
本発明に係る基板は、同様に、それぞれのゼータ電位を測定した際のガラスに類似した振る舞いによって特徴づけることができる。図32より理解できるように、本発明に係るガラス様基板は、ガラス表面と同じような形状および値であるゼータ電位曲線を有する。さらに具体的に言うと、ゼータ電位が負となる境のpHである等電点(IEP:Isoelectric point)は、ガラス様表面のpH3より小さく変化していることを理解することができる。
【0106】
さらに、図33から理解できるように、本発明に係る表面/基板は、SDSと接触した際にガラスと同じような振る舞いを有する。さらに具体的に言うと、ゼータ電位はSDSの存在によってそれほど影響されないが、一方、本発明に係る処理がされていない基板において、SDSの影響はより大きい。すなわち、図33は、エッチングガラス表面およびSiOゾルゲルで被覆した表面に対して、同様にSDSの効果が異なる表面であるPMMAおよびCOP表面におけるpHの関数としてのゼータ電位の比較を示している。SDSは、むき出しのPMMAおよびCOC表面において、ゼータ電位に強く影響を与えるが、一方で、影響はSiOゾルゲルで被覆した基板においてより弱くなり、エッチングガラス表面において観察された振る舞いに類似している。
【0107】
(実施例14)
本発明に係る表面処理の一つの可能性は、フッ素樹脂の共重合体を基にしたスルホ化されたテトラフルオロエチレンであるナフィオンで高分子化合物基板を処理することである。これは、イオン交換膜を形成するアイオノマーである。液中で、高い特有のプロトン電気伝導性を有し、水流路の構造のためにプロトン伝導を可能とする。ナフィオンの構造および振る舞いの機構の詳細は、ナフィオンの化学構造および水中および水に対するナフィオンの振る舞いを説明した図解を示す図34にて示すことができる。
【0108】
図35は、ナフィオンでコーティングした本発明に係る基板のゼータ電位を示す。ナフィオンでコーティングした基板は、ガラスよりもさらにマイナスの非常に負のゼータ電位を示す。
【0109】
これにより、ガラス様表面を得られるナフィオンで処理した本発明に係る基板が作成される。
【0110】
明細書、特許請求の範囲および/または図面において開示された本発明に係る特徴は、
単独およびいずれかの組み合わせの両者において、それらの多様な形態において発明を実現するための材料としてもよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19
図20
図21a
図21b
図22
図23
図24
図25a
図25b
図26a
図26b
図27
図28a
図28b
図29a
図29b
図30a
図30b
図31
図32
図33
図34
図35
【手続補正書】
【提出日】2016年6月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス様表面を有する高分子化合物基板の提供方法であって、
a)固形基板であり、かつ流路、溝、くぼみ、またはホールを基板の表面上に有する高分子化合物基板を提供すること、
および以下の手段のうちの一つから成る、高分子化合物基板の提供方法。
b1)前記高分子化合物基板の表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記高分子化合物基板の表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマで後処理すること、
b3)i)前記高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記高分子化合物基板の表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩、ならびにそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体から選択される1種以上の高分子化合物であり、および/または
ii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板の前記表面へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、b1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティン
クリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティン
たは、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる。
【請求項2】
b2)における変換手段は、
アニーリング、
電磁波の照射
水、塩基、酸、水および塩基の組み合わせ、または水および酸の組み合わせの溶液による処理
のうちの一つにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SiO前駆体は、
i)アルコキシまたはアルキルクロロシラン、SiX、Siから構成されるトリシロキサンであって、Xは互いに独立して、ORまたはハロゲンであり、Rはアルキル基であるもの、
ii)ポリシラザン、
iii)溶媒の基質に懸濁したSiOx粒子を含むゾルゲル、
を含むグループから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
b1)〜b3)のステップは、前記SiO、SiO前駆体またはコーティング材料と一緒に、追加材料が前記高分子化合物基板の前記表面にコーティングされ、前記追加材料は、Si、Al、B、TiO、NaO、CaO、KO、SO、MgO、Fe、SiO(xは2より小さい)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
増大した粗さおよび/または固有の多孔性を有する前記コーティング材料は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ならびに置換されたアセチレンポリマーのグループから選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング材料は、2,2−ビストリフルオロメチル‐4,5‐ジフルオロ1,3‐ジオキサレートフルオロエチレン共重合体(デュポン社のテフロンAF2400)、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン](PTMSP)、ポリ[1‐(トリメチルゲルミル)‐1‐プロピン]、ポリ(4−メチル―2−ペンチン)、ポリ[1‐フェニル‐2‐(p‐トリメチルシリルフェニル)アセチレン]およびポリ[2,4,5‐トリス(トリフルオロメチル)‐フェニルアセチレン]から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
c)後処理を前記基板に行うステップをさらに含み、
前記c)は、
乾燥
水洗
焼き戻し
焼結
溶媒処理
プラズマ処理
反応性イオンエッチング
紫外線オゾン洗浄機による処理
および上記の組み合わせのうちの一つまたは複数である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第1の高分子化合物基板に行われ、前記第1の高分子化合物基板は、少なくとも第1のガラス様表面を持って提供され、前記方法は、接着するステップをさらに含み、
前記接着するステップは、前記第1のガラス様表面を第2の基板と接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基板は、固形基板であるか、または柔軟な箔である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の基板は、合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板、またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物から選択された材料で形成された基板である、
あるいは前記第2の基板が柔軟な箔である場合は、前記第2の基板は、樹脂材料で形成され、前記樹脂材料は、任意に、無機材料が充填される、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
前記第1の基板および前記第2の基板の両方は、流路、溝、くぼみ、またはホールを基板上に有する、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb1)〜b3)の少なくとも1つが、前記第1の高分子化合物基板、および少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第2の高分子化合物基板で行われ、任意に、第3および/またはさらなる合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板にて行われ、前記第1および第2の高分子化合物基板、および存在するならば、前記第3およびさらなる高分子化合物基板は、前記接着するステップによって連続して互いに接着される、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記高分子化合物基板の一つ、二つ、またはそれ以上は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板上に有する、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
ガラス様表面は、親水性を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
チップの製造方法であって、
A)合成品または自然由来の高分子化合物で形成された、固形基板である少なくとも第1の高分子化合物基板、および第2の基板を提供し、前記第2の基板は、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固形基板であるか、または柔軟な箔であって、少なくとも前記第1の基板は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板の表面上に有すること、
B1)以下のステップb1)〜b3)の1つを前記第1の基板で行い、連続して、以下の接着ステップd)を行うこと、
b1)前記第1の高分子化合物基板の前記表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマ処理すること、
b3)i)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記第1の高分子化合物基板の前記表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、およびポリアクリル酸塩、ならびにそれらの修飾物、誘導体、派生物および共重合体から選択される1種以上の高分子化合物であり、および/または
ii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記第1の前記高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、ステップb1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティン
クリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティン
たは、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる、
d)前記第1のガラス様表面を前記第2の基板の表面に接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、
B2)前記第1および前記第2の基板を互いに接触させて用意し、ステップd)によって、前記第1および第2基板の組立品を形成するために互いを接着し、連続して、ステップb1)〜b3)の1つを前記組立品に行うこと、
前記方法は、A)と、B1)またはB2)のいずれかとを含む、チップの製造方法。
【請求項16】
A)のステップは、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固形基板であるか、または柔軟な箔である基板を複数枚、提供することを含み、また、B1)またはB2)のステップは、前記複数枚の基板に行われ、チップは、お互いに積み重ねた複数枚の基板からなる、請求項15に記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2016年7月5日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス様表面を有する高分子化合物基板の提供方法であって、
a)固形基板であり、かつ流路、溝、くぼみ、またはホールを基板の表面上に有する高分子化合物基板を提供すること、
および以下の手段のうちの一つから成る、高分子化合物基板の提供方法。
b1)前記高分子化合物基板の表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記高分子化合物基板の表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマで後処理すること、
b3)i)前記高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記高分子化合物基板の表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ならびに置換されたアセチレンポリマーからなる群から選択される1種以上の高分子化合物であり、および/または
ii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板の前記表面へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、b1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティング
スクリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティング
または、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる。
【請求項2】
b2)における変換手段は、
アニーリング、
電磁波の照射
水、塩基、酸、水および塩基の組み合わせ、または水および酸の組み合わせの溶液による処理
のうちの一つにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記SiO前駆体は、
i)アルコキシまたはアルキルクロロシラン、SiX、Siから構成されるトリシロキサンであって、Xは互いに独立して、ORまたはハロゲンであり、Rはアルキル基であるもの、
ii)ポリシラザン、
iii)溶媒の基質に懸濁したSiOx粒子を含むゾルゲル、
を含むグループから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
b1)〜b3)のステップは、前記SiO、SiO前駆体またはコーティング材料と一緒に、追加材料が前記高分子化合物基板の前記表面にコーティングされ、前記追加材料は、Si、Al、B、TiO、NaO、CaO、KO、SO、MgO、Fe、SiO(xは2より小さい)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
増大した粗さおよび/または固有の多孔性を有する前記コーティング材料は、2,2−ビストリフルオロメチル‐4,5‐ジフルオロ‐1,3‐ジオキサレートフルオロエチレン共重合体(デュポン社のテフロンAF2400)、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ポリ[1‐(トリメチルシリル)‐1‐プロピン](PTMSP)、ポリ[1‐(トリメチルゲルミル)‐1‐プロピン]、ポリ(4−メチル―2−ペンチン)、ポリ[1‐フェニル‐2‐(p‐トリメチルシリルフェニル)アセチレン]およびポリ[2,4,5‐トリス(トリフルオロメチル)‐フェニルアセチレン]から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
c)後処理を前記基板に行うステップをさらに含み、
前記c)は、
乾燥
水洗
焼き戻し
焼結
溶媒処理
プラズマ処理
反応性イオンエッチング
紫外線オゾン洗浄機による処理
および上記の組み合わせのうちの一つまたは複数である、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第1の高分子化合物基板に行われ、前記第1の高分子化合物基板は、少なくとも第1のガラス様表面を持って提供され、前記方法は、接着するステップをさらに含み、
前記接着するステップは、前記第1のガラス様表面を第2の基板と接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の基板は、固形基板であるか、または柔軟な箔である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の基板は、合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板、またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物から選択された材料で形成された基板である、
あるいは前記第2の基板が柔軟な箔である場合は、前記第2の基板は、樹脂材料で形成され、前記樹脂材料は、任意に、無機材料が充填される、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の基板および前記第2の基板の両方は、流路、溝、くぼみ、またはホールを基板上に有する、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb1)〜b3)の少なくとも1つが、前記第1の高分子化合物基板、および少なくとも合成品または自然由来の高分子化合物で形成された第2の高分子化合物基板で行われ、任意に、第3および/またはさらなる合成品または自然由来の高分子化合物で形成された高分子化合物基板にて行われ、前記第1および第2の高分子化合物基板、および存在するならば、前記第3およびさらなる高分子化合物基板は、前記接着するステップによって連続して互いに接着される、請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記高分子化合物基板の一つ、二つ、またはそれ以上は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板上に有する、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
ガラス様表面は、親水性を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
チップの製造方法であって、
A)合成品または自然由来の高分子化合物で形成された、固形基板である少なくとも第1の高分子化合物基板、および第2の基板を提供し、前記第2の基板は、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固形基板であるか、または柔軟な箔であって、少なくとも前記第1の基板は、流路、溝、くぼみ、またはホールを前記基板の表面上に有すること、
B1)以下のステップb1)〜b3)の1つを前記第1の基板で行い、連続して、以下の接着ステップd)を行うこと、
b1)前記第1の高分子化合物基板の前記表面にxは1〜2の範囲であるSiOをコーティングすること、
b2)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、xは1〜2の範囲であるSiO前駆体をコーティングし、前記SiO前駆体をSiOに変換し、さらに酸素プラズマ処理すること、
b3)i)前記第1の高分子化合物基板の前記表面に、未コーティングの前記第1の高分子化合物基板の前記表面と比較して増大した粗さを持つコーティング材料および/または増大した親水性を持つコーティング材料をコーティングすること、前記コーティング材料は、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ナフィオン(登録商標)、ポリスルホン、ポリ(オキソ‐2,6‐ジメチル‐1,4‐フェニレン)、ならびに置換されたアセチレンポリマーからなる群から選択される1種以上の高分子化合物であり、および/または
ii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および紫外線オゾン洗浄機による処理の逐次使用、および/または
iii)前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板へのアルゴンプラズマ処理および酸素プラズマ処理の逐次使用、および/または
iv)前記表面に粗さおよび親水性を導入するための前記第1の高分子化合物基板の前記表面または前記コーティングされた第1の高分子化合物基板への反応性イオンエッチング(RIE)
により、ガラス様表面の形態を前記第1の高分子化合物基板の前記表面に与えること、
ここで、ステップb1)およびb2)は、
スプレーコーティング
ディップコーティング
スクリーンプリンティング
ドクターブレード
ウェットコーティング
または、前述のいくつかの方法の組み合わせにより行われる、
d)前記第1のガラス様表面を前記第2の基板の表面に接触させ、10秒〜600秒の範囲の時間で、前記第1および第2の基板を一緒に圧迫し、前記第1および第2の基板を40℃〜120℃の範囲の温度に曝露することにより、および/または、それらの互いの接着を増すために圧迫する前に前記第1および第2の基板を溶媒の蒸気に直接曝露することにより、前記第1の基板と第2の基板とを接着する、
B2)前記第1および前記第2の基板を互いに接触させて用意し、ステップd)によって、前記第1および第2基板の組立品を形成するために互いを接着し、連続して、ステップb1)〜b3)の1つを前記組立品に行うこと、
前記方法は、A)と、B1)またはB2)のいずれかとを含む、チップの製造方法。
【請求項15】
A)のステップは、合成品もしくは自然由来の高分子化合物またはガラス、石英、シリコン窒化物、シリコン酸化物または樹脂材料から選択された材料で形成された固形基板であるか、または柔軟な箔である基板を複数枚、提供することを含み、また、B1)またはB2)のステップは、前記複数枚の基板に行われ、チップは、お互いに積み重ねた複数枚の基板からなる、請求項14に記載の方法。