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特開2016-222971金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-222971(P2016-222971A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20161205BHJP
   C22C 29/12 20060101ALI20161205BHJP
   B22F 3/14 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C22C29/12 Z
   B22F3/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-110036(P2015-110036)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昌芳
(72)【発明者】
【氏名】山中 富美夫
【テーマコード(参考)】
4K018
4K029
【Fターム(参考)】
4K018AD09
4K018BA20
4K018BB04
4K018BC08
4K018BC12
4K018EA02
4K018FA06
4K018KA29
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA64
4K029BD00
4K029CA05
4K029DC02
4K029DC09
4K029DC35
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属Biの含有量が比較的少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットであっても、密度が十分に高く、安定してスパッタを行うことが可能な金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、この金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法の提供。
【解決手段】金属Biの含有量が2〜35mol%の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有し、前記Bi酸化物の素地11中に前記金属Biの粒子12が点在する組織とされており、前記金属Biの密度と前記Bi酸化物の密度と前記組成から算出される理論密度に対する相対密度が80%以上とされているスパッタリングターゲット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有し、
前記Bi酸化物の素地中に前記金属Biの粒子が点在する組織とされており、
前記金属Biの密度と前記Bi酸化物の密度と前記組成から算出される理論密度に対する相対密度が80%以上とされていることを特徴とする金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット。
【請求項2】
金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法であって、
金属Bi粉末とBi酸化物粉末とを混合する原料粉末混合工程と、原料粉末を焼結する焼結工程と、を有し、
前記焼結工程においては、焼結温度が300℃以上500℃以下の範囲内、前記焼結温度での保持時間が60分未満、プレス圧力が49MPa以上98.1MPa以下の範囲内とされていることを特徴とする金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属BiとBi酸化物を含有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、この金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ディスク等の記録媒体においては、例えば特許文献1に記載されているように記録層として、種々の金属−金属酸化物からなる複合膜が用いられている。このような金属−金属酸化物からなる複合膜は、この複合膜の組成に応じた組成のスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法によって成膜される。よって、金属BiとBi酸化物を含有する複合膜を成膜する際には、金属BiとBi酸化物を含有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを用いることができる。
【0003】
また、例えば特許文献2には、Biを含む複合酸化膜からなる超伝導薄膜形成体が開示されており、この複合酸化膜へのBi供給源として、Bi酸化物、Bi複合酸化物、Bi金属の少なくとも1つを用い、これらをターゲットとしてスパッタリングを行うことが記載されている。このとき、前述のBi供給源として、金属BiとBi酸化物を含有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−084804号公報
【特許文献2】特開平07−196400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、金属BiとBi酸化物を含有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットにおいては、金属Bi粉末及びBi酸化物粉末を原料粉末とした焼結法によって製造される。通常、焼結法における焼結温度は、原料粉末の溶け出しを防止するため、原料粉末の融点未満の温度で行うことが一般的である。ここで、金属Biの融点は271.3℃であることから、金属BiとBi酸化物を含有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造する場合には、原料粉末である金属Biの融点未満の温度で行うことになる。なお、Bi酸化物(例えばBi)の融点824℃であり、金属Biの融点に対して大きく温度差がある。
【0006】
ここで、金属Biの含有量が比較的少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを焼結法によって製造する場合において、焼結温度を、原料粉末である金属Biの融点未満の温度で行った場合には、Bi酸化物(例えばBi)の焼結が十分に進行せず、密度が十分に向上しないおそれがあった。このように密度が低いスパッタリングターゲットを用いてスパッタした場合には、異常放電及びパーティクルが発生しやすくなるといった問題があった。
そこで、密度を向上させるために、焼結時の圧力を高く設定した場合には、焼結体に割れが生じてしまい、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを歩留り良く製造できなかった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、金属Biの含有量が比較的少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットであっても、密度が十分に高く、安定してスパッタを行うことが可能な金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、この金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットは、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有し、前記Bi酸化物の素地中に前記金属Biの粒子が点在する組織とされており、前記金属Biの密度と前記Bi酸化物の密度と前記組成から算出される理論密度に対する相対密度が80%以上とされていることを特徴としている。
【0009】
上述の構成の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットによれば、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下と比較的少ない場合であっても、前記金属Biの密度と前記Bi酸化物の密度と前記組成から算出される理論密度に対する相対密度が80%以上とされていることから、スパッタ時における異常放電及びパーティクルの発生を抑制することが可能となる。
また、前記Bi酸化物の素地中に前記金属Biの粒子が点在する組織とされていることから、融点の低い金属Biの粒子を融点の高いBi酸化物が取り囲んでおり、焼結時における金属Biの溶け出しを抑制でき、割れ等の欠陥が少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットとなる。
【0010】
本発明の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法は、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有する金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法であって、金属Bi粉末とBi酸化物粉末とを混合する原料粉末混合工程と、原料粉末を焼結する焼結工程と、を有し、前記焼結工程においては、焼結温度が300℃以上500℃以下の範囲内、前記焼結温度での保持時間が60分未満、プレス圧力が49MPa以上98.1MPa以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0011】
上述の構成の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法によれば、焼結工程における焼結温度が300℃以上500℃以下の範囲内とされ、金属Bi粉末の融点を超えてBi酸化物粉末の融点未満の範囲とされているので、金属Bi粉末とBi酸化物粉末とが混合された原料粉末のうち、金属Bi粉末は溶融するが、Bi酸化物粒子は溶融しない。このため、金属Biの液相が溶け出すことをBi酸化物粒子によって抑制することができ、Bi酸化物の素地中に金属Biの粒子が点在する組織となり、割れ等の欠陥の少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造することができる。
【0012】
さらに、前記焼結温度での保持時間が60分未満、及び、プレス圧力が98.1MPa以下とされているので、焼結時に金属Biの液相が溶け出すことを抑制することができ、欠陥の少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造することができる。
また、プレス圧力が49MPa以上とされているので、焼結後の密度を向上させることができ、スパッタ時における異常放電及びパーティクルの発生が抑制された金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属Biの含有量が比較的少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットであっても、密度が十分に高く、安定してスパッタを行うことが可能な金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、この金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの組織観察結果を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態である金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット及び金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットは、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成を有する。
本実施形態では、Bi酸化物としてBiを用いており、金属BiとBiの複合ターゲットとされている。なお、金属Biの融点が271.3℃とされ、Biの融点が824℃とされている。
【0017】
また、本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットにおいては、組織観察の結果、図1に示すように、Bi酸化物の素地11中に金属Bi粒子12が点在する組織とされている。すなわち、本実施形態では、融点の低い金属Bi粒子12が、融点の高いBi酸化物(Bi)に囲まれた構造とされている。
【0018】
さらに、本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットにおいては、金属Biの密度とBi酸化物の密度と上記の組成比から算出される理論密度に対する相対密度が80%以上とされている。
金属Biの密度をρ、Bi酸化物の密度をρ、金属Biの質量比をX、Bi酸化物(Bi)の質量比を(1−X)とした場合に、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの理論密度ρS0は、以下の式で算出される。
ρS0=(ρ×ρ)/(X×ρ+(1−X)×ρ
【0019】
本実施形態では、金属Biの密度ρ=9.80g/cm、Bi酸化物(Bi)の密度ρ=8.90g/cmとして、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成に応じて、それぞれの組成の理論密度を算出した。
【0020】
次に、本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法について、図2のフロー図を参照して説明する。
本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法は、図2に示すように、金属Bi粉末を得る金属Bi粉末作製工程S01と、得られた金属Bi粉末とBi酸化物粉末とを所定の組成となるように秤量して混合する原料粉末混合工程S02と、混合された原料粉末を加熱して焼結する焼結工程S03と、得られた焼結体を機械加工する機械加工工程S04と、を備えている。
【0021】
<金属Bi粉末作製工程S01>
まず、例えば純度99.999質量%以上の金属Biインゴットを準備し、この金属Biインゴットを、振動ミルを用いて粉砕し、得られた粉砕粉末を篩分けすることにより、金属Bi粉末を得た。なお、本実施形態では、篩目が0.25mmの篩を用いて、粉砕粉末の篩分けを実施した。
【0022】
<原料粉末混合工程S02>
次に、Bi酸化物粉末を準備する。ここで、本実施形態では。Bi酸化物粉末として、平均粒径が10μm以上50μm以下とされたBi粉末を準備した。
上述の金属Bi粉末とBi酸化物粉末とを、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下の範囲内とされ、残部がBi酸化物及び不可避不純物とされた組成となるように秤量し、これらを混合する。
本実施形態においては、秤量された原料粉末を、例えばボールミルを用いて混合した。具体的には、秤量された原料粉末をZrOボールとともにポット内に装入し、Ar封入した状態で乾式混合した。
そして、得られた原料粉末(混合粉末)を、篩目が0.5mmの篩を用いて、篩分けした。
【0023】
<焼結工程S03>
次に、上述のようにして得られた原料粉末(混合粉末)を、所定形状のモールド内に充填し、真空雰囲気中でホットプレス焼結を行う。
この焼結工程S03における焼結温度(保持温度)が300℃以上500℃以下の範囲内、焼結温度での保持時間が60分未満、プレス圧力が49MPa(500kgf/cm)以上98.1MPa(1000kgf/cm)以下の範囲内とされている。
【0024】
ここで、焼結工程S03における焼結温度が300℃未満の場合には、Bi粉末の融点(824℃)との差が大きく、焼結が十分に進行せず、密度を十分に向上させることができないおそれがある。一方、焼結温度が500℃を超える場合には、溶融した金属Biが多量に溶け出してしまい、焼結体を得ることができないおそれがある。
以上のことから、焼結工程S03における焼結温度を300℃以上500℃以下の範囲内に設定している。ここで、焼結温度は、焼結体の実体温度とされている。
なお、焼結の進行を確実に進行させて密度のさらなる向上を図るためには、焼結温度の下限を350℃以上とすることがさらに好ましい。また、金属Biの溶け出しを確実に抑制するためには、焼結温度の上限を450℃以下とすることがさらに好ましい。
【0025】
また、保持時間が60分以上の場合には、溶融した金属Biの溶け出しや割れが発生しやすくなり、焼結体を得ることができないおそれがある。以上のことから、焼結工程S03における保持時間を60分未満に設定している。
なお、金属Biの溶け出しや割れの発生を確実に抑制するためには、保持時間の上限を40分以下とすることがさらに好ましい。また、保持時間の下限に特に限定はないが、焼結の進行を確実に進行させるためには、保持時間を1分以上とすることが好ましい。
【0026】
さらに、焼結工程S03におけるプレス圧力が49MPa未満の場合には、圧力が不足し、密度を向上させることができないおそれがある。一方、プレス圧力が98.1MPaを超える場合には、溶融した金属Biの溶け出しや割れが発生しやすくなり、焼結体を得ることができないおそれがある。
以上のことから、焼結工程S03におけるプレス圧力を49MPa以上98.1MPa以下の範囲内に設定している。
なお、密度のさらなる向上を図るためには、プレス圧力の下限を58.8MPa以上とすることがさらに好ましい。また、金属Biの溶け出しや割れの発生を確実に抑制するためには、プレス圧力の上限を78.5MPa以下とすることがさらに好ましい。
【0027】
<機械加工工程S04>
焼結工程S03で得られた焼結体に対して切削加工又は研削加工を施すことにより、所定形状の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットに加工する。
【0028】
以上のような工程により、本実施形態である金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットが製造される。この金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットは、Inをはんだとして、Cu又はSUS(ステンレス)又はその他の金属(例えばMo)からなるバッキングプレートにボンディングして使用される。
【0029】
以上のような構成とされた本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットによれば、金属Biの含有量が2mol%以上35mol%以下と比較的少ない場合であっても、金属Biの密度ρとBi酸化物の密度ρと質量比X、(1−X)から算出される理論密度ρS0に対する相対密度が80%以上とされているので、スパッタ時における異常放電及びパーティクルの発生を抑制することが可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態では、Bi酸化物の素地11中に金属Bi粒子12が点在する組織とされており、融点の低い金属Bi粒子12が、融点の高いBi酸化物(Bi)に取り囲まれた構造とされていることから、焼結工程S03等において、融点が低い金属Biの溶け出しが抑制され、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットにおける割れ等の欠陥が少なくなる。
【0031】
また、本実施形態に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法によれば、焼結工程S03における焼結温度が300℃以上500℃以下の範囲内とされ、金属Bi粉末の融点を超えてBi酸化物粉末の融点未満の範囲とされているので、金属Biの液相が溶け出すことをBi酸化物粒子によって抑制することができ、割れ等の欠陥の少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【0032】
さらに、本実施形態では、焼結温度での保持時間が60分未満、及び、プレス圧力が98.1MPa以下とされているので、焼結時に金属Biの液相が溶け出すことを抑制することができる。また、プレス圧力が49MPa以上とされているので、焼結後の密度を向上させることができる。
よって、理論密度に対する相対密度を80%以上とすることができ、かつ、溶け出しや割れの発生を抑制でき、高品質な金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、原料粉末の混合を、ボールミルを用いて行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、均一に粉末を混合できるものであれば、他の手段を用いてもよい。
【0034】
また、金属Bi粉末の粉砕を振動ミルで行うものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の手段を用いてもよい。
さらに、金属Bi粉末の純度、粒径、Bi酸化物粒子の粒径等は、本実施形態で規定した範囲に限定されることはなく、適宜設計変更してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明に係る金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲット、及び、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの製造方法の作用効果について評価した評価試験の結果について説明する。
【0036】
純度99.999質量%以上の金属Biインゴットを準備し、この金属Biインゴットを、振動ミルを用いて粉砕し、篩目0.25mmの篩を用いて篩分けを行い、金属Bi粉末を得た。
また、純度99.9質量%以上、平均粒径10μm以上50μm以下のBi粉末を準備した。
【0037】
上述の金属Bi粉末及びBi粉末を、表1に示す組成となるように秤量し、秤量した金属Bi粉末及びBi粉末をZrOボールとともにボールミル装置のポット内に装入し、Ar封入した状態で乾式混合した。混合した原料粉末を、篩目が0.5mmの篩を用いて、篩分けした。
【0038】
上述のようにして得られた原料混合粉末を鉄製モールドに充填し、焼結温度、保持時間、プレス圧力を表1に示す条件となるように設定し、ホットプレス焼結を実施した。
そして、得られたホットプレス焼結体を機械加工して直径:125mm、厚さ:5mmの金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを作製した。
【0039】
<組成分析>
焼結体を所望のターゲット寸法に機械加工する際に発生する加工粉を集めて、ICPにてBi含有量を測定した。その結果、Bi仕込み組成とほぼ同等であることを確認した。
なお、金属Bi及びBi酸化物のそれぞれの含有量は、Bi酸化物としてはBiでしか存在しないため、Bi−Bi中の全Bi含有量を分析し、その質量%を測定することで同定することができる。すなわち、分析したBiの質量%から、BiとOの原子量比が求められ、さらに金属BiとBiの配合比(mol%)が求められる。
【0040】
例えば、ICP分析でBiの含有量がWBi質量%であった場合、Oの含有量は、W質量%=(100−WBi)質量%である。ここで、Biの原子量比をABi原子%、Oの原子量比をA原子%、Biの原子量をMBi、Oの原子量をMとすると、
Bi:W=MBi×ABi:M×A
→ WBi×M×A=W×MBi×ABi・・・(1)
Bi+A = 100 ・・・(2)
が成り立つ。
これら(1)式と(2)式から、Biの原子量比ABi原子%、Oの原子量比A原子%を求めることができる。
【0041】
さらに、金属Biの配合量をX、Biの配合量をYとすると、Bi中のBi量は2Y、Bi中のO量は3Yであることから、
X+2Y=ABi・・・(3)
3Y=A・・・(4)
となり、この(3)式と(4)式から、金属Biの配合量X、Biの配合量Yを求めることができる。
これが金属BiとBiの配合比となり、百分率で表すことで、金属Bi及びBiのmol%が求められる。
算出された金属Bi、Bi酸化物(Bi)のmol%を表1に示す。
【0042】
<ターゲットの密度>
得られた金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットについて、ノギスで寸法を測定するとともに、電子天秤で重量を測定し、密度を測定した。また、上述の実施形態で示したように、金属Biの密度ρ=9.80g/cm、Bi酸化物(Bi)の密度ρ=8.90g/cmとして、金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットの理論密度ρS0を算出し、理論密度ρS0に対する相対密度を評価した。評価結果を表2に示す。
【0043】
<ターゲットの組織観察>
得られた金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを切断して観察試料を作製し、FE−SEM(日本電子株式会社製JXA―8500F)を用いて、加速電圧15kV、加速電流50nAの条件で観察した。
本発明例においては、いずれも、Bi酸化物の素地中に金属Bi粒子が点在する組織となっていた。
【0044】
<Biの溶け出し>
得られた金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを観察し、Biの溶け出しの有無を確認した。Biの溶け出しにより使用不可となったものを「あり」、目視観察にて溶け出しが確認されたが使用可能なものを「少」、溶け出しが確認されなかったものを「なし」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0045】
<金属Bi−Bi酸化物複合膜の成膜>
次に、上述の金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを無酸素銅製のバッキングプレートにはんだ付けし、これを基板対向自転式スパッタ装置(北野精機株式会社製)に装着し、以下の条件にてスパッタリング成膜を実施した。
【0046】
電力:RF500W
全圧:0.4Pa
スパッタガス:Ar
ガス流量:50sccm
基板:ガラス基板
【0047】
<異常放電>
スパッタ後、チャンバーを開放して、目視でターゲットの損傷具合を評価した。使用後のターゲットを目視で観察し、表面に異常放電の痕跡(溶融、焦げ、穴)が確認された場合に「あり」と判断した。評価結果を表2に示す。
【0048】
<パーティクル>
スパッタ後、チャンバーを開放して、目視で装置周りのパーティクルの有無を評価した。評価結果を表2に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
焼結工程におけるプレス圧力が29.4MPa(300kgf/cm)とされた比較例1では、密度比が74.4%と低く、スパッタ時に異常放電及びパーティクルが多く発生した。
焼結工程におけるプレス圧力が147MPa(1500kgf/cm)とされた比較例2では、Biの溶け出しが発生し、スパッタリングターゲットを製造することができなかった。
【0052】
焼結工程における焼結温度が180℃とされた比較例3においては、密度比が75.9%と低く、スパッタ時に異常放電及びパーティクルが多く発生した。
焼結工程における焼結温度が510℃とされた比較例4においては、Biの溶け出しが発生し、スパッタリングターゲットを製造することができなかった。
【0053】
焼結工程における保持時間が70分とされた比較例5においては、Biの溶けだし、及び、焼結体の割れが生じ、スパッタリングターゲットを製造することができなかった。
【0054】
これに対して、焼結条件が本発明の範囲内とされた本発明例においては、理論密度に対する相対密度が80%以上とされており、Bi酸化物の素地中に金属Bi粒子が点在する組織とされていた。また、Biの溶け出しが極めて少なく、焼結体の割れもなく、スパッタリングターゲットを良好に製造することができた。
また、スパッタ時における異常放電及びパーティクルの発生が抑制されており、安定してスパッタ成膜可能であった。
【0055】
以上の確認実験の結果から、本発明例によれば、金属Biの含有量が比較的少ない金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットであっても、密度が十分に高く、安定してスパッタを行うことが可能な金属Bi−Bi酸化物複合スパッタリングターゲットを提供可能であることが確認された。
図2
図1