特開2016-222981IP Force 特許公報全文掲載

技術分野

摺動部材、クラッチプレートおよびそれらの製造方法に関するものである。

要約特許出願時に添付された[要約書]

【課題】耐摩耗性を向上できるとともに、比較的高い平坦度を確保できる摺動部材の製造方法および摺動部材を提供する。
【解決手段】鋼材からなる母材部110と、母材部110の表面側に形成される窒素拡散層120と、窒素拡散層120の表面側に形成される窒素化合物層130と、窒素化合物層130の最表面に形成される酸化層140と、を備える摺動部材の製造方法において、鋼材からなる素材に対して570〜660℃のアンモニアを含む雰囲気にて加熱処理を行った後に冷却処理を行う第一工程と、第一工程に続いて、表面側を加圧しながら焼戻し処理を行う第二工程と、第二工程に続いて、水蒸気雰囲気にて加熱する水蒸気処理を行う第三工程と、を行うことにより、窒素拡散層120、窒素化合物層130および酸化層140を形成する摺動部材の製造方法。
【選択図】図3

発明が解決しようとする課題[発明の詳細な説明]から抜粋

ここで、クラッチプレートなどの摺動部材が長時間使用された場合、摺動部材の表面が摩耗することにより、相手部材との接触面積が変化するため、両者間の伝達トルクが増大する。よって、クラッチプレートなどの摺動部材には、耐摩耗性を向上させたいとの要請がある。また、クラッチプレートなどの摺動部材の表面は、高い平坦度を確保する必要がある。 本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性を向上できるとともに、比較的高い平坦度を確保できる摺動部材の製造方法および摺動部材を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段[発明の詳細な説明]から抜粋

本発明は、摺動部材の製造方法として把握することができ、また摺動部材の一態様としての電磁クラッチのクラッチプレートの製造方法として把握することもでき、摺動部材およびクラッチプレートとしても把握することができる。
【発明の効果】
上述した摺動部材の製造方法または摺動部材によれば、第三工程にて水蒸気処理を行っているため、窒素化合物層の最表面に四酸化三鉄からなる緻密な酸化層を形成することができる。これにより、凝着摩耗を抑制することができるため、摺動部材の耐摩耗性を向上させることができる。 さらに、第三工程の水蒸気処理は、第二工程の焼戻し処理に続いて行うため、比較的高い平坦度を確保することができる。仮に、第一工程の冷却処理に続いて(焼戻し処理でなく)水蒸気処理を行った場合、水蒸気処理において素材が加圧されない状態にて残留オーステナイトがマルテンサイトに変態し、第一工程で生じた素材の歪が矯正されないまま素材が硬化してしまう。よって、これに続いて素材を加圧した状態で焼戻し処理を行っても最終的な摺動部材の平坦度が低下する。 また、第二工程における焼戻し処理は、第一工程の冷却処理に続いて行われるため、平坦度を良好にすることができる。さらに、焼戻し処理は、素材を加圧させることで歪を矯正しながら残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させるため、平坦度をさらに向上させることができる。また、焼戻し処理においては、残留オーステナイトがマルテンサイトに変態するため、摺動部材の表面側の硬度を確保することができる。 また、加熱処理において、アンモニアを含む雰囲気での加熱処理を行っている。つまり、第一工程にて素材に対して窒化されている。この加熱処理における温度は、570〜660℃である。570℃以上で加熱することで、確実に、窒素化合物層および窒素拡散層の厚みをそれぞれ5〜50μm確保することができる。また、加熱処理における温度を660℃以下とすることで、窒化化合物の拡散(消失)を抑制することができる。よって、摺動部材の表面側の硬度を確保することができる。 また、窒素化合物層および窒素拡散層の厚みがそれぞれ5〜50μm確保されているため、摺動部材の表面側の硬度を高い硬度とすることができる。酸化層の厚みは、0.3〜3μm確保されているため、耐摩耗性を確実に確保することができる。 上述したクラッチプレートの製造方法またはクラッチプレートによれば、上述した摺動部材の製造方法または摺動部材による効果を奏する。ここで、窒素化合物層および窒素拡散層の厚みをそれぞれ50μm以下としている。仮に、50μmより厚くすると、透磁率が低下するため、クラッチプレートの磁束密度が低下して、クラッチプレート間の摩擦係合力が低下することになる。そのため、50μm以下としている。 さらに、上述したクラッチプレートによれば、高い耐摩耗性を有しているため、長時間使用したとしても、クラッチプレートの摩耗量が抑制される。よって、クラッチプレート同士の接触面積が大きく変化しない。従って、使用前と長時間使用後における伝達トルクの変化率を小さくできる。 また、焼戻し工程を行う場合には、窒素化合物層および窒素拡散層に含まれている非磁性である残留オーステナイトを磁性であるマルテンサイトに変態させることができる。これにより、クラッチプレートの透磁率および硬度を上げることができる。

この発明についての権利主張の範囲[特許請求の範囲]

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この特許公報に記載されている図面[図面の簡単な説明]から抜粋

【図1】本発明の実施形態である摺動部材またはクラッチプレートの表面構造を示す。

【図2】図1に示す摺動部材またはクラッチプレートの製造方法を示すフローチャートである。(実施例)

【図3】図2の熱処理工程図である。(実施例)

【図4】比較例1の製造方法を示すフローチャートである。

【図5】図4の熱処理工程図である。(比較例1)

【図6】比較例2の製造方法を示すフローチャートである。

【図7】対象部材の平坦度の平均値および標準偏差を示すグラフである。

【図8】対象部材の実機耐久摩擦試験後の摩耗量を示すグラフである。

【図9】本実施形態のクラッチプレートを適用した駆動力伝達装置の軸方向断面図である。

【図10】図9のアウタプレートの軸方向から見た図である。図中、環状線は溝を示す。

【図11】図9のインナプレートの軸方向から見た図である。図中、交差線は溝を示す。

選択図 図3出願人が指定した本件の代表的な図

110…母材部、120…窒素拡散層、130…窒素化合物層、140…酸化層、31,32,44a,44b…クラッチプレート。

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