【実施例1】
【0014】
<1>全体構成
図1および
図2を参照しながら、本発明に係る連続壁の止水構造の構成について説明する。
本実施例に係る連続壁は、地盤Xを掘削してなる掘削部内に建て込む連壁部材10と、前記掘削部内に満たす充填材からなる固化体20と、によって構築する。
【0015】
<2>連壁部材
連壁部材10は、連続壁の芯材に相当する部材である。
連壁部材の断面形状は、H形、I形、矢板形状など、公知の鋼材を採用することができ、特段限定しない。
本実施例では、連壁部材10は、ウェブ11およびフランジ12からなるH形形状の鋼材であり、フランジ12の両端には、他方の連壁部材と連結するための継手13を設けた形状を呈している。この継手13を介した連結により、連続壁を横方向に延伸することができる。
継手13の構造および形状についても、特段限定しない。
【0016】
<3>固化体
固化体20は、連続壁の壁体部分に相当する部材である。
固化体20には、原位置土撹拌工によって得られるソイルモルタル、安定液掘削工法による安定液から置換したコンクリート、等の充填材を用いる。
充填材は、固化遅延剤と固化促進剤を組み合わせることによって掘削開始から連壁部材10の建込作業中までテーブルフローを高く保ち、連壁部材10の建込後は速やかに固化する特性とすることが望ましい。
連壁部材10の建込作業中に充填材のテーブルフローを高く保っておくと、連壁部材10の継手13間への充填材の回り込み性が向上し、連続壁の横方向の継手部分の止水性の向上に寄与し得る。
なお、上記の特性を実現する方法として、アロンソイル(登録商標)などの流動性保持混和剤を添加する方法がある。
【0017】
<4>添接板
添接板30は、連壁部材10の縦方向(長手方向または深さ方向)の連結に用いる部材である。
添接板30は、対向する連壁部材10のフランジ12を挟むように配置し、両者をボルトナットで締結して、連壁部材同士を連結固定している。
【0018】
<5>止水部
止水部40は、連壁部材10の縦方向の連結箇所に生じた隙間を埋めるための部材である。
図2を参照しながら止水部の具体例について以下説明する。
【0019】
<5.1>素材例
止水部40の素材には、ゴム、水膨張ゴム、スポンジなど、建設用途の止水シールとして用いる公知の弾性部材41を使用することができる。
【0020】
<5.2>形状例
止水部40の断面形状は、あらゆる態様を採用することができる。
図2では、連壁部材10を構成するウェブ11、フランジ12、継手13毎に分離した弾性部材41(41a,41b,41c)を用いているが、これらを一体成形したものを用いても良い。
また、図示しないが、止水部40の上面にリップを設けた形状や、止水部40の内部に空洞を設けた形状としても良い。
【0021】
<5.3>配置例
止水部40の配置箇所は、上下に連結する連壁部材10のうち、少なくとも何れか一方の連壁部材10の端部に取り付ければよい。
すなわち、本発明では、縦方向に連結する連壁部材10の一方のみに止水部40を設けても良いし、両方に止水部40を設けても良い。
なお、
図2では、下方の連壁部材10の上端にのみ、止水部40を取り付ける態様としている。これは、取付作業が簡単で、且つ止水部40を正確な位置に取り付けることが可能な方法と考えられるためである。
連壁部材10と止水部40の取り付け方法は、接着剤を用いる方法や、止水部40の底部に接着面を設けておく方法など、公知の方法を適宜選択すれば良い。
その他、添接板30を仮止めした後に、止水部40の貼り付け作業を行えば、添接板30がガイドとなって貼付け作業が容易となる。
【0022】
<6>作用・効果
再度、
図1を参照する。
図1に示すように、下方の連壁部材10に設けた止水部40は、上方の連壁部材10の端部で押圧して潰れた状態となり、連壁部材10の縦方向の連結箇所に生じる隙間が、完全に閉塞した状態を呈している。
よって、連続壁構築後に、予期せぬ問題によって連壁部材10のズレや固化体20のひび割れが発生しても、水の侵入に関する問題は発生しない。
【実施例2】
【0023】
本発明の第2実施例について
図3を参照しながら説明する。
本実施例では、止水材40を構成する弾性部材41を、連壁部材10の端部に被せることが可能な形状としている。
なお、本実施例に係る弾性部材41は、連壁部材10の連結後に添接板30が干渉する箇所には設けることができない。よって、本実施例に係る弾性部材41は、フランジ12の端部近傍や、継手13の部分に対して適用することが可能である。
図3に、第2実施例に係る弾性部材の一例を示す。
図3では、連壁部材10の継手13に取り付ける弾性部材41cを、凹部411を設けた形状としている。
本実施例に係る構成によれば、弾性部材41の剥離や捩れをさらに抑制することのできる止水部40を構成することができる。