特開2016-223083(P2016-223083A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223083(P2016-223083A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】連続壁の止水構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/20 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   E02D5/20 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-108232(P2015-108232)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】生井 康丈
(72)【発明者】
【氏名】伊東 憲
(72)【発明者】
【氏名】松野 一之
(72)【発明者】
【氏名】田崎 信一
(72)【発明者】
【氏名】大友 健
【テーマコード(参考)】
2D049
【Fターム(参考)】
2D049EA01
2D049FB03
2D049FB13
2D049FC02
2D049GC03
2D049GC11
2D049GE03
2D049GE20
(57)【要約】
【課題】連壁部材の縦方向の連結に添接板を用いる場合であっても、止水性を確保すること。
【解決手段】地盤を掘削してなる掘削部に建て込む連壁部材を少なくとも具備する連続壁の止水構造であって、前記連壁部材は、少なくとも縦方向において、添接板によって複数連結するものであり、前記連壁部材の縦方向の連結箇所に生じた隙間を埋めるように設けた止水部を少なくとも有し、前記止水部が、連結する連壁部材のうち、少なくとも何れか一方の連壁部材の端部に取り付ける弾性部材であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削してなる掘削部に建て込んだ連壁部材を少なくとも具備する連続壁の止水構造であって、
前記連壁部材は、少なくとも縦方向において、添接板によって複数連結するものであり、
前記連壁部材の縦方向の連結箇所に生じた隙間を埋めるように設けた止水部を少なくとも有し、
前記止水部が、連結する連壁部材のうち、少なくとも何れか一方の連壁部材の端部に取り付ける弾性部材であることを特徴とする、
連続壁の止水構造。
【請求項2】
前記弾性部材を、前記連壁部材の端部の一部または全部に被せるように設けてあることを特徴とする、請求項1に記載の連続壁の止水構造。
【請求項3】
前記連壁部材の端部の一部または全部に、前記弾性部材を収容するための収容空間を設けてあることを特徴とする、請求項1または2に記載の連続壁の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に設ける連続壁の止水構造に関し、より詳細には、連続壁を構成する連壁部材同士の縦方向の連結部における止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に連続壁を構築する方法として、例えば特許文献1に記載の鋼製地中連続壁工法がある。
図5に、従来の連続壁の構造を示す。
この連続壁は、地盤を掘削してなる掘削部内に建て込む連壁部材aと、前記掘削部内に満たす充填材からなる固化体bと、を具備する(図5(a))。
【0003】
連壁部材aは、H形形状の鋼材であり、フランジの両端に継手を設けた形状を呈している。この継手を介して、横方向(短手方向/平面方向)に順次連壁部材aを連結することにより連続壁を横方向に延伸することができる。
また、連壁部材aの縦方向(長手方向/深さ方向)の連結は、現場溶接による方法や、添接板cを介してボルト結合する方法がある。
【0004】
固化体bは、原位置土撹拌工によって得られるソイルモルタルや、安定液掘削工法による安定液から置換したコンクリート等の充填材を用いる方法が一般的である。
【0005】
この連続壁を、仮設の土留壁としてだけでなく、のちに構築する地下構造物の外壁としても兼用する場合がある。この場合、連続壁を構成する連壁部材同士の間には、より確実な止水性が要求される。
連壁部材aの横方向の連結箇所における止水対策としては、充填材の流動性を向上させて継手間の隙間に侵入し易くする方法や、継手間に充填材とは別にグラウト注入を行う方法などがある。
【0006】
一方、連壁部材aの縦方向の連結箇所における止水対策は、普段考慮されていない。これは、連壁部材aの縦方向(長手方向)は、連壁部材aが連続しているものであるから、当然止水性が約束されていると考えられているためと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−101709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、連壁部材aの縦方向への連結に添接板cを用いる場合、連壁部材aの設計上の都合や、連壁部材aの変形などの要因によって、連結後も連壁部材aの連結箇所に隙間dが生じることが多い(図5(b))。
そうすると、掘削側地盤の掘削によって連壁部材aが露出した際に、隙間dを通して連続壁の内部へと水が出入りしてしまい、止水性を確保することができない場合がある。また、連壁部材aの連結部周辺の固化体は、構造的にひび割れが発生しやすく、水漏れの原因となることが想定される。
したがって、連壁部材aを添接板cによって連結してなる連続壁を、本体地下壁に兼用する場合には、連壁部材aの縦方向での連結部の止水性を別途確保する必要があった。
【0009】
本願発明は、連壁部材の縦方向の連結に添接板を用いる場合であっても、止水性を確保することが可能な手段の提供を目的の1つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、地盤を掘削してなる掘削部に建て込んだ連壁部材を少なくとも具備する連続壁の止水構造であって、
前記連壁部材は、少なくとも縦方向において、添接板によって複数連結するものであり、前記連壁部材の縦方向の連結箇所に生じた隙間を埋めるように設けた止水部を少なくとも有し、前記止水部が、連結する連壁部材のうち、少なくとも何れか一方の連壁部材の端部に取り付ける弾性部材であることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記弾性部材を、前記連壁部材の端部の一部または全部に被せるように設けてあることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1または第2発明において、前記連壁部材の端部の一部または全部に、前記弾性部材を収容するための収容空間を設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)連壁部材の縦方向の連結に添接板を用いる場合であっても、止水性を確保することができる。よって、連続壁構築後の地盤掘削作業により連壁部材が露出しても、水の侵入などの問題が発生しない。
(2)予期せぬ問題により、施工後に連壁部材間の隙間が拡がってしまった場合でも、弾性部材の復元作用によって、隙間を引き続き埋めることができる。
(3)弾性部材を、連壁部材の端部に被せるように設けることで、弾性部材の剥離や捩れをさらに抑制することができる。
(4)連壁部材の端部に、弾性部材を収容するための収容空間を設けることで、弾性部材の剥離や捩れを抑制可能な止水部を、添接板と干渉することなく設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る連続壁の止水構造を示す概略斜視図。
図2】止水部の構成を示す概略図。
図3】止水部のその他の形状例を示す概略図。
図4】止水部のその他の形状例を示す概略図。
図5】従来の連続壁を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
<1>全体構成
図1および図2を参照しながら、本発明に係る連続壁の止水構造の構成について説明する。
本実施例に係る連続壁は、地盤Xを掘削してなる掘削部内に建て込む連壁部材10と、前記掘削部内に満たす充填材からなる固化体20と、によって構築する。
【0015】
<2>連壁部材
連壁部材10は、連続壁の芯材に相当する部材である。
連壁部材の断面形状は、H形、I形、矢板形状など、公知の鋼材を採用することができ、特段限定しない。
本実施例では、連壁部材10は、ウェブ11およびフランジ12からなるH形形状の鋼材であり、フランジ12の両端には、他方の連壁部材と連結するための継手13を設けた形状を呈している。この継手13を介した連結により、連続壁を横方向に延伸することができる。
継手13の構造および形状についても、特段限定しない。
【0016】
<3>固化体
固化体20は、連続壁の壁体部分に相当する部材である。
固化体20には、原位置土撹拌工によって得られるソイルモルタル、安定液掘削工法による安定液から置換したコンクリート、等の充填材を用いる。
充填材は、固化遅延剤と固化促進剤を組み合わせることによって掘削開始から連壁部材10の建込作業中までテーブルフローを高く保ち、連壁部材10の建込後は速やかに固化する特性とすることが望ましい。
連壁部材10の建込作業中に充填材のテーブルフローを高く保っておくと、連壁部材10の継手13間への充填材の回り込み性が向上し、連続壁の横方向の継手部分の止水性の向上に寄与し得る。
なお、上記の特性を実現する方法として、アロンソイル(登録商標)などの流動性保持混和剤を添加する方法がある。
【0017】
<4>添接板
添接板30は、連壁部材10の縦方向(長手方向または深さ方向)の連結に用いる部材である。
添接板30は、対向する連壁部材10のフランジ12を挟むように配置し、両者をボルトナットで締結して、連壁部材同士を連結固定している。
【0018】
<5>止水部
止水部40は、連壁部材10の縦方向の連結箇所に生じた隙間を埋めるための部材である。
図2を参照しながら止水部の具体例について以下説明する。
【0019】
<5.1>素材例
止水部40の素材には、ゴム、水膨張ゴム、スポンジなど、建設用途の止水シールとして用いる公知の弾性部材41を使用することができる。
【0020】
<5.2>形状例
止水部40の断面形状は、あらゆる態様を採用することができる。
図2では、連壁部材10を構成するウェブ11、フランジ12、継手13毎に分離した弾性部材41(41a,41b,41c)を用いているが、これらを一体成形したものを用いても良い。
また、図示しないが、止水部40の上面にリップを設けた形状や、止水部40の内部に空洞を設けた形状としても良い。
【0021】
<5.3>配置例
止水部40の配置箇所は、上下に連結する連壁部材10のうち、少なくとも何れか一方の連壁部材10の端部に取り付ければよい。
すなわち、本発明では、縦方向に連結する連壁部材10の一方のみに止水部40を設けても良いし、両方に止水部40を設けても良い。
なお、図2では、下方の連壁部材10の上端にのみ、止水部40を取り付ける態様としている。これは、取付作業が簡単で、且つ止水部40を正確な位置に取り付けることが可能な方法と考えられるためである。
連壁部材10と止水部40の取り付け方法は、接着剤を用いる方法や、止水部40の底部に接着面を設けておく方法など、公知の方法を適宜選択すれば良い。
その他、添接板30を仮止めした後に、止水部40の貼り付け作業を行えば、添接板30がガイドとなって貼付け作業が容易となる。
【0022】
<6>作用・効果
再度、図1を参照する。
図1に示すように、下方の連壁部材10に設けた止水部40は、上方の連壁部材10の端部で押圧して潰れた状態となり、連壁部材10の縦方向の連結箇所に生じる隙間が、完全に閉塞した状態を呈している。
よって、連続壁構築後に、予期せぬ問題によって連壁部材10のズレや固化体20のひび割れが発生しても、水の侵入に関する問題は発生しない。
【実施例2】
【0023】
本発明の第2実施例について図3を参照しながら説明する。
本実施例では、止水材40を構成する弾性部材41を、連壁部材10の端部に被せることが可能な形状としている。
なお、本実施例に係る弾性部材41は、連壁部材10の連結後に添接板30が干渉する箇所には設けることができない。よって、本実施例に係る弾性部材41は、フランジ12の端部近傍や、継手13の部分に対して適用することが可能である。
図3に、第2実施例に係る弾性部材の一例を示す。
図3では、連壁部材10の継手13に取り付ける弾性部材41cを、凹部411を設けた形状としている。
本実施例に係る構成によれば、弾性部材41の剥離や捩れをさらに抑制することのできる止水部40を構成することができる。
【実施例3】
【0024】
本発明の第3実施例について図4を参照しながら説明する。
本実施例では、連壁部材10の端部に、収容空間を設け、該収容空間に弾性部材41の一部を収容している。
図4に、第3実施例に係る収容空間の一例を示す。
図4(a)では、連壁部材10の両側面に設けた張出板14(図4(a))で収容空間を形成している。また、図4(b)では、連壁部材10の端面から内側に設ける溝15(図4(b))を収容空間としている。
本実施例に係る構成によれば、弾性部材41の剥離や捩れをさらに抑制することができる止水部40を、添接板30と干渉することなく、連壁部材10の端部全面に設けることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 連壁部材
11 ウェブ
12 フランジ
13 継手
14 張出板
15 溝
20 固化体
30 添接板
40 止水部
41 弾性部材
411 凹部
a 連壁部材
b 固化体
c 添接板
d 隙間
図1
図2
図3
図4
図5