特開2016-223114(P2016-223114A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223114(P2016-223114A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】トンネルの急速施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   E21D9/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-108829(P2015-108829)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】藤内 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】岩野 健
(72)【発明者】
【氏名】金岡 幹
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054DA02
2D054DA37
(57)【要約】
【課題】ズリ出し作業に要する時間を短縮することのできるトンネルの急速施工方法を提供する。
【解決手段】発破によって掘削されるトンネル1の切羽2の後方の退避位置にクラッシャー16および連続ベルトコンベヤ20を設置しておき、掘削に伴って切羽2付近で発生するズリ3をホイールローダー10、12で運搬してクラッシャー16に投入し、クラッシャー16で破砕したズリ3を連続ベルトコンベヤ20で坑外4に搬出するトンネルの急速施工方法であって、第一ホイールローダー10は、切羽2付近のズリ3をクラッシャー16まで運搬して、運搬したズリ3をクラッシャー16に投入し、第二ホイールローダー12は、切羽2付近のズリを、切羽2とクラッシャー16との間に設けたズリ仮置場5まで運搬して、このズリ仮置場5に仮置きするようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発破によって掘削されるトンネルの切羽の後方の退避位置にクラッシャーおよび連続ベルトコンベヤを設置しておき、掘削に伴って切羽付近で発生するズリをホイールローダーで運搬してクラッシャーに投入し、クラッシャーで破砕したズリを連続ベルトコンベヤで坑外に搬出するトンネルの急速施工方法であって、
前記ホイールローダーは、少なくとも第一ホイールローダーと第二ホイールローダーとからなり、
第一ホイールローダーは、切羽付近のズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入し、
第二ホイールローダーは、切羽付近のズリを、切羽とクラッシャーとの間に設けたズリ仮置場まで運搬して、このズリ仮置場に仮置きすることを特徴とするトンネルの急速施工方法。
【請求項2】
第一ホイールローダーと第二ホイールローダーの少なくとも一方は、次回のズリ出し作業工程の開始までに、ズリ仮置場に仮置きしたズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入することを特徴とする請求項1に記載のトンネルの急速施工方法。
【請求項3】
切羽付近のズリを完全に除去し終えた時点の前後の所定期間に、次工程で使用する機械を切羽付近に搬入することを特徴とする請求項1または2に記載のトンネルの急速施工方法。
【請求項4】
第一ホイールローダーがズリをクラッシャーへ運搬または投入している間に第二ホールローダーが切羽付近でズリを積み込み、第二ホイールローダーがズリをズリ仮置場へ運搬または仮置きしている間に第一ホイールローダーがズリを切羽付近で積み込むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のトンネルの急速施工方法。
【請求項5】
ズリ仮置場をクラッシャーの近傍に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のトンネルの急速施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズリ出し作業に要する時間を短縮するトンネルの急速施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの切羽を掘削する方法として、切羽に対して発破を行う方法が知られている。発破によって生じた岩塊や土砂(ズリ)を坑外に排出する方法(ズリ出し)としては、近年のNATM工法では環境への配慮から、トンネル内に設けた連続ベルトコンベヤを用いてズリを坑外に搬送する方式が主流となっている(例えば、特許文献1、2を参照)。この方式では、図6に例示するように、掘削によって生じた切羽2付近のズリ3を破砕するためのクラッシャー7aをトンネル1内にあらかじめ配置しておき、ホイールローダー6でズリ3をクラッシャー7aまで搬送する。そして、そのままの形では搬送困難な大きさのズリ3をクラッシャー7aで細かく破砕してから、クラッシャー7aに近接配置してある連続ベルトコンベヤ7cに移載し、連続ベルトコンベヤ7cによって坑口4まで搬送する。なお、クラッシャー7aで破砕したズリ3を連続ベルトコンベヤ7cに移載する際には、テールピース台車7bが用いられる。
【0003】
ここで、切羽2付近で発破を使用する場合、退避の必要上、クラッシャー7a、連続ベルトコンベヤ7cを切羽2付近に設置することはできない。そのため、上述したように、切羽2付近で発生したズリ3をホイールローダー6で切羽2から所定距離L(例えばL=60m程度)以上離れた退避位置のクラッシャー7aまで搬出するとともに、クラッシャー7aに投入することになる。なお、ホイールローダー6は機動性に優れ、切羽2とクラッシャー7a間のズリ運搬時間をクローラータイプのローダーより短時間で行えるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2899880号公報
【特許文献2】特許第4493187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ズリ出し作業中においては、ホイールローダー6は切羽2とクラッシャー7a間を絶えず往復する一方、ズリ3をクラッシャー7aに投入するため稼動時間が長くなる。また、切羽2付近のズリ3を完全に除去し終えるまでは次工程(通常は1次吹付の工程)に進むことができない。したがって、掘削サイクルタイムの短縮を図るために、ズリ出し作業に要する時間を短縮することが求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ズリ出し作業に要する時間を短縮することのできるトンネルの急速施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るトンネルの急速施工方法は、発破によって掘削されるトンネルの切羽の後方の退避位置にクラッシャーおよび連続ベルトコンベヤを設置しておき、掘削に伴って切羽付近で発生するズリをホイールローダーで運搬してクラッシャーに投入し、クラッシャーで破砕したズリを連続ベルトコンベヤで坑外に搬出するトンネルの急速施工方法であって、前記ホイールローダーは、少なくとも第一ホイールローダーと第二ホイールローダーとからなり、第一ホイールローダーは、切羽付近のズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入し、第二ホイールローダーは、切羽付近のズリを、切羽とクラッシャーとの間に設けたズリ仮置場まで運搬して、このズリ仮置場に仮置きすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法は、上述した発明において、第一ホイールローダーと第二ホイールローダーの少なくとも一方は、次回のズリ出し作業工程の開始までに、ズリ仮置場に仮置きしたズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法は、上述した発明において、切羽付近のズリを完全に除去し終えた時点の前後の所定期間に、次工程で使用する機械を切羽付近に搬入することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法は、上述した発明において、第一ホイールローダーがズリをクラッシャーへ運搬または投入している間に第二ホールローダーが切羽付近でズリを積み込み、第二ホイールローダーがズリをズリ仮置場へ運搬または仮置きしている間に第一ホイールローダーがズリを切羽付近で積み込むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法は、上述した発明において、ズリ仮置場をクラッシャーの近傍に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るトンネルの急速施工方法によれば、発破によって掘削されるトンネルの切羽の後方の退避位置にクラッシャーおよび連続ベルトコンベヤを設置しておき、掘削に伴って切羽付近で発生するズリをホイールローダーで運搬してクラッシャーに投入し、クラッシャーで破砕したズリを連続ベルトコンベヤで坑外に搬出するトンネルの急速施工方法であって、前記ホイールローダーは、少なくとも第一ホイールローダーと第二ホイールローダーとからなり、第一ホイールローダーは、切羽付近のズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入し、第二ホイールローダーは、切羽付近のズリを、切羽とクラッシャーとの間に設けたズリ仮置場まで運搬して、このズリ仮置場に仮置きするので、第一ホイールローダーと第二ホイールローダーによる同時並行の運搬作業によって、特殊な設備を用いることなく、ズリ出し作業に要する時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、第一ホイールローダーと第二ホイールローダーの少なくとも一方は、次回のズリ出し作業工程の開始までに、ズリ仮置場に仮置きしたズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入する。この作業は切羽での作業と完全に独立して実施可能であるため、切羽での次工程の作業と同時並行的に実施することにより掘削サイクルタイムの短縮を図ることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、切羽付近のズリを完全に除去し終えた時点の前後の所定期間に、次工程で使用する機械を切羽付近に搬入するので、掘削サイクルタイムをより一層短縮することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、第一ホイールローダーがズリをクラッシャーへ運搬または投入している間に第二ホールローダーが切羽付近でズリを積み込み、第二ホイールローダーがズリをズリ仮置場へ運搬または仮置きしている間に第一ホイールローダーがズリを切羽付近で積み込むので、第一ホイールローダーおよび第二ホイールローダーによるズリ運搬作業を効率的に行うことができるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、ズリ仮置場をクラッシャーの近傍に設けたので、ズリ仮置場からクラッシャーまでのズリ運搬距離が短くなり、この間のズリ運搬時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係るトンネルの急速施工方法のステップS1を示すトンネル平面図である。
図2図2は、本発明に係るトンネルの急速施工方法のステップS2を示すトンネル平面図である。
図3図3は、本発明に係るトンネルの急速施工方法のステップS3を示すトンネル平面図である。
図4図4は、本発明に係るトンネルの急速施工方法のステップS4を示すトンネル平面図である。
図5図5は、本発明に係るトンネルの急速施工方法のステップS5を示すトンネル平面図である。
図6図6は、従来のズリ出し方法の一例を示すトンネル平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るトンネルの急速施工方法は、切羽の早期開放が次工程に移るうえでの重要事項であることに着目して創作したものである。本発明では、切羽付近からのズリ出し用のホイールローダーとして従来の1台に加えてもう1台配備し、ズリの運搬を2台のホイールローダーで行う。しかし、単純にホイールローダーを2台にしてもクラッシャー自体の破砕能力がネックとなり、クラッシャーに一度に投入できるズリ量には限界がある。したがって、如何にしてクラッシャーの稼働率を上げるかということを念頭におく必要がある。そこで、1台のホイールローダーは従来の方法と同様にクラッシャーへのズリの直接投入をしながら、もう1台のホイールローダーで切羽付近の作業に支障のない場所にズリを仮置きし、切羽の開放を早期に行い、次工程へ速やかに移れるようにしている。
【0019】
以下に、本発明に係るトンネルの急速施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本発明に係るトンネルの急速施工方法は、発破によって掘削されるトンネル1の切羽2の後方の退避位置にクラッシャー16および連続ベルトコンベヤ20を設置しておき、掘削に伴って切羽2付近で発生するズリ3を2台のホイールローダー10、12で運搬してクラッシャー16に投入し、クラッシャー16で破砕したズリ3を連続ベルトコンベヤ20で坑口4外に短時間で搬出する方法である。
【0021】
ここで、ホイールローダー10は本発明の第一ホイールローダーに相当し、ホイールローダー12は本発明の第二ホイールローダーに相当する。また、ホイールローダー10、12のズリ積み込みを補助するためのズリ集積機械としてズリかき用バックホウ14を切羽2付近に配置し、このズリかき用バックホウ14で切羽2付近のズリ3をかき集め、積み込みやすくする。こうすることで、以降のホイールローダー10、12によるズリ積み込み・運搬作業を効率的に行うことができる。
【0022】
なお、クラッシャー16と連続ベルトコンベヤ20との間にはテールピース台車18が設けられ、クラッシャー16で破砕したズリ3は、このテールピース台車18を介して連続ベルトコンベヤ20に移載されるようになっている。また、テールピース台車18の後方には、変電台車22と集塵機24と図示しない風管からなる切羽集塵換気システムが配置されている。この切羽集塵換気システムによって、切羽2で発生する煤煙・粉じん等を清浄化し、トンネル1内の作業衛生環境を確保するようになっている。
【0023】
また、クラッシャー16、連続ベルトコンベヤ20等が設置される退避位置は、発破による飛石等が到来するおそれが小さい位置、すなわち切羽2から所定距離L(例えばL=60m程度)以上後方に離れた位置に設定することが望ましい。ここで、切羽2とクラッシャー16との間に防護工を設け、飛石等からクラッシャー16等を防護するようにしてもよい。防護工を設けた場合には、所定距離Lをより短くすることが可能である。
【0024】
本発明に係るトンネルの急速施工方法によれば、特殊な設備を必要とせずに、ズリ出しに要する時間を短縮することが可能である。以下、本発明の具体的な手順について図1図5を参照しながら説明する。
【0025】
まず、図1のステップS1に示すように、切羽2とクラッシャー16の間に、2台のホイールローダー10、12を配備するとともに、切羽2付近にズリかき用バックホウ14を配備する。
【0026】
次に、図2のステップS2に示すように、切羽2付近のズリ3をズリかき用バックホウ14でかき集め、ホイールローダー10でズリ3をすくい上げて積み込み、クラッシャー16まで運搬する。その後、ホイールローダー10は運搬したズリ3を直接クラッシャー16に投入する。なお、この作業は従来の方法と同じである。クラッシャー16に投入されたズリ3は細かく破砕され、テールピース台車18を介して連続ベルトコンベヤ20に移載された後、この連続ベルトコンベヤ20によって坑口4に搬送されることになる。
【0027】
次に、図3のステップS3に示すように、切羽2付近のズリ3をもう1台のホイールローダー12でズリ3をすくい上げて積み込み、積み込んだズリ3をホイールローダー12でクラッシャー16の前方近傍に設けたズリ仮置場5まで運搬する。その後、ホイールローダー12は運搬したズリ3をこのズリ仮置場5に仮置きする。ズリ仮置場5をクラッシャーの前方近傍に設けることで、ズリ仮置場5からクラッシャー16までのズリ運搬距離が短くなり、以降の作業工程でこの間のズリ運搬時間を短縮することができる。
【0028】
なお、ホイールローダー12による積み込み・運搬作業は、上記のステップS2のホイールローダー10による運搬作業の合間の時間を利用して、ホイールローダー10の走路や作業を妨げないように走行して行う。例えば、図2に示すように、ホイールローダー10がクラッシャー16にズリ3を投入している間に、もう1台のホイールローダー12は切羽2付近にてズリ3の積み込み作業を行うようにする。また、例えば、図3に示すように、ホイールローダー12がズリ仮置場5にズリ3を仮置きしている間に、ホイールローダー10はクラッシャー16への投入作業から切羽2付近に引き返してきて、新たなズリ3の積み込み作業を行うようにする。このように、2台のホイールローダー10、12は、互いの作業が干渉しないように互いの位置等を設定することが好ましい。
【0029】
また、ホイールローダー12でズリ仮置場5に仮置きするズリ量としては、掘削1サイクルで発生する全ズリ量の例えば約半分程度とすることが望ましい。例えば、予測される掘削1サイクルの全ズリ量が約100〜240mの場合には、仮置きするズリ量を約50〜120mに設定することが可能である。
【0030】
以降、上記のステップS2、S3の工程を繰り返してズリ出し作業を継続実施し、切羽2付近にあるズリ3の量を減らしていく。
【0031】
その後、図4のステップS4に示すように、切羽2付近のズリ3を完全に除去し終えたら、ホイールローダー12は作業を終了して退避位置まで後退する。また、ズリかき用バックホウ14についてもかき集め作業が終わり次第、退避位置まで後退する。
【0032】
切羽2付近のズリ3がなくなれば、次工程の作業で使用する機械を切羽2付近に搬入することが可能となる。そこで、次工程の作業で使用する機械としての吹付機26を切羽2付近に搬入配置し、次工程の作業に備える。
【0033】
なお、切羽2付近への吹付機26の搬入配置は、切羽2付近のズリ3を完全に除去し終えた後に限るものではなく、ズリ3を完全に除去し終えた時点の前後の所定期間(例えばズリ3の除去完了時の前後数分〜数十分の期間)に行ってもよい。ホイールローダー10による最後のズリ処理作業と一部並行して吹付機26の搬入作業を行えば、掘削サイクルタイムをより一層短縮することができる。
【0034】
そして最後に、図5のステップS5に示すように、切羽2付近に設置した吹付機26により次工程の吹き付け作業を行う。ズリ仮置場5に仮置きしたズリ3については、ホイールローダー10を用いて順次クラッシャー16に投入することで引き続きズリ出しを行い、次回の掘削サイクルのズリ出し作業工程の開始までに終わらせる。この作業は、次回の掘削サイクルの発破作業工程の間に行ってもよい。なお、この作業は、切羽2付近で行う吹き付け作業と完全に独立して実施可能であるため、切羽2での次工程の作業と同時並行的に実施することにより掘削サイクルタイムの短縮を図ることができる。なお、ズリ仮置場5に仮置きしたズリ3のズリ出し作業については、ホイールローダー10の代わりにホイールローダー12を用いて行うこともできる。
【0035】
このように、上記のステップS1〜S5の方法によれば、ホイールローダー10とホイールローダー12による同時並行の運搬作業によって、特殊な設備を用いることなく、ズリ出し作業に要する時間を短縮することができる。
【0036】
[本発明の効果の検証]
本発明の効果を検証するために実際のトンネル工事において実証施工を行った。この結果、上半の切羽1基、下半の切羽2基の発破時のズリ出しに、ホイールローダー1台で切羽とクラッシャー間を往復する従来の方法では90〜120分程度要していたものが、上記の本発明によれば60〜90分程度でズリ出しが完了し、従来の方法に比べて30分程度短縮できることが実証できた。したがって、本発明によればズリ出し作業に要する時間が従来の方法よりも短くなり、掘削サイクルタイム全体の短縮を図れることから、日々の掘削速度の向上が可能である。
【0037】
以上説明したように、本発明に係るトンネルの急速施工方法によれば、発破によって掘削されるトンネルの切羽の後方の退避位置にクラッシャーおよび連続ベルトコンベヤを設置しておき、掘削に伴って切羽付近で発生するズリをホイールローダーで運搬してクラッシャーに投入し、クラッシャーで破砕したズリを連続ベルトコンベヤで坑外に搬出するトンネルの急速施工方法であって、前記ホイールローダーは、少なくとも第一ホイールローダーと第二ホイールローダーとからなり、第一ホイールローダーは、切羽付近のズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入し、第二ホイールローダーは、切羽付近のズリを、切羽とクラッシャーとの間に設けたズリ仮置場まで運搬して、このズリ仮置場に仮置きするので、第一ホイールローダーと第二ホイールローダーによる同時並行の運搬作業によって、特殊な設備を用いることなく、ズリ出し作業に要する時間を短縮することができる。
【0038】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、第一ホイールローダーと第二ホイールローダーの少なくとも一方は、次回のズリ出し作業工程の開始までに、ズリ仮置場に仮置きしたズリをクラッシャーまで運搬して、運搬したズリをクラッシャーに投入する。この作業は切羽での作業と完全に独立して実施可能であるため、切羽での次工程の作業と同時並行的に実施することにより掘削サイクルタイムの短縮を図ることができる。
【0039】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、切羽付近のズリを完全に除去し終えた時点の前後の所定期間に、次工程で使用する機械を切羽付近に搬入するので、掘削サイクルタイムをより一層短縮することができる。
【0040】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、第一ホイールローダーがズリをクラッシャーへ運搬または投入している間に第二ホールローダーが切羽付近でズリを積み込み、第二ホイールローダーがズリをズリ仮置場へ運搬または仮置きしている間に第一ホイールローダーがズリを切羽付近で積み込むので、第一ホイールローダーおよび第二ホイールローダーによるズリ運搬作業を効率的に行うことができる。
【0041】
また、本発明に係る他のトンネルの急速施工方法によれば、ズリ仮置場をクラッシャーの近傍に設けたので、ズリ仮置場からクラッシャーまでのズリ運搬距離が短くなり、この間のズリ運搬時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上のように、本発明に係るトンネルの急速施工方法は、山岳トンネル工事などにおいて、切羽付近の発破掘削に伴うズリ出し作業に要する時間を短縮するのに有用であり、特に、特殊な設備を要することなく、掘削サイクルタイムを短縮するのに適している。
【符号の説明】
【0043】
1 トンネル
2 切羽
3 ズリ
4 坑口
5 ズリ仮置場
10 ホイールローダー(第一ホイールローダー)
12 ホイールローダー(第二ホイールローダー)
14 ズリかき用バックホウ(ズリ集積機械)
16 クラッシャー
18 テールピース台車
20 連続ベルトコンベヤ
22 変電台車
24 集塵機
26 吹付機
図1
図2
図3
図4
図5
図6