【解決手段】コンクリート製壁11を貫通し基端側が開放されかつ先端側が土砂利12で閉止されたコア孔11aがコンクリート製壁に穿設され、両端が開口しかつ外周面にゴム製のリング部材16,17が嵌着された管状部材13がコア孔の基端側に挿入される。コンクリート製壁の背面の土砂利中の水が管状部材内に導く水導入部材14を設けられ、管状部材の先端が水導入部材の基端に連結して連通接続され、水導入部材の先端がコア孔の先端に位置する。リング部材が嵌入された管状部材をコア孔に挿入したときに、リング部材が弾性変形して圧縮された状態で管状部材及びコア孔間に介装されることにより、管状部材がコア孔内に位置決め固定される。
前記コンクリート製壁がコンクリート製用水路の側壁又は底壁であり、前記土砂利中の水圧が前記コンクリート製用水路内の水圧以下であるときに前記管状部材内を閉止しかつ前記土砂利中の水圧が前記コンクリート製用水路内の水圧より高くなったときに前記管状部材内を開放する逆止弁が前記管状部材内に引抜き可能に収容された請求項1記載の水抜き構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1に示されたコンクリート製用水路の壁保全構造では、導水管(水導入部材)を孔部に挿入して用水路の側壁背面の土砂に打込んだ後に、導水管の基端外周面に水膨張性ゴムを充填し、次に、コネクタ部材(管状部材)にウィープホール(逆止弁)を収容しコネクタ部材外周面に水膨張性ゴムを塗布した後に、コネクタ部材を孔部に挿入することにより、水密性を確保しているけれども、水膨張性ゴムを孔部の内周面及び導水管の外周面間の隙間に充填するとき、この隙間が小さいため、水膨張性ゴムの充填量を確認することが困難であり、また用水路の壁背面の土砂に含まれる水が孔部を通って用水路内に流れている場合、この流出水を止めてから水膨張性ゴムを充填しなければならず、手間と時間が掛かってしまう不具合があった。また、上記従来の特許文献1に示されたコンクリート製用水路の壁保全構造では、ウィープホールを収容するコネクタ部材が水膨張性ゴムで孔部内に固着されており、ウィープホールをコネクタ部材から引抜くことはできるけれども、コネクタ部材及び導水管又はコネクタ部材のみを孔部から引抜くことができないため、水抜き構造としての機能を完全に回復することができない問題点もあった。』
【0007】
一方、孔部の内周面及びコネクタ部材の外周面間の隙間にモルタルを充填する工法も従来から採用されている。しかし、この隙間にモルタルを充填する従来の工法では、狭い隙間にモルタルを詰めなければならず、非常に手間が掛かる問題点があった。このため、孔部の内径を大きくすると、用水路の壁内の鉄筋を切断してしまうおそれがあった。また、上記隙間にモルタルを充填する工法では、流出水が発生している状況での施工や、冬場等の低温期での施工では、モルタルの硬化不良が生じる問題点もあった。
【0008】
本発明の第1の目的は、充填量の確認が困難でありかつ充填のための手間及び時間が掛かる水膨張性ゴムを用いずに済み、またコア孔に水が流れている状態、即ち流出水のある状態であっても、この流出水を止めずに、管状部材及び水導入部材をコア孔に挿入できる、水抜き構造を提供することにある。本発明の第2の目的は、管状部材や水導入部材等が目詰まりを起こしても、コア孔内に挿入した管状部材及び水導入部材等を丸ごとコア孔から引抜いて洗浄できるので、水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる、水抜き構造を提供することにある。本発明の第3の目的は、コア孔内周面及び管状部材外周面間の隙間へのモルタルの充填作業が不要になり、コア孔への管状部材及び水導入部材の挿入作業に要する手間及び時間を大幅に低減できるとともに、上記隙間にモルタルを充填する場合より上記隙間を小さくすることができ、これによりコア孔の内径を小さくすることができるので、コンクリート製壁内の鉄筋を切断してしまうという事態を低減できる、水抜き構造を提供することにある。本発明の第4の目的は、冬場等の寒冷期であってもコア孔の養生シートによるカバー及びコア孔の暖房などの養生を不要にすることができる、水抜き構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、
図1に示すように、コンクリート製壁11の背面又は下面の土砂利12中の水を抜く水抜き構造において、コンクリート製壁11を貫通し基端側が開放されかつ先端側が土砂利12で閉止されたコア孔11aがコンクリート製壁11に穿設され、両端が開口しかつ外周面にゴム製のリング部材16,17が嵌着された管状部材13がコア孔11aの基端側に挿入され、コンクリート製壁11の背面又は下面の土砂利12中の水を管状部材13内に導く水導入部材14がコア孔11aの先端側に設けられ、管状部材13の先端が水導入部材14の基端に連結して又は突当てて連通接続され、水導入部材14の先端がコア孔11aの先端又は先端近傍のコア孔11a内に位置するか或いはコア孔11aの先端より奧の土砂利12中に位置し、リング部材16,17が嵌入された管状部材13をコア孔11aに挿入したときに、リング部材16,17が弾性変形して圧縮された状態で管状部材13及びコア孔11a間に介装されることにより、管状部材13がコア孔11a内に位置決め固定されたことを特徴とする。なお、本明細書において、「土砂利」とは、砂利を含む土をいい、この土には砂が含まれる場合がある。
【0010】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に
図1に示すように、コア孔11aに挿入された管状部材13の外周面とコア孔11aの内周面との間の隙間18が2〜10mmであることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に
図1に示すように、コンクリート製壁が土留擁壁11であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に
図3に示すように、コンクリート製壁がコンクリート製用水路31の側壁31a又は底壁であり、土砂利32中の水圧がコンクリート製用水路31内の水圧以下であるときに管状部材33内を閉止しかつ土砂利32中の水圧がコンクリート製用水路31内の水圧より高くなったときに管状部材33内を開放する逆止弁36が管状部材33内に引抜き可能に収容されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点の水抜き構造では、管状部材の先端を水導入部材の基端に連結して連通接続する場合、管状部材及び水導入部材をコア孔に挿入する前に、ゴム製のリング部材が嵌着された管状部材を水導入部材に連結しておき、この状態で互いに連結された管状部材及び水導入部材をコア孔に挿入できる。この結果、充填量の確認が困難でありかつ充填のための手間及び時間が掛かる水膨張性ゴムを用いずに済み、またコア孔に水が流れている状態、即ち流出水のある状態であっても、この流出水を止めずに、管状部材及び水導入部材をコア孔に挿入できる。また、管状部材や水導入部材が目詰まりを起こしても、コア孔内に挿入した管状部材及び水導入部材を丸ごとコア孔から引抜いて洗浄できるので、水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる。また、コア孔内周面及び管状部材外周面間の隙間へのモルタルの充填作業を用いずに済むので、コア孔への管状部材及び水導入部材の挿入作業に要する手間及び時間を大幅に低減できるとともに、上記隙間にモルタルを充填する場合より上記隙間を小さくすることができ、これによりコア孔の内径を小さくすることができるので、コンクリート製壁内の鉄筋を切断してしまうという事態を低減できる。また、冬場等の寒冷期であってもコア孔の養生シートによるカバー及びコア孔の暖房などの養生を不要にすることができる。更に、リング部材が弾性変形して圧縮された状態で管状部材及びコア孔間に介装されるので、コア孔及び管状部材間の隙間からコア孔の基端側への水漏れを防止できる。
【0014】
一方、管状部材の先端を水導入部材の基端に突当てて連通接続する場合、水導入部材をコア孔に挿入した後に、ゴム製のリング部材が嵌着された管状部材をコア孔に挿入しても、管状部材の先端を水導入部材の基端に突当てて連通接続することができる。この結果、上記と同様に、充填量の確認が困難でありかつ充填のための手間及び時間が掛かる水膨張性ゴムを用いずに済み、またコア孔に水が流れている状態、即ち流出水のある状態であっても、この流出水を止めずに、管状部材及び水導入部材をコア孔に挿入できる。また、管状部材や水導入部材が目詰まりを起こしても、コア孔内に挿入した管状部材をコア孔から引抜いて洗浄できるので、水抜き構造としての機能をある程度回復できる。また、コア孔内周面及び管状部材外周面間の隙間へのモルタルの充填作業を用いずに済むので、上記と同様に、コア孔への管状部材及び水導入部材の挿入作業に要する手間及び時間を大幅に低減できるとともに、上記隙間にモルタルを充填する場合より上記隙間を小さくすることができ、これによりコア孔の内径を小さくすることができるので、コンクリート製壁内の鉄筋を切断してしまうという事態を低減できる。また、上記と同様に、冬場等の寒冷期であってもコア孔の養生シートによるカバー及びコア孔の暖房などの養生を不要にすることができる。更に、上記と同様に、リング部材が弾性変形して圧縮された状態で管状部材及びコア孔間に介装されるので、コア孔及び管状部材間の隙間からコア孔の基端側への水漏れを防止できる。
【0015】
本発明の第2の観点の水抜き構造では、コア孔に挿入された管状部材の外周面とコア孔の内周面との間の隙間を2〜10mmと狭くすることができるので、管状部材及び水導入部材を挿入するコア孔の内径を比較的小さく形成することができる。この結果、上記のように、コンクリート製壁内の鉄筋を切断してしまうという事態を低減できる。
【0016】
本発明の第3の観点の水抜き構造では、コンクリート製壁が土留擁壁である場合、この土留擁壁背面の土砂利中に含まれる水が水導入部材及び管状部材を通ってスムーズにコア孔の基端側に排出される。この結果、老朽化した土留擁壁の補修工事を行う前に、土留擁壁の背面の土砂利中に含まれる水を水導入部材及び管状部材から適切に排出できるので、土留擁壁背面の土砂利中の水がひび割れに浸入することがなく、補修工事の品質を高めることができる。
【0017】
本発明の第4の観点の水抜き構造では、コンクリート製壁がコンクリート製用水路の側壁又は底壁である場合、土砂利中の水圧が用水路内の水圧より高くなったときに逆止弁が管状部材内を開放するので、用水路の側壁又は底壁の背面又は底面の土砂利中に含まれる水が水導入部材及び管状部材を通ってスムーズにコア孔の基端側に排出される。この結果、土砂利中の水が用水路内に流入するので、用水路が土砂利中の水の圧力で浮いてしまうという現象を回避できる。また、管状部材の先端を水導入部材の基端に連結して連通接続する場合、コア孔内に挿入した逆止弁付き管状部材及び水導入部材を丸ごとコア孔から引抜いて洗浄できるので、逆止弁、管状部材及び水導入部材の水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1に示すように、コンクリート製壁は、この実施の形態では、土留擁壁11である。この土留擁壁11の背面の土砂利12中の水を抜く水抜き構造は、土留擁壁11に穿設されたコア孔11aに挿入される管状部材13と、コア孔11aに挿入され土留擁壁11の背面の土砂利12中の水を管状部材13内に導く水導入部材14とを備える。上記コア孔11aは、土留擁壁11にこの擁壁11を水平方向に貫通して穿設される。また、コア孔11aの基端側は開放され、コア孔11aの先端側は土砂利12で閉止される。
【0021】
一方、管状部材13は、この実施の形態では、塩化ビニル等のプラスチック製の管を所定の長さに切断することにより円筒状に形成される。これにより管状部材13の両端はそれぞれ開口するように構成される。また、管状部材13の外周面には、2本のゴム製のリング部材16,17が嵌着される。2本のリング部材16,17のうち一方のリング部材16は管状部材13の基端に嵌着され、他方のリング部材17は管状部材13の先端より所定の距離だけ基端寄りに嵌着される。また、リング部材16,17は、弾性変形可能な弾性部材、例えばクロロプレンやエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムにより形成され、管状部材13の外周面にクロロプレン系接着剤やシアノアクリレート系接着剤等により接着される。管状部材13の外周面に嵌着されたリング部材16,17のリング外径はコア孔11aの内径より僅かに大きく形成される。更に、これらのリング部材16,17が嵌着された管状部材13はコア孔11aの基端側に挿入される。このときリング部材16,17が弾性変形して圧縮された状態で管状部材13及びコア孔11a間に介装されるので、管状部材13をコア孔11a内に確実に位置決め固定できるようになっている。
【0022】
コア孔11aに挿入された管状部材13の外周面とコア孔11aの内周面との間の隙間18は2〜10mmの範囲内の所定値であることが好ましく、7〜10mmの範囲内の所定値であることが更に好ましい。ここで、上記隙間18を2〜10mmの範囲内に限定したのは、2mm未満では、リング部材16,17の弾性変形量を十分に確保できず、管状部材13のコア孔11aへの挿入作業性が低下するとともに、上記隙間18からコア孔11a基端側への水漏れが発生するおそれがあり、10mmを超えるとコア孔11aの内径が大きくなり過ぎて土留擁壁11内の鉄筋を切断してしまうおそれがあるからである。なお、管状部材13を塩化ビニル等のプラスチック管により形成する場合には、呼び径50(外径60mm)、呼び径65(外径76mm)、呼び径75(外径89mm)程度の塩化ビニル等のプラスチック管を用いることが好ましい。
【0023】
一方、水導入部材14はコア孔11aの先端側に設けられ、水導入部材14の先端はコア孔11aの先端に位置するように構成される。この水導入部材14は、先端がコア孔11aの先端に位置するプラスチック製の円筒部14aと、この円筒部14aの先端を閉止するように円筒部14aの先端に取付けられた目皿14bとを有する。円筒部14aは、外周面に複数の山部及び谷部が交互に形成された蛇腹管状の外管14cと、内面が平滑に形成され外管14cに挿着された円筒管状の内管14dとからなるポリエチレン製の2重管構造である。また、円筒部14aの外周面には複数の小孔14eが形成される。これらの小孔14eは円筒部14aの外周面のうち谷部に形成され、これにより複数の小孔14eからの水の流入効率を良好に保つことが可能になる。上記複数の小孔14eを有する2重管構造の円筒部14aは市販されているため、塩化ビニル製の管に複数の小孔をあけて作製された円筒部よりコストを低減できる。また、目皿14bはポリエチレン等のプラスチックにより形成され、この目皿14bには複数の小孔14fが形成される。更に、管状部材13の先端は水導入部材14の基端に連結して連通接続される。具体的には、水導入部材14の基端に、管状部材13の先端が塩化ビニル等のプラスチック製のソケット19を介して連結され、これにより管状部材13の先端が水導入部材14の基端に連通接続される。
【0024】
このように構成された水抜き構造を施工するには、管状部材13及び水導入部材14をコア孔11aに挿入する前に、予めゴム製のリング部材16,17が嵌着された管状部材13を水導入部材14に連結しておく。そして、互いに連結された管状部材13及び水導入部材14をコア孔11aに挿入する。この結果、充填量の確認が困難でありかつ充填のための手間及び時間が掛かる水膨張性ゴムを用いずに済むので、管状部材13及び水導入部材14のコア孔11aへの挿入作業を容易に行うことができる。また、土留擁壁11背面の土砂利12中の水がコア孔11aを通ってコア孔11aの基端側に流れている状態、即ち流出水のある状態であっても、この流出水を止めずに、管状部材13及び水導入部材14をコア孔11aに挿入できる。また、コア孔11a内周面及び管状部材13外周面間の隙間18にモルタルを充填する必要がないので、コア孔11aへの管状部材13及び水導入部材14の挿入作業に要する手間及び時間を大幅に低減できる。また、上記隙間18にモルタルを充填する場合より上記隙間18を小さくすることができるので、コア孔11aの内径を小さくすることができる。この結果、土留擁壁11内の鉄筋を切断してしまうという事態を低減できる。また、冬場等の寒冷期に水が凍ってしまうのを防止するためにコア孔11aの養生シートによるカバー及びコア孔11aの暖房を施さなくても、即ちコア孔11a内の水が凍った状態でも、管状部材13及び水導入部材14をコア孔11aに容易に挿入できるので、コア孔11aの養生シートによるカバー及びコア孔11aの暖房などの養生を不要にすることができる。更に、リング部材16,17が嵌入された管状部材13をコア孔11aに挿入したときに、リング部材16,17が弾性変形して圧縮された状態で管状部材13及びコア孔11a間に介装されるので、管状部材13をコア孔11a内に確実に位置決め固定できる。この結果、リング部材16,17と管状部材13が密着し、かつリング部材16,17とコア孔11aが密着しているので、コア孔11a及び管状部材13間の隙間18からコア孔11aの基端側への水漏れを防止できる。
【0025】
このように施工された水抜き構造では、土留擁壁11背面の土砂利12中に含まれる水が水導入部材14及び管状部材13を通ってスムーズにコア孔11aの基端側に排出できる。このとき、土留擁壁11背面の土砂利12中に含まれる水が、水導入部材14の目皿14bに形成された小孔14fのみならず、水導入部材14の円筒部14aの外周面に形成された小孔14eからも、円筒部14a内に流入するため、小孔14e,14fの総数が多く、目詰まりが発生し難くなっている。また、老朽化した土留擁壁11の補修工事を行う場合、例えば老朽化した土留擁壁11のひび割れを塞いだり、或いは老朽化した土留擁壁11の表面を被覆する場合、補修工事を行う前に、土留擁壁11の背面の土砂利12中に含まれる水を適切に排出できるので、ひび割れに土留擁壁11背面の土砂利12中の水が浸入することがなく、補修工事の品質を高めることができる。更に、管状部材13や水導入部材14が目詰まりを起こしても、コア孔11a内に挿入した管状部材13及び水導入部材14を丸ごとコア孔11aから引抜くことができるので、コア孔11aから引抜いた管状部材13及び水導入部材14を洗浄した後に再びコア孔11aに挿入することにより、管状部材13及び水導入部材14の水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる。
【0026】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態を示す。
図2において
図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、水導入部材24が、内部に空洞が形成され外周面に複数の小孔24bが形成された先細りの円錐部24aと、この円錐部24aの外周面を覆う不織布製のフィルタ部24cとを有する。管状部材23は、第1の実施の形態の管状部材より長く形成され、水導入部材24は、第1の実施の形態の水導入部材より短く形成される。また、円錐部24aの基端には、管状部材23の先端が嵌着可能な管状部材23より小径の被嵌着部24dが円錐部24aと一体的に設けられる。上記管状部材23は、塩化ビニル等のプラスチック管により形成され、円錐部24aはポリエチレン等のプラスチックにより形成されることが好ましい。また、管状部材23の外周面には第1の実施の形態と同一形状の2本のゴム製のリング部材16,17が嵌着される。これらのリング部材16,17のうち一方のリング部材16は管状部材23の基端に嵌着され、他方のリング部材17は管状部材23の中央に嵌着される。管状部材23の先端は水導入部材24の円錐部24aの基端に連結して連通接続される。具体的には、水導入部材24の円錐部24a基端の被嵌着部24dに、管状部材23の先端が嵌着されることにより連結され、これにより管状部材23の先端が水導入部材24の基端に連通接続される。更に、円錐部24aの先端はコア孔11aの先端に位置するように構成され、フィルタ部24cは水の通過を許容しかつ土砂利12の通過を阻止するように構成される。なお、この実施の形態では、円錐部の先端がコア孔の先端に位置するように構成したが、円錐部の先端がコア孔の先端近傍のコア孔内に位置するように構成してもよい。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0027】
このように構成された水抜き構造の施工手順、施工時における動作及び効果は、第1の実施の形態の施工手順、施工時における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。また、第1の実施の形態と同様に施工された水抜き構造では、土留擁壁11背面の土砂利12中に含まれる水が水導入部材24のフィルタ部24cを通過して円錐部24aに流入し更に管状部材23を通ってスムーズにコア孔11aの基端側に排出できる。このとき上記水に含まれる土はフィルタ部24cで除去されて円錐部24a内に流れ込まない。上記以外の水抜き構造の動作は、第1の実施の形態の水抜き構造の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0028】
<第3の実施の形態>
図3は本発明の第3の実施の形態を示す。
図3において
図1と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、コンクリート製用水路31が一対の側壁31aとこれらの側壁31aの下端同士を接続する単一の底壁31bとを有し、コンクリート製壁がこの用水路31の側壁31aである。この側壁31a背面の土砂利32中の水を抜く水抜き構造は、用水路31の側壁31aに穿設されたコア孔31cに挿入される管状部材33と、コア孔31cに挿入され用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水を管状部材33内に導く水導入部材34とを備える。上記コア孔31cは、用水路31の側壁31aにこの側壁31aを水平方向に貫通して穿設される。また、コア孔31cの基端側は開放され、コア孔31cの先端側は土砂利32で閉止される。
【0029】
一方、管状部材33は、この実施の形態では、塩化ビニル等のプラスチックにより円筒状に形成される。これにより管状部材33の両端はそれぞれ開口するように構成される。また、管状部材33の内周面には、管状部材33中央より先端寄りにリング状の内周リブ33aが突設される。この内周リブ33aより基端側の管状部材33に浮子式の逆止弁36が引抜き可能に収容される。この逆止弁36は、管状部材33内に引抜き可能に挿入され基端下部にロア開口部36bが形成され先端上部にアッパ開口部36cが形成された円筒状の筐体36aと、この筐体36aの上下方向略中央に突設され筐体36a内を上下に仕切るた仕切壁36dと、仕切壁36dの中央に形成された円形孔36eと、仕切壁36dより下側の筐体36a内に収容され水に浮いて円形孔36eを閉止可能な弁本体36fとを有する。この弁本体36fは、円錐面が外方に突出するように湾曲した略円錐台状に形成され、弁本体36fの先細り部分の上端には略円柱状の小径突起36gが上方に向って突設される。この小径突起36gはプラスチックにより弁本体36fと一体的に形成される。また、弁本体36f内には空洞36hが形成される。この空洞36hは弁本体36fのうち広い面積を有する下壁の肉厚が比較的厚くなるように形成され、弁本体36fは比重が1より小さくなるように設定される。これにより弁本体36fは小径突起36gを上に向けた姿勢を保ちながら、水に浮くようになる。なお、仕切壁36dより下側の筐体36a内の空間の高さは、筐体36a内に水がない状態で弁本体36fが筐体36aの内底面上に置かれたときに、小径突起36gが円形孔36e内に遊挿された状態に保たれる高さに設定される。
【0030】
上記逆止弁36は、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧以下であるときに、弁本体36fが仕切壁36dより下側の筐体36a内に流入した水に浮いて円形孔36eを閉止することにより、管状部材33の基端から先端に向って管状部材33内を水が流れること、即ち用水路31内の水37が用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に逆流することを阻止するように構成される。また逆止弁36は、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧より高くなったときに、弁本体36fが仕切壁36dより上側の筐体36a内に流入した水に押されて沈み円形孔36eを開放することにより、管状部材33の先端から基端に向って管状部材33内を水が流れること、即ち用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水が用水路31内に流入することを許容するように構成される。なお、
図3中の符号33bは管状部材33の外周面にリング状に形成された外周リブであり、符号36iは逆止弁36の円形孔36eの内周縁に嵌着されたリング状の弁座である。
【0031】
管状部材33の外周面には第1の実施の形態と同一形状の2本のゴム製のリング部材16,17が嵌着される。これらのリング部材16,17のうち一方のリング部材16は管状部材33の基端に嵌着され、他方のリング部材17は管状部材33の先端に嵌着される。更に、管状部材33の先端は水導入部材34の基端に突当てて連通接続される。即ち、コア孔31c内で管状部材33の先端を水導入部材34の基端に突当てることにより、管状部材33の先端が水導入部材34の基端に連通接続される。この実施の形態では、水導入部材34内に流入した水が管状部材33内に導入されるときに、管状部材33の先端が水導入部材34の基端に当接した部分から水が漏れても、この漏れた水はコア孔31cの基端側に流れるのをリング部材17により阻止され、コア孔31cに挿入された管状部材33の外周面とコア孔31cの内周面との間の隙間18のうちコア孔31cの基端側の隙間18から水が漏れないようになっている。なお、コア孔31cに挿入された管状部材33の外周面とコア孔31cの内周面との間の隙間18は、第1の実施の形態と同様に、2〜10mmの範囲内の所定値であることが好ましく、7〜10mmの範囲内の所定値であることが更に好ましい。
【0032】
一方、水導入部材34はコア孔31cの先端側に設けられ、水導入部材34の先端はコア孔31cの先端より奧の土砂利32中に位置するように構成される。この水導入部材34は、外周面に複数の小孔34cが形成された金属製の円筒部34aと、この円筒部34aの先端に固着された先細りの進入支援部34bとを有する。この進入支援部34bは金属製の円錐管であり、その基端は円筒部34aの先端に溶接により固着される。これにより進入支援部34bは、水導入部材34の土砂利32中への挿入時に、土砂利32を掻き分けて進んで、水導入部材34の土砂利32中への進入を支援するように構成される。
図3中の符号35は円筒部34aの基端外周面に嵌着されたゴム製のリング部材である。このリング部材35は、コア孔31cの内周面と円筒部34aの外周面との間の隙間18に流入した水を管状部材33側に漏れるのを阻止するとともに、円筒部34aの孔芯をコア孔31cの孔心に一致させるために設けられる。
【0033】
このように構成された水抜き構造を施工するには、先ず、コア孔31cに進入支援部34bの先端がコア孔31cの奧の土砂利32に達するまで水導入部材34を挿入した後に、水導入部材34を土砂利32中に打ち込む。このとき先細りの進入支援部34bが土砂利32を掻き分けて進むので、水導入部材34が土砂利32中に速やかに進入する。次に、ゴム製のリング部材16,17が嵌着された管状部材33をコア孔31cに挿入して、管状部材33の先端を水導入部材34の基端に突当てて連通接続する。この結果、充填量の確認が困難でありかつ充填のための手間及び時間が掛かる水膨張性ゴムを用いずに済むので、管状部材33のコア孔31cへの挿入作業を容易に行うことができる。また、コア孔31c内周面及び管状部材33外周面間の隙間18にモルタルを充填する必要がないので、コア孔31cへの管状部材33の挿入作業に要する手間及び時間を大幅に低減できる。上記以外の水抜き構造の施工時における動作及び効果は、第1の実施の形態の水抜き構造の施工時における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0034】
このように施工された水抜き構造では、コンクリート製用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧以下であるとき、逆止弁36の弁本体36fが仕切壁36dより下側の筐体36a内に流入した水に浮いて円形孔36eを閉止する。この結果、管状部材33の基端から先端に向って管状部材33内を水が流れないので、用水路31内の水37が用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に逆流することを防止できる。一方、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧より高くなると、逆止弁36の弁本体36fが仕切壁36dより上側の筐体36a内に流入した水に押されて沈み、円形孔36eを開放する。この結果、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水が水導入部材34及び管状部材33を通ってスムーズに用水路31内に流入するので、用水路31がこの用水路31の側壁31a背面及び底壁31b下面の土砂利32中の水の圧力で浮いてしまうという現象を回避できる。
【0035】
また、老朽化した用水路31の側壁31aや底壁31bのひび割れを塞いだり、或いは老朽化した用水路31の側壁31a及び底壁31bの表面を被覆する補修工事を行うために、用水路31内の水37を抜くと、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路内の水圧(水圧:ゼロ)より高くなるので、逆止弁36の弁本体36fが、その自重により仕切壁36dより下側の筐体36a底部に位置するか、或いは仕切壁36dより上側の筐体36a内に流入した水に押されることにより沈んで、円形孔36eを開放する。この結果、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水が水導入部材34及び管状部材33を通ってスムーズに用水路31内に流入し、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水を適切に排出できるので、ひび割れに用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水が浸入することがなく、補修工事の品質を高めることができる。更に、コア孔31c内に挿入した管状部材33をコア孔31cから引抜くことができるとともに、管状部材33から逆止弁36を引抜くことができるので、コア孔31cから引抜いた管状部材33と、管状部材33から引抜いた逆止弁36をそれぞれ洗浄した後に、逆止弁36を管状部材33に収容し、この管状部材33をコア孔31cに再び挿入することにより、管状部材33及び逆止弁34の水抜き構造としての機能を回復できる。
【0036】
<第4の実施の形態>
図4は本発明の第4の実施の形態を示す。
図4において
図3と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、管状部材33及び逆止弁36が第3の実施の形態の管状部材及び逆止弁と同一形状に形成され、水導入部材44の先端がコア孔31cの先端に位置するように構成され、更に管状部材33の先端が水導入部材44の基端に連結して連通接続される。具体的には、管状部材33の内周面に突設された内周リブ33aより先端側の管状部材33が水導入部材44の基端に嵌入されることにより、水導入部材44の基端に管状部材33の先端が連結される。また、水導入部材44は、先端がコア孔31cの先端に位置するプラスチック製の円筒部44aと、この円筒部44aの先端を閉止するように円筒部44aの先端に取付けられた目皿44bとを有する。円筒部44aは塩化ビニル等のプラスチック製の管により形成される。更に、目皿44bはポリエチレン等のプラスチックにより形成され、この目皿44bには複数の小孔44cが形成される。上記以外は第3の実施の形態と同一に構成される。
【0037】
このように構成された水抜き構造を施工するとき、水導入部材44の基端に管状部材33の先端を連結したときの水導入部材44及び管状部材33の合計長さを比較的短くすることができるので、用水路31の側壁31aの厚さが薄い場合に適している。上記以外の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果は、第1の実施の形態の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。但し、この実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、コンクリート製壁はコンクリート製用水路31の側壁31aであり、管状部材33内には逆止弁36が設けられている。
【0038】
このように施工された水抜き構造では、コア孔31c内に挿入した逆止弁36付き管状部材33及び水導入部材44を丸ごとコア孔31cから引抜くことができるので、コア孔31cから引抜いた管状部材33、逆止弁36及び水導入部材44を洗浄した後にコア孔31cに再び挿入することにより、管状部材33、逆止弁36及び水導入部材44の水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる。上記以外の水抜き構造の動作は、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水が目皿44bの小孔44cを通って水導入部材44に流入することを除いて、第3の実施の形態の動作と略同様であるので、繰り返しの説明を省略する。
【0039】
<第5の実施の形態>
図5は本発明の第5の実施の形態を示す。
図5において
図3と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、コンクリート製用水路51が一対の側壁51aと単一の底壁51bとを有し、コンクリート製壁がコンクリート製用水路51の底壁51bである。この用水路51の底壁51b背面の土砂利52中の水を抜く水抜き構造は、用水路51の底壁51bに穿設されたコア孔51cに挿入される管状部材53と、コア孔51cに挿入され用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水を管状部材53内に導く水導入部材54とを備える。上記コア孔51cは、用水路51の底壁51bにこの底壁51bを鉛直方向に貫通して穿設される。また、コア孔51cの上端側(基端側)は開放され、コア孔51cの下端側(先端側)は土砂利52で閉止される。
【0040】
一方、管状部材53は、この実施の形態では、塩化ビニル等のプラスチックにより円筒状に形成される。これにより管状部材53の両端はそれぞれ開口するように構成される。また、管状部材53の外周面には第3の実施の形態と同一形状の2本のゴム製のリング部材16,17が嵌着される。これらのリング部材16,17のうち一方のリング部材16は管状部材53の上端(基端)に嵌着され、他方のリング部材17は管状部材53の下端(先端)に嵌着される。
【0041】
また、この管状部材53には逆止弁56が引抜き可能に収容される。この逆止弁56は、管状部材53の内周面にリング状に突設され管状部材53内を上下に仕切る仕切リブ56aと、この仕切リブ56aの中央に形成された円形孔56bと、仕切リブ56aより上側の管状部材53内に収容され水に沈んで円形孔56bを閉止可能な弁本体56cとを有する。この弁本体56cは円錐面が外方に突出するように湾曲して形成されかつ先細り部分が下に向く略円錐台状に形成され、弁本体56cの先細り部分の下端には円形孔56bに遊挿可能な小径突起56dが下方に向って突設される。また、小径突起56dの内部には比重の大きな金属等により形成された錘56eが封入される。上記小径突起56dはプラスチックにより弁本体56cと一体的に形成され、錘56eは弁本体56cの成形時に小径突起56d内に封入される。そして弁本体56cは比重が1より大きくなるように設定される。これにより弁本体56cは小径突起56dを下に向けた姿勢を保ちながら、水に沈むようになる。また、
図5中の符号55は管状部材53の上端に取外し可能に挿入され複数の小孔55aが形成された2重構造の2重目皿である。この2重目皿55は、管状部材53内を上昇する水流が発生して弁本体56cが上昇したときに、水の通過を許容し、小径突起56dを円形孔56b内に遊挿した状態に保ち、更に弁本体56cが管状部材53の上端から飛び出すのを防止する機能を有する。
【0042】
上記逆止弁56は、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水圧が用水路51内の水圧以下であるときに、弁本体56cが仕切壁56aより上側の管状部材53内に流入した水に沈んで円形孔56bを閉止することにより、管状部材53の基端から先端に向って管状部材53内を水が流れること、即ち用水路51内の水が用水路51の底壁51b下面の土砂利52中に逆流することを阻止し、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水圧が用水路51内の水圧より高くなったときに、弁本体56cが仕切壁56aより下側の管状部材53内に流入した水に押されて浮き円形孔56bを開放することにより、管状部材53の先端から基端に向って管状部材53内を水が流れること、即ち用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水が用水路51内に流入することを許容するように構成される。
【0043】
一方、水導入部材54はコア孔51cの下端側(先端側)に設けられ、水導入部材54の下端(先端)はコア孔51cの下端(先端)に位置するように構成される。この水導入部材54は、下端がコア孔51cの下端に位置するプラスチック製の円筒部54aと、この円筒部54aの下端を閉止するように円筒部54aの下端に取付けられた目皿54bとを有する。上記円筒部54aは塩化ビニル等のプラスチック製の管により第4の実施の形態の円筒部より長く形成される。また上記目皿54bは、第4の実施の形態の目皿と同一形状に形成される。
【0044】
このように構成された水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施行時における動作及び効果は、第1の実施の形態の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施行時における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0045】
このように第1の実施の形態と同様に施工された水抜き構造では、コンクリート製用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水圧が用水路51内の水圧以下であるとき、逆止弁56の弁本体56cが仕切壁56aより上側の管状部材53内に流入した水に沈んで円形孔56bを閉止する。この結果、管状部材53の上端(基端)から下端(先端)に向って管状部材53内を水が流れないので、用水路51内の水が用水路51の底壁51b下面の土砂利52中に逆流することを防止できる。一方、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水圧が用水路51内の水圧より高くなると、逆止弁56の弁本体56cが仕切壁56aより下側の管状部材53内に流入した水に押されて浮き、円形孔56bを開放する。この結果、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中に含まれる水が水導入部材54及び管状部材53を通ってスムーズに用水路51内に流入するので、用水路51がこの用水路51の底壁51b下面及び側壁51a背面の土砂利52中の水の圧力で浮いてしまうという現象を回避できる。
【0046】
また、老朽化した用水路51の底壁51b及び側壁51aの補修工事を行う場合、例えば、老朽化した用水路51の底壁51bや側壁51aのひび割れを塞いだり、或いは老朽化した用水路51の底壁51b及び側壁51aの表面を被覆する場合、補修工事を行うために、用水路51内の水を抜くと、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水圧が用水路51内の水圧(水圧:ゼロ)より高くなるので、逆止弁56の弁本体56cが、仕切壁56aより下側の管状部材53内に流入した水に押されることにより浮いて、円形孔56bを開放する。この結果、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中に含まれる水が水導入部材54の目皿54bの複数の小孔54cから円筒部54a内に流入し、円筒部54a及び管状部材53を通ってスムーズに用水路51内に流入し、用水路51の底壁51b下面の土砂利52中に含まれる水を適切に排出できるので、ひび割れに用水路51の底壁51b下面の土砂利52中の水が浸入することがなく、補修工事の品質を高めることができる。更に、コア孔51c内に挿入した逆止弁56付き管状部材53及び水導入部材54をコア孔51cから引抜くことができるとともに、管状部材53から2重目皿55を取外すことにより逆止弁56の弁本体56cを取出すことができるので、コア孔51cから引抜いた管状部材53及び水導入部材54と、管状部材33から取外した2重目皿と、管状部材33から取出した弁本体56cをそれぞれ洗浄した後に、弁本体56cを管状部材53に収容してこの管状部材53に2重目皿55を取付け、この管状部材33及び水導入部材54をコア孔51cに再び挿入することにより、管状部材53、水導入部材54、2重目皿55及び弁本体56cの水抜き構造としての機能をほぼ完全に回復できる。
【0047】
<第6の実施の形態>
図6は本発明の第6の実施の形態を示す。
図6において
図4と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、コンクリート製用水路31の側壁31aに無収縮セメントペースト75を充填するための充填孔31dが形成される。この充填孔31dは、その基端が用水路31の側壁31aの基端面のうちコア孔31cより所定の距離だけ上方に位置し、先端がコア孔31cの内周面と管状部材33の外周面との間の隙間18のうち管状部材33の長手方向中央より基端寄りに臨むように、基端から先端に向って下方に傾斜して形成される。なお、管状部材33内に第4の実施の形態と同一形状の逆止弁36が引抜き可能に収容される。また、水導入部材64は円筒部64aと目皿64bとを有する。そして、円筒部64aは、第1の実施の形態の水導入部材と同様に、外周面に複数の山部及び谷部が交互に形成された蛇腹管状の外管64cと、内面が平滑に形成され外管64cに引抜き可能に挿入された円筒管状の内管64dとからなるポリエチレン製の2重管構造であり、複数の小孔64eが円筒部64aの外周面のうち谷部に形成される。また、水導入部材64の目皿64bは、第1の実施の形態の目皿とは異なり、複数の小孔64fを有する半球板状に形成される。また、管状部材33の外周面には、リング状に形成された外周リブ33bより管状部材33の基端側に短管65が嵌入される。この短管65は管状部材33及び逆止弁36を補強するために設けられる。これにより管状部材33の外周面に嵌着された2本のゴム製のリング部材66,67のうち、管状部材33の基端に嵌着された一方のリング部材66は第3の実施の形態のリング部材より外径が小さく形成され、管状部材33の先端に嵌着された他方のリング部材67は第4の実施の形態のリング部材と外径が同一に形成される。上記以外は第4の実施の形態と同一に構成される。
【0048】
このように構成された水抜き構造の施工時であって、ゴム製のリング部材66,67が嵌着された管状部材33と水導入部材64とを連結した状態でコア孔31cに挿入した後に、無収縮セメントペースト75を充填孔31dに注入することにより、コア孔31cの内周面と管状部材33の外周面との間の隙間18のうち2本のリング部材66,67間の隙間18に無収縮セメントペースト75を充填する。この結果、無収縮セメントペースト75が硬化することにより、管状部材33と水導入部材64とをコア孔31c内に確実に固定できる。上記以外の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果は、第1の実施の形態の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。また、このように施工された水抜き構造では、コア孔31c内に挿入した管状部材33及び水導入部材64をコア孔31cから引抜くことができないため、これらをコア孔31cから引抜いた状態で洗浄できないけれども、逆止弁36を管状部材33から引抜くことができるので、逆止弁36をコア孔31cから引抜いた状態で洗浄できる。上記以外の水抜き構造の動作は、第4の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0049】
<第7の実施の形態>
図7は本発明の第7の実施の形態を示す。
図7において
図6と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、管状部材33内に第6の実施の形態と同一形状の逆止弁36が引抜き可能に収容される。また、水導入部材84は円筒部84aと目皿84bとを有する。そして、円筒部84aは、第1の実施の形態の水導入部材と同様に、外周面に複数の山部及び谷部が交互に形成された蛇腹管状の外管84cと、内面が平滑に形成され外管84cに取外し可能に挿入された円筒管状の内管84dとからなるポリエチレン製の2重管構造であり、複数の小孔84eが円筒部84aの外周面のうち谷部に形成される。この円筒部84aは、2重管構造の基端に厚さの大きい円筒状の肉厚部84fが一体的に設けられる。そして、円筒部84aの肉厚部84fに管状部材33の外周リブより先端側を挿入することにより、管状部材33の先端を水導入部材84の基端に連結して連通接続される。また、水導入部材84の目皿84bは、第6の実施の形態の目皿と同様に、複数の小孔84gを有する半球板状に形成される。更に、管状部材33の外周面のうち外周リブ33bより基端側に1本のゴム製のリング部材86が嵌着される。なお、
図8中の符号85は、コア孔31cの内周面と管状部材33の外周面との間の隙間18のうちリング部材86より基端側に充填されたエポキシ樹脂製又はポリウレタン樹脂製の充填材である。直射日光が当たらない場合には、エポキシ樹脂製の充填材85が用いられ、耐候性が要求される場合には、ポリウレタン樹脂製の充填材85が用いられる。上記以外は第6の実施の形態と同一に構成される。
【0050】
このように構成された水抜き構造の施工時であって、ゴム製のリング部材86が嵌着された管状部材33と水導入部材84とを連結した状態でコア孔31cに挿入した後に、コア孔31cの内周面と管状部材33の外周面との間の隙間18のうちリング部材86より基端側にエポキシ樹脂製の充填材85を充填する。このとき用水路31の側壁31aのうちコア孔31cの基端側の面が湿潤面であっても、容易に施工することができる。また、上記充填材85が硬化することにより、管状部材33をコア孔31c内に確実に固定できる。上記以外の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果は、第6の実施の形態の水抜き構造の施工手順、水抜き構造の施工における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。また、このように施工された水抜き構造では、コア孔31c内に挿入した管状部材33及び水導入部材84をコア孔31cから引抜くことができないため、これらをコア孔31cから引抜いた状態で洗浄できないけれども、逆止弁36を管状部材33から引抜くことができるので、逆止弁36をコア孔31cから引抜いた状態で洗浄できる。上記以外の水抜き構造の動作は、第6の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0051】
<第8の実施の形態>
図8及び
図9は本発明の第8の実施の形態を示す。
図8及び
図9において
図4と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、管状部材93に、浮子式の逆止弁ではなく、フラップ式の逆止弁96が収容される。管状部材93の内周面には長手方向中央にリング状の内周リブ93aが突設され、管状部材93の外周面には長手方向中央にリング状の外周リブ93bが突設され、内周リブ93aより基端側の管状部材93に上記フラップ式の逆止弁96が引抜き可能に収容される。この逆止弁96は、管状部材93内に取出し可能に挿入された円筒状の筐体96aと、この筐体96aの長手方向略中央に筐体96a内を左右に仕切るた仕切壁96bと、仕切壁96bの中央から下部に掛けて形成された複数の通孔96cと、仕切壁96bより基端側に筐体96a内に収容され上部が仕切壁96bの上部にビス96dにより取付けられ更に複数の通孔96cを閉止可能な弁本体96eとを有する。上記仕切壁96bはプラスチックにより筐体96aと一体的に形成される。また仕切壁96bは、上端が筐体96aの長手方向中央に位置し下端が筐体96aの長手方向中央より筐体96aの基端側に位置するように、上端から下端に向うに従って次第に管状部材93の基端側に移行するように僅かに傾斜して形成される。更に、弁本体96eは、仕切壁96bにビス96dにより取付けられた固定部96fと、仕切壁96bの複数の通孔96cを開閉する可動部96gと、可動部96gを固定部96fに連結し可動部96gの固定部96fに対する相対的な回動を許容するヒンジ部96hと、可動部96gに内蔵された金属板96iとからなる。上記固定部96f、可動部96g及びヒンジ部96hはゴムにより一体的に形成される。上記金属板96iは可動部96gの反りを防止するとともに、可動部96gが複数の通孔96cを閉止したときの止水効果を保つために設けられる。
【0052】
上記逆止弁は、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧以下であるときに、弁本体96eの可動部96gが仕切壁96bより基端側の筐体96a内に流入した水に押されて仕切壁96bに密着し複数の通孔96cを閉止することにより、管状部材93の基端から先端に向って管状部材93内を水が流れること、即ち用水路31内の水が用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に逆流することを阻止するように構成される。また逆止弁96は、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧より高くなったときに、弁本体96eの可動部96gが仕切壁96bより先端側の筐体96a内に流入した水に押されて複数の通孔96cを開放することにより、管状部材93の先端から基端に向って管状部材93内を水が流れること、即ち用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水が用水路31内に流入することを許容するように構成される。上記以外は、第4の実施の形態と同一に構成される。
【0053】
このように構成された水抜き構造の施工時における動作及び効果は、第4の実施の形態の水抜き構造の施工時における動作及び効果と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0054】
このように施工された水抜き構造では、コンクリート製用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧以下であるとき、弁本体96eの可動部96gが仕切壁96bより基端側の筐体96a内に流入した水に押されて仕切壁96bに密着し複数の通孔96cを閉止する。この結果、管状部材93の基端から先端に向って管状部材93内を水が流れないので、用水路31内の水が用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に逆流することを防止できる。一方、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路31内の水圧より高くなると、弁本体96eの可動部96gが仕切壁96bより先端側の筐体96a内に流入した水に押されて複数の通孔96cを開放する。この結果、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水が水導入部材44及び管状部材93を通ってスムーズに用水路31内に流入するので、用水路31がこの用水路31の側壁31a背面及び底壁下面の土砂利32中の水の圧力で浮いてしまうという現象を回避できる。
【0055】
また、老朽化した用水路31の側壁31a及び底壁の補修工事を行う場合、例えば老朽化した用水路31の側壁31aや底壁のひび割れを塞いだり、或いは老朽化した用水路31の側壁31a及び底壁の表面を被覆する場合、補修工事を行うために、用水路31内の水を抜くと、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水圧が用水路内の水圧(水圧:ゼロ)より高くなるので、弁本体96eの可動部96gが仕切壁96bより先端側の筐体96a内に流入した水に押されて複数の通孔96cを開放する。この結果、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水が水導入部材44及び管状部材93を通ってスムーズに用水路31内に流入し、用水路31の側壁31a背面の土砂利32中に含まれる水を適切に排出できるので、ひび割れに用水路31の側壁31a背面の土砂利32中の水が浸入することがなく、補修工事の品質を高めることができる。上記以外の水抜き構造の動作は、第4の実施の形態の動作と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【0056】
なお、第1、第2及び第4〜第8の実施の形態では、水導入部材の先端がコア孔の先端に位置するように構成したが、水導入部材の先端がコア孔の先端近傍のコア孔内に位置するように構成してもよい。また、第1、第6及び第7の実施の形態では、円筒部を、外周面に複数の山部及び谷部が交互に形成された蛇腹管状の外管と、内面が平滑に形成され外管に挿着された円筒管状の内管とからなるポリエチレン製の2重管構造とし、複数の小孔を円筒部の外周面のうち谷部に形成したが、円筒部を、その外周面に複数の孔をあけた塩化ビニル製の管により形成してもよい。また、第4及び第5の実施の形態では、水導入部材の円筒部の外周面に複数の小孔を形成しなかったが、水導入部材の円筒部の外周面に複数の小孔を形成してもよい。これにより用水路の側壁背面又は底壁下面の土砂利中に含まれる水が、水導入部材の目皿に形成された小孔のみならず、水導入部材の円筒部の外周面に形成された小孔からも、円筒部内に流入するため、小孔の総数が多く、目詰まりが発生し難くなる。更に、第3の実施の形態(
図3)外周面に複数の小孔34cが形成された円筒部34aと、円筒部34aの先端に固着された先細りの進入支援部34bとを有する水導入部材34と、第7の実施の形態(
図7)の1本のリング部材86が嵌着されかつ外周面及びコア孔31c内周面間に充填材85が充填された逆止弁36付き管状部材33とを組合せてもよい。