(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223238(P2016-223238A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-113016(P2015-113016)
(22)【出願日】2015年6月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】那須 英彰
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040BA08
2D040BB01
2D040EA21
2D040FA01
2D040FA17
(57)【要約】
【課題】 ロッド駆動装置の上昇限を、簡単な操作で確実に変更可能な地盤改良機を提供する。
【解決手段】 ベースマシンに立設したリーダの中間部に、ロッド駆動装置を検出する中間部検出手段(リミットスイッチ)を設けるとともに、ロッド駆動装置を昇降させる上昇指令部及び下降指令部と、中間部検出手段の有効/無効を切り替える切替スイッチとを有する制御手段を設け、制御手段は、下降指令部からの下降指令は、中間部検出手段の状態及び切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を下降させ、上昇指令部からの上昇指令は、中間部検出手段がロッド駆動装置の非検出状態では切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させ、中間部検出手段がロッド駆動装置の検出状態かつ切替スイッチが有効状態のときにはロッド駆動装置を停止させ、切替スイッチが無効状態のときには中間部検出手段の検出状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースマシンに立設したリーダに沿ってロッド駆動装置を昇降させる地盤改良機において、前記リーダの中間部に、前記ロッド駆動装置を検出する中間部検出手段を設けるとともに、ロッド駆動装置を昇降させる上昇指令部及び下降指令部と、前記中間部検出手段の有効/無効を切り替える切替スイッチとを有する制御手段を設け、該制御手段は、前記下降指令部からの下降指令は、前記中間部検出手段の状態及び前記切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を下降させ、前記上昇指令部からの上昇指令は、前記中間部検出手段がロッド駆動装置の非検出状態では前記切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させ、前記中間部検出手段がロッド駆動装置の検出状態かつ前記切替スイッチが有効状態のときにはロッド駆動装置を停止させ、前記切替スイッチが無効状態のときには前記中間部検出手段の検出状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させることを特徴とする地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機に関し、詳しくは、リーダに沿って昇降するロッド駆動装置の上昇限を規制する上昇限規制手段を備えた地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースマシンに立設したリーダに沿って作業装置を昇降させる杭打機や地盤改良機では、作業装置の上昇限を規制するための上昇限規制手段を設けている。一般的な上昇限規制手段は、リーダの上端部に、作業装置を検出する検出手段を設け、検出手段が作業装置の上昇を検出したときに、上昇側油圧回路を遮断するなどして作業装置を停止させるようにしている(例えば、特許文献1,2参照。)。また、短尺のロッドを使用する場合は、ロッド下端の掘削ヘッドがリーダの下端に接触することを防止するため、リーダの中間位置で作業装置の上昇を規制する必要がある。このため、上昇してきたロッド駆動装置をリーダの中間部で検出してロッド駆動装置を停止させるための中間部検出手段を設けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−328571号公報
【特許文献2】特開2002−173936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、リーダに中間部検出手段を設けた場合、通常の作業を行う際には中間部検出手段を取り外さなければならず、これを忘れると、通常の作業が行えなくなってしまう。また、作業装置の上昇限を変更するたびに中間部検出手段を着脱しなければならず、面倒であり、さらに、取り外した中間部検出手段を保管しておかなければならなかった。
【0005】
そこで本発明は、作業装置であるロッド駆動装置の上昇限を、簡単な操作で確実に変更可能な上昇限規制手段を備えた地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、ベースマシンに立設したリーダに沿ってロッド駆動装置を昇降させる地盤改良機において、前記リーダの中間部に、前記ロッド駆動装置を検出する中間部検出手段を設けるとともに、ロッド駆動装置を昇降させる上昇指令部及び下降指令部と、前記中間部検出手段の有効/無効を切り替える切替スイッチとを有する制御手段を設け、該制御手段は、前記下降指令部からの下降指令は、前記中間部検出手段の状態及び前記切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を下降させ、前記上昇指令部からの上昇指令は、前記中間部検出手段がロッド駆動装置の非検出状態では前記切替スイッチの切替状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させ、前記中間部検出手段がロッド駆動装置の検出状態かつ前記切替スイッチが有効状態のときにはロッド駆動装置を停止させ、前記切替スイッチが無効状態のときには前記中間部検出手段の検出状態に関係なくロッド駆動装置を上昇させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の地盤改良機によれば、標準の長さのロッドを使用する際には、切替スイッチを無効側に切り替えることにより、ロッド駆動装置をリーダの上端まで上昇させることができ、短尺のロッドを使用する際には、切替スイッチを有効側に切り替えることにより、ロッド駆動装置の上昇限を中間部検出手段がロッド駆動装置を検出するまでの高さに設定することができる。また、ロッド駆動装置を下降させる際には、中間部検出手段の状態及び切替スイッチの切替状態に関係なく下降指令部をからの指令でロッド駆動装置を下降させることができる。したがって、標準のロッドと短尺のロッドとを切替スイッチの切り替えのみで行うことができる。これにより、施工長が短い施工現場の場合に、短尺のロッドを使用して施工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の地盤改良機に設けた制御回路の一形態例を示す回路図である。
【
図2】制御手段における機器配置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、
図3に示すように、地盤改良機11は、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後部側から支持する起伏シリンダ16と、前記リーダ15に沿って昇降可能に設けられたロッド駆動装置17と、リーダ15の下部に設けられた下部ガイド18とを備えており、上部旋回体13の前部右側には、地盤改良機11を操作するための運転室19が設けられている。
【0010】
前記ロッド駆動装置17には、下端に掘削刃20a及び撹拌翼20bを有する掘削ヘッド20を取り付けたロッド21が装着される。地盤改良機11の仕様に対応した標準長さのロッド21を使用する際には、ロッド駆動装置17は、リーダ15の上端から下端までの全長にわたって昇降し、ロッド駆動装置17がリーダ15の上端まで上昇しても、掘削ヘッド20がリーダ15の下端に接触しないように設定されている。
【0011】
このように形成された地盤改良機11において、施工長が短い施工現場で、標準長さのロッド21をそのまま使用して施工する場合に比べて、標準のロッドより短い短尺ロッドを使用することにより、施工効率を向上させることができる。一方、短尺ロッドを使用する場合は、ロッド駆動装置17をリーダ15の上端まで上昇させると、掘削ヘッド20がリーダ15の下端部に接触して掘削ヘッド20が破損してしまうため、ロッド駆動装置17の上昇限を設定する必要がある。
【0012】
このため、本形態例に示す地盤改良機11では、
図1及び
図2に示すように、リーダ15の中間部で、短尺ロッドの長さに対応したロッド駆動装置17の上昇限となる位置に、ロッド駆動装置17を検出する中間部検出手段となるリミットスイッチ22を設けるとともに、運転室19内に、ロッド駆動装置17を昇降させる上昇指令部及び下降指令部となる操作レバー23と、前記リミットスイッチ22の有効/無効を切り替える切替スイッチ24と、ロッド駆動装置17を停止させるための油圧回路遮断部25と、下降用リレー26及び位置リレー27とを有する電気回路からなる制御手段28とを備えている。
【0013】
制御手段28は、リミットスイッチ22のON・OFF、操作レバー23の操作、切替スイッチ24の切替状態に応じて下降用リレー26及び位置リレー27がそれぞれ作動することにより、ロッド駆動装置17の昇降を制御する。
図1に示す状態は、短尺ロッドを取り付けたロッド駆動装置17がリーダ15の下部に位置している状態(
図2に示すLow位置)であり、リミットスイッチ22はOFF、切替スイッチ24は短尺ロッド用の有効側接点24aに切り替えられている。下降用リレー26は非作動状態で、接点26aがON状態となっているが、リミットスイッチ22がOFFで非通電状態であるから、位置リレー27は非作動状態で、接点27aがON状態となっている。
【0014】
下降用リレー26のソレノイド26bを通るライン26cは、操作レバー23の下降側23aに接続されており、操作レバー23を下降側23aに操作するとライン26cが通電状態となり、操作レバー23の中立又は上昇側ではライン26cが非通電状態となるように設定されている。油圧回路遮断部25は、非通電状態になると、ロッド駆動装置17を昇降させるための油圧モータの油圧回路を遮断してロッド駆動装置17を停止させるように設定されている。
図1に示す状態では、油圧回路遮断部25のライン25a,25bは、位置リレー27の接点27a及び切替スイッチ24の接点24aを介して通電状態となっているため、油圧回路は開いた状態になっている。
【0015】
操作レバー23を下降側23aに操作すると、油圧回路遮断部25のライン25a,25bが通電状態で油圧回路は開いていることから、ロッド駆動装置17を下降させる方向の油圧回路が開き、油圧モータが作動してロッド駆動装置17が下降する。同時に、下降用リレー26のライン26cが通電状態になり、下降用リレー26が作動して下降用リレー26の接点26aがOFFとなるが、リミットスイッチ22がOFFであるから、位置リレー27は非通電状態を保持する。
【0016】
一方、操作レバー23を上昇側23bに操作すると、ロッド駆動装置17を上昇させる方向の油圧回路が開き、油圧モータが作動してロッド駆動装置17が上昇する。この場合も、前記同様に、油圧回路遮断部25のライン25a,25bが通電状態であることから、油圧回路が遮断されることはない。ロッド駆動装置17がリミットスイッチ22の作動位置に上昇すると(
図2に示すHigh位置)、リミットスイッチ22がロッド駆動装置17を検出してONとなるので、リミットスイッチ22から下降用リレー26の接点26aを通って位置リレー27が通電状態となり、位置リレー27が作動して接点27aがOFFとなる。接点27aがOFFになると、油圧回路遮断部25のライン25a,25bが切断されて非通電状態になり、油圧モータの油圧回路が遮断されてロッド駆動装置17が停止する。これにより、短尺ロッドの長さに対応した上昇位置でロッド駆動装置17が停止することになる。
【0017】
リミットスイッチ22がONの状態で操作レバー23を下降側23aに操作すると、下降用リレー26のライン26cが通電状態になり、下降用リレー26が作動して下降用リレー26の接点26aがOFFになることから、位置リレー27が非通電状態となり、接点27aがONとなる。これにより、油圧回路遮断部25のライン25a,25bが、位置リレー27及び切替スイッチ24を介して通電状態となるため、油圧モータの油圧回路が開き、油圧モータが作動してロッド駆動装置17が下降する。
【0018】
このように、短尺ロッドを使用する際に、切替スイッチ24を、短尺ロッド用の有効側接点24aに切り替えてリミットスイッチ22のON・OFF制御を有効に設定することにより、操作レバー23を上昇側23bに操作した際のロッド駆動装置17の上昇限を、リミットスイッチ22がロッド駆動装置17を検出するまでの高さに制限することができる。また、下降側は、リミットスイッチ22のON・OFFに関係なく操作できるので、ロッド駆動装置17の上昇位置を確認することなく、標準のロッドを使用したときと同様の操作でロッド駆動装置17を昇降させることができる。
【0019】
また、標準長さのロッドを使用するため、切替スイッチ24を標準ロッド側の無効側接点24bに切り替えてリミットスイッチ22を無効状態に設定した場合、位置リレー27の接点27aに直結した切替スイッチ24の無効側接点24bを介して油圧回路遮断部25のライン25a,25cが常に通電状態になるため、油圧回路遮断部25が油圧回路を遮断する機能が停止する。したがって、ロッド駆動装置17の上昇側及び下降側のいずれの場合も、リミットスイッチ22のON・OFFに関係なく、操作レバー23の操作によってロッド駆動装置17をリーダ15の上端又は下端まで昇降させることができる。
【0020】
このように、使用するロッドの長さに応じて切替スイッチ24を切り替えるだけでよく、標準長さのロッドを使用する場合も、短尺のロッドを使用する場合も、同じレバー操作でロッド駆動装置17の昇降作業を行うことができる。また、リミットスイッチ22は、リーダ15の所定位置に取り付けたままにできるので、ロッドの長さ変更でリミットスイッチのような中間部検出手段を着脱する必要もなくなり、管理も容易になる。
【符号の説明】
【0021】
11…地盤改良機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…リーダ、16…起伏シリンダ、17…ロッド駆動装置、18…下部ガイド、19…運転室、20…掘削ヘッド、20a…掘削刃、20b…撹拌翼、21…ロッド、22…リミットスイッチ、23…操作レバー、23a…下降側、23b…上昇側、24…切替スイッチ、24a…有効側接点、24b…無効側接点、25…油圧回路遮断部、25a,25b,25c…ライン、26…下降用リレー、26a…接点、26b…ソレノイド、26c…ライン、27…位置リレー、27a…接点、28…制御手段