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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223310(P2016-223310A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】タービンおよびタービン運用方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/30 20060101AFI20161205BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20161205BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20161205BHJP
   B24C 1/10 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F01D5/30
   F01D25/00 X
   F01D25/00 W
   F02C7/00 D
   B24C1/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-107867(P2015-107867)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦也
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202FA04
3G202FB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】受圧面端部からのフレッティング疲労破壊を従来より抑制することができるタービンとタービンの運用方法を提供する。
【解決手段】ショットピーニング施工をする前の段階で、翼側植込み部での接触端3の位置をえぐるように応力逃し溝1が形成されている。応力逃し溝1は翼側植込み部の8つのネック部105全てに形成されており、ネック部105のネック底109と受圧面107の間に位置する。および/またはロータ側植込み部の8つのネック部に応力逃し溝2が形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータ外周部とタービン動翼根元部とを連結するタービン翼植込み部を有するタービンであって、
前記タービン翼植込み部は、受圧面と非受圧面とを少なくとも1組以上ジグザクに連ねた逆クリスマスツリー状の嵌合形態を有しており、
前記逆クリスマスツリー状の嵌合形態における前記受圧面側に応力逃し溝を備えた
ことを特徴とするタービン。
【請求項2】
請求項1に記載のタービンにおいて、
前記応力逃し溝部分の左右のくびれ幅の最小値は、その応力逃し溝が形成されたネック部の左右のくびれ幅の最小値以上である
ことを特徴とするタービン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタービンにおいて、
前記応力逃し溝は、その応力逃し溝と前記受圧面とのなす角度である逃し角が25°以上である
ことを特徴とするタービン。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のタービンにおいて、
前記応力逃し溝と前記ネック部のうち少なくともどちらか一方は、前記応力逃し溝が形成された後にショットピーニング施工が施された
ことを特徴とするタービン。
【請求項5】
請求項4に記載のタービンにおいて、
前記ショットピーニング施工後に表面研磨が施された
ことを特徴とするタービン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のタービンにおいて、
前記タービン動翼側の翼植込み部の受圧面に応力逃し溝を備えた
ことを特徴とするタービン。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタービンにおいて、
前記タービンロータ側の翼植込み部の受圧面に応力逃し溝を備えた
ことを特徴とするタービン。
【請求項8】
タービンロータ外周部とタービン動翼根元部とを連結するタービン翼植込み部を有するタービンの運用方法であって、
前記タービン翼植込み部は、受圧面と非受圧面とを少なくとも1組以上ジグザクに連ねた逆クリスマスツリー状の嵌合形態を有しており、
タービンの供用開始後の運転停止期間中に、前記逆クリスマスツリー状の嵌合形態におけるネック部と前記受圧面との間の前記受圧面側に応力逃し溝を形成する
ことを特徴とするタービンの運用方法。
【請求項9】
請求項8に記載のタービンの運用方法において、
前記応力逃し溝を、予め予想された前記タービン翼植込み部の耐用期間に到達する前に形成する
ことを特徴とするタービンの運用方法。
【請求項10】
請求項8に記載のタービンの運用方法において、
前記応力逃し溝を、前記タービン翼植込み部の初期損傷の検知後に形成する
ことを特徴とするタービンの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンおよびタービン運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材の疲労強度を向上させるための表面仕上げとしてショットピーニングが知られている。このショットピーニングをタービン翼植込み部に適用した加工方法として特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1に記載の翼植込み部の仕上げ加工方法は、ダブテール形状あるいはクリスマスツリー形状である翼植込み部をワイヤカットで加工し、その後グラスビードまたはショットピーニングで加工面に残留圧縮応力を付加するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−84550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蒸気タービン等のタービン翼とロータディスクとを連結する部分は、タービン翼側の植込み部とロータディスク側の植込み部とを噛み合せた構造となっている。この連結部分は、タービン稼動時にタービン翼にかかる遠心力を支持する部位であるため、十分な耐疲労性を確保する必要がある。特に、翼長の長い低圧段においては、大きな遠心力を支持するのに優位性の高い逆クリスマスツリー型の噛み合わせ構造が用いられることが多い。この逆クリスマスツリー構造は、受圧面と非受圧面とがジグザクに連なって下向きのクリスマスツリー形状をなしたものである。
【0006】
しかし、本構造を模擬した試験体を用いて、特許文献1に記載されたようにショットピーニングを施工した場合、起動−停止相当荷重の繰返しにより、受圧面端部から比較的早期にフレッティング疲労破壊が生じ、十分な寿命改善効果が得られなかったことが本発明者らによって判明した。すなわち、ショットピーニングにより形成される圧縮残留応力は、接触部特有のフレッティング疲労の抑止効果がそれほど高くない模様である。したがって、逆クリスマスツリー型の翼植込み部の耐疲労性を確保するには、従来のショットピーニング施工ではなく、何かしら新しい手法を用いること、またはショットピーニングに加えて新たな手法を用いることが耐疲労性の更なる向上に適していることが分かった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、受圧面端部からのフレッティング疲労破壊を従来より抑制することができるタービンとタービンの運用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、タービンロータ外周部とタービン動翼根元部とを連結するタービン翼植込み部を有するタービンであって、前記タービン翼植込み部は、受圧面と非受圧面とを少なくとも1組以上ジグザクに連ねた逆クリスマスツリー状の嵌合形態を有しており、前記逆クリスマスツリー状の嵌合形態における前記受圧面側に応力逃し溝を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受圧面端部からのフレッティング疲労破壊の発生を抑制することができ、寿命改善効果が十分に得られる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態の蒸気タービンの低圧段タービン翼とロータディスクとの連結部を示す概略図である。
図2】一般的な翼植込み部のネック部拡大図である。
図3】第1の実施形態の翼植込み部のネック部拡大図である。
図4】第1の実施形態と比較例の受圧面からネック部にかけての表面のひずみ分布である。
図5】第1の実施形態における逃し角θと接触端ひずみおよびネックピークひずみとの関係を示す図である。
図6】一般的なタービンロータの翼植込み部と第1の実施形態のタービンロータの翼植込み部との疲労寿命の相対比較の図である。
図7】第1の実施形態のタービン翼植込み部を製作する手順を示すフロー図である。
図8】第1の実施形態におけるショットピーニング施工の図である。
図9】第1の実施形態における研磨施工の図である。
図10】本発明の第2の実施形態のタービン運用方法を示すスケジュール図である。
図11】本発明の第3の実施形態のタービン運用方法を説明するフロー図である。
図12】第3の実施形態のタービン運用方法における応力逃し溝の形成イメージを示す図である。
図13】本発明の第4の実施形態の蒸気タービンの低圧段タービン翼とロータディスクとの連結部を示す概略図である。
図14】第4の実施形態の翼植込み部のネック部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明のタービンおよびタービン運用方法の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
本発明のタービンの第1の実施形態を、図1乃至図9を用いて説明する。
【0013】
最初に、本実施形態のタービン翼植込み部の構成を図1を用いて説明する。図1は蒸気タービンの低圧段タービン翼とロータディスクとの連結部を示す概略図である。
【0014】
図1において、低圧タービン翼101は根元部分でロータディスク102と互いの溝を噛み合せるようにして連結されている。溝の断面は逆クリスマスツリー状となっており、タービン翼側が翼側植込み部103、ロータディスク側がロータ側植込み部104である。図示しないが、同様の連結構造がロータディスク102の円周方向に低圧タービン翼101の本数分だけ等間隔に並んで一周する形態となっている。
【0015】
タービン稼動時には、低圧タービン翼101が上方に配した翼面(図示せず)で蒸気を受けることにより連結されたロータディスク102が円周方向に回転し、この回転駆動力により発電機(図示せず)が発電する。この時、低圧タービン翼101には上方向に遠心力が発生するが、噛み合せ構造の翼側植込み部103およびロータ側植込み部104の8つの受圧面107で遠心力を支持する。このため、翼側植込み部103の8つのネック部105とロータ側植込み部104の8つのネック部106に応力集中が生じて、局部的に高い応力が発生し、長期間の使用により、疲労き裂などの損傷が発生する恐れがある。
【0016】
続いて、ネック部105の構造について、一般技術と本発明とを比較しながら図2から図6を用いて説明する。
【0017】
図2は一般的な技術の翼植込み部のネック部拡大図である。長期間の使用により、図2に示すように、応力集中の高いネック部105および受圧面107の端部3(以後、接触端3と称す)から疲労によるき裂111,112が生じる恐れがある。ネック部105の応力集中は溝形状に起因し、接触端3の応力集中は接触に起因するものである。
【0018】
このようなき裂111,112のような損傷を抑制する技術として、ショットピーニング施工が広く知られている。これは、強化対象部位に砂状の粒子を噴射させることで、施工部表層に圧縮残留応力を形成させる技術である。このショットピーニング施工によってき裂の発生および進展を抑制することができる。ショットピーニング施工は、装置が比較的廉価で扱いやすく、施工費用および施工時間が少なくて済むなどのメリットがあるため、一般的な材料の表面強度の強化手法として広く用いられている。
【0019】
しかし、低圧タービン翼とロータディスクとの連結部を模擬した試験体にそのままショットピーニング施工して疲労試験を実施したところ、ネック部105からのき裂111は発生しなかったものの、接触端3からのき裂112が比較的早期に発生し、施工前に対する寿命改善効果は2倍未満に制限されることが本発明者らの検討によって明らかとなった。接触端3の応力集中は、ネック部105をはじめとした通常の切欠き部の応力集中と比べて、はるかに高いピークを示すため、圧縮残留応力の効果が生じにくいためと考えられる。
【0020】
以上から、低圧段タービンの逆クリスマスツリー型の翼植込み部の耐疲労性を確保するには、当該部にそのままショットピーニング施工する一般的な手法では不十分となる恐れがあり、新たな手法が望まれた。
【0021】
図3は本実施形態の翼植込み部のネック部拡大図である。ショットピーニング施工をする前の段階で、図2の一般的な翼側植込み部103での接触端3の位置をえぐるように応力逃し溝1が形成されている。応力逃し溝1は翼側植込み部103の8つのネック部105全てに形成されており、ネック部105のネック底109と受圧面107の間に位置する。
【0022】
また、左右の応力逃し溝1のくびれ幅Wは、その応力逃し溝1が形成された部分に最も近い位置のネック部105のネック底109の幅Wと同じかそれ以上の幅となっている。
【0023】
また、応力逃し溝1は受圧面107との連結点4において、応力逃し溝1と受圧面107とのなす角度である所定の逃し角θはθ=29°となっている。
【0024】
図4は受圧面107からネック部105にかけての表面のひずみ分布を、一般技術(逃し溝なし)と本実施形態(逃し角θ=29°)とを比較したものである。比較のために、本発明の範囲内である逃し角度θ=18°も加えてある。ひずみは、FEM応力解析により得られた実機起動−通常運転−停止の間の変動範囲であり、疲労寿命を支配する最大主ひずみ成分である。横軸接線位置の原点は、一般技術(逃し溝なし)では接触端3の位置であり、逃し溝あり(θ=18°,29°)では連結点4の位置である。
【0025】
図4に示すように、一般技術(逃し溝なし)では接触端の位置でひずみが高いピークを示しており、疲労き裂がここから発生する原因となっていることを裏付けている。これに対し、受圧面107に応力逃し溝1を形成することによって、このひずみのピークは逃し角θ=18°で低減しており、さらに逃し角θ=29°では消滅していることが分かる。また、ネック部105では比較的緩やかな勾配で高原状にひずみが高めとなる。原点位置でのひずみを接触端ひずみ、ネック部でのひずみ最大点をネックピークひずみと称することとする。
【0026】
図5は逃し角θと接触端ひずみおよびネックピークひずみとの関係を示す図である。一般技術(逃し溝なし)はθ=0°に相当する。図5に示すように、逃し角θの増加により接触端ピークが次第に低下し、逃し角θが25°以上では一般技術(逃し溝なし)でのネックピークひずみと同等以下にまで抑えられており、接触端からの早期のき裂発生を抑制できることが期待されることが分かった。
【0027】
ただし、ネックピークひずみは逃し角θの増加により若干増加する傾向を示し、逃し角θをある程度以上大きくすると、ネックピーク位置からのき裂発生が早まる恐れがあるため注意が必要である。
【0028】
また、前述したように応力逃し溝1のくびれ幅Wはネック底幅Wと同じかそれ以上となっているが、このような構成とすることで、ネック部105に替わる応力逃し溝1部分での応力集中の度合いを抑え、応力逃し溝1部分でのネックピークひずみの高まりを抑制することができる。
【0029】
図6は、一般技術である応力逃し溝を形成させずにネック部にショットピーニング施工した場合と、本実施形態の応力逃し溝(逃し角θ=29°)を形成させてからネック部および応力逃し溝部にショットピーニング施工させた場合との疲労寿命の相対比較である(比較のため、逃し角θ=18°も加えている)。いずれも、低圧タービン翼とロータディスクとの連結部を模擬した試験体を用い、起動−通常運転−停止サイクルに相当する荷重サイクルを繰返した。
【0030】
図6に示すように、本実験結果から、一般的なネック部にショットピーニングさせた場合では寿命は1.4倍までしか伸びなかったが、応力逃し溝1を形成させてからショットピーニングさせると逃し角θ=18°で2倍程度まで寿命が伸び、本実施形態の逃し角θ=29°では4倍程度まで寿命を伸ばすことができることが分かった。
【0031】
以上の本実施形態のタービン翼植込み部の構造により、接触端のひずみ集中を抑えることで接触端からのき裂発生を抑制でき、ショットピーニングによる寿命改善効果を十分に引き出すことが可能となることが分かった。
【0032】
続いて、本実施形態に係るタービン翼植込み部の製作方法について図7乃至図9を参照して説明する。図7は、本実施形態のタービン翼植込み部を製作する手順を示すフロー図である。本フローは低圧段タービン翼植込み部を新たに製造する際の手順である。
【0033】
図7において、まず、ステップS1において、応力逃し溝の輪郭形状に合わせて工具刃先の形状が調整されている工具によって、低圧段タービンの翼側植込み部103を切削・研削加工で仕上げる。この際、工具刃先の形状は図3に示すような応力逃し溝1が同時に仕上がるようになっている。
【0034】
続いて、ステップS2において、図8に示すように、ネック部105および応力逃し溝1をカバーするようにノズル20を適切にセットしショットピーニング施工する。
【0035】
続いて、ステップS3において、図9に示すように、ショットピーニング施工により荒れた表層30を回転砥石工具31により研磨し、表層30μm程度を除去することで表面の凹凸を滑らかにする。本ステップで表面凹凸を低減することにより、疲労寿命を更に伸ばすことができる。なお、ショットピーニングにより形成される圧縮残留応力層の厚さは、最表面からの応力が半減する厚さで100μm以上であるので、表層30μm程度の除去であれば圧縮残留応力層の効果が減じる心配はない。
【0036】
このように、以上のタービン翼植込み部の製作方法により、切削・研削工程に新たに工程を追加することなく逃し溝を形成することができ、さらにショットピーニングにより生じる表面凹凸を低減することで更なる寿命改善が可能となることが分かった。
【0037】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0038】
このように、本実施形態によれば、ネック部105と受圧面107との間に応力逃し溝1を備えたので、受圧面107の端部からのフレッティング疲労破壊の発生を抑制することができ、ショットピーニング施工による寿命改善効果を十分に引き出すことができる。
【0039】
さらに、応力逃し溝1部分のくびれ幅Wをネック部105のネック底109の幅W以上とすることで、応力逃し溝1の形成によるネック部105の応力集中の増加を抑制し、結果として翼植込み部の長寿命化を図ることができる。
【0040】
特に、本実施形態は、蒸気タービンの低段側における翼植込み部で効果が発揮される。蒸気タービンでは高出力化,低コスト化への対応の一環として、低圧タービンの最終段落の動翼を長翼化し、蒸気がタービン動翼を通過する面積(以降環帯面積と呼ぶ)を増大させる方法がよく用いられている。環帯面積を増大させタービン動翼を流れる蒸気量を増やすことで、蒸気タービンの高出力化を図ることができ、また、低圧タービン一車室あたりの出力を増大させることができるためである。このため、たとえば従来二車室で使用していた出力帯の蒸気タービンの低圧車室数を一車室とすることで大幅にコストの低減が図られる。しかし、低圧タービン最終段落動翼の長翼化に伴う大きな問題点の一つは、タービン動翼の回転中に、翼部や翼植込み部に高い遠心応力が発生することがある。遠心力が大きくなることで、上述のように、翼側植込み部103の8つのネック部105とロータ側植込み部104の8つのネック部106に応力集中が生じて、局部的に高い応力が発生し、長期間の使用により、疲労き裂などの損傷が発生する恐れがある。しかし本実施形態のタービンであれば、応力逃し溝1が形成されているため、タービン稼動時において、接触端のひずみ集中を抑えることで接触端からのき裂発生を抑制でき、高い遠心応力の発生する蒸気タービンの低段側であっても長期間にわたっての使用が可能となる。
【0041】
<第2の実施形態>
本発明のタービン運用方法の第2の実施形態を図10用いて説明する。図10は、既に一般的な構造のタービン翼側植込み部(逃し溝なし)で供用開始された蒸気タービンに第1の実施形態のような逃し溝が形成されたタービン翼側植込み部(逃し溝形成してショットピーニング施工)を適用する運用方法を示すスケジュール図である。
【0042】
図10において、供用開始後、定期的に点検期間が設けられており、プラント各部の点検・補修・部品交換が行われ、健全な状態を維持する。従来のタービンでは、ネック部に応力逃し溝が形成されていないタイプのタービンが用いられている。このため、設計評価では翼側植込み部の耐用期間は定検期間2と定検期間3との間と見込まれており、従来では定検期間2のタイミングで翼の交換を行うなどして翼側植込み部の健全性を確保することになる。
【0043】
これに対し、本実施形態では、定検期間2のタイミングで、翼交換の代わりに、既に稼働している動翼の翼側植込み部103のネック部105に図3に示すように応力逃し溝1を形成した上で、図7の手順でショットピーニング施工と研磨仕上げを実施する。
【0044】
この一連の作業により、ネック部105および接触端3の表層に蓄積された疲労損傷部分は除去されており、翼側植込み部103は疲労耐久性の観点からは新品と同等となっており、さらに本実施形態の効果で耐用期間は3倍以上に伸びることが保障されている。以降は、定検期間8まで翼植込み部の補修の必要がなくなる。
【0045】
このように、本発明のタービンおよびタービン運用方法の第2の実施形態によれば、タービンの信頼性を高め、保守コストを低減する、との効果が得られる。
【0046】
<第3の実施形態>
本発明のタービンおよびタービン運用方法の第3の実施形態を図11および図12を用いて説明する。図11は本実施形態の運用方法を説明するフロー図である。
【0047】
本実施形態のタービン運用方法も、既に一般的な構造のタービン翼植込み部で供用開始された蒸気タービンが対象であるが、第2の実施形態のタービン運用方法と異なり、応力逃し溝を形成する定検期間は予め定められておらず、定検時の検査によりネック部に損傷が認められたタイミングで応力逃し溝を形成するものである。ここまでが図11のステップS11〜S13に相当する。
【0048】
図12に本実施形態における応力逃し溝41の形成イメージを示す。図12において、応力逃し溝41の形状は図3に示す応力逃し溝1と同じ形状・深さ・逃し角度である。応力逃し溝41の形成により、表面から深さdの深さまでのき裂42であれば、形成と同時に除去される。
【0049】
図12において、図11の続くステップS14〜S15で、ショットピーニング施工と施工部の研磨を実施し、S16でき裂検出した部位を再度検査する。S16において検査の結果き裂が検出されなければ有害き裂は除去完了したとして補修完了となる。もしS16においてき裂が検出されれば、一連の作業でも有害き裂は除去しきれていないため、補修だけでは対応不可能であり翼の交換となる。
【0050】
補修完了後は、補修前のタービン翼植込み部の3倍以上の耐用期間が期待できるため、有効性の高い補修手法とみることができる。
【0051】
このように、本発明のタービンおよびタービン運用方法の第3の実施形態によれば、補修の有効性を高め、タービンの長期信頼性を向上することが可能となる。
【0052】
<第4の実施形態>
本発明のタービンおよびタービン運用方法の第4の実施形態を図13および図14を用いて説明する。図13は蒸気タービンの低圧段タービン翼とロータディスクとの連結部を示す概略図である。また、図14は本実施形態の翼植込み部のネック部拡大図である。
【0053】
第1の実施形態である図3と異なり、図13に示すように、本実施形態のロータ側植込み部104の8つのネック部106に応力逃し溝2が形成されている。このネック部106についても局部的に高い応力が発生する受圧面107となるので、長期間の使用により、疲労き裂などの損傷が発生する恐れがあり、何らかの寿命改善策を講じることが望まれる。なお、図14では、図示の都合上、上から2つ目のネック部106のみに応力逃し溝2が形成されたケースを図示している。
【0054】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0055】
本実施形態の応力逃し溝2は、ネック部106のネック底110と受圧面107の間に位置している。
【0056】
また、左右の応力逃し溝2のくびれ幅W3bは、その応力逃し溝2が形成された部分に最も近い位置のネック部106のネック底110の幅W2bと同じかそれ以上となっている。
【0057】
また、応力逃し溝2は、受圧面107との連結点6において、応力逃し溝2と受圧面107とのなす角度である所定の逃し角θ’はθ’=29°となっている。
【0058】
本実施形態のタービンでは、応力逃し溝2を形成した後は、第1の実施形態と同様に、ネック部106及び応力逃し溝2をカバーするようにショットピーニング施工し、その後、ショットピーニングで荒れた表面を研磨し凹凸を滑らかにする加工が施されている。
【0059】
なお、上述のした構成以外の構成は前述した第1の実施形態のタービンと略同じ構成であり、詳細は省略する。
【0060】
本発明のタービンおよびタービン運用方法の第4の実施形態においても、前述したタービンおよびタービン運用方法の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。すなわち、ロータ側植込み部104についても、接触端のひずみ集中を抑えることで接触端からのき裂発生を抑制でき、ショットピーニングによる寿命改善効果を十分に引き出すことができる。
【0061】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0062】
例えば、第1の実施形態のように翼側植込み部103のネック部105に形成された応力逃し溝1と、第4の実施形態のようにロータ側植込み部104のネック部106に形成された応力逃し溝2とのいずれもが形成されたタービンが考えられる。このようなタービンであれば、第1の実施形態および第4の実施形態で得られるいずれの効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1…応力逃し溝、
2…応力逃し溝、
3…接触端、
4…連結点、
5…接触端、
6…連結点、
20…ノズル、
30…荒れた表層、
31…回転砥石工具、
41…応力逃し溝、
42…き裂、
101…低圧タービン翼、
102…ロータディスク、
103…翼側植込み部、
104…ロータ側植込み部、
105…ネック部、
106…ネック部、
107…受圧面、
109…ネック底、
110…ネック底、
111…き裂、
112…き裂、
,W…ネック底の幅、
,W…応力逃し溝のくびれ幅。
図1
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