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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223320(P2016-223320A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】エンジンのオイルポンプ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/16 20060101AFI20161205BHJP
   F01M 1/20 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F01M1/16 G
   F01M1/16 F
   F01M1/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-108460(P2015-108460)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】本田 絢大
(72)【発明者】
【氏名】小口 智弘
【テーマコード(参考)】
3G313
【Fターム(参考)】
3G313AB02
3G313BB02
3G313BB32
3G313BB34
3G313EA01
3G313EA12
(57)【要約】
【課題】電気式制御弁の消費電力を抑制し、低粘度オイルを使用した場合でもオイルポンプの吐出量を応答性よく制御できるエンジンのオイルポンプ制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンに備えられる可変容量型のオイルポンプ10の制御装置は、減量側に揺動することによりオイルポンプ10の吐出量が減量し、増量側に揺動することによりオイルポンプ10の吐出量が増量するポンプケーシング14と、油圧が作用することによりポンプケーシング14を減量側に揺動させる減量側制御圧室15Aと、油圧が作用することによりポンプケーシング14を増量側に揺動させる増量側制御圧室15Bと、減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bに作用する油圧を調整するリニアソレノイドバルブ20とを備え、リニアソレノイドバルブ20は電流の供給が停止されたときはポンプケーシング14を減量側の最大揺動位置と増量側の最大揺動位置との略中間の位置に維持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに備えられる可変容量型のオイルポンプの制御装置であって、
所定の第1方向に揺動することにより当該オイルポンプの吐出量が減量し、上記第1方向と反対方向の所定の第2方向に揺動することにより当該オイルポンプの吐出量が増量するポンプケーシングと、
油圧が作用することにより上記ポンプケーシングを上記第1方向に揺動させる減量側制御圧室と、
油圧が作用することにより上記ポンプケーシングを上記第2方向に揺動させる増量側制御圧室と、
上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に作用する油圧を調整する電気式制御弁とを備え、
上記電気式制御弁は、電流の供給が停止されたときは、上記ポンプケーシングを上記第1方向の最大揺動位置と上記第2方向の最大揺動位置との略中間の位置に維持することを特徴とするエンジンのオイルポンプ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンのオイルポンプ制御装置において、
上記電気式制御弁は、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室にそれぞれ所定のバランス油圧を作用させることにより、上記ポンプケーシングを上記略中間の位置に維持することを特徴とするエンジンのオイルポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジンのオイルポンプ制御装置において、
上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室にそれぞれ上記ポンプケーシングを減量側又は増量側に付勢するリターンスプリングが設けられ、
上記電気式制御弁は、上記両リターンスプリングの付勢力のバランスにより上記ポンプケーシングを上記略中間の位置に維持するように、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に作用する油圧を調整することを特徴とするエンジンのオイルポンプ制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエンジンのオイルポンプ制御装置において、
エンジンの運転状態に応じた目標油圧を設定する目標油圧設定手段と、
当該オイルポンプからの供給油路の油圧を検出する油圧検出手段と、
上記油圧検出手段で検出される油圧が上記目標油圧設定手段で設定される目標油圧となるように上記電気式制御弁を制御する制御手段とをさらに備えることを特徴とするエンジンのオイルポンプ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエンジンのオイルポンプ制御装置において、
上記制御手段は、上記制御の実行後に上記油圧検出手段で検出される油圧と上記目標油圧設定手段で設定される目標油圧との差が所定値以上であるときを当該オイルポンプの作動異常と判定し、上記作動異常の判定時には、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に油圧が交互に作用して上記ポンプケーシングが上記第1方向及び第2方向に交互に揺動するクリーニングモードが実行されるように上記電気式制御弁を制御することを特徴とするエンジンのオイルポンプ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに備えられるオイルポンプ、詳しくは、クランク軸で駆動される機械式のオイルポンプ、より詳しくは、可変容量型のオイルポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に搭載されるエンジンでは、例えばクランク軸やカム軸の軸受部や摺動部の潤滑用や冷却用又はVVT等の油圧作動式装置の作動用のエンジンオイル(以下単に「オイル」という)をエンジン各部に供給するため、クランク軸で駆動される機械式のオイルポンプが用いられる。オイルの要求油量ひいては要求油圧はエンジンの運転状態(揺動数、負荷、温度等)に応じて異なるため、定容量型のオイルポンプでは、一定流量のオイルをオイルポンプから吐出させつつ、吐出通路に設けたリリーフ弁をエンジンの運転状態に応じて制御して、要求油量のオイルだけをエンジン各部に供給する。しかし、要求油量を超えるオイルはオイルパンに戻されるので、その分のオイルポンプの仕事が無駄になり、燃費が悪化する。
【0003】
そこで、クランク軸で駆動されながらも吐出量ひいては油圧(吐出圧)を変更できる可変容量型のオイルポンプがすでに周知である。可変容量型のオイルポンプでは、要求油量のオイルだけを吐出するように制御できるので、オイルポンプの無駄な仕事を抑制できる。例えば、特許文献1には、可変容量型オイルポンプのポンプケーシングを減量側又は増量側に揺動させる減量側制御圧室及び増量側制御圧室への油圧の流入を電気式制御弁(電磁スプール弁)で低負荷運転時と中高負荷運転時とで切り換えることにより、オイルポンプの吐出量をエンジンの運転状態に応じて増減調整する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−142297号公報(特に、[0021]、[0024]、[0026])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に開示の技術では、エンジン始動後の暖機運転時や低負荷運転時には電気式制御弁に励磁電流が供給される(通電状態)。これにより、油圧が減量側制御圧室に流入し、ポンプケーシングが減量側に揺動して、オイルポンプの吐出量が減少する。一方、暖機完了後の中高負荷運転時には電気式制御弁への上記励磁電流の供給が停止される(非通電状態)。これにより、油圧が増量側制御圧室に流入し、ポンプケーシングが増量側に揺動して、オイルポンプの吐出量が増大する。ここで、増量側制御圧室には油圧が流入しなくてもポンプケーシングを増量側に付勢するリターンスプリングが配設されている。
【0006】
したがって、運転頻度の高い低負荷運転時には常に電気式制御弁に励磁電流が供給されるので消費電力が増加するという問題がある。加えて、ポンプケーシングを減量側に揺動させるためには、上記リターンスプリングの付勢力に打ち勝つ必要があり、比較的高い油圧を減量側制御圧室に流入させないとオイルポンプの吐出量が応答性よく減少しないという問題がある。特に後者の問題は、例えば燃費向上のために低粘度のオイルを使用する場合にオイルの油圧が下がり気味となるので問題が顕著となる。
【0007】
本発明は、可変容量型オイルポンプにおける上記不具合に対処するもので、電気式制御弁の消費電力を抑制し、かつ、たとえ低粘度オイルを使用した場合でもオイルポンプの吐出量を応答性よく制御できるエンジンのオイルポンプ制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、エンジンに備えられる可変容量型のオイルポンプの制御装置であって、所定の第1方向に揺動することにより当該オイルポンプの吐出量が減量し、上記第1方向と反対方向の所定の第2方向に揺動することにより当該オイルポンプの吐出量が増量するポンプケーシングと、油圧が作用することにより上記ポンプケーシングを上記第1方向に揺動させる減量側制御圧室と、油圧が作用することにより上記ポンプケーシングを上記第2方向に揺動させる増量側制御圧室と、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に作用する油圧を調整する電気式制御弁とを備え、上記電気式制御弁は、電流の供給が停止されたときは、上記ポンプケーシングを上記第1方向の最大揺動位置と上記第2方向の最大揺動位置との略中間の位置に維持することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電気式制御弁が非通電状態のときは、オイルポンプの吐出量が最小吐出量(ポンプケーシングが第1方向に最大に揺動したときの吐出量)と最大吐出量(ポンプケーシングが第2方向に最大に揺動したときの吐出量)との略中間吐出量に維持される。このような中間吐出量は運転頻度の高い低負荷運転時に要求される。つまり、運転頻度の高い領域で電気式制御弁が非通電状態とされる。そのため、電気式制御弁の消費電力が抑制される。
【0010】
また、オイルポンプの吐出量を上記中間吐出量(電気式制御弁が非通電状態のときの吐出量)から最小吐出量又は最大吐出量(電気式制御弁が通電状態のときの吐出量)まで減少又は増大するときは、例えばオイルポンプの吐出量を最大吐出量から最小吐出量まで減少する場合や最小吐出量から最大吐出量まで増大する場合等に比べて、減少幅又は増大幅が小さくて済むから、それほど高い油圧を必要としない。そのため、たとえ低粘度オイルを使用した場合でもオイルポンプの吐出量が応答性よく制御される。
【0011】
本発明においては、上記電気式制御弁は、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室にそれぞれ所定のバランス油圧を作用させることにより、上記ポンプケーシングを上記略中間の位置に維持することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、両制御圧室にそれぞれ作用するバランス油圧によって、ポンプケーシングが上記略中間の位置に安定して精度よく維持される。
【0013】
本発明においては、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室にそれぞれ上記ポンプケーシングを減量側又は増量側に付勢するリターンスプリングが設けられ、上記電気式制御弁は、上記両リターンスプリングの付勢力のバランスにより上記ポンプケーシングを上記略中間の位置に維持するように、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に作用する油圧を調整することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、両制御圧室にそれぞれ作用するリターンスプリングの付勢力によって、ポンプケーシングが上記略中間の位置に安定して精度よく維持される。なお、両制御圧室にリターンスプリングが設けられるから、一方の制御圧室に油圧を作用させるときにその油圧だけで他方の制御圧室のリターンスプリングの付勢力に打ち勝つ必要はなく、高い油圧が必要にならない。また、結果的に両制御圧室に油圧を作用させない場合もあり得る。そのような場合は、両制御圧室の受圧面積を小さくできるから、オイルポンプの小型化が図られる。
【0015】
本発明においては、エンジンの運転状態に応じた目標油圧を設定する目標油圧設定手段と、当該オイルポンプからの供給油路の油圧を検出する油圧検出手段と、上記油圧検出手段で検出される油圧が上記目標油圧設定手段で設定される目標油圧となるように上記電気式制御弁を制御する制御手段とをさらに備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、エンジンの運転状態に応じた目標油圧が応答性よく精度よく実現する。
【0017】
本発明においては、上記制御手段は、上記制御の実行後に上記油圧検出手段で検出される油圧と上記目標油圧設定手段で設定される目標油圧との差が所定値以上であるときを当該オイルポンプの作動異常と判定し、上記作動異常の判定時には、上記減量側制御圧室及び増量側制御圧室に油圧が交互に作用して上記ポンプケーシングが上記第1方向及び第2方向に交互に揺動するクリーニングモードが実行されるように上記電気式制御弁を制御することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、加工屑等の異物の噛み込みに起因するオイルポンプの作動異常が簡単・確実に解消する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電気式制御弁の消費電力を抑制し、かつ、たとえ低粘度オイルを使用した場合でもオイルポンプの吐出量を応答性よく制御できるエンジンのオイルポンプ制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る可変容量型のオイルポンプの制御装置の全体構成図である。
図2】電気式制御弁が非通電状態のときの上記オイルポンプの作動状態を示す全体図である。
図3】最大吐出状態のときの上記オイルポンプの作動状態を示す全体図である。
図4】最小吐出状態のときの上記オイルポンプの作動状態を示す全体図である。
図5】上記電気式制御弁の構成を示す全体図である。
図6】上記電気式制御弁の印加電流と生成油圧との関係を示す特性図である。
図7】低負荷時のメインギャラリの要求油圧とエンジン揺動数との関係を示す特性図である。
図8】高負荷時のメインギャラリの要求油圧とエンジン揺動数との関係を示す特性図である。
図9】電気式制御弁が非通電状態のときの従来の可変容量型のオイルポンプの作動状態を示す全体図である。
図10】本実施形態に係るオイルポンプと従来のオイルポンプとの相違点を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基き本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る可変容量型のオイルポンプ10は、不図示のエンジンのクランク軸2で駆動され、オイルパン1に貯留されるオイルをストレーナ51を介して吸入油路52から吸入した後、所定の油圧で吐出油路53からオイルフィルタ54及びオイルクーラ55を介してメインギャラリィ(本発明の「供給油路」に相当する)56に吐出する。オイルクーラ55の下流において吐出油路53から分岐した制御圧通路57がリニアソレノイドバルブ(本発明の「電気式制御弁」に相当する)20に接続される。リニアソレノイドバルブ20はコントローラ30によってデューティ比(={通電時間/(通電時間+非通電時間)}×100(%))が制御され、制御圧通路57から供給される制御油圧を減量側油路58及び増量側油路59に供給する。コントローラ30は、CPU、ROM、RAM等を含む周知のマイクロコンピュータをベースとするもので、本発明の「目標油圧設定手段」及び「制御手段」に相当する。
【0023】
図2図4に示すように、オイルポンプ10は、ポンプハウジング11、駆動軸12、ポンプ要素13、ポンプケーシング14、減量側リターンスプリング16、増量側リターンスプリング17、及びリング部材13eを備える。
【0024】
ポンプハウジング11は、一端側(図において手前側)が開口し、内部に円柱状の空間からなるポンプ収容室11bが形成される断面コ字形状のポンプボディ11aを有する。ポンプボディ11aの上記一端側の開口は不図示のカバー部材で閉塞される。
【0025】
駆動軸12は、ポンプボディ11aに揺動可能に支持され、ポンプ収容室11bの略中心部を貫通し、クランク軸2で揺動駆動される。
【0026】
ポンプ要素13は、ポンプ収容室11b内に揺動自在に収容され、中心部が上記駆動軸12に結合される円柱状のロータ13aを有する。ロータ13aの外周部に複数(図例では7つ)のスリット13cが放射状に切り欠かれて形成され、各スリット13cにそれぞれロータ13aの外周面に対して出没可能にベーン13bが収容される。
【0027】
ポンプケーシング14は、ポンプ要素13の外周側に配置される円筒状の部材である。ポンプケーシング14は、ロータ13aの揺動中心(駆動軸12)に対して偏心可能に配置される。すなわち、ポンプケーシング14は、ポンプボディ11aに設けられる揺動支点14xを中心に図において右側(反時計回り、本発明の「第1方向」に相当する)又は左側(時計回り、本発明の「第2方向」に相当する)に揺動可能に配置される。ポンプケーシング14は、ロータ13aの外周面及びロータ13aの外周面から外方に突出するベーン13bと協働して複数(図例では7つ)のポンプ室14yを画成する。
【0028】
減量側リターンスプリング16及び増量側リターンスプリング17は、ポンプケーシング14の外周面から外方に延設されるアーム部14aとポンプボディ11aとで画成される減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bにそれぞれ圧縮状態で配設される。減量側リターンスプリング16は、上記アーム部14aを介してポンプケーシング14を常に揺動支点14xを中心に図において右側(減量側)に付勢し、増量側リターンスプリング17は、左側(増量側)に付勢する。
【0029】
リング部材13eは、駆動軸12の外周側に配置され、ロータ13aを挟んで一端側及び他端側に一対設けられ(図には一端側のみ図示)、リング部材13eの外周面にベーン13bの内方端部が当接する。ここで、図中、符号13dは、ベーン13bの内方端部が突入するようにロータ13aに形成される背圧室である。ベーン13bは、ロータ13aの揺動に伴うリング部材13eの遠心力と上記背圧室13dに供給される油圧とにより外方に押し出され、ベーン13bの外方端部がポンプケーシング14の内周面に圧接される。
【0030】
ポンプボディ11aに上記吸入油路52が接続される吸入孔18及び上記吐出油路53が接続される吐出孔19が形成される。上記減量側制御圧室15Aに減量側油路58が接続され、上記増量側制御圧室15Bに増量側油路59が接続される。
【0031】
ポンプケーシング14の外周面にポンプボディ11aの内周面に圧接される第1〜第4シール部材14b〜14eが装着される。第1シール部材14bはアーム部14aの先端部に、第2シール部材14cは第1シール部材14bの減量側に、第3シール部材14dは第1シール部材14bの増量側に、第4シール部材14eは第1シール部材14bのポンプケーシング14の径方向の反対側に、それぞれ配設される。第1シール部材14b及び第2シール部材14cは増量側制御圧室15Bを油密にシールし、第1シール部材14b及び第3シール部材14dは減量側制御圧室15Aを油密にシールし、第4シール部材14e及び第2シール部材14cは吸入孔18を油密にシールし、第4シール部材14e及び第3シール部材14dは吐出孔19を油密にシールする。
【0032】
図2は、当該オイルポンプ10の吐出圧(吐出量)が最大吐出圧(最大吐出量)と最小吐出圧(最小吐出量)との略中間の吐出圧(中間吐出量)のときの作動状態を示す。このとき、アーム部14aは、ポンプボディ11aの減量側の壁部からも増量側の壁部からも略同程度に離間する。その結果、吸入孔18に近い側に位置するポンプ室14yの容量と、吐出孔19に近い側に位置するポンプ室14yの容量とが略同程度となり、当該オイルポンプ10の吐出圧が中間吐出圧となる。すなわち、このときのポンプケーシング14の位置を減量側の最大揺動位置と増量側の最大揺動位置との略中間の位置という。ここで、略中間の位置とは、正確に中間の位置だけでなく、中間の位置と認めても差し支えがない程度の中間の位置の近傍の位置をいう。
【0033】
図3は、当該オイルポンプ10の吐出圧が最大吐出圧のときの作動状態を示す。このとき、アーム部14aは、ポンプボディ11aの増量側の壁部に当接する。その結果、吸入孔18に近い側に位置するポンプ室14yの容量に対して、吐出孔19に近い側に位置するポンプ室14yの容量が最も大きくなり、当該オイルポンプ10の吐出圧が最大吐出圧となる。すなわち、このときのポンプケーシング14の位置を増量側の最大揺動位置という。
【0034】
図4は、当該オイルポンプ10の吐出圧が最小吐出圧のときの作動状態を示す。このとき、アーム部14aは、ポンプボディ11aの減量側の壁部に当接する。その結果、吸入孔18に近い側に位置するポンプ室14yの容量に対して、吐出孔19に近い側に位置するポンプ室14yの容量が最も小さくなり、当該オイルポンプ10の吐出圧が最小吐出圧となる。すなわち、このときのポンプケーシング14の位置を減量側の最大揺動位置という。
【0035】
なお、図中、符号19a,19bは、吐出孔19に近い側に位置するポンプ室14yと、吐出孔19とを連絡する吐出ポートである。
【0036】
図5は、上記リニアソレノイドバルブ20の構成を示す全体図、図6は、上記リニアソレノイドバルブ20の印加電流と生成油圧との関係を示す特性図である。
【0037】
図5に示すように、リニアソレノイドバルブ20は、図示しない2つのソレノイドと、バルブボディ21と、バルブボディ21に軸方向に移動可能に収容されるスプール22とを有する。バルブボディ21は、上記制御圧油路57が接続されるポート、減量側油路58が接続されるポート、増量側油路59が接続されるポート、減量側ドレン油路60が接続されるポート、及び増量側ドレン油路61が接続されるポートが形成される。
【0038】
図5は、非通電状態(リニアソレノイドバルブ20への印加電流がゼロの状態)から、スプール22が若干減量側(図5において左側)に移動した状態を示す。非通電状態では、スプール22が図示した位置よりも若干増量側(図5において右側)に移動する。その結果、制御圧油路57と減量側油路58との連通度が略ゼロ、制御圧油路57と増量側油路59との連通度が略ゼロ、減量側油路58と減量側ドレン油路60の連通度が略ゼロ、増量側油路59と増量側ドレン油路61の連通度が略ゼロとなる。スプール22の図中右端部に配設されるバルブスプリング23は、非通電状態でスプール22が上記のような位置に位置するように弾性復元力が設定される。これにより、図6に示すように、減量側制御圧室15Aの油圧(実線)も増量側制御圧室15Bの油圧(破線)も同程度に小さくなる。ポンプケーシング14は、減量側リターンスプリング16及び増量側リターンスプリング17の付勢力のバランスにより、図2に示す、減量側の最大揺動位置と増量側の最大揺動位置との略中間の位置に維持される。
【0039】
リニアソレノイドバルブ20の図示しない一方のソレノイドに所定の第1の向きに電流が流されると、スプール22がバルブ20に引き込まれて減量側(図5において左側)に移動する。その結果、制御圧油路57と減量側油路58との連通度が大きくなり、制御圧油路57と増量側油路59との連通度が小さくなり、減量側油路58と減量側ドレン油路60の連通度が小さくなり、増量側油路59と増量側ドレン油路61の連通度が大きくなる。これにより、図6に示すように、減量側制御圧室15Aの油圧(実線)が増大し、増量側制御圧室15Bの油圧(破線)が減少する。ポンプケーシング14は、上記第1の向きの印加電流のデューティ比が50%の状態では、減量側制御圧室15Aの油圧が最大限に増大して、図4に示す、減量側の最大揺動位置に維持される(例えば冷機状態のエンジン始動後の暖機運転時や低負荷運転時等)。
【0040】
リニアソレノイドバルブ20の図示しない他方のソレノイドに上記第1の向きと反対の所定の第2の向きに電流が流されると、スプール22がバルブ20から押し出されて増量側(図5において右側)に移動する。その結果、制御圧油路57と減量側油路58との連通度が小さくなり、制御圧油路57と増量側油路59との連通度が大きくなり、減量側油路58と減量側ドレン油路60の連通度が大きくなり、増量側油路59と増量側ドレン油路61の連通度が小さくなる。これにより、図6に示すように、減量側制御圧室15Aの油圧(実線)が減少し、増量側制御圧室15Bの油圧(破線)が増大する。ポンプケーシング14は、上記第2の向きの印加電流のデューティ比が50%の状態では、増量側制御圧室15Bの油圧が最大限に増大して、図3に示す、減量側の最大揺動位置に維持される(例えばエンジンの暖機完了後の中負荷運転時や高負荷運転時等)。
【0041】
図1に戻り、メインギャラリィ56には、クランク軸2、カム軸3、油圧ラッシュアジャスタ4、VVT5、及びオイルジェット6への各オイル供給部が接続される。コントローラ30は、メインギャラリィ56の油圧を検出する油圧センサ31、クランク軸2の揺動角度を検出するクランク角センサ32、エンジンが吸入する空気量を検出するエアフローセンサ33、メインギャラリィ56の油温を検出する油温センサ34、カム軸3の揺動位相を検出するカム角センサ35、及びエンジンの冷却水温度を検出する水温センサ36からの検出情報に基づき、エンジンの運転状態に応じた目標油圧を設定し、油圧センサ31で検出される油圧が上記設定した目標油圧となるようにリニアソレノイドバルブ20を制御する。
【0042】
図7は、低負荷運転時におけるエンジン揺動数と各オイル供給部の要求油圧との関係を示すマップ、図8は、高負荷運転時における上記マップである。
【0043】
図7に示すように、エンジンの低負荷運転時において要求油圧が比較的高いのは、クランク軸2及びVVT5のオイル供給部である。エンジン揺動数がV1以下では、VVT5の要求油圧が最も高く、エンジン揺動数がV1を超えると、クランク軸2の要求油圧が最も高くなる。
【0044】
一方、図8に示すように、エンジンの高負荷運転時において要求油圧が比較的高いのは、クランク軸2、VVT5、及びオイルジェット6のオイル供給部である。エンジン揺動数がV1′以下では、VVT5の要求油圧が最も高く、エンジン揺動数がV1′を超えると、オイルジェット6の要求油圧が最も高くなる。
【0045】
コントローラ30は、図7及び図8に示すようなマップをメモリに格納し、上記マップからエンジンの運転状態に応じた最も高い要求油圧(図中実線で示される要求油圧)を目標油圧として設定する。そして、コントローラ30は、油圧センサ31で検出される油圧が上記設定した目標油圧となるようにリニアソレノイドバルブ20をフィードバック制御する。
【0046】
また、コントローラ30は、上記リニアソレノイドバルブ20のフィードバック制御の実行後に油圧センサ31で検出される油圧と上記設定した目標油圧との差が所定値以上であるときを当該オイルポンプ10の作動異常と判定する。そして、コントローラ30は、作動異常の判定時には、減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bに油圧が交互に作用してポンプケーシング14が減量側及び増量側に交互に揺動するクリーニングモードが実行されるようにリニアソレノイドバルブ20を制御する。
【0047】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0048】
(1)本実施形態では、可変容量型オイルポンプ10の制御装置は、減量側に揺動することにより当該オイルポンプ10の吐出量が減量し、増量側に揺動することにより当該オイルポンプ10の吐出量が増量するポンプケーシング14と、油圧が作用することにより上記ポンプケーシング14を上記減量側に揺動させる減量側制御圧室15Aと、油圧が作用することにより上記ポンプケーシング14を上記増量側に揺動させる増量側制御圧室15Bと、上記減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bに作用する油圧を調整するリニアソレノイドバルブ20とを備え、上記リニアソレノイドバルブ20は、電流の供給が停止されたときは、上記ポンプケーシング14を上記減量側の最大揺動位置と上記増量側の最大揺動位置との略中間の位置に維持することから、リニアソレノイドバルブ20が非通電状態のときは、オイルポンプ10の吐出量が最小吐出量(ポンプケーシング14が減量側に最大に揺動したときの吐出量)と最大吐出量(ポンプケーシング14が増量側に最大に揺動したときの吐出量)との略中間吐出量に維持される。このような中間吐出量は運転頻度の高い低負荷運転時に要求される。つまり、運転頻度の高い領域でリニアソレノイドバルブ20が非通電状態とされる。そのため、リニアソレノイドバルブ20の消費電力が抑制される。
【0049】
また、オイルポンプ10の吐出量を上記中間吐出量(リニアソレノイドバルブ20が非通電状態のときの吐出量)から最小吐出量又は最大吐出量(リニアソレノイドバルブ20が通電状態のときの吐出量)まで減少又は増大するときは、例えばオイルポンプ10の吐出量を最大吐出量から最小吐出量まで減少する場合や最小吐出量から最大吐出量まで増大する場合等に比べて、減少幅又は増大幅が小さくて済むから、それほど高い油圧を必要としない。そのため、たとえ低粘度オイルを使用した場合でもオイルポンプ10の吐出量が応答性よく制御される。
【0050】
例えば図9に示すように、増量側制御圧室15Bにのみ増量側リターンスプリング17を配設し、減量側制御圧室15Aには減量側リターンスプリング16を配設しない従来の可変容量型オイルポンプ10において、リニアソレノイドバルブ20の非通電時はポンプケーシング14が図示のように増量側に揺動してオイルポンプ10の吐出量が増大し、リニアソレノイドバルブ20の通電時はポンプケーシング14が減量側に揺動してオイルポンプ10の吐出量が減少するように構成した場合は、図10に(従来)として示すように、運転頻度の高い低負荷運転時には常にリニアソレノイドバルブ20に電流が供給される(デューティ比:50〜100%)ので消費電力が増加するという問題がある。加えて、ポンプケーシング14を減量側に揺動させるためには、上記増量側リターンスプリング17の付勢力に打ち勝つ必要があり、比較的高い油圧を減量側制御圧室15Aに流入させないとオイルポンプ10の吐出量が応答性よく減少しないという問題がある。特に後者の問題は、例えば燃費向上のために低粘度のオイルを使用する場合にオイルの油圧が下がり気味となるので問題が顕著となる。
【0051】
これに対し、本実施形態では、図10に併せて示すように、運転頻度の高い低負荷運転時のデューティ比が0〜50%と小さいので、消費電力が減少するという利点がある。また、減量側制御圧室15Aにも減量側リターンスプリング16を配設するので、減量側制御圧室15Aに油圧を作用させるときにその油圧だけで増量側リターンスプリング17の付勢力に打ち勝つ必要はなく、高い油圧が必要にならない。したがって、燃費向上のために低粘度のオイルを支障なく使用することができる。
【0052】
(2)本実施形態では、上記減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bにそれぞれ上記ポンプケーシング14を減量側又は増量側に付勢する減量側リターンスプリング16及び増量側リターンスプリング17が設けられ、上記リニアソレノイドバルブ20は、上記両リターンスプリング16,17の付勢力のバランスにより上記ポンプケーシング14を上記中間の位置に維持するように、上記減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bに作用する油圧を調整することから、両制御圧室15A,15Bにそれぞれ作用するリターンスプリング16,17の付勢力によって、ポンプケーシング14が上記略中間の位置に安定して精度よく維持される。
【0053】
また、結果的に両制御圧室15A,15Bに油圧を作用させない場合もあり得る。すなわち、図6において、リニアソレノイドバルブ20への印加電流がゼロの非通電時は、減量側制御圧室15Aの油圧(実線)及び増量側制御圧室15Bの油圧(破線)をゼロにして、上記両リターンスプリング16,17の付勢力のバランスのみにより上記ポンプケーシング14を上記略中間の位置に維持する場合である。そのような場合は、両制御圧室15A,15Bの受圧面積を小さくできるから、オイルポンプ10の小型化が図られる。
【0054】
(3)本実施形態では、コントローラ30がエンジンの運転状態に応じた目標油圧を設定し、油圧センサ31が当該オイルポンプ10からのメインギャラリィ6の油圧を検出し、コントローラ30が上記油圧センサ31で検出される油圧が上記設定される目標油圧となるように上記リニアソレノイドバルブ20を制御することから、エンジンの運転状態に応じた目標油圧が応答性よく精度よく実現する。
【0055】
(4)本実施形態では、上記コントローラ30は、上記リニアソレノイドバルブ20のフィードバック制御の実行後に上記油圧センサ31で検出される油圧と上記設定される目標油圧との差が所定値以上であるときを当該オイルポンプ10の作動異常と判定し、上記作動異常の判定時には、上記減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bに油圧が交互に作用して上記ポンプケーシング14が減量側及び増量側に交互に揺動するクリーニングモードが実行されるように上記リニアソレノイドバルブ20を制御することから、例えば減量側リターンスプリング16や増量側リターンスプリング17等が加工屑等の異物を噛み込んだ場合に、その異物の噛み込みに起因するオイルポンプ10の作動異常が簡単・確実に解消する。
【0056】
以上、実施形態を挙げて本発明を詳しく説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限り、例えば構成要素の形状や個数等、種々変更可能なものである。
【0057】
例えば、減量側リターンスプリング16及び増量側リターンスプリング17の双方を廃止して、上記リニアソレノイドバルブ20は、上記減量側制御圧室15A及び増量側制御圧室15Bにそれぞれ所定のバランス油圧を作用させることにより、上記ポンプケーシング14を上記略中間の位置に維持するようにしてもよい。
【0058】
この構成によれば、両制御圧室15A,15Bにそれぞれ作用するバランス油圧によって、ポンプケーシング14が上記略中間の位置に安定して精度よく維持される。
【0059】
また、リニアソレノイドバルブ20は、スプール22の軸方向の一端側に図示しない一方のソレノイドを装着し、かつ、他端側に図示しない他方のソレノイドを装着して、一方のソレノイドの通電制御でスプール22を減量側(図5において左側)に移動し、他方のソレノイドの通電制御でスプール22を増量側(図5において右側)に移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 可変容量型オイルポンプ
14 ポンプケーシング
15A 減量側制御圧室
15B 増量側制御圧室
16 減量側リターンスプリング
17 増量側リターンスプリング
20 リニアソレノイドバルブ(電気式制御弁)
30 コントローラ(目標油圧設定手段、制御手段)
31 油圧センサ(油圧検出手段)
56 メインギャラリィ(供給油路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10