【解決手段】送風機3は、アウターロータ型の電動モータ10と、軸方向において電動モータ10のロータヨーク20を覆うハブ31と、ハブ31に固定された複数の羽根34とを有する羽根車30とを備える。ロータヨーク20には、軸方向において貫通するヨーク貫通孔22aが形成され、ハブ31には、ヨーク貫通孔22aと連通するように軸方向に貫通するハブ貫通孔32bが形成されている。また、羽根車30の回転により発生する空気流の一部が軸方向において電動モータ10の内部を通過し、ヨーク貫通孔22aおよびハブ貫通孔32bの順に通過する再循環気流RAを形成する。そして、ハブ31には、ハブ貫通孔32bを通過した再循環気流RAを羽根34に向かう気流に整流する整流機構としてのハブカバー50が取り付けられる。
磁界を生成するコイル(14)と、回転軸(15)を中心に回転し、軸方向における前記コイル(14)の一方および前記コイル(14)の径方向の外側を覆うカップ状のロータヨーク(20)と、前記径方向において前記コイル(14)の外側に隙間を置いて対向する状態で前記ロータヨーク(20)により保持される永久磁石(17)とを備えるアウターロータ型の電動モータ(10)と、
前記軸方向において前記ロータヨーク(20)を覆うハブ(31)と、前記ハブ(31)に固定された複数の羽根(34)とを有し、前記ロータヨーク(20)と一体的に回転する羽根車(30)と
を備える送風機(3)であって、
前記ロータヨーク(20)には、前記軸方向において貫通するヨーク貫通孔(22a)が形成され、
前記ハブ(31)には、前記ヨーク貫通孔(22a)と連通するように前記軸方向に貫通するハブ貫通孔(32b)が形成され、
前記羽根車(30)の回転により発生する空気流の一部が前記軸方向において前記コイル(14)を通過し、前記ヨーク貫通孔(22a)および前記ハブ貫通孔(32b)の順に通過する再循環気流(RA)を形成し、
前記ハブ(31)は、前記ハブ貫通孔(32b)を通過した前記再循環気流(RA)を前記羽根(34)に向かう気流に整流する整流機構(50,60)を有する
ことを特徴とする送風機。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係る送風機を搭載した天井埋込型空気調和機の概略構成について説明する。
【0019】
本天井埋込型空気調和機は、天井Rに形成された開口Hに挿入配置されている。この天井埋込型空気調和機は、天井裏に配置される本体ケーシング1と、本体ケーシング1の下方に配置される化粧パネル2とを備える。化粧パネル2は、開口Hを貫通して取り付けられ、上面側にて本体ケーシング1に連結されている。
【0020】
本体ケーシング1は、平面視略四角形の箱型に形成されている。本体ケーシング1と化粧パネル2とにより囲まれた内部空間には、化粧パネル2の吸込口2aを通じて室内の空気を本体ケーシング1内に吸い込んで外周方向に吹き出す送風機3と、送風機3の外周を囲むように配置された室内側熱交換器4とが配置されている。
【0021】
化粧パネル2は、平面視略四角形の板状体であって、中央部には室内の空気を吸い込む吸込口2aが形成され、この吸込口2aの周辺に位置する各四辺には室内側熱交換器4で空調された空気を吹き出す吹出口2bが形成されている。吸込口2aには、吸込グリル2cと、吸込口2aから吸い込まれた空気中の塵埃を除去するエアフィルタ5とが設けられている。
【0022】
送風機3は、ターボファンであって、本体ケーシング1の天板の中央部下方に設けられた電動モータ10と、電動モータ10に直結されて電動モータ10と一体的に回転する羽根車30とを有する。
【0023】
図1に示すとおり、電動モータ10は、本体ケーシング1から下方に延びる複数の支柱1aにおいてボルトにより固定されている。すなわち、電動モータ10と本体ケーシング1との間には、隙間が形成されている。
【0024】
羽根車30は、樹脂成型により形成されている。羽根車30は、電動モータ10に直結される平面視円形のハブ31と、ハブ31の下面の外周に設けられた複数の羽根34と、羽根34の下側に設けられ、中央に開口を有するシュラウド35とを有している。送風機3は、羽根車30の回転によってシュラウド35の開口を通じて羽根車30の内部に空気を吸い込み、その吸い込んだ空気を羽根車30の外周側に吹き出すようになっている。
【0025】
室内側熱交換器4は、クロスフィンコイル型であって、図示しない室外機に冷媒配管を介して連結されている。そして、室内側熱交換器4は、冷房運転時には蒸発器として、暖房運転時には凝縮器としてそれぞれ機能するようになっており、送風機3から吹き出された空気を温度調整する。また、室内側熱交換器4の下側には、室内側熱交換器4で発生するドレンを受けとめるドレンパン6が配設されている。ドレンパン6の中央部には開口部が設けられている。この開口部は、シュラウド35の中央の空気吸込口に対応した位置にあり、ベルマウス7が設けられている。
【0026】
このようにして、化粧パネル2の吸込口2aから吹出口2bに至る空気流通路が形成される。この空気流通路には、上流から下流に向かって吸込グリル2c、エアフィルタ5、ベルマウス7、送風機3、および、室内側熱交換器4が順に配置されている。
【0027】
次に、
図2〜
図4を参照して、電動モータ10および羽根車30のハブ31の詳細な構成について説明する。
図2に示すとおり、電動モータ10は、磁界を生成するステータ10Sと、ステータ10Sが生成した磁界に基づいて回転するロータ10Rと、ステータ10Sおよびロータ10Rを支持する略円筒状の支持部材11と、支持部材11が取り付けられるベース12とを備える。ベース12は、
図1の本体ケーシング1の支柱1aに固定される。電動モータ10は、ステータ10Sの径方向外側にロータ10Rが配置される、所謂アウターロータ型のモータである。
【0028】
ステータ10Sは、支持部材11の外周部分に支持されている。ステータ10Sは、複数の電磁鋼板が積層されてなるステータコア13と、ステータコア13に電線が巻き付けられることにより形成されるコイル14とを備える。
【0029】
コイル14は、電線に電力が供給されることにより磁界を生成する。本実施形態のコイル14は、ステータコア13の複数のティースのそれぞれに電線が巻き付けられることにより複数のコイルが形成される、所謂集中巻のコイルである。なお、コイル14は、ステータコア13の複数のティースに跨るように巻き付けられる、所謂分布巻のコイルであってもよい。
【0030】
ロータ10Rは、回転軸となるシャフト15と、シャフト15に固定された円筒状のボス16と、ボス16の外周面に固定されたカップ状のロータヨーク20と、ロータヨーク20により保持されたリング状の永久磁石17とを備える。
【0031】
シャフト15は、支持部材11に挿入され、支持部材11内に取り付けられた2個の軸受18により支持部材11に対して回転可能に支持されている。軸受18の一例は、玉軸受等の転がり軸受である。なお、軸受18は、シャフト15を支持部材11に対して回転可能に支持できれば、転がり軸受以外の軸受(例えば、すべり軸受)であってもよい。
【0032】
ボス16は、シャフト15において支持部材11よりも軸方向下側の部分に圧入または接着等により固定されている。ボス16の上面は、軸方向下側の軸受18の内輪の下面に接触している。
【0033】
ロータヨーク20は、磁性体の鋼板をプレス加工することにより形成されている。ロータヨーク20は、シャフト15の中心軸を中心に回転し、コイル14(ステータ10S)を軸方向下側および径方向外側から覆う。ロータヨーク20は、永久磁石17を保持する円筒状の磁石保持部21と、ステータ10Sを軸方向下側から覆う略円盤状のステータカバー部22と、磁石保持部21とステータカバー部22との間において段形状を形成する段差部23とを備える。永久磁石17は、段差部23と軸方向に接触することにより軸方向の位置が決められている。そして、永久磁石17は、径方向においてコイル14(ステータ10S)の外側に隙間を置いて対向する状態で配置されている。
【0034】
ステータカバー部22は、軸方向に直交する平面方向に平行する下面を有する。ステータカバー部22の中央には、軸方向下側に向けて突出する円筒状の固定部24が形成されている。固定部24には、ボス16が圧入または接着等により固定されている。
【0035】
図3に示すように、ステータカバー部22の外周部分には、3個のヨーク貫通孔22aが形成されている。ヨーク貫通孔22aは、ステータカバー部22の中心を曲率半径の中心位置として平面視円弧状に形成され、ステータカバー部22を軸方向に貫通している。
【0036】
ヨーク貫通孔22aは、周方向において120°間隔で形成されている。またステータカバー部22の内周部分において固定部24の周囲には、6個のねじ孔22bが形成されている。6個のねじ孔22bは周方向において60°間隔で形成されている。
【0037】
ステータカバー部22には、羽根車30のハブ31が取り付けられる。これにより、羽根車30は、ロータヨーク20と一体的に回転可能となる。
ハブ31は、
図2および
図3に示すとおり、ロータヨーク20を軸方向下側から覆うヨークカバー部32と、ヨークカバー部32に連続するものであって、径方向外側に向かうにつれて軸方向上側に傾斜する傾斜部33とを有する略円錐台状に形成されている。
【0038】
図3に示すとおり、ヨークカバー部32には、固定部24に嵌め合わせられる嵌合孔32aと、3個のハブ貫通孔32bと、3個の大径の貫通孔32cと、3個の小径の貫通孔32dとが形成されている。嵌合孔32a、ハブ貫通孔32b、貫通孔32c、および、貫通孔32dは、ヨークカバー部32を軸方向に貫通している。
【0039】
ハブ貫通孔32bは、ヨーク貫通孔22aと軸方向に対向する位置において、ヨークカバー部32の中心を曲率半径の中心位置とした平面視円弧状に形成されている。ハブ貫通孔32bの開口面積は、ヨーク貫通孔22aの開口面積よりも大きい。具体的には、ハブ貫通孔32bの幅寸法、すなわち径方向の孔寸法はヨーク貫通孔22aの径方向の孔寸法以上であり、ハブ貫通孔32bの長さ寸法、すなわち周方向の孔寸法はヨーク貫通孔22aの周方向の孔寸法以上である。
【0040】
貫通孔32c,32dは、ハブ貫通孔32bよりも径方向内側に形成されている。貫通孔32cはハブ貫通孔32bと同一位相角に形成され、貫通孔32dは周方向においてハブ貫通孔32bの間に形成されている。ハブ31は、3本のねじ36がヨークカバー部32の3個の貫通孔32cに挿入され、かつ3個のねじ孔22bにねじ込まれることにより、ロータヨーク20に固定される。
【0041】
ヨークカバー部32の中央には、接続部材40が取り付けられる。接続部材40は、ヨークカバー部32の中央に取り付けられるハブ取付部41と、ハブ取付部41から軸方向下側に延びる円柱状の嵌合部42とを備える。ハブ取付部41は、嵌合部42と連続する円筒部41aと円筒部の上端部から径方向外側に延びるフランジ41bを備える。フランジ41bには、3本のねじ37が挿通されるための3個の貫通孔41cが形成されている。嵌合部42の下端部には、小径の円柱状のねじ固定部42aが形成されている。接続部材40は、3本のねじ37がフランジ41bの3個の貫通孔41cおよびヨークカバー部32の3個の貫通孔32dに挿入され、かつ3個のねじ孔22bにねじ込まれることにより、ハブ31に固定される。
【0042】
接続部材40には、ハブ31を軸方向下側から覆う整流機構としてのハブカバー50が取り付けられる。
ハブカバー50は、軸方向においてヨークカバー部32と隙間を置いて対向するカバー部51と、カバー部51に連続するものであって、径方向外側に向かうにつれて軸方向上側に傾斜する傾斜カバー部52とを備える略円錐台状に形成されている。
【0043】
カバー部51の中央には、軸方向上側に向けて延びる円筒状の嵌合部51aが形成されている。嵌合部51aが接続部材40のねじ固定部42aに嵌め合わせられた状態でねじ53がねじ固定部42aにねじ込まれることにより、ハブカバー50が接続部材40に固定される。カバー部51の下面は、軸方向と直交した平面方向に延び、凹凸のない平面により形成されている。また、カバー部51の外周側から傾斜カバー部52の内周側にかけて曲面状に滑らかに連続している。これにより、ハブカバー50は、羽根車30の回転により羽根車30内に吸い込まれる空気流である吸込み主流MA(
図4参照)をハブ31の傾斜部33に案内している。
【0044】
図2に示すとおり、ハブカバー50のカバー部51は、ハブ31のハブ貫通孔32bと軸方向に対向している。カバー部51は、ハブ31のヨークカバー部32よりも小さい。このため、ハブカバー50の傾斜カバー部52は、ヨークカバー部32の平面部分の外周側を覆っている。またハブカバー50の傾斜カバー部52は、ハブ31の傾斜部33の内周側を覆い、傾斜部33よりも急な傾斜を成している。このため、
図2に示すとおり、傾斜カバー部52の外周端部と傾斜部33との間の隙間G2は、カバー部51とヨークカバー部32との間の隙間G1よりも小さくなる。またハブカバー50とハブ31との間の隙間は、カバー部51に対応する部分では一定であり、傾斜カバー部52に対応する部分では径方向外側に向かうにつれて徐々に小さくなる。
【0045】
このような構成によれば、
図4に示すように、羽根車30から吹き出された空気は、一部がハブ31と本体ケーシング1の天板との間を通り、ベース12の複数の貫通孔12aを介して電動モータ10の内部に入り込んで電動モータ10を冷却し、再び吸込み主流MAと合流して羽根車30から吹き出されるという再循環気流RAが形成される。詳細には、電動モータ10の内部に流入した空気は、周方向に隣り合うコイル14間を軸方向に通ることにより、ステータ10Sを冷却する。そしてステータ10Sを冷却することにより温度上昇した空気は、ロータヨーク20のヨーク貫通孔22a(
図2参照)およびハブ31のハブ貫通孔32bを通じてハブ31とハブカバー50との間の隙間に軸方向に平行となるように流出する。そしてその隙間に流出した空気は、ハブカバー50のカバー部51により羽根34に向かう空気流となるように整流された後、傾斜カバー部52により吸込み主流MAと概ね平行となるようにさらに整流される。そして、傾斜カバー部52とハブ31の傾斜部33との間から流出した空気は、吸込み主流MAに誘引されて吸込み主流MAと合流する。
【0046】
次に、
図4および
図5を参照して、本実施形態の送風機3の作用について説明する。
図5は、比較例に係る送風機100であり、送風機3から接続部材40およびハブカバー50を省略した構成である。なお、送風機100において、送風機3と共通の構成については同じ符号を用い、その説明を省略する。
【0047】
図5に示すように、送風機100では、ロータヨーク20のヨーク貫通孔22aおよびハブ31のハブ貫通孔32bから流出した再循環気流RAの空気が軸方向に沿って流出するため、吸込み主流MAと干渉することにより、渦(乱流)が発生する。この渦が吸込み主流MAにより径方向外側に流れて羽根34と干渉する。これにより、送風機100では、渦に起因する騒音が発生する。
【0048】
これに対して、
図4に示すとおり、送風機3では、上述のように、再循環気流RAがハブカバー50により整流されて吸込み主流MAと概ね平行となる状態で吸込み主流MAと合流するため、渦(乱流)の発生が抑制される。したがって、送風機3は、送風機100よりも騒音が小さくなる。
【0049】
本実施形態の送風機3は、以上のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
(1)送風機3は、アウターロータ型の電動モータ10を備える。このため、送風機3の再循環気流RAがベース12の貫通孔12aを介して電動モータ10の内部に流入するようになる。このため、電動モータ10内のステータ10Sを直接的に冷却することができる。
【0050】
また、送風機3は、ロータヨーク20のヨーク貫通孔22aおよびハブ31のハブ貫通孔32bを介して軸方向に沿って流出する再循環気流RAを吸込み主流MAと同様に羽根34に向かう空気流に整流する整流機構としてのハブカバー50を備える。このため、ステータ10Sを冷却した再循環気流RAの空気は、吸込み主流MAと合流するときに誘引作用を受けて吸込み主流MAとスムーズに合流する。したがって、送風機3の騒音の増大を抑制することができる。
【0051】
(2)ハブカバー50が羽根車30と個別に形成されるため、羽根車30のハブ31の部分の形状が簡素化される。このため、羽根車30を製造するための金型構成を簡素化することができる。
【0052】
(3)ハブカバー50の傾斜カバー部52とハブ31の傾斜部33とにより再循環気流RAは、ハブ31の傾斜部33に沿った空気流となる。このため、再循環気流RAが吸込み主流MAと衝突しにくくなり、吸込み主流MAとよりスムーズに合流する。
【0053】
(4)ハブカバー50とハブ31との間の隙間は、径方向外側に向かうにつれて、すなわち再循環気流RAの下流に向かうにつれて徐々に小さくなる部分を含む。このため、再循環気流RAが整流されるため、ハブカバー50とハブ31との間の隙間が急に小さくなる構成と比較して、乱流の発生が抑制される。したがって、送風機3の騒音の発生が一層抑制される。
【0054】
(第2の実施形態)
図6〜
図9を参照して、第2の実施形態の送風機3の構成について説明する。なお、第2の実施形態の送風機3において第1の実施形態の送風機3の構成と共通する構成要素には、共通の符号を用い、その説明の一部または全部を省略する。
【0055】
本実施形態の送風機3(
図8参照)は、整流機構を変更した点で第1の実施形態の送風機3とは異なる。
具体的には、第1の実施形態においては、整流機構を構成する部材としてハブカバー50(
図4参照)を設けているが、第2の実施形態においては、ハブカバー50に代わり、ハブ貫通孔32bごとに整流機構として貫通孔カバー60をハブ31と一体的に成型したものである。したがって、第2の実施形態においては、ハブカバー50を取り付けるための接続部材40(
図4参照)も省略される。
【0056】
図6に示すように、羽根車30は、ヨークカバー部32の3個のハブ貫通孔32bを軸方向から覆う整流機構の一例である貫通孔カバー60がハブ31と一体的に成型された点で第1の実施形態の羽根車30とは異なる。また本実施形態の送風機3においては、羽根車30が回転方向RDの一方向のみで回転するように電動モータ10(
図2参照)が制御される。
【0057】
貫通孔カバー60は、羽根車30の回転方向RDの後方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜する整流傾斜部の一例としての湾曲凸状の後方壁部61と、羽根車30の回転方向RDの前方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜する整流傾斜部の一例としての湾曲凸状の前方壁部62とを備える。後方壁部61および前方壁部62は、ハブ貫通孔32bと周方向に隣り合う位置に形成され、ハブ貫通孔32bの一部を軸方向下側から覆っている。また、貫通孔カバー60は、後方壁部61の外周部分と前方壁部62の外周部分とを周方向に連結する平坦部63を備える。平坦部63は、軸方向と直交する平面方向に平行している。平坦部63の内縁には、径方向内側に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜する湾曲凸状の内周傾斜部64が形成されている(
図8参照)。内周傾斜部64は、ハブ貫通孔32bよりも径方向内側まで延びている。また
図6に示すとおり、貫通孔カバー60は、径方向外側に向けて開口している。
【0058】
図7に示すように、貫通孔カバー60は、ハブ貫通孔32bと同一位相角に形成され、ハブ貫通孔32bの全体を軸方向から覆う。貫通孔カバー60は、ヨークカバー部32の中心を曲率半径の中心位置として平面視円弧状に形成されている。
【0059】
図8に示すように、再循環気流RAは、第1の実施形態と同様に、電動モータ10の内部、ヨーク貫通孔22a(
図2参照)、および、ハブ貫通孔32bの順に軸方向に通過する。そしてハブ貫通孔32bから軸方向に沿って流出した再循環気流RAの空気は、貫通孔カバー60により軸方向と直交する平面方向に整流されて羽根34に向けて流れ、吸込み主流MAと合流する。
【0060】
また
図9(a)に示すように、羽根車30が回転するとき、ヨークカバー部32の回転にともないシャフト15周りを3個の貫通孔カバー60が公転する。このとき、貫通孔カバー60には、前方壁部62、平坦部63、および、後方壁部61の順に沿った空気流FAが形成される。
【0061】
本実施形態の送風機3は、以上のように構成されているので、第1の実施形態の(1)の効果に加え、次のような効果を奏することができる。
(5)整流機構としての貫通孔カバー60が羽根車30と樹脂成型により一体的に形成されるため、羽根車30と整流機構(貫通孔カバー60)とを個別に形成する場合と比較して、送風機3の部品点数を少なくすることができる。
【0062】
(6)貫通孔カバー60が後方壁部61および前方壁部62を備えるため、各壁部61,62を通過する空気流FAが各壁部61,62に沿って流通する。このため、貫通孔カバー60において回転方向RDの前方および後方において渦等の乱流が発生することが抑制される。したがって、送風機3の騒音の増大を抑制することができる。
【0063】
(7)羽根34がハブ31のヨークカバー部32よりも軸方向両側に延びており、樹脂成型する際に金型において軸方向に交差する平面方向に移動可能なスライドコアを用いて羽根を成型するため、ハブ31のヨークカバー部32はスライドコアを用いることが難しい。このため、ヨークカバー部32は、軸方向に移動可能な金型のみで成型する必要がある。
【0064】
このような金型の制約において、
図9(b)に示す比較例に係る送風機として、周壁111が軸方向に沿って延び、かつ周壁111の先端面同士を連結する底壁112が周壁111に垂直に連結される側面視四角形状のカバー部110が金型で成型された場合、羽根車の回転にともない、空気流FAには乱流が生じる。詳細には、空気流FAが回転方向RDの前方の周壁111に衝突することにより乱流が生じ、底壁112から回転方向RDの後方の周壁111に向かう空気流FAがカバー部110から剥離することにより乱流が生じる。これにより、送風機の騒音が大きくなる。
【0065】
そこで、乱流を発生しやすい周壁111間の部分を樹脂で埋めることにより、周壁111を省略した円環状のカバー部110を形成することが考えられる。しかし、ハブにおいて周壁111間の部分を樹脂で埋める場合、羽根車30と比較して、成型するために用いる樹脂の量が多くなり、コストアップしてしまう。
【0066】
このような点に鑑み、
図9(a)に示す貫通孔カバー60は、上述のように、各壁部61,62により乱流の発生を抑制する。これにより、成型するために用いる樹脂の量を増やすことなく、乱流の発生を抑制することができるため、羽根車30のコストアップを抑制することができる。
【0067】
(変形例)
上記の各実施形態に関する説明は、本発明に従う送風機が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う送風機は、例えば以下に示される上記の各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0068】
・上記第1の実施形態において、送風機3は、ハブカバー50に代えて、
図10に示すようなハブカバー70を備えてもよい。ハブカバー70は、円盤状に形成され、ハブ31のハブ貫通孔32bに対応する箇所において径方向外側に向けて開口する凹部71が形成される。これにより、ハブカバー70がハブ貫通孔32bに対して軸方向に隙間を置いて対向する。また、凹部71は、径方向外側に向かうにつれて周方向の幅が大きくなるように形成される。凹部71の内縁は、ハブ貫通孔32bよりも径方向内側に位置している。ハブ貫通孔32bと対応する位置における凹部71の周方向の幅は、ハブ貫通孔32bの周方向の幅よりも大きい。またハブカバー70には、
図10に示すとおり、凹部71の一部を構成し、かつ、周方向に隣り合うハブ貫通孔32bを仕切る仕切壁72が形成される。
【0069】
このような構成によれば、電動モータ10(
図2参照)の内部からヨーク貫通孔22a(
図2参照)およびハブ貫通孔32bを経て凹部71に流出した再循環気流RA(
図10では図示略、
図4参照)が凹部71により径方向外側に向かう空気流に整流される。これにより、第1の実施形態の(1)および(2)の効果と同様の効果が得られる。
【0070】
なお、
図10では、一例として6個のハブ貫通孔32bを有する構成を示したが、ハブ貫通孔32bの個数はこれに限られず、5個以下または7個以上であってもよい。そしてハブ貫通孔32bの個数に応じて凹部71の個数が設定される。
【0071】
・上記変形例において、ハブカバー70から仕切壁72を省略してもよい。この場合、凹部71は、ハブカバー70の外周部分において径方向外側が開口する円環状に形成される。
【0072】
・上記第1の実施形態において、例えば
図10のハブカバー70のようにハブカバー50から傾斜カバー部52を省略してもよい。
・上記第1の実施形態において、ハブカバー50の傾斜カバー部52はハブ31の傾斜部33と平行してもよい。
【0073】
・上記第1の実施形態において、ハブカバー50の傾斜カバー部52をハブ31の傾斜部33の外周部分までを覆うように延ばしてもよい。
・上記第1の実施形態において、ねじ36によるロータヨーク20と羽根車30との固定に代えて、インサート成型により、ロータヨーク20と羽根車30とを一体的に形成してもよい。
【0074】
・上記第2の実施形態において、
図11に示すように、羽根車30の貫通孔カバー60は、貫通孔カバー60の回転方向RDの前方側に形成された周壁65と、回転方向RDの前方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜するように延びる整流傾斜部66とを備えてもよい。整流傾斜部66は、ハブ貫通孔32bの全体を軸方向下側から覆っている。この構成によれば、貫通孔カバー60を周方向に通過する空気流が整流傾斜部66に沿って流通するため、貫通孔カバー60の回転方向RDの前方において渦等の乱流の発生が抑制される。なお、整流傾斜部66は、回転方向RDの後方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜するように延びる構成であってもよい。
【0075】
・上記第2の実施形態において、
図12に示すように、羽根車30の貫通孔カバー60は、周方向において回転方向RDの前方側に開口してもよい。貫通孔カバー60は、回転方向RDの前方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜するように延びる整流傾斜部67を備える。整流傾斜部67は、ハブ貫通孔32bの全体を軸方向下側から覆っている。この構成によれば、貫通孔カバー60を周方向に通過する空気流が整流傾斜部67に沿って流通するため、貫通孔カバー60の回転方向RDの前方において渦等の乱流の発生が抑制される。
【0076】
・上記第2の実施形態において、後方壁部61を回転方向RDの後方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜する平坦状の傾斜部として形成してもよい。また前方壁部62を回転方向RDの前方に向かうにつれてヨークカバー部32に向けて傾斜する平坦状の傾斜部として形成してもよい。
【0077】
・上記第2の実施形態において、後方壁部61および前方壁部62の少なくとも一方を省略してもよい。
・上記第2の実施形態および上記第2の実施形態の変形例において、貫通孔カバー60は、ハブ31と個別に形成された後、貫通孔カバー60がハブ31に組み付けられる構成であってもよい。
【0078】
・上記各実施形態において、シャフト15に固定されたボス16を省略して、シャフト15とロータヨーク20とを直接的に固定してもよい。
・上記各実施形態において、ロータヨーク20のヨーク貫通孔22aの個数およびハブ31のハブ貫通孔32bの個数は任意に設定可能である。例えばヨーク貫通孔22aの個数およびハブ貫通孔32bの個数は1個、2個、または4個以上であってもよい。また、ヨーク貫通孔22aの個数とハブ貫通孔32bの個数とが互いに異なってもよい。要するに、ヨーク貫通孔22aおよびハブ貫通孔32bが互いに連通する箇所が少なくとも1つあればよい。なお、第2の実施形態および第2の実施形態の変形例においては、ヨーク貫通孔22aと連通するハブ貫通孔32bの個数に応じて貫通孔カバー60の個数が設定される。
【0079】
・上記各実施形態において、ロータヨーク20のステータカバー部22とハブ31のヨークカバー部32との軸方向の間に隙間が形成されてもよい。
・上記各実施形態において、別の環状の板部材がヨークカバー部32とステータカバー部22とにより軸方向に挟み込まれる構成であってもよい。この板部材がゴム等の弾性部材により構成された場合、羽根車30と電動モータ10との間の振動の伝播を抑制することができる。板部材には、ねじ36等が貫通するための孔が形成される。
【0080】
・上記各実施形態において、本送風機を適用する空気調和機を天井埋込型空気調和機としたが、他の形式の空気調和機としてもよい。他の形式の空気調和機としては、天吊型空気調和機、壁掛け型空気調和機、トランク型室外機、箱形上吹出型の室外機等の種々の空気調和機を挙げることができる。