特開2016-223384(P2016-223384A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223384(P2016-223384A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/00 20160101AFI20161205BHJP
   F02M 26/65 20160101ALI20161205BHJP
   F02M 26/14 20160101ALI20161205BHJP
   F02D 23/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F02M25/07 550L
   F02M25/07 580F
   F02M25/07 580A
   F02M25/07 520C
   F02D23/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-112079(P2015-112079)
(22)【出願日】2015年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】谷口 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 和郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 哲朗
【テーマコード(参考)】
3G062
3G092
【Fターム(参考)】
3G062AA01
3G062AA05
3G062EA10
3G062EC15
3G062ED08
3G062ED11
3G062FA19
3G062GA02
3G062GA06
3G062GA21
3G092AA02
3G092AA17
3G092AA18
3G092AB03
3G092DB03
3G092DC01
3G092DC10
3G092DG09
3G092EA08
3G092EA11
3G092EA28
3G092EA29
3G092EC07
3G092FA49
3G092FB06
3G092HA06Z
3G092HA16Z
3G092HE01Z
(57)【要約】
【課題】排気通路や排気還流通路内における通路の閉塞や各種可動部の固着の判定をより的確に行う。
【解決手段】燃焼室2に接続される吸気通路4及び排気通路5と、過給機9と、排気還流通路11を通じて排気の一部を還流ガスとして吸気に導入する高圧の排気ガス再循環装置Cと、排気還流通路11の途中に設けられる還流ガスクーラ16と、還流ガスクーラ16の上流側と吸気通路4とを結ぶバイパス通路15と、還流ガスクーラ16を経由する冷却装置通路14とバイパス通路15の流量を調整する流量調整手段Aと、燃焼室2に導入される吸気圧力を検知する吸気圧力検知手段20と、検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きく且つ圧力差が正の値である場合に、排気通路5又は排気還流通路11のいずれかの部分に付着物による部材の固着又は通路の閉塞がある異常状態と判定する異常判定手段32とを備えるエンジンの制御装置とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気筒の燃焼室に接続される吸気通路及び排気通路と、
前記排気通路に設けたタービンの回転により吸気の圧力を高める過給機と、
前記排気通路の前記タービンの上流側と前記吸気通路とを結ぶ排気還流通路を通じて排気の一部を還流ガスとして吸気に導入する排気ガス再循環装置と、
前記排気還流通路の途中に設けられ還流ガスを冷却する還流ガスクーラと、
前記還流ガスクーラの上流側と下流側又は前記還流ガスクーラの上流側と前記吸気通路とを結ぶバイパス通路と、
前記還流ガスクーラを経由する冷却装置通路を通過する還流ガスの流量と前記バイパス通路を通過する還流ガスの流量を調整する流量調整手段と、
前記燃焼室に導入される吸気圧力を検知する吸気圧力検知手段と、
前記冷却装置通路を還流ガスが通過している状態で、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きく且つ前記圧力差が正の値である場合に、前記排気通路又は前記排気還流通路のいずれかの部分に付着物による部材の固着又は通路の閉塞がある異常状態と判定する異常判定手段と、
を備えるエンジンの制御装置。
【請求項2】
前記異常判定手段が異常状態と判定した場合に、前記流量調整手段に対して前記冷却装置通路を通過する還流ガスの流量を減少させ前記バイパス通路を通過する還流ガスの流量を増加させるバイパス移行指令を行う流量調整制御手段
を備える請求項1に記載のエンジンの制御装置。
【請求項3】
前記バイパス移行指令を行った後、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値以下である場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記還流ガスクーラ内の流路の閉塞によるものであると判定する
請求項2に記載のエンジンの制御装置。
【請求項4】
前記流量調整手段は、前記バイパス通路に設けられるバイパス調整弁で構成され、
前記バイパス移行指令を行った後、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記冷却装置通路と前記バイパス通路との分岐部よりも上流側に設けられる還流ガス調整弁又は前記吸気通路に設けられる吸気スロットル弁、あるいは、前記過給機が前記タービンの容量を調整する可動ベーンを有する容量調整手段を備える場合は前記可動ベーンを固着状態と判定する
請求項3に記載のエンジンの制御装置。
【請求項5】
前記バイパス移行指令を行った後の前記圧力差が正の値である場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記還流ガス調整弁を閉側固着状態又は前記吸気スロットル弁を開側固着状態、あるいは、前記可動ベーンを閉側固着状態と判定し、前記バイパス移行指令を行った後の前記圧力差が負の値である場合には、前記還流ガス調整弁を開側固着状態又は前記吸気スロットル弁を閉側固着状態、あるいは、前記可動ベーンを開側固着状態と判定する
請求項4に記載のエンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス再循環装置を備えたエンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載されるエンジンには、排気ガス再循環装置が備えられる場合が多い。排気ガス再循環装置は、エンジンの燃焼室から排気通路を通じて大気に排出される排気ガスの一部を、排気側と吸気側とを結ぶ排気還流通路を通じて吸気通路に還流させることにより、燃焼室内における燃焼温度を低下させ、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)等の排出を抑制している。
【0003】
また、排気ガス再循環装置では、吸気側へ還流させる排気ガス(以下、還流ガスと称する。)を、還流ガスクーラと呼ばれる冷却装置を経由させることにより、還流ガスの温度を低下させ、燃焼温度の上昇を抑制する場合もある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−336549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排気還流通路に還流ガスクーラを設けると、その還流ガスクーラ内部に排気ガスに含まれる炭化水素やスモーク等が付着し、それらの付着物が徐々に還流ガスクーラ内部に堆積していくことがある。還流ガスクーラ内部に付着物が多くなると、本来の冷却性能を発揮できないだけでなく、吸気通路に供給される還流ガスの量が、本来設定された要求量よりも少なくなってしまう。還流ガスの供給量が要求量よりも少ないと、適正な排気ガスの排出が維持できない場合がある。
【0006】
この点、上記特許文献1の技術では、正常時吸気圧又は目標吸気圧に対して実吸気圧が小さいことを検出することにより排気還流通路の閉塞を判定している。しかし、過給機を備えたエンジンの場合は、排気還流通路の閉塞と、それに伴う吸気圧の挙動が異なるので、上記特許文献1の技術は利用できないという問題がある。さらに、排気通路内や排気還流通路内への付着物が増えると、弁装置等の各種可動部の固着につながる場合があるので、これらの固着の有無を的確に把握したいという要請もある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、排気還流通路の閉塞の判定や、排気通路や排気還流通路内における弁装置等の各種可動部の固着の判定を、より的確に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、気筒の燃焼室に接続される吸気通路及び排気通路と、前記排気通路に設けたタービンの回転により吸気の圧力を高める過給機と、前記排気通路の前記タービンの上流側と前記吸気通路とを結ぶ排気還流通路を通じて排気の一部を還流ガスとして吸気に導入する排気ガス再循環装置と、前記排気還流通路の途中に設けられ還流ガスを冷却する還流ガスクーラと、前記還流ガスクーラの上流側と下流側又は前記還流ガスクーラの上流側と前記吸気通路とを結ぶバイパス通路と、前記還流ガスクーラを経由する冷却装置通路を通過する還流ガスの流量と前記バイパス通路を通過する還流ガスの流量を調整する流量調整手段と、前記燃焼室に導入される吸気圧力を検知する吸気圧力検知手段と、前記冷却装置通路を還流ガスが通過している状態で、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きく且つ前記圧力差が正の値である場合に、前記排気通路又は前記排気還流通路のいずれかの部分に付着物による部材の固着又は通路の閉塞がある異常状態と判定する異常判定手段と、を備えるエンジンの制御装置を採用した。
【0009】
ここで、前記異常判定手段が異常状態と判定した場合に、前記流量調整手段に対して前記冷却装置通路を通過する還流ガスの流量を減少させ前記バイパス通路を通過する還流ガスの流量を増加させるバイパス移行指令を行う流量調整制御手段を備える構成を採用することができる。
【0010】
また、前記バイパス移行指令を行った後、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値以下である場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記還流ガスクーラ内の流路の閉塞によるものであると判定する構成を採用することができる。
【0011】
前記流量調整手段は、前記バイパス通路に設けられるバイパス調整弁で構成され、前記バイパス移行指令を行った後、前記吸気圧力検知手段により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた前記吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記冷却装置通路と前記バイパス通路との分岐部よりも上流側に設けられる還流ガス調整弁又は前記吸気通路に設けられる吸気スロットル弁、あるいは、前記過給機が前記タービンの容量を調整する可動ベーンを有する容量調整手段を備える場合は前記可動ベーンを固着状態と判定する構成を採用することができる。
【0012】
このとき、前記バイパス移行指令を行った後の前記圧力差が正の値である場合に、前記異常判定手段は、異常状態が、前記還流ガス調整弁を閉側固着状態又は前記吸気スロットル弁を開側固着状態、あるいは、前記可動ベーンを閉側固着状態と判定し、前記バイパス移行指令を行った後の前記圧力差が負の値である場合には、前記還流ガス調整弁を開側固着状態又は前記吸気スロットル弁を閉側固着状態、あるいは、前記可動ベーンを開側固着状態と判定する構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、排気還流通路を通じて排気側から吸気側へ導入される還流ガスを、還流ガスクーラを経由する冷却装置通路と、還流ガスクーラを経由しないバイパス通路とで選択的に供給できるようにして、両通路の流量を調整できるようにし、燃焼室に導入される吸気圧力に対する運転状況に応じた吸気通路内の基準圧力の圧力差の絶対値と、その圧力差の値の正負の別により、排気通路又は排気還流通路のいずれかの部分に付着物による部材の固着又は通路の閉塞があるか否かを判定できるようにしたので、これらの閉塞や固着の判定をより的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施形態を示すエンジンの模式図である。
図2】この発明のエンジンの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、この発明のエンジン1の模式図である。
【0016】
この実施形態のエンジン1は、自動車用のディーゼルエンジンである。エンジン1のシリンダ内にはピストンが収容され、シリンダの内壁面、及び、ピストンの上面等により燃焼室2が形成されている。
【0017】
エンジン1は、各シリンダの燃焼室2内に吸気を送り込む吸気通路4、燃焼室2から引き出された排気通路5、燃焼室2内に燃料を噴射する燃料噴射装置6等を備えている。
【0018】
図面では、この発明に直接関係する部材、手段を中心に示し、他の部材等については図示省略している。また、エンジンの気筒数は任意であり、単気筒、二気筒、三気筒、四気筒、あるいは、それ以上の多気筒であってもよい。
【0019】
各シリンダの吸気通路4の燃焼室2への開口部である吸気弁孔は、吸気バルブによって開閉される。また、燃焼室2から引き出された排気通路5の燃焼室2への開口部である排気弁孔は、排気バルブによって開閉される。
【0020】
吸気通路4には、燃焼室2へ通じる吸気ポートから上流側に向かって、吸気通路4を流れる吸気を冷却する吸気冷却装置(インタークーラ)21、過給機9を構成するターボチャージャのコンプレッサ、吸気通路4の流路面積を調節する吸気スロットル弁3、エアクリーナ等が設けられる。吸気スロットル弁3は、バタフライ弁形式の弁体の動作により、吸気通路4の流路の断面積を増減させて、吸気通路4への空気(新気)の導入量を調整するする。
【0021】
排気通路5には、燃焼室から引き出された排気ポートから下流側に向かって、過給機9を構成するターボチャージャのタービン、排気中の有害物を除去する触媒等を備えた排気浄化装置8、マフラ等が設けられる。この実施形態は、エンジン1がディーゼルエンジンであるので、排気浄化装置8として酸化触媒やディーゼル微粒子フィルター等が用いられる。エンジン1としてガソリンエンジンを採用する場合は、排気浄化装置8として三元触媒等が用いられる。
【0022】
また、エンジン1には、クランクシャフトの回転角速度や回転角加速度を検出することにより、エンジンの回転数を検出する回転センサ7を備えている。この実施形態では、回転センサ7として、クランクシャフトの端部に取り付けられたタイミングロータの回転を読み取るクランク角センサを採用しているが、エンジンの駆動力伝達経路の途中や、エンジンの回転によって駆動される補機類等、あるいは、その他の場所に設けられる周知の回転センサを用いてもよい。
【0023】
これらの吸気バルブや排気バルブ、燃料噴射装置6、吸気スロットル弁3、排気浄化装置8、その他エンジンの動作に必要な機器は、それぞれケーブルを通じて、電子制御ユニット(Electronic Control Unit)30に備えられた制御手段によって制御される。また、エンジンやその周囲に設けられるセンサ類からの必要な情報は、電子制御ユニット30が取得する。電子制御ユニット30は、これらのセンサ類からの情報により、エンジン1の回転数とエンジン負荷の情報を得ることができる。
【0024】
また、排気通路5と吸気通路4とは、排気ガス再循環装置Cを構成する排気還流通路11によって連通している。排気ガス再循環装置Cは、エンジンから排出される排気ガスの一部を、還流ガスとして吸気通路4に還流する機能を有する。排気ガス再循環装置Cは、高圧排気ガス再循環装置であり、排気還流通路11は、排気通路5に設けられる過給機9の上流側の排気通路5から引き出されて、吸気通路4の過給機9の下流側へ接続されている。
【0025】
排気還流通路11には、還流ガスの温度を下げるための還流ガスクーラ16が設けられている。還流ガスクーラ16は、その内部に還流ガスが通過できる空間を有する空冷式のコアや水冷式のコアを備えたものが採用される。
【0026】
還流ガスクーラ16の上流側の排気還流通路11と下流側の排気還流通路11、又は、還流ガスクーラ16の上流側と吸気通路4とは、還流ガスクーラ16を経由しないバイパス通路15で結ばれている。以下、排気還流通路11におけるバイパス通路15の分岐部Bから下流側において、還流ガスクーラ16を経由するルートを冷却装置通路14と、還流ガスクーラ16を経由しないルートをバイパス通路15と称する。
【0027】
また、排気ガス再循環装置Cは、冷却装置通路14を通過する還流ガスの流量と、バイパス通路15を通過する還流ガスの流量を調整する流量調整手段Aを備えている。
【0028】
この実施形態では、流量調整手段Aとして、バイパス通路15の途中にバイパス調整弁13を備える。また、排気還流通路11には、その排気還流通路11におけるバイパス通路15の分岐部Bよりも上流側に、流路を開閉することにより通過するガス量を調整できる還流ガス調整弁12を備える。還流ガス調整弁12と、流量調整手段Aとしてのバイパス調整弁13は、それぞれの通路を通過する還流ガスの流量を調整する機能を有する。
【0029】
電子制御ユニット30が備える流量調整制御手段31が、これらの流量調整手段Aや還流ガス調整弁12の動作を制御する。還流ガス調整弁12を閉鎖すれば、排気側から吸気側への還流ガスの導入が停止し、還流ガス調整弁12を開放すれば、排気側から吸気側への還流ガスの導入が開始される。また、バイパス調整弁13を閉鎖すれば、全ての還流ガスが冷却装置通路14を通過し、バイパス調整弁13を開放すれば、バイパス通路15側の流量が増加する。このとき、多くの還流ガスが、流路の抵抗が相対的に少ないバイパス通路15側を通過することになる。
【0030】
また、吸気通路4には、燃焼室2に導入される吸気圧力を検知する吸気圧力検知手段20が設けられている。吸気圧力検知手段20としては圧力センサ等を採用することができ、燃焼室2へ導入される直前の位置で吸気圧力を検知することができる。
【0031】
過給機9は、排気通路5に設けられたタービンが、排気通路5を通じて排出される排気ガスにより回転し、タ−ビンの回転が吸気通路4に設けられたコンプレッサに伝達される。コンプレッサの回転により、エアクリーナから取り込まれた空気を圧縮して、その空気を吸気通路4を通じてエンジン1の燃焼室2に過給状態で供給する。
【0032】
この実施形態では、タービンには、タービン内の空気の流速を調整する可動部材として可動ベーンが設けられている。
【0033】
可動ベーンは、タービン内のタービンホイールを囲む円弧状のスクロール流路に沿って、あるいは、スクロール流路への入口部分に設けられ、可動ベーンが揺動することにより、スクロール流路の流れ方向に対する可動ベーンの角度が変化し、その角度の変化により、スクロール流路の流路の断面積が増減させる。これにより、タービンの容量の大きさを調整することができる。
【0034】
このような流路の拡縮により、例えば、流路が狭くなり流速が増大すれば、主として低速域等において、少ない排気ガスでタービンのタービンホイールの回転速度を増大させることができる。これにより、低速域等においても、過給圧を高めることで出力を確保できる。また、流路が広くなれば、主として高速域、高負荷域等において、多くの排気ガスをタービン内に導入し、過給圧を高めることで大きな出力を得ることができる。これらの制御は、運転状況に応じて電子制御ユニット30が行う。
【0035】
また、電子制御ユニット30は、冷却装置通路14を還流ガスが通過している状態で、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する、運転状況に応じた吸気通路4内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きく、且つ、その圧力差が正の値である場合に、排気通路5又は排気還流通路11のいずれかの部分に付着物による部材の固着、又は、通路の閉塞がある異常状態と判定する異常判定手段32を備える。
【0036】
ここで、異常判定手段32が異常状態と判定した場合に、流量調整制御手段31は、流量調整手段Aに対して冷却装置通路14を通過する還流ガスの流量を減少させ、バイパス通路15を通過する還流ガスの流量を増加させるバイパス移行指令を行うようになっている。
【0037】
また、バイパス移行指令を行った後、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する、運転状況に応じた吸気通路4内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値以下である場合に、異常判定手段32は、異常状態が、還流ガスクーラ16内の流路の閉塞によるものであると判定するようになっている。
【0038】
また、バイパス移行指令を行った後、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する、運転状況に応じた吸気通路4内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、異常判定手段32は、異常状態が、還流ガス調整弁12又は吸気スロットル弁3、あるいは、過給機9の可動ベーンを固着状態と判定するようになっている。
【0039】
このとき、バイパス移行指令を行った後の前述の圧力差が正の値である場合に、異常判定手段32は、異常状態が、還流ガス調整弁12を閉側固着状態、又は、吸気スロットル弁3を開側固着状態、あるいは、過給機9の可動ベーンを閉側固着状態と判定する。また、バイパス移行指令を行った後の前述の圧力差が負の値である場合には、還流ガス調整弁12を開側固着状態、又は、吸気スロットル弁3を閉側固着状態、あるいは、過給機9の可動ベーンを開側固着状態と判定するようになっている。
【0040】
以下、このエンジンの制御方法及びその流れについて、図2のフローチャートに基づいて説明する。
【0041】
まず、排気ガス再循環装置Cがオープンループ制御を行っている場合を想定する(ステップS1参照)。具体的には、燃焼室2に導入される実際の吸気圧力が目標値になるように、還流ガス調整弁12と吸気スロットル弁3の開度をフィードバック制御により調整している。ここでは、フィードバック制御を用いることなく、入力が所定の目標値に達したかどうかをもって判断し、制御中のプロセスの出力を観測しないものとする。
【0042】
ステップS2において、燃焼室2に導入される吸気圧力の情報を吸気圧力検知手段20から取得する。つぎに、ステップS3において、還流ガスが、還流ガスクーラ16を経由する冷却装置通路14を通過しているかどうかが判断される。この判断は、バイパス調整弁13が閉鎖されているか否かによって行うことができる。バイパス調整弁13が閉鎖されていれば、還流ガスが冷却装置通路14を通過していると判断される。
【0043】
還流ガスが冷却装置通路14を通過している場合、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する、運転状況に応じた吸気通路4内の吸気の基準圧力の圧力差の絶対値が、所定値よりも大きいどうかが判断される(ステップS4参照)。
【0044】
検知された吸気圧力と基準圧力との圧力差の絶対値が所定値よりも大きければ、ステップS5を経てステップS6へ移行する。検知された吸気圧力と基準圧力との圧力差の絶対値が所定値以下であれば、固着や閉塞の危惧がないので、ステップS13へ移行し、閉塞・固着判定の制御を終了する。このように判断するのは、検知された吸気圧力と基準圧力との圧力差の絶対値が、予め決められた所定値よりも大きいということは、還流ガスクーラ16内の流路の閉塞や、その他箇所の部材の固着によって、還流ガスの導入量が要求量に達していない、又は、還流ガスの導入量が要求量を超えていると考えられるからである。
【0045】
ここで、ステップS5では、ステップS6へ移行する前段で、検知された吸気圧力と基準圧力との圧力差の絶対値が所定値よりも大きい状態が、どの程度の時間継続しているかを判断する。排気ガス再循環装置Cの制御方法はオープンループ制御であるので、数値が目標値に収束するまでに必要な時間を考慮したものである。その継続時間が、数値の収束に充分な時間として予め決められた所定時間を超える場合にのみステップS6へ移行し、所定時間以下の場合は、その数値は制御途中の過渡的な値であるので、ステップS13へ移行し、閉塞・固着判定の制御を終了する。
【0046】
ステップS6では、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する、運転状況に応じた吸気通路4内の吸気の基準圧力の圧力差が、正の値であるかどうかが判断される。圧力差が正の値である場合は、排気還流通路11のいずれかの部分に付着物による通路の閉塞、あるいは、排気還流通路11や排気通路5のいずれかの部分に部材の固着がある異常状態と判定され、ステップS7へ移行する。
【0047】
このため、つづくステップS7では、バイパス調整弁13を開放し、還流ガスの導入をバイパス通路15経由に切り替えることで、異常状態の原因が、排気還流通路11の冷却装置通路14側の閉塞であるかどうかを確かめる。このとき、バイパス調整弁13と吸気スロットル弁3は、それぞれ全開とすることが望ましい。
【0048】
なお、ステップS6で、圧力差が負の値である場合は、還流ガス調整弁12が閉鎖状態で固着、又は、吸気スロットル弁3が閉鎖状態で固着、あるいは、過給機9の可動ベーンの固着であると考えられると判断されるので(ステップS16参照)、このまま運転を継続することは好ましくないため、運転者に対する音声や表示による警告(ステップS17)を経て、閉塞・固着判定の制御を終了する。
【0049】
ステップS7において、異常状態の判定に基づくバイパス調整弁13の開放後、すなわち、流量調整手段Aに対して冷却装置通路14を通過する還流ガスの流量を減少させ、バイパス通路15を通過する還流ガスの流量を増加させるバイパス移行指令を行った後、再度、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力と、運転状況に応じた吸気通路4内の吸気の基準圧力との圧力差の絶対値が、所定値より大きいかどうかが判断される(ステップS8参照)。
【0050】
ステップS8において、圧力差の絶対値が所定値以下である場合は、排気還流通路11のバイパス通路15側への切り替えによって、吸気圧力の数値が正常に近づいたと判断し、付着物による通路の閉塞が排気還流通路11の冷却装置通路14にあると判定され、ステップS10へ移行する。また、ステップS8において、圧力差の絶対値が所定値より大きい値であっても、ステップS9において、その所定値を超える状態の継続時間が所定時間以下の場合は、同じく、付着物による通路の閉塞が排気還流通路11の冷却装置通路14にあると判定され、ステップS10へ移行する。これらの場合、異常は、還流ガスクーラ16内の流路の閉塞である場合が多い。バイパス移行指令前の状態において、検知された吸気圧力が基準圧力よりも大きい状態であるため、排気還流通路11の閉塞により充分な還流ガスが吸気側に供給されず、排気通路5内の排気圧が高まって過給機9による過給圧が増大していると考えられるからである。また、バイパス移行指令後の状態において、吸気圧力が適正な数値に近づいていることから、還流ガス調整弁12や吸気スロットル弁3は正常であり、上記の原因が冷却装置通路14にあると考えられる。
【0051】
ステップS10で、排気還流通路11の冷却装置通路14の閉塞が判断された場合、運転者に対する音声や表示による警告(ステップS11)を経て、還流ガスクーラ16を用いない、又は、排気ガス再循環装置Cによる還流ガスの導入を行わない運転状態に移行させる(ステップS12)。これにより、閉塞・固着判定の制御を終了する。
【0052】
ここで、ステップS9では、ステップS10へ移行する前段で、検知された吸気圧力と基準圧力との圧力差の絶対値が所定値よりも大きい状態が、どの程度の時間継続しているかを判断する。排気ガス再循環装置Cの制御方法はオープンループ制御であるので、数値が目標値に収束するまでに必要な時間を考慮したものである。その継続時間が、数値の収束に充分な時間として予め決められた所定時間を超える場合にのみステップS10へ移行し、所定時間以下の場合は他の原因が考えられるので、ステップS14へ移行する。
【0053】
ステップS8とS9において、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力に対する運転状況に応じた吸気通路4内の基準圧力の圧力差の絶対値が所定値よりも大きい場合に、且つ、その継続時間が所定時間を超える場合に、異常状態が、還流ガス調整弁12又は吸気スロットル弁3、あるいは、過給機9の可動ベーンが固着状態であると判定し、ステップS14へ移行する。
【0054】
ステップS14では、バイパス移行指令を行った後の圧力差が正の値である場合に、異常状態が、還流ガス調整弁12が閉側固着状態、又は、吸気スロットル弁3が開側固着状態、あるいは、過給機9の可動ベーンが閉側固着状態となることによって、吸気圧力が高まっていると判定する。このため、このまま運転を継続することは好ましくないため、運転者に対する音声や表示による警告(ステップS17)を経て、閉塞・固着判定の制御を終了する。
【0055】
また、ステップS14において、バイパス移行指令を行った後の圧力差が負の値である場合には、還流ガス調整弁12が開側固着状態、又は、吸気スロットル弁3が閉側固着状態、あるいは、過給機9の可動ベーンが開側固着状態となることによって、吸気圧力が低くなっていると判定する。このため、このまま運転を継続することは好ましくないため、運転者に対する音声や表示による警告(ステップS17)を経て、閉塞・固着判定の制御を終了する。
【0056】
なお、ステップS3において、還流ガスが冷却装置通路14を通過していない場合、すなわち、バイパス調整弁13が開放されている場合は、還流ガスは冷却装置通路14をほとんど通過していないので、ステップS7へ移行し、同様の制御が行われる。
【0057】
上記の制御において、吸気圧力検知手段20により検知された吸気圧力と、運転状況に応じた吸気通路4内の吸気の基準圧力との圧力差の絶対値を評価する際に用いられる所定値に関し、この所定値の設定は、例えば、エンジンの回転数とエンジン負荷の二つ要素に基づいてマップ等を用いて決定することができる。所定値は、エンジンの回転数が大きくなるほど高い数値となる傾向があり、また、エンジン負荷が大きくなるほど高い数値となる傾向がある。
【0058】
また、運転状況に応じた吸気通路4内の吸気の基準圧力に関しても、この基準圧力の設定は、例えば、エンジンの回転数とエンジン負荷の二つ要素に基づいてマップ等を用いて決定することができる。基準圧力は、エンジンの回転数が大きくなるほど高い数値となる傾向があり、また、エンジン負荷が大きくなるほど高い数値となる傾向がある。また、所定時間についても同様である。
【0059】
上記の実施形態では、流量調整手段Aは、冷却装置通路14とバイパス通路15との分岐部Bよりも上流側に設けられる還流ガス調整弁12と、バイパス通路15に設けられるバイパス調整弁13とを備える構成としたが、流量調整手段Aの構成はこの実施形態には限定されず、例えば、冷却装置通路14とバイパス通路15の両方に流量調整弁を設けた構成としてもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、自動車用のディーゼルエンジンを例に、この発明の構成を説明したが、自動車用のガソリンエンジン、その他各種のエンジンにおいても、この発明を適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 燃焼室
3 吸気スロットル弁
4 吸気通路
5 排気通路
6 燃料噴射装置
11 排気還流通路
12 還流ガス調整弁
13 バイパス調整弁
16 還流ガスクーラ
20 吸気圧力検知手段
30 電子制御ユニット(Electronic Control Unit)
31 流量調整制御手段
32 異常判定手段
A 流量調整手段
C 排気ガス再循環装置
図1
図2