【課題】排気浄化触媒が高温のときに燃料カットの実行を禁止するエンジンの制御装置であって、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止することが可能なエンジンの制御装置を提供する。
【解決手段】ECU50は、所定の燃料カット条件が成立した場合に燃料カットを実行する燃料噴射制御部51と、排気浄化触媒20の温度が所定温度よりも高い場合に、燃料カットの実行を禁止する燃料カット禁止部53と、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットが実行されているときよりも、無段変速機81の変速比をロー側に変速するように要求する変速要求部54と、燃料カットの実行が禁止されているときに、エンジン10のインテークマニホールド11に還流させる排気ガスの量を増大させるようにEGRバルブ42を駆動する還流量制御部55とを備える。
前記還流量制御手段は、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数における吸入空気量と、該最低エンジン回転数よりも高回転側に設定される目標エンジン回転数における吸入空気量との偏差に基づいて、排気ガスの還流量を増大することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
前記変速要求手段は、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数よりも高回転側に設定される目標エンジン回転数に基づいて、前記自動変速機の変速比をロー側に変更するように要求することを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの制御装置。
前記触媒温度取得手段は、エンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期に基づいて、前記排気浄化触媒の温度を推定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンの制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、減速時に、自動変速機の変速段がより小さな変速段に切り替えられる(シフトダウンされる)と、それに応じてエンジン回転数が上昇することにより、エンジンフリクションが増大するが、一方、エンジンの吸入空気量が増大し、それに伴って燃料噴射量も増大する。その結果、エンジン出力が増大し、減速感の悪化防止効果が低減するおそれがある。また、燃料消費率(燃費)が悪化するおそれもある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、排気浄化触媒が高温のときに燃料カットの実行を禁止するエンジンの制御装置であって、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止することが可能なエンジンの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエンジンの制御装置は、所定の燃料噴射停止条件が成立した場合に、エンジンに対する燃料噴射を停止する燃料カットを実行する燃料噴射制御手段と、エンジンから排出される排気ガスを浄化する排気浄化触媒の温度を取得する触媒温度取得手段と、触媒温度取得手段により取得された排気浄化触媒の温度が所定温度よりも高い場合に、燃料噴射制御手段による燃料カットの実行を禁止する燃料カット禁止手段と、エンジンから排出される排気ガスの一部をエンジンの吸気系に還流させる排気ガス再循環装置と、燃料カット禁止手段により燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットが実行されているときよりも、エンジンの駆動力を変換して出力する自動変速機の変速比をロー側に変更するように要求する変速要求手段と、燃料カット禁止手段により燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットが実行されているときよりも、エンジンの吸気系に還流させる排気ガスの量を増大させるように排気ガス再循環装置を駆動する還流量制御手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るエンジンの制御装置によれば、排気浄化触媒の温度が所定温度よりも高くなり、燃料カットが禁止されるときに、自動変速機の変速比がロー側に変更される。そのため、エンジン回転数が上昇し、エンジンフリクションが増大する。よって、車両の減速度を増大することができる。一方、燃料カットが禁止されるときに、エンジンの吸気系に還流される排気ガスの量が増大される。そのため、エンジン回転数が上昇したとしても、エンジンに吸入される新気の増大が抑制され、燃料噴射量の増大が抑制される。よって、エンジン出力の増大を抑制することができる。その結果、排気浄化触媒の劣化防止の観点から燃料カットの実行が禁止されているときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止することが可能となる。
【0010】
本発明に係るエンジンの制御装置では、燃料カットの実行が禁止されているときに、還流量制御手段が、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数における吸入空気量と、該最低エンジン回転数よりも高回転側に設定される目標エンジン回転数における吸入空気量との偏差に基づいて、排気ガスの還流量を増大することが好ましい。
【0011】
この場合、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数における吸入空気量と目標エンジン回転数における吸入空気量との偏差に基づいて、エンジンの吸気系に還流される排気ガスの量が増大される。そのため、エンジン回転数が目標回転数まで上昇したとしても、エンジンに吸入される新気の量が、最低エンジン回転数における吸入空気量と同等の量に維持され、燃料噴射量の増大が抑制される。よって、エンジン出力の増大を適切に抑制することができる。
【0012】
本発明に係るエンジンの制御装置では、燃料カットの実行が禁止されているときに、変速要求手段が、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数よりも高回転側に設定される目標エンジン回転数に基づいて、自動変速機の変速比をロー側に変更するように要求することが好ましい。
【0013】
この場合、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数よりも高めに設定される目標エンジン回転数に基づいて、自動変速機の変速比がロー側に変更される。そのため、エンジン回転数を目標エンジン回転数まで上昇させることができる。
【0014】
本発明に係るエンジンの制御装置では、アクセルペダルの操作量に応じて、エンジンに吸入される空気量を調節するスロットルバルブ制御手段を備え、該スロットルバルブ制御手段が、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数における吸入空気量と同じ量の新気が吸入されるようにスロットルバルブ開度を調節し、燃料噴射制御手段が、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数における燃料噴射量と同じ量の燃料が噴射されるようにインジェクタを制御することが好ましい。
【0015】
このようにすれば、燃料カットの実行が禁止され、エンジン回転数が上昇されたときに、エンジンに吸入される新気の量が最低エンジン回転数における吸入空気量と同じになるように調節されるとともに、燃料噴射量が、最低エンジン回転数における燃料噴射量と同じ燃料量となるように制御される。そのため、エンジン回転数が上昇したときに、エンジン出力の増大を防止することができる。
【0016】
本発明に係るエンジンの制御装置では、触媒温度取得手段が、エンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期に基づいて、排気浄化触媒の温度を推定することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、専用の温度センサを用いることなく、精度よく排気浄化触媒の温度を推定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排気浄化触媒の劣化防止の観点から燃料カットが禁止されているときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
まず、
図1を用いて、実施形態に係るエンジンの制御装置1の構成について説明する。
図1は、エンジンの制御装置1、及び該制御装置1が適用されたエンジン10及び無段変速機81(パワーユニット)の構成を示す図である。
【0022】
エンジン10は、例えば水平対向型の4気筒ガソリンエンジンである。また、エンジン10は、シリンダ内(筒内)に燃料を直接噴射する筒内噴射式のエンジンである。エンジン10では、エアクリーナ16から吸入された空気が、吸気管15に設けられた電子制御式スロットルバルブ(以下、単に「スロットルバルブ」ともいう)13により絞られ、インテークマニホールド11を通り、エンジン10に形成された各気筒に吸入される。ここで、エアクリーナ16から吸入された空気の量は、エアクリーナ16とスロットルバルブ13との間に配置されたエアフローメータ14により検出される。また、インテークマニホールド11を構成するコレクター部(サージタンク)の内部には、インテークマニホールド11内の圧力(吸気マニホールド圧力)を検出するバキュームセンサ30が配設されている。さらに、スロットルバルブ13には、該スロットルバルブ13の開度を検出するスロットル開度センサ31が配設されている。
【0023】
シリンダヘッドには、気筒毎に吸気ポート22と排気ポート23とが形成されている(
図1では片バンクのみ示した)。各吸気ポート22、排気ポート23それぞれには、該吸気ポート22、排気ポート23を開閉する吸気バルブ24、排気バルブ25が設けられている。吸気バルブ24を駆動する吸気カム軸と吸気カムプーリとの間には、吸気カムプーリと吸気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する吸気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、吸気バルブ24のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構26が配設されている。この可変バルブタイミング機構26により吸気バルブ24の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0024】
同様に、排気カム軸と排気カムプーリとの間には、排気カムプーリと排気カム軸とを相対回動してクランク軸10aに対する排気カム軸の回転位相(変位角)を連続的に変更して、排気バルブ25のバルブタイミング(開閉タイミング)を進遅角する可変バルブタイミング機構27が配設されている。この可変バルブタイミング機構27により排気バルブ25の開閉タイミングがエンジン運転状態に応じて可変設定される。
【0025】
エンジン10の各気筒には、シリンダ内に燃料を噴射するインジェクタ12が取り付けられている。インジェクタ12は、高圧燃料ポンプ(図示省略)により加圧された燃料を各気筒の燃焼室内へ直接噴射する。
【0026】
また、各気筒のシリンダヘッドには、混合気に点火する点火プラグ17、及び該点火プラグ17に高電圧を印加するイグナイタ内蔵型コイル21が取り付けられている。エンジン10の各気筒では、吸入された空気とインジェクタ12によって噴射された燃料との混合気が点火プラグ17により点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは排気管18を通して排出される。
【0027】
排気管18には、排気ガス中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ19Aが取り付けられている。空燃比センサ19Aとしては、排気空燃比をリニアに検出することのできるリニア空燃比センサ(LAFセンサ)が用いられる。なお、空燃比センサ19Aとして、排気空燃比をオン−オフ的に検出するO
2センサを用いてもよい。
【0028】
また、空燃比センサ19Aの下流には排気浄化触媒(CAT)20が配設されている。排気浄化触媒20は三元触媒であり、排気ガス中の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の酸化と、窒素酸化物(NOx)の還元を同時に行い、排気ガス中の有害ガス成分を無害な二酸化炭素(CO
2)、水蒸気(H
2O)及び窒素(N
2)に清浄化するものである。排気浄化触媒20の下流には、排気空燃比をオン−オフ的に検出するリヤ(CAT後)O
2センサ19Bが設けられている。
【0029】
排気管18には、エンジン10から排出された排気ガスの一部を、エンジン10のインテークマニホールド11(吸気系)に再循環(還流)させる排気ガス再循環装置(以下「EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置」という)40が設けられている。EGR装置40は、エンジン10の排気管18とインテークマニホールド11とを連通するEGR配管41、及びEGR配管41上に介装され、排気ガス還流量(EGR量)を調節するEGRバルブ42を有している。
【0030】
EGRバルブ42は、後述する電子制御装置50によって開度が制御(デューティ制御)される。すなわち、電子制御装置50は、エンジン10の運転状態に応じてEGRバルブ42の開閉量を調節することにより、排気ガスの還流量(再循環量)を制御する。なお、EGRバルブ42には、負圧式のものの他、ステッピングモータ等により駆動される形式のものを用いることができる。
【0031】
上述したエアフローメータ14、LAFセンサ19A、O
2センサ19B、バキュームセンサ30、スロットル開度センサ31に加え、エンジン10のカムシャフト近傍には、エンジン10の気筒判別を行うためのカム角センサ32が取り付けられている。また、エンジン10のクランクシャフト10a近傍には、クランクシャフト10aの回転位置を検出するクランク角センサ33が取り付けられている。ここで、クランクシャフト10aの端部には、例えば、2歯欠歯した34歯の突起が10°間隔で形成されたタイミングロータ33aが取り付けられており、クランク角センサ33は、タイミングロータ33aの突起の有無を検出することにより、クランクシャフト10aの回転位置を検出する。カム角センサ32及びクランク角センサ33としては、例えば電磁ピックアップ式のものなどが用いられる。
【0032】
これらのセンサは、電子制御装置(以下「ECU」という)50に接続されている。さらに、ECU50には、エンジン10の冷却水の温度を検出する水温センサ34、潤滑油の温度を検出する油温センサ35、アクセルペダルの踏み込み量すなわちアクセルペダルの開度を検出するアクセルペダル開度センサ36、及び、車両の速度を検出する車速センサ37等の各種センサも接続されている。
【0033】
ECU50は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、バッテリによってその記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。また、ECU50は、インジェクタ12を駆動するインジェクタドライバ、点火信号を出力する出力回路、EGRバルブ42を駆動するドライバ、及び電子制御式スロットルバルブ13を開閉する電動モータ13aを駆動するモータドライバ等を備えている。
【0034】
ECU50では、カム角センサ32の出力から気筒が判別され、クランク角センサ33の出力から回転角速度およびエンジン回転数が求められる。また、ECU50では、上述した各種センサから入力される検出信号に基づいて、吸入空気量、吸気管負圧、アクセルペダル開度、混合気の空燃比、及びエンジン10の水温や油温等の各種情報が取得される。そして、ECU50は、取得したこれらの各種情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、EGRバルブ42、及びスロットルバルブ13等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を総合的に制御する。
【0035】
特に、ECU50は、排気浄化触媒20の劣化防止の観点から燃料カットの実行を禁止するときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止する機能を有している。そのため、ECU50は、燃料噴射制御部51、触媒温度取得部52、燃料カット禁止部53、変速要求部54、還流量制御部55、及びスロットルバルブ制御部56を機能的に備えている。ECU50では、ROMに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、燃料噴射制御部51、触媒温度取得部52、燃料カット禁止部53、変速要求部54、還流量制御部55、及びスロットルバルブ制御部56の各機能が実現される。
【0036】
燃料噴射制御部51は、減速時等、所定の燃料噴射停止条件が成立した場合に、インジェクタ12の駆動を停止してエンジン10に対する燃料供給を停止(以下「燃料カット」という)する。すなわち、燃料噴射制御部51は、特許請求の範囲に記載の燃料噴射制御手段として機能する。より具体的には、燃料噴射制御部51は、例えば次のような燃料カット開始条件(以下、単に「燃料カット条件」ともいう)が満足された場合、すなわち、アクセルペダルが全閉で、エンジン回転数Ne≧1000(rpm)であり、かつ、車速v≧10(km/h)の場合に、燃料カットを実行する。
【0037】
ここで、燃料噴射制御部51は、上述した所定の燃料カット条件は成立しているが、後述する燃料カット禁止部53によって燃料カットの実行が禁止されているときには、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数Nminにおける燃料噴射量と同じ燃料量を噴射するようにインジェクタ12を制御する。
【0038】
なお、燃料噴射制御部51は、燃料カットの実行中に上記燃料カット条件が満たされなくなったときには、燃料カットを中断し、インジェクタ12による燃料噴射を再開(燃料カットから復帰)する。
【0039】
触媒温度取得部52は、エンジン10から排出される排気ガスを浄化する排気浄化触媒20の温度を取得する。すなわち、触媒温度取得部52は、特許請求の範囲に記載の触媒温度取得手段として機能する。より具体的には、触媒温度取得部52は、例えば、エンジン回転数、エンジン負荷、混合気の空燃比、及び点火時期に基づいて、排気浄化触媒20の温度を推定する。
【0040】
より具体的には、ECU50のROM等に、エンジン回転数、エンジン負荷、混合気の空燃比、及び点火時期と排気浄化触媒20の温度との関係を定めたマップ(触媒温度推定マップ)を予め記憶しておき、検出されたエンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期を用いて該触媒温度推定マップを検索することにより、排気浄化触媒20の温度を推定することができる。また、マップに代えて、エンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期をパラメータとする演算式を用いて、演算により排気浄化触媒20の温度を推定する構成としてもよい。なお、触媒温度取得部52により推定された排気浄化触媒20の温度は、燃料カット禁止部53に出力される。
【0041】
燃料カット禁止部53は、触媒温度取得部52により推定(取得)された排気浄化触媒20の温度が所定温度Tfc(例えば600〜700℃)よりも高い場合には、排気浄化触媒20の劣化を防止するため、燃料噴射制御部51による燃料カットの実行を禁止する。すなわち、燃料カット禁止部53は、特許請求の範囲に記載の燃料カット禁止手段として機能する。なお、燃料カット禁止部53により燃料カットの実行が禁止されていることを示す情報は、燃料噴射制御部51、変速要求部54、還流量制御部55、及びスロットルバルブ制御部56に出力される。
【0042】
変速要求部54は、燃料カット禁止部53により燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットが実行されているときよりも、エンジンの10駆動力を変換して出力する例えばチェーン式の無段変速機(特許請求の範囲に記載の自動変速機に相当)81の変速比をロー側に変更するように要求する。すなわち、変速要求部54は、特許請求の範囲に記載の変速要求手段として機能する。
【0043】
より具体的には、変速要求部54は、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数Nminよりも高回転側に設定される目標エンジン回転数(例えば1000rpm程度)に基づいて(すなわち、実エンジン回転数が目標エンジン回転数と一致するように)、無段変速機81の変速比をロー側に変更するように要求する。その際に、変速要求部54は、CAN100を介して、無段変速機81の変速比制御を司るTCU80(トランスミッション・コントロールユニット)に対して要求情報を送出する。なお、TCU80は、変速要求部54からの変速要求を受けて、無段変速機81の変速比をロー側に変更する。
【0044】
還流量制御部55は、燃料カット禁止部53により燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットが実行されているときよりも、エンジン10のインテークマニホールド11に還流させる排気ガスの量を増大させるようにEGRバルブ42を駆動する。すなわち、還流量制御部55は、特許請求の範囲に記載の還流量制御手段として機能する。
【0045】
より具体的には、還流量制御部55は、燃料カットの実行が禁止されているときに、燃料カットの実行が禁止されている状態で運転可能な最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と、該最低エンジン回転数Nminよりも高回転側に設定される目標エンジン回転数(例えば1000rpm程度)における吸入空気量との偏差に基づいて(すなわち、エンジン10に吸入される新気の量が変化しないように)、EGRバルブ42を駆動して排気ガスの還流量を増大する。
【0046】
スロットルバルブ制御部56は、電動モータ13aを駆動して、スロットルバルブ13の開度を調節することにより、エンジン10の吸入空気量を調節する。スロットルバルブ制御部56は、通常運転時には、例えば、アクセル開度センサ36により検出されたアクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)から目標スロットル開度を求め、該目標スロットル開度と実開度とが一致するように、電動モータ13aを駆動する。より具体的には、ECU50のROM等には、アクセル開度とスロットル開度との関係を定めたスロットル開度マップが記憶されており、アクセル開度に基づいてこのスロットル開度マップが検索されることにより、スロットル開度の目標値が設定される。
【0047】
一方、スロットルバルブ制御部56は、燃料カット禁止部53により燃料カットの実行が禁止されているときには、上記最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と同じ量の新気が吸入されるようにスロットルバルブ13の開度を調節する。すなわち、スロットルバルブ制御部56は、特許請求の範囲に記載のスロットルバルブ制御手段として機能する。
【0048】
次に、
図2を参照しつつ、エンジンの制御装置1の動作について説明する。
図2は、エンジンの制御装置1による燃料カット禁止処理(空走感低減処理)の処理手順を示すフローチャートである。本処理は、主としてECU50において、所定のタイミングで繰り返して実行される。
【0049】
まず、ステップS100では、燃料カット条件が成立したか否かについての判断が行われる。なお、燃料カット条件については上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。ここで、燃料カット条件が成立している場合には、ステップS102に処理が移行する。一方、燃料カット条件が成立していないときには、本処理から一旦抜ける。
【0050】
ステップS102では、排気浄化触媒20の温度Tcatが推定(取得)される。なお、排気浄化触媒20の温度Tcatの推定方法については、上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。続いて、ステップS104では、ステップS102で推定された排気浄化触媒20の推定温度Tcatが所定温度Tfc(例えば600〜700℃)よりも高いか否かについての判断が行われる。ここで、排気浄化触媒20の推定温度Tcatが所定温度Tfcよりも高い場合には、ステップS108に処理が移行する。一方、排気浄化触媒20の推定温度Tcatが所定温度Tfc以下のときには、ステップS106に処理が移行する。
【0051】
ステップS106では、インジェクタ12の駆動が停止されて、該インジェクタ12による燃料噴射が停止(すなわち燃料カットが実行)される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0052】
一方、ステップS108では、排気浄化触媒20の劣化を防止するために、燃料カットの実行が禁止される。そして、ステップS110において、実エンジン回転数が、上記最低エンジン回転数Nminよりも高回転側に設定される目標エンジン回転数(例えば1000rpm程度)と一致するように、無段変速機81の変速比をロー側に変更するように、TCU80に対して変速要求が出力される。これにより、無段変速機81の変速比がロー側に変速され、エンジン回転数が目標回転数まで上昇(例えば100〜200rpm程度上昇)される。
【0053】
続いて、ステップS112では、最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と、目標エンジン回転数における吸入空気量との偏差に基づいて(すなわち、エンジン10に吸入される新気の量が変化しないように)、EGRバルブ42が駆動されて排気ガスの還流量が増大される。なお、このときに、スロットルバルブ13の開度は、最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と同じ量の新気が吸入されるように調節される。その後、本処理から一旦抜ける。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、排気浄化触媒20の温度が所定温度Tfcよりも高くなり、燃料カットが禁止されるときに、無段変速機81の変速比がロー側に変更される。そのため、エンジン回転数が上昇し、エンジンフリクションが増大する。よって、車両の減速度を増大することができる。一方、燃料カットが禁止されるときに、エンジン10のインテークマニホールド11に還流される排気ガスの量が増大される。そのため、エンジン回転数が上昇したとしても、エンジン10に吸入される新気の増大が抑制され、燃料噴射量の増大が抑制される。よって、エンジン出力の増大を抑制することができる。その結果、排気浄化触媒20の劣化防止の観点から燃料カットの実行が禁止されているときに、燃費を悪化させることなく、減速感の悪化(空走感)を効果的に防止することが可能となる。
【0055】
その際に、本実施形態によれば、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と目標エンジン回転数における吸入空気量との偏差に基づいて、エンジン10のインテークマニホールド11に還流される排気ガスの量が増大される。そのため、エンジン回転数が目標回転数まで上昇したとしても、エンジン10に吸入される新気の量が、最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と同等の量に維持され、燃料噴射量の増大が抑制される。よって、エンジン出力の増大を適切に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、燃料カットの実行が禁止されているときに、最低エンジン回転数よりも高めに設定される目標エンジン回転数に基づいて、無段変速機81の変速比がロー側に変更される。そのため、エンジン回転数を目標エンジン回転数まで上昇させることができる。
【0057】
特に、本実施形態によれば、燃料カットの実行が禁止され、エンジン回転数が上昇されたときに、エンジン10に吸入される新気の量が最低エンジン回転数Nminにおける吸入空気量と同じになるようにスロットルバルブ13が制御されるとともに、燃料噴射量が最低エンジン回転数Nminにおける燃料噴射量と同じ燃料量となるようにインジェクタ12が制御される。そのため、エンジン回転数が上昇したときに、エンジン出力の増大を適切に防止することができる。
【0058】
本実施形態によれば、エンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期に基づいて、排気浄化触媒20の温度が推定される。そのため、専用の温度センサを用いることなく、精度よく排気浄化触媒20の温度を推定することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、エンジン回転数、エンジン負荷、空燃比、及び点火時期に基づいて、排気浄化触媒20の温度を推定したが、例えば熱電対などの温度センサを用いて排気浄化触媒20の温度を測定(検出)する構成としてもよい。
【0060】
上記実施形態では、本発明を筒内噴射式のエンジンに適用した場合を例にして説明したが、本発明は、ポート噴射式のエンジン等にも適用することができる。また、本発明は、水平対向型のエンジンに限られず、例えば、直列型やV型等のエンジンにも適用することができる。
【0061】
上記実施形態では、本発明をチェーン式の無段変速機(CVT)に適用したが、チェーン式の無段変速機に代えて、例えば、ベルト式の無段変速機や、トロイダル式の無段変速機等にも適用することができる。また、無段変速機(CVT)に代えて、有段自動変速機(AT)に適用してもよい。