(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223455(P2016-223455A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】継手部の構造および管の敷設方法
(51)【国際特許分類】
F16L 21/08 20060101AFI20161205BHJP
F16L 1/024 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
F16L21/08 B
F16L1/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-106899(P2015-106899)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一也
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔太
【テーマコード(参考)】
3H015
【Fターム(参考)】
3H015FA04
(57)【要約】
【課題】継手部の屈曲角度を増大しても、ロックリングの内周が挿口の外周から径方向外方へ浮き上がり難い構造を有する継手構造を提供する。
【解決手段】受口4の内面に形成されたロックリング収容溝7にロックリング10が収容され、挿口5に形成された突部11が離脱方向Aにおいて受口奥側からロックリング10に当接することにより、挿口5が受口4から離脱することを防止可能な継手構造であって、ロックリング収容溝7の受口開口側の面がテーパー面9として形成され、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれたとき、ロックリング10と突部11とが当接する第1当接箇所P1は、挿口5の外表面5aよりも径方向外方に位置し、挿口5の外表面5aから第1当接箇所P1までの間に、ロックリング10と突部11とが当接しない非接触空間15が形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口に挿口が挿入され、
受口の内面に形成されたロックリング収容溝にロックリングが収容され、
挿口の外表面に形成された突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに当接することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な継手部の構造であって、
ロックリング収容溝の受口開口側の面が挿口の離脱方向において縮径するテーパー面として形成され、
ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと突部とが当接する第1当接箇所は、挿口の外表面よりも径方向外方に位置し、
挿口の外表面から第1当接箇所までの間に、ロックリングと突部とが当接しない非接触空間が形成されていることを特徴とする継手部の構造。
【請求項2】
ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、第1当接箇所は、ロックリングとロックリング収容溝のテーパー面とが当接する第2当接箇所よりも、径方向内方に位置していることを特徴とする請求項1記載の継手部の構造。
【請求項3】
挿口に離脱方向の力が作用して、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングに、第1当接箇所を中心とする第1および第2モーメントが発生し、
第1モーメントはロックリングの内周が挿口の外表面から径方向外側に離間する方向のモーメントであり、
第2モーメントは第1モーメントとは逆方向のモーメントであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の継手部の構造。
【請求項4】
挿口に離脱方向の力が作用して、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、テーパー面に垂直な離脱阻止力Fが第2当接箇所に作用し、
離脱阻止力Fは、管軸心に平行な方向の第1分力f1と、管軸心に垂直な方向の第2分力f2とに分けられ、
第1当接箇所と第2当接箇所との間の径方向における距離を第1距離d1とし、第1当接箇所と第2当接箇所との間の管軸心方向における距離を第2距離d2とすると、
第1モーメントM1はM1=f1×d1で定義され、
第2モーメントM2はM2=f2×d2で定義されることを特徴とする請求項3記載の継手部の構造。
【請求項5】
第1モーメントは第2モーメント以下となるように設定されていることを特徴とする請求項4記載の継手部の構造。
【請求項6】
受口の内面にシール部材収容溝が形成され、
受口内周と挿口外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材収容溝に収容されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の継手部の構造。
【請求項7】
上記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の継手部の構造を用いた管の敷設方法であって、
管の敷設場所に敷設用溝を形成し、
挿口を受口に挿入して管同士を接続し、
接続した管同士を、継手部において屈曲させながら、敷設用溝内に設置することを特徴とする管の敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受口に挿口が挿入され、内蔵されたロックリングにより離脱防止機能を有する管等の継手部の構造および管の敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の継手部としては、例えば
図9に示すように、一方の管101と他方の管102とを接続するプッシュオン型の継手部103があり、以下のような構成を有している。
【0003】
一方の管101の受口104に他方の管102の挿口105が挿入されている。受口104の内周面には、シール部材収容溝106とロックリング収容溝107とが形成されている。シール部材収容溝106には、受口104の内周と挿口105の外周との間をシールする環状のゴム輪108が収納されている。
ロックリング収容溝107の受口開口側の面は、挿口105の離脱方向Aにおいて縮径するテーパー面109として形成されている。
【0004】
ロックリング収容溝107には、ロックリング110が収容されている。また、挿口105の先端部の外表面105aには、突部111が全周にわたり形成されている。
これによると、受口104の内周と挿口105の外周との間がゴム輪108でシールされているため、両管101,102内を流れる流体が継手部分から外部に漏出するのを防止している。
【0005】
受口104に対して挿口105が離脱方向Aへ移動した際、
図10に示すように、突部111が受口奥側からロックリング110に係合することにより、挿口105が受口104から離脱するのを防止することができる。
【0006】
このとき、ロックリング110には回転力が発生する。ここでロックリング110が挿口105の外周から浮き上がってしまった場合には、ロックリングの離脱防止の機能を十分に発揮できなくなる恐れがある。
【0007】
そこで、下記特許文献1の
図2ではテーパー面7bに垂直な方向の分力F1の作用線17をロックリング19における受口奥側部と挿口5の外周との接点15よりも受口3の開口側を通過する様に設定することで、ロックリング19が挿口5の外周から浮き上がるのを防止する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−138206号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、継手部の屈曲角度を増大したいという要望がある。
図11に示すように、継手部103の屈曲角度は、一方の管101に対して他方の管102が屈曲した場合、その屈曲角度αが大きくなると、挿口105の外周と受口104の内周とが二箇所B1,B2で接触し、この時点で屈曲角度αが最大になる。このうち、第1接触箇所B1はシール部材収容溝106の受口開口側に位置し、第2接触箇所B2はロックリング収容溝107の受口奥側に位置している。尚、第1接触箇所B1と第2接触箇所B2とは互いに径方向における反対側に位置する。
【0010】
ここで、管軸心方向における第1接触箇所B1と第2接触箇所B2との間の距離をCとすると、屈曲角度αを増大させるためには、上記距離Cを短縮する必要がある。この距離Cを短縮するためには、シール部材収容溝106の幅Dを短縮するか或いはロックリング収容溝107の幅Eを短縮することが考えられる。
【0011】
上記特許文献1の
図2に記載されている従来技術におけるロックリング19では、ロックリング19の幅を小さくすると、垂直な方向の分力F1の作用線17が接点15よりも受口3の奥側に位置する場合があるため、ロックリング19の幅を小さくすることが難しく、ロックリング収容溝7の幅を短縮する事が困難であった。
【0012】
そこで本発明は、継手部の屈曲角度を増大しても、ロックリングの内周が挿口の外周から径方向外方へ浮き上がり難い継手部の構造および管の敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の目的を達成するため、ロックリングの浮き上がり挙動に影響するメカニズムをさらに検討した結果、ロックリングに作用するモーメントが関係する事を見出した。
【0014】
上記メカニズムについて詳細に説明すると、
図10に示すように挿口105を受口104から離脱方向Aへ離脱させようとする離脱力が作用して、突部111がロックリング110に係合し、ロックリング110がロックリング収容溝107のテーパー面109と突部111との間に挟まれたとき、ロックリング110と突部111とが当接する。ロックリング110の奥端面110aと突部111の手前端面111aと挿口105の外表面105aとが交わる点を第1当接箇所P1とすると、ロックリング110に、第1当接箇所P1を中心とする第1および第2モーメントM1,M2が発生する。
【0015】
また、ロックリング110とロックリング収容溝107のテーパー面109とが当接する箇所を第2当接箇所P2とすると、テーパー面109に垂直な離脱阻止力Fが第2当接箇所P2に作用し、離脱阻止力Fは、管軸心114に平行な方向の第1分力f1と、管軸心114に垂直な方向の第2分力f2とに分けられる。
【0016】
第1当接箇所P1と第2当接箇所P2との間の径方向における距離を第1距離d1とし、第1当接箇所P1と第2当接箇所P2との間の管軸心方向における距離を第2距離d2とすると、第1モーメントM1はM1=f1×d1で定義され、第2モーメントM2はM2=f2×d2で定義される。
【0017】
ロックリング110がロックリング収容溝107のテーパー面109と突部111との間に挟まれたとき、第2モーメントM2≧第1モーメントM1の関係が保たれていれば、ロックリング110が第1当接箇所P1を中心にして第1モーメントM1の方向へ回動することは阻止され、ロックリング110の内周が挿口105の外周から径方向外方へ浮き上がることを防止できることが判明した。
【0018】
また、上記とは逆に、第2モーメントM2<第1モーメントM1になった場合であっても、第1モーメントM1の大きさと第2モーメントM2の大きさとの差ができるだけ小さくなるように設計することで、ロックリング110の第1モーメントM1の方向への回動を抑制することができる。
【0019】
一方、上記距離C(
図11参照)を短縮するために、ロックリング収容溝107の幅E(
図9参照)を短縮する場合、ロックリング収容溝107の幅Eに応じてロックリング110の幅Gも短縮されるため、
図10に示した第2距離d2が短縮され、上記第2モーメントM2(M2=f2×d2)が小さくなり、ロックリング110が第1モーメントM1の方向への回動し易くなり、ロックリング110の内周が挿口105の外周から径方向外方へ浮き上がり易くなるといった問題があることを見出した。
【0020】
そこで、上記目的を達成するために、本第1発明は、受口に挿口が挿入され、受口の内面に形成されたロックリング収容溝にロックリングが収容され、挿口の外表面に形成された突部が挿口の離脱方向において受口奥側からロックリングに当接することにより、挿口が受口から離脱することを防止可能な継手部の構造であって、ロックリング収容溝の受口開口側の面が挿口の離脱方向において縮径するテーパー面として形成され、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングと突部とが当接する第1当接箇所は、挿口の外表面よりも径方向外方に位置し、挿口の外表面から第1当接箇所までの間に、ロックリングと突部とが当接しない非接触空間が形成されているものである。
【0021】
これによると、挿口に離脱方向の力が作用して、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングに、第1当接箇所を中心とする第1および第2モーメントが発生する。尚、第1モーメントはロックリングの内周が挿口の外表面から径方向外側に離間する方向のモーメントであり、第2モーメントは第1モーメントとは逆方向のモーメントである。
【0022】
この際、ロックリングとロックリング収容溝のテーパー面とが当接する第2当接箇所には、テーパー面に垂直な離脱阻止力Fが作用する。離脱阻止力Fは、管軸心に平行な方向の第1分力f1と、管軸心に垂直な方向の第2分力f2とに分けられる。また、第1当接箇所と第2当接箇所との間の径方向における距離を第1距離d1とし、第1当接箇所と第2当接箇所との間の管軸心方向における距離を第2距離d2とすると、第1モーメントM1はM1=f1×d1で定義され、第2モーメントM2はM2=f2×d2で定義される。
【0023】
ここで、継手部の屈曲角度を増大させるには、ロックリング収容溝の幅とロックリングの幅を短縮する必要があるため、上記第2距離d2が短くなり、上記第2モーメントM2が小さくなる。これに対して、従来の継手部の構造では、第1当接箇所は挿口の外表面上に位置しているが、本発明では、第1当接箇所は挿口の外表面上よりも径方向外方に位置しているため、上記第1距離d1が短縮され、第1モーメントM1が小さくなる。このように、本発明の継手部の構造によれば、第1モーメントM1が小さくなるため、継手部の屈曲角度を増大させることで第2モーメントM2が小さくなっても、ロックリングの内周が挿口の外周から径方向外方へ浮き上がり難くなる。
【0024】
本第2発明における継手部の構造は、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、第1当接箇所は、ロックリングとロックリング収容溝のテーパー面とが当接する第2当接箇所よりも、径方向内方に位置しているものである。
【0025】
本第3発明における継手部の構造は、挿口に離脱方向の力が作用して、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、ロックリングに、第1当接箇所を中心とする第1および第2モーメントが発生し、第1モーメントはロックリングの内周が挿口の外表面から径方向外側に離間する方向のモーメントであり、第2モーメントは第1モーメントとは逆方向のモーメントであるものである。
【0026】
本第4発明における継手部の構造は、挿口に離脱方向の力が作用して、ロックリングがロックリング収容溝のテーパー面と挿口の突部との間に挟まれたとき、テーパー面に垂直な離脱阻止力Fが第2当接箇所に作用し、離脱阻止力Fは、管軸心に平行な方向の第1分力f1と、管軸心に垂直な方向の第2分力f2とに分けられ、第1当接箇所と第2当接箇所との間の径方向における距離を第1距離d1とし、第1当接箇所と第2当接箇所との間の管軸心方向における距離を第2距離d2とすると、第1モーメントM1はM1=f1×d1で定義され、第2モーメントM2はM2=f2×d2で定義されるものである。
【0027】
本第5発明における継手部の構造は、第1モーメントは第2モーメント以下となるように設定されているものである。
【0028】
本第6発明における継手部の構造は、受口の内面にシール部材収容溝が形成され、受口内周と挿口外周との間をシールする環状のシール部材がシール部材収容溝に収容されているものである。
【0029】
本第7発明は、上記第1発明から第6発明のいずれか1項に記載の継手部の構造を用いた管の敷設方法であって、管の敷設場所に敷設用溝を形成し、挿口を受口に挿入して管同士を接続し、接続した管同士を、継手部において屈曲させながら、敷設用溝内に設置するものである。
これによると、挿口を受口に挿入して管同士を接続する接続作業が容易に行える。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明によると、継手部の屈曲角度を増大しても、ロックリングの内周が挿口の外周から径方向外方へ浮き上がり難い構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1の実施の形態における継手部の断面図である。
【
図2】同、継手部に用いられるロックリングの正面図である。
【
図4】同、継手部のロックリングに作用する力とモーメントを示す図である。
【
図5】同、継手部の断面図であり、継手部において一方の管に対して他方の管が屈曲した状態を示す。
【
図6】本発明の第2の実施の形態における継手部の一部拡大断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態における継手部の一部拡大断面図である。
【
図8】本発明の第4の実施の形態における管の敷設方法を示す図であり、(a)は地上で管同士を接続する接続作業を示し、(b)は接続した管の継手部を屈曲させて管を敷設用溝内に設置した状態を示す。
【
図10】同、継手部のロックリングに作用する力とモーメントを示す図である。
【
図11】同、継手部の断面図であり、継手部において一方の管に対して他方の管が屈曲した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1に示すように、1は一方の管2と他方の管3とを接続する継手部であり、以下のような構成を有している。尚、各管2,3には例えばダクタイル鋳鉄管を用いているが、ダクタイル鋳鉄以外の材質の管を用いてもよい。
【0033】
一方の管2の受口4に他方の管3の挿口5が挿入されている。受口4の内周面には、シール部材収容溝6とロックリング収容溝7とが形成されている。シール部材収容溝6はロックリング収容溝7よりも受口開口部12に近い位置にあり、シール部材収容溝6には、受口4の内周と挿口5の外周との間をシールするゴム製の環状のシール部材8が収納されている。
【0034】
ロックリング収容溝7の受口開口側の面は、挿口5の離脱方向Aにおいて縮径するテーパー面9として形成されている。
ロックリング収容溝7には、ロックリング10が収容されている。
図2に示すように、ロックリング10は、一箇所が切断された一つ割りの円環状の部材であり、横断面(円周方向に垂直な断面)が円形状を有している。
【0035】
挿口5の先端部の外表面5aには、突部11が全周にわたり形成されている。
突部11の受口開口側の端面11a(以下、手前端面11aと言う)は管軸心14に垂直な面である。
【0036】
挿口5はロックリング10を受口開口側から受口奥側へ貫通しており、ロックリング10は挿口5に外嵌される。
図3,
図4に示すように、ロックリング10がロックリング収容溝7のテーパー面9と挿口5の突部11との間に挟まれたとき、ロックリング10と突部11とが当接する第1当接箇所P1は、挿口5の外表面5a(外周面)よりも径方向外方に位置している。挿口5の外表面5aから第1当接箇所P1までの間には、ロックリング10と突部11とが当接しない非接触空間15が形成されている。
【0037】
また、ロックリング10とロックリング収容溝7のテーパー面9とが当接する箇所を第2当接箇所P2とする。さらに、ロックリング10の内周は挿口5の外表面5aに当接しており、この当接箇所を第3当接箇所P3とすると、第1当接箇所P1は、第2当接箇所P2よりも径方向内方に位置しているとともに、第3当接箇所P3よりも径方向外方に位置している。また、第1当接箇所P1は、ロックリング10の横断面(すなわち円形断面)の中心よりも径方向内方に位置している。
【0038】
尚、第1〜第3当接箇所P1〜P3はそれぞれ、
図3の断面図においては点で接触(点接触)しているように示されているが、実際には円周方向に長い線で接触(線接触)している。また、第1〜第3当接箇所P1〜P3において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧状である。
【0039】
以下、上記構成における作用を説明する。
図1に示すように、受口4の内周と挿口5の外周との間がシール部材8でシールされているため、両管2,3内を流れる流体が継手部1から外部に漏出するのを防止している。
【0040】
受口4に対して挿口5が離脱方向Aへ移動した際、
図3に示すように、突部11が受口奥側からロックリング10に係合することにより、挿口5が受口4から離脱するのを防止することができる。
【0041】
上記のように挿口5を受口4から離脱方向Aへ離脱させようとする離脱力が作用して、突部11がロックリング10に係合し、ロックリング10が装着時の正規の取付姿勢を保ったままでロックリング収容溝7のテーパー面9と突部11との間に挟まれたとき、
図4に示すように、ロックリング10に、第1当接箇所P1を中心とする第1および第2モーメントM1,M2が発生する。
【0042】
尚、第1モーメントM1はロックリング10の内周が挿口5の外表面5aから径方向外側に離間する方向のモーメントであり、第2モーメントM2は第1モーメントM1とは逆方向のモーメントである。
【0043】
この際、ロックリング10とロックリング収容溝7のテーパー面9とが当接する第2当接箇所P2には、テーパー面9に垂直な離脱阻止力Fが作用し、離脱阻止力Fは、管軸心114に平行な方向の第1分力f1と、管軸心114に垂直な方向の第2分力f2とに分けられる。
【0044】
また、第1当接箇所P1と第2当接箇所P2との間の径方向における距離を第1距離d1とし、第1当接箇所P1と第2当接箇所P2との間の管軸心方向における距離を第2距離d2とすると、第1モーメントM1はM1=f1×d1で定義され、第2モーメントM2はM2=f2×d2で定義される。
【0045】
ここで、
図5に示すように、継手部1の屈曲角度αを増大させるには、ロックリング収容溝7の幅Eとロックリング10の幅Gを短縮する必要があるため、
図4に示した第2距離d2が短くなり、上記第2モーメントM2が小さくなる。これに対して、
図10に示した従来の継手部の構造では、第1当接箇所P1は挿口105の外表面105a上に位置しているが、本実施の形態1では、
図4に示すように、第1当接箇所P1は挿口5の外表面5a上よりも径方向外方に位置しているため、上記第1距離d1が短縮され、第1モーメントM1が小さくなる。このように、本実施の形態1の継手部1の構造によれば、第1モーメントM1が小さくなるため、継手部1の屈曲角度α(
図5参照)を増大させることで第2モーメントM2が小さくなっても、ロックリング10の内周が挿口5の外表面105aから径方向外方へ浮き上がり難くなる。尚、この際、第1モーメントM1が第2モーメントM2以下になるように設定することにより、上記のようなロックリング10の浮き上がりを防止することができる。
【0046】
また、
図3に示すように、第1〜第3当接箇所P1〜P3において、ロックリング10の外表面が横断面視において円弧状であるため、
図5に示すように、継手部1において、受口4と挿口5とのいずれか一方が他方に対して屈曲する際、挿口5がロックリング10に対して屈曲方向に滑り易くなるとともに、受口4がロックリング10に対して屈曲方向に滑り易くなるため、容易に屈曲し得る。
【0047】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、
図3に示すように、ロックリング10の横断面を円形状にしたが、第2の実施の形態では、
図6示すように、ロックリング10の横断面を長円形状又は楕円形状にしている。
【0048】
これによると、上記第1の実施の形態と同様な作用および効果が得られる。また、ロックリング10の横断面を長円形状又は楕円形状にすることにより、横断面を円形状にした場合に比べて、ロックリング10の外径と内径との差の半分の寸法R(円形状断面の場合は円の直径に相当する寸法)を維持しつつロックリング10の横断面の面積を縮小することができる。これにより、横断面が長円形状又は楕円形状の棒鋼からなる素材を容易に円環状に曲げ加工してロックリング10を製造することができる。また、ロックリング10が少ない力で容易に拡径するため挿口5の突部11がロックリング10の内周を通過する際に必要な力(挿口挿入時の挿入力)を小さくすることができる。さらに、突部11が通過した後のロックリング10の縮径が容易となるため、挿口5の外表面5aへの抱き付き性を向上させることができる。
【0049】
尚、上記第1および第2の実施の形態では、ロックリング10の横断面の形状を円形状、長円形状、楕円形状のいずれかにしているが、これらの形状を全て含む形状を略円形状と記載すると、ロックリング10の横断面の形状は、下記第3の実施の形態のように、略円形状に限定されるものではない。
【0050】
(第3の実施の形態)
すなわち、第3の実施の形態では、
図7示すように、ロックリング21は、外周部の断面形状が長方形であり且つ内周部の断面形状が台形である、六角形の断面形状を有している。すなわち、ロックリング21は、管軸心方向において相対向する一対の端面21a,21bと、管径方向において相対向する一対の内周面21cおよび外周面21dと、一対のテーパー面21e,21fとを有している。このうち、一方のテーパー面21eは、受口開口側の端面21aから受口奥側へ向かって次第に縮径しながら内周面21cに至るように形成されている。また、他方のテーパー面21fは、受口奥側の端面21bから受口開口側へ向かって次第に縮径しながら内周面21cに至るように形成されている。
【0051】
これによると、挿口5を受口4から離脱方向Aへ離脱させようとする離脱力が作用して、突部11がロックリング21に係合し、ロックリング21がロックリング収容溝7のテーパー面9と突部11との間に挟まれたとき、ロックリング21の他方のテーパー面21fと突部11とが第1当接箇所P1において当接する。第1当接箇所P1は、挿口5の外表面5aよりも径方向外方に位置しており、挿口5の外表面5aから第1当接箇所P1までの間に、非接触空間15が形成される。また、ロックリング10には、第1当接箇所P1を中心とする第1および第2モーメントM1,M2が発生する。
【0052】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、以下のような方法で管を敷設する。すなわち、
図8(a)に示すように、管の敷設場所の地面23を掘削して、敷設用溝24を形成する。その後、敷設用溝24の外部である地上において、内部にシール部材8およびロックリング10を装着した受口4に、挿口5を挿入して、一方の管2と他方の管3とを接続する。このようにして接続した管2,3同士を、
図8(b)に示すように、継手部1において屈曲させながら、下に降ろし、敷設用溝24内に設置する。
【0053】
これによると、
図8(a)に示すように、作業者は、挿口5を受口4に挿入して管2,3同士を接続する接続作業を、地上(すなわち敷設用溝24の外部)から行うことができる。このため、作業者が敷設用溝24内に入って接続作業を行う場合に比べて、接続作業が容易に行える。
【0054】
尚、上記第4の実施の形態では、挿口5を受口4に挿入して管2,3同士を接続する接続作業を地上で行っているが、この接続作業を敷設用溝24内の上部で行ってもよい。この場合においても、作業者は、敷設用溝24内に入らずに、上記接続作業を地上から行うことができるため、上記接続作業が容易に行える。
【符号の説明】
【0055】
1 継手部
2,3 管
4 受口
5 挿口
5a 外表面
6 シール部材収容溝
7 ロックリング収容溝
8 シール部材
9 テーパー面
10,21 ロックリング
11 突部
14 管軸心
15 非接触空間
24 敷設用溝
A 離脱方向
d1 第1距離
d2 第2距離
F 離脱阻止力
f1 第1分力
f2 第2分力
M1 第1モーメント
M2 第2モーメント
P1 第1当接箇所
P2 第2当接箇所