特開2016-223472(P2016-223472A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2016-223472ヨーク、ヨークの製造方法およびシャフトとヨークとの結合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223472(P2016-223472A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ヨーク、ヨークの製造方法およびシャフトとヨークとの結合構造
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/26 20060101AFI20161205BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20161205BHJP
   F16D 1/08 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F16D3/26 X
   F16D3/20 J
   F16D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-107688(P2015-107688)
(22)【出願日】2015年5月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】光洋機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183450
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 太知
(72)【発明者】
【氏名】東 賢司
(72)【発明者】
【氏名】辻 直貴
(72)【発明者】
【氏名】花谷 和浩
(72)【発明者】
【氏名】根津 俊洋
(57)【要約】
【課題】耐久性を確保しつつ、シャフトとの結合強度の向上を図れるヨーク、このヨークの製造方法、および、シャフトとヨークとの結合構造を提供すること。
【解決手段】ヨーク20Aは、軸方向Xに沿って周上1箇所にスリット33が形成された筒状部30と、筒状部30に設けられ、スリット33を挟んで対向する一対の締付部35とを含む。筒状部30は、内軸15の外周面15Aの雄セレーション22に噛み合うための雌セレーション34が形成された内周面30Aを有する。一対の締付部35は、スリット33を横切るボルト55が組み付けられることによって互いに接近して内周面30Aを内軸15に締め付ける。筒状部30の内周面30Aの曲率中心Pは、スリット33から離れる側へ筒状部30の外周面30Cの曲率中心Qからずれている。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周面の雄セレーションに噛み合うための雌セレーションが形成された内周面を有する筒状部であって、前記筒状部の軸方向に沿って前記筒状部の周上1箇所にスリットが形成された筒状部と、
前記筒状部に設けられ、前記スリットを挟んで対向する一対の締付部であって、前記スリットを横切る締結部材が組み付けられることによって互いに接近して前記内周面を前記シャフトに締め付けるための一対の締付部とを含み、
前記筒状部の内周面の曲率中心は、前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面の曲率中心からずれていることを特徴とする、ヨーク。
【請求項2】
ヨークの展開図に相当する形状の金属板をプレス加工で折り曲げることによって、周上1箇所にスリットが形成された筒状部を形成する工程と、
前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面の曲率中心からずれた位置に曲率中心を有する内周面を前記筒状部に形成する工程と、
前記内周面に雌セレーションを形成する工程とを含むことを特徴とする、ヨークの製造方法。
【請求項3】
雄セレーションが形成された外周面を有するシャフトと、前記シャフトにセレーション嵌合するヨークとの結合構造であって、
前記ヨークは、
前記雄セレーションに噛み合うための雌セレーションが形成された内周面を有する筒状部であって、前記筒状部の軸方向に沿って前記筒状部の周上1箇所にスリットが形成された筒状部と、
前記筒状部に設けられ、前記スリットを挟んで対向する一対の締付部であって、前記スリットを横切る締結部材が組み付けられることによって互いに接近して前記内周面を前記シャフトに締め付けるための一対の締付部とを含み、
前記筒状部の内周面の曲率中心は、前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面の曲率中心からずれていることを特徴とする、シャフトとヨークとの結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自在継手に用いられるヨーク、このヨークの製造方法、および、シャフトとヨークとの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1に開示されたヨークは、断面がU字状の基端部を有し、この基端部は、互いに離隔して配置された一対の抑え板部を有する。一方の抑え板部にはねじ孔が形成され、他方の抑え板部には通孔が形成されている。一対の抑え板部のそれぞれの内側面は、互いに平行な抑え面である。互いに平行な一対の外側平面を有するシャフトの先端部を基端部内に挿入した後に、ボルトを通孔に挿通してねじ孔に組み付けると、一対の抑え板部の抑え面同士の間隔が狭まってシャフトの先端部の外側平面に強く当接する。これにより、シャフトの先端部がヨークの基端部に結合される。
【0003】
特許文献1に開示されたヨークでは、連結部において一対の抑え板部を連結する円弧形の連結部の中間部に溝を設けることで、この中間部を薄肉部としている。これにより、連結部の曲げ剛性が低下するので、ボルトをねじ孔に組み付けたときに抑え面を外側平面に密着させることによって、ヨークとシャフトとの結合強度の確保が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−2339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたヨークは、薄肉部の位置において局所的に脆弱になっていることから、薄肉部を起点として破損し得るので、耐久性の低下が懸念される。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、耐久性を確保しつつ、シャフトとの結合強度の向上を図れるヨーク、このヨークの製造方法、および、シャフトとヨークとの結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、シャフト(15、16)の外周面(15A、16B)の雄セレーション(22、23)に噛み合うための雌セレーション(34)が形成された内周面(30A)を有する筒状部(30)であって、前記筒状部の軸方向(X)に沿って前記筒状部の周上1箇所にスリット(33)が形成された筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記スリットを挟んで対向する一対の締付部(35)であって、前記スリットを横切る締結部材(55)が組み付けられることによって互いに接近して前記内周面を前記シャフトに締め付けるための一対の締付部とを含み、前記筒状部の内周面の曲率中心(P)は、前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面(30C)の曲率中心(Q)からずれていることを特徴とする、ヨーク(20A、21A)である。
【0007】
請求項2記載の発明は、ヨークの展開図に相当する形状の金属板(50)をプレス加工で折り曲げることによって、周上1箇所にスリットが形成された筒状部を形成する工程と、前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面の曲率中心からずれた位置に曲率中心を有する内周面を前記筒状部に形成する工程と、前記内周面に雌セレーションを形成する工程とを含むことを特徴とする、ヨークの製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、雄セレーションが形成された外周面を有するシャフトと、前記シャフトにセレーション嵌合するヨークとの結合構造(25、26)であって、前記ヨークは、前記雄セレーションに噛み合うための雌セレーションが形成された内周面を有する筒状部であって、前記筒状部の軸方向に沿って前記筒状部の周上1箇所にスリットが形成された筒状部と、前記筒状部に設けられ、前記スリットを挟んで対向する一対の締付部であって、前記スリットを横切る締結部材が組み付けられることによって互いに接近して前記内周面を前記シャフトに締め付けるための一対の締付部とを含み、前記筒状部の内周面の曲率中心は、前記スリットから離れる側へ前記筒状部の外周面の曲率中心からずれていることを特徴とする、シャフトとヨークとの結合構造である。
【0009】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0010】
請求項1および3記載の発明によれば、ヨークでは、スリットが形成された筒状部にシャフトを挿入した後に、筒状部においてスリットを挟んで対向する一対の締付部に締結部材を組み付けると、これらの締付部が互いに接近することによって筒状部の内周面がシャフトに締め付けられる。これにより、筒状部の内周面の雌セレーションがシャフトの外周面の雄セレーションに噛み合うことによって、ヨークとシャフトとが結合する。
【0011】
筒状部の内周面の曲率中心は、スリットから離れる側へ筒状部の外周面の曲率中心からずれているので、筒状部においてスリットとは反対側の部分(以下では「反対側部分」と呼ぶことにする)は、スリットから離れるのに従って滑らかに肉薄になっている。そのため、反対側部分には、局所的に(換言すれば、極端に)脆弱になった部分が存在しない。よって、ヨークでは、耐久性を確保できる。
【0012】
このような筒状部では、肉薄になった反対側部分が変形しやすいので、一対の締付部に締結部材を組み付けると、反対側部分が大きく変形することによって、筒状部の内周面をシャフトに強固に締め付けることができる。これにより、筒状部の内周面の雌セレーションとシャフトの外周面の雄セレーションとが強固に噛み合うので、ヨークとシャフトとの結合強度の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1および3記載のヨークを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、ステアリング装置における中間軸およびこの周囲の部分を抜き出して示した図である。
図3図3は、ヨークの斜視図である。
図4図4は、ヨークの材料となる金属板を示す図である。
図5図5は、金属板からヨークを製造する工程を示す模式図である。
図6図6は、図5の次の工程を示す模式図である。
図7図7は、図6の次の工程を示す模式図である。
図8図8は、図7の次の工程を示す模式図である。
図9図9は、図2のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、たとえば、操舵部材2と、入力軸3と、自在継手4と、インターミディエイトシャフトとも呼ばれる中間軸5と、自在継手6と、ピニオン軸7と、ラックバー8と、ラックハウジング9とを主に含んでいる。
【0016】
操舵部材2として、たとえば、ステアリングホイールを用いることができる。操舵部材2には、入力軸3の一端が連結されている。入力軸3の他端と中間軸5の一端とが自在継手4によって連結されている。中間軸5の他端とピニオン軸7の一端とが自在継手6によって連結されている。ピニオン軸7の他端にはピニオン7Aが一体的に設けられている。
ラックバー8は、車幅方向(図1の左右方向)に長手の棒状である。ラックバー8には、ピニオン7Aと噛み合うラック8Aが形成されており、ピニオン軸7およびラックバー8によってラックアンドピニオン機構が構成されている。ラックバー8は、ラックハウジング9内に挿通され、ラックハウジング9によって、軸受等(図示せず)を介して支持されている。この状態で、ラックバー8は、車幅方向にスライド可能である。ラックバー8の両端部は、ラックハウジング9の両外側へ突出しており、ラックバー8の各端部には、タイロッド10が連結されている。タイロッド10は、ナックルアーム(図示せず)を介して転舵輪11に連結されている。
【0017】
操舵部材2が操舵されて入力軸3が回転されると、ピニオン軸7も回転し、ピニオン軸7の回転がピニオン7Aおよびラック8Aによって、車幅方向に沿ったラックバー8の直線運動に変換される。これにより、ラックバー8の両側の転舵輪11の転舵が達成される。
図2は、ステアリング装置1における中間軸5およびこの周囲の部分を抜き出して示した図である。図2では、一部を断面で示している(ハッチングを付した部分を参照)。図2を参照して、中間軸5は、シャフトの一例としての内軸15および外軸16を含んでいる。内軸15および外軸16のそれぞれは、金属製である。内軸15の外周面15Aには、複数の雄セレーション17が形成されている。外軸16は、中空体であり、その内周面16Aには、複数の雌セレーション18が形成されている。雄セレーション17と雌セレーション18が噛み合うことによって、内軸15と外軸16とは、同軸状に連結され、中間軸5の軸方向Xに沿って摺動可能かつトルク伝達可能にセレーション嵌合している。そのため、中間軸5は、軸方向Xに伸縮可能である。
【0018】
内軸15の外周面15Aの一端部15Bには、雄セレーション17とは別の雄セレーション22が全周に亘って形成されている。自在継手4を構成する一対のヨーク20における一方のヨーク20Aが、雄セレーション22にセレーション嵌合している。この状態の一端部15Bおよびヨーク20Aは、結合構造25を構成している。外軸16の外周面16Bの一端部16Cには、全周に亘って雄セレーション23が形成されている。自在継手6を構成する一対のヨーク21における一方のヨーク21Aが、雄セレーション23にセレーション嵌合している。この状態の一端部16Cおよびヨーク21Aは、結合構造26を構成している。
【0019】
以下では、結合構造25について説明するが、結合構造26も、結合構造25と同じである。そのため、結合構造26において結合構造25の構成部材と同じ構成部材には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
ヨーク20Aは、金属製である。ヨーク20Aは、図2において内軸15寄りに位置する筒状部30と、図2において内軸15とは反対側に位置する一対の腕部31とを一体的に含んでいる。
【0020】
筒状部30は、中空体であり、この実施形態では、略円筒状である。図2では、筒状部30の軸方向と、中間軸5の軸方向Xとは同じである。
ヨーク20Aの斜視図である図3を参照して、筒状部30には、その内部空間として筒状部30を軸方向Xに貫通した略円形状の挿通穴32が形成されている。筒状部30の周上1箇所には、スリット33が形成されている。スリット33は、軸方向Xに沿って筒状部30の周上1箇所を切断している。これにより、挿通穴32は、筒状部30から軸方向Xの両側へ露出されるだけでなく、スリット33からも露出されている。筒状部30において挿通穴32を区画する内周面30Aの全域には、雌セレーション34が形成されている。
【0021】
スリット33が設けられるのに応じて、筒状部30におけるスリット33の両側には、一対の締付部35が一体的に設けられている。一対の締付部35は、軸方向Xに沿って平行に延びる板状であり、スリット33を挟んで対向している。以降では、一対の締付部35のうち、一方(図3における左側)を締付部35Aとし、他方(図3における右側)を締付部35Bと区別することがある。また、一対の締付部35が互いに対向する方向を、対向方向Yと呼ぶことにする。軸方向Xと対向方向Yとは互いに直交している。
【0022】
締付部35Aには、対向方向Yに沿って締付部35Aを貫通した挿通穴36が形成され、締付部35Bには、対向方向Yに沿って締付部35Bを貫通したねじ穴37が形成されている。挿通穴36およびねじ穴37は、対向方向Yから見て重なっている。なお、締付部35Aにねじ穴37が形成されて締付部35Bに挿通穴36が形成されても構わない。
一対の腕部31のそれぞれは、対向方向Yに薄い板状であり、筒状部30に一体的に設けられている。腕部31は、筒状部30において中間軸5から遠い側の端部30B(図2も参照)において、筒状部30の周方向Zで180度隔てた位置に1つずつ設けられており、筒状部30から離れる方向へ向けて軸方向Xに沿って延び出ている。一対の腕部31は、一対の締付部35と同様に、対向方向Yに対向配置されている。そのため、一対の腕部31の隙間38と、一対の締付部35の隙間(つまり、スリット33)とは、軸方向Xに沿って連続している。また、筒状部30の挿通穴32は、一対の腕部31の隙間38に向けて露出されている。
【0023】
一対の腕部31のそれぞれにおいて筒状部30から離れた先端部には、腕部31を貫通した円形状の嵌込穴39が形成されている。図2を参照して、嵌込穴39には、自在継手4を構成する十字軸40において同一直線上に配置される一対の軸部40Aが嵌め込まれる。ヨーク20Aは、一対のヨーク20における残りのヨーク20Bに対して、十字軸40を介して連結される。なお、ニードル状の転動体を有する軸受カップ(図示せず)が嵌込穴39に嵌め込まれて、軸部40Aが軸受カップによって回動自在に支持されてもよい。
【0024】
次に、ヨーク20Aの製造方法について説明する。
まず、たとえば鋼板をプレス加工で打ち抜く等によって、図4に示すようにヨーク20Aの展開図に相当する形状の金属板50を準備する。金属板50は、筒状部30に相当する第1領域50Aと、一対の腕部31に相当する第2領域50Bとを含み、金属板50には、挿通穴36、ねじ穴37および嵌込穴39が予め形成されている。金属板50の板厚は、全域においてほぼ一定である。
【0025】
次いで、図5に示すように、円柱状の治具51を第1領域50Aに載せる。そして、第1領域50Aが治具51を包み込むように、金属板50の全体をプレス加工で折り曲げる。これによって、図6に示すように、周上1箇所にスリット33が形成された筒状部30と、一対の腕部31とが形成される。この際、筒状部30におけるスリット33の両側の部分が一段絞られることによって、スリット33の両側に締付部35が形成される。その後に、治具51が取り除かれる。図6に示すようにプレス加工の直後の筒状部30では、その厚さTが、周方向Zにおける全域においてほぼ一定であり、筒状部30の外周面30Cは、周方向Zに沿って湾曲した円弧状に形成されている。
【0026】
次に、図7に示すように、内周面30Aの曲率中心Pがスリット33から離れる側へ筒状部30の外周面30Cの曲率中心Qからずれた位置に配置されるように、切削加工や研削加工等により、筒状部30の内周面30Aを形成する。筒状部30においてスリット33とは反対側の部分を反対側部分30Dと呼ぶことにすると、反対側部分30Dは、周方向Zでスリット33から180度隔てた位置にある。スリット33から離れる側とは、反対側部分30Dに接近する側である。外周面30Cの曲率中心Qは、金属板50をプレス加工で折り曲げる際における折り曲げ中心である。
【0027】
最後に、図8に示すように、ブローチ加工等を用いたセレーション加工により筒状部30の内周面30Aの全域に雌セレーション34を形成すると、ヨーク20Aが完成する。内周面30Aの曲率中心Pは、雌セレーション34の加工中心(加工に用いる切削工具の軸中心)である。なお、雌セレーション34が形成された後で曲率中心Pを定義する場合には、雌セレーション34において隣り合う山部の頂点をつなぐ仮想の曲面の曲率中心が、曲率中心Pである。
【0028】
図2のA−A矢視断面図である図9を参照して、中間軸5の内軸15の一端部15Bは、筒状部30の挿通穴32に挿入されている。結合構造25に含まれる締結部材の一例としてのボルト55が、締付部35Aの挿通穴36に挿通されてスリット33を横切り、締付部35Bのねじ穴37にねじ込まれている。このように締付部35Aおよび締付部35Bに組み付けられたボルト55が締め付けられることによって、一対の締付部35が互いに接近して挿通穴32が狭まるので、筒状部30の内周面30Aが内軸15に締め付けられている。これにより、筒状部30の内周面30Aの雌セレーション34が内軸15の外周面15Aの雄セレーション22に噛み合うことによって、ヨーク20Aが内軸15に結合している。
【0029】
図7および図8に示すように、筒状部30の内周面30Aの曲率中心Pは、スリット33から離れる側へ筒状部30の外周面30Cの曲率中心Qからずれているので、筒状部30においてスリット33とは反対側の反対側部分30Dは、スリット33から離れるのに従って滑らかに肉薄になっている。つまり、筒状部30の肉厚T(図7参照)は、周方向Zに沿ってスリット33から周方向Zにおける反対側部分30Dの中央部へ向かうにつれて徐々に薄くなっている。そのため、反対側部分30Dには、局所的に脆弱になった部分が存在しない。よって、ヨーク20Aでは、耐久性を確保できる。なお、雌セレーション34が形成される前の段階を基準として、反対側部分30Dにおいて最も肉薄になった部分(中央部30E)の肉厚T1は、反対側部分30D以外における筒状部30の肉厚T2に比べて1mm以上薄いことが好ましい(図7参照)。ちなみに、金属板50をプレス加工で折り曲げる際に反対側部分30Dを滑らかに肉薄になるように成形することは、技術的に困難である。
【0030】
このような筒状部30では、肉薄になった反対側部分30Dが起点となって変形しやすいので、図9に示すように、一対の締付部35にボルト55を組み付けると、反対側部分30Dが大きく変形することによって、筒状部30の内周面30Aを内軸15に強固に締め付けることができる。これにより、筒状部30の雌セレーション34と内軸15の雄セレーション22とが強固に噛み合うので、ヨーク20Aと内軸15との結合強度(換言すれば、雌セレーション34による内軸15の保持力)の向上を図れる。なお、図9においてヨーク20Aと内軸15とが結合した状態においても、筒状部30の内周面30Aの曲率中心Pは、引き続き、スリット33から離れる側へ筒状部30の外周面30Cの曲率中心Qからずれている。
【0031】
このように、ヨーク20Aでは、反対側部分30Dが肉薄になることによって軽量化を図れるし、全体の肉厚を薄くせずに反対側部分30Dだけを肉薄にすることで、ヨーク20Aの耐久強度を確保したまま、前述した保持力を向上できる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0032】
たとえば、ヨーク21(ヨーク21Aおよびヨーク21B)やヨーク20Bも、ヨーク20Aと同じ構成であってもよい。また、結合構造25および26は、中間軸5以外のシャフトにも適用できるし、ステアリング装置1以外の装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
15…内軸、15A…外周面、16…外軸、16B…外周面、20A…ヨーク、21A…ヨーク、22…雄セレーション、23…雄セレーション、25…結合構造、26…結合構造、30…筒状部、30A…内周面、30C…外周面、33…スリット、34…雌セレーション、35…締付部、50…金属板、55…ボルト、P…曲率中心、Q…曲率中心、X…軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9