特開2016-223487(P2016-223487A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223487(P2016-223487A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置の組立て方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20161205BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 43/04 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F16C33/78 Z
   F16C19/38
   F16C43/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-108453(P2015-108453)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 淑人
【テーマコード(参考)】
3J016
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J016AA02
3J016AA03
3J016BB03
3J016CA03
3J117AA10
3J117HA02
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701FA46
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】密封装置のサイドリップとスリンガとの間のしめしろの過不足の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の容易な組立て方法を提供する。
【解決手段】外輪部材10と、ハブフランジ22を有するハブ軸20と、転動体40と、外輪部材10とハブ軸20との間の軸受内部空間2のハブフランジ22側の開口部を密封する密封装置50と、を有し、密封装置50は、スリンガ60と、シール部53と、からなり、スリンガ60は、円筒部61と、円盤部62とを有し、シール部53は、サイドリップ58を有し、サイドリップ58の円盤部22側の端部59は、円盤部62の側面65に摺接する車輪用軸受装置1、の組立て方法であって、軸方向の幅Bが、適正なしめしろを得るために設定された、円盤部62の側面66と、ハブフランジ22の側面25との間隔Lに等しく、円周方向に複数に分割された円環状の位置決め冶具120を用い、スリンガ60を装着する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に外輪軌道が形成された外輪部材と、
外周に内輪軌道が形成され、軸方向一方側の端部に半径方向外方に拡径して延在するハブフランジを有するハブ軸と、
前記外輪部材の外輪軌道および前記ハブ軸の内輪軌道の間で転動する複数の転動体と、
前記外輪部材と前記ハブ軸との間の軸受内部空間の前記ハブフランジ側の開口部を密封する密封装置と、を有し、
前記密封装置は、金属製のスリンガと、金属製の芯金と合成ゴム製のシール部を有するシール部材と、を有し、
前記スリンガは、前記ハブ軸の前記内輪軌道と前記ハブフランジの間の肩外周面に圧入される円筒部と、前記円筒部の前記ハブフランジ側の端部から径方向外方に拡径する円盤部とを有し、
前記シール部は、前記円盤部に対向し、前記円盤部の方向に拡径するサイドリップを有し、
前記サイドリップの前記円盤部側の端部は、前記円盤部の前記シール部側の側面に適正なしめしろをもって摺接する
車輪用軸受装置の組立て方法であって、
軸方向の幅が、前記適正なしめしろを得るために設定された、前記円盤部の前記ハブフランジ側の側面と前記ハブフランジの前記スリンガ側の側面との間隔に等しく、円周方向に複数に分割された円環状の位置決め冶具を用い、
前記位置決め冶具を、前記位置決め冶具の軸方向一方側の側面を前記ハブフランジの前記スリンガ側の側面に当接して配置し、
前記スリンガの前記円盤部の前記ハブフランジ側の側面を、前記位置決め冶具の軸方向他方側の側面に当接させて、前記スリンガを装着することを特徴とする車輪用軸受装置の組立て方法。
【請求項2】
前記位置決め冶具は、円周2分割された円環状であり、円周2分割された前記位置決め冶具を、それぞれ、前記ハブ軸に対し、半径方向に対称方向に移動して配置することを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置の組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に使用する車輪用軸受装置の組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に使用する車輪用軸受装置においては、外輪部材と内輪部材との間の軸受内部空間にグリースなど潤滑剤が封入されている。また、前記軸受内部空間に泥水や異物が侵入すると、グリースが劣化したり、構成部品に錆が発生し、軸受の寿命が短くなる。このため、前記車輪用軸受装置においては、前記軸受内部空間からグリースが漏洩することを防止するため、また、外部からの泥水や異物が進入することを防止するため、密封装置が設けられている。
【0003】
車輪用軸受装置用の密封装置として、通称パックシールと称されるハブ用シールが知られている。前記ハブ用シールは、シール部材と、スリンガとを有する。前記シール部材は、前記外輪部材の端部開口部に固定される。前記シール部材は、サイドリップとラジアルリップの少なくとも2つのシールリップを有する。前記スリンガは、前記内輪部材のスリンガ嵌合面に固定される。前記スリンガは、断面がL字形状で、円筒部と平板部を有する。(特許文献1参照)
【0004】
前記ハブ用シールにおいて、前記サイドリップは、前記スリンガの平板部の前記内部空間側の側面に摺接し、前記ラジアルリップは、前記スリンガの前記円筒部の外周に摺接する。前記シール部材と前記スリンガは、前記シール部材の前記軸受内部空間と反対側の端部と、前記スリンガの前記軸受内部空間と反対側の側面を同時に押圧して、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間の開口部に装着される。
【0005】
通常、前記ハブ用シールにおいて、前記サイドリップと、前記スリンガの平板部の前記内部空間側の側面の間のしめしろは、前記シール部材の前記軸受内部空間と反対側の端部と、前記スリンガの前記軸受内部空間と反対側の側面を、同一平面上に配置したとき、適正なしめしろとなるよう設定されている。
【0006】
車輪用軸受装置として、外輪部材の車両インナー側に、車体への取付けフランジを有し、内輪部材であるハブ軸の車両アウター側に車輪取付け用のハブフランジを有する第3世代ユニットタイプの車輪用軸受装置がある。
前記ハブ用シールを前記第3世代ユニットタイプの車輪用軸受装置の前記軸受内部空間の車両アウター側の開口部に装着する場合、前記シール部材と前記スリンガを同時に車両アウター側から押圧して、装着する事はできない。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−291485号公報
【特許文献2】特開2007−127243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記第3世代ユニットタイプの車輪用軸受装置の車両アウター側に装着される前記ハブ用シールの組立て工程においては、前記スリンガは、前記シール部材とは別に、予め前記ハブ軸に単独で装着される。しかし、前記ハブ軸上に、前記スリンガを、軸方向の位置を規制する手段を有しない構造においては、前記スリンガを、前記ハブ軸上の軸方向に正確な位置に固定する事は難しい。このため、前記ハブ用シールでは、前記サイドリップと前記スリンガとの間の軸方向のしめしろに過不足が生じ、車輪用軸受装置の密封装置として十分な密封性能を得ることができないことがある。
【0009】
本発明は、組立て工程における密封装置のサイドリップとスリンガとの間の軸方向のしめしろの過不足の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の容易な組立て方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、内周に外輪軌道が形成された外輪部材と、外周に内輪軌道が形成され、軸方向一方側の端部に径方向外方に拡径して延在するハブフランジを有するハブ軸と、前記外輪部材の外輪軌道および前記ハブ軸の内輪軌道の間で転動する複数の転動体と、前記外輪部材と前記ハブ軸との間の軸受内部空間の前記ハブフランジ側の開口部を密封する密封装置と、を有し、前記密封装置は、金属製のスリンガと、金属製の芯金と合成ゴム製のシール部を有するシール部材と、を有し、前記スリンガは、前記ハブ軸の前記内輪軌道と前記ハブフランジの間の肩外周面に圧入される円筒部と、前記円筒部の前記ハブフランジ側の端部から径方向外方に拡径する円盤部とを有し、前記シール部は、前記円盤部に対向し、前記円盤部の方向に拡径するサイドリップを有し、前記サイドリップの前記円盤部側の端部は、前記円盤部の前記シール部側の側面に適正なしめしろをもって摺接する車輪用軸受装置の組立て方法であって、軸方向の幅が、前記適正なしめしろを得るために設定された、前記円盤部の前記ハブフランジ側の側面と、前記ハブフランジのスリンガ側の側面との間隔に等しく、円周方向に複数に分割された円環状の位置決め冶具を用い、前記位置決め冶具を、前記位置決め冶具の軸方向一方側の側面を前記ハブフランジの前記スリンガ側の側面に当接して配置し、前記スリンガの前記円盤部の前記ハブフランジ側の側面を、前記位置決め冶具の軸方向他方側の側面に当接させて、前記スリンガを装着することである。
【0011】
本発明の組立て方法は、軸方向一方側すなわち車両アウター側に半径方向外方に拡径して延在するハブフランジを有し、軸受内部空間の前記ハブフランジ側すなわち車両アウター側の開口部を密封する密封装置の組立て方法に係る。前記密封装置において、前記シール部はサイドリップを有し、前記サイドリップの前記スリンガの円盤部側すなわち車両アウター側の端部は、前記スリンガの前記円盤部の前記シール部側すなわち車両インナー側の側面に、軸方向のしめしろをもって摺接する。
【0012】
また、前記軸方向のしめしろが適正なしめしろとなるよう、前記スリンガの前記円盤部の車両アウター側の側面と、前記ハブフランジの前記スリンガ側すなわち車両インナー側の側面との間隔が設定されている。本発明の組立て方法における、前記ハブ軸に前記スリンガを装着する工程において、冶具は、軸方向の幅が、前記円盤部の車両アウター側の側面と、前記ハブフランジの車両インナー側の側面との間隔に等しい位置決め冶具を用いる。
【0013】
前記スリンガは、前記位置決め冶具を、前記位置決め冶具の一方側の側面を前記ハブフランジの車両インナー側の側面に当接して配置し、前記スリンガを、車両アウター側に移動することで、前記ハブ軸の前記肩外周面に圧入される。前記スリンガの装着は、前記スリンガを、車両アウター側に移動して、前記スリンガの前記円盤部の車両アウター側の側面が、前記位置決め冶具の軸方向他方側の側面に当接すると完了する。
【0014】
前記スリンガの前記円盤部の車両アウター側の側面と、前記ハブフランジの車両インナー側の側面との間隔は、このように前記スリンガを前記ハブ軸に圧入することで、正確に保たれ、ばらつきが生じない。
このため、前記ハブ軸に前記スリンガを装着する工程において、前記サイドリップの車両アウター側の端部と、前記スリンガの前記円盤部の車両インナー側の側面との間に、軸方向のしめしろの過不足が発生することを防止できる。
【0015】
また、前記位置決め冶具は円周方向に複数に分割されているため、それぞれの前記位置決め冶具は、半径方向に移動可能である。このため、前記スリンガの装着が完了した後、それぞれの前記位置決め冶具を半径方向外方に移動して、容易に前記ハブ軸上から離脱させることができる。
【0016】
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記位置決め冶具は、円周2分割された円環状であり、円周2分割された前記位置決め冶具を、それぞれ、前記ハブ軸に対し、半径方向に対称方向に移動して配置することである。
【0017】
本発明の組立て方法によれば、前記位置決め冶具は、円周2分割された円環状であり、前記位置決め冶具を、構造の簡単な移動手段によって、前記ハブフランジの車両インナー側の側面上を、より容易に半径方向に移動させ着脱することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、組立て工程における密封装置のサイドリップとスリンガとの間のしめしろの過不足の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の容易な組立て方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置の断面図である。
図2】本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置の密封装置の拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する説明図である。
図4】本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に用いる位置決め冶具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施の形態を、以下図面を参照して説明する。図1図2において右側が車両アウター側(以下アウター側と称す)、左側が車両インナー側(以下インナー側と称す)を示している。図3図4においては下側がアウター側、上側がインナー側を示している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置1の軸方向の断面図である。図2図1の本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置1の密封装置の拡大断面図である。
図1図2において車輪用軸受装置1は、外輪部材10と、ハブ軸20と、内輪30と、複数の転動体としての玉40と、2個の保持器41と、を有する。
【0022】
外輪部材10は、内周に2列の外輪軌道11、12が形成されている。ハブ軸20は、外周に第1内輪軌道21が形成されている。内輪30は、外周に第2内輪軌道31が形成さている。2列の複数の転動体としての玉40は、外輪部材10の一方の外輪軌道11とハブ軸20の第1内輪軌道21の間、および、外輪部材10の他方の外輪軌道22と内輪30の第2内輪軌道31の間で転動する。2個の保持器41は、前記2列の複数の玉40を所定の間隔で保持する。
【0023】
ハブ軸20の外周および内輪30の外周と、外輪部材10の内周と、の間で軸受内部空間2が構成される。潤滑剤としてのグリースが軸受内部空間2に充填されている。軸受内部空間2は、ハブフランジ22側すなわちアウター側の開口部に配置された密封装置50と、外輪部材10のインナー側の端部に固定されたキャップ70と、で外部空間から画定されている。
【0024】
外輪部材10はS55C等の合金鋼からなる。外輪部材10は、環状体で、外周のインナー側端部に半径方向外方に拡径して、軸受装置1を車体部材90に取付けるための固定フランジ13を有し、固定フランジ13からアウター側に向けて、外輪外周面15が形成されている。複数の通し穴14が、固定フランジ13に設けられている。複数の通し穴14は、取付け用ボルト91が貫通される。外輪部材10の内周には、アウター側に第1の外輪軌道11が、インナー側に第2の外輪軌道12が形成されている。
【0025】
外輪部材10のアウター側の端部は、外輪端面18である。シール嵌合面19が外輪部材10の内周のアウター側の端部に形成されている。
【0026】
ハブ軸20はS55C等の合金鋼からなる。ハブ軸20は、外周の軸方向一方側端部すなわちアウター側端部に半径方向に拡径して、ハブフランジ22を有している。ハブフランジ22には、ブレーキディスク92とホイール93を固定する複数のハブボルト94が埋め込まれている。図1において、ブレーキディスク92とホイール93が車輪用軸受装置1に取付けられている。
【0027】
内輪嵌合面23が、ハブ軸20の外周の軸方向他方側の端部すなわちインナー側端部に形成されている。内輪嵌合面23は、ハブ軸20の外周の軸方向一方側の隣接する外周面に対して小さい径を有する。ハブフランジ22と内輪嵌合面23の中間の外周には第1内輪軌道21が形成されている。第1内輪軌道21と、ハブフランジ22のインナー側の基部との間の肩外周面は、軸線に平行な円筒形状であり、スリンガ圧入面24である。スリンガ対向面25がスリンガ圧入面24のアウター側端部から拡径するスリンガ側の側面に形成されている。スリンガ対向面25は、軸線に直角な平面である。
【0028】
内輪30はSUJ2等の軸受鋼からなる環状体である。内輪30は、外周の軸線方向中央に第2内輪軌道31が形成され、内周に第2内輪軌道31と同心の内径面32が形成されている。内輪30は、内径面32をハブ軸20の内輪嵌合面23に外嵌し、一方の端面をハブ軸20のインナー側端部のかしめによって圧着されて、ハブ軸20に固定されている。
【0029】
密封装置50は、シール部材51とスリンガ60とで構成されている。シール部材51は、芯金52および芯金52と一体に加硫成形されたシール部53からなる。芯金52は金属製で、鋼板等の金属からなる環状体である。芯金52は、外輪部材10のシール嵌合面19に内嵌する円筒部54と、円筒部54のインナー側端部から縮径して延在する平板部55を有している。
【0030】
シール部53は、合成ゴム製で、NBR等の合成ゴムからなる。シール部53は、芯金52の平板部55の径方向内方の、インナー側に補助リップ56、アウター側にメインリップ57を有し、平板部55のアウター側にはアウター側方向に拡径するサイドリップ58が形成されている。
シール部材51は、芯金52の円筒部54を外輪部材10のシール嵌合面19に内嵌して外輪部材10に固定されている。
【0031】
スリンガ60は金属製で、ステンレス鋼板等の金属板からなる。スリンガ60は、断面形状がL字型の環状体で、円筒部61と、円筒部61の一方側の端部から拡径して延在する円盤部62を有している。円筒部61の内周は軸嵌合面63となっている。軸嵌合面63の直径は、ハブ軸20のスリンガ圧入面24の直径より僅かに小さい。円筒部61の外周はシール部53のメインリップ57が摺接するラジアル摺接面64となっている。円筒部61のインナー側端面は軸線に直角な平面であるインナー端面67となっている。
【0032】
円盤部62のシール部53側すなわちインナー側の側面は、シール部53のサイドリップ58が摺接するサイドリップ摺接面65となっている。
円盤部62のハブフランジ22側すなわちアウター側の側面はスリンガ外側面66となっている。スリンガ60は、軸嵌合面63をハブ軸20の第1内輪軌道21とハブフランジ22の間の肩外周面24に外嵌してハブ軸20に装着されている。
【0033】
シール部材51の補助リップ56およびメインリップ57の内周先端部はスリンガ60のラジアル摺接面64に摺接している。シール部材51のサイドリップ58は、円盤部62側すなわちアウター側の先端部59がスリンガ60のサイドリップ摺接面65にしめしろをもって摺接している。このとき、スリンガ60のスリンガ外側面66から、ハブ軸20のスリンガ対向面25までの軸方向の距離Lは、サイドリップ58の先端部59と、スリンガ60のサイドリップ摺接面65との間のしめしろが、所定の適正なしめしろΔとなるよう設定されている。
【0034】
図3は本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する説明図である。
図4は本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に用いる位置決め冶具の平面図であり、図4図3のA−A矢視を示している。
本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法の特徴は、スリンガ60のハブ軸30への装着方法にある。以下図2図3図4に基づき本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法の特徴である、スリンガ60のハブ軸30への装着方法について説明する。
【0035】
位置決め冶具120は鋼材からなる。位置決め冶具120は、図3図4に示すように、半円形に2分割された円盤であり、それぞれ2個の分割面124を有している。位置決め冶具120の両側面は、軸線に直角な第1平面121および第2平面122となっている。第1平面121および第2平面122の間隔、すなわち、位置決め冶具120の軸方向の幅Bは、スリンガ60のスリンガ外側面66からハブ軸20のスリンガ対向面25までの距離Lに等しい。距離Lは前述のごとく、サイドリップ58の先端部59と、スリンガ60のサイドリップ摺接面65との間のしめしろが、所定の適正なしめしろΔとなる、スリンガ外側面66からスリンガ対向面25までの距離である。
【0036】
位置決め冶具120内周面123の直径は、ハブ軸30のスリンガ取付け面24の直径より大きい。分割された位置決め冶具120の外周には、それぞれ1箇所の移動連結手段125が形成されている。移動連結手段25は、図示しない位置決め冶具移動手段に連結され、前記位置決め冶具移動手段によって、位置決め冶具120は、軸線に直角な平面上を半径方向に対称方向に移動可能となっている。
【0037】
圧入冶具110は鋼材からなる有底のカップ状の環体である。圧入冶具110は、開放側の先端部に軸線に直角な平面であるスリンガ押圧面111が形成されている。スリンガ押圧面112の内周の直径は、スリンガ60の円筒部61の軸嵌合面63の直径より僅かに大きい。また、圧入冶具110の底側の端部には軸線に直角な平面で受圧面115が形成されている。
【0038】
以下、本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て手順を説明する。
図3に示すように、ハブフランジ22、内輪軌道31、内輪圧入面23、スリンガ圧入面24等、すべての単体としての加工が完了したハブ軸30は、ハブフランジ22のアウター側の側面25をベース100の上面101に接して、ベース100に据付ける。
【0039】
次に、分割されたそれぞれの位置決め冶具120を、第1平面121を、ハブフランジ22のスリンガ対向面25に当接して、ハブ軸30の半径方向外方対称位置にセットする。次に、図示しない移動手段によって、それぞれの位置決め冶具120を、第1平面121を、ハブフランジ22のスリンガ対向面25に当接しした状態で、半径方向内方に移動する。位置決め冶具120の内周123をハブ軸30のスリンガ取付け面24に対向し、それぞれの対向する分割面124が接した状態で、位置決め冶具120の移動を停止し、位置決め冶具120の配置を完了する。
【0040】
次に、部品供給ロボット等の図示しないスリンガ保持、移動手段を用いて、スリンガ60を供給し、スリンガ60の軸嵌合面63のアウター側の端部が、ハブ軸20のスリンガ圧入面24のインナー側の端部に接した状態に配置する。
【0041】
圧入冶具110を、図示しない圧入冶具移動手段によって、ハブ軸20のインナー側上方から、軸線に添ってハブ軸20のアウター側方向に移動する。次に、押圧ピンドル120をアウター側方向に伸長し、圧入冶具110のスリンガ押圧面111がスリンガ60のインナー端面67に接するまで、圧入冶具110をアウター側方向に移動する。さらに、圧入冶具110をアウター側方向に移動し、スリンガ60をアウター側方向に押圧することにより、スリンガ60の軸嵌合面63が、ハブ軸20のスリンガ圧入面24上をアウター側に移動し、スリンガ60の圧入が行われる。
【0042】
圧入冶具110をアウター側方向への移動し、スリンガ60のスリンガ外側面66が、位置決め冶具120の第2平面122に当接すると、前記の図示しないシリンダを停止する。前記シリンダを停止すると、押圧スピンドル116の伸長および圧入冶具110の移動は停止し、スリンガ60のハブ軸20への装着は完了する。
【0043】
スリンガ60の装着が完了すると、押圧スピンドル116を軸線方向にインナー側方向に収縮させ、圧入冶具110を、図示しない移動手段によって、軸線方向インナー側方向に移動した後、ハブ軸20から遠ざける。さらに、位置決め冶具120を、ハブ軸20に配置した手順と逆の手順で、ハブ軸20から離脱する。
【0044】
上述のごとく、本発明の一実施形態によれば、スリンガ60の装着後のスリンガ60の円盤部62のスリンガ外側面66と、ハブフランジ22のスリンガ対向面25との間隔は位置決め冶具120の軸方向の幅Bと等しく、正確に保たれる。ここで、位置決め冶具120の軸方向の幅Bは、サイドリップ58のアウター側の端部59と、スリンガ60の円盤部62のサイドリップ摺接面65との間の適正なしめしろΔを得るために設定された、円盤部62のスリンガ外側面66と前記ハブフランジ22のスリンガ対向面25との間隔Lに等しい。
【0045】
すなわち、密封装置50組立て完了後の、サイドリップ58のアウター側の端部59と、スリンガ60の円盤部62のサイドリップ摺接面65との間のしめしろは、所定の適正なしめしろΔに略等しくなり、ハブ軸20にスリンガ60を装着する工程によって、前記しめしろの過不足が発生することを防止できる。
【0046】
また、位置決め冶具120は、円周2分割された円環状であり、構造の簡単な移動手段によって、ハブフランジ22のインナー側のスリンガ対向面25上を、容易に半径方向に移動させ着脱することができる。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、組立て工程における密封装置50のサイドリップ58とスリンガ60との間のしめしろの過不足の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置1の容易な組立て方法を提供することができる。
【0048】
上述の実施形態では、位置決め冶具120は半円形に2分割されているが、この発明では、位置決め冶具120は、円周方向に4分割等他の円周方向の分割数に分割されていても良い。
【0049】
上述の実施形態では、圧入冶具110は、有底のカップ状の環体であるが、この発明では、圧入冶具110は、円周上複数に分割された環状体であってもよい。また、上述の実施形態では、圧入冶具110は、スリンガ押圧面111がスリンガ60のインナー端面67を押圧する形式であるが、この発明では、圧入冶具110は、スリンガ押圧面111がスリンガ60のサイドリップ摺接面65を押圧する形式等他の形式であっても良い。
【0050】
上述の実施形態では、転動体はボールであるが、この発明では、転動体は円すいころ等の他の形式の転動体であっても良い。
【0051】
上述の実施形態では、ハブ軸20と内輪30は、ハブ軸20の端部のかしめで一体化されているが、この発明では、ハブ軸20と内輪30はナット締結等、他の結合手段で一体化される形式であっても良い。
【0052】
上述の実施形態では、密封装置50は、補助リップ56、メインリップ57および1個のサイドリップ58を有しているが、この発明では、サイドリップの個数が異なる形式や、メインリップを有しない形式等、他の形式の密封装置であっても良い。
【0053】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは当然である。
【符号の説明】
【0054】
1 ‥ 軸受装置(車輪用軸受装置)
10 ‥ 外輪部材
11 ‥ 外輪軌道
2 ‥ 軸受内部空間
20 ‥ ハブ軸
21 ‥ 第1内輪軌道(内輪軌道)
22 ‥ ハブフランジ
24 ‥ スリンガ嵌合面(肩外周面)
25 ‥ スリンガ対向面(側面)
40 ‥ ボール(転動体)
50 ‥ 密封装置
51 ‥ シール部材
52 ‥ 芯金
53 ‥ シール部
54 ‥ サイドリップ
60 ‥ スリンガ
61 ‥ 円筒部
62 ‥ 円盤部
65 ‥ サイドリップ摺接面(側面)
66 ‥ スリンガ外側面(側面)
120 ‥ 位置決め冶具
121 ‥ 第1側面(側面)
122 ‥ 第2側面(側面)
図1
図2
図3
図4