特開2016-223489(P2016-223489A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223489(P2016-223489A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】車両用パーキングロック装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20161205BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F16H63/34
   B60T1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-108521(P2015-108521)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】八下田 智明
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB11
3J067DB02
3J067EA75
3J067FA05
3J067FA57
3J067FB01
3J067FB76
3J067FB85
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】 簡単な構造であって軸方向の寸法がコンパクトな車両用パーキングロック装置を提供する。
【解決手段】 係合防止機構29は、パーキングギヤ12の歯底12dから径方向内側に延びる貫通孔12eと、貫通孔12eの径方向内側に連続する空間部12cと、貫通孔12eに径方向摺動自在に支持されたピン27と、空間部12cに配置されてピン27を径方向内側に付勢する弾性体28とを備えるので、回転軸11の回転に伴う遠心力でピン27は弾性体28の弾発力に抗してパーキングギヤ12の歯溝12a内に突出し、パーキングポール14がパーキングギヤ12の歯溝12aに不正に係合するのを防止することができる。しかもピン27および弾性体28をパーキングギヤ12の軸方向厚さの範囲内に配置できるので、簡単な構造でパーキングロック装置の軸方向寸法をコンパクト化することができる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に接続する回転軸(11)に固設されたパーキングギヤ(12)と、前記パーキングギヤ(12)の歯溝(12a)に係合して前記回転軸(11)の回転を拘束可能なパーキングポール(14)と、車両の走行中に前記パーキングポール(14)が前記パーキングギヤ(12)の歯溝(12a)に係合するのを防止する係合防止機構(29)とを備える車両用パーキングロック装置であって、
前記係合防止機構(29)は、前記パーキングギヤ(12)の歯底(12d)から径方向内側に延びる貫通孔(12e)と、前記貫通孔(12e)の径方向内側に連続する空間部(12c)と、前記貫通孔(12e)に径方向摺動自在に支持されたピン(27)と、前記空間部(12c)に配置されて前記ピン(27)を径方向内側に付勢する弾性体(28)とを備え、前記回転軸(11)の回転に伴う遠心力で前記ピン(27)は前記弾性体(28)の弾発力に抗して前記パーキングギヤ(12)の歯溝(12a)内に突出することを特徴とする車両用パーキングロック装置。
【請求項2】
前記ピン(27)および前記弾性体(28)を前記パーキングギヤ(12)の全ての歯溝(12a)に対応して設けたことを特徴とする、請求項1に記載の車両用パーキングロック装置。
【請求項3】
前記回転軸(11)の回転数が所定値以上のとき、前記ピン(27)の先端部(27b)は前記パーキングギヤ(12)の歯先円に整列する位置に突出することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用パーキングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪に接続する回転軸に固設されたパーキングギヤと、前記パーキングギヤの歯溝に係合して前記回転軸の回転を拘束可能なパーキングポールと、車両の走行中に前記パーキングポールが前記パーキングギヤの歯溝に係合するのを防止する係合防止機構とを備える車両用パーキングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中に運転者が誤ってシフトレバーをパーキングポジションに投入すると、回転するパーキングギヤの歯先にパーキングポールが弾かれて騒音や衝撃が発生する問題がある。この問題を解決するために、変速機の回転軸と一体に回転するプレート部材にウエイト部材を揺動自在に支持し、回転軸およびプレート部材の回転に伴う遠心力でウエイト部材が揺動するとプレート部材が回転軸の軸方向に移動し、プレート部材に連動して移動するストッパがパーキングポールの移動経路に突出することで、車両の走行中にパーキングポールがパーキングギヤに不正に係合するのを防止するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−97764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものは、パーキングギヤに隣接する位置にプレート部材、ウエイト部材、ストッパ等の部品を配置する必要があるため、パーキングロック装置の構造が複雑になるだけでなく軸方向寸法が大型化する問題があった。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、簡単な構造であって軸方向の寸法がコンパクトな車両用パーキングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動輪に接続する回転軸に固設されたパーキングギヤと、前記パーキングギヤの歯溝に係合して前記回転軸の回転を拘束可能なパーキングポールと、車両の走行中に前記パーキングポールが前記パーキングギヤの歯溝に係合するのを防止する係合防止機構とを備える車両用パーキングロック装置であって、前記係合防止機構は、前記パーキングギヤの歯底から径方向内側に延びる貫通孔と、前記貫通孔の径方向内側に連続する空間部と、前記貫通孔に径方向摺動自在に支持されたピンと、前記空間部に配置されて前記ピンを径方向内側に付勢する弾性体とを備え、前記回転軸の回転に伴う遠心力で前記ピンは前記弾性体の弾発力に抗して前記パーキングギヤの歯溝内に突出することを特徴とする車両用パーキングロック装置が提案される。
【0007】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1に構成に加えて、前記ピンおよび前記弾性体を前記パーキングギヤの全ての歯溝に対応して設けたことを特徴とする車両用パーキングロック装置が提案される。
【0008】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記回転軸の回転数が所定値以上のとき、前記ピンの先端部は前記パーキングギヤの歯先円に整列する位置に突出することを特徴とする車両用パーキングロック装置が提案される。
【0009】
尚、実施の形態のコイルスプリング28は本発明の弾性体に対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、車両用パーキングロック装置は、駆動輪に接続する回転軸に固設されたパーキングギヤと、パーキングギヤの歯溝に係合して回転軸の回転を拘束可能なパーキングポールと、車両の走行中にパーキングポールがパーキングギヤの歯溝に係合するのを防止する係合防止機構とを備える。係合防止機構は、パーキングギヤの歯底から径方向内側に延びる貫通孔と、貫通孔の径方向内側に連続する空間部と、貫通孔に径方向摺動自在に支持されたピンと、空間部に配置されてピンを径方向内側に付勢する弾性体とを備えるので、回転軸の回転に伴う遠心力でピンは弾性体の弾発力に抗してパーキングギヤの歯溝内に突出し、パーキングポールがパーキングギヤの歯溝に不正に係合するのを防止することができる。しかもピンおよび弾性体をパーキングギヤの軸方向厚さの範囲内に配置できるので、簡単な構造でパーキングロック装置の軸方向寸法をコンパクト化することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、ピンおよび弾性体をパーキングギヤの全ての歯溝に対応して設けたので、ピンおよび弾性体を設けたことによりパーキングギヤの回転軸まわりの重量バランスが崩れることがなくなり、回転軸の回転に伴う振動の発生を防止することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、回転軸の回転数が所定値以上のとき、ピンの先端部はパーキングギヤの歯先円に整列する位置に突出するので、車両の走行中にパーキングロックを作動させようとすると、パーキングポールがパーキングギヤの歯先およびピンの先端部を滑ることで、騒音や衝撃の発生を防止することができるだけでなく、パーキングポールやパーキングギヤの摩耗・変形等のダメージを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】パーキングロック装置の全体構造を示す図。
図2図1の2部拡大図(ロック阻止状態)。
図3図2の3−3線断面図。
図4図2に対応する図(ロック許可状態)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
先ず、図1に基づいてパーキングロック装置の全体構造を説明する。
【0016】
駆動輪に接続された自動変速機の回転軸11にパーキングギヤ12が固定されており、支軸13に枢支されたパーキングポール14の一端に設けた係止爪14aが、パーキングギヤ12の歯溝12a…から離脱する方向にスプリング15で付勢される。支軸16に枢支されたディテントプレート17にパーキングロッド18の一端がピン19で枢支されており、パーキングロッド18の他端に設けたコーン状のカム20がパーキングポール14の他端に設けたカムフォロア14bとケーシングに固定したホルダ21とに当接する。揺動可能なアーム22の一端に設けられたディテントローラ23が、ディテントプレート17の2個の凹部17a,17bの何れか一方に係合する方向にスプリング24により付勢される。支軸16に枢支されてディテントプレート17と一体に揺動するリンク25が、図示せぬ油圧アクチュエータに接続されて駆動される。
【0017】
図2および図3に示すように、パーキングギヤ12の一側面には回転軸11を中心とする円形の凹部12bが形成されており、この凹部12bと同心に円板状のストッパ26を固定することで、凹部12bの外周に沿って環状の空間部12cが形成される。パーキングギヤ12の各歯底12dから径方向内側に延びる貫通孔12eが空間部12cに連通しており、貫通孔12eにピン27が径方向摺動自在に嵌合する。ピン27の径方向内端には直径が拡大した頭部27aが設けられており、ピン27は頭部27aが空間部12cの外周壁に当接する位置と、頭部27aが空間部12cの内周壁に当接する位置との間で径方向に移動可能である。
【0018】
ピン27の頭部27aと空間部12cの外周壁との間にコイルスプリング28が縮設されており、このコイルスプリング28の弾発力でピン27は径方向内側に付勢される。ピン27が最も径方向内側に移動し、頭部27aが空間部12cの内周壁に当接したとき、ピン27の先端部27bはパーキングギヤ12の歯溝12a内に僅かに露出するが、歯溝12aに嵌合するパーキングポール14の係止爪14aとの間には僅かな隙間α(図4参照)が形成される。またピン27が最も径方向外側に移動してコイルスプリング28が完全に圧縮されたとき、ピン27の先端部27bはパーキングギヤ12の歯先12f…を通る歯先円上に整列する。ピン27およびコイルスプリング28は、本発明の係合防止機構29を構成する。
【0019】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1において、運転者がシフトレバーをパーキングポジションに操作すると電子制御ユニットからの指令で油圧アクチュエータが作動し、ディテントプレート17が支軸16まわりに時計方向に回転することで、パーキングロッド18が矢印A方向に押される。その結果、パーキングロッド18の先端に設けられたカム20がパーキングポール14のカムフォロワ14bおよびホルダ21間に挿入され、パーキングポール14がスプリング15の弾発力に抗して支軸13まわりに反時計方向に揺動することで、パーキングポール14の係止爪14aがパーキングギヤ12の何れかの歯溝12aに係合してパーキングロックが作動する(図4参照)。
【0021】
運転者がシフトレバーをパーキングポジションから他のポジションに操作すると電子制御ユニットからの指令で油圧アクチュエータが作動し、ディテントプレート17が支軸16まわりに反時計方向に回転することで、パーキングロッド18が矢印A′方向に引かれる。その結果、パーキングロッド18の先端に設けられたカム20がパーキングポール14のカムフォロワ14bおよびホルダ21間から離脱し、パーキングポール14がスプリング15の弾発力で支軸13まわりに時計方向に揺動することで、パーキングポール14の係止爪14aがパーキングギヤ12の歯溝12aから離脱してパーキングロックが解除される。
【0022】
パーキングロックが解除しているとき、ディテントプレート17の凹部17aにディテントローラ23が係合することで、ディテントプレート17がパーキングロック解除位置に安定的に保持される。またパーキングロックが作動しているとき、ディテントプレート17の凹部17bにディテントローラ23が係合することで、ディテントプレート17がパーキングロック作動位置に安定的に保持される。
【0023】
パーキングロック装置は、本来は車両が停止状態にあってパーキングギヤ12が回転していないときに作動するものであるが、車両が完全に停止する前に運転者が誤ってシフトレバーをパーキングポジションに操作すると、パーキングポール14の係止爪14aが回転するパーキングギヤ12の歯先12f…に弾かれて不快な騒音や振動が発生する可能性がある。
【0024】
しかしながら、本実施の形態によれば、車両が完全に停止せずにパーキングギヤ12が所定速度以上で回転しているときに、図2および図3に示すように、係合防止機構29の各ピン27がそれに作用する遠心力で径方向外側に付勢され、コイルスプリング28を圧縮しながら先端部27bがパーキングギヤ12の歯先12f…を通る歯先円に整列する位置まで突出するため、パーキングギヤ12の歯溝12a…に係合すべく移動したパーキングポール14の係止爪14aがパーキングギヤ12の歯先12f…およびピン27…の先端部27b…に沿って滑ることで、パーキングポール14の係止爪14aがパーキングギヤ12の歯溝12a…に不正に係合することが防止されて騒音や振動の発生が抑制されるだけでなく、パーキングポール14やパーキングギヤ12の摩耗・変形等のダメージを抑制することができる。
【0025】
車両が極低速で移動しているときにはパーキングロックを作動させても支障はないが、このときには各ピン27に作用する遠心力が小さいため、図4に示すように、ピン27の先端部27bはパーキングギヤ12の歯先円よりも径方向内側に後退しており、パーキングポール14の係止爪14aはパーキングギヤ12の歯溝12a…に係合することが可能である。
【0026】
以上のように、本実施の形態によれば、車両が所定値以上の速度で走行しているときには、係合防止機構29によってパーキングポール14の係止爪14aがパーキングギヤ12の歯溝12a…に不正に係合するのを防止することができる。しかもピン27およびコイルスプリング28よりなる簡単な構造の係合防止機構29は、パーキングギヤ12の軸方向厚さの範囲内に配置されるため、係合防止機構29を設けたことによってパーキングロック装置の軸方向寸法が大型化することが防止される。
【0027】
またピン27およびコイルスプリング28よりなる係合防止機構29をパーキングギヤ12の全ての歯溝12a…に対応して設けたので、ピン27…およびコイルスプリング28…を設けたことによりパーキングギヤ12の回転軸11まわりの重量バランスが崩れることがなくなり、回転軸11の回転に伴う振動の発生を防止することができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0029】
例えば、実施の形態ではパーキングポール14が油圧アクチュエータにより作動するが、電動モータや運転者のマニュアル操作で作動するものであっても良い。
【0030】
また本発明の弾性体は実施の形態のコイルスプリング28に限定されず、他種のスプリング等の任意の弾性体であっても良い。
【符号の説明】
【0031】
11 回転軸
12 パーキングギヤ
12a 歯溝
12c 空間部
12d 歯底
12e 貫通孔
14 パーキングポール
27 ピン
27b 先端部
28 コイルスプリング(弾性体)
29 係合防止機構
図1
図2
図3
図4