特開2016-223505(P2016-223505A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
<>
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000003
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000004
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000005
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000006
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000007
  • 特開2016223505-ラジアル玉軸受 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223505(P2016-223505A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】ラジアル玉軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/42 20060101AFI20161205BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F16C33/42 A
   F16C19/16
   F16C33/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-109375(P2015-109375)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】矢野 一
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA37
3J701BA45
3J701BA47
3J701BA50
3J701BA53
3J701BA54
3J701BA56
3J701EA01
3J701FA31
3J701FA41
(57)【要約】
【課題】アキシャル荷重が負荷される用途で使用されるラジアル玉軸受において、保持器を組み付けるときに、その組付装置と肩との干渉を回避して、肩高さを高くする。
【解決手段】外輪11及び内輪12は、それぞれ軸方向の両側で肩の高さが互いに異なっている。保持器18は、玉13を挟持する複数の一対の玉保持部33,34と、前記玉保持部33,34をそれぞれ周方向につなぐ複数の一対の平板部35,36とを有するとともに、対向する一対の平板部35,36の各々が互いに結合されている。平板部35,36は、径方向外方に向かうにしたがって、外輪11の肩高さが高い方の肩Aに向かって軸方向に傾斜している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、
前記外輪の内側で、前記外輪と同軸に配置された内輪と、
前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の玉と、
前記玉を周方向に所定の間隔で保持する保持器と、を有し、
軸方向両側で前記外輪の肩高さが互いに異なるとともに、軸方向両側で前記内輪の肩高さが互いに異なるラジアル玉軸受において、
前記保持器は、前記玉を挟持する複数の一対の玉保持部と、前記一対の玉保持部をそれぞれ周方向につなぐ複数の一対の平板部とを有するとともに、対向する前記一対の平板部の各々が互いに結合されており、
前記一対の平板部は、径方向外方に向かうにしたがって、前記外輪の肩高さが高い方の肩に向かって軸方向に傾斜しているラジアル玉軸受。
【請求項2】
前記保持器が金属製である請求項1に記載するラジアル玉軸受。
【請求項3】
対向する前記一対の平板部の各々がリベットによって結合されている、請求項2に記載するラジアル玉軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアル玉軸受に関するものである。特に、ラジアル荷重とともにアキシャル荷重を支持することが出来るラジアル玉軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
軸を回転支持する用途では、転がり軸受が使用される。この転がり軸受には、回転軸に作用する荷重が主として径方向の荷重(以下「ラジアル荷重」という)である場合には、ラジアル玉軸受(深溝玉軸受ともいう)が使用されている。一方、回転軸に作用する荷重が軸方向の荷重(以下「アキシャル荷重」という)である場合や、ラジアル荷重とアキシャル荷重が同時に作用する場合には、アンギュラ玉軸受を2個組み合わせたものが使用されている。
【0003】
しかし、ラジアル玉軸受は、玉と軌道面との接触点に形成される接触領域が軌道面からはみ出さない限り、ある程度の大きさまでのアキシャル荷重を支持することが出来る。このため、アキシャル荷重が比較的小さいときには、ひとつのラジアル玉軸受を組み込むだけでラジアル荷重とアキシャル荷重を同時に支持出来るので、転がり軸受を組み込むためのスペースを小さくすることが出来る。このため、ラジアル玉軸受のアキシャル荷重を支持する能力(「アキシャル荷重の負荷容量」という)を高くすることは、回転軸を有する装置を小型化するための手段として有効である。
【0004】
アキシャル荷重に対する負荷容量を高くするためには、肩の高さを高くして接触領域が軌道面からはみ出さないようにする必要がある。肩とは、軌道面とつながって軸方向両外側に形成されている円筒形状の面であり、肩の高さとは、軌道底と肩との径方向の寸法差をいう。この肩の高さを、以下、単に「肩高さ」という。
アキシャル荷重の作用する向きが一方向の場合には、その作用する側の肩高さを高くすれば、ラジアル玉軸受のアキシャル荷重に対する負荷容量を効果的に高くすることが出来る。例えば、自動車のトランスミッション装置におけるカウンター軸などでは、ギアの歯のねじれ方向によってアキシャル荷重の向きが定まっている。転がり軸受の組込スペースを削減することによってトランスミッション装置を小型化したり軽量化することが出来るので、ラジアル玉軸受でありながら大きなアキシャル荷重を支持出来る転がり軸受が期待されていた。
【0005】
特許文献1では、アキシャル荷重が作用する側の肩高さを高くしたラジアル玉軸受100として、図6に示す形態が開示されている。このラジアル玉軸受100の外輪101では、図6において、右側の肩106の肩高さが左側の肩108の肩高さより高くなっており、内輪を図の右方向に付勢するアキシャル荷重を支持することが出来るとしている。
しかしながら、ラジアル玉軸受100を組み立てるときには、一般的に、外輪101及び内輪102と玉103とをあらかじめ組み立てた後で、保持器104が組み込まれる。鉄製の保持器104を使用した場合には、最終の組立工程でリベット107をかしめている。図6では、リベット107をかしめるときのかしめパンチ105の配置を一点鎖線で示している。肩106の肩高さを高くすることによって、肩106とかしめパンチ105とが近接する。このため、特許文献1のラジアル玉軸受100では、クロスハッチングを付した領域Zにおいてかしめパンチ105と肩106とが干渉する虞がある。
【0006】
こうして、特許文献1に開示されている形態のラジアル玉軸受100では、かしめパンチ105との干渉を避けるために肩106の肩高さが制限されるので、従来の一般的なラジアル玉軸受と比較して、アキシャル荷重に対する負荷容量を大幅に向上させることが出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−145795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ラジアル荷重とともにアキシャル荷重が負荷される用途で使用されるラジアル玉軸受において、保持器を組み付けるときの組付装置と肩との干渉を回避して、アキシャル荷重が作用する側の肩高さを高くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかるラジアル玉軸受は、外輪と、前記外輪の内側で、前記外輪と同軸に配置された内輪と、前記外輪と前記内輪との間に配置された複数の玉と、前記玉を周方向に所定の間隔で保持する保持器と、を有し、軸方向両側で前記外輪の肩高さが互いに異なるとともに、軸方向両側で前記内輪の肩高さが互いに異なるラジアル玉軸受において、前記保持器は、前記玉を挟持する複数の一対の玉保持部と、前記一対の玉保持部をそれぞれ周方向につなぐ複数の一対の平板部とを有するとともに、対向する前記一対の平板部の各々が互いに結合されており、前記一対の平板部は、径方向外方に向かうにしたがって、前記外輪の肩高さが高い方の肩に向かって軸方向に傾斜している。
【発明の効果】
【0010】
本発明のラジアル玉軸受は、保持器の平板部が傾斜しているので、肩高さを高くした場合でも、保持器の組付装置と肩との干渉を回避することが出来る。このため、従来のラジアル玉軸受と比較して、アキシャル荷重が作用する側の肩高さを高くすることが出来る。この結果、アキシャル荷重の負荷容量を大幅に向上させたラジアル玉軸受を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態であるラジアル玉軸受の正面図である。
図2図1のラジアル玉軸受の部分断面図である。
図3】本実施形態の保持器の形状を説明する斜視図である。
図4】本実施形態のラジアル玉軸受の組立方法を説明するための模式図である。
図5】比較例のラジアル玉軸受の組立方法を説明するための模式図である。
図6】従来のラジアル玉軸受の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図を用いて、本発明の一実施形態(以下「本実施形態」という)について説明する。
図1は、本実施形態のラジアル玉軸受10の正面図である。図2は、ラジアル玉軸受10を図1のX−Xの位置で軸方向に切断して矢印Xの向きに見たときの上側の断面形状を示す部分断面図である。
図1に示すように、ラジアル玉軸受10は、円環状の外輪11と、外輪11より小径で円環状の内輪12とが同軸に組み合わされていて、外輪11と内輪12との間に複数の玉13が組み込まれている。以下、特に断らない場合は、外輪11及び内輪12の軸の方向を軸方向といい、軸を中心としてその周りを回る方向を周方向という。
【0013】
外輪11は、軸受鋼で製作されている。図2に示すように、内周には、外側軌道面15が軸方向の略中央に全周にわたって形成されている。外側軌道面15は、軸方向断面では円弧形状である。この円弧の曲率半径は、玉13の外周面の曲率半径よりわずかに大きく設定されている。外側軌道面15の軸方向両外側に、肩A及び肩Bが形成されている。肩A及び肩Bは、いずれも外側軌道面15と同軸の円筒形状であって、その内径寸法は互いに異なっている。内径寸法が小さい方の肩を肩Aとし、他方を肩Bとする。なお、外輪11の軌道底15aと肩A及び肩Bとの径方向の寸法差Ha,Hbを、それぞれ肩A及び肩Bの肩高さという。軌道底15aは、外側軌道面15のうちで径方向の最も外方の点である。肩Bは、外側軌道面15と軸方向における反対側で、外輪11の端面24に向かって拡径するテーパ面22とつながっている。
【0014】
内輪12は、軸受鋼で製作されている。外周には、内側軌道面16が軸方向の略中央に全周にわたって形成されている。軸方向の断面における内側軌道面16の形状は円弧である。この円弧の曲率半径は、玉13の外周面の曲率半径よりわずかに大きく設定されている。内側軌道面16の軸方向両外側に、それぞれ肩C及び肩Dが形成されている。肩C及び肩Dは、いずれも内側軌道面16と同軸の円筒形状であって、外径寸法は互いに異なっている。外径寸法が小さい方の肩を肩Cとし、他方を肩Dとする。肩C及び肩Dの肩高さをそれぞれHc及びHdとする。
内側軌道面16の軸方向の一方の端は肩Cとつながっており、他方の端は肩Dとつながっている。肩Cは、内側軌道面16と軸方向における反対側で、内輪12の端面25に向かって直径寸法が縮小するテーパ面23とつながっている。
【0015】
玉13は、外側軌道面15と内側軌道面16との間に転動自在に配置されている。本実施形態では、玉13は9個組み込まれている(図1参照)。玉13は、保持器18によって周方向に略等間隔に保持されている。保持器18の形態については、その組立方法と合わせて後で詳細に説明する。
【0016】
こうして、外輪11と内輪12とを同軸に組み合わせたときに、外輪11の内周と内輪12の外周との間に形成される環状空間Gは、玉13を挟んで軸方向の両側で互いに径方向の寸法が異なっている。肩Aの側の環状空間Gは、肩Aの内周と肩Cの外周との間に形成され、肩Bの側の環状空間Gは肩Bの内周と肩Dの外周との間に形成されている。肩Aの肩高さHaが肩Bの肩高さHbより高く、肩Cの肩高さHcが肩Dの肩高さHdより低いので、肩Aの側の環状空間Gは、肩Bの側の環状空間Gに比べて径方向の寸法が小さくなっている。
【0017】
図2によって、本実施形態のラジアル玉軸受10が、ラジアル荷重とともにアキシャル荷重を支持するときの、玉13と各軌道面15,16との接触状態について説明する。
【0018】
ラジアル荷重Frが作用するときには、内輪12が図中で上向きに示した矢印の向きに付勢される。このとき、玉13と外輪11及び内輪12は、外側軌道面15の軌道底15a及び内側軌道面16の軌道底16aで互いに接触している。玉13と外側軌道面15とが接触する点を接触点P1とし、玉13と内側軌道面16とが接触する点を接触点P2とする。
【0019】
ラジアル荷重Frに加えてアキシャル荷重Faが作用したときには、内輪12が図中で水平方向に示した矢印の向きに付勢される。このときには、図2に示すように、外輪11側の接触点P1は、肩Aに近づく側に変位し(接触点P3とする)、内輪12側の接触点P2は、肩Dに近づく側に変位する(接触点P4とする)。
なお、内輪12側の接触点P2及びP4は、玉13の中心Oに対して外輪11側の接触点P1及びP3と反対の位置に形成される。また、内輪12と玉13との接触状態は、外輪11側の接触状態と同様であるので、以下の説明では外輪11と玉13との接触状態についてのみ説明する。
【0020】
玉13と外側軌道面15はいずれも鋼製であり、弾性を有している。そのため、例えば接触点P3では、接触面が弾性変形して楕円形の接触領域Eが形成される。外側軌道面15の法線方向からみたときの接触領域Eの形状の例を、玉13の中心Oから接触点P3に向かう線の延長線上に示す。過大なアキシャル荷重Faが作用したときには、接触領域Eの位置がさらに肩Aに接近するとともに、接触領域Eの面積が大きくなる。
仮に、アキシャル荷重Faが作用する側の肩高さ(ここでは肩Aの肩高さHaである)が十分に高く設定されていない場合を考える。この場合には、接触領域Eが外側軌道面15から肩Aの側にはみ出す虞がある。接触領域Eが外側軌道面15からはみ出した時には、外側軌道面15と肩Aとをつなぐエッジ部と玉13とが接触して、応力集中によって大きな接触応力が生じる。この結果、玉13の表面に傷がついたり、外側軌道面15に圧痕が生じたりするので、回転中に異音が生じたり、軌道面に剥離を生じたりする等の不具合が発生する。このように、接触領域Eが軌道面からはみ出す現象を「肩乗り上げ」という。
しかし、本実施形態では、肩Aの肩高さHaを高くしているので、肩Aに向かって大きなアキシャル荷重Faが作用した場合においても、接触領域Eが外側軌道面15からはみ出すのを防止することが出来る。
【0021】
また、ラジアル荷重Frが作用した時の接触領域Eは、軌道底15aを中心にして、肩A及び肩Bに向けて広がっている。本実施形態では、肩Bの内径寸法を外側軌道面15の軌道底15aの直径寸法より小さくすることによって、軌道底15aから肩Bの側に向けて外側軌道面15が形成されている。肩Bの内径寸法を適宜選択することによって、軌道底15aから肩Bまでの外側軌道面15の大きさを適宜設定することが出来る。外側軌道面15の大きさを接触領域Eの大きさより大きく設定することによって、接触領域Eが肩Bに乗り上げるのを防止出来る。なお、軌道底15aから肩Aの側では、肩高さが高いので、ラジアル荷重Frが作用した時に接触領域Eが肩Aに乗り上げることはない。
内輪12側の玉13との接触状態については説明を省略したが、内側軌道面16においても外側軌道面15と同様に、ラジアル荷重Fr及びアキシャル荷重Faを支持することが出来る。
【0022】
こうして、本実施形態のラジアル玉軸受10は、ラジアル荷重Frが負荷されたときには、玉13が、外側軌道面15及び内側軌道面16の軌道底15a,16aと接触して、その荷重を支持することが出来る。そして、アキシャル荷重Faが作用する側の肩高さHa,Hdを高くしているので、所定の方向のアキシャル荷重Faが作用したときにおいても、その荷重を支持することが出来る。
【0023】
保持器18について図2及び図3を参照しつつ説明する。図3は、図1におけるX−Xの位置で切断して矢印Xの向きに見たときの保持器18の形態を示す斜視図である。
図3に示すように、保持器18は、第1円環部31と第2円環部32とがリベット29で一体に固定されている。各円環部31,32は、それぞれ略円環状で、互いに軸方向に隣接して配置され、玉13を軸方向に挟持する向きに組み合わされている。玉13を挟持する球状の空間39をポケットという。図3では、ポケット39の位置を図の上から順にB1,B2,・・・と表示している。玉13の組込状態を示すために、B1とB5の位置のポケット39に玉13が組み込まれた状態を図示している。実際のラジアル玉軸受10では、各ポケット39に玉13がひとつずつ組み込まれている。
【0024】
第1円環部31と第2円環部32は、それぞれ薄肉の炭素鋼鋼板をプレス成形することによって製作されている。
【0025】
第1円環部31には、周方向に玉13の数と同数の第1玉保持部33が形成されていて、各第1玉保持部33は互いに第1平板部35によって周方向に連結されている。第1玉保持部33は、半球状で、軸方向外方(図3では右方である)に向かうにしたがって径方向内方に傾斜する向きに突出している。
【0026】
図2に示すように、第1平板部35は、径方向外方に向かうにしたがって軸方向の第1玉保持部33が突出する向きに傾斜している。各第1平板部35には、周方向並びに径方向のほぼ中央の位置で、第1平板部35の厚さ方向に貫通する第1リベット穴37が形成されている。第1リベット穴37の中心線mは、ラジアル玉軸受10の軸線n上の一点(図示を省略)に集まる向きに形成されている。
第1円環部31の外周面31a及び内周面31bは、それぞれ中心線mと平行な直線を母線とする円すい面で形成されている。
【0027】
第2円環部32には、周方向に玉13の数と同数の第2玉保持部34が形成されていて、各第2玉保持部34は互いに第2平板部36によって周方向に連結されている。第2玉保持部34は、半球状で、第1玉保持部33とは軸方向の反対向きに突出している。
第2平板部36は、径方向外方に向かうにしたがって軸方向の第2玉保持部34が突出する向きとは反対の向きに傾斜している。第2平板部36が径方向に対して傾斜する角度θは、第1平板部35が傾斜する角度θとほぼ同一である。第2平板部36には、周方向並びに径方向のほぼ中央の位置に、面に垂直方向に貫通する第2リベット穴38が形成されている。第2円環部32における第2リベット穴38の径方向の位置は、第1円環部31における第1リベット穴37の径方向の位置とほぼ同一である。こうして、第1円環部31と第2円環部32とを組み合わせたときには、第1リベット穴37と第2リベット穴38とが同軸となるように形成されている。
第2円環部32の外周面32a及び内周面32bは、それぞれ中心線mと平行な直線を母線とする円すい面で形成されている。
【0028】
第1円環部31と第2円環部32は、第1平板部35と第2平板部36とが互いに向き合うように、周方向の位相を合わせて互いに軸方向に組み合わされている。互いに同軸に組み合わされた第1リベット穴37及び第2リベット穴38に、リベット29を挿入して第1円環部31と第2円環部32とが結合されている。
このとき、第1玉保持部33と第2玉保持部34とが互いに向き合うように軸方向に組み合わされて、各玉保持部33,34の内周に、略球状の玉保持面40が形成される。玉保持面40の直径寸法は、玉13の直径寸法よりわずかに大きいので、玉13は、玉保持面40の内側で自在に回転することが出来る。
なお、第1円環部31と第2円環部32を組み合わせた状態では、第2円環部32の外周面32aと第1円環部31の外周面31aは、略同一の円すい面となり、第2円環部32の内周面32bと第1円環部31の内周面31bは、略同一の円すい面となっている。
【0029】
こうして、保持器18は、第1円環部31の方が第2円環部32より径方向内方で玉13を挟持することが出来る。本実施形態のラジアル玉軸受10では、肩Aが形成されている側の環状空間Gの方が、肩Bが形成されている側の環状空間Gより直径寸法が小さい。したがって、第1円環部31を肩Aの側に、第2円環部32を肩Bの側に組み込むことによって、環状空間Gに保持器18を適正に組み込むことが出来る。
このとき、第1平板部35及び第2平板部36が径方向に向かうにしたがって外輪11の肩高さが高い方の肩Aに向かって軸方向に傾斜している。このため、図2から分かるように、リベット29を、その中心線mが外輪11と内輪12との間に形成された環状空間Gの開口部に向かう方向に配置することが出来る。
【0030】
次に、本実施形態のラジアル玉軸受10の組立方法を説明する。
図4は、リベット29をかしめるときの動作を説明するためのかしめ装置50の構成図である。図4では、かしめ装置50にラジアル玉軸受10を装着した状態を示している。また、図4では、かしめる前のリベット29の形状を破線で示している。
【0031】
まず、外輪11と内輪12を同軸に組み合わせるとともに、外側軌道面15と内側軌道面16との間に所定の数(本実施形態では9個)の玉13が組み込まれる。その後、玉13を周方向に均等に配置した状態で、軸方向の両側から第1円環部31と第2円環部32とが組み付けられ、互いに同軸に配置した第1リベット穴37及び第2リベット穴38にリベット29が挿入される。こうして、リベット29は中心線mと同一の方向に配置されている。
【0032】
かしめ装置50では、リベット29の数と同数組のかしめ受け座51及びかしめパンチ52が、ラジアル玉軸受10の軸線nの周りに、各リベットの中心線mの方向に配置されている。
リベット29は、頭部がかしめ受け座51で支持されている。第1円環部31側の端部がかしめパンチ52に押されて塑性変形することによって、第1円環部31と第2円環部32が結合されている。リベット29をかしめるときには、リベット29を中心線mの方向に支持する必要がある。そのため、かしめ受け座51は、ラジアル玉軸受10の軸線nに対して傾斜した向きで、リベット29と同軸に設置されている。また、かしめパンチ52についても、リベット29を中心線mの方向に加圧する必要がある。そのため、かしめパンチ52がリベット29と同軸に移動出来るように、スライドガイド54がラジアル玉軸受10の軸線nに対して傾斜した向きに設置されている。かしめパンチ52の外周は円筒形状で、スライドガイド54の内周との間にわずかなすきまをもって嵌め合わされている。
【0033】
かしめ装置50では、プレスヘッド53が、ラジアル玉軸受10の軸線nと同軸に配置されている。プレスヘッド53が軸線nの方向に移動することによって、すべてのかしめパンチ52が、同時に、スライドガイド54に沿ってリベット29の中心線mの方向に押し出される。こうして、各リベット29が同時にかしめられている。
このとき、リベット29の軸端部は、かしめパンチ52に押されて圧縮方向に塑性変形するとともに径方向に押し広げられている。このため、かしめパンチ52は、リベット29の変形後の形状よりある程度大きい径寸法で製作されている。
【0034】
本実施形態のラジアル玉軸受10では、肩Aの側の環状空間Gの直径寸法が、肩Bの側の環状空間の直径寸法より小さくなっている。
保持器18は、第1円環部31と第2円環部32とが、ラジアル玉軸受10の軸方向のほぼ中央で結合されているので、その結合する箇所の径方向の位置は、肩Aの側の環状空間Gより径方向外方にあり、肩Bの側の環状空間Gより径方向内方にある。すなわち、リベット29を挿入するリベット穴37,38が、肩Aの側の環状空間Gに対しては径方向外方にずれた位置に形成され、肩Bの側の環状空間Gに対しては径方向内方にずれた位置に形成されている。
【0035】
本実施形態では、第1平板部35及び第2平板部36が、肩高さの高い肩Aに向かって軸方向に傾斜しているので、肩Aの側の環状空間G及び肩Bの側の環状空間Gのいずれにおいてもリベット29の中心線が環状空間Gの開口部に向いている。このため、かしめパンチ52及びかしめ受け座51をラジアル玉軸受10の軸線に対して傾斜した方向に設置して、環状空間Gの開口部からリベット29の中心線mと同じ方向に挿入することが出来る。したがって、例えば、肩Aの側の環状空間Gに対してリベット穴が径方向外方にずれた位置に形成されている場合であっても、第1平板部35が環状空間Gの開口部に向いているので、かしめパンチ52を肩Aから離した位置でリベット29の中心線mの方向に挿入することが出来る。このため、かしめパンチ52と肩Aとの干渉を回避出来るので、肩Aの肩高さを十分に大きく設定することが出来る。
【0036】
同様に、かしめ受け座51が内輪12の肩Dの外周と接触しにくくなるので、肩Dの肩高さHdを高くすることが出来る。
これによって、アキシャル荷重Faが作用したときに接触領域Eの位置が肩Aまたは肩Dに近づいた場合でも、接触領域Eが外側軌道面15または内側軌道面16からはみ出ることがない。したがって、本実施形態のラジアル玉軸受10は、大きなアキシャル荷重Faを支持することが出来る。
【0037】
保持器18において、径方向外方に向かうにしたがって肩Aに向かって軸方向に傾斜する平板部35,36を傾けたときの効果を説明するために、比較例として、平板部が径方向に形成されていて軸方向に傾斜していない場合のラジアル玉軸受70について説明する。
ラジアル玉軸受70は、本実施形態のラジアル玉軸受10と比較して、保持器71の形態のみが異なるので、保持器71について詳細に説明し、その他は簡単に説明する。図5は、ラジアル玉軸受70についてのリベット29をかしめるときの動作を説明するためのかしめ装置60の概念図である。図5では、本実施形態のかしめ方法と対比するために、かしめパンチ62やかしめ受け座61の大きさは本実施形態の場合と同じ大きさとしている。また、かしめる前のリベット29の形状を破線で示している。
【0038】
ラジアル玉軸受70の保持器71は、図5に示すように、それぞれ略円環状の、第3円環部73と第4円環部74とで構成されている。第3円環部73は、玉13の数と同数の略半球状の第3玉保持部75と、各第3玉保持部75を互いに周方向につなぐ第3平板部77とを有している。第4円環部74は、玉13の数と同数の略半球状の第4玉保持部76と、各第4玉保持部76を互いに周方向につなぐ第4平板部78とを有している。
第3平板部77と第4平板部78は、それぞれ径方向に形成されている。第3平板部77と第4平板部78には、垂直方向に貫通するリベット穴79が形成されている。すなわち、各リベット穴79はラジアル玉軸受70の軸線nと同一の方向に形成されている。
【0039】
なお、保持器71において、外周面73a,74a及び内周面73b、74bはいずれも円すい面であって、本実施形態の保持器18の外周面31a,32a及び内周面31b、32bと略同一の形状である。このため、保持器71は、第3円環部73の方が第4円環部74より径方向内方で玉13を挟持している。
ラジアル玉軸受70においても本実施形態と同様に、第3円環部73が肩Aの側に、第4円環部74が肩Bの側に組み込まれている。第3平板部と第4平板部とが、ラジアル玉軸受70の軸方向のほぼ中央で結合されている。
こうして、リベット29が、玉13中心と径方向のほぼ同等の位置で、軸線nと平行に組み込まれていて、肩Aの側の環状空間Gに対しては径方向外方に、肩Bの側の環状空間Gに対しては径方向内方にずれた位置に組み込まれている。
【0040】
リベット29をかしめるときには、リベット29をその中心線mの方向に支持する必要がある。そのため、かしめ受け座61は、その軸線が玉13の中心を通る位置で、ラジアル玉軸受70の軸線nと平行に設置されている。また、かしめパンチ62についても、リベット29をその中心線mの方向に加圧する必要がある。そのため、スライドガイド64をラジアル玉軸受70の軸線nと平行に設置して、かしめパンチ62がリベット29を中心線mの方向に加圧出来るように設定している。
ラジアル玉軸受70では、リベット29が肩Aの側の環状空間Gに対して径方向外方にずれた位置に形成されている。このため、かしめパンチ62を軸線nの方向に挿入すると、図5にクロスハッチングを付したZで示した箇所で、肩Aの内周とかしめパンチ62の外周とが干渉する。この場合には、かしめパンチ62をリベット29に向けて挿入できないので、ラジアル玉軸受70を組み立てることが出来ない。
【0041】
干渉を回避するためには、肩Aの内径寸法を大きくする必要がある。肩Aの内径寸法を大きくすると、肩Aの肩高さHaが小さくなるので、ラジアル玉軸受70では、アキシャル荷重Faの負荷容量が低下するという問題がある。このように、平板部77,78を径方向に形成したラジアル玉軸受70では、アキシャル荷重Faに対する負荷容量を高くすることが困難である。
【0042】
これに対し、本実施形態のラジアル玉軸受10では、平板部35,36を傾斜させることによってかしめパンチ52をラジアル玉軸受10の軸線に対して斜めに挿入することが出来る。これによって、かしめパンチ52と肩Aの干渉を回避して、アキシャル荷重Faが作用する側の肩高さHaを高くすることが出来る。
内輪12の外周や外輪11の内周に関する干渉の問題は、第2円環部32の側においても同様である。
【0043】
なお、内輪12の肩Cの外周との干渉を回避することによってさらにかしめパンチ52を傾斜させることが出来る。例えば、図示を省略するが、内輪12の肩Cの外径寸法を小さくしたり、肩Cの側の端面25の軸方向の位置を更に内側軌道面16に近接させたりすることによって、かしめパンチ52の向きをさらに傾斜させて、肩Aの肩高さHaを更に高くすることが出来る。
【0044】
以上説明したように、本発明のラジアル玉軸受10は、保持器18の平板部が傾斜しているので、肩高さHaを高くした場合でも、保持器18を組み付けるときに、その組付装置と肩との干渉を回避することが出来る。アキシャル荷重Faが作用する側の肩高さを高くすることが出来るので、従来の深溝玉軸受と比較して、アキシャル荷重Faを支持する能力を大幅に向上させたラジアル玉軸受10を提供することが出来る。
【0045】
本実施形態では、ラジアル玉軸受10に使用される保持器18として、リベット29をかしめる形式の鉄保持器について説明したが、これに限定されない。
例えば、第2円環部32の第2平板部36から本実施形態の中心線mの方向に突出するピン(図示を省略)を一体に設け、第1平板部35の第1リベット穴37に挿入した後で、ピンの先端をかしめることによっても保持器18を組立てることが出来る。また、第2平板部36から中心線mの方向に突出する爪(図示を省略)を設けて、第1平板部35と組み合わせた後に爪を折り曲げて固定することも出来る。
さらに、第1円環部と第2円環部とをポリアミドなどの合成樹脂で製作することも出来る。この場合には上記のピンや爪に熱を加えて変形させることで、保持器を組立てることが出来る。
いずれの場合においても、本実施形態で説明したように、玉保持部33,34を周方向に連結する板状の平板部35,36が、径方向外方に向かうにしたがって外輪11の肩高さが高い方の肩Aに向かって軸方向に傾斜している。このため、ピンや爪を環状空間Gの開口部に向けて形成することが出来るので、肩高さが高い場合でも加工装置が肩と干渉することを回避出来てピンや爪を容易に加工することが出来る。こうして、アキシャル荷重の負荷容量を大幅に向上させたラジアル玉軸受を提供することが出来る。
【符号の説明】
【0046】
(本実施形態)
10:ラジアル玉軸受、11:外輪、12:内輪、13:玉、15:外側軌道面、16:内側軌道面、18:保持器、29:リベット、31:第1円環部、32:第2円環部、33:第1玉保持部、34:第2玉保持部、35:第1平板部、36:第2平板部、37:第1リベット穴、38:第2リベット穴、39:ポケット、40:玉保持面、50:かしめ装置、51:かしめ受け座、52:かしめパンチ、53:プレスヘッド、54:スライドガイド、
(比較例)
60:かしめ装置、61:かしめ受け座、62:かしめパンチ、63:プレスヘッド、64:スライドガイド、70:ラジアル玉軸受、71:保持器、73:第3円環部、74:第4円環部、75:第3玉保持部、76:第4玉保持部、77:第3平板部、78:第4平板部、79:リベット穴、
(従来技術)
100:ラジアル玉軸受、101:外輪、102:内輪、103:玉、104:保持器、105:かしめパンチ、106:肩、107:リベット、108:肩
図1
図2
図3
図4
図5
図6