特開2016-223582(P2016-223582A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223582(P2016-223582A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】玉軸受用保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/42 20060101AFI20161205BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20161205BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F16C33/42 A
   F16C19/06
   F16C33/66 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-112251(P2015-112251)
(22)【出願日】2015年6月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間野 洋嗣
(72)【発明者】
【氏名】春山 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】南里 浩太
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA37
3J701BA45
3J701BA47
3J701BA49
3J701DA09
3J701FA38
3J701FA41
3J701XB03
3J701XB14
3J701XB19
3J701XB24
(57)【要約】
【課題】玉軸受用保持器の構成品を増やすことなく、ポケットに働く潤滑油の攪拌抵抗を低減する。
【解決手段】玉軸受の玉を保持する玉軸受用保持器であって、複数の玉16を周方向に間隔をおいた配設状態で軸方向両側から挟持し各玉16を包囲して保持する複数のポケット22と、複数のポケット22間の部位に位置する複数の平坦部34、44と、を有する一対の環状板部材30、40を備え、ポケット22の外周面38、48には、ポケット22から見て玉16の公転方向Xに対する上流側22Aにおいて径方向外方に向かって突出する凸部50が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
玉軸受の玉を保持する玉軸受用保持器であって、
前記複数の玉を周方向に間隔をおいた配設状態で軸方向両側から挟持し該各玉を包囲して保持する複数のポケットと、該複数のポケット間の部位に位置する複数の平坦部と、を有する一対の環状板部材を備え、
前記ポケットの外周面には、該ポケットから見て前記玉の公転方向に対する上流側において径方向外方に向かって突出する凸部が設けられている玉軸受用保持器。
【請求項2】
請求項1に記載の玉軸受用保持器であって、
前記凸部は、線状に形成されており、前記ポケットの外周面において連続又は断続的に形成されている玉軸受用保持器。
【請求項3】
請求項2に記載の玉軸受用保持器であって、
前記凸部は、前記玉軸受の回転軸方向から見た場合、前記各玉の中心を結ぶ玉の公転軌道に近い位置から、前記公転軌道に遠い位置に向かって、前記玉の公転方向に傾斜して設けられている玉軸受用保持器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の玉軸受用保持器であって、
前記凸部は、前記玉軸受用保持器の各ポケットにおける玉の公転方向に対する上流側と、前記玉の中心に対して対称位置の下流側に設けられている玉軸受用保持器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の玉軸受用保持器であって、
前記凸部の突出量dは、前記玉の直径をDとしたときに、0.01D<d<0.05Dの関係である玉軸受用保持器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の玉軸受用保持器であって、
前記玉軸受の回転中心と、前記玉の中心を結ぶ仮想直線に直交し、且つその玉の中心を通る仮想平面で切断したときの断面でから見たときの前記凸部の配設角度αは、前記玉の公転方向に対し、40°<α<60°の位置に設けられている玉軸受用保持器。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の玉軸受用保持器であって、
前記凸部は前記ポケットの内周面側から押出成形により形成されている玉軸受用保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は玉軸受用保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、深溝玉軸受等の玉軸受に使用される玉軸受用保持器が知られている(例えば、特許文献1参照)。玉軸受用保持器は、一対の環状板部材を備えている。環状板部材は、複数のポケットと、複数の平坦部と、が周方向に交互に隣接する。複数のポケットは、複数の玉を周方向に間隔をおいた配設状態で軸方向両側から挟持し各玉を包囲して保持する部位である。複数の平坦部は、複数のポケット間の部位に位置し、一対の平坦部を密着させた状態でリベットにより厚さ方向に締結している。
【0003】
ここで玉軸受のポケットは、各玉を保持する部位が厚み方向において円弧状に突出した膨出部が形成される。そのため、玉軸受の平坦部は、ポケット部に比べて窪んだ形状となる。そのため、玉軸受は潤滑油に浸された状態で回転するとポケットが潤滑油を掻き分けるように公転し平坦部における窪みに渦を生じさせる。そのため、ポケットの上流側と下流側には、圧力差が生じてポケットの公転を妨げる向きの力が生じる。係る力は、玉軸受に対する攪拌抵抗となり、回転数が大きくなるにつれて大きくなる懸念がある。そのため、特許文献1には、攪拌抵抗の低減を図るために平坦部の部位に、ポケットと平坦部の差を小さくする増厚部を設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−70910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような玉軸受用保持器は、増厚部を採用するため玉軸受全体の重量増の懸念がある。また、増厚部は、保持器の各平坦部に設けることから製造コストの増加、部品管理の懸念がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、玉軸受用保持器の構成品を増やすことなく、ポケットに働く潤滑油の攪拌抵抗を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の玉軸受用保持器は次の手段をとる。先ず、第1の発明に係る玉軸受用保持器は、玉軸受の玉を保持する玉軸受用保持器であって、前記複数の玉を周方向に間隔をおいた配設状態で軸方向両側から挟持し該各玉を包囲して保持する複数のポケットと、該複数のポケット間の部位に位置する複数の平坦部と、を有する一対の環状板部材を備え、前記ポケットの外周面には、該ポケットから見て前記玉の公転方向に対する上流側において径方向外方に向かって突出する凸部が設けられている。
【0008】
この第1の発明によれば、ポケットの外周面には、ポケットから見て玉の公転方向に対する上流側において径方向外方に向かって突出する凸部が設けられる。潤滑油中に浸された玉軸受が回転すると、ポケットの外周面の近傍を流れる潤滑油は凸部を乗り越える。このとき、潤滑油の流れは、凸部によって強制的に乱流境界層に移行することになる。乱流境界層は、層流境界層よりも剥離しにくい。そのため、ポケットの外周面の近傍を流れる潤滑油は、ポケットの外周面にはりついて剥離しにくくなる。そのため、下流側の渦が小さくなるため、ポケットの上流側と下流側の圧力差が小さくなって攪拌抵抗を低減させることができる。また、凸部は、ポケットの外周面に設けるものであり、保持器の構成品は増えない。
【0009】
次に、第2の発明は、第1の発明の玉軸受用保持器であって、前記凸部は、線状に形成されており、前記ポケットの外周面において連続又は断続的に形成されている。
【0010】
この第2の発明によれば、凸部は、線状に形成されており、ポケットの外周面において連続又は断続的に形成されている。これにより、より多くの潤滑油を凸部に通過させることができる。
【0011】
次に、第3の発明は、第2の発明の玉軸受用保持器であって、前記凸部は、前記玉軸受の回転軸方向から見た場合、前記各玉の中心を結ぶ玉の公転軌道に近い位置から、前記公転軌道に遠い位置に向かって、前記玉の公転方向に傾斜して設けられている。
【0012】
この第3の発明によれば、凸部を潤滑油の流れに交差するように配設することで乱流境界層に移行させやすくしている。
【0013】
次に、第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかの玉軸受用保持器であって、前記凸部は、前記玉軸受用保持器の各ポケットにおける玉の公転方向に対する上流側と、前記玉の中心に対して対称位置の下流側に設けられている。
【0014】
この第4の発明によれば、玉軸受の回転方向の正転、逆転何れの回転でも対応させることができる。
【0015】
次に、第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれかの玉軸受用保持器であって、前記凸部の突出量dは、前記玉の直径をDとしたときに、0.01D<d<0.05Dの関係である。
【0016】
この第5の発明によれば、凸部の突出量dは、玉の直径をDとしたときに、0.01D<d<0.05Dの関係であることが好ましい。凸部の突出量dが0.01Dより小さい場合、凸部を通過する潤滑油の流れが乱流境界層に移行し難くなる。一方、凸部の突出量dが0.05Dより大きい場合、潤滑油の流れの抵抗となってしまうおそれがある。そのため、凸部の突出量dは、上記範囲であることが好ましい。
【0017】
次に、第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれかの玉軸受用保持器であって、前記玉軸受の回転中心と、前記玉の中心を結ぶ仮想直線に直交し、且つその玉の中心を通る仮想平面で切断したときの断面でから見たときの前記凸部の配設角度αは、前記玉の公転方向に対し、40°<α<60°の位置に設けられている。
【0018】
この第6の発明によれば、上記凸部の配設は、上記構成であることが好ましい。これにより、より一層凸部を通過する潤滑油の流れを乱流境界層に移行させやすくすることができる。
【0019】
次に、第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれかの玉軸受用保持器であって、前記凸部は前記ポケットの内周面側から押出成形により形成されている。
【0020】
この第7の発明によれば、凸部はポケットの内周面側から押出成形により形成されている。これにより、ポケットの成形と同時に凸部を形成することができる。また凸部は、ポケットの内周面側から押し出すため、ポケットの内周面と玉の表面との接触面積が低減でき、すべり抵抗を低下することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、玉軸受用保持器の構成品を増やすことなく、ポケットに働く潤滑油の攪拌抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る玉軸受用保持器を用いた玉軸受の外輪の一部を切り欠いて内部構成を明らかにした全体斜視図である。
図2】実施形態に係る玉軸受用保持器の全体側面図である。
図3図2のIII部を拡大した拡大図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5】実施形態に係る玉軸受用保持器の変形例として図3に対応する図面である。
図6】凸部50を有さない保持器120における潤滑油Lの流れを図4に対応して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は、実施形態に係る玉軸受用保持器を用いた玉軸受の外輪の一部を切り欠いて内部構成を明らかにした全体斜視図である。図1に示すように、玉軸受10は、深溝玉軸受である。玉軸受10は、内輪12と、外輪14と、複数の玉16、保持器20(玉軸受用保持器)とを備えている。内輪12は、鉄鋼材の環状部材であり外周面に内輪軌道面12aを有する。外輪14は、鉄鋼材の環状部材であり内周面に外輪軌道面14aを有する。複数の玉16は、内輪軌道面12aと外輪軌道面14aとの間に転動自在に配設される。
【0024】
保持器20は、いわゆる波型保持器と呼ばれる保持器である。保持器20は、鋼板製によって環状に形成された一対の環状板部材30、40を備えている。この一対の環状板部材30、40には、周方向においてポケット膨出部32、42と、平坦部34、44が交互に配設されている。ポケット膨出部32、42は、ポケット22を構成するために厚み方向において円弧状に複数、突出形成されている。各ポケット膨出部32、42のポケット22の内周面36、46の曲率は、玉16の外周の曲率とほぼ同一となるように形成されている。各ポケット膨出部32、42の間は、平板状の平坦部34、44によって連結されている。平坦部34、44には、それぞれリベット24を挿通するための孔部35、45(図4参照)が開孔形成されている。一対の環状板部材30、40は、複数のポケット膨出部32、42同士が軸方向で対向するように軸方向で重ね合わされて玉16を挟持する。そして、平坦部34、44同士が重ね合わされた状態でリベット24を孔部35、45に挿通し、軸方向からかしめて結合されている。これにより、保持器20は、一対の環状板部材30、40が玉16に対し軸方向両側から挟持するように構成される。保持器20は、複数の各ポケット22が、複数の玉16を内輪12及び外輪14の周方向に間隔をおいた配設状態で軸方向及び径方向の内外へ抜け出ないように包囲して収容保持する。保持器20は、玉16がポケット22に組み込まれた状態で玉16の転動に伴って公転する。
【0025】
図2〜4に示すように、ポケット22の外周面38、48には、凸部50が設けられている。凸部50は、ポケット22の外周面38、48において、玉16の公転方向Xに対する上流側22Aに配設される。凸部50は、ポケット膨出部32、42において径方向外方に向かって突出して設けられる。凸部50は、線状に形成されており、ポケット22の外周面38、48において連続して形成されている。凸部50は、玉軸受10の回転軸方向から見て各玉16の中心16Cを結ぶ玉16の公転軌道16Pに近い位置から、公転軌道16Pに遠い位置に向かって、玉16の公転方向Xに傾斜して設けられている。これは、潤滑油Lの流れを凸部50に対し直交に近い角度で通過させるためである。凸部50は、玉16の公転方向Xに対する上流側22Aに設けられると共に、玉16の中心16Cに対して対称位置の下流側22Bにも設けられている。
【0026】
凸部50の突出量dは、玉16の直径をDとしたときに、0.01D<d<0.05Dの関係で設けられる。凸部50の突出量dが0.01Dより小さい場合、凸部50を通過する潤滑油Lの流れが乱流境界層に移行し難くなる。一方、凸部50の突出量dが0.05Dより大きい場合、潤滑油Lの流れの抵抗となってしまうおそれがある。そのため、凸部50の突出量dは、上記範囲であることが好ましい。
【0027】
図4は、玉軸受10の回転中心10Cと、玉16の中心16Cを結ぶ仮想直線S(図3参照)に直交し、且つその玉16の中心16Cを通る仮想平面H(図3参照)で切断したときの断面である。ここで、凸部50の配設角度αは、玉16の公転方向Xに対し、40°<α<60°の位置に設けられている。凸部50の配設角度αは、40°より小さいと乱流境界層に移行しにくい。一方、凸部50の配設角度αは、60°より大きいと潤滑油Lがポケット22の外周面38、48から剥離してしまうおそれがある。凸部50は、環状板部材30、40にポケット膨出部32、42を形成する押出成形の際に内周面36、46側から同時に形成される。
【0028】
次に、凸部50を有する保持器20周りの潤滑油Lの流れ(図4)と、凸部50を有さない保持器120周りの潤滑油Lの流れ(図6)を比較して説明する。
【0029】
図6に示すように、保持器120に保持された玉16は、公転方向X方向に自転しながら公転をしている。保持器120のポケット122は、各玉16を保持する部位が厚み方向において円弧状に突出したポケット膨出部132、142が形成される。そのため、平坦部134、144の部位は、ポケット122に比べて窪んだ形状となる。玉軸受100は潤滑油Lに浸された状態で回転するとポケット122が潤滑油Lを掻き分けるように公転し平坦部134、144における窪みに渦W2を生じさせる。すなわち、保持器120のポケット122から見て玉16の公転方向Xに対する上流側122Aに付着した潤滑油Lは、外周面138、148の曲面を沿うように流れ、同曲面から剥離して流れている。ポケット122と平坦部134、144は、厚み差があるため、ポケット122から見た玉の公転方向Xに対する下流側122Bの潤滑油Lは、剥離した後に渦W2が発生する。この渦W2の影響によって上流側122Aの圧力P3よりも下流側122Bの圧力P4が小さくなる。この圧力差ΔP34(ΔP34=P3−P4)によってポケット122には、玉16の公転を妨げる向きの抵抗力F2が生ずる。係る力は、玉軸受100に対する攪拌抵抗となり、回転数が大きくなるにつれて大きくなる懸念がある。
【0030】
一方、本実施形態の保持器20は、図4に示すようにポケット22の外周面38、48に凸部50が設けられている。潤滑油L中に浸された玉軸受10が回転すると、ポケット22の外周面38、48の近傍を流れる潤滑油Lは凸部50を乗り越える。このとき、潤滑油Lの流れは、凸部50によって強制的に乱流境界層に移行することになる。ここで、一般的に乱流境界層は、層流境界層よりも剥離しにくいことが知られている。そのため、乱流境界層に移行した潤滑油Lは、ポケット22の外周面38、48にはりついて剥離しにくくなる。そのため、下流側22Bで剥離した後の渦W1が小さくなる傾向となる。そのため、ポケット22の上流側22Aの圧力P1と下流側22Bの圧力P2の圧力差ΔP12(ΔP12=P1−P2)が小さくなって、玉16の公転を妨げる向きの抵抗力F1(攪拌抵抗)を低減させることができる。すなわち、圧力差ΔP34>圧力差ΔP12、抵抗力F2>抵抗力F1の関係となる。
【0031】
このように、本実施形態の玉軸受用保持器によれば、ポケット22の外周面38、48には、ポケット22から見て玉16の公転方向Xに対する上流側22Aに、玉16の公転方向Xに対して交差する方向に突出する凸部50が設けられる。潤滑油L中に浸された玉軸受が回転すると、ポケット22の外周面38、48の近傍を流れる潤滑油Lは凸部50を乗り越える。このとき、潤滑油Lの流れは、凸部50によって強制的に乱流境界層に移行することとなる。乱流境界層は、層流境界層よりも剥離しにくい。そのため、ポケット22の外周面38、48の近傍を流れる潤滑油Lは、ポケット22の外周面38、48にはりついて剥離しにくくなる。そのため、下流側22Bの渦W1が小さくなるため、ポケット22の上流側22Aと下流側22Bの圧力差ΔP12が小さくなって攪拌抵抗を低減させることができる。また、凸部50は、ポケット22の外周面38、48に設けるものであり、保持器20の構成品は増えない。
【0032】
また、凸部50は、線状に形成されており、ポケット22の外周面38、48において連続又は断続的に形成されている。これにより、より多くの潤滑油Lを凸部50に通過さることができる。また、凸部50を潤滑油Lの流れに交差するように配設することで乱流境界層に移行させやすくしている。また、玉軸受10の回転方向の正転、逆転何れの回転でも対応さえることができる。
【0033】
また、凸部50の突出量dは、玉16の直径をDとしたときに、0.01D<d<0.05Dの関係であることが好ましい。凸部50の突出量dが0.01Dより小さい場合、凸部50を通過する潤滑油Lの流れが乱流境界層に移行し難くなる。一方、凸部50の突出量dが0.05Dより大きい場合、潤滑油Lの流れの抵抗となってしまうおそれがある。そのため、凸部50の突出量dは、上記範囲であることが好ましい。
【0034】
また、上記凸部50の配設は、玉の公転方向に対し、40°<α<60°の位置に設けられていることが好ましい。これにより、より一層凸部50を通過する潤滑油Lの流れを乱流境界層に移行させやすくすることができる。また、凸部50はポケット22の内周面36、46側から押出成形により形成されている。これにより、ポケット22の成形と同時に凸部50を形成することができる。また凸部50は、ポケット22の内周面36、46側から押し出すため、ポケット22の内周面36、46と玉16の表面との接触面積が低減でき、すべり抵抗を低下することができる。
【0035】
なお、この発明は本実施形態に限定するものではなく、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、凸部50は、線状の連続した態様を示したが、図5のように断続的に配設される凸部250であってもよい。凸部50は、ワイヤ部材をポケット22の外周面38、48に固着させるものであってもよい。たとえば、ワイヤ部材をポケット22の外周面38、48に溶着させるものでもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 玉軸受
10C 回転中心
12 内輪
12a 内輪軌道面
14 外輪
14a 外輪軌道面
16 玉
16C 玉の中心
16P 玉の公転軌道
20 保持器(玉軸受用保持器)
22 ポケット
22A 上流側
22B 下流側
24 リベット
30、40 環状板部材
32、42 ポケット膨出部
34、44 平坦部
35、45 孔部
36、46 ポケットの内周面
38、48 ポケットの外周面
50 凸部
d 凸部の突出量
D 玉の直径
L 潤滑油
S 仮想直線
H 仮想平面
α 配設角度
X 公転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6