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特開2016-223696太陽光(熱)による水の蒸発・回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223696(P2016-223696A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】太陽光(熱)による水の蒸発・回収装置
(51)【国際特許分類】
   F24J 2/08 20060101AFI20161205BHJP
   F24J 2/28 20060101ALI20161205BHJP
   F03G 6/00 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F24J2/08
   F24J2/28
   F03G6/00 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-111006(P2015-111006)
(22)【出願日】2015年5月31日
(71)【出願人】
【識別番号】515147807
【氏名又は名称】近藤 義和
(74)【代理人】
【識別番号】100113044
【弁理士】
【氏名又は名称】木島 智子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義和
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来と比較してはるかに安価・小型・軽量の装置で、効率よく太陽光(熱)を利用して水を加熱・蒸発させることができる装置、特に朝夕時や曇りの時の比較的日射の弱い場合でも水を蒸発・回収させることが出来る装置を提供する。
【解決手段】少なくとも(i)乃至(v)を備えることを特徴とする、水の蒸発・回収装置22である。(i)可動性を有する太陽光(熱)の集光(熱)装置2、(ii)集光(熱)した太陽光(熱)の非密閉性の受光(熱)部10、(iii)受光(熱)部に原水を送る送水材5、(iv)原水貯槽6、(v)水蒸気を受ける太陽光透過性を有する容器4。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の(i)乃至(v)を備えることを特徴とする、水の蒸発・回収装置。
(i)可動性を有する太陽光(熱)の集光(熱)装置
(ii)集光(熱)した太陽光(熱)の非密閉性の受光(熱)部
(iii)受光(熱)部に原水を送る送水材
(iv)原水貯槽
(v)水蒸気を受ける太陽光透過性を有する容器
【請求項2】
(ii)の受光(熱)部の大きさが、集光(熱)部の大きさと、下記式の関係を有することを特徴とする、請求項1記載の装置。
y ≦ x ≦ 5y
x:受光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
y:集光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
(集光(熱)部とは、受光(熱)部に映った太陽光の影である。)
【請求項3】
(i)の集光(熱)装置がフレネルレンズであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
(ii)の受光(熱)部が、炭素材料を主体としたフェルト,織物,編み物,綿状物,又は粒子から選択される1種以上で構成されたものであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
(iii)の送水材が、紐状物,短冊状物,綿状物,不織布状物,又はチューブ状物から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
(v)の太陽光透過性を有する容器の材質が、ガラス,プラスチック,プラスチックフィルム,又はプラスチックシートから選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
更に、(i)の集光(熱)装置に結合させた下記の(i−1)又は(i−2)を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
(i−1)回転軸及び回転軸支柱
(i−2)骨組み状部材からなり、(v)の容器を覆う形状を有する回転台
【請求項8】
更に、フレネルレンズ上に垂直に設置した棒状の冶具を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
下記(a)乃至(d)の工程を含むことを特徴とする、水の蒸発・回収方法。
(a)可動性を有する集光(熱)装置で太陽光(熱)を集める工程
(b)非密閉性の受光(熱)部によって、(a)で集めた太陽光(熱)を受光(熱)する工程
(c)(b)の受光(熱)によって蒸発・凝縮した水を、太陽光透過性を有する容器の内面を伝わせ、蒸留水貯槽に滴下させる工程
(d)(c)で滴下した水を回収する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽光(熱)による水の蒸発・回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光(熱)の利用は、未使用エネルギーの活用或いは全く炭酸ガスを排出しないクリーンエネルギーの活用という点で大きな意味がある。また、離島や山間地,未開発国・地域等の様に、エネルギーに関するインフラが十分に供給・普及していないところでは、火力や電力による従来の造水装置(例えば、逆浸透膜法,多段蒸発法,電気透析法等)が使用できない。
【0003】
こうした地域では太陽光(熱)が唯一身近なエネルギーであり、それによって海水淡水化或いは汚水からの造水ができれば環境的、経済的或いは人道的に大きな意味がある。
【0004】
太陽熱による造水は、これまでも検討がなされている。
例えば、特許文献1には太陽追随装置をつけた凹面鏡を使って太陽光を集め、金属パイプに入れた水を加熱する装置が提案されている。
【0005】
特許文献2は、反射板で太陽光を集光し、その光を、透明部分を通過させて、金属パイプ中の熱媒を加熱する装置を提案している。
【0006】
特許文献3、4は、太陽光(熱)を集光し、断熱材で囲まれた液体を、断熱材の一部を透明にした部分を通して加熱する装置を提案している。
【0007】
特許文献5は、太陽光(熱)反射板を使って水を加熱・蒸発させる装置を提案している。
【0008】
特許文献6は、レンズを使って太陽光(熱)を集光して、断熱材でできた容器に入れた水を加熱・蒸発させて造水する装置を提案している。
【0009】
しかし、何れも太陽熱の利用率が低いか或いは装置が大型化・高価格化し、前述したような地域に容易に導入できるものではない。
というのも、これまで提案された方法ではいずれも、加熱・蒸発させる水を密閉していることが特徴である。このためにその環境(例えば圧力)でそれ以上の蒸気圧を持つまで温度を上げ・維持しなければならず、太陽光(熱)の利用効率が必ずしも高くはなく(一般的には30〜40%,高くともせいぜい50%)、また、装置が大型化或いは高額化するため、上記の地域には普及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−300363
【特許文献2】特開2013−155993
【特許文献3】特開2011−27268
【特許文献4】特開2011−27267
【特許文献5】特開2010−194500
【特許文献6】特開2010−99628
【0011】
非特許文献1は、凹面鏡で太陽光(熱)を集光させる真空式二重管構造をした装置での水の加熱・蒸発を提案している。非特許文献2では、断熱材で囲んだ容器に太陽光(熱)吸収材としてのバガス炭微粒子を分散させた海水を太陽光(熱)だけで蒸発させ、純水を製造することが提案されている。
しかし、非特許文献1は、真空パイプが必要であり、装置の高価格化があり、やはり、前述した様な地域に容易に導入できるものではない。非特許文献2は比較的安価に装置を製造できるが、朝夕に太陽高度が低下すると十分に蒸発や造水ができない。
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T. Momosaki, et al.,Grand Renewable Energy 2014, O-Th-2-4(“Study of solar distillation by using parabolic trough concentrator and evacuated tube collector”)
【非特許文献2】Y. Kondo et al., Proc.ISSCT.,Vol.28(SaoPaulo,2013),”Novel Application of Bagasse Char for Production of Freshwater from Seawater by Solar Energy Vaporization”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来と比較してはるかに安価・小型・軽量の装置で、効率よく太陽光(熱)を利用して水を加熱・蒸発させることができる装置、特に朝夕時や曇りの時の比較的日射の弱い場合でも、水を蒸発させ回収が出来る装置を開発することを目的とする。特に前述した様な地域にも十分に普及できる、簡単で安価な装置を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
上述の課題は、下記によって達成される。
【0015】
(第一の発明)
即ち、本発明は、少なくとも下記の(i)乃至(v)を備えることを特徴とする、水の蒸発・回収装置である。
【0016】
(i)可動性を有する太陽光(熱)の集光(熱)装置
(ii)集光(熱)した太陽光(熱)の非密閉性の受光(熱)部
(iii)受光(熱)部に原水を送る送水材
(iv)原水貯槽
(v)水蒸気を受ける太陽光透過性を有する容器
【0017】
本発明において、太陽光(熱)とは、「太陽光及び/又は太陽熱」を意味する。
本発明において、集光(熱)とは、「集光及び/又は集熱」を意味する。
本発明において、受光(熱)とは、「受光及び/又は受熱」を意味する。
【0018】
(第二の発明)
また、本発明は、(ii)の受光(熱)部の大きさが、集光(熱)部の大きさと、下記式の関係を有することを特徴とする、第一の発明に記載の装置である。
【0019】
y ≦ x ≦ 5y
【0020】
x:受光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
y:集光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
【0021】
(集光(熱)部とは、受光(熱)部に映った太陽光の影である。)
【0022】
(第三の発明)
また、本発明は、(i)の集光(熱)装置がフレネルレンズであることを特徴とする、第一の発明又は第二の発明に記載の装置である。
【0023】
(第四の発明)
また、本発明は、(ii)の受光(熱)部が、炭素材料を主体としたフェルト,織物,編み物,綿状物,又は粒子から選択される1種以上で構成されたものであることを特徴とする、第一の発明乃至第三の発明のいずれか1項に記載の装置である。
【0024】
(第五の発明)
また、本発明は、(iii)の送水材が、紐状物,短冊状物,綿状物,不織布状物,又はチューブ状物から選択される1種以上であることを特徴とする、第一の発明乃至第四の発明のいずれか1項に記載の装置である。
【0025】
(第六の発明)
また、本発明は、(v)の太陽光透過性を有する容器の材質が、ガラス,プラスチック,プラスチックフィルム,又はプラスチックシートから選択される1種以上であることを特徴とする、第一の発明乃至第五の発明のいずれか1項に記載の装置である。
【0026】
(第七の発明)
また、本発明は、更に、(i)の集光(熱)装置に結合させた下記の(i−1)又は(i−2)を有することを特徴とする、第一の発明乃至第六の発明のいずれか1項に記載の装置である。
(i−1)回転軸及び回転軸支柱
(i−2)骨組み状部材からなり、(v)の容器を覆う形状を有する回転台
【0027】
(第八の発明)
また、本発明は、更に、フレネルレンズ上に垂直に設置した棒状の冶具を有することを特徴とする、第一の発明乃至第七の発明のいずれか1項に記載の装置である。
【0028】
(第九の発明)
また、本発明は、下記(a)乃至(d)の工程を含むことを特徴とする、水の蒸発・回収方法である。
【0029】
(a)可動性を有する集光(熱)装置で太陽光(熱)を集める工程
(b)非密閉性の受光(熱)部によって、(a)で集めた太陽光(熱)を受光(熱)する工程
(c)(b)の受光(熱)によって蒸発・凝縮した水を、太陽光透過性を有する容器の内面を伝わせ、蒸留水貯槽に滴下させる工程
(d)(c)で滴下した水を回収する工程
【発明の効果】
【0030】
従来の逆浸透膜法(RO)や多段蒸発法(MF)では、一定規模(数万トン/日)や大容量の電力や火力等のエネルギーが必要なため、離島や僻地,山間地,あるいは各家庭などで使うには、量的に不適当であると同時に、コスト的に不可能であった。一方、本発明の装置は、エネルギーとして太陽エネルギーのみを使用する造水装置を、非常にコンパクトな形状で実現したものであり、この装置により、海水,河川水或いは使用水から効率よく造水できることが大きな特徴であり、離島や僻地,山間地,あるいは各家庭などにおいて、日々の必要な飲料水を容易に獲得できる。
特に、本発明の装置は、朝夕の比較的太陽エネルギーの弱い時間帯でも、効率よく造水可能なことが大きな特徴である。
また本発明の方法によって、従来よりもはるかにコンパクトな装置での、水の浄水化が可能となる。例えば、生活するのに1人が必要な水量(4L/人/日)でも効率よく生産できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】装置の全体図22と入射する日射1を示す。
図2】装置の全体図22を上方から見た概略図を示す。
図3】フレネルレンズ2(集光(熱)装置)の断面の概略図であって(フレネルレンズ断面の鋸状態は省略)、日射の方向を示す垂直に立てた棒12を用いた場合を示す。
図4】フレネルレンズ2(集光(熱)装置)の平面図であり、支持枠13及び支持枠固定具14で固定したフレネルレンズ2(集光(熱)装置)を示す。
図5】フレネルレンズ2の平面図であり、支持棒15で支持したフレネルレンズ2(集光(熱)装置)を示す。
図6】フレネルレンズ2(集光(熱)装置)を地上に設置した場合の図であり、回転軸16・回転軸支柱17・回転軸支柱設置治具18からなる回転用冶具で固定したフレネルレンズ2(集光(熱)装置)を示す。
図7】フレネルレンズ2(集光(熱)装置)を、支柱3を介して回転台7に固定した状態を示す。2本の破線矢印は、各々回転台の回転方向,及び支柱3の移動方向を表す。
図8】太陽光透過性を有する容器4の一部を覆った装置の状態を示す。
図9】太陽光透過性を有する容器4の、形状例(円錐柱,四角錐柱)である。
図10】山型(半球)形状の、受光(熱)部の例である。
図11】受光(熱)面が、平面の場合(A)と山型(半球)面の場合(B)の、一日の受光(熱)エネルギーの差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、小型・軽量で原水(例えば、汚染水,海水,河川水,風呂やシャワー等の再利用水)を加熱・蒸発させて、それを凝縮して液化・回収し、蒸留水を製造する装置である。特に、小型・軽量・安価な装置の開発を目指した。
【0033】
以下、本発明の実施形態を、場合によっては図面に則って説明するが、図面はあくまでも例示であり、本発明はそれらに限定されるものでは無い。
【0034】
[(i)可動性を有する太陽光(熱)の集光(熱)装置]
上述の目的を達成するには、装置のサイズを最小限にするべく太陽光(熱)を集光(熱)する必要がある。
【0035】
(集光(熱)装置の種類)
本発明で用いる集光(熱)装置としては、フレネルレンズ,凸レンズ,凹面鏡,パラボラ反射鏡等を使用することができるが、質量的,コスト的にフレネルレンズが最も好ましい。
フレネルレンズとは、レンズの厚みを減らすために、一般的なレンズ表面を、同心円状のいくつかの領域に分割して切込みを入れ、角度をつけてカッティングを施したものであり、断面は鋸状となっている。厚みを減らすことによって、取り扱い易く、また設置場所の制約もより少なくなる点で、本発明のような小型の装置に適している。
【0036】
(集光(熱)装置の材質)
材質としては、特にプラスチックのフレネルレンズが好ましい。
【0037】
プラスチックとしては、太陽光透過性を有するものであれば特に限定されないが、製造の容易さやコスト的にはポリスチレン(PS),アモルファスポリエステル(A−PET),アクリル樹脂(PMMA),ポリカーボネート樹脂(PC),透明ポリアミド(PA),透明ポリウレタン樹脂(PU),アクリル系樹脂(SAN),ポリ塩化ビニル(PVC)等が代表的に使用できる。
成形時の複屈折が極力抑えられたフルオレン環を有するポリエステル(FBP)やシクロポリオレフィン類に分類されるCOP,COC等も使用可能である。
【0038】
(集光(熱)装置の形状)
集光(熱)装置の形状には、円形や多角形等様々な種類が有り、本発明では特に制限が無いが、集光(熱)装置の面積を計算する場合や、集光装置の製法の容易さやコストの点で正方形等が好ましい。
【0039】
(集光形式)
集光(熱)装置での集光(熱)の形式は直線状或いは点状でも使用できるが、点状に集光(熱)する方が受光(熱)部の面積を狭くでき、受光(熱)部の形状の自由度の点でもより好ましい。
【0040】
(焦点距離)
集光(熱)装置の焦点距離は余り長いと装置が大きくなりすぎるので、100cm以下が好ましく、より好ましくは50cm以下、更に好ましくは30cm以下である。
また、下限は特に制限が無いが、好ましくは5cm以上である。
【0041】
(集光(熱)装置の厚み)
集光(熱)装置の厚みも特に限定しないが、薄くて強い方が好ましい。5mm以下が好ましく、より好ましくは3mm以下である。
また、下限は特に制限が無いが、好ましくは1mm以上である。
【0042】
集光(熱)装置は、具体的には、例えば、日本特殊光学樹脂株式会社(http://www.ntkj.co.jp/)や有機光学株式会社(http://www.opm7.com/)等のホームページから、好ましい材質,形状,厚み,集光形式,焦点距離等のものを、任意に選定することが出来る。
或いは、透明なプラスチックシートを用いてフレネルレンズを作成することも可能である。
【0043】
(集光(熱)装置の支持材)
集光(熱)装置は厚いと自立性があるが、2mm未満等と薄いものでは自立性に乏しく、
(1)図4に示す様な、周囲に取り付ける支持枠13と支持枠固定具14
或いは、
(2)図5に示す様な、フルネルレンズ2(集光(熱)装置)の中央部や対角線に筋交いに取り付ける支持棒15
の様な支持材を使うこともできる。
これら支持材(1),(2)の材質は、金属,プラスチック,木材,或いはその他の、集光(熱)装置に自立性を付与し得る強度を有するものであれば良い。
具体的には、アルミ,鉄等の金属,ポリ塩化ビニル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリカーボネート,アクリル樹脂,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂等の、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂,及び竹,木等が挙げられる。
【0044】
(集光(熱)装置の大きさ)
装置は、その大小に関わらず一定の性能を示すが、設置場所、取り扱い易さ、製造コストの点からは、2m角以下が好ましく、より好ましくは1m角以下、更に好ましくは80cm角以下であり、ことに家庭用であれば、30cm〜1m角が好ましく、更に好ましくは40cm〜80cm角である。
【0045】
(集光(熱)装置の太陽追尾)
フレネルレンズ等の集光(熱)装置は、公知の方法を用いて、太陽に垂直方向に配列するよう追尾させる(トラッキング)ことも可能である。
【0046】
具体的には、例えば地球の自転・公転運動の規則性等を用いて、決まっている太陽の時々刻々の軌道をコンピューター等に読み込ませて、自動的に集光(熱)装置を太陽に垂直方向に位置するように移動させることによって追尾することができる。
しかし、制御系や駆動系が必要な為に費用がかさみ、太陽光(熱)を利用するメリットが小さくなる。従って、人間が手動的(マニュアル)に集光(熱)装置の向きを定期的に変えていくことも好ましい。
【0047】
(集光(熱)装置の垂直配置治具)
マニュアルで、フレネルレンズを最適な方向にセットするのに、フレネルレンズに付けている棒12が大いに役に立つ。
例えば、添付図3に示す様に、フレネルレンズ2の上面の一部に垂直な棒状(例えば、直径3〜10mmで長さが20〜50mm程度の円柱或いは角柱)の治具12を立てておき、この棒12の日射による影が最小になるように方向と角度を調整することで、簡単に最適な向きに設定できる。こういう仕組みは、凹面鏡や凸レンズ等、他の集光装置でも可能であるが、フレネルレンズではより有利である。
尚、垂直棒の材質は特に制限されないが、例えば金属,プレスチック,木材等が挙げられる。
【0048】
(集光(熱)装置の可動性(方向と角度の調整))
尚、集光(熱)装置の可動性は、(i)の集光(熱)装置に結合させた下記の(i−1)又は(i−2)等を用いて、(i)の方向や角度を調整することによって確保することができる。
(i−1)回転軸及び回転軸支柱
(i−2)骨組み状部材からなり、(v)の容器を覆う形状を有する回転台
【0049】
(i−1)の具体例
例えば図6に示す様に、水平面(例えば、地上)や傾斜面(例えば、屋根上)に垂直になるように立てた回転軸支柱17にフレネルレンズ2等の集光(熱)装置を、回転軸16を介して自由回転するように設置してやることも出来る。
回転軸支柱17は、設置面に直接設置しても良いが、回転軸支柱設置治具18等を利用することによって、設置の安定性が増すため好ましい。
回転軸16は、フレネルレンズ2に直接連結しても良いが、図6に示す様に、フレネルレンズ支持枠13及びフレネルレンズ支持枠固定具14等を介して連結しても良い。
また、図5の様に、フレネルレンズ支持棒15を用いる場合、支持棒15を回転軸に連結するか、あるいは支持棒15と回転軸を兼ねても良い。
回転軸16,回転軸支柱17,回転軸支柱設置治具18の大きさや材質は、集光(熱)装置を支えきれる強度を有し、かつ装置全体のコンパクトさが考慮されていれば、特に制限されない。
また、太陽の一日の動きに応じて設置冶具18ごと、東から南(又は北)を経由して西の方向に透明容器4の回りを動かすことで、一日中太陽エネルギーを受光でき、利用することが出来る。
【0050】
(i−2)の具体例
又、朝から夕方まで太陽光を十分に利用するためには、例えば図1図7に示す回転台7の様な治具を用いて、集光(熱)装置の方向と角度を調整するのが好ましい。
【0051】
回転台7は、例えば金属製の針金等から構成される骨組み状の部材であるが、材質は、金属に限らずプラスチック,竹その他の木材等であっても良い。
主な骨組みとしては、後述の太陽光透過性を有する容器4を水平方向に取り囲む例えば輪状の部材と、支柱3を介して集光(熱)装置を取り付けるための、経線と同じ方向に容器4を取り囲む部材等が挙げられるが、回転台7の水平回転や集光(熱)装置の経線と同じ方向の移動を妨げない限り、その他の回転台7を補強するための部材を追加することもできる。
【0052】
回転台7の形状や大きさに特に制限は無いが、水平方向に回転させた際に、太陽光透過性を有する容器4と接触しない形状や大きさであることが必要である。
従って、例えば太陽光透過性を有する容器4がドーム状等の場合には、それより少し大きめの半径を有するドーム状等に相当する大きさであれば良い。
【0053】
フレネルレンズ2(集光(熱)装置)は、例えば図1,図7等に示す様に、支柱3を介して、回転台7に装着して用いる。
装着は、完全固定でも良いが、下記の様に、回転台7の骨組みに沿って(経線と同じ方向に)移動させることができる様に、仮固定とすることもできる。これによって、日中及び季節によって変化する太陽高度にも対応することができる。
【0054】
回転台7全体は、図7で示す様に、水平方向(緯線と同じ方向)に回転させることができるようになっている。
回転は、手動で行っても良いが、バネやステッピングモーター等の公知の自動回転技術を用いて、更には太陽の移動時間に合わせて回転させるように制御すると、便利である。
【0055】
また、支柱3は、回転台7のパーツである針金等に直接固定するのではなく、針金等に通した例えばポリプロピレン製等の「筒状体」に固定することが好ましい。
筒状体を、針金に、ビス等で仮固定することによって、ビスの緩締によって筒状体を適宜固定したり移動させたりできるからである。
これによって、フレネルレンズ2(集光(熱)装置)を、図7で示す様に、経線と同じ方向にも動かすことができる。
動かす方法としては、モーター等の動力を用いる方法があり、更にそれを、制御コンピューター又はタイマー等を用いて自動化することも可能であるが、上述の通り、これらの駆動や制御に費用がかかるという観点からは、例えば、島嶼国や山間地,砂漠等のエネルギーインフラの乏しい地域では、手動で行うことが好ましい場合もある。
【0056】
(支柱)
支柱3は、例えば針金,プラスチック棒,木や竹の棒等の天然素材等を用いることができ、その長さ及び回転台7への取り付け角度は、集光(熱)部面積ができるだけ狭くなる(集光率が高くなる)ように、フレネルレンズ2(集光(熱)装置)の中心部から受光(熱)部の中心部までの距離(L)がレンズの焦点距離(F)と同程度となるように決定すれば良く、具体的な長さの下限は、例えば、0.7F≦Lとするのが好ましく、より好ましくは0.8F≦L,更に好ましくは0.9F≦L程度である。
また上限は、L≦1.3Fが好ましく、より好ましくはL≦1.2F,更に好ましくはL≦1.1F程度である。
【0057】
上記のような各種の方法で集光(熱)装置の方向と角度を調整することにより、集光(熱)装置の向きを、常に太陽光に垂直になるように最適化できる。
【0058】
(集光率)
(i)の集光(熱)装置による集光率(集光(熱)装置面積/集光面積)は好ましくは10以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは1000以上である。集光率が大きい程、受光(熱)部の面積が小さくてすみ、装置全体の大きさも小さくなり、軽量・低価格が出来るというメリットがあるからである。また、集光率が大きい程、弱い太陽光でも水を蒸発させることができ好都合だからである。
【0059】
[(ii)集光(熱)した太陽光(熱)の非密閉性の受光(熱)部]
(受光(熱)部の非密閉性)
集光(熱)された太陽光(熱)を受ける本発明の(ii)の受光(熱)部は、非密閉性であることが肝要である。
即ち、受光(熱)部表面のうち、上面等の少なくとも一部が、密閉されず、空気中に開放されていることによって、受光(熱)部の温度が必ずしも100℃に到達していなくても、水の蒸気圧を利用して蒸発させることができるのである。
【0060】
(受光(熱)部の立体形状)
受光(熱)部の形状は図1の様に平面でも良いが、図10の様に、中央部が山状に盛り上がっている方が、日射角が変化しても日射を垂直に受光できる点で好ましい。
即ち、朝夕で傾いた日射を受けるには、図11でも示す通り、水平に置いた平面状の受光(熱)部よりも中央部が山状に盛り上がった受光(熱)部であれば、昼間の日射のみでなく朝夕の日射も効率よく受光(熱)出来る。
利用できるエネルギーは、図11中のこれらの曲線と水平線が囲む面積に比例するので、Bの方がかなり有利になる。
【0061】
(受光(熱)部の水平断面形状)
受光(熱)部の水平断面形状は、集光した太陽光の影である集光(熱)部を、できるだけ漏れなく取り込み、一定以上の集光(熱)効率を達成できる面積や径を有しておれば良く、円形や楕円形のほか、三角形,正方形,長方形,その他の多角形,或いはこれらで表せないその他の形状(以下、「不定形」と記載することがある。)等も用いることができ、特に制限は無い。
但し、製造コストや集光(熱)効率等の観点からは、円形や、正方形等の正多角形が好ましい。
【0062】
(受光(熱)部を構成する材料の形態)
本発明の受光(熱)部を構成する材料の形態としては、連続空隙を持つフェルト,織物,編み物,綿状物,又は粒子等が挙げられ、これらから選択した1種以上が用いられる。
また、受光した光(熱)を効率よく水に伝えて、水を加熱・蒸発させる必要上、多孔性で薄い材料が好ましい。
【0063】
(受光(熱)部の材質)
受光(熱)部は、集光された太陽光(熱)を効率よく受けることができれば、材質は特に問題としないが、集光された太陽光(熱)は温度が非常に高くなるので、耐熱性に優れる炭素材料,金属系材料,セラミック系材料等が好ましい。
【0064】
金属系材料としては、通常使用される太陽光吸収材料,選択透過膜材料等が使用できるが、コストや質量等の点からは、炭素材料やセラミック系材料等が好ましく、特に炭素材料は、安価・軽量で、形状も粒状,繊維状,フェルト状,ブロック状と様々な形状を取ることができるため、好ましい。
【0065】
上述した通り、受光(熱)部は、受光した光(熱)を効率よく水に伝えて、水を加熱・蒸発させる必要上、多孔性で薄い材料が好ましく、そういった観点からも、多孔質である炭素材料が好ましい。
【0066】
中でも、例えば、炭素材料を主体としたフェルト,織編物,綿状物,或いは粒子等は、任意の大きさ,厚さに成形することができてより好ましい。
【0067】
使用する炭素材料は、通常使用される炭素材料であれば特に問題なく使用できる。
特に好ましくは繊維表面に多孔が存在する炭素繊維(例えば、活性炭繊維)等である。
又、バイオマス炭化物(例えば、木質炭,サトウキビ搾りかすの炭化物,竹炭,おがくず炭,紙の炭化物等)は、多孔性で価格も安価で好ましい。
特に炭素繊維は、そのまま、フェルトや織物、編み物に成形できるために非常に使用しやすい。
また、一般的に粒子状になるバイオマス炭化物は、圧縮成形等によって薄いプレート状に加工できる。
【0068】
フェルトや織物,編み物を使った場合、その下に多孔性のバイオマス炭化物のシートをおいて二重構造とすることが、受光した太陽光(熱)をその下に通さず、水を効率よく加熱して蒸発させることが出来る点で好ましい。
【0069】
受光(熱)部が、炭素材料を主体としたものである場合の、炭素材料の含有比率は、炭素の利点を生かすためには、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上,特に好ましくは95質量%以上である。
【0070】
(受光(熱)部の厚み)
受光(熱)部の厚みは、10mm以下が好ましく、更に好ましくは7mm以下、特に好ましくは5mm以下である。
厚みが10mm以下であると、受光したエネルギーで厚み10mmに存在する水全体を過熱して蒸発させるまでの時間が短時間で済むからであり、特に5mm以下であれば、非常に短時間で水を蒸発させる温度まで上げることが出来、効率がよい。
また、厚みに下限は無いが、例えば1mm以上が好ましい。
【0071】
(受光(熱)部の目付)
尚、受光(熱)部の厚みが薄い場合は、受光(熱)部に到達した太陽光(熱)が受光(熱)部を通過せず確実に受光(熱)される程度に、受光(熱)部の密度を上げると良い。
【0072】
例えば、厚み1mmの場合では、炭素繊維製の、フェルト或いは織編物の目付け(1m面積当たりの質量(g))は、好ましくは50g以上,より好ましくは100g以上,更に好ましくは150g以上である。
目付けの上限は特に限定されないが、製法によって自ずから限界があり、通常高々500g程度である。
【0073】
(受光(熱)部の水平断面の径)
受光(熱)部の大きさは、下記xとyの比率から決めることができ、下記式の関係を有することが、太陽エネルギーを十分に利用できる点で好ましい。
【0074】
y ≦ x ≦ 5y
【0075】
x:受光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
(尚、本明細書においては、以下、「受光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)」を単に「受光(熱)部の直径等」と記載することがある。)
y:集光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)の長さ
(集光(熱)部とは、受光(熱)部に映った太陽光の影である。)
(尚、本明細書においては、以下、「集光(熱)部の水平断面の直径(又は短径)或いは一辺(又は短辺)」を単に「集光(熱)部の直径等」と記載することがある。)
【0076】
xを、短径や短辺で規定したのは、例えば受光(熱)部の水平断面形状が楕円形や長方形等の場合には、太陽光エネルギーの取りこぼしを防ぐためには、集光(熱)部を出来るだけ多く取り込むために、楕円の短径,又は長方形の短辺の長さを、集光(熱)部の直径等の1.0倍以上とすることが好ましいからである。
従来の蒸発・回収装置では、受光(熱)部は、太陽の移動を考慮して、集光(熱)部よりもかなり大きく設定する必要があり、本発明の様に、「受光(熱)部の直径等」を、「集光(熱)部の直径等」のわずか1.0倍という小さな値から設計可能とするのは、画期的なことである。
【0077】
また、上記の比率の下限は、より好ましくは、1.1y ≦ x 更に好ましくは、1.2y ≦ x,特に好ましくは、1.3y ≦ xである。
また、xは、特に上限を定める必要は無いが、装置のコンパクト化等の観点からは、x ≦5yであることが好ましく、より好ましくは、x ≦3yである。
装置全体のコンパクト化の為にも、5y以下で十分だからである。
【0078】
xがyの1.0倍以上の場合、理論上は、集光(熱)した太陽光のエネルギーの取りこぼしが殆ど無いが、集光(熱)部が多少ずれるリスクも考慮すると、1.1倍以上がより好ましい。
【0079】
ここで、集光(熱)部の水平断面の面積は、フレネルレンズ等の集光(熱)装置の面積と集光率で決まる。
【0080】
(集光(熱)部面積(Y)=フレネルレンズ面積(S)/集光率(n))
【0081】
つまり、上述の「y:集光(熱)部の直径等」の長さは、集光(熱)部面積(Y)を用いて、例えば下記式によって求めることができる。
集光(熱)部が円形である場合:y=(Y/0.785)1/2
集光(熱)部が正方形である場合:y=Y1/2
【0082】
従って、「x:受光(熱)部の直径等」の好ましい長さは、下記によって表すことができる。
集光(熱)部が円形である場合:(Y/0.785)1/2 ≦ x
集光(熱)部が正方形である場合:Y1/2 ≦ x
【0083】
例えば、フレネルレンズが50cm角で集光率(n)が100の場合、受光(熱)部の、好ましい大きさ(及び形状)は、下記のようにして算出することができる。
【0084】
レンズ面積(S):2500cm
集光(熱)部(円形)面積:25cm(=2500/100)
集光(熱)部の水平断面の直径(y):約5.6cm(=(25/0.785)1/2
受光(熱)部の直径等の長さ(x):約5.6cm以上
受光(熱)部の形状(例):約5.6cm径以上の円形(又は短径約5.6cm以上の楕円形),或いは約5.6cm角以上の正方形(又は短辺約5.6cm以上の長方形)等
【0085】
但し、太陽光エネルギーの十分な取り込みや設置の容易さ,設計の容易さ等の観点からは、例えば6cm径の円形(或いは6cm角の正方形)が好ましく,より好ましくは7cm径の円形(或いは7cm角の正方形)である。
【0086】
同様に、フレネルレンズが50cm角で集光率が10000の場合、受光(熱)部の、好ましい大きさ(及び形状)は、下記のようにして算出することができる。
【0087】
レンズ面積(S):2500cm
集光(熱)部面積:0.25cm(=2500/10000)
集光(熱)部の水平断面の直径(y):約0.56cm(=(0.25/0.785)1/2
受光(熱)部の直径等の長さ(x):約0.56cm以上
受光(熱)部の形状(例):約0.56cm径以上の円形(又は短径約0.56cm以上の楕円形),或いは約0.56cm角以上の正方形(又は短辺約0.56cm以上の長方形))
【0088】
但し、太陽光エネルギーの十分な取り込みや設置の容易さ,設計の容易さ等の観点からは、例えば約0.6cm径の円形(或いは0.6cm角の正方形)が好ましく,より好ましくは0.7cm径の円形(或いは0.7cm角の正方形)である。
【0089】
しかし、集光率は、レンズの大きさ等によっても変化するため、受光(熱)部の大きさには、ある程度幅を持たせておくことが好ましい。
【0090】
つまり、例えば使用が想定されるフレネルレンズが30〜50cm角の正方形である場合には、受光(熱)部は、好ましくは6cm径(或いは角),より好ましくは7cm径(或いは角),更に好ましくは7.5cm径(或いは角)等とすることができる。
【0091】
また、使用が想定されるフレネルレンズが50cm〜1m角の正方形である場合には、受光(熱)部は、好ましくは10cm径(或いは角),より好ましくは12cm径(或いは角),更に好ましくは15cm径(或いは角)等とすることができる。
【0092】
(受光(熱)部の水平断面の面積)
また、受光(熱)部の大きさは、受光(熱)部の水平断面の面積(X)と集光(熱)部の水平断面面積(Y)の比率からも決定することができ、太陽エネルギーを十分に利用するという観点からは、下記式の関係を有することが好ましい。
1.1Y ≦ X
尚、より好ましくは1.2Y ≦ X である。
また、面積は、特に上限を定める必要は無いが、X ≦ 3Yが好ましい。
装置全体のコンパクト化の為にも、3Y以下で十分だからである。
【0093】
従来の蒸発・回収装置では、受光(熱)部は、太陽の移動を考慮して、集光(熱)部よりもかなり大きく設定する必要があり、本発明の様に、「受光(熱)部の面積」を、「集光(熱)部の面積」のわずか1.1倍という小さな値から設計可能とするのは、画期的なことである。
また、この部分の製造に必要な部材量も少なくて済み、コストも大幅に低減できる。また、この種の装置では必ず集熱した部分から放射(黒体放射)による放熱が大きく、温度の上がり方や蒸発量が少なくなるが、装置が小型化するとその分で放熱量が少なくて済み、太陽熱の利用効率が大きく上げることが出来る。これも、本発明の装置の大きな特徴の一つである。
【0094】
通常は、太陽の移動に合わせて、集光(熱)部分も移動するため、従来の太陽熱を利用するこうした装置は、全ての集光部を網羅するために、受光(熱)部を実際の集光面積よりもかなり大きくする必要があった。
本発明では、集光(熱)装置に可動性を持たせることによって、太陽の動きに関わらず集光(熱)部とほぼ同程度の大きさの受光(熱)部に常に集光(熱)することが可能となるため、装置全体をとても小さくすることができ、各種インフラの整っていない家庭への設置も可能となるという利点がある。
【0095】
(蒸発後の残渣の排出)
受光(熱)部では供給した原水の内、蒸発しない食塩,無機質,その他汚染物は受光(熱)部に残るために、それらを除去・回収する仕組みを受光(熱)部の下部に作っておいてもよい(図示せず)。これはコックがついた小さなチューブでもよい。任意の時間で排水すればそれらが高濃度に濃縮した水が排出される。例えば、原水に海水を使用した場合、塩分が高度に濃縮した海水が排出されるので、これを使って製塩業も容易に可能になる。
【0096】
[受光(熱)部用容器]
受光(熱)部の内部には原水も溜まっているために、その原水が落ちないように周囲を高くした、皿状或いは円筒状の容器等(以下、「受光(熱)部用容器」と記載する)で囲っておくことも出来る。
【0097】
また、この受光(熱)部用容器に代えて、例えば図1の11等で示した様な、受光(熱)部設置場所21の上面に設けた凹部(窪み)等を利用し、その凹部内に受光(熱)部を設置することもできる。
【0098】
(受光(熱)部用容器の大きさ・形状)
この受光(熱)部用容器の大きさや形状は、受光(熱)部が入る容積(面積×高さ)を確保でき、尚且つ水分蒸発を妨げない開口部を有しておれば十分であり、受光(熱)部の面積の好ましくは1.1倍以上,より好ましくは1.2〜3倍,更に好ましくは1.2〜2倍である。
【0099】
受光(熱)部用容器の直径等は、受光(熱)部の直径等の1.0倍以上であれば良いが、好ましくは1.1倍以上,より好ましくは1.2倍以上であり、例えば、受光(熱)部が直径5cmの円形とするならば、好ましい受光(熱)部用容器の水平断面形状は、直径5cmの円形,或いは一片が5cmの正方形であれば良く、好ましくは、直径5.5cmの円形,或いは一片が5.5cmの正方形,より好ましくは直径6cmの円形,或いは一片が6cmの正方形等となる。
【0100】
他の形状としては、少なくとも受光(熱)部を十分にその内部に設置することができ、かつエネルギー変換効率を極端に下げるような余分な空間がなければよい。
【0101】
(受光(熱)部用容器の材質)
受光(熱)部用容器の材質は、金属,セラミック,プラスチック,木質材等特に限定されないが、プラスチックの成形体が形状の自由度,安価,軽量,錆びない等の点で好ましい。また、プラスチック成形体であれば、熱伝導率も低く、受光(熱)部の温度を維持できる点でも好ましい。
【0102】
使用可能なプラスチック材料としては、ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリエチレン樹脂(PET,PBT,PTT),ポリアミド系樹脂(PA6,PA66,PA12,PA610等),ブタジエン樹脂(ABS,AS等),フッソ系樹脂(PTFE,PFE等),塩化ビニル系樹脂(PVC),エポキシ樹脂,ポリウレタン樹脂等を使用することが出来る。
【0103】
更に中空構造やボイドを含有させたものであれば、軽量性や断熱性に優れて好ましい。
【0104】
(受光(熱)部設置場所)
(ii)の受光(熱)部や、受光(熱)部用容器等は、円柱や角柱,或いは少なくとも一方の端(図1等では上端)を閉じた筒状体(円筒や角筒等)からなる受光(熱)部設置場所の上面に設置することが出来るが、図1で示す通り、(iii)の送水材5や(iv)の原水貯槽6等を内部の空洞部分に格納できる、円筒21等の様な筒状体(円筒や角筒等)であれば、装置全体を、よりコンパクトにできるため好ましい。
【0105】
(断熱材)
受光(熱)部に受けた太陽エネルギーを水の蒸発に最大限利用するために、例えば、
(イ)受光(熱)部を、内部に空洞を有する受光(熱)部設置場所に、直接設置する場合には、受光(熱)部設置場所内側((受光(熱)部設置面)の裏側)
(ロ)受光(熱)部用容器を用いる場合には、当該容器の外側(底面及び/又は側面)
(ハ)受光(熱)部用容器に代えて、内部に空洞を有する受光(熱)部設置場所の上面に設けた凹部を利用する場合には、受光(熱)部設置場所内側(空洞の様式にもよるが、凹部の底面及び/又は側面に相当する箇所)
等に、断熱材を設けることが好ましい。
【0106】
この場合、断熱材は送水機能があるように連通した多孔性であることが好ましい。断熱材の材質は炭素材,セラミック,金属,木質,紙,ろ紙、或いはプラスチック等が利用できる。
【0107】
断熱材の厚みは、特に限定しないが、好ましくは10mm程度、より好ましくは3〜7mm程度である。
【0108】
後述する(iii)の送水材は、この断熱材に沿って原水貯槽まで伸ばすこともできるが、断熱材自体に、(iii)の送水材用の開口部を設けるか或いは、受光(熱)部用容器や受光(熱)部設置場所等に設けられた、送水材用開口部の周辺に、1又は複数の断熱材を貼付すると、送水効率を下げることがないため好ましい。
【0109】
[(iii)受光(熱)部に原水を送る送水材]
(ii)の受光(熱)部の下部には、原水の貯槽から水を吸い上げる(iii)の送水材がある。
受光(熱)部での水の蒸発に必要な原水は、後述する原水貯槽から、この送水材を通じて供給される。
【0110】
(送水材の形態・材質)
送水材は、水を所定の速度で供給できるものであれば、特に限定しないが、通常、毛細管現象を利用できる紐状物,短冊状物,綿状物,不織布状物,チューブ状物である。
【0111】
紐状物,短冊状物,綿状物,不織布状物には、綿(コットン),紙(ティッシュペーパー,キッチンペーパー等のペーパータオル,半紙等の、適度な吸水性を有するものが好ましい。),麻等の天然繊維や、アクリル,ナイロン,ポリエステル,レーヨン等の合成繊維,或いは炭素繊維等が使用できるが、毛細管現象で水を輸送する為に、表面を、公知の方法で親水化しているほうが好ましい。
【0112】
チューブ状物は柔軟なチューブ(例えば、シリコーン,アクリルゴム,ブタンゴム等のゴム状のチューブ)が好ましく使用できる。チューブを使用する場合、何らかの駆動系や、駆動系がない場合は重力のポテンシャル(サイフォン現象)が必要であり、貯槽の配置を考慮しなければならない。
【0113】
(送水材の設置方法)
送水材は、後述する原水貯槽から受光(熱)部へ通じている。
この際、送水材が、上述した受光(熱)部用容器の縁を通じて受光(熱)部へ達するように設置しても良いが、受光(熱)部設置場所,及び受光(熱)部用容器(受光(熱)部設置場所の凹部が受光(熱)部用容器を兼ねる場合には、その凹部)や断熱材に設けた開口部を通じて受光(熱)部へ通すと、送水効率をより保つことができるため好ましい。
【0114】
[(iv)原水貯槽]
本発明の(iv)原水貯槽は、(ii)の受光(熱)部に(iii)の送水材を通じて原水(海水,河川水,汚染水等)を供給するためのものであり、例えば図1に示す原水貯槽6の様なものは、図1の様に、受光(熱)部10に接してその下部にあってもよく、或いは離れてあってもよい。また、後述する(v)の太陽光透過性を有する容器の外にあってもよい。
(iv)原水貯槽の材質,大きさ,及び形状は、原水貯槽としての役割を果たし得る限り特に制限が無いが、図1の様に、受光(熱)部設置場所21等の内部空洞に収まる大きさや形状が、装置全体のコンパクト化のためには好ましい。
【0115】
[(v)水蒸気を受ける太陽光透過性を有する容器]
また、本発明の「水の蒸発・回収装置」は、加熱され蒸発した水の蒸気を受けて凝縮させる為に、受光(熱)部を、例えば図1の4の様な、太陽光透過性を有する容器で覆っている。この容器は日射を透すが、発生した蒸気が散逸しないように、本発明の水の蒸発・回収装置の、少なくとも(iv)の原水貯槽以外の各部材を覆っていることが好ましい。
【0116】
但し、必要に応じて、後述する蒸留水貯槽,(iii)の送水材等も、(v)の太陽光透過性を有する容器の外に設置しても良い。
【0117】
(太陽光透過性を有する容器の材質)
太陽光透過性を有する容器は、その厚みで入射光の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上を透過させる程度に透明であれば材質は特に限定されないが、通常は透明なガラス,プラスチック,プラスチックフィルム,又はプラスチックシートが好ましく使用できる。こうした材料は、太陽光に含まれる紫外線(UV)〜可視光線(VL)〜赤外線(IR)を良く透過させることができ、カバー容器の材料として好ましい。
【0118】
また、容器全体が同一の材質である必要はなく、全体はプラスチックで、太陽光線を通過させる部分(太陽光の移動経路も考慮することが好ましい)がガラスであることも可能であり、その逆も可能である。
【0119】
(太陽光透過性を有する容器の厚み)
太陽光透過性を有する容器の厚みは、形状を維持するのに十分な厚みがあれば、特に限定されない。例えば、ガラス製では1mmもあれば十分である。又、プラスチック製では1mm前後で良い。プラスチック製のフィルムやシートでは0.1mm以下でも十分である。ただ、この場合はフィルムやシートを乗せてテント状にするための骨組みが必要であるが、この方式は低価格,軽量,高光線透過率、かつ更新も容易で便利である。
【0120】
(太陽光透過性を有する容器の大きさ)
太陽光透過性を有する容器の大きさは、蒸発した水蒸気をすべて受ける大きさであれば特に限定しないが、例えば受光(熱)部と当該容器の水平断面が共に円形(又は正方形)である場合、容器の水平断面の直径(又は一辺の長さ)が、受光(熱)部の水平断面の直径(又は一辺の長さ)の、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは、1.6倍以上である。
また、上限は、10倍以下が好ましく、より好ましくは7倍以下である。
【0121】
詰まり、この装置の特徴は、蒸発量と比較して非常に小さな装置に出来ることであり、こうした技術は従来のどの提案にも示されていない。
【0122】
具体的な大きさとしては、例えば、受光(熱)部の水平断面が3cm径又は3cm角であれば、4.5cm以上30cm以下(例えば5cm径或いは5cm角)が好ましく、より好ましくは4.8〜21cm(例えば5〜7cm径あるいは5〜7cm角)である。
【0123】
(太陽光透過性を有する容器の形状)
太陽光透過性を有する容器の形状は、図1の4の様な半カプセル状のほか、
半球形(ドーム状),球形,円錐形,三角錐や四角錐等の角錐,図9のような、円錐柱や角錐柱(三角錐柱,四角錐柱等)
等の、容器壁面で凝縮した水がスムースに下方に流れ落ちる形状であれば特に限定されない。
【0124】
(太陽光透過性を有する容器の内面の性質)
また、太陽光透過性を有する容器の内側は親水性の方が、水滴が出来ず、太陽光透過性を維持できるので好ましい。この場合の親水性は水の接触角が90°以下が好ましく、更に好ましくは70°以下である。親水化によって凝縮した水は常に下方に流れ落ちて、また、凝結した水滴の付着による不透明化を防ぎ、容器の太陽光透過性を維持できる。
【0125】
親水化は、ガラス容器であれば親水化処理剤(例えば、シリコーン系親水化剤,光触媒によるコーティング)による処理,酸化チタンやシリカ等のコーティング,プラズマ処理,オゾン処理,或いはコロナ放電処理等によって行うことができる。
【0126】
容器の材質がプラスチック,プラスチック製のフィルム又はシートであれば、その構成成分自体を、親水性ポリマー(又は樹脂),或いは親水性ポリマー(又は樹脂)と他のポリマーとのブレンド又は共重合等としたり、容器の内面に、親水性ポリマー(又は樹脂)のコーティング等を行っても良く、また、プラズマ処理やコロナ放電処理等によって容器の内面を親水化しても良い。
【0127】
親水性ポリマー(又は樹脂)としては、単糖類,多糖類,シクロデキストリン等の天然物,ポリビニルアルコール,ポリアルキレングリコール,親水性アクリル樹脂,親水性ウレタン樹脂,酢酸セルロース等の親水性高分子或いはその誘導体等が挙げられ、これらは本来的な親水性であるため好ましい。
【0128】
(太陽光透過性を有する容器の外表面構造)
容器の外表面は、特にどういう構造であるかの限定はないが、例えば、0.2μm程度の微小な突起を無数に有し、表面での光の反射率を抑えた構造(例えば、「モスアイ構造」)とすることも出来る。或いは、屈折率の異なる数層の薄膜をコーティングして反射率を低減する反射防止皮膜(AR処理)を施すことも可能である。」
【0129】
[太陽光透過性を有する容器の遮光カバー]
フレネルレンズの方向や角度は、受光(熱)部に投影された光(集光(熱)部)の位置を確認し、調整する必要があるが、集光(熱)部は太陽光の強度が強くなっているので長時間見ながら調整を行うと、目に障害を与える可能性がある。
一方、太陽光透過性を有する容器の外表面は、日射が入射する位置では太陽光透過性を維持しておく必要があるが、それ以外の部分は、少なくとも内部が観察できる程度の透明性があれば良い。
【0130】
従って、太陽光透過性を有する容器は、その一部を、透光性を有する黒い遮光布(織物, 編み物, メッシュ,紙等)やカラーフィルムの様な遮光カバー19で覆い隠すことも出来る(図8)。
これによって強い光が和らげられ、長期間の観察も可能となる。
【0131】
この太陽光透過性を維持するための、遮光カバー開口部分の大きさ・形状は、少なくとも集光された太陽光が、太陽光透過性を有する容器を通過する際の形状をカバーできれば良く、どういう大きさ・形状でもかまわないが、太陽の動きに合わせて開口部分を容易に移動可能な様に、単に太陽光透過性を有する容器に被せて、手で動かせるようにしておくのが良い。
【0132】
[蒸留水貯槽]
蒸発した水は、(v)の太陽光透過性を有する容器の内面で凝縮され、当該容器の内面を伝って装置下部に滴下するが、その滴下した蒸留水は、例えば図1の様な、蒸留水貯槽8に回収することができる。
また、滴下蒸留水を漏れなく回収できる位置であれば、必ずしも図1の様に、滴下蒸留水の真下に設置しなくとも良く、例えば受け皿とパイプ等を介して、装置外部の離れたところに設置することも可能である。
【0133】
蒸留水貯槽の大きさは、滴下蒸留水を出来るだけ多く回収するという観点からは大きい程良いが、その一方で、装置全体をコンパクトにするという観点から、(v)の容器の内側に設置できる大きさに収めることが好ましい。
しかし、上述の様に(v)の容器の外部に設置する場合には、必ずしも、大きさの上限は無い。
尚、蒸留水貯槽の材質や形状は、蒸留水貯槽の役割を果たし得る限り、特に制限はされない。
【0134】
尚、太陽光透過性を有する容器及び蒸留水貯槽は、連続した密閉系でもいいし、一部開放部を有する開放系でもいい。ただ、余り大きな開放部があると蒸発した蒸気が外部にもれてしまうので、大きな開放部は好ましくない。
勿論、蒸留水貯槽の大きさに制限がある場合には、水が溢れることを防止するという観点からは、一杯になったら水を抜き取るパイプやコックを、更に併設することが好ましい。
【0135】
[水の蒸発・回収方法]
本発明の水の蒸発・回収方法は、下記(a)乃至(d)の工程を含むことを特徴とするものである。
【0136】
(a)可動性を有する集光(熱)装置で太陽光(熱)を集める工程
(b)非密閉性の受光(熱)部によって、(a)で集めた太陽光(熱)を受光(熱)する工程
(c)(b)の受光(熱)によって蒸発・凝縮した水を、太陽光透過性を有する容器の内面を伝わせ、蒸留水貯槽に滴下させる工程
(d)(c)で滴下した水を回収する工程
【0137】
具体的には、例えば図1に示す様に、非密閉性の受光(熱)部から蒸発・凝縮した水蒸気9を、太陽光透過性を有する容器4の内面を伝って装置下部に設置した蒸留水貯槽8に滴下させ、その滴下した水を回収する。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0139】
実施例1
図1に示す様な、装置を組み立てた。
【0140】
(i)集光(熱)装置
2は縦横30cm、厚み2mmのアクリル製の点焦点型(焦点距離;22cm)のフレネルレンズである。
フレネルレンズ支持枠13,及びフレネルレンズ支持枠固定具14の材質は、直径5mmの竹棒である。
【0141】
(ii)受光(熱)部
受光(熱)部10は、直径5cm、厚さ2mm、目付け150gの円盤状の活性炭繊維のフェルトである。
【0142】
この受光(熱)部は、その設置場所であるポリプロピレン製の、直径8cm,高さ12.5cmの円筒21の上面に設けた、内面の直径5cm、深さ1cmの円柱状の凹部(11)内に水平に敷いた。
尚、この凹部には中央付近に送水材用の開口部を設けてある。
【0143】
(iii)送水材
尚、その受光(熱)部10の下になるように、受光(熱)部設置場所21上面の窪み上から原水貯槽6にかけて、送水材5を設置した。
送水材5は、2枚のティッシュペーパーのうち1枚を、1/4に折りたたんでもの(iii−1)と、もう1枚を丸めたもの(iii−2)からなる。
送水材5の(iii−1)は、受光(熱)部設置場所21上面の窪みに敷いた。
送水材5の(iii−2)は、一方の端を、(iii−1)と設置場所21の凹部上面との間に噛ませ、他端を、21の中央付近に設けられた開口部を通して、21内部に設置された原水貯槽6に垂らした。そして、毛細管現象を利用して、水を受光(熱)部10まで輸送させた。
【0144】
(iv)原水貯槽
図1に示す様に、原水貯槽6を、受光(熱)部設置場所21の内部に設置した。
【0145】
(v)太陽光透過性を有する容器
受光(熱)部10,受光(熱)部設置場所21,原水貯槽6を囲む様に、直径18cmの半球形のガラス(厚み1mm)製の容器4((v)の太陽光透過性を有する容器)を被せた。
【0146】
更に、容器4の上に、集光(熱)装置を、可動性を有するように取り付けるための回転台7を被せた。
回転台7は、針金製であり、直径は20cmのドーム状の骨組みである。
フレネルレンズ2は、支柱3を介して、経線と方向の回転台パーツに通したポリプロピレン製の筒状体に取り付けた。
【0147】
図1に示す様に、(v)の太陽光透過性を有する容器4の内部下方に、蒸留水貯槽8を設けた。
【0148】
晴れた日に、フレネルレンズ2の、向きと受光(熱)部からの距離を調整して、受光(熱)部に、直径約1cmの太陽の影が写るように設定した(集光率(=フレネルレンズ面積/集光(熱)部面積)=1146)。光が到達すると直ちに、受光(熱)部10の水は蒸発を開始して、ガラス容器4の内面は水滴で濡れた。一部は内面を伝って下方に流れ落ちた後に、蒸留水貯槽8に滴下された。
【0149】
尚、5分間ごとに、回転台7の水平方向の回転や、フレネルレンズ2の経線方向の位置を手動で調整することで、フレネルレンズ2が、太陽光を垂直に受けられるように最適化した。
【0150】
一定時間(5分)ごとに質量を測定して、蒸発した水の量を測定した。
結果を表1に示す。
【0151】
また、下記式により、蒸発水量から日射エネルギーの利用効率を求めると、約67.5〜76.8%と従来の方法に比べて極めて高い効果を有することがわかった。
【0152】
太陽エネルギー:1kw=860000cal
25℃の水の蒸発潜熱:583.1cal
日射エネルギーの利用効率(%)
=(A)蒸発した水の蒸発エネルギー/(B)集光(熱)装置(レンズ)の面積分の太陽エネルギー×100
=単位面積当たり蒸発量×583.1/860000×100
【0153】
尚、利用効率が100%に至っていない原因は、フレネルレンズ2の透過率,太陽光透過性を有する容器4の外表面での反射,受光面での放熱その他が考えられるが、この実験装置は、以下の様にして更なる改善が可能である。
【0154】
例えば、[発明を実施するための形態]のところに記載した様な、(v)の容器の外表面構造の最適化や内面の親水化、「活性炭繊維のフェルト」と「多孔性バイオマス炭化物シート」を用いる(ii)の受光(熱)部の二重構造化,受光(熱)部の下方に設置する断熱材等によって、効率を限りなく100%に上げることが出来ると考えられる。
【0155】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の装置は、非常に安価で簡単な装置を使い、海水や汚染水からの浄水・淡水化が可能になり、特に、水事情の悪い離島・島嶼地域や山岳地域,砂漠地域,ジャングル地域等において、日々必要な浄水の確保が可能になり、人道的,環境的,産業的に大きな意義がある。
また、蒸発させなくても水の温度を沸騰するまで上げることができることから、雑菌の滅菌等ができ、例えば、河川水の消毒ができ、簡単なろ過をすることで飲料とすることが出来、飲料事業等に寄与できる。
【符号の説明】
【0157】
1:日射
2:フレネルレンズ(集光(熱)装置)
3:集光(熱)装置の支柱
4:太陽光透過性を有する容器
5:水吸い上げ材(送水材)
6:原水貯槽
7:集光(熱)装置用の回転台
8:蒸留水貯槽
9:水蒸気
10:受光(熱)部
11:受光(熱)部設置場所(21)の上面凹部
12:垂直棒
13:フレネルレンズ支持枠
14:フレネルレンズ支持枠固定具
15:フレネルレンズ支持棒
16:フレネルレンズ回転軸
17:フレネルレンズ回転軸支柱
18:フレネルレンズ回転軸支柱設置冶具
19:太陽光透過性を有する容器の、遮光カバー
20:太陽光透過性を有する容器の、カバーで覆われていない(日射が透過する)部分
21:受光(熱)部設置場所
22:本発明の水の蒸発・回収装置
図1
図3
図4
図5
図6
図7
図9
図10
図11
図2
図8