特開2016-223761(P2016-223761A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-223761(P2016-223761A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】化学蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20161205BHJP
   C09K 5/16 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   F28D20/00 G
   C09K5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-242493(P2015-242493)
(22)【出願日】2015年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-112386(P2015-112386)
(32)【優先日】2015年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】森 研二
(72)【発明者】
【氏名】針生 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
(57)【要約】
【課題】貯蔵器の小型化を図りつつ、貯蔵器の温度変化を緩和することができる化学蓄熱装置を提供する。
【解決手段】化学蓄熱装置10は、反応媒体との化学反応により発熱すると共に熱が与えられると反応媒体が脱離して蓄熱する反応材15を有する反応器11と、反応器11と接続された吸着器13とを備え、吸着器13は、反応媒体が吸着されると共に反応媒体が脱離する吸着材16と、吸着材16を収容する容器17とを有し、吸着器13の容器17内には、熱伝導率が吸着材16よりも高く且つ熱容量が吸着材16よりも大きい熱授受材18が吸着材16と共に混在されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体との化学反応により発熱すると共に熱が与えられると前記反応媒体が脱離して蓄熱する反応材を有する反応器と、
前記反応器と接続された貯蔵器とを備え、
前記貯蔵器は、前記反応媒体が吸着されると共に前記反応媒体が脱離する吸着材と、前記吸着材を収容する容器とを有し、
前記貯蔵器の前記容器内には、熱伝導率が前記吸着材よりも高く且つ熱容量が前記吸着材よりも大きい熱授受材が前記吸着材と共に混在されていることを特徴とする化学蓄熱装置。
【請求項2】
前記吸着材及び前記熱授受材は、複数の粒子から構成されており、
前記吸着材の粒子のモード径をRa、前記熱授受材の粒子のモード径をRmとしたときに、0.1≦Rm/Ra≦10.0であることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱装置。
【請求項3】
前記吸着材及び前記熱授受材は、複数の粒子から構成されており、
前記容器内の前記吸着材の粒子の総体積をVa、前記容器内の前記熱授受材の粒子の総体積をVmとしたときに、0.1≦Vm/Va≦5.0であることを特徴とする請求項1または2記載の化学蓄熱装置。
【請求項4】
前記熱授受材は、板状を呈していると共に、前記容器の内壁面に接触していることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱装置。
【請求項5】
前記容器は、円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の化学蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化学蓄熱装置としては、例えば特許文献1に記載されている装置が知られている。特許文献1に記載の化学蓄熱装置は、アンモニア(NH)と化学反応する反応材を含む反応器と、この反応器と管路を介して接続され、アンモニアを物理吸着する吸着材を含むアンモニア貯蔵器とを備えている。アンモニア貯蔵器は、吸着材が内部に充填された偏平状の容器と熱交換フィンとが交互に配置された構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−242053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、反応ガスであるNHを物理吸着する吸着材は、NHを吸着する時には発熱し、NHを脱離させる時には吸熱する。吸着材に対するNHの吸着及び脱離を効率良く行うには、吸着材と外気との熱交換を行う等してアンモニア貯蔵器の温度を一定に保つことが望ましい。しかしながら、アンモニア貯蔵器内に充填される吸着材自体の熱伝導性は悪いので、アンモニア貯蔵器の温度変化を十分に抑制するためには、アンモニア貯蔵器における外気との熱交換面積を大きくする必要がある。上記特許文献1に記載のアンモニア貯蔵器では、吸着材が充填される容器を複数の偏平状部分に分割すると共に、それら偏平状の容器の間に熱交換フィンを配置することで吸着材と外気との間での熱交換を行っている。しかし、そのような構成でアンモニア貯蔵器の温度変化を十分に抑制しようとすると、アンモニア貯蔵器の構造が複雑化すると共にアンモニア貯蔵器が大型化してしまうという問題が発生する。
【0005】
本発明の目的は、貯蔵器の小型化を図りつつ、貯蔵器の温度変化を緩和することができる化学蓄熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の化学蓄熱装置は、反応媒体との化学反応により発熱すると共に熱が与えられると反応媒体が脱離して蓄熱する反応材を有する反応器と、反応器と接続された貯蔵器とを備え、貯蔵器は、反応媒体が吸着されると共に反応媒体が脱離する吸着材と、吸着材を収容する容器とを有し、貯蔵器の容器内には、熱伝導率が吸着材よりも高く且つ熱容量が吸着材よりも大きい熱授受材が吸着材と共に混在されていることを特徴とする。
【0007】
このような化学蓄熱装置においては、貯蔵器の容器内に、熱伝導率が吸着材よりも高く且つ熱容量が吸着材よりも大きい熱授受材が吸着材と共に混在されている。従って、貯蔵器の吸着材から反応媒体が脱離するときは、吸着材が吸熱するため、熱授受材から吸着材に熱が移動する。このため、貯蔵器の温度低下が抑制される。一方、貯蔵器の吸着材に反応媒体が吸着されるときは、吸着材が発熱するため、吸着材から熱授受材に熱が移動する。このため、貯蔵器の温度上昇が抑制される。従って、吸着材と外気とを熱交換して貯蔵器の温度変化を抑制するために貯蔵器を大型化しなくて済む。これにより、貯蔵器の小型化を図りつつ、貯蔵器の温度変化を緩和することができる。
【0008】
吸着材及び熱授受材は、複数の粒子から構成されており、吸着材の粒子のモード径をRa、熱授受材の粒子のモード径をRmとしたときに、0.1≦Rm/Ra≦10.0であってもよい。この場合には、吸着材の粒子と熱授受材の粒子との隙間が少なくなり、吸着材と熱授受材との接触領域が十分に確保されるため、吸着材と熱授受材との間を熱が移動しやすくなる。これにより、吸着材からの反応媒体の脱離時に、貯蔵器の温度低下が一層抑制されると共に、吸着材への反応媒体の吸着時に、貯蔵器の温度上昇が一層抑制される。
【0009】
吸着材及び熱授受材は、複数の粒子から構成されており、容器内の吸着材の粒子の総体積をVa、容器内の熱授受材の粒子の総体積をVmとしたときに、0.1≦Vm/Va≦5.0であってもよい。この場合には、貯蔵器の温度変化を緩和しつつ、熱授受材の粒子の総体積の増大による貯蔵器の体格の増大を抑制することができる。
【0010】
熱授受材は、板状を呈していると共に、容器の内壁面に接触していてもよい。このように熱授受材が容器の内壁面に接触することにより、吸着材と熱授受材との間の熱移動に加え、容器を介して熱授受材と外気との熱交換が行われるようになる。これにより、貯蔵器の温度変化を一層緩和することができる。
【0011】
容器は、円筒状に形成されていてもよい。この場合には、容器が直方体状または立方体状に形成されている場合に比べて容器の強度が高くなるため、容器の厚みを薄くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯蔵器の小型化を図りつつ、貯蔵器の温度変化を緩和することができる化学蓄熱装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る化学蓄熱装置を備えた排気浄化システムを示す概略構成図である。
図2図1に示された吸着器の断面図である。
図3図2に示された吸着材及び熱授受材の粒子径分布を示すグラフである。
図4】吸着材に対するNHの脱離時及び吸着時における吸着器の温度変化を比較して示すグラフである。
図5図2に示された吸着器の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る化学蓄熱装置を備えた排気浄化システムを示す概略構成図である。図1において、排気浄化システム1は、車両のディーゼルエンジン2(以下、単にエンジン2という)の排気系に配設され、エンジン2から排出される排気ガスに含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化する。
【0016】
排気浄化システム1は、熱交換器3、ディーゼル酸化触媒(DOC:DieselOxidation Catalyst)4、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)5、選択還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)6及びアンモニアスリップ触媒(ASC:Ammonia Slip Catalyst)7を備えている。熱交換器3、DOC4、DPF5、SCR6及びASC7は、エンジン2に接続された排気通路8に上流側から下流側に向けて順に配設されている。
【0017】
熱交換器3は、エンジン2から排出される排気ガスと後述する化学蓄熱装置10の反応器11との間で熱交換を行う。DOC4は、排気ガス中に含まれるHC及びCO等を酸化して浄化する。DPF5は、排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集することで、排気ガスからPMを取り除く。SCR6は、尿素またはアンモニア(NH)によって、排気ガス中に含まれるNOxを還元して浄化する。ASC7は、SCR6を通過したNHを酸化する。
【0018】
また、排気浄化システム1は、電力等の外部エネルギーを必要とせずに、加熱対象である排気ガスを、熱交換器3を介して加熱する化学蓄熱装置10を備えている。化学蓄熱装置10は、可逆的な化学反応を利用して、外部エネルギレスで加熱対象を加熱(暖機)する装置である。具体的には、化学蓄熱装置10は、加熱対象から供給される熱により反応材15から反応媒体を脱離させて、その脱離した反応媒体を蓄えると共に、蓄えられた反応媒体を反応材15に供給することで、反応材15と反応媒体とを化学反応させて、化学反応時の反応熱(放熱)を利用して加熱対象を暖める装置である。即ち、化学蓄熱装置10は、可逆的な化学反応を利用して、加熱対象からの熱を蓄えると共に、加熱対象に熱を供給する装置である。本実施形態では、加熱対象は排気ガスであり、反応媒体はアンモニア(NH)である。
【0019】
化学蓄熱装置10は、熱交換器3に対して熱交換可能に配置された反応器11と、この反応器11とNH供給管12を介して接続された貯蔵器である吸着器13とを備えている。NH供給管12は、反応器11と吸着器13との間でNHを流通させるNH流路を構成する。NH供給管12には、開閉弁14が配設されている。
【0020】
反応器11は、NHとの化学反応により発熱すると共に排気ガスの熱が与えられるとNHを脱離して蓄熱する反応材15を有している。反応材15としては、組成式MXaで表されるハロゲン化物が用いられる。Mは、Mg、CaまたはSr等のアルカリ土類金属、若しくはCr、Mn、Fe、Co、Ni、CuまたはZn等の遷移金属である。Xは、Cl、BrまたはI等である。aは、Mの価数により特定される数であり、2〜3である。
【0021】
図2は、吸着器13の断面図である。図2において、吸着器13は、NHが物理吸着されると共にNHが脱離する吸着材16と、この吸着材16を収容する容器17とを有している。
【0022】
吸着材16としては、活性炭、カーボンブラック、メソポーラスカーボン、ナノカーボンまたはゼオライト等が用いられる。吸着材16は、複数の粒子から構成されている。吸着材16を構成する複数の粒子は、その大きさにある程度の分布を有している。
【0023】
吸着器13の容器17内には、熱を吸収または放出することで吸着材16との間で熱の授受を行う熱授受材18が吸着材16と共に混在されている。熱授受材18は、吸着材16よりも熱伝導率が高い良熱伝導性材料であると共に吸着材16よりも熱容量が大きい材料である。また、熱授受材18は、反応媒体(本実施形態ではNH)に対して化学的に不活性な材料が用いられる。つまり、熱授受材18は、NHと化学反応しない材料である。そのような熱授受材18としては、ステンレス鋼、鉄、銅、銀、ニッケルまたはアルミニウム等の金属、ガラス、アルミナ、ジルコニア、SiCまたはSiO等のセラミックスが用いられる。具体的には、熱授受材18としては、例えば熱伝導率が1W/m・K以上である材料が用いられる。
【0024】
熱授受材18は、吸着材16と同様に、複数の粒子から構成されている。熱授受材18を構成する複数の粒子も、その大きさにある程度の分布を有している。熱授受材18及び吸着材16は、公知の攪拌方法により容器17内に充填されている。容器17内では、吸着材16に対して熱授受材18がランダムに万遍無く混在された状態となっている。
【0025】
このとき、吸着材16の粒子のモード径をRa、熱授受材18の粒子のモード径をRmとしたときに、0.1≦Rm/Ra≦10.0であることが好ましく、0.1≦Rm/Ra≦1.0であることが特に好ましい。粒子のモード径とは、図3に示されるように、粒子径分布において最も頻度が高い粒子径のことである。
【0026】
なお、ここで示す粒子径とは、幾何学的特性から算出された粒子の相当径、或いは動力学特性または光学特性から算出された粒子の有効径等である。例えば、光学特性から算出された粒子の有効径は、レーザー回折散乱式粒子径測定装置において測定された粒度分布における累積体積が50%となる粒子径(D50)である。吸着材16及び熱授受材18の粒子径は、例えば数μm程度である。
【0027】
また、容器17内の吸着材16の粒子の総体積をVa、容器17内の熱授受材18の粒子の総体積をVmとしたときに、0.1≦Vm/Va≦5.0であることが好ましく、0.1≦Vm/Va≦1.0であることが特に好ましい。粒子の総体積は、粒子間の空間を除いた真の体積として表される。
【0028】
反応媒体としてのNHが充填される圧力容器である容器17は、円筒状に形成されている。容器17の上部平坦面には、上記のNH供給管12の一端部が固定されている。容器17は、NHに対して耐腐食性が高い材料(例えばステンレス鋼)から構成されている。
【0029】
以上のような化学蓄熱装置10を備えた排気浄化システム1において、エンジン2から排出される排気ガスの温度がDOC4等の排気ガス浄化触媒を活性させることができる暖気温度よりも低いときは、開閉弁14が開弁される。すると、吸着器13と反応器11との圧力差によって、吸着器13の吸着材16からNHが脱離し、その脱離したNHがNH供給管12を通って反応器11に供給される。そして、反応器11の反応材15(例えばMgBr)とNHとが化学反応(化学吸着)して熱が発生する。つまり、下記の反応式(A)における左辺から右辺への反応(発熱反応)が起こる。そして、反応器11で発生した熱が熱交換器3に伝えられ、熱交換器3を通して排気ガスが加熱(暖機)される。そして、暖められた排気ガスによってDOC4が汚染物質の浄化に適した活性温度まで上昇する。
MgBrNH ⇔ Mg(NHBr+熱 …(A)
【0030】
一方、エンジン2から排出される排気ガスの温度が再生温度以上になると、排気ガスの熱が熱交換器3を通して反応器11の反応材15に与えられることで、その熱を反応材15が吸熱して反応材15からNHを脱離させる。つまり、上記の反応式(A)における右辺から左辺への反応(再生反応)が起こる。そして、反応器11と吸着器13との圧力差によって、反応材15から脱離したNHがNH供給管12を通って吸着器13に戻り、吸着器13の容器17内に収容された吸着材16に戻ってきたNHが物理吸着される。これにより、NHが吸着器13に回収される。
【0031】
ここで、NHが吸着材16から脱離する際には、吸着材16が周囲の熱を吸熱するため、吸着器13の温度が下がる。吸着器13の温度が下がると、それ以降、NHが吸着材16から脱離しにくくなってしまう。一方、NHが吸着材16に物理吸着される際には、吸着材16が発熱するため、吸着器13の温度が上がる。吸着器13の温度が上がると、それ以降、NHが吸着材16に物理吸着されにくくなってしまう。
【0032】
このため、従来では、吸着材が収容されたチュ−ブと熱交換フィンとを交互に積層して吸着器を構成し、吸着器と外気との熱交換を行うことで、吸着器の温度変化を緩和していた。しかしながら、従来のように熱交換フィンを用いて吸着器の温度変化を緩和するためには、熱交換のための構造が複雑化する上に、吸着器が大型化してしまうという問題が発生していた。他方、化学蓄熱装置10を車両等に搭載しようとする場合、搭載性の面から吸着器を小型化する必要がある。従って、従来の構造のまま吸着器を小型化した場合には、空気との熱交換性能が低くなり、以下の不具合が生じる。即ち、NHが吸着材から脱離すると、吸着材が吸熱するため、図4(a)の破線Pで示されるように、NHの脱離直後に吸着材の温度が急激に下がる。一方、NHが吸着材に吸着されると、吸着材が発熱するため、図4(b)の破線Pで示されるように、NHの脱離直後に吸着材の温度が急激に上がる。
【0033】
これに対し本実施形態では、吸着器13の容器17内には、吸着材16よりも熱伝導率が高く且つ吸着材16よりも熱容量が大きい熱授受材18が吸着材16と共に混在されている。従って、吸着材16からNHが脱離する際には、吸着材16が周囲の熱を吸熱するが、熱容量が大きく良熱伝導性の熱授受材18が吸着材16の周囲に接触配置されているので、吸着材16が周囲の吸着材16から熱を奪うのではなく、主に熱授受材18から吸着材16に熱が移動することとなる。このため、図4(a)の実線Qで示されるように、NHの脱離時の吸着器13の温度低下が抑制される。一方、吸着材16にNHが吸着される際には、吸着材16が発熱するが、その際には吸着材16からその周囲に接触配置された熱授受材18に熱が移動するため、図4(b)の実線Qで示されるように、NHの吸着時の吸着器13の温度上昇が抑制される。従って、吸着材16と外気とを熱交換して吸着器13の温度変化を抑制するために吸着器13の体格を増大させなくて済む。
【0034】
このように本実施形態によれば、吸着材16に対するNHの吸着時及び脱離時における吸着器13の温度変化を緩和することができる。吸着器13の温度変化が緩和されることで、吸着材16からのNHの脱離及び吸着材16へのNHの吸着が速やかに行われる。従って、反応器11の熱出力を高くすることができると共に、吸着器13におけるNHの回収時間を短縮することができる。
【0035】
また、吸着器13は、熱授受材18が混在された吸着材16を容器17に収容した構造を有している。このため、吸着材と外気との間で熱交換を行う複数の熱交換フィンが設けられた吸着器に比べて、吸着器13の構造を簡単化することができると共に、吸着器13の体格を小型化することができる。
【0036】
また、吸着材16の粒子のモード径をRa、熱授受材18の粒子のモード径をRmとしたときに、0.1≦Rm/Ra≦10.0を満たすことにより、吸着材16の粒子と熱授受材18の粒子との隙間が少なくなり、吸着材16及び熱授受材18が細密に充填される。従って、吸着材16と熱授受材18との接触領域が十分に確保されるため、吸着材16と熱授受材18との間を熱が移動しやすくなる。これにより、吸着材16からのNHの脱離時に、吸着材16の温度低下が一層抑制されると共に、吸着材16へのNHの吸着時に、吸着材16の温度上昇が一層抑制される。
【0037】
さらに、容器17内の吸着材16の粒子の総体積をVa、容器17内の熱授受材18の粒子の総体積をVmとしたときに、0.1≦Vm/Va≦5.0を満たすことにより、吸着材16の温度変化を緩和しつつ、熱授受材18の粒子の総体積の増大による吸着器13の体格の増大を抑制することができる。
【0038】
また、高圧のNHを貯蔵する圧力容器としての容器17が円筒状に形成されているので、容器17が直方体状または立方体状に形成されている場合に比較して、容器17の強度が高くなるため、容器17の厚みを薄くすることができる。
【0039】
図5は、図2に示された吸着器13の変形例を示す断面図である。図5において、吸着器13は、上記の熱授受材18に代えて熱授受材20を有している。つまり、吸着器13の容器17内には、複数(ここでは6つ)の熱授受材20が吸着材16と共に混在されている。熱授受材20は、薄い平板状を呈している。熱授受材20は、上記の熱授受材18と同じ材料で形成されている。熱授受材20には、NHが通過可能な孔(図示せず)が設けられている。各熱授受材20は、互いに平行に等間隔で配置されている。各熱授受材20の周縁は、容器17の内壁面に接触している。
【0040】
熱授受材20が容器17の内壁面に接触することにより、吸着材16と熱授受材20との間の熱移動に加え、容器17を介して熱授受材20と外気との熱交換が行われるようになる。これにより、吸着器13の温度変化を一層緩和することができる。
【0041】
また、熱授受材20の形状を平板状とすることにより、粒子状の熱授受材18を粒子状の吸着材16に均等に混合させる場合に比べて、吸着器13の製造を容易に行うことができる。
【0042】
上記変形例では、熱授受材20の形状は平板状であるが、熱授受材20としては、板状を呈していれば、曲板等であってもよい。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば、上記実施形態では、容器17が円筒形状を有しているが、容器17としては、特にそれには限られず、角筒形状等を有していてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、反応媒体であるNHと組成式MXaで表される反応材15とを化学反応させて熱を発生させているが、反応媒体としては、特にNHには限られず、CO等を使用してもよい。反応媒体としてCOを使用する場合、COと化学反応させる反応材としては、MgO、CaO、BaO、Ca(OH)、Mg(OH)、Fe(OH)、Fe(OH)、FeO、FeまたはFe等が用いられる。
【0045】
さらに、上記実施形態では、化学蓄熱装置10により熱交換器3を介して排気ガスを加熱しているが、本発明は、DOC4等の触媒を直接加熱する化学蓄熱装置にも適用可能である。また、本発明は、ディーゼルエンジン2の排気系に限られず、ガソリンエンジンの排気系に配設される化学蓄熱装置にも適用可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、化学蓄熱装置10により熱交換器3を介して排気ガスを加熱しているが、本発明は、エンジンの排気系以外の加熱対象を加熱する化学蓄熱装置にも適用可能である。そのような加熱対象としては、エンジンオイル、冷却水または空気等の種々の熱媒体であってもよい。このとき、化学蓄熱装置10の反応器11を熱媒体が流れる熱媒体流路の外周部(外周部の一部または外周部の全周)に配置して、熱媒体流路そのものを加熱してもよい。また、熱媒体が流れる熱媒体流路に熱交換器を配置して、その熱交換器を介して熱媒体を加熱してもよい。また、反応材を備える反応器と熱交換フィン等の熱交換部とを交互に複数配置した熱交換部一体型の加熱器を構成し、その熱交換部一体型の加熱器を熱媒体が貯蔵されている熱媒体貯蔵部内または熱媒体が流れる熱媒体流路上に配置してもよい。さらに、本発明は、エンジン以外に配設される化学蓄熱装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…化学蓄熱装置、11…反応器、13…吸着器(貯蔵器)、15…反応材、16…吸着材、17…容器、18…熱授受材、20…熱授受材。
図1
図2
図3
図4
図5